(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151278
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ハゼ折鋼板のハゼ締め装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/02 20060101AFI20241017BHJP
B21D 19/08 20060101ALI20241017BHJP
B21D 19/04 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B21D39/02 F
B21D19/08 C
B21D19/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023073821
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】523148975
【氏名又は名称】日高 正志
(72)【発明者】
【氏名】日高 正志
(57)【要約】
【課題】 ハゼ折鋼板の表面損傷および作業効率の低下の原因となるハゼ締め装置の駆動カシメローラのスリップを防止する。
【解決手段】 複数個の駆動カシメローラR2…を並列に配置し、これらの駆動カシメローラR2…間に動力伝達ベルトB2を掛けて連動させるとともに、ハゼ締め作業に際しては、動力伝達ベルトB2を外すことなく、駆動カシメローラR2と従動カシメローラR3との間に2枚のハゼ折鋼板M,Mのカシメ連結部分と共に動力伝達ベルトB2を挟み込んでカシメ作業を実施する。動力伝達ベルトB2がハゼ折鋼板M,Mの保護部材、駆動カシメローラR2の摩擦増大部材として機能するとともに、ハゼ締め装置の安定な走行状態を実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインベース板と、該メインベース板に手動の伸縮リンク機構を介して往復スライド動作可能に搭載するサブベース板を備え、
前記メインベース板は、ハゼ締め作業の前提として隣接する2枚のハゼ折鋼板を山形に仮組みした場合における稜線位置に設定する仮想センタライン上を走行する1対の走行ローラと、前記仮想センタラインの左右位置に振り分けて傾斜姿勢でそれぞれ1対配置されるサイドローラと、前記仮想センタラインの一方側の側方に水平姿勢で配置される複数個の駆動カシメローラと、該駆動カシメローラを駆動する駆動機構を搭載するとともに、
前記サブベース板は、前記仮想センタラインを挟んで前記複数個の駆動カシメローラのいずれかに対峙する位置に水平姿勢で配置される従動カシメローラを備え、
前記メインベース板における複数個の駆動カシメローラは、前記駆動機構によって動力伝達ベルトを介して同一回転方向に積極駆動され、前記サブベース板における従動カシメローラは、前記サブベース板の往復スライド動作によって手動で前記駆動カシメローラに対して離接動作をし、
ハゼ折鋼板のハゼ締め作業における前記1対の走行ローラは、仮組みされたハゼ折鋼板の仮想センタライン上に配置されるとともに、前記サイドローラが山折状態で仮組みされたハゼ折鋼板の左右の傾斜側面に接地することによってハゼ折鋼板に対するメインベース板およびサブベース板の姿勢を継続的に決定保持し、前記サブベース板に対する作業員の手動操作によって互いに接近した前記駆動カシメローラと従動カシメローラとは、両者間に前記動力伝達ベルトとともにハゼ折鋼板の仮想センタラインの周辺部を強制的に挟み込んでカシメ変形させることによってハゼ締め作業を実行することを特徴とするハゼ折鋼板のハゼ締め装置。
【請求項2】
前記サイドローラは、サスペンション機構を介して前記メインベース板に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のハゼ折鋼板のハゼ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭の車庫や、大小工場等の屋根葺き部材として多用されるハゼ折鋼板のハゼ締め装置、特に、所定の態様で仮に組み合わされたハゼ折鋼板の連結部分に沿って電動で自走しながら連結部分をカシメて締付ける動作、すなわちハゼ締めを実行するものに関する。
【背景技術】
【0002】
ハゼ折鋼板の提供初期におけるハゼ折鋼板のカシメ連結作業、つまりハゼ締めは、業界でガッチャと呼ばれている大型の刈り込み挟み様の手動工具を用い、多点をカシメて実施されていたが、今日では、ハゼ折鋼板の連結部分に沿って電動で自走しながら連続的にカシメ連結するハゼ締め装置が提供されている。
【0003】
連結作業のために横並びに配置した2枚のハゼ折鋼板のカシメ連結部分は山形の山頂部に設定され、その断面形状は、ハゼ折鋼板の種類や規模等によってやや異なる態様のものもあるが、基本的な組合せ構成は共通している。これは、隣接するハゼ折鋼板をカシメ連結した際に所定の連結強度および屋根部材として必然的に要求される雨じまい性能を発揮できることが共通の要請であるからである。
【0004】
従来提供されている自走方式のハゼ締め装置は、横並びに配置した2枚のハゼ折鋼板の傾斜側面を山形を形成するように仮に組み合わせ、この山形部分に跨る姿勢で走行しながらカシメ動作を実行するものである。
【0005】
このような動作を実現するためには少なくとも走行のために2対、4個の走行ローラが必要になるとともに、カシメ動作に際して山頂部のカシメ連結部分を挟み込むための少なくとも2個、駆動カシメローラと従動カシメローラが必要とされる。
【0006】
また、自走方式といっても作業員が不要という趣旨ではなく、ハゼ締め装置の運転開始および停止、その他動作状態の監視等のため作業員の随行は必要条件である。なお、従来のハゼ締め装置は、4個の走行ローラをハゼ折鋼板の谷底部に接地させて走行する。このため4個の走行ローラは、谷底部からカシメローラを山頂部のカシメ対象部分に位置決めするための支脚部材を備えている。
【0007】
なお、ハゼ締め装置における自走動作は、走行ローラを駆動して行うものではなく、2個のカシメローラがカシメ部分を挟み込んで駆動されることによって、反作用的に走行するものである。これによって、走行用の駆動機構が省略されている。
【0008】
また、カシメローラの駆動機構に関しては、ハゼ締め装置のコードレス化を実現する手段としてバッテリ方式の専用の駆動モータを搭載することなく、市販のコードレスの電気ドリル等の既製の電動工具を搭載し、これをカシメローラの駆動に利用するアイデアが提供されているが、これをハゼ締め装置自体の技術進歩と評価するか否かについては、判断に困難を感じる。
【0009】
上記のような従来のハゼ締め装置は、異なるサイズのハゼ折鋼板に容易には適用することができないという問題があった。
【0010】
例えば、大規模工場等に用いるハゼ折鋼板と、小中規模の駐車場等に用いるハゼ折鋼板では、当然サイズが異なり、サイズ異なれば、走行ローラの走行路となる谷底部から谷底部までの間隔が異なるほか、谷底部から作業対象位置である山頂部までの高さも異なる。したがって、同一のハゼ締め装置を大小何れのハゼ折鋼板にも適用可能とするには、複数箇所を調節可能とした複雑な構成の採用を余儀なくされる。
【0011】
また、従来のハゼ締め装置には、ハゼ締め作業中にハゼ折鋼板が傷付き、作業に起因する防錆機能の低下が避けられないという問題が指摘されていた。
【0012】
このような問題は、ハゼ締め作業が金属製のカシメローラ間に仮組みしたハゼ折鋼板のハゼ締め対象部分を挟み込んで変形させるという作業反力の大きな内容であることに加え、ハゼ締め装置の走行ローラが独自の駆動源を有さず、カシメローラがハゼ締め作業を実行しながら進行することによってハゼ締め装置全体を進行させる簡便な方式が採用されているからである。この結果、カシメローラには、ハゼ締め装置全体の走行抵抗も負荷されるため、カシメローラのスリップが完全には避けられず、カシメローラのスリップにより、ハゼ折鋼板表面の防錆被膜が部分的に損傷してしまうのである。
【0013】
なお、仮に走行ローラを駆動付きとする場合には、負荷の種類が異なる走行ローラとカシメローラと同期させなければならないという技術的に困難な課題が浮上することとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術を考慮し、新たな問題点を発生させることなく従来のハゼ締め装置から提出された2つの問題点を解消しようとするものである。そして、この目的のため従来のハゼ締め装置の問題点を分析した。
【0015】
従来のハゼ締め装置においては、ハゼ折鋼板の山形部を跨いだ左右の走行ローラ間の間隔や、走行ローラとカシメローラ間の距離を調節可能とする複雑な構成を採用することなくサイズの異なるハゼ折鋼板に適用することができないという問題は、ハゼ締め装置がハゼ折鋼板の山形部を跨いだ左右の谷底部を走行する限りは解決することができないと判断される。
【0016】
それでは一体どこを走らせるのか、ということが問題になる。この点本発明は、サイズの異なるハゼ折鋼板においては、ハゼ折鋼板の構成部材が相互にサイズが異なったとしても、その構成角度が変化する訳ではない、という点に着目した。換言すれば、サイズが異なっても折り曲げ角度は殆んど同じであるということである。さらに換言すれば、サイズが異なっても互いに相似形であるということである。
【0017】
大きな山形を底辺に平行に切断したとすれば、小さな山形が形成されるが、この場合、走行するための谷底部は存在しないこととなる。そこで本発明は、ハゼ締め装置に山形の両側の傾斜側面を走行可能とすることを課題とする。なお、傾斜側面に対しては、ハゼ締め装置全体の荷重を安定に支持できるのか、スリップするのではないかという懸念を払拭することができない。
【0018】
この点本発明は、さらに、ハゼ折鋼板においては傾斜側面にハゼ締め装置の荷重を負担させなくとも、その形状からして確実にハゼ締め装置全体の荷重を負担させることができると考えられる箇所があることに着目した。ここでの着目箇所は、ハゼ締め作業のために山形に組み合わされたハゼ折鋼板の山頂部である。そこで本発明は、上記の傾斜側面とともに、ハゼ折鋼板の山頂部を走行可能とすることを課題とする。この場合、傾斜側面を走行するローラは、単にハゼ締め装置の姿勢を維持するためのガイドとして機能すれば足りる。
【0019】
次に、従来のハゼ締め装置においては、カシメローラのスリップによってハゼ締め作業中にハゼ折鋼板が損傷するという問題点について検討する。カシメローラのスリップは、問題点の欄で先に記述したように、滑りが発生し易い金属製のカシメローラに対して、ハゼ締め作業による加工反力とハゼ締め装置全体の走行抵抗が相乗的にはたらくことにより発生することが分かっている。その他カシメローラとワークであるハゼ折鋼板との接触面積が小さすぎると言う意見も提出されている。
【0020】
問題が上記のような理由で生じるのであれば、解決策は、金属のカシメローラとハゼ折鋼板とが直接接触しないようにすること、スリップが発生しないようにすること、カシメローラとハゼ折鋼板の接触面積を増大させることが本発明の必然的な課題とされる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために本発明が採用する手段を次に説明する。
【0022】
(解決手段1)
本発明のハゼ折鋼板のハゼ締め装置(以下単に「ハゼ締め装置」)は、メインベース板と、メインベース板に手動の伸縮リンク機構を介して往復スライド動作可能に搭載するサブベース板を備え、メインベース板は、ハゼ締め作業の前提として隣接する2枚のハゼ折鋼板を山形に仮組みした場合における稜線位置に設定する仮想センタライン上を走行する1対の走行ローラと、仮想センタラインの左右位置に振り分けて傾斜姿勢でそれぞれ1対配置されるサイドローラと、仮想センタラインの一方側の側方に水平姿勢で配置される複数個の駆動カシメローラと、駆動カシメローラを駆動する駆動機構を搭載するとともに、サブベース板は、仮想センタラインを挟んで複数個の駆動カシメローラのいずれかに対峙する位置に水平姿勢で配置される従動カシメローラを備え、メインベース板における複数個の駆動カシメローラは、駆動機構によって動力伝達ベルトを介して同一回転方向に積極駆動され、サブベース板における従動カシメローラは、サブベース板の往復スライド動作によって手動で駆動カシメローラに対して離接動作をし、ハゼ折鋼板のハゼ締め作業における1対の走行ローラは、仮組みされたハゼ折鋼板の仮想センタライン上に配置されるとともに、サイドローラが山折状態で仮組みされたハゼ折鋼板の左右の傾斜側面に接地することによってハゼ折鋼板に対するメインベース板およびサブベース板の姿勢を継続的に決定保持し、サブベース板に対する作業員の手動操作によって互いに接近した駆動カシメローラと従動カシメローラとは、両者間に動力伝達ベルトとともにハゼ折鋼板の仮想センタラインの周辺部を強制的に挟み込んでカシメ変形させることによってハゼ締め作業を実行することを特徴とする。
【0023】
上記解決手段1について説明する。メインベース板およびサブベース板は、ハゼ締め装置の基本的構造部材であり、他の部材の取付に供される。サブベース板は、メインベース板に対して往復スライド動作可能である。この往復スライド動作は、簡単な手動の伸縮リンク機構によって行われる。
【0024】
メインベース板には、ハゼ締め作業用の多く機能部品が取り付けられているのであるが、これらの部材は、山形に仮組みした状態のハゼ折鋼板を念頭において配置される。この際山形に仮組みされたハゼ折鋼板の稜線位置には、直線の仮想センタラインが設定される。メインベース板には、この稜線ライン上を走行するための1対の走行ローラが所定間隔離して直列に配置されている。
【0025】
さらに、メインベース板には、仮想センタラインを挟む左右位置にそれぞれ1対のサイドローラが傾斜姿勢で取り付けられる。傾斜姿勢であるのは、傾斜しているハゼ折鋼板の傾斜側面に対して直立姿勢とするためである。
【0026】
ハゼ締め作業用のカシメローラには、メインベース板に搭載された駆動機構によって積極駆動される駆動カシメローラと、従動動作の従動カシメローラとの2種類がある。本ハゼ締め装置においては、駆動カシメローラは複数個使用される。複数個の駆動カシメローラは、動力伝達ベルトによって連結され、同一回転方向に駆動される。なお、この際、動力伝達ベルトの外周面は、ほぼ仮想センタライン上に位置している。ほぼ、というのは、実際にはハゼ折鋼板の厚み分離れているからである。
【0027】
他方、従動カシメローラは、仮想センタラインを挟んでいずれかの駆動カシメローラに対峙させてサブベース板に取り付けられ、サブベース板をスライド動作させることにより仮組みされたハゼ折鋼板の仮想センタライン付近を駆動カシメローラと従動カシメローラとの間に挟み込むことができる。ここで重要なことは、動力伝達ベルトと共にハゼ折鋼板を挟み込むという点である。これによりハゼ締め動作時点のハゼ折鋼板と駆動カシメローラとの接触面積を動力伝達ベルトを介して一定範囲に拡大させることができるとともに、駆動カシメローラとハゼ折鋼板間のスリップも阻止される。動力伝達ベルトには、もとよりスリップを防ぐための素材が選択されているからである。
【0028】
(解決手段2)
ハゼ締め装置におけるサイドローラは、サスペンション機構を介してメインベース板に取り付けることができる。
【0029】
ハゼ締め装置全体が極めて剛性が高く、各部の可動部分の遊びも極少である場合、走行ローラが仮想センタライン上に接地していれば、左右いずれかのサイドローラがハゼ折鋼板の傾斜側面から浮いている可能性があり、逆に、左右のサイドローラのいずれもが左右の傾斜側面に接地していれば、走行ローラが仮想センタラインから浮いている可能性がある。理論的にはこのような不安定な現象を防止する趣旨であると主張することができるが、現実には、ハゼ締め作業が完全に完了する前のハゼ折鋼板の傾斜側面のばたつきをサイドローラのサスペンション機構で無理なく抑え込む趣旨である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のハゼ締め装置は、3角形を構成するように配置された走行ローラと走行ローラの左右位置のサイドローラを備えることにより、走行ローラにハゼ締め作業の前提として山形に仮組みしたハゼ折鋼板の稜線位置を走行させるとともに、左右のサイドローラにハゼ折鋼板の左右の傾斜側面の任意の高さ位置を走行させることができるので、ハゼ折鋼板の折り曲げ角度が同一である限り、ハゼ締め装置に対するなんらの調節作業等を要することなく多様なサイズのハゼ折鋼板のハゼ締め作業簡単に適用することができるという顕著な効果を奏する。
【0031】
高摩擦部材で製造されることが通常である動力伝達ベルトを介してハゼ締め作業を実行するようにしたハゼ締め装置は、金属製の駆動カシメローラが直接接触することがなく、しかも、接触面積も増加するので駆動カシメローラのスリップが確実に防止され、ハゼ折鋼板表面の損傷も効果的に防止される。
【0032】
サスペンション機構付きのサイドローラを備えるものは、強風等によるハゼ締め作業中におけるハゼ折鋼板のばたつきを無理なく抑え込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明のハゼ締め装置の表面側の斜視図である。
【
図2】本発明のハゼ締め装置の裏面側の斜視図である。
【
図3】本発明のハゼ締め装置の部分断面表示した正面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を引用しながら本発明のハゼ締め装置の実施の形態例を説明する。なお、ここでは、電動工具の技術動向に鑑みて駆動機構を構成する駆動源として既製品の電動工具を利用した例を説明するが、特に図示しなくとも専用の駆動源を搭載してもよいことは自明である。
【0035】
ハゼ締め装置は、基本骨格としてメインベース板10およびサブベース板20を備える(
図1,
図3)。メインベース板10は長方形に形成され、相向かう短辺の幅中央位置には、それぞれローラハウスが切り欠かれ、1対の走行ローラR1,R1が自由回転自在に収納されている(
図1,
図2)。
【0036】
2個の各走行ローラR1は、同径あり、またメインベース板10の板厚みより十分に大径であり、メインベース板10の表面側と裏面側とに突出した状態である。なお、裏面側に突出した1対の走行ローラR1,R1のローラ幅中央位置には、仮想センタラインL1が設定される(
図2)。仮想センタラインL1は、ハゼ締め装置の部材配置の決定、およびハゼ締め装置とハゼ折鋼板M1の位置関係を決定する上で重要であるが、それ以上の意味をもつものではない(
図2,
図3)。
【0037】
メインベース板10は、裏面側の4箇所にサイドローラR4…を備える。各サイドローラR4は、薄手のバネ板を組み合わせてなるサスペンション機構15を介してメインベース板10に傾斜姿勢で取り付けられている。この際のサイドローラR4…の姿勢は、仮想センタラインL1を挟んで左右1対をなすサイドローラR4,R4が内すぼみとなる対称傾斜姿勢であり、走行ローラR1を含む位置関係では、2等辺三角形を描く場合の頂点位置の配置とも言える。また、メインベース板10の4隅位置には、各サイドローラR4に添えてハゼ締め装置を静置しておくための脚部材11…が垂設されている。不使用時にサスペンション機構15…が働いてハゼ締め装置が揺らぐのを防止する趣旨である。
【0038】
メインベース板10の裏面側、仮想センタラインL1の一方の側方には、3個の駆動カシメローラR2,R2,R2が一定間隔を保って配置されている(
図2)。3個の駆動カシメローラR2…は同一径であり、動力伝達ベルトB2で連結されている。このうち一端側の駆動カシメローラR2は、メインベース板10の表面側に充電方式のインパクトドライバD2を主要部材とする駆動機構12を有し、インパクトドライバD2によって直接駆動される。残り2個の駆動カシメローラR2,R2は、動力伝達ベルトB2を介して駆動される。なお、動力伝達ベトB2には特別な仕様は要求されない。また、駆動機構12には、インパクトドライバD2を操作する作業者の便宜のための間接スイッチ13等が含まれるが、操作ハンドル14等ハゼ締め装置全体を取り扱うような部材は含まれない(
図1)。
【0039】
サブベース板20は、長孔と押え板21とによってスライド動作可能にメインベース板10に取り付けられている(
図1,
図3)。メインベース板10とサブベース板20との間には手動の伸縮リンク機構23が組み付けられている。サブベース板20には、仮想センタラインL1を挟み、メインベース板10の裏面における中央位置の駆動カシメローラR2に対峙する位置に従動カシメローラR3が取り付けられている(
図1,
図3)。
【0040】
サブベース板20は、伸縮リンク機構23の操作によって仮想センタラインL1に直交する方向に往復スライド動作をし、従動カシメローラR3はこの操作の結果としてメインベース板10の裏面側において中央位置の駆動カシメローラR2に接近し、および離れる動作をすることができる。
【0041】
上記のような構成のハゼ締め装置は、山形なすように仮組みした2枚のハゼ折鋼板M,Mに跨るように位置決めして使用する(
図3)。ハゼ締め装置の走行ローラR1,R1は、この姿勢においてハゼ折鋼板M,Mの稜線位置に接地し、ハゼ締め装置の重量は、この稜線部分で受け止められる。この部分は仮組みのために複雑な断面形状に曲げ加工されて十分な強度を有し、ハゼ締め装置は、安定に走行することが可能である。なお、2枚のハゼ折鋼板M,Mの仮組み構造はメーカやハゼ折鋼板Mのサイズ等によって僅かな違いがあるが殆んど業界スタンダード化されており、走行ローラR1,R1の走行に支障を来す程の違いではない。
【0042】
他方、走行ローラR1,R1が接地した時点における左右位置のサイドローラR4,R4は、対応するハゼ折鋼板M,Mの傾斜側面に接するか、接しないかというような状態である。したがって、ハゼ締め装置が傾こうとした場合にその一方側のサイドローラR4のみがサスペンション機構15を介して弾性的に傾斜側面に接触してハゼ締め装置を押し戻すのである。つまりサイドローラR4にはハゼ締め装置の重量を支える機能は予定されておらず、専らハゼ締め装置の姿勢を一定範囲に維持する機能が求められているのである。
【0043】
仮組みされたハゼ折鋼板M,Mの加工対象となる稜線部分、つまり仮想センタラインL1の直下部分は、作業員による伸縮リンク機構23の操作によってサブベース板20のスライド動作を介して動力伝達ベルトB2と共に駆動カシメローラR2と従動カシメローラR3との間に挟み込まれ、両者間を通過することによってカシメ動作が完了する。
【符号の説明】
【0044】
M ハゼ折鋼板
B2 動力伝達ベルト
L1 仮想センタライン
R1 走行ローラ
R2 駆動カシメローラ
R3 従動カシメローラ
R4 サイドローラ
10 メインベース板
12 駆動機構
15 サスペンション機構
20 サブベース板
23 伸縮リンク機構