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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151280
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】生体関連物質の溶液採取装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/28 20060101AFI20241017BHJP
   C12M 3/06 20060101ALI20241017BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20241017BHJP
   G01N 1/34 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C12M1/28
C12M3/06
C12M1/42
G01N1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092579
(22)【出願日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2023064245
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502338292
【氏名又は名称】ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀二
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AD29
2G052CA04
2G052CA18
2G052EA04
2G052FD08
2G052GA28
4B029AA09
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC01
4B029DG08
4B029GA02
4B029GB05
4B029HA06
4B029HA09
(57)【要約】
【課題】 人手を介さずに生体関連物質の溶液をより単純な機構でろ過及び破砕する生体関連物質の溶液採取装置を提供する。
【解決手段】 溶液採取装置100は、底面にフィルターが形成されたろ過容器14と、夾雑物を含む生体関連物質の溶液を受け入れた状態でろ過容器14を収容する処理容器16と、ろ過容器14を処理容器16に移動するために、ろ過容器14の上部を保持する容器保持具32と、処理容器16に収容されたろ過容器14から生体関連物質の溶液を吸引する分注ノズル33と、容器保持具32又は分注ノズル33を縦方向に移動する縦方向移動機構と、容器保持具32を横方向に移動する横方向移動機構とを備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体関連物質の溶液から夾雑物をろ過又はろ過及び破砕した溶液を採取する溶液採取装置であって、
底面にフィルターが形成された少なくとも1つのろ過容器と、
夾雑物を含む生体関連物質の溶液を受け入れた状態で前記ろ過容器を収容する少なくとも1つの処理容器と、
前記ろ過容器を前記処理容器に移動するために、前記ろ過容器の上部を保持する容器保持具と、
前記処理容器に収容された前記ろ過容器から生体関連物質の溶液を吸引する少なくとも1つの分注ノズルと、
前記容器保持具又は前記分注ノズルを縦方向及び横方向に移動する縦横移動機構を備える、溶液採取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記容器保持具及び/又は前記分注ノズルを縦方向に移動する第1縦方向移動機構と、前記容器保持具及び/又は前記分注ノズルを横方向に移動する横方向移動機構とを含む、溶液採取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の溶液採取装置であって、
前記容器保持具は、前記ろ過容器の上部を保持する少なくとも1つの窪み部又は把持部を有する、溶液採取装置。
【請求項4】
請求項1に記載の溶液採取装置であって、
前記ろ過容器の上部にフランジ部が形成され、前記容器保持具の前記窪み部に凹部が形成され、前記フランジ部が前記凹部に嵌り込むことにより、前記容器保持具が前記ろ過容器を保持する、溶液採取装置。
【請求項5】
請求項2に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記分注ノズルに対して前記容器保持具を縦方向に移動する第2縦方向移動機構をさらに備える、溶液採取装置。
【請求項6】
請求項1に記載の溶液採取装置であって、
少なくとも1つの溶液採取カートリッジを備え、前記溶液採取カートリッジは、前記ろ過容器を収容するろ過容器受け入れ容器と、前記処理容器とを備える、溶液採取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の溶液採取装置であって、
前記溶液採取カートリッジを保持するステージと、前記ステージの上方を移動可能な上部構造とを備える、溶液採取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の溶液採取装置であって、
前記上部構造は、前記第1縦方向移動機構、前記横方向移動機構、前記分注ノズルを備える、溶液採取装置。
【請求項9】
請求項7に記載の溶液採取装置であって、
前記分注ノズルに対して前記容器保持具を縦方向に移動する第2縦方向移動機構を備え、
前記上部構造は、前記第1縦方向移動機構、前記第2縦方向移動機構、前記横方向移動機構、前記分注ノズルを備える、溶液採取装置。
【請求項10】
請求項1に記載の溶液採取装置であって、
ろ過処理前の前記ろ過容器を受け入れて保管する保管容器を含み、
前記ろ過容器は、当該ろ過容器の上部が前記保管容器から露出した状態で、前記保管容器に収容されており、
前記縦横移動機構は、前記容器保持具を前記ろ過容器の前記上部に近づくように横方向を移動して、前記容器保持具が前記上部を保持した後、前記容器保持具を縦方向に移動して前記ろ過容器を前記保管容器から取り出す、溶液採取装置。
【請求項11】
請求項10に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記ろ過容器の前記上部を保持したまま、前記保管容器から取り出された前記ろ過容器を移動して前記処理容器内に収容する、溶液採取装置。
【請求項12】
請求項11に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記ろ過容器を前記処理容器内に収容した状態で、前記容器保持具を上下に1又は複数移動することにより、前記溶液に含まれる前記夾雑物のろ過又はろ過及び粉砕を実行する、粉砕溶液採取装置。
【請求項13】
請求項12に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記ろ過容器の前記上部が前記処理容器から露出した状態で、前記容器保持具を前記ろ過容器の前記上部から離れるように横方向に移動して、前記容器保持具を前記上部から分離する、溶液採取装置。
【請求項14】
請求項1に記載の溶液採取装置であって、
前記分注ノズルに装着された分注チップ内の磁性粒子に対して磁力を及ぼす磁石体を備える、溶液採取装置。
【請求項15】
請求項14に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記磁石体を前記分注チップに対して横方向に移動する磁石体移動機構をさらに備える、溶液採取装置。
【請求項16】
請求項2に記載の溶液採取装置であって、
前記少なくとも1つのろ過容器は、複数のろ過容器であり、
前記保持具は、当該保持具が前記複数のろ過容器の上部を保持する前に、前記第1縦方向移動機構によって前記複数のろ過容器の前記上部を押して揃えるための突出片を有する、溶液採取装置。
【請求項17】
請求項1に記載の溶液採取装置であって、
前記少なくとも1つのろ過容器は、前記フィルターの下側に弾性材料製の夾雑物破砕体を備える、溶液採取装置。
【請求項18】
請求項14に記載の溶液採取装置であって、
前記容器保持具は、前記磁石体を備える、溶液採取装置。
【請求項19】
請求項15に記載の溶液採取装置であって、
前記容器保持具は、前記分注ノズルに装着された前記分注チップを前記磁石体に接近させるためのスロットを備える、溶液採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質の溶液から夾雑物をろ過又はろ過及び破砕した溶液を採取する採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス等の病原体の検出には、遺伝子工学の発展に伴い普及したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用したPCR法が用いられている。病原体を含む生体関連物質(例えば、鼻拭い液、糞便、又は痰等)を採取し、生体関連物質を破砕して溶液に溶かし、この溶液から核酸(DNAまたはRNA)を抽出し、PCR法により核酸を増幅して、増幅された核酸に基づき病原体が検出される。
【0003】
生体関連物質の溶液を採取する際、溶液中に固体又はゲル状の夾雑物が含まれる場合が有る。この場合、夾雑物が溶液に含まれた状態では、PCR法が適切に実行できない可能性が生じる。そこで、従来は、検査担当者が、生体関連物質の溶液を遠心分離器を用いて遠心分離し、夾雑物が遠心分離された溶液の上澄みをピペット等で吸引することにより夾雑物を取り除いた溶液を得ていた。
【0004】
特許文献1には、生体組織を破砕して得られた組織溶液をろ過するとともにろ過により抽出されたろ液を採取する試料処理装置が記載されている。この試料処理装置は、回転する破砕具30で生体組織を破砕した後、破砕された組織をろ過具40で濾過して、生体組織の溶液を得ることが記載されている(要約、0028、0048)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-93387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体関連物質の溶液を遠心分離器で遠心分離し夾雑物を除くことは、検査担当者が手作業で行っていたため手間がかかり、大量高速処理が困難となっていた。一方、特許文献1の試料処理装置は、回転する破砕具30で生体組織を破砕した後、後、破砕された組織組織をろ過具40で濾過する必要があり、破砕具30を回転するための専用モータが必要となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、人手を介さずに生体関連物質の溶液をより単純な機構でろ過又はろ過及び破砕する生体関連物質の溶液採取装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各態様例は次の通り構成される。
(態様例1)
生体関連物質の溶液から夾雑物をろ過又はろ過及び破砕した溶液を採取する溶液採取装置であって、
底面にフィルターが形成された少なくとも1つのろ過容器と、
夾雑物を含む生体関連物質の溶液を受け入れた状態で前記ろ過容器を収容する少なくとも1つの処理容器と、
前記ろ過容器を前記処理容器に移動するために、前記ろ過容器の上部を保持する容器保持具と、
前記処理容器に収容された前記ろ過容器から生体関連物質の溶液を吸引する少なくとも1つの分注ノズルと、
前記容器保持具又は前記分注ノズルを縦方向及び横方向に移動する縦横移動機構とを備える、溶液採取装置。
【0009】
(態様例2)
態様例1に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記容器保持具及び/又は前記分注ノズルを縦方向に移動する第1縦方向移動機構と、前記容器保持具及び/又は前記分注ノズルを横方向に移動する横方向移動機構とを含む、溶液採取装置。
(態様例3)
態様例1に記載の溶液採取装置であって、
前記容器保持具は、前記ろ過容器の上部を保持する少なくとも1つの窪み部又は把持部を有する、溶液採取装置。
(態様例4)
態様例1に記載の溶液採取装置であって、
前記ろ過容器の上部にフランジ部が形成され、前記容器保持具の前記窪み部に凹部が形成され、前記フランジ部が前記凹部に嵌り込むことにより、前記容器保持具が前記ろ過容器を保持する、溶液採取装置。
(態様例5)
態様例1に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記分注ノズルに対して前記容器保持具を縦方向に移動する第2縦方向移動機構をさらに備える、溶液採取装置。
【0010】
(態様例6)
態様例1に記載の溶液採取装置であって、
少なくとも1つの溶液採取カートリッジを備え、前記溶液採取カートリッジは、前記ろ過容器を収容するろ過容器受け入れ容器と、前記処理容器とを備える、溶液採取装置。
(態様例7)
態様例6に記載の溶液採取装置であって、
前記溶液採取カートリッジを保持するステージと、前記ステージの上方を移動可能な上部構造とを備える、溶液採取装置。
【0011】
(態様例8)
態様例7に記載の溶液採取装置であって、
前記上部構造は、前記第1縦方向移動機構、前記横方向移動機構、前記分注ノズルを備える、溶液採取装置。
(態様例9)
態様例7に記載の溶液採取装置であって、
前記分注ノズルに対して前記容器保持具を縦方向に移動する第2縦方向移動機構を備え、
前記上部構造は、前記第1縦方向移動機構、前記第2縦方向移動機構、前記横方向移動機構、前記分注ノズルを備える、溶液採取装置。
(態様例10)
態様例1に記載の溶液採取装置であって、
ろ過処理前の前記ろ過容器を受け入れて保管する保管容器を含み、
前記ろ過容器は、当該ろ過容器の上部が前記保管容器から露出した状態で、前記保管容器に収容されており、
前記縦横移動機構は、前記容器保持具を前記ろ過容器の前記上部に近づくように横方向を移動して、前記容器保持具が前記上部を保持した後、前記容器保持具を縦方向に移動して前記ろ過容器を前記保管容器から取り出す、溶液採取装置。
【0012】
(態様例11)
態様例10に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記ろ過容器の前記上部を保持したまま、前記保管容器から取り出された前記ろ過容器を移動して前記処理容器内に収容する、溶液採取装置。
(態様例12)
態様例11に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記ろ過容器を前記処理容器内に収容した状態で、前記容器保持具を上下に1又は複数移動することにより、前記溶液に含まれる前記夾雑物のろ過又はろ過及び粉砕を実行する、粉砕溶液採取装置。
(態様例13)
態様例12に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記ろ過容器の前記上部が前記処理容器から露出した状態で、前記容器保持具を前記ろ過容器の前記上部から離れるように横方向に移動して、前記容器保持具を前記上部から分離する、溶液採取装置。
【0013】
(態様例14)
態様例1に記載の溶液採取装置であって、
前記分注ノズルに装着された分注チップ内の磁性粒子に対して磁力を及ぼす磁石体を備える、溶液採取装置。
(態様例15)
態様例14に記載の溶液採取装置であって、
前記縦横移動機構は、前記磁石体を前記分注チップに対して横方向に移動する磁石体移動機構をさらに備える、溶液採取装置。
(態様例16)
態様例2に記載の溶液採取装置であって、
前記少なくとも1つのろ過容器は、複数のろ過容器であり、
前記保持具は、当該保持具が前記複数のろ過容器の上部を保持する前に、前記第1縦方向移動機構によって前記複数のろ過容器の前記上部を押して揃えるための突出片を有する、溶液採取装置。
【0014】
(態様例17)
態様例1に記載の溶液採取装置であって、
前記少なくとも1つのろ過容器は、前記フィルターの下側に弾性材料製の夾雑物破砕体を備える、溶液採取装置。
(態様例18)
態様例14に記載の溶液採取装置であって、
前記容器保持具は、前記磁石体を備える、溶液採取装置。
(態様例19)
態様例15に記載の溶液採取装置であって、
前記容器保持具は、前記分注ノズルに装着された前記分注チップを前記磁石体に接近させるためのスロットを備える、溶液採取装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生体関連物質の溶液採取装置は、人手を介さずに生体関連物質の溶液をより単純な機構で、ろ過又はろ過及び破砕できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る溶液採取カートリッジを示す斜視図である。
図2図1のろ過容器を示す断面斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る溶液採取装置を示す斜視図である。
図4図3の溶液採取装置を示す側面図である。
図5図3の溶液採取装置の要部を示す拡大斜視図である。
図6図3のろ過容器を保持した容器保持具を示す斜視図である。
図7】溶液採取装置の動作を示す側面図である。
図8図7に続く溶液採取装置の動作を示す側面図である。
図9】分注チップによるろ過済み溶液の採取動作を示す側面図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る溶液保持具他を示す斜視図である。
図11図10の容器保持具によるろ過容器に対する動作を示す側断面図である
図12】本発明の第3の実施形態に係る溶液保持具他を示す斜視図である。
図13図12の夾雑物破砕体を示す下方斜視図である。
図14図12の溶液保持具がろ過容器を保持した状態を示す側断面図である。
図15図12の溶液保持具による夾雑物粉砕動作を示す側断面図である。
図16】本発明の第4の実施形態に係る容器保持具を示す下方斜視図である。
図17】本発明の第1~第4の実施形態に係る溶液採取装置を示す斜視図である。
図18図17の溶液採取装置に係る(a)上面図、(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の生体関連物質の溶液採取装置に係る各実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付し適宜説明を省略する。各図において、各部分の相対的な大きさ及び/又は配置は、原則として正確に図示しているが、本発明はこれらに限定されない。また、本発明において、採取される生体関連物質の溶液は、鼻拭い液、糞便、又は痰等を含む溶液に限定されず、生体から採取された液体を含む又は液状化可能な生体組織等の溶液とすることができる。
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る溶液採取装置は、生体関連物質の溶液をろ過するだけではなく、ろ過した溶液から核酸を抽出して、PCR反応を実行するPCR装置である。初めに、この溶液採取装置に用いる生体関連物質の溶液採取カートリッジ10を説明する。溶液採取カートリッジ10は、生体関連物質を溶液に溶解し、ろ過又はろ過及び破砕を行う部分、凍結乾燥された前処理用薬剤、PCR用薬剤、及び各種溶液が密封された部分、核酸を抽出するための所定の前処理を行う部分、PCR反応を実行する部分を備える。
【0019】
図1に示すように、溶液採取カートリッジ10は、ろ過容器保管容器12と、ろ過容器14と、PCR反応容器15と、夾雑物を含む生体関連物質の溶液を受け入れる処理容器16と、凍結乾燥されたPCR試薬及び各種溶液がシール19bで密封された複数の前処理ウェル19とを備える。溶液採取用カートリッジ10は、上面プレート18を備え、上面プレート18の上面には、ろ過容器保管容器12の開口12a、PCR反応容器15の開口15a、処理容器16を受け入れる貫通口18a、及び複数の前処理ウェル19の開口19aが、一列に配置されている。溶液採取カートリッジ10は、ろ過容器保管容器12に対して出し入れ自在にろ過容器14を収容し、開口18aに処理容器16が嵌め込まれる。
【0020】
図2に示すように、ろ過容器14は、上端開口14aを備えた有底筒状容器である。ろ過容器14は、底面に溶液が通過するフィルター(例えば、メッシュ又は網の目)が形成されたろ過底部14bと、ろ過底部14bと結合される筒状部14cと、上端開口14aの周囲から環状に突出するフランジ部14dと、フランジ部14dの下でフランジ部14dに対して外径が小さく形成された第1上側筒部14eと、第1上側筒部14eの下で第1上側筒部14eに対して外径が小さい第2上側筒状部14fとから構成される。
【0021】
ろ過底部14bの周壁部の外面には、周方向に沿って1つ又は複数の外側フィン14b1が形成されている。外側フィン14b1は、好ましくは弾性部材から形成される。ろ過容器14が処理容器16に収容されると、外側フィン14b1が処理容器16の内周面に当接することにより、処理容器16からろ過容器14が脱落することが防止される。ろ過容器14の筒状部14cの外径は、処理容器16の内径より小さく、ろ過容器14のフランジ部14dの外径は、処理容器16の内径及び開口16aよりも大きい。
【0022】
図3及び4に示すように、溶液採取装置100は、複数の溶液採取カートリッジ10のそれぞれをx方向に沿って上面に配置するステージ20と、ステージ20の上方を移動可能な上部構造30とを備えている。ステージ20の上面には、複数の分注チップ40、及び生体関連物質のサンプルを収容するサンプル容器等が収容されている。上部構造30は、図18の横方向移動機構40(例えば、モータ41及びレール42等)によってステージ20の上方をx方向に移動する。
【0023】
上部構造30は、上部基部31と、複数のろ過容器14を脱着可能に保持する容器保持具(キャリア)32と、y方向に一列に配置された複数の分注ノズル33と、容器保持具32をz方向に移動可能に支持する保持具支持部34と、分注ノズル33に装着された分注チップ40内の磁性粒子を吸引する磁石ユニット(磁石体)36と、上部基部31をz方向に移動可能に支持する上部支持部38とを備えている。上部構造30は、図18に示すように、磁石ユニット36をx方向に移動する磁石移動機構50(例えば、アクチュエータ等)を備える。
【0024】
上部構造30は、容器保持具32及び保持具支持部34を上部基部31に対してz方向に移動する第2縦方向移動機構70を備える。第2縦方向移動機構70は、容器保持具32のy方向両端からz方向に延びる一対のシリンダ部又はアクチュエータ部34aと、シリンダ部又はアクチュエータ部34aを動作するモータ71とを備える。容器保持具32及び保持具支持部34は、シリンダ部34aの伸縮に伴って上部基部31に対してz方向に移動する。
【0025】
複数の分注ノズル33は、一対のシリンダ34aによって移動せず、複数のノズル用シリンダ33aを介して上部基部31に固定される。複数の分注ノズル33は、複数のノズル用シリンダ33aによって溶液の吸引吐出を行う。上部構造30は、図17~18に示すように、上部基部31を上部支持部38に対してz方向に移動する第1縦方向移動機構60(例えば、モータ61及びボールねじ又はアクチュエータ等)を備える。複数の分注ノズル33は、上部基部31を第1縦方向移動機構60で移動することによりz方向に移動することができる。
【0026】
図3及び5に示すように、容器保持具32は、x方向に窪んだ複数の窪み部32aを備え、窪み部32aはy方向に一列に整列している。窪み部32aは、窪み部32aの湾曲内面に形成されたU字状の凹部32a1を備える。図6に、ろ過容器14の上部が窪み部32aに係止された状態を示す。この係止状態で、フランジ部14dが凹部32a1に嵌り込み、容器保持具32がろ過容器14を移動可能に保持する。
【0027】
なお、容器保持具32は、窪み部32aに替えて、ろ過容器14の横方向又は上方向から移動してフランジ部14dを把持する複数の把持部(グリッパー)を備えることもできる。把持部は図示しない制御部によって開閉が制御される。把持部は、ろ過容器14のフランジ部14dを把持してろ過容器14を移動することができる。
【0028】
第1の実施形態の縦横移動機構は、第1縦方向移動機構60と、第2縦方向移動機構70と、横方向移動機構40と、磁石移動機構50とから構成され、図示しない制御部(コンピュータ)によってこれらの移動が制御される。
【0029】
図7~9を用いて、溶液採取装置100の動作を説明する。図7(a)に示すように、ろ過容器保管容器12にろ過容器14が収容され、処理容器16に夾雑物を含む生体関連物質の溶液が収容された状態で、上部構造30がカートリッジ10の上方に位置している。この状態で、ステップS1において、第2縦方向移動機構70のシリンダ部34aを伸張することにより、容器保持具32及び保持具支持部34のみが分注ノズル33の下端と同じ位置又はそれより下方に下降する。これによって、ろ過容器14を容器保持具32がピックアップする際に、分注ノズル33が邪魔にならない。
【0030】
ステップS2で、上部基部31を第1縦方向移動機構60により下降させて、容器保持具32の窪み部32aと、ろ過容器14のフランジ部14とがx方向で対向する状態とする。ステップS3で、横方向移動機構が上部構造30をx方向に移動して、窪み部32aの凹部32a1に、ろ過容器14のフランジ部14aを係合させると、図7(b)の状態となる。
【0031】
図7(b)の状態から、ステップS4で第1縦方向移動機構60が上部基部31を上昇させると、ろ過容器14全体がろ過容器保管容器12から引き出されて、図7(c)の状態となる。図7(c)の状態から、ステップS5で、横方向移動機構40が上部構造30をx方向に移動して、ろ過容器14を処理容器16の上方に配置すると、図8(d)の状態となる。
【0032】
図8(d)の状態から、ステップS6で第1縦方向移動機構60が上部基部31を下降させると、ろ過容器14が処理容器16内に収容されて、図8(e)の状態を経て図8(f)の状態となる。図8(f)の状態で、十分に夾雑物を押圧することにより、夾雑物のろ過及び/又は破砕が促進される。なお、ステップS8で、図8(e)の状態と図8(f)の状態とを繰り返すことにより、ろ過容器16内にある夾雑物を含む生体関連物質の溶液が攪拌されて、夾雑物がろ過又はろ過及び破砕され、生体関連物質の溶解が促進される。好ましくは、ステップS8で図8(f)の状態と図8(e)の状態とを繰り返すことにより、夾雑物をろ過底部14bのフィルター(メッシュ又は網の目)を用いて、一定の大きさの夾雑物をろ過し、及び/又は一定の大きさの夾雑物に破砕し、溶解を促進することもできる。
【0033】
図8(f)の状態から、ステップS9で、横方向移動機構40が上部構造30をx方向に移動すると、ろ過容器14は処理容器16に収容されてx方向に移動できないため、ろ過容器14が容器保持具32から分離された状態となる。この状態で、処理容器16に収容されたろ過容器14内に、夾雑物がろ過された生体関連物質の溶液が収容されている。
【0034】
ステップS9の後、図9に示すように、ステップS10で、分注ノズル33は、分注チップ40を装着した状態で、処理容器16内に収容されたろ過容器14内に分注チップ40をz方向から挿入する。ろ過容器14にあるろ過された生体関連物質の溶液は、分注チップ40に吸引されて、前処理19に移動され、前処理が実行された後、PCR容器15に移動されてPCR反応が実行される。
【0035】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る溶液採取装置は、容器保持具32、ろ過容器14、及び処理容器16の一部が第1の実施形態とは相違する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する構造のみを説明する。第2の実施形態の容器保持具32は、図10の窪み部32aの開放端から横方向(x方向)に突出する突出片32cを備えている。突出片32cは、ろ過容器14のフランジ14dを収容する凹部32a1より上側から横方向に延在する。第2の実施形態のろ過容器14は、平坦な上面開口14aの周囲にフランジ部14dが形成されている。第2の実施形態の処理容器16は、開口16a側の大径部16bと、大径部16bより直径が小さい底部側の小径部16cと、大径部16bから小径部16cに向かって直径が徐々に小さくなるテーパー部16dとを備えている。これによって、ろ過容器14を処理容器16に対してスムーズに収容することができる。
【0036】
本発明の第2の実施形態の溶液採取装置100は、図7(a)のステップS2とS3の間に、複数のろ過容器14の上端揃えステップを実行する。上端揃えステップにおいて、図11(a)に示すように、容器保持具32の突出片32cがろ過容器14の上面を第2縦方向移動機構70で押し下げることにより、図3のような状態でy方向に一列に配置された複数のろ過容器14の上端位置を揃えることができる。予めろ過容器14の上端位置を揃えることにより、ステップ3における、ろ過容器14のフランジ部14dと容器保持具32の凹部32a1とのx方向からの係合(図11(b))をスムーズに実行することができる。
【0037】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る溶液採取装置は、ろ過容器14の一部が第2の実施形態のろ過容器14とは相違する。第3の実施形態において、第2の実施形態と相違する構造のみを説明する。第3の実施形態のろ過容器14は、図12~14に示すように、弾性材料製(例えばシリコーンゴム製)の夾雑物破砕体17をろ過底部14bの下側に備える。
【0038】
夾雑物破砕体17は、筒状であり、少なくとも1つの略X状の開口部17aと、前記開口部17aの周囲に突出する少なくとも1つの突出部17bとから構成される。図8のステップS8の動作の際、夾雑物破砕体17は、図15(a)の伸張状態と、図15(b)の圧縮状態とを交互に繰り返すことにより、夾雑物破砕体17の内部空間Sに位置する夾雑物を効率良く破砕することができる。
【0039】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る係る溶液採取装置は、容器保持具32の一部が第2の実施形態の容器保持具32とは相違する。第4の実施形態において、第2の実施形態と相違する構造のみを説明する。第2の実施形態の容器保持具32は、図16に示すように、磁石ユニット(磁石体)36を一体として備えると共に、分注ノズル33に装着された分注チップ40の側面が磁石ユニット36の側面への接近を可能とするためのスロット(溝部)32dが形成されている。
【符号の説明】
【0040】
10 溶液採取カートリッジ
12 ろ過容器保管容器
14 ろ過容器
16 処理容器
19 前処理ウェル
30 上部構造
32 容器保持具
34 保持具支持部
33 分注ノズル
図1
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