(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151295
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】顕微鏡用対物レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 21/02 20060101AFI20241017BHJP
G02B 21/00 20060101ALN20241017BHJP
【FI】
G02B21/02
G02B21/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221330
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】202310383092.5
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520128543
【氏名又は名称】エーエーシー オプティクス (チャンジョウ)カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】潘 世▲チー▼
【テーマコード(参考)】
2H052
2H087
【Fターム(参考)】
2H052AB07
2H087KA09
2H087LA01
2H087PA05
2H087PA17
2H087PB05
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA14
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA34
(57)【要約】
【課題】本発明は光学レンズ分野に関し、特に顕微鏡などの装置に適用される顕微鏡用対物レンズに関する。
【解決手段】前記顕微鏡用対物レンズは、射出瞳から物体側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズとによって構成され、顕微鏡用対物レンズの焦点距離をf、第1レンズの焦点距離をf1、第2レンズの焦点距離をf2、第3レンズの焦点距離をf3、顕微鏡用対物レンズの物体面から前記第5レンズの物体側面までの軸上距離をWD、開口数をNA、光学長をTTLとしたときに、条件式0.68≦f3/f≦2.00、-2.20≦f2/f1≦-1.40、0.15≦WD/TTL≦0.35、6.00≦f*NA≦9.00を満足する。本発明の顕微対物レンズは、低歪み、1.5倍の拡大倍率、長作動距離の特性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡用対物レンズであって、
前記顕微鏡用対物レンズは、射出瞳から物体側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズとによって構成され、
前記顕微鏡用対物レンズの焦点距離をf、前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2、前記第3レンズの焦点距離をf3、前記顕微鏡用対物レンズの物体面から前記第5レンズの物体側面までの軸上距離をWD、前記顕微鏡用対物レンズの開口数をNA、前記顕微鏡用対物レンズの光学長をTTLとしたときに、以下の条件式(1)~(4)を満足することを特徴とする顕微鏡用対物レンズ。
0.68≦f3/f≦2.00 (1)
-2.20≦f2/f1≦-1.40 (2)
0.15≦WD/TTL≦0.35 (3)
6.00≦f*NA≦9.00 (4)
【請求項2】
前記第1レンズのアッベ数をv1、前記第2レンズのアッベ数をv2としたときに、以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
35.00≦v1-v2 (5)
【請求項3】
前記第5レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR9、前記第5レンズの物体側面の中心曲率半径をR10としたときに、以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
-5.00≦R10/R9≦-1.50 (6)
【請求項4】
前記第1レンズは、射出瞳面が近軸において凸面であり、前記第1レンズは、物体側面が近軸において凸面であり、
前記第1レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR1、前記第1レンズの物体側面の中心曲率半径をR2、前記第1レンズの軸上厚みをd1としたときに、以下の条件式(7)~(9)を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
0.08≦f1/f≦0.29 (7)
-0.44≦(R1+R2)/(R1-R2)≦-0.13 (8)
0.02≦d1/TTL≦0.11 (9)
【請求項5】
前記第2レンズは、射出瞳面が近軸において凹面であり、前記第2レンズは、物体側面が近軸において凸面であり、
前記第2レンズの軸上厚みをd3、前記第2レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR3、前記第2レンズの物体側面の中心曲率半径をR4、前記第2レンズの軸上厚みをd3としたときに、以下の条件式(10)~(12)を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
-0.74≦f2/f≦-0.22 (10)
-3.86≦(R3+R4)/(R3-R4)≦-0.71 (11)
0.01≦d3/TTL≦0.12 (12)
【請求項6】
前記第3レンズは、射出瞳面が近軸において凹面であり、前記第3レンズは、物体側面が近軸において凸面であり、
前記第3レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR5、前記第3レンズの物体側面の中心曲率半径をR6、前記第3レンズの軸上厚みをd5としたときに、以下の条件式(13)~(14)を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
1.25≦(R5+R6)/(R5-R6)≦20.05 (13)
0.00≦d5/TTL≦0.02 (14)
【請求項7】
前記第4レンズの焦点距離をf4、前記第4レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR7、前記第4レンズの物体側面の中心曲率半径をR8、前記第4レンズの軸上厚みをd7としたときに、以下の条件式(15)~(17)を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
-0.37≦f4/f≦-0.09 (15)
-6.00≦(R7+R8)/(R7-R8)≦-0.65 (16)
0.01≦d7/TTL≦0.12 (17)
【請求項8】
前記第5レンズは、射出瞳面が近軸において凸面であり、前記第5レンズは、物体側面が近軸において凸面であり、
前記第5レンズの焦点距離をf5、前記第5レンズの軸上厚みをd9としたときに、以下の条件式(18)~(19)を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
0.21≦f5/f≦1.09 (18)
0.01≦d9/TTL≦0.12 (19)
【請求項9】
前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズは、いずれもガラス製であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズの分野に関し、特に顕微鏡などの装置に適用される顕微鏡用対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡レンズに対するニーズがますます高まっているが、一般的な顕微鏡レンズは、光学構造の制約により、その顕微鏡の視野範囲内に歪曲収差が発生する一方、顕微鏡レンズは、複数枚のレンズで構成されるため、その長さが不可避的に影響を受け、長型構造の顕微鏡レンズもその作動距離が短くなり、拡大倍率も作動距離による影響を受け、操作者の使用に不利である。
【0003】
技術の発展及びユーザの多様なニーズの増加に伴い、科学研究の顕微鏡レンズの観察品質に対する要求が高くなってきており、優れた光学特性、低歪み、高倍率、長作動距離という特性を有する顕微鏡レンズが強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術課題は、高結像性能を得るとともに、低歪み、長作動距離の要求を満足することができる顕微鏡用対物レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術課題を解決するために、本発明は、顕微鏡用対物レンズを提供し、前記顕微鏡用対物レンズは、射出瞳から物体側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズとによって構成され、
前記顕微鏡用対物レンズの焦点距離をf、前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2、前記第3レンズの焦点距離をf3、前記顕微鏡用対物レンズの物体面から前記第5レンズの物体側面までの軸上距離をWD、前記顕微鏡用対物レンズの開口数をNA、前記顕微鏡用対物レンズの光学長をTTLとしたときに、以下の条件式(1)~(4)を満足する。
0.68≦f3/f≦2.00 (1)
-2.20≦f2/f1≦-1.40 (2)
0.15≦WD/TTL≦0.35 (3)
6.00≦f*NA≦9.00 (4)
【0006】
好ましくは、前記第1レンズのアッベ数をv1、前記第2レンズのアッベ数をv2としたときに、以下の条件式(5)を満足する。
35.00≦v1-v2 (5)
【0007】
好ましくは、前記第5レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR9、前記第5レンズの物体側面の中心曲率半径をR10としたときに、以下の条件式(6)を満足する。
-5.00≦R10/R9≦-1.50 (6)
【0008】
好ましくは、前記第1レンズは、射出瞳面が近軸において凸面であり、前記第1レンズは、物体側面が近軸において凸面であり、
前記第1レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR1、前記第1レンズの物体側面の中心曲率半径をR2、前記第1レンズの軸上厚みをd1としたときに、以下の条件式(7)~(9)を満足する。
0.08≦f1/f≦0.29 (7)
-0.44≦(R1+R2)/(R1-R2)≦-0.13 (8)
0.02≦d1/TTL≦0.11 (9)
【0009】
好ましくは、前記第2レンズは、射出瞳面が近軸において凹面であり、前記第2レンズは、物体側面が近軸において凸面であり、
前記第2レンズの軸上厚みをd3、前記第2レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR3、前記第2レンズの物体側面の中心曲率半径をR4、前記第2レンズの軸上厚みをd3としたときに、以下の条件式(10)~(12)を満足する。
-0.74≦f2/f≦-0.22 (10)
-3.86≦(R3+R4)/(R3-R4)≦-0.71 (11)
0.01≦d3/TTL≦0.12 (12)
【0010】
好ましくは、前記第3レンズは、射出瞳面が近軸において凹面であり、前記第3レンズは、物体側面が近軸において凸面であり、
前記第3レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR5、前記第3レンズの物体側面の中心曲率半径をR6、前記第3レンズの軸上厚みをd5としたときに、以下の条件式(13)~(14)を満足する。
1.25≦(R5+R6)/(R5-R6)≦20.05 (13)
0.00≦d5/TTL≦0.02 (14)
【0011】
好ましくは、前記第4レンズの焦点距離をf4、前記第4レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR7、前記第4レンズの物体側面の中心曲率半径をR8、前記第4レンズの軸上厚みをd7としたときに、以下の条件式(15)~(17)を満足する。
-0.37≦f4/f≦-0.09 (15)
-6.00≦(R7+R8)/(R7-R8)≦-0.65 (16)
0.01≦d7/TTL≦0.12 (17)
【0012】
好ましくは、前記第5レンズは、射出瞳面が近軸において凸面であり、前記第5レンズは、物体側面が近軸において凸面であり、
前記第5レンズの焦点距離をf5、前記第5レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR9、前記第5レンズの物体側面の中心曲率半径をR10、前記第5レンズの軸上厚みをd9としたときに、以下の条件式(18)~(20)を満足する。
0.21≦f5/f≦1.09 (18)
-1.33≦(R9+R10)/(R9-R10)≦-0.13 (20)
0.01≦d9/TTL≦0.12 (19)
【0013】
好ましくは、前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズのうちの少なくとも1つは、ガラス製である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。本発明に係る顕微鏡用対物レンズは、優れた光学性能を有し、且つ低歪み、1.5倍の拡大倍率、長作動距離の特性を有し、特に光学顕微鏡用対物レンズに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る顕微鏡用対物レンズの構造を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す顕微鏡用対物レンズの倍率色収差を示す模式図である。
【
図3】
図1に示す顕微鏡用対物レンズの軸上色収差を示す模式図である。
【
図4】
図1に示す顕微鏡用対物レンズの像面湾曲及び歪曲収差を示す模式図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る顕微鏡用対物レンズの構造を示す模式図である。
【
図6】
図5に示す顕微鏡用対物レンズの倍率色収差を示す模式図である。
【
図7】
図5に示す顕微鏡用対物レンズの軸上色収差を示す模式図である。
【
図8】
図5に示す顕微鏡用対物レンズの像面湾曲及び歪曲収差を示す模式図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る顕微鏡用対物レンズの構造を示す模式図である。
【
図10】
図9に示す顕微鏡用対物レンズの倍率色収差を示す模式図である
【
図11】
図9に示す顕微鏡用対物レンズの軸上色収差を示す模式図である。
【
図12】
図9に示す顕微鏡用対物レンズの像面湾曲及び歪曲収差を示す模式図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る顕微鏡用対物レンズの構造を示す模式図である。
【
図14】
図13に示す顕微鏡用対物レンズの倍率色収差を示す模式図である。
【
図15】
図13に示す顕微鏡用対物レンズの軸上色収差を示す模式図である。
【
図16】
図13に示す顕微鏡用対物レンズの像面湾曲及び歪曲収差を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例における技術案を明確で、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は、本発明の一部の実施例だけであり、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに得ることができる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0017】
(第1実施形態)
図面に示すように、本発明は、顕微鏡用対物レンズを提供する。
図1に示すのは、本発明の第1実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ10であり、当該顕微鏡用対物レンズ10は、5枚のレンズによって構成される。具体的には、前記顕微鏡用対物レンズ10は、射出瞳から物体側へ順に、絞りSTと、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5と、物体面OBJによって構成される。
【0018】
全体の顕微鏡用対物レンズ10の焦点距離をf、前記第3レンズL3の焦点距離をf3としたときに、条件式0.68≦f3/f≦2.00を満足する。第3レンズL3の焦点距離とシステム全体の焦点距離との比を規定し、当該条件式は、収差を補正して結像品質を確保するとともに、光学システムの全長を効果的に抑えることができる。
【0019】
前記第1レンズL1の焦点距離をf1、前記第2レンズL2の焦点距離をf2としたときに、条件式-2.20≦f2/f1≦-1.40を満足する。第2レンズの焦点距離と第1レンズの焦点距離との比を規定する。システムの光焦点距離を合理的に配分することにより、システムが優れた結像品質及び低い感度を有する。
【0020】
前記顕微鏡用対物レンズ10の物体面OBJから前記第5レンズの物体側面までの軸上距離をWD、顕微鏡用対物レンズ10の光学長をTTLとしたときに、条件式0.15≦WD/TTL≦0.35を満足し、TTL光学長は、物体から絞りに最も近いレンズ面までの光軸上の距離である。条件式の下限値を下回ると、顕微鏡用対物レンズと物体間の距離が狭くなりすぎ、当該対物レンズを用いる顕微鏡の操作性に劣る。逆に、条件式の上限値を上回ると、レンズ部分が占めるスペースが不足するため、配置できるレンズの厚みと光路が制限され、球面収差と色収差の補正が困難となる。
【0021】
前記顕微鏡用対物レンズ10の開口数をNAとしたときに、条件式6.00≦f*NA≦9.00を満足する。当該条件式は、顕微鏡用対物レンズで観察できる視野と像の明るさに関する条件式であり、下限値を下回ると、必然的に顕微鏡用対物レンズの倍率が高くなり、観察できる視野が狭くなり、上限値を上回ると、顕微鏡用対物レンズが大きくなり、且つ顕微鏡用対物レンズの焦点距離を維持することが困難となる。
【0022】
前記第1レンズのアッベ数をv1、前記第2レンズのアッベ数をv2としたときに、条件式35.00≦v1-v2を満足し、条件式がこの範囲内では、システムの色収差を効果的に補正でき、中でも、|LC|≦5μmである。
【0023】
前記第5レンズの射出瞳面の中心曲率半径をR9、前記第5レンズの物体側面の中心曲率半径をR10としたときに、条件式-5.00≦R10/R9≦-1.50を満足する。第5レンズL5の形状を規定することにより、条件式の範囲内では、光線がレンズを通る偏向度合いを緩和可能であり、顕微鏡用対物レンズのレンズの非点収差と歪曲収差の補正に役立ち、歪曲収差が|Distortion|≦0.2%となり、ケラレの発生の可能性を低減させる。
【0024】
本発明の前記顕微鏡用対物レンズ10の焦点距離、各レンズの焦点距離、顕微鏡用対物レンズの光学長、作動距離、軸上厚み、開口数、各レンズのアッベ数及び中心曲率半径が上記条件式を満足する場合、顕微鏡用対物レンズ10に低歪み、1.5倍の拡大倍率、長作動距離の設計ニーズを満足させることができる。
【0025】
本実施形態において、好ましくは、第1レンズL1は、射出瞳面は近軸において凸面であり、第1レンズL1は、物体側面が近軸において凸面である。第1レンズL1は、正の屈折力を有する。
【0026】
第1レンズL1の焦点距離をf1としたときに、条件式0.08≦f1/f≦0.29を満足し、第1レンズL1の正の屈折力を規定する。下限の規定値を下回ると、レンズの極薄化には有利であるが、第1レンズL1の正の屈折力が強くなり過ぎ、収差の補正が困難となると共に、レンズの広角化にも不利になる。逆に、上限の規定値を超えると、第1レンズの正の屈折力が弱くなり過ぎ、レンズの極薄化が困難となる。好ましくは、0.14≦f1/f≦0.23である。
【0027】
第1レンズL1の射出瞳面の中心曲率半径をR1、第1レンズL1の物体側面の中心曲率半径をR2としたときに、条件式-0.44≦(R1+R2)/(R1-R2)≦-0.13を満足し、第1レンズの形状を合理的に制御することにより、第1レンズは、球面収差を効果的に補正することができる。好ましくは、-0.28≦(R1+R2)/(R1-R2)≦-0.17である。
【0028】
第1レンズL1の軸上厚みをd1としたときに、条件式0.02≦d1/TTL≦0.11を満足し、極薄化を実現することに役立つ。好ましくは、0.04≦d1/TTL≦0.09である。
【0029】
本実施形態において、好ましくは、第2レンズL2は、射出瞳面が近軸において凹面であり、第2レンズL2は、物体側面が近軸において凸面である。第2レンズL2は、負の屈折力を有する。
【0030】
第2レンズL2の焦点距離をf2としたときに、条件式-0.74≦f2/f≦-0.22を満足し、第2レンズL2の正パワーを合理的な範囲に制御することにより、光学システムの収差を補正することに役立つ。好ましくは、-0.47≦f2/f≦-0.27である。
【0031】
第2レンズL2の射出瞳面の中心曲率半径をR3、第2レンズL2の物体側面の中心曲率半径をR4としたときに、条件式-3.86≦(R3+R4)/(R3-R4)≦-0.71を満足し、第2レンズL2の形状を規定し、この範囲内では、レンズの極薄化・広角化への発展に伴い、軸上色収差の問題を補正することに役立つ。好ましくは、-2.41≦(R3+R4)/(R3-R4)≦-0.89である。
【0032】
第2レンズL2の軸上厚みをd3としたときに、条件式0.01≦d3/TTL≦0.12を満足し、極薄化を実現することに役立つ。好ましくは、0.01≦d3/TTL≦0.10である。
【0033】
本実施形態において、好ましくは、第3レンズL3は、射出瞳面が近軸において凹面であり、第3レンズL3は、物体側面が近軸において凸面である。第3レンズL3は、正の屈折力を有する。
【0034】
第3レンズL3の射出瞳面の中心曲率半径をR5、第3レンズL3の物体側面の中心曲率半径ををR6としたときに、条件式1.25≦(R5+R6)/(R5-R6)≦20.05を満足し、第3レンズL3の形状を効果的に制御でき、第3レンズL3の成形に役立つと共に、第3レンズL3の表面の曲率が大きすぎることによる成形不良及び応力発生を回避することができる。好ましくは、1.99≦(R5+R6)/(R5-R6)≦16.04である。
【0035】
第3レンズL3の軸上厚みをd5としたときに、条件式0.00≦d5/TTL≦0.02を満足し、極薄化を実現することに役立つ。好ましくは、0.01≦d5/TTL≦0.02である。
【0036】
本実施形態において、第4レンズL4は、射出瞳面が近軸において凹面であり、第4レンズL4は、物体側面が近軸において凹面である。第4レンズL4は、負の屈折力を有する。他の選択可能な実施形態において、第4レンズL4の射出瞳面及び物体側面は、他の凹、凸の分布形態に設置されてもよい。
【0037】
第4レンズL4の焦点距離をf4としたときに、条件式-0.37≦f4/f≦-0.09を満足し、パワーの合理的な配分により、システムが優れた結像品質及び低い感度を有する。好ましくは、-0.23≦f4/f≦-0.11である。
【0038】
第4レンズL4の射出瞳面の中心曲率半径をR7、第4レンズL4の物体側面の中心曲率半径をR8としたときに、条件式-6.00≦(R7+R8)/(R7-R8)≦-0.65を満足し、この条件式は第4レンズL4の形状を規定し、この範囲内では、レンズの極薄化・広角化への発展に伴い、軸外画角の収差等の補正に役立つ。好ましくは、-3.75≦(R7+R8)/(R7-R8)≦-0.81である。
【0039】
第4レンズL4の軸上厚みをd7としたときに、条件式0.01≦d7/TTL≦0.12を満足し、第4レンズL4の軸上厚みと顕微鏡用対物レンズ10の光学長TTLとの比を規定し、極薄化を実現することに役立つ。好ましくは、0.01≦d7/TTL≦0.10である。
【0040】
本実施形態において、好ましくは、第5レンズL5は、射出瞳面が近軸において凸面であり、第5レンズL5は、物体側面が近軸において凸面である。第5レンズL5は、正の屈折力を有する。
【0041】
第5レンズL5の焦点距離をf5としたときに、条件式0.21≦f5/f≦1.09を満足し、第5レンズL5を限定することは、顕微鏡レンズの光線角度を効果的に緩やかにし、公差感度を低減することができる。好ましくは、0.34≦f5/f≦0.87である。
【0042】
第5レンズL5の射出瞳面の中心曲率半径をR9、第5レンズL5の物体側面の中心曲率半径をR10としたときに、条件式-1.33≦(R9+R10)/(R9-R10)≦-0.13を満足し、この条件式は第5レンズL5の形状を規定し、条件式の範囲内では、レンズの極薄化・広角化への発展に伴い、軸外画角の収差等の補正に役立つ。好ましくは、-0.83≦(R9+R10)/(R9-R10)≦-0.17である。
【0043】
第5レンズL5の軸上厚みをd9としたときに、条件式0.01≦d9/TTL≦0.12を満足し、極薄化を実現することに役立つ。好ましくは、0.02≦d9/TTL≦0.10である。
【0044】
本実施形態において、顕微鏡用対物レンズ10の光学長TTLは、136.25mm以下であり、これによって極薄化を実現することに役立つ。
【0045】
本実施形態において、顕微鏡用対物レンズ10の絞りF値は、12.83以下である。結像性能に優れる。
【0046】
本実施形態において、前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズは、いずれもガラス製である。
【0047】
以下、本発明の顕微鏡用対物レンズ10について、実施例を用いて説明する。各実施例に記載された記号は以下のことを示す。焦点距離、軸上距離、中心曲率半径、軸上厚み位置の単位は、mmである。
【0048】
TTL:光学長(第1レンズL1の射出瞳面から物体面OBJまでの軸上距離)であり、単位がmmである。
【0049】
具体的な実施形態を以下に示す。
【0050】
表1は、本発明の第1実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ10の設計データを示す。
【0051】
【0052】
但し、各記号の意味は、下記のようになる。
ST:絞り
R:光学面の中心での中心曲率半径
R1:第1レンズL1の射出瞳面の中心曲率半径
R2:第1レンズL1の物体側面の中心曲率半径
R3:第2レンズL2の射出瞳面の中心曲率半径
R4:第2レンズL2の物体側面の中心曲率半径
R5:第3レンズL3の射出瞳面の中心曲率半径
R6:第3レンズL3の物体側面の中心曲率半径
R7:第4レンズL4の射出瞳面の中心曲率半径
R8:第4レンズL4の物体側面の中心曲率半径
R9:第5レンズL5の射出瞳面の中心曲率半径
R10:第5レンズL5の物体側面の中心曲率半径
d:レンズの軸上厚み、レンズの間の軸上距離
dST:絞りSTの軸上厚み
d1:第1レンズL1の軸上厚み
d2:第1レンズL1の物体側面から第2レンズL2の射出瞳面までの軸上距離
d3:第2レンズL2の軸上厚み
d4:第2レンズL2の物体側面から第3レンズL3の射出瞳面までの軸上距離
d5:第3レンズL3の軸上厚み
d6:第3レンズL3の物体側面から第4レンズL4の射出瞳面までの軸上距離
d7:第4レンズL4の軸上厚み
d8:第4レンズL4の物体側面から第5レンズL5の射出瞳面までの軸上距離
d9:第5レンズL5の軸上厚み
d10:第5レンズL5の物体側面から物体面までの軸上距離
Nd:d線の屈折率
n1:第1レンズL1のd線の屈折率
n2:第2レンズL2のd線の屈折率
n3:第3レンズL3のd線の屈折率
n4:第4レンズL4のd線の屈折率
n5:第5レンズL5のd線の屈折率
vd:アッベ数
v1:第1レンズL1のアッベ数
v2:第2レンズL2のアッベ数
v3:第3レンズL3のアッベ数
v4:第4レンズL4のアッベ数
v5:第5レンズL5のアッベ数
【0053】
図2、
図3は、それぞれ波長486.1nm、587.6nm、656.3nm、520.0nm、435.0nm、700.0nmの光が第1実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ10を通過した後の倍率色収差及び軸上色収差を示す模式図である。
図4は、波長587.6nmの光が第1実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ10を通過した後の像面湾曲及び歪曲収差を示す模式図であり、
図4の像面湾曲Sは、サジタル方向の像面湾曲であり、Tは、タンジェンシャル方向の像面湾曲である。
【0054】
後述される表5は、各実施例1、2、3、4における各種数値と条件式で規定されたパラメータに対応する値を示している。
【0055】
表5に示すように、第1実施形態は、各条件式を満足する。
【0056】
本実施形態において、前記顕微鏡用対物レンズの入射瞳径ENPDは、16.100mmであり、全視野像高IHは、10.500mmであり、対角線方向の画角FOVは、9.02°であり、開口数NAは、0.06000mmであり、作動距離は、長く、その軸上、軸外色収差は、十分に補正され、且つ優れた光学特性を有する。
【0057】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態と基本的に同じであり、記号の意味も第1実施形態と同様であるため、相違点は、第2実施形態において、第4レンズL4は、射出瞳面が近軸において凹面であり、第4レンズL4は、物体側面が近軸において凸面であることである。当該第2実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ20の構造形態を
図5に示すため、相違点のみを以下に示す。
【0058】
表2は、本発明の第2実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ20の設計データを示す。
【0059】
【0060】
図6、
図7は、それぞれ波長486.1nm、587.6nm、656.3nm、520.0nm、435.0nm、700.0nmの光が第2実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ20を通過した後の倍率色収差及び軸上色収差を示す模式図である。
図8は、波長587.6nmの光が第2実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ20を通過した後の像面湾曲及び歪曲収差を示す模式図であり、
図8の像面湾曲Sは、サジタル方向の像面湾曲であり、Tは、タンジェンシャル方向の像面湾曲である。
【0061】
表5に示すように、第2実施形態は、各条件式を満足する。
【0062】
本実施形態において、前記顕微鏡用対物レンズの入射瞳径は、12.000mmであり、全視野像高は、10.500mmであり、対角線方向の画角は、8.02°であり、開口数NAは、0.04000mmであり、作動距離は、長く、その軸上、軸外色収差は、十分に補正され、且つ優れた光学特性を有する。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1実施形態と基本的に同じであり、記号の意味も第1実施形態と同様であるため、相違点は、第3実施形態において、第4レンズL4は、射出瞳面が近軸において凹面であり、第4レンズL4は、物体側面が近軸において凸面であることである。当該第3実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ30の構造形態を
図9に示すため、相違点のみを以下に示す。
【0064】
表3は、本発明の第3実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ30の設計データを示す。
【0065】
【0066】
図10、
図11は、それぞれ波長486.1nm、587.6nm、656.3nm、520.0nm、435.0nm、700.0nmの光が第3実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ30を通過した後の倍率色収差及び軸上色収差を示す模式図である。
図12は、波長587.6nmの光が第3実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ30を通過した後の像面湾曲及び歪曲収差を示す模式図であり、
図12の像面湾曲Sは、サジタル方向の像面湾曲であり、Tは、タンジェンシャル方向の像面湾曲である。
【0067】
表5に示すように、第3実施形態は、各条件式を満足する。
【0068】
本実施形態において、前記顕微鏡用対物レンズの入射瞳径は、12.000mmであり、全視野像高は、10.500mmであり、対角線方向の画角は、8.02°であり、作動距離は、長く、開口数NAは、0.06800mmであり、その軸上、軸外色収差は、十分に補正され、且つ優れた光学特性を有する。
【0069】
(第4実施形態)
第4実施形態は、第1実施形態と基本的に同じであり、記号の意味も第1実施形態と同様であるため、相違点は、第4実施形態において、第4レンズL4は、射出瞳面が近軸において凹面であり、第4レンズL4は、物体側面が近軸において凸面であることである。当該第4実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ40の構造形式を
図13に示すため、相違点のみを以下に示す。
【0070】
表4は、本発明の第4実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ40の設計データを示す。
【0071】
【0072】
図14、
図15は、それぞれ波長486.1nm、587.6nm、656.3nm、520.0nm、435.0nm、700.0nmの光が第4実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ40を通過した後の倍率色収差及び軸上色収差を示す模式図である。
図16は、波長587.6nmの光が第4実施形態に係る顕微鏡用対物レンズ40を通過した後の像面湾曲及び歪曲収差を示す模式図であり、
図16の像面湾曲Sは、サジタル方向の像面湾曲であり、Tは、タンジェンシャル方向の像面湾曲である。
【0073】
表5に示すように、第4実施形態は、各条件式を満足する。
【0074】
本実施形態において、前記顕微鏡用対物レンズの入射瞳径は、18.000mmであり、全視野像高は、10.500mmであり、対角線方向の画角は、8.51°であり、作動距離は、長く、開口数NAは、0.06366mmであり、その軸上、軸外色収差は、十分に補正され、且つ優れた光学特性を有する。
【0075】
【0076】
当業者であれば分かるように、上記各実施形態が本発明を実現するための具体的な実施形態であり、実際の応用において、本発明の要旨と範囲から逸脱しない限り、形式及び詳細に対する各種の変更は可能である。