(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151299
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】潤滑基油の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10G 71/00 20060101AFI20241017BHJP
C10G 45/44 20060101ALI20241017BHJP
C10G 45/32 20060101ALI20241017BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20241017BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20241017BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20241017BHJP
【FI】
C10G71/00
C10G45/44
C10G45/32
C10M101/02
C10N20:02
C10N40:25
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009045
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2023-0047782
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】509349451
【氏名又は名称】エスケー エンムーブ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】カン・ミン ゼ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ユン ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ド ワン
(72)【発明者】
【氏名】ノ・キュン ショック
【テーマコード(参考)】
4H104
4H129
【Fターム(参考)】
4H104DA02A
4H104LA01
4H104PA41
4H129AA02
4H129CA18
4H129MB19B
4H129MB20A
4H129NA12
4H129NA14
4H129NA15
4H129NA17
4H129NA32
4H129NA35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】潤滑基油を製造する方法を提供する。
【解決手段】(a)フィードストリームを提供するステップと、(b)前記フィードストリームを、第1の分画ストリーム及び第2の分画ストリームを含む少なくとも2つの分画ストリームに分離させるステップと、(c)前記ステップ(b)の前の前記フィードストリーム、又は前記ステップ(b)の後の前記少なくとも2種の分画ストリームを、第1の水素化工程に導入するステップと、(d)前記ステップ(b)の前の前記フィードストリーム、又は前記ステップ(b)の後の前記少なくとも2種の分画ストリームを、第2の水素化工程に導入するステップと、を含み、前記ステップ(b)乃至(d)の後、少なくとも2種の分画ストリームは、第1の生成物ストリーム及び第2の生成物ストリームを含む少なくとも2種の生成物ストリームを生成し、潤滑基油を製造する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑基油を製造する方法であって、
(a)フィードストリームを提供するステップと、
(b)前記フィードストリームを、第1の分画ストリーム及び第2の分画ストリームを含む少なくとも2種の分画ストリームに分離させるステップと、
(c)前記ステップ(b)の前の前記フィードストリーム、又は前記ステップ(b)の後の前記少なくとも2種の分画ストリームを、第1の水素化工程に導入するステップと、
(d)前記ステップ(b)の前の前記フィードストリーム、又は前記ステップ(b)の後の前記少なくとも2種の分画ストリームを、第2の水素化工程に導入するステップと、を含み、
前記ステップ(b)乃至(d)の後、前記少なくとも2種の分画ストリームは、第1の生成物ストリーム及び第2の生成物ストリームを含む少なくとも2種の生成物ストリームを生成し、前記第1の生成物ストリームは、前記第2の生成物ストリームよりも高い粘度指数(VI)を有する、潤滑基油を製造する方法。
【請求項2】
前記フィードストリームは、減圧ガスオイル(VGO)、脱アスファルト化オイル(DAO)、重質コーカーガス油(HCGO)、未転換油(UCO)、その蒸留物、予め製造された潤滑基油、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の潤滑基油を製造する方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、溶媒抽出、吸着、又はこれらの組み合わせによって行われる、請求項1に記載の潤滑基油を製造する方法。
【請求項4】
前記第1の水素化工程は、水素化処理(HDT)、水素化分解(HCK)、及びこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の潤滑基油を製造する方法。
【請求項5】
前記第2の水素化工程は、水添脱ワックス(HDW)、水素化仕上げ(HDF)、及びこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の潤滑基油を製造する方法。
【請求項6】
(e)前記フィードストリーム又は少なくとも2種の分画ストリームを分別蒸留するステップをさらに含む、請求項1に記載の潤滑基油を製造する方法。
【請求項7】
前記少なくとも2種の生成物ストリームの100℃での動粘度が2以上4cSt未満である場合、第1の生成物ストリームは115以上の粘度指数(VI)を有し、前記第1の生成物ストリームと第2の生成物ストリームとの粘度指数(VI)の差は、少なくとも5である、請求項1に記載の潤滑基油を製造する方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種の生成物ストリームの100℃での動粘度が4以上8cSt未満である場合、第1の生成物ストリームは130以上の粘度指数(VI)を有し、前記第1の生成物ストリームと第2の生成物ストリームとの粘度指数(VI)の差は、少なくとも5である、請求項1に記載の潤滑基油を製造する方法。
【請求項9】
100℃での動粘度が2以上4cSt未満であり、
115以上の粘度指数(VI)を有する、鉱油系潤滑基油。
【請求項10】
100℃での動粘度が4以上8cSt未満であり、
130以上の粘度指数(VI)を有する、鉱油系潤滑基油。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の鉱油系潤滑基油を含む、潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑基油を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑基油とは、潤滑油製品の原料となるものであって、一般に優れた潤滑基油は、高い粘度指数を有し、安定性(酸化、熱、UV等)に優れるうえ、揮発性が少ない特性を有する。アメリカ石油協会API(American Petroleum Institute)では、潤滑基油を品質によって下記表1のように分類している。
【0003】
【0004】
グループIからグループIVの順に、高品質の潤滑基油として扱われ、高品質の潤滑基油であるほど、硫黄及び窒素の含有量が少なく、粘度指数(VI)が高く、流動点が低く、CCS粘度が低く、Noackの揮発性が少ない傾向がある。また、高品質の潤滑基油であるほど、パラフィンの含有量が増加し、ナフテン及び芳香族の含有量が減少する傾向がある。
【0005】
一方、粘度指数(VI)は、潤滑基油の品質を評価する重要な物性の一つである。VIは、温度の変化による粘度の変化に関連する指数である。前記VIが高いほど、温度の変化による粘度の変化が小さい。そこで、高いVIを有する潤滑基油の場合、高温で粘度が相対的に高いためエンジンの保護に有利であり、低温で粘度が相対的に低いためエンジンポンプの駆動に有利であるという利点がある。このような理由から、高い粘度指数(VI)を有する潤滑基油は、より高品質の潤滑基油として評価される。
【0006】
環境規制による規格強化、エンジンオイルの低粘度化及び高級化などにより、不純物が多く、粘度指数(VI)の低いグループI及びIIの潤滑基油の需要が減少しており、グループIII以上の等級の潤滑基油に対する需要が増加している。このような延長線でグループIIIの潤滑基油よりも約5~10以上高い粘度指数(VI)を有する潤滑基油(以下、本開示ではグループIII+の潤滑基油ともいう)に対する市場の需要も増えている傾向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許第10-2458858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、従来の潤滑基油を製造するためのフィードから従来レベルの潤滑基油及びそれより優れた品質を有する潤滑基油を併産する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の観点(aspect)は、潤滑基油を製造する方法であって、(a)フィードストリームを提供するステップと、(b)前記フィードストリームを、第1の分画ストリーム及び第2の分画ストリームを含む少なくとも2種の分画ストリームに分離させるステップと、(c)前記ステップ(b)の前の前記フィードストリーム、又は前記ステップ(b)の後の前記少なくとも2種の分画ストリームを、第1の水素化工程に導入するステップと、(d)前記ステップ(b)の前の前記フィードストリーム、又は前記ステップ(b)の後の前記少なくとも2種の分画ストリームを、第2の水素化工程に導入するステップと、を含み、前記ステップ(b)乃至(d)の後、少なくとも2種の分画ストリームは、第1の生成物ストリーム及び第2の生成物ストリームを含む少なくとも2種の生成物ストリームを生成し、前記第1の生成物ストリームは、第2の生成物ストリームよりもさらに高い粘度指数(VI)を有する。
【0010】
一実施形態によれば、前記フィードストリームは、減圧ガスオイル(VGO)、脱アスファルト化オイル(DAO)、重質コーカーガス油(HCGO)、未転換油(UCO)、その蒸留物、予め製造された潤滑基油、又はこれらの組み合わせを含む。
【0011】
一実施形態によれば、前記ステップ(b)は、溶媒抽出、吸着、又はこれらの組み合わせによって行われる。
【0012】
一実施形態によれば、前記第1の水素化工程は、水素化処理(HDT)、水素化分解(HCK)、及びこれらの組み合わせを含む。
【0013】
一実施形態によれば、第2の水素化工程は、水添脱ワックス(HDW)、水素化仕上げ(HDF)、及びこれらの組み合わせを含む。
【0014】
一実施形態によれば、(e)前記フィードストリーム又は少なくとも2種の分画ストリームを分別蒸留するステップをさらに含む。
【0015】
一実施形態によれば、前記少なくとも2種の生成物ストリームの100℃での動粘度が2以上4cSt未満である場合、第1の生成物ストリームは115以上の粘度指数(VI)を有し、前記第1の生成物ストリームと第2の生成物ストリームとの粘度指数(VI)の差は少なくとも5である。
【0016】
一実施形態によれば、前記少なくとも2種の生成物ストリームの100℃での動粘度が4以上8cSt未満である場合、第1の生成物ストリームは130以上の粘度指数(VI)を有し、前記第1の生成物ストリームと第2の生成物ストリームとの粘度指数(VI)の差は少なくとも5である。
【0017】
本開示の第2の観点は、鉱油系潤滑基油であって、100℃での動粘度が2以上4cSt未満であり、115以上の粘度指数(VI)を有する。
【0018】
本開示の第3の観点は、鉱油系潤滑基油であって、100℃での動粘度が4以上8cSt未満であり、130以上の粘度指数(VI)を有する。
【0019】
本開示の第4の観点は、潤滑剤組成物であって、第2の観点又は第3の観点の鉱油系潤滑基油を含む。
【発明の効果】
【0020】
本開示は、従来の潤滑基油を製造するためのフィードから従来レベルの潤滑基油及びそれより優れた品質を有する潤滑基油を同時に製造する方法を提供する。これにより、高品質の潤滑基油を製造することが可能なフィード範囲の拡大が期待され、従来の高品質の潤滑基油の製造時に発生する副産物を低減することができ、フィードにかかる費用を低減することができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態による潤滑基油の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【
図2】実施形態による潤滑基油の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態による潤滑基油の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態による潤滑基油の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態による潤滑基油の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態による潤滑基油の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の目的、利点及び特徴は、添付図面に関連する以下の詳細な説明及び好適な実施例からさらに明らかになるが、本開示は必ずしもこれに限定されない。なお、本開示を説明するにあたり、関連する公知の技術についての具体的な説明が本開示の要旨を不要に不明確にするおそれがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0023】
本開示は、従来の潤滑基油を製造するためのフィードから従来レベルの潤滑基油及びそれより優れた品質を有する潤滑基油を同時に製造する方法を提供する。本開示で同時に製造される潤滑基油は、従来レベルのVIを有する潤滑基油及び従来レベルよりも高い粘度指数(VI)を有する潤滑基油であってもよい。
【0024】
一般に、グループIIIの潤滑基油よりも高品質の潤滑基油を製造するための方法は、大きく2つが知られている。これは、i)化学原料を用いて合成基油(グループIV)を製造するか、或いはii)パラフィン含有量の高い原油を出発物質として水素化反応処理によって製造する方法である。しかし、i)の場合は、鉱油系潤滑基油に比べて原料が高価であり、使用できる原料量が少なくて製造が非常に制限的である。また、ii)の場合は、フィードとして使用できるパラフィン含有量の高いフィードを入手することが難しいため、市場への大量供給が難しいという問題点がある。
【0025】
本開示は、前記i)及びii)とは別個の代案を提示する。本開示の方法は、フィードストリームを提供するステップを含む。前記フィードは、潤滑基油を製造するためのフィードであれば、特に制限されない。好ましくは、前記フィードは、グループIIIの潤滑基油を製造するために一般的に使用される公知のフィードであってもよい。本開示の一実施形態において、前記フィードストリームは、減圧ガスオイル(Vacuum Gas Oil、VGO)、脱アスファルト化オイル(Deasphalted Oil、DAO)、重質コーカーガス油(Heavy Coker Gas Oil、HCGO)、未変換油(Unconverted Oil、UCO)、これらの蒸留物、予め製造された潤滑基油、又はこれらの組み合わせを含むことができる。本開示において、「未変換油」とは、燃料油製造のための水素化分解工程に供給されたが、水素化分解反応が行われていない未反応オイルを指す。
【0026】
例示的に、前記フィードストリームは、次の性質を有することができる:80≦VI、S≦3wt%、N≦1100ppm、FBP(final boiling point)≦620℃。
【0027】
本開示の方法は、前記フィードストリームを少なくとも2種の分画ストリームに分離させるステップを含む。本開示において、前記分離は、沸点の差による留分の分離を意図しないことに留意すべきである。言い換えれば、前記分離ステップは、留分の分離目的の分別蒸留工程を含まない。また、本開示において、前記分離は、フィードストリーム中の分子の構造を転換させることなく分離する、いわゆる非反応性分離である。本開示の分離ステップは、フィードストリームを、パラフィンに富む(rich)分画ストリームとパラフィンに乏しい(poor)分画ストリームに分離する。前記少なくとも2種の分画ストリームは、第1の分画ストリーム及び第2の分画ストリームを含む。本開示において、第nの分画ストリームは、第n+1の分画ストリームよりもさらにパラフィンに富む分画ストリームである。
【0028】
本開示の一実施形態において、前記分離ステップは、溶媒抽出、吸着、又はこれらの組み合わせによって行われてもよい。分離技術として、溶媒抽出及び吸着だけでなく、膜分離、熱拡散などを考慮することができるが、分離の容易性及び第1の生成物ストリームの優れた収得率の観点から溶媒抽出又は吸着によって前記分離ステップが行われることが本開示において好ましい。
【0029】
前記溶媒抽出は、極性溶媒に対するフィードストリーム中の芳香族成分と非芳香族成分との溶解度の差を利用して、パラフィンに富む分画ストリームとパラフィンに乏しい分画ストリームを分離することができる。
【0030】
前記溶媒は、フィードストリーム中の成分と反応することなく、フィードストリームをパラフィン豊富度に応じて分離することができる極性溶媒であれば、特に限定されない。本開示の一実施形態において、前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、スルホラン(Sulfolane)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、フルフラール(Furfural)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、フェノール、アセトン、脂肪族ポリアミン(Aliphatic polyamines)、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0031】
本開示の一実施形態において、前記溶媒抽出は、約40~120℃の温度、大気圧乃至約10kg/cm2の圧力、及び1:1~12:1の溶媒対フィードストリームの体積比下で行われてもよい。必要に応じて、分離された分画ストリームのそれぞれで使用された溶媒を除去する追加工程が行われてもよい。より具体的には、前記溶媒抽出の温度範囲は、約40~120℃、好ましくは約50~100℃であってもよい。また、前記溶媒対フィードストリームの体積比は1:1~12:1、好ましくは2:1~9:1であってもよい。
【0032】
前記吸着は、吸着剤をフィードストリームに注入することにより行われ、吸着剤は、分子の極性に応じてフィードストリーム内の分子を選択的に吸着することができる。前記吸着剤も、フィードストリーム中の成分と反応することなく、フィードストリームをパラフィン豊富度によって分離することが可能な吸着剤であれば、特に限定されない。本開示の一実施形態において、前記吸着剤は、活性炭、アルミナ、粘土、シリカアルミナ、ジルコニア、EU-2、ZSM-5、MCM-4、Molecular Sieve 13X、又はこれらの組み合わせを含むことができる。前記吸着剤は、約300m2/g以上の表面積を有する顆粒(granular)状又は粉末(powder)状であってもよい。
【0033】
本開示の一実施形態において、前記吸着は、常温~約120℃の温度で行われてもよい。フィードストリームのうち、吸着剤によって吸着されなかった分画ストリームが第1の分画ストリームとなり、吸着剤によって吸着された分画ストリームが第2の分画ストリームとなる。第2の分画ストリームは、さらに吸着剤から分離される脱着工程をさらに行うことができる。本開示の一実施形態において、前記脱着は、少なくとも約200℃の温度で行われてもよい。前記温度は、好ましくは約200~500℃、より好ましくは約200~400℃であってもよい。
【0034】
本開示において、前記分離ステップは、1回行われて第1の分画ストリーム及び第2の分画ストリームのみを生成することができるが、必要に応じて、2回以上の多段階で行われてもよい。
【0035】
本開示の方法は、上述したフィードストリーム又は少なくとも2種の分画ストリームを第1の水素化工程(hydroprocessing)に導入するステップを含む。前記第1の水素化工程は、前述した分離ステップの前又は後に行われてもよい。第1の水素化工程が分離ステップの前に行われる場合、第1の水素化工程を経たフィードストリームが分離ステップに導入される。第1の水素化工程が分離ステップの後に行われる場合、分離ステップで生成された少なくとも2種の分画ストリームのそれぞれが独立して第1の水素化工程に導入される。
【0036】
本開示の一実施形態において、前記第1の水素化工程は、水素化処理(Hydrotreating、HDT)、水素化分解(Hydrocracking、HCK)、及びこれらの組み合わせを含むことができる。前記水素化処理及び水素化分解のそれぞれは、公知の工程条件下で行われてもよい。例えば、前記水素化処理及び水素化分解のそれぞれは、従来のグループIIIの潤滑基油製造過程に適用されるそれぞれの工程条件下で行われてもよい。さらに、第1の水素化工程として水素化処理及び水素化分解の両方が行われる場合、本開示の分離ステップは、これらの間で行われることもできる。
【0037】
本開示の一実施形態において、前記第1の水素化工程が分離ステップの前に行われる場合、第1の水素化工程の後に未変換油が追加ストリームとして供給されて第1の水素化工程を経たフィードストリームと混合されてもよい。このような混合されたストリームは、後述するフィードストリームと同様に扱われて後続の工程に導入されてもよい。
【0038】
本開示の方法は、上述したフィードストリーム又は少なくとも2種の分画ストリームを第2の水素化工程に導入するステップを含む。前記第2の水素化工程は、第1の水素化工程後に行われる。前記第2の水素化工程は、前述した分離ステップの前又は後に行われてもよい。第2の水素化工程が分離ステップの前に行われる場合、第2の水素化工程を経たフィードストリームが分離ステップに導入される。第2の水素化工程が分離ステップの後に行われる場合、分離ステップで生成された少なくとも2種の分画ストリームのそれぞれが独立して第2の水素化工程に導入される。最終生成物の品質及び収率の観点から、好ましくは、前記分離ステップは、第2の水素化工程の前段で行われてもよい。ここで、第2の水素化工程の前段は、第1の水素化工程の前段、及び第1の水素化工程の後段と第2の水素化工程の前段との間を全て含むことができる。
【0039】
本開示の一実施形態において、前記第2の水素化工程は、水添脱ワックス(Hydrodewaxing、HDW)、水素化仕上げ(Hydrofinishing、HDF)、及びこれらの組み合わせを含むことができる。前記水添脱ワックス及び水素化仕上げのそれぞれは、公知の工程条件下で行われてもよい。例えば、前記水添脱ワックス及び水素化仕上げのそれぞれは、従来のグループIII潤滑基油の製造過程に適用されるそれぞれの工程条件下で行われてもよい。さらに、第2の水素化工程として水添脱ワックス及び水素化仕上げの両方が行われる場合、本開示の分離ステップは、これらの間で行われてもよい。
【0040】
本開示の一実施形態において、前記第2の水素化工程が分離ステップの前に行われる場合、第2の水素化工程の後に、予め製造された潤滑基油が追加ストリームとして供給されて第2の水素化工程を経たフィードストリームと混合されてもよい。このような混合されたストリームは、上述した第2の水素化工程を経たフィードストリームと同様に扱われ、後続の分離ステップに導入されてもよい。本開示で予め製造された潤滑基油とは、本開示の製造方法とは別個の生産ラインによって製造された潤滑基油だけでなく、本開示の方法によって製造された第1の生成物ストリームを除いた残りの生成物ストリームの一部を含むことができる。例えば、前記予め製造された潤滑基油は、本開示の第2の生成物ストリームと同一の基油等級を有する予め製造された潤滑基油であってもよい。
【0041】
本開示の一実施形態において、前記方法は、第1の水素化工程の後段でフィードストリーム又は少なくとも2種の分画ストリームを分別蒸留(又は減圧蒸留(Vacuum distillation))するステップをさらに含むことができる。前記分別蒸留ステープは、第2の水素化工程及び分離ステップのそれぞれの前段又は後段で行われてもよい。前記分別蒸留ステップを介してフィードストリーム又は分画ストリームからそれぞれ蒸留フィードストリーム又は蒸留分画ストリームを得ることができる。必要に応じて、前記分別蒸留ステップを介してフィードストリーム又は分画ストリームのそれぞれから、沸点(又は動粘度)に応じて、複数の蒸留フィードストリーム又は複数の蒸留分画ストリームを得ることができる。
【0042】
ここで、前記蒸留フィードストリーム及び蒸留分画ストリームは、それぞれ、第1の水素化工程で反応が行われていない未反応分画ストリームを意味する。分別蒸留ステップによって得られる蒸留フィードストリーム及び蒸留分画ストリーム以外の残りの分画ストリームは、燃料油製造工程などの別途の後続工程に活用できる。一例として、前記残りの分画ストリームの沸点は、軽油の沸点(約310℃)以下であってもよい。
【0043】
本開示による潤滑基油の製造方法の様々な実施形態のフローチャートが
図1乃至
図6のそれぞれに示される。添付図面の実施形態は、説明及び参照のためのものであり、本開示の範囲が上記の図面によって限定されることを意図したものではないことに留意されたい。
【0044】
図1及び
図2を参照すると、フィードストリームは、まず分離ステップを経て第1の分画ストリーム及び第2の分画ストリームを含む少なくとも2種の分画ストリームに分離され、それぞれの分画ストリームは、順次第1の水素化工程及び第2の水素化工程を経て少なくとも2種の生成物ストリームを生成する。分別蒸留ステップは、VDU(Vacuum distilation unit)を介して第1の水素化工程の後段で行われることができ、第2の水素化工程の前段又は後段の両方ともで行われてもよい。
図2に示すように、分別蒸留ステップが第2の水素化工程の前段で行われる場合、第1の蒸留分画ストリームと第2の蒸留分画ストリームとを含む少なくとも2種の蒸留分画ストリームのそれぞれが第2の水素化工程のフィードとして導入されて少なくとも2種の生成物ストリームを生成することができる。
【0045】
図3及び
図4を参照すると、フィードストリームは、まず、第1の水素化工程を経た後、分離ステップを介して第1の分画ストリーム及び第2の分画ストリームを含む少なくとも2種の分画ストリームに分離される。その後、少なくとも2種の分画ストリームは、第2の水素化工程を経て少なくとも2種の生成物ストリームを生成する。
図3及び
図4に示すように、分別蒸留ステップは、第2の水素化工程の後段で行われてもよく、分離ステップの前段で行われてもよい。分別蒸留ステップが分離ステップ又は第2の水素化工程の前段で行われる場合、分離ステップ又は第2の水素化工程に導入されるフィードが蒸留フィードストリーム又は蒸留分画ストリームに変更されることは、特に言及しなくても、当業者であれば容易に認識可能であろう。
【0046】
図5及び
図6を参照すると、フィードストリームは、第1の水素化工程及び第2の水素化工程を経た後、分離ステップを介して第1の生成物ストリーム及び第2の生成物ストリームに分離されてもよい。ここでも、分別蒸留ステップが行われてもよく、第2の水素化工程の前段又は後段のいずれかで行われてもよい。
【0047】
図1乃至
図6を参照して説明したように、本開示の分離ステップは、第2の水素化工程の前段又は第2の水素化工程の後段で行われてもよい。ただし、最終的に得られる、潤滑基油の品質制御の観点から、前記分離ステップは、第2の水素化工程の前段で行われることが好ましい。ここで、第2の水素化工程の前段は、第1の水素化工程の前段、及び第1の水素化工程の後段と第2の水素化工程の前段との間を全て含むことができる。
【0048】
本開示の方法によって、第1の生成物ストリーム及び第2の生成物ストリームを含む少なくとも2種の生成物ストリームが生成される。第1の生成物ストリームは、第2の生成物ストリームよりもさらに高いVIを有することを特徴とする。本開示において、第nの生成物ストリームは、第n+1の生成物ストリームよりもさらに高い粘度指数(VI)を有する。
【0049】
図5及び
図6に示すように、第2の水素化工程の後段で分離ステップが行われる場合、少なくとも2種の分画ストリームのそれぞれが少なくとも2種の生成物ストリームであってもよい。また、
図3に示すように、第2の水素化工程の後段で分別蒸留ステップが行われる場合、少なくとも2種の蒸留分画ストリームのそれぞれが少なくとも2種の生成物ストリームであってもよい。
【0050】
本開示の一実施形態において、前記少なくとも2種の生成物ストリームの100℃での動粘度が約2以上4cSt未満である場合、第1の生成物ストリームは、約115~150、115~140、115~130、115~125、115~120など、約115以上の粘度指数(VI)を有することができ、前記第1の生成物ストリームと第2の生成物ストリームとの粘度指数(VI)の差は、約5~30、5~20、5~10、10~30、10~20など、少なくとも約5であることが好ましい。他の実施形態において、前記少なくとも2種の生成物ストリームの100℃での動粘度が約4以上8cSt未満である場合、第1の生成物ストリームは、約130~150、130~145、130~140など、約130以上の粘度指数(VI)を有することができ、前記第1の生成物ストリームと第2の生成物ストリームとの粘度指数(VI)の差は、約5~30、5~20、5~10、10~30、10~20など、少なくとも約5であることが好ましい。
【0051】
本開示の方法によって得られる第2の生成物ストリームは、分離ステップが行われていない従来の潤滑基油製造方法によって得られる生成物と同一の潤滑基油等級を有することができる。
【0052】
本開示の一実施形態において、全生成物ストリームに対する第1の生成物ストリームの含有量は、約10~90wt%、約10~70wt%、約10~50wt%、又は約10~30wt%など、少なくとも約10wt%であってもよい。好ましくは、全生成物ストリームに対する第1の生成物ストリームの含有量は、約15~90wt%、約15~70wt%、約15~50wt%、又は約15~30wt%など、少なくとも約15wt%であってもよい。より好ましくは、全生成物ストリームに対する第1の生成物ストリームの含有量は、約20~90wt%、約20~70wt%、約20~50wt%、又は約20~30wt%など、少なくとも約20wt%であってもよい。さらに好ましくは、全生成物ストリームに対する第1の生成物ストリームの含有量は、約25~90wt%、約25~70wt%、約25~50wt%、又は約25~30wt%など、少なくとも約25wt%であってもよい。
【0053】
本開示は、上述した工程によって製造できる鉱油系潤滑基油を提供する。一例として、前記鉱油系潤滑基油は、100℃での動粘度が2以上4cSt未満であり、115以上の粘度指数(VI)を有することができる。他の例として、前記鉱油系潤滑基油は、100℃での動粘度が4以上8cSt未満であり、130以上の粘度指数(VI)を有することができる。
【0054】
また、本開示は、上述した鉱油系潤滑基油を含む潤滑剤組成物も提供する。本開示の一実施形態において、前記潤滑剤組成物は、約50~100wt%、約60~100wt%、約70~100wt%、約80~100wt%、約90~100wt%、又は約90~97wt%など、少なくとも約50wt%の前記鉱油系潤滑基油を含むことができる。
【0055】
上述した鉱油系潤滑基油及びそれを含む潤滑剤組成物は、従来の基油及び潤滑剤組成物に比べてより高いVIを有するので、より高品質の製品として活用されることを期待することができる。
【0056】
以下、本開示の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本開示をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本開示はこれに限定されるものではない。
【0057】
〔実施例〕
上述した本開示の「分離ステップ」を除き、潤滑基油製造工程を行って得られた生成物(比較例)の性状と、「分離ステップ」を適用した潤滑基油製造工程を行って得られた第1の生成物及び第2の生成物の性状とを比較した。前記分離技術として溶媒抽出と吸着が使用された。
【0058】
溶媒抽出の場合は、溶媒としてNMPが使用され、溶媒対油の体積比約2:1~9:1、抽出温度30~90℃、大気圧の条件で行われた。
【0059】
吸着の場合は、吸着剤として活性炭が使用され、吸着温度60~120℃、脱着温度200~400℃の条件で行われた。性状の比較結果は、下記表2及び表3に示した。
【0060】
【0061】
【0062】
表2及び表3を参照すると、本開示の方法によって、従来の等級を維持する基油と同時に、従来の等級よりもさらに高い等級を有する基油を同時に製造可能であることが分かる。よって、本開示は、従来の潤滑基油製造工程に比較的簡単な非反応性分離ステップを追加することにより、グループIII+などのより高品質の潤滑基油を得ることができる新しい方向を提示することができるものと期待される。
【0063】
本開示の単なる変形乃至変更はいずれも、本開示の領域に属するものであり、本開示の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって明らかになるであろう。