(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001513
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】樹脂組成物とその成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 33/26 20060101AFI20231227BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231227BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231227BHJP
C08F 20/56 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08L33/26
C08L101/00
C08L63/00 A
C08F20/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100205
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】山手 太軌
(72)【発明者】
【氏名】河西 拓也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC04X
4J002BG04X
4J002BG13W
4J002BP01X
4J002BQ00X
4J002CD00X
4J002CD05X
4J002CD06X
4J002CH07X
4J002EU026
4J002GF00
4J002GN00
4J002GQ01
4J100AM21P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100CA03
4J100JA28
4J100JA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、低誘電率且つ低誘電正接であり、かつ優れた耐水性を有する樹脂組成物、およびその硬化物を用いた成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を有するポリマーと、(B)(A)以外の樹脂とを含有する樹脂組成物。
(式中、X
1、X
2は、それぞれ独立に、C7~C20アルキル基などを表し、n1は0または1を表し、Z
1、Z
2はそれぞれ独立に、単結合などを表し、X
3、X
4はそれぞれ独立に、有機基などを表し、n2、n3はそれぞれ0~4いずれかの整数を表し、Y
1は、重合可能な官能基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(I)
【化1】
(式(I)中、X
1、X
2は、それぞれ独立に、C7~C20アルキル基またはC7~C20アルコキシ基を表し、n1は0または1を表し、Z
1、Z
2はそれぞれ独立に、単結合またはC1~C3アルキレン基を表し、X
3、X
4はそれぞれ独立に、有機基またはハロゲノ基を表し、n2、n3はそれぞれ0~4いずれかの整数を表し、Y
1は、重合可能な官能基を表す。)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を有するポリマー、
または、
式(II)
【化2】
(式(II)中、X
5、X
6は、それぞれ独立に、ベンジル基またはα,α-ジメチルベンジル基を表し、n4は0または1を表し、Z
3、Z
4はそれぞれ独立に、単結合またはC1~C3アルキレン基を表し、X
7、X
8はそれぞれ独立に、有機基またはハロゲノ基を表し、n5、n6はそれぞれ0~4いずれかの整数を表し、Y
2は、重合可能な官能基を表す。)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を有するポリマーと、
(B)(A)以外の樹脂と、
を含有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)以外の樹脂が、熱硬化性樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
更に、硬化剤として活性エステル系化合物を含有する、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂が、
マレイミド基を一つ以上有するマレイミド化合物、
ポリフェニレンエーテル化合物、
1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0であるポリブタジエン、
ブタジエンブロック中の1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0であるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、及び
分子中に式(III)
【化3】
(式(III)中、Z
5は、C6~C12アリーレン基を示し、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素原子又はC1~C6のアルキル基を示す。)で表される繰り返し単位を有する重合体
から選択される少なくとも1種以上である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の樹脂組成物の硬化物を用いた、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率且つ低誘電正接である樹脂組成物、および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話及びスマートフォン等のモバイル型通信機器やその基地局装置、サーバー・ルーター等のネットワーク関連電子機器、大型コンピュータ等に含まれるプリント配線板等を製造するために各種公知の樹脂が使用されている。
近年、上記ネットワーク関連電子機器では、大容量の情報を低損失かつ高速で伝送・処理する必要があり、それら製品のプリント配線板で扱う電気信号も高周波化が進んでいる。高周波の電気信号は減衰しやすいため、プリント配線板における伝送損失を一層低くする必要がある。そのため、プリント配線板を製造する際に用いられる樹脂には、低誘電率且つ低誘電正接であることが求められる。
【0003】
特許文献1には、N,N-[4,4'-ビス(α、α-ジメチルベンジル)ジフェニル]アクリルアミドのポリマーを用いた接着性組成物が、接着性及び密着性に優れたコーティング剤となることが記載されている。
特許文献2には、N,N-ビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)アクリルアミドのポリマーが、接着性及び密着性に優れた接着性組成物であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2018/070079号パンフレット
【特許文献2】WO2020/071456号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低誘電率且つ低誘電正接である樹脂組成物、およびその硬化物を用いた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、所定の(メタ)アクリルアミド系ポリマーとポリフェニレンエーテル化合物などの特定の樹脂とを併用することによって、上記課題が解決されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
(1)
(A)式(I)
【化1】
(式(I)中、X
1、X
2は、それぞれ独立に、C7~C20アルキル基またはC7~C20アルコキシ基を表し、n1は0または1を表し、Z
1、Z
2はそれぞれ独立に、単結合またはC1~C3アルキレン基を表し、X
3、X
4はそれぞれ独立に、有機基またはハロゲノ基を表し、n2、n3はそれぞれ0~4いずれかの整数を表し、Y
1は、重合可能な官能基を表す。)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を有するポリマー、
または、
式(II)
【化2】
(式(II)中、X
5、X
6は、それぞれ独立に、ベンジル基またはα,α-ジメチルベンジル基を表し、n4は0または1を表し、Z
3、Z
4はそれぞれ独立に、単結合またはC1~C3アルキレン基を表し、X
7、X
8はそれぞれ独立に、有機基またはハロゲノ基を表し、n5、n6はそれぞれ0~4いずれかの整数を表し、Y
2は、重合可能な官能基を表す。)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を有するポリマーと、
(B)(A)以外の樹脂と、
を含有する、樹脂組成物。
(2)前記(A)以外の樹脂が、熱硬化性樹脂である、(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、(2)に記載の樹脂組成物。
(4)更に、硬化剤として活性エステル系化合物を含有する、(3)に記載の樹脂組成物。
(5)前記熱硬化性樹脂が、
マレイミド基を一つ以上有するマレイミド化合物、
ポリフェニレンエーテル化合物、
1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0であるポリブタジエン、
ブタジエンブロック中の1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0であるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、及び
分子中に式(III)
【化3】
(式(III)中、Z
5は、C6~C12アリーレン基を示し、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素原子又はC1~C6のアルキル基を示す。)で表される繰り返し単位を有する重合体
から選択される少なくとも1種以上である、(2)に記載の樹脂組成物。
(6)(1)に記載の樹脂組成物の硬化物を用いた、成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、低誘電率かつ低誘電正接である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1樹脂組成物
<(A)成分>
本発明の樹脂組成物は、(A)式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマー、または式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマー(以下、「(A)成分」ともいう)を含有する。
【0010】
(式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマー)
【化4】
【0011】
式(I)中、X1、X2は、それぞれ独立に、C7~C20のアルキル基またはC7~C20のアルコキシ基を表す。
【0012】
X1およびX2における「C7~C20のアルキル基」としては、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基等の「直鎖のC7~C20のアルキル基」; 1,1,2,2-テトラメチルプロピル基、1,1,3-トリメチルブチル基、1-エチルペンチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2,2,3,3-テトラメチルブチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1-エチル―4-メチルペンチル基、3-エチル-3-メチルペンチル基、3-エチル-4-メチルペンチル基、1-エチル-1-メチルペンチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルへキシル基、6-メチルヘプチル基、1,3,5-トリメチルヘキシル基、1,1,3-トリメチルヘキシル基、1-ブチル-1-メチルへプチル基、1-メチルへプチル基、1-メチル-1-オクチルウンデシル基等の「分岐鎖のC7~C20のアルキル基」を挙げることができる。
【0013】
X1およびX2における「C7~C20のアルコキシ基」としては、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ヘキサデシル基オキシ、n-オクタデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基等の「直鎖のC7~C20のアルコキシ基」; 1,1,2,2-テトラメチルプロピルオキシ基、1,1,3-トリメチルブチルオキシ基、1-エチルペンチルオキシ基、1,1,3,3-テトラメチルブチルオキシ基、2,2,3,3-テトラメチルブチル基オキシ、1,2,4-トリメチルペンチルオキシ基、2,4,4-トリメチルペンチルオキシ基、2,2,4-トリメチルペンチルオキシ基、1-エチル-4-メチルペンチルオキシ基、3-エチル-3-メチルペンチルオキシ基、3-エチル-4-メチルペンチルオキシ基、1-エチル-1-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルヘキシルオキシ基、3,3-ジメチルヘキシルオキシ基、4,4-ジメチルヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、3-エチルへキシルオキシ基、6-メチルヘプチルオキシ基、1,3,5-トリメチルヘキシルオキシ基、1,1,3-トリメチルヘキシルオキシ基、1-ブチル-1-メチルへプチルオキシ基、1-メチルへプチルオキシ基、1-メチル-1-オクチルウンデシルオキシ基等の「分岐鎖のC7~C20のアルコキシ基」を挙げることができる。
【0014】
式(I)中、n1は0または1を表す。
【0015】
式(I)中、Z1、Z2はそれぞれ独立に、単結合またはC1~C3アルキレン基を表す。
Z1およびZ2におけるC1~C3アルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロパン-1,3-ジイル等を挙げることができる。
【0016】
式(I)中、X3、X4は、それぞれ独立に、有機基またはハロゲノ基を表す。
X3およびX4における有機基としては、化学的に許容され、本発明の効果を有する限りにおいて特に制限されない。有機基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのC1~6アルキル基や、フェニル基、ナフチル基などのC6~10アリール基や、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1~6アルコキシ基や、クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2-ジクロロ-n-プロピル基、1-フルオロ-n-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基などのC1~6ハロアルキル基等が挙げられる。
X3およびX4におけるハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基が挙げられる。
【0017】
式(I)中、n2、n3はそれぞれ0~4いずれかの整数を表す。
【0018】
式(I)中、Y1は、重合可能な官能基を表す。
Y1における重合可能な官能基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシカルボニル基、プロプ-1-エン-2-イルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等の重合可能な炭素―炭素二重結合を有する基等が挙げられる。
Y1としては、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0019】
式(I)で表される化合物は、以下の式(IV)で表される化合物を含有する
【化5】
【0020】
式(IV)中、X9およびX10は、それぞれ独立に、C7~C20アルキル基またはC7~C20アルコキシ基を表し、R7は、水素原子、またはメチル基を表す。
X9およびX10における「C7~C20アルキル基」、「C7~C20アルコキシ基」としては、X1およびX2において例示したそれと同じものを挙げることができる。
【0021】
本発明で使用する式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマーは、式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種からなるポリマー、又は、当該繰り返し単位の少なくとも1種と他のラジカル重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種とからなるポリマーである。
すなわち、本発明で使用するポリマーは、具体的には、以下のポリマ-を包含する。
i)式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の1種からなるホモポリマー、
ii)式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の2種以上からなるコポリマー、
iii)式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種と、他のラジカル重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種とからなるコポリマー
iv)式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の2種以上と、他のラジカル重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種とからなるコポリマー
上記ポリマーのうち、ii)~iv)のコポリマーは、各繰り返し単位が、ランダム配列されているもの、交互配列されているもの、ブロック配列されているもののいずれでもよい。
また、本発明のコポリマーの場合は、分子鎖が、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。分岐鎖は、一点で分岐してなる分岐鎖(スター型)、複数点で分岐してなる分岐鎖(グラフト型)などが挙げられる。
本発明で使用する式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマーは、i)式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の1種からなるホモポリマーであることが好ましい。
【0022】
(式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマー)
【化6】
式(II)中、X
5、X
6は、それぞれ独立に、ベンジル基またはα,α-ジメチルベンジル基を表し、n4は0または1を表し、Z
3、Z
4はそれぞれ独立に、単結合またはC1~C3アルキレン基を表し、X
7、X
8はそれぞれ独立に、有機基またはハロゲノ基を表し、n5、n6はそれぞれ0~4いずれかの整数を表し、Y
2は、重合可能な官能基を表す。
【0023】
Z3およびZ4における「C1~C3アルキレン基」としては、Z1およびZ2において例示したそれと同じものを挙げることができる。
X7およびX8における「有機基」または「ハロゲノ基」としては、X3およびX4において例示したそれと同じものを挙げることができる。
Y2における重合可能な官能基としては、Y1において例示したそれと同じものをあげることができる。
【0024】
式(II)で表される化合物は、以下の式(V)で表される化合物を含有する。
【化7】
式(V)中、X
11およびX
12は、それぞれ独立に、ベンジル基またはα,α-ジメチルベンジル基を表し、R
8は、水素原子、またはメチル基を表す。
【0025】
本発明で使用する式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマーは、式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種からなるポリマー、又は、当該繰り返し単位の少なくとも1種と他のラジカル重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種とからなるポリマーである。
すなわち、本発明で使用するポリマーは、具体的には、以下のポリマ-を包含する。
i)式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の1種からなるホモポリマー、
ii)式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の2種以上からなるコポリマー、
iii)式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種と、他のラジカル重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種とからなるコポリマー
iv)式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の2種以上と、他のラジカル重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種とからなるコポリマー
上記ポリマーのうち、ii)~iv)のコポリマーは、各繰り返し単位が、ランダム配列されているもの、交互配列されているもの、ブロック配列されているもののいずれでもよい。
また、コポリマーの場合は、分子鎖が、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。分岐鎖は、一点で分岐してなる分岐鎖(スター型)、複数点で分岐してなる分岐鎖(グラフト型)などが挙げられる。
本発明で使用する式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマーは、i)式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の1種からなるホモポリマーであることが好ましい。
【0026】
(平均分子量)
式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマーおよび式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマーの重量平均分子量は、制限はなく、例えば、1,000~5,000,000、5,000~1,000,000、10,000~500,000、10,000~200,000、20,000~100,000などの範囲内の重量平均分子量のポリマーを挙げることができる。
また、式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマーおよび式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマーの分子量分布(PDI)は、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)の比で、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.0~4.0、最も好ましくは1.0~3.0である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、THFを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて測定したデータを、標準として使用するポリメタクリル酸メチルの分子量に基づいて換算した値である。
【0027】
(他のラジカル重合性化合物)
「他のラジカル重合性化合物」とは、式(I)で表される化合物および式(II)で表される化合物以外のラジカル重合性化合物であり、融点、粘度又は屈折率などの目的とする物性に応じて適宜選定すればよく、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸類、(メタ)アクリロニトリル、スチレン類、ビニル系化合物、オレフィン化合物、不飽和カルボン酸無水物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。具体的には、成分(1)ラジカル重合性化合物において例示されたものと同様の化合物が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。
特に、「他のラジカル重合性化合物」としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸類、不飽和ジカルボン酸無水物、スチレン類が好ましい。
【0028】
(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基を有するアクリレート、エーテル骨格を有する(メタ)アクリレート、環状エーテル骨格を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレートなどがある。
【0029】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレートが挙げられる。
エーテル骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
環状エーテル骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、ジオキソラン(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、エチルベンジル(メタ)アクリレート、プロピルベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリルアミドとしては、メチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、n-プロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物等が挙げられる。
スチレン類としては、スチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシカルボニルスチレン等が挙げられる。
その他としては、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエーテル、アクロレイン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン化合物等が挙げられる。
【0031】
(繰り返し単位の組成割合)
式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマー中、式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位と、他のラジカル重合異性化合物由来の繰り返し単位の含有量は、本発明の効果を示す限り、特に制限されない。式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位と、他のラジカル重合異性化合物由来の繰り返し単位は、重量比で、99.5:0.5~0.5:99.5、99.5:0.5~30:70、99:1~30:70、90:10~30:70、60:40~30:70等の範囲を選択することができる。
式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマー中、式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位と、他のラジカル重合異性化合物由来の繰り返し単位の含有量は、本発明の効果を示す限り、特に制限されない。式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位と、他のラジカル重合異性化合物由来の繰り返し単位は、重量比で、99.5:0.5~0.5:99.5、99.5:0.5~30:70、99:1~30:70、90:10~30:70、60:40~30:70等の範囲を選択することができる。
【0032】
(式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマーおよび式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマーの製造方法)
本発明に用いる式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマーおよび式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマーは、実施例の方法や他の公知の方法により製造することができる。
たとえば、WO2018/070079号パンフレット、WO2020/071456号パンフレット、WO2021/201207号パンフレット、WO2021/201208号パンフレット等に記載された製造方法により、式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマーおよび式(II)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含有するポリマーを製造することができる。
【0033】
<(B)成分>
本発明の樹脂組成物は、(A)以外の樹脂(以下、「(B)成分」ともいう)を含有する。
(B)成分としては、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。
(1)硬化性樹脂
硬化性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、アリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂、マレイミド系樹脂、シアネート系樹脂などを使用することができる。ここで、「電離放射線硬化性樹脂」とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線などのすべての電磁波を包含する電離放射線のいずれかの照射により硬化する樹脂をいう。
【0034】
上記電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、又はオキセタニル基、マレイミド基を有するモノマー、プレポリマー、オリゴマー、ポリマーなどを用いることができる。なかでも多官能樹脂を用いることが好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」及び/又は「メタクリロイル基」を意味する。
(B)成分は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
以下に、(B)成分として用いられる熱硬化性樹脂の例を具体的に説明する。
【0035】
1)エポキシ樹脂(以下、「(B-1)成分」ともいう)
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。
【0037】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールAF型エポキシ樹脂がさらに好ましく、硬化物の物性バランスに優れるという観点から、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0038】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0039】
(硬化剤)
エポキシ樹脂の場合、硬化剤を含有させることができる。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に限定されないが、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられ、誘電正接を低下させるという観点から、シアネートエステル系硬化剤、活性エステル系硬化剤が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤としては、特に限定されない、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤やノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が挙げられ、フェノールノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、トリアジン骨格含有ナフトール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂が好ましい。
【0041】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に活性エステル基を2個以上有する化合物が好ましく、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られる活性エステル化合物が好ましい。中でも、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物から選択される1種以上とを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらに好ましく、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる芳香族化合物であって、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらにより好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0043】
カルボン酸化合物としては、例えば、炭素原子数1~20(好ましくは2~10、より好ましくは2~8)の脂肪族カルボン酸、炭素原子数7~20(好ましくは7~10)の芳香族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。
【0044】
チオカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0045】
フェノール化合物としては、例えば、炭素原子数6~40(好ましくは6~30、より好ましくは6~23、さらに好ましくは6~22)のフェノール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール等が挙げられる。フェノール化合物としてはまた、フェノールノボラック、特開2013-40270号公報記載のフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーを使用してもよい。
【0046】
ナフトール化合物としては、例えば、炭素原子数10~40(好ましくは10~30、より好ましくは10~20)のナフトール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。ナフトール化合物としてはまた、ナフトールノボラックを使用してもよい。
【0047】
中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが好ましく、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがより好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらに好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらにより好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが殊更好ましく、ジシクロペンタジエン型ジフェノールが特に好ましい。
【0048】
チオール化合物としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
【0049】
活性エステル化合物の好適な具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物が挙げられ、中でもジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましい。なお本発明において、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0050】
活性エステル化合物としては、特開2004-277460号公報、特開2013-40270号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販の活性エステル化合物を用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC-8000-65T(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物としてEXB9416-70BK(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物としてDC808(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物としてYLH1026(三菱化学(株)製)、リン原子含有活性エステル化合物としてEXB9050L-62M(DIC(株))が挙げられる。
【0051】
シアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されないが、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500~4500が好ましく、600~3000がより好ましい。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
酸無水物系硬化剤としては、特に限定されないが、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸が共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0053】
(硬化促進剤)
さらに硬化促進剤を含有させることにより、エポキシ樹脂と硬化剤を効率的に硬化させることができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0054】
アミン系硬化促進剤としては、特に限定されないが、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0055】
グアニジン系硬化促進剤としては、特に限定されないが、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されないが、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、 1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
金属系硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0058】
ホスホニウム系硬化促進剤(リン系硬化促進剤)としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類;
ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体;(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等の芳香族ホスホニウム塩及び第三級ホスフィンとキノン類との付加物などが挙げられる。
第三級ホスフィンとしては、特に限定されないが、例えば、トリ-n-ブチルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン等が挙げられる。また、キノン類としては、例えば、o-ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4-ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0059】
2)マレイミド基を一つ以上有するマレイミド化合物(以下、「(B-2)成分」ともいう)
本発明に用いるマレイミド化合物は、分子中に一個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリテトラメチレンオキシド-ビス(4-マレイミドベンゾエート)、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、下記式(VI)で表されるマレイミド化合物、下記式(VIII)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、及びマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマーが挙げられる。これらは一種又は二種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0060】
【化8】
式(VI)中、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、ハロゲノ基、C1~C6アルキル基、水酸基、C1~C6アルコキシ基、ホルミル基、カルボキシル基、C1~C6アルコキシカルボニル基、C6~C10アリール基、アミノ基、C1~C6アルキル基置換アミノ基、シアノ基、またはニトロ基を示し、
a1及びa2は、それぞれ独立して、0~4の整数を示し、a1が2以上のときR
9は互いに同じでも異なってもよく、a2が2以上のときR
10は互いに同じでも異なってもよく、
m1及びm2は、それぞれ独立して、1~10の整数を示し、
R
11及びR
12は、それぞれ独立して、C1~C6アルキル基、またはC6~C10アリール基であり、
a3は、0~3の整数を示し、a3が2以上のときR
11は互いに同じでも異なってもよく、
a4は、0~2の整数を示し、a4が2のときR
12は互いに同じでも異なってもよく、
n7は、1~100の整数を示す。
【0061】
R9及びR10におけるハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等が挙げられる。
R9及びR10におけるC1~C6アルキル基としては、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。C1~C6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、i-ヘキシル基などを挙げることができる。
R9及びR10におけるC1~C6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基等を挙げることができる。
R9及びR10におけるC1~C6アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
R9及びR10におけるC6~C10アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
R9及びR10におけるC1~C6アルキル基置換アミノ基は、モノ置換体、ジ置換体のいずれかであってよい。C1~C6アルキル基置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等を挙げることができる。
【0062】
a1及びa2は、0であることが好ましい。
【0063】
m1及びm2は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、更に好ましくは1~2であり、1であることが特に好ましい。
【0064】
R11及びR12におけるC1~C6アルキル基、C6~C10アリール基としては、R9及びR10において例示したそれと同じものを挙げることができる。
【0065】
a3およびa4は、0であることが好ましい。
【0066】
n7は、1~50であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~5であることが更に好ましい。
【0067】
式(VI)で表される化合物としては、具体的には、式(VII)で表される化合物を挙げることができる。
【化9】
式(VII)中、n8は、1~100いずれかの整数を示す。
n8は、1~50であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~5であることが更に好ましい。
【0068】
【化10】
式(VIII)中、R
13およびR
14は、それぞれ独立して、水素原子、またはC1~C6アルキル基を示し、n9は、1~10の整数を示し、X
13およびX
14は、それぞれ独立して、C1~C6アルキル基を示し、S1およびS2は、それぞれ独立して、0~2のいずれかの整数を示し、S1が2のときX
6は互いに同じでも異なってもよく、S2が2のときX
7は互いに同じでも異なってもよい。
R
13およびR
14におけるC1~C6アルキル基としては、R
9及びR
10において例示したそれと同じものを挙げることができる。
R
13およびR
14は、水素原子またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
n9は、1~7の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
X
13およびX
14におけるC1~C6アルキル基としては、R
9及びR
10において例示したそれと同じものを挙げることができる。
X
13およびX
14は、メチル基またはエチル基であることが好ましい。
式(VIII)で表される化合物は、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、またはビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンであることが好ましい。
【0069】
マレイミド化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、MIR-3000(日本化薬社製)、MIR-3000-70MT(日本化薬社製)、BMI(ケイ・アイ化成社製)、BMI-70(ケイ・アイ化成社製)、BMI-80(ケイ・アイ化成社製)等を挙げることができる。
【0070】
3)ポリフェニレンエーテル化合物(以下、「(B-3)成分」ともいう)
本発明に用いるポリフェニレンエーテル化合物は、下記式(IX)で表される繰り返し単位を有するポリマーである限り特に限定されない。
【化11】
式(IX)中、R
15~R
18は、それぞれ独立に、水素原子、C1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、C2~C6アルキニル基、C1~C6アルキルカルボニル基、又はC2~C6アルケニルカルボニル基を示す。
【0071】
R15~R18におけるC1~C6アルキル基としては、R9及びR10において例示したそれと同じものを挙げることができる。
R15~R18におけるC2~C6アルケニル基としては、ビニル基、アリル基等を挙げることができる。
R15~R18におけるC2~C6アルキニル基としては、エチニル、2-プロピニル等を挙げることができる。
R15~R18におけるC1~C6アルキルカルボニル基としては、アセチル基等を挙げることができる。
R15~R18におけるC2~C6アルケニルカルボニル基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができる。
R15~R18は、水素原子、C1~C6アルキル基、またはC2~C6アルケニル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、またはアリル基であることがより好ましく、水素原子、またはメチル基であることが更に好ましい。
【0072】
本発明に用いるポリフェニレンエーテル化合物は、その末端が変性されていてもよい。末端が変性されたポリフェニレンエーテル化合物としては、末端が水酸基で変性されたポリフェニレンエーテル化合物や、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基で変性されたポリフェニレンエーテル化合物を挙げることができる。
【0073】
前記炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基としては、式(X)で表される基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を挙げることができる。
【0074】
【化12】
式(X)中、*は、結合位置を示し、pは、0~10の整数を示し、Z
6は、アリーレン基を示し、R
19~R
21は、それぞれ独立に、水素原子、またはC1~C6のアルキル基を示す。
Z
6におけるC6~C12アリーレン基としては、フェニレン基を挙げることができる。
R
19~R
21における、C1~C6アルキル基としては、R
9及びR
10において例示したそれと同じものを挙げることができる。
【0075】
式(X)で表される基としては、具体的には、式(X-1)や式(X-2)で表される基を挙げることができる。
【化13】
式(X-1)および式(X-2)中、*は結合位置を示す。
【0076】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基で変性されたポリフェニレンエーテル化合物としては、具体的には、式(3)または式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
【化14】
式(3)中、X
15及びX
16は、それぞれ独立して、式(X)で表される基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を示し、S3及びS4は、それぞれ独立して、0~20の整数を示す。X
15及びX
16における式(X)で表される基は、前記した通りである。
【0078】
【化15】
式(4)中、X
17及びX
18は、それぞれ独立して、式(X)で表される基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を示し、S5及びS6は、それぞれ独立して、0~20の整数を示し、Y
3は、C1~C6アルキレン基を示す。X
17及びX
18における式(X)で表される基は、前記した通りである。Y
3におけるC1~C6アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基等を挙げることができる。
【0079】
使用されるポリフェニレンエーテル化合物の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、1,000~7,000、1,000~5,000、1,000~3,000などを挙げることができる。なお、数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したデータを標準ポリスチレンの分子量に基づいて換算した値である。
また、本発明で用いるポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度は、0.03~0.12dl/g、0.04~0.11dl/g、0.06~0.095dl/gなどを挙げることができる。固有粘度は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度である。より具体的には、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計で測定した値である。
【0080】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル化合物は、公知のものや、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、SA90(SABIC社製)、SA9000(SABIC社製)、OPE-2st(三菱ガス化学社製)等を挙げることができる。
合成する場合は、WO2014/203511号パンフレットなどに記載された方法およびそれに準ずる方法により合成することができる。
【0081】
4)1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0であるポリブタジエン(以下、「(B-4)成分」ともいう)
本発明に用いられるポリブタジエンは、式(1)で表される1,2結合構造のみ、又は、式(1)で表される1,2結合構造と式(2)で表される1,4結合構造とからなる。
【化16】
ポリブタジエン中に含まれる式(1)で表される1,2結合構造と式(2)で表される1,4結合構造との割合は特に限定されないが、ポリブタジエンの全繰り返し単位中、式(I)で表される1,2結合構造のモル比は、80:20~100:0であるのが好ましい。
用いるポリブタジエンの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)が、500~10,000、500~8,000、500~6,000、500~5,000の範囲を選択することができる。なお、重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したデータを標準ポリスチレンの分子量に基づいて換算した値である。
ポリブタジエンは、主鎖および末端が変性されたポリブタジエンであってもよいし、主鎖および末端が変性されていないポリブタジエンであってもよい。それらのうち、高い絶縁性を有する硬化物を得るという観点からは、主鎖および末端が変性されていないポリブタジエンを用いるのが好ましい。
ポリブタジエンとしては、市販品を用いることができる。市販品のポリブタジエンとしては、NISSO-PB B-1000(日本曹達(株)製)、NISSO-PB B-2000(日本曹達(株)製)、NISSO-PB B-3000(日本曹達(株)製)などを挙げることができる。これらのポリブタジエンは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
5)ブタジエンブロック中の1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0であるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(以下、「(B-5)成分」ともいう)
本発明に用いられるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)中のスチレンブロックは、スチレンを重合したブロックであり、ブタジエンブロックはブタジエンを重合したブロックである。ブタジエンブロックは、式(1)で表される1,2結合構造のみ、又は、式(1)で表される1,2結合構造と、式(2)で表される1,4結合構造とからなる。
【化17】
本発明に用いられるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体に含まれる、式(1)で表される1,2結合構造と、式(2)で表される1,4結合構造とのモル比は、80:20~100:0である。
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体中のスチレンブロックとブタジエンブロックの重量比は、特に限定されないが、10:90~80:20、10:90~70:30、10:90~60:40、20:80~80:20、30:70~80:20、40:60~80:20を挙げることができる。
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、2,000~100,000、2,000~80,000、2,000~
60,000などを挙げることができる。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、1.00~3.00、1.00~2.00などを挙げることができる。前記重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定したものである。その測定条件は、移動相THF(テトラヒドロフラン)、移動相流量1mL/分、カラム温度40℃、試料注入量40μL、試料濃度2重量%である。
用いるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の製造方法は特に限定されない。例えば、特開平6-192502号公報、特表2000-514122号公報、特開2007-302901号公報、WO2021/024679号パンフレットなどに記載された方法およびそれに準ずる方法により製造することができる。
【0083】
6)分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体(以下、「(B-6)成分」ともいう)
本発明の樹脂組成物は、分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有しうる。
【化18】
式(III)中、Z
5は、C6~C12アリーレン基を示し、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素原子、またはC1~C6のアルキル基を示す。
【0084】
Z5におけるC6~C12アリーレン基としては、Z6において例示したそれと同じものを挙げることができる。
R1~R6におけるC1~C6アルキル基としては、R9及びR10において例示したそれと同じものを挙げることができる。
【0085】
式(III)としては、具体的には、式(III-1)を挙げることができる。
【化19】
【0086】
分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体は、式(5)で表される構造単位を分子中にさらに有する重合体であってもよい。
また、さらに、式(III)で表される繰り返し単位と式(5)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。
すなわち、(B-6)成分の分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体は、以下の重合体を包含する。
i) 式(III)で表される繰り返し単位の1種または2種以上からなる重合体
ii) 式(III)で表される繰り返し単位の1種または2種以上と、式(5)で表される繰り返し単位の1種または2種以上とからなる重合体
iii) 式(III)で表される繰り返し単位の1種または2種以上と、式(5)で表される繰り返し単位の1種または2種以上と、これら以外の繰り返し単位からなる重合体
これらの重合体のうち、共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0087】
【化20】
式(5)中、R
22~R
24は、それぞれ独立して、水素原子、またはC1~C6アルキル基を示し、Ar
1は、C1~C6アルキル基置換若しくは無置換のC6~C12アリール基を示す。
R
22~R
24におけるC1~C6アルキル基としては、R
9及びR
10において例示したそれと同じものを挙げることができる。
Ar
1におけるC6~C12アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、またはビフェニル基等を挙げることができる。
Ar
1上の置換基であるC1~C6アルキル基としては、R
9及びR
10において例示したそれと同じものを挙げることができる。
【0088】
式(5)としては、具体的には、式(5-1)、式(5-2)等を挙げることができる。
【0089】
【0090】
【0091】
分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体の具体例としては、分子中に式(III-1)で表される繰り返し単位を含み、式(5-1)で表される繰り返し単位及び式(5-2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも一方をさらに含む重合体が挙げられる。この重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0092】
分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体の重量平均分子量は、1,200~40,000であることが好ましく、1,200~35,000であることがより好ましい。また、前記重量平均分子量が高すぎると、成形性等が低下する傾向がある。よって、前記樹脂組成物の重量平均分子量が上記範囲内であると、耐熱性及び成形性に優れたものとなる。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0093】
分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体において、分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体における繰り返し単位の合計を100モル%とするとき、前記式(III)で表される繰り返し単位のモル含有率は、2~95モル%であることが好ましく、8~81モル%であることがより好ましい。
また、分子中に式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体が、前記式(III)で表される繰り返し単位と式(5)で表される繰り返し単位とを分子中に有する重合体の場合、前記式(III)で表される繰り返し単位のモル含有率は、2~95モル%であることが好ましく、8~81モル%であることがより好ましく、前記式(5)で表される繰り返し単位のモル含有率は、5~98モル%であることが好ましく、19~92モル%であることがより好ましい。
【0094】
7)(メタ)アクリレート樹脂(以下、「(B-7)成分」ともいう)
(メタ)アクリレート樹脂としては、単官能(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリレートオリゴマーなどを用いることができる。なかでも重合可能な不飽和基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレ-トなどを含んでいることが好ましい。
【0095】
単官能(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有するモノマーであり、アルキル(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基を有するアクリレート、エーテル骨格を有する(メタ)アクリレート、環状エーテル骨格を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレートなどがある。
【0096】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0098】
エーテル骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0099】
環状エーテル骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、ジオキソラン(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0100】
芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、エチルベンジル(メタ)アクリレート、プロピルベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0101】
多官能(メタ)アクリレートは、分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有する化合物であり、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどの2官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート、ポリブタジエン骨格の(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン骨格の(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格の(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格の(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格の(メタ)アクリレート、ひまし油骨格の(メタ)アクリレート、イソプレン系(メタ)アクリレート、水添イソプレン系(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンエーテル骨格の(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0102】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ひまし油骨格のウレタン(メタ)アクリレート、イソプレン系(メタ)アクリレート、水添イソプレン系(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンエーテル骨格の(メタ)アクリレートオリゴマーなどがあげられる。
【0103】
8)ビニル系樹脂(以下、「(B-8)成分」ともいう)
ビニル化合物類としては、スチレン等や、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、両末端にビニル基を含有する変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、全炭素-炭素二重結合を全量として、1,2結合構造の合計量が50%以上であるポリブタジエン、全炭素-炭素二重結合を全量として、1,2結合構造の合計量が50%以上であるポリブタジエンを有するスチレンーブタジエン共重合体等のように分子中にビニル基を2個以上有するビニル化合物(多官能ビニル化合物)、及び両末端にビニルベンジル基を含有する変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリジビニルベンゼン、ポリジビニルベンゼン樹脂、ジビニルベンゼンースチレン共重合体等のように分子中にビニルベンジル基を2個以上有するビニルベンジル化合物等が挙げられる。ビニル化合物類としては、上記した分子中に不飽和二重結合を2個以上有する化合物と、分子中に不飽和二重結合を1個有する化合物とを併用してもよい。分子中に不飽和二重結合を1個有する化合物としては、具体的には、分子中にビニル基を1個有する化合物(モノビニル化合物)等が挙げられる。
【0104】
(架橋剤)
(B)成分である熱硬化性樹脂として、上記(B-2)~(B-8)から選択される少なくとも1種以上を用いる場合、本発明の樹脂組成物は、更に架橋剤を含むことができる。架橋剤は、(B)成分に含まれる不飽和炭素結合と反応し、3次元架橋を形成するものである。
【0105】
架橋剤としては、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンやジビニルビフェニルなどの多官能ビニル化合物;フェノールとビニルベンジルクロライドの反応から合成されるビニルベンジルエーテル系化合物;スチレンモノマー,フェノールとアリルクロライドの反応から合成されるアリルエーテル系化合物;トリアリルイソシアヌレート(TAIC(登録商標))、トリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルイソシアヌレート; トリメチロールプロパン等の(メタ)アクリレート化合物(メタクリレート化合物およびアクリレート化合物); アセナフチレン骨格を有する化合物などが挙げられる。これらの架橋剤を用いると耐熱性を高めることができる。架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0106】
前記アセナフチレン骨格を有する化合物としては、アセナフチレン; 3-ヒドロキシアセナフチレン、4-ヒドロキシアセナフチレン、5-ヒドロキシアセナフチレン、5,6-ジヒドロキシアセナフチレン等のヒドロキシアセナフチレン化合物; 3-メチルアセナフチレン、3-エチルアセナフチレン、3-プロピルアセナフチレン、4-メチルアセナフチレン、4-エチルアセナフチレン、4-プロピルアセナフチレン、5-メチルアセナフチレン、5-エチルアセナフチレン、5-プロピルアセナフチレン、3,8-ジメチルアセナフチレン、5,6-ジメチルアセナフチレン等のアルキルアセナフチレン化合物、3-メトキシアセナフチレン、3-エトキシアセナフチレン、3-ブトキシアセナフチレン、4-メトキシアセナフチレン、4-エトキシアセナフチレン、4-ブトキシアセナフチレン、5-メトキシアセナフチレン、5-エトキシアセナフチレン、5-ブトキシアセナフチレン等のアルコキシアセナフチレン化合物; 3-クロロアセナフチレン、3-ブロモアセナフチレン、4-クロロアセナフチレン、4-ブロモアセナフチレン、5-クロロアセナフチレン、5-ブロモアセナフチレン等のハロゲン化アセナフチレン化合物等が挙げられる。
【0107】
(重合開始剤)
(B)成分である熱硬化性樹脂として(B-2)~(B-8)から選択される少なくとも1種以上を用いる場合、本発明の樹脂組成物は、重合開始剤を含むことができる。
本発明の樹脂組成物に用いられる重合開始剤には、アゾ系の開始剤及び過酸化物系の開始剤等がある。
【0108】
アゾ系の開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2、2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2、2'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、2,2'-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1、1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}などを例示することができる。
【0109】
過酸化物系の開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物があるがこれらに限定されない。また過酸化物ではないが、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンもラジカル重合開始剤(又は重合触媒)として使用できる。しかし、本発明の樹脂組成物の硬化に用いられる重合開始剤は、これらの例に限定されない。
【0110】
(樹脂組成物の組成比)
(B)成分として(B-1)エポキシ樹脂を用いる場合、本発明の樹脂組成物中の(A)成分の含有量は特に制限されないが、(B)成分の量に対し、1~99重量%、1~50重量%、1~30重量%等を挙げることができる。
(B)成分として(B-2)~(B-8)から選択される少なくとも1種以上を用いる場合、本発明の樹脂組成物中の(A)成分の含有量はとくに制限されないが、(B)成分と架橋剤を合わせた量に対して、1~99重量%、10~70重量%、10~50重量%等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物中の(B)成分と架橋剤の含有比は特に制限されないが、重量比で、(B)成分:架橋剤=99:1~1:99、90:10~30:70、90:10~50:50等を挙げることができる。
また、本発明の樹脂組成物中の重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、(B)成分と架橋剤を合わせた量に対して、0.1~10重量%となる量を挙げることができる。
【0111】
(2)その他の成分
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の成分を含有しても良い。その他の成分としては、有機溶媒、熱可塑性樹脂、無機充填材、有機充填材、難燃剤、その他添加剤等を挙げることができる。
【0112】
1)有機溶媒
有機溶媒としては、アミド系、エーテル系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ケトン系、有機ハロゲン化合物系等が挙げられる。
アミド系の有機溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド;エーテル系の有機溶媒としてはジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、テトラヒドロフラン;エステル系の有機溶媒としてはエチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルイソバリレート、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート;脂肪族系炭化水素系の有機溶媒としてはノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロヘキサン;芳香族炭化水素系の有機溶媒としてはトルエン、キシレン;ケトン系の有機溶媒としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン;有機ハロゲン化物系の有機溶媒としてはトリクロロエタン、トリクロロエチレン;等が挙げられる。さらには、プロピレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノエチルエーテルなどの比較的非活性な有機溶媒も使用可能である。
【0113】
2)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィンコポリマー樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等や、既知の熱可塑性エラストマー、例えば、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、水添スチレン-ブタジエン共重合体、水添スチレン-イソプレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、並びに、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、線状ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、フッ素系ゴム、エチレンープロピレンージエンゴム等を挙げることができる。
【0114】
3)無機充填材
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
無機充填材は、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、メタクリロキシシラン系カップリング剤、アクリロキシシラン系カップリング剤、及びスチリルシラン系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。
【0116】
4)有機充填材
有機充填材としては、ゴム粒子、フッ素樹脂粒子(フッ素系ポリマー粒子)、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0117】
ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本(株)製の「EXL-2655」、アイカ工業(株)製の「AC3816N」等が挙げられる。
フッ素樹脂粒子(フッ素系ポリマー粒子)としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
フッ素樹脂粒子(フッ素系ポリマー粒子)は、市販品を用いてもよい。市販のフッ素系ポリマー粒子であるPTFE粒子の具体例としては、ダイキン工業(株)製「ルブロン(登録商標)L-2」、ダイキン工業(株)製「ルブロンL-5」、ダイキン工業(株)製「ルブロンL-5F」、旭硝子(株)製「Fluon(登録商標)PTFE L-170JE」、旭硝子(株)製「FluonPTFE L-172JE」、旭硝子(株)製「FluonPTFE L-173JE」、(株)喜多村製「KTL-500F」、(株)喜多村製「KTL-2N」、(株)喜多村製「KTL-1N」、三井・デュポン フロロケミカル(株)製「TLP10F-1」が挙げられる。
【0119】
表面処理された粒子を含んでいてもよい。表面処理としては例えば、表面処理剤での表面処理が挙げられる。表面処理剤は、特に限定されない。表面処理剤には、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等の界面活性剤の他、無機微粒子等も含まれる。親和性の観点から、表面処理剤としては、フッ素系の界面活性剤を用いることが好ましい。フッ素系の界面活性剤の具体例としては、AGCセイミケミカル(株)製「サーフロン(登録商標)S-243」(パーフルオロアルキル エチレンオキシド付加物)、DIC(株)製「メガファック(登録商標)F-251」、DIC(株)製「メガファックF-477」、DIC(株)製「メガファックF-553」、DIC(株)製「メガファックR-40」、DIC(株)製「メガファックR-43」、DIC(株)製「メガファックR-94」、ネオス(株)製「FTX-218」、ネオス(株)製「フタージェント(登録商標)610FM」、ネオス(株)製「フタージェント730LM」が挙げられる。
【0120】
5)難燃剤
難燃剤は特に限定されないが公知の難燃剤を使用することができる。
具体的には、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤を使用する分野では、例えば、融点が300℃以上のエチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、及びテトラデカブロモジフェノキシベンゼンが好ましい。ハロゲン系難燃剤を使用することにより、高温時におけるハロゲンの脱離が抑制でき、耐熱性の低下を抑制できると考えられる。また、ハロゲンフリーが要求される分野では、リン酸エステル系難燃剤、ホスファゼン系難燃剤、及びホスフィン酸塩系難燃剤等のリン系の難燃剤が挙げられる。リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、ジキシレニルホスフェートの縮合リン酸エステルが挙げられる。ホスファゼン系難燃剤の具体例としては、フェノキシホスファゼンが挙げられる。ホスフィン酸塩系難燃剤の具体例としては、例えば、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩のホスフィン酸金属塩が挙げられる。例示した各難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
6)その他添加剤
その他添加剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤及びアクリル酸エステル系消泡剤等の消泡剤、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、レベリング剤、シランカップリング剤等の接着助剤、タッキファイヤー等の粘着付与剤、熱安定剤、帯電防止剤、BHT等の保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、湿潤分散剤、重金属不活性剤、イオントラップ剤、乳化剤、水分散安定剤、離型剤、ワックス、レオロジーコントロール剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0122】
2樹脂ワニス
本発明のポリマーを含む樹脂組成物は、プリプレグを製造する際には、プリプレグを形成するための基材(繊維質基材)に含浸する目的、あるいは回路基板を形成する回路基板材料とする目的でワニス状に調製して、樹脂ワニスとすることができる。
この樹脂ワニスは、回路基板用に適し、回路基板材料用ワニスとして使用できる。なお、ここでいう回路基板材料の用途は、具体的には、プリント配線基板、プリント回路板、フレキシブルプリント配線板、ビルドアップ配線板等が挙げられる。
【0123】
樹脂ワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。その後、必要に応じて、無機充填材等の有機溶媒に溶解しない成分を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、分散させることにより、ワニス状の硬化性樹脂組成物が調製される。
【0124】
3硬化物(成形体)
本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、成型物、積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルムとして使用できる。例えば、半導体封止材料の硬化物は注型物又は成型物であり、かかる用途の硬化物を得る方法としては、硬化性樹脂組成物を注型、或いはトランスファ-成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに80~230℃で0.5~10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。また、回路基板用ワニスの硬化物は積層物であり、この硬化物を得る方法としては、回路基板用ワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得て、それを単独同士で、あるいは銅箔等の金属箔と積層し熱プレス成形して得ることができる。
【0125】
チタン酸バリウム等の無機の高誘電体粉末、あるいはフェライト等の無機磁性体を硬化性樹脂組成物又は樹脂ワニス中に配合することにより、電子部品用材料、特に高周波電子部品材料としてより優れたものとなる。
【0126】
本発明のポリマーを含む樹脂組成物は、後述する硬化複合材料と同様、金属箔(金属板を含む意味である。以下同じ。)と張り合わせて用いることができる。
【0127】
本発明のポリマーを含む樹脂組成物による硬化性複合材料には、機械的強度を高め、寸法安定性を増大させるために基材を加える。
【0128】
このような基材としては、公知の材料が用いられるが、例えば、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマットなどの各種ガラス布、アスベスト布、金属繊維布及びその他合成若しくは天然の無機繊維布、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾザール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などの合成繊維から得られる織布又は不織布、綿布、麻布、フェルトなどの天然繊維布、カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙-ガラス混繊紙などの天然セルロース系布などの布類、紙類等がそれぞれ単独で、あるいは2種以上併せて用いられる。
【0129】
本発明のポリマーを含む硬化性複合材料を製造する方法としては、例えば、本発明のポリマーを含有する硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を前述の芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0130】
本発明のポリマーを含む硬化性複合材料を加熱等の方法により硬化することによって、硬化複合材料が得られる。その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば硬化性複合材料を複数枚重ね合わせ、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化を行い、所望の厚みの硬化複合材料を得ることができる。また、一度接着硬化させた硬化複合材料と硬化性複合材料を組み合わせて新たな層構成の硬化複合材料を得ることも可能である。積層成形と硬化は、通常熱プレス等を用い同時に行われるが、両者をそれぞれ単独で行ってもよい。すなわち、あらかじめ積層成形して得た未硬化あるいは半硬化の複合材料を、熱処理又は別の方法で処理することによって硬化させることができる。
【0131】
本発明のポリマーを含む積層体は、本発明の硬化複合材料の層と金属箔の層より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3~200μm、より好ましくは3~105μmの範囲である。
【0132】
本発明のポリマーを含む積層体を製造する方法としては、例えば上で説明した本発明の硬化性樹脂組成物と基材から得た硬化性複合材料と、金属箔とを目的に応じた層構成で積層し、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化させる方法を挙げることができる。本発明の硬化性樹脂組成物の積層体においては、硬化複合材料と金属箔とが任意の層構成で積層される。金属箔は表層としても中間層としても用いることができる。上記の他、積層と硬化を複数回繰り返して多層化することも可能である。
【0133】
金属箔との接着には接着剤を用いることもできる。接着剤としては、エポキシ系、アクリル系、フェノール系、シアノアクリレート系等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。また、本発明の樹脂組成物を接着剤として用いることもできる。上記の積層成形と硬化は、本発明の硬化複合材料の製造と同様の条件で行うことができる。
【0134】
本発明のポリマーを含む樹脂組成物をフィルム状に成形することにより、本発明のポリマーを含む樹脂組成物の一形態であるフィルムとすることができる。
【0135】
本発明のポリマーを含む樹脂付き金属箔は、本発明の硬化性樹脂組成物と金属箔とにより構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、好ましくは3~200μm、より好ましくは5~105μmの範囲である。
【0136】
本発明のポリマーを含む樹脂付き金属箔を製造する方法としては、特に限定されることはなく、例えば硬化性樹脂組成物を芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、金属箔に塗布した後乾燥する方法が挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0137】
本発明のポリマーを含む樹脂組成物は、成形材、シート又はフィルムに加工することができ、電気産業、宇宙・航空機産業、自動車等の分野において低誘電率、低吸水率、高耐熱性等の特性を満足できる低誘電材料、絶縁材料、耐熱材料、構造材料等に用いることができる。特に片面、両面、多層プリント基板、フレキシブルプリント基板、ビルドアップ基板等として用いることができる。さらに、半導体関連材料又は光学用材料、更には、塗料、感光性材料、接着剤、汚水処理剤、重金属捕集剤、イオン交換樹脂、帯電防止剤、酸化防止剤、防曇剤、防錆剤、防染剤、殺菌剤、防虫剤、医用材料、凝集剤、界面活性剤、潤滑剤、固体燃料用バインダー、導電処理剤、樹脂改質材、アスファルト改質材可塑剤、焼結バインダー等への適用が可能である。
【0138】
本発明のポリマーは、低誘電率且つ低誘電正接であり、かつガラス転移点が高く、有機溶媒に対する高い溶解性と熱硬化性樹脂に対する高い相溶性を示す樹脂である。そのため、電気・電子産業、宇宙・航空機産業等の分野において、誘電材料、絶縁材料、耐熱材料、構造材料等として、近年、強く求められている小型・薄型化に対応して反り等の成形不良現象のない硬化成形品を提供することができる。更に、配線埋め込み平坦性と異種材料との密着性に優れることに由来して、信頼性に優れる硬化性樹脂組成物、硬化物又はこれを含む材料を実現できる。
以下に実施例を示すが、本願発明の技術的範囲は実施例に限定されない。
【実施例0139】
(合成例1)
N,N-ビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)アクリルアミドの合成
【化23】
窒素置換した1Lの四ツ口フラスコに、ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]アミン(50.00g,0.127mol)、N,N-ジメチルアニリン(46.17g,0.381mol),及び超脱水トルエン477mLを仕込み、均一に溶解するまで撹拌した。次に、反応溶液を氷/エタノールバスで0℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(22.99g,0.254mol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、エバポレーターで溶媒を留去し、粗生成物を酢酸エチル250mLに溶解した。その後、1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をヘキサンで再結晶精製することで、N,N-ビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)アクリルアミド(46.06g,収率81%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C
31H
45NO([M+Na]
+)]:470.3393 found 470.3317.
【0140】
(合成例2)
ポリアクリルアミドAの作製
300mL四つ口フラスコに合成例1の化合物(50.00g)、AIBN(0.15g)を仕込み、トルエン(50g)に溶解させた。減圧操作を加えて脱気を行い、窒素雰囲気化で65℃、24時間加熱撹拌した。その後、AIBN(0.10g)を加え、80℃で2時間撹拌した。加熱撹拌を停止するとともに反応液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定を行った。反応液をメタノール1L中に滴下することで粉体化を行った。得られた析出物をろ別し、真空乾燥機にて60℃、減圧による乾燥を行った。収量47.1g、Mw=27,000、Mw/Mn=2.14
【0141】
(合成例3)
N,N-[4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニル]アクリルアミドの合成
【化24】
窒素置換した500mLの四ツ口フラスコに、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(25.00g,0.061mol)、N,N-ジメチルアニリン(14.90g,0.123mol), 及び超脱水ジクロロメタン200mLを仕込み、均一に溶解するまで撹拌した。次に、反応溶液を氷/エタノールバスで0℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(6.69g,0.074mol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、エバポレーターで溶媒を留去し、粗生成物を酢酸エチル250mLに溶解した。その後、1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をヘキサンで再結晶精製することで、N,N-[4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニル]アクリルアミド(22.95g,収率81%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C
31H
45NO([M+Na]
+)]:482.2454 found 482.2411.
【0142】
(合成例4)
ポリアクリルアミドBの作製
300mL四つ口フラスコに合成例3の化合物(50.00g)、AIBN(0.11g)を仕込み、トルエン(50g)に溶解させた。減圧操作を加えて脱気を行い、窒素雰囲気化で65℃、24時間加熱撹拌した。その後、AIBN(0.10g)を加え、80℃で2時間撹拌した。加熱撹拌を停止するとともに反応液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定を行った。反応液をメタノール1L中に滴下することで粉体化を行った。得られた析出物をろ別し、真空乾燥機にて60℃、減圧による乾燥を行った。収量45.6g、Mw=26,220、Mw/Mn=1.98
【0143】
(実施例1、2及び比較例1)
各試薬を表1の組成(重量部)で、固形分濃度が50重量%となるように、トルエンに添加し、混合させた。その後、得られた液体からトルエンをエバポレーターで除去することで粉末状の樹脂組成物を得た。樹脂組成物を200℃で90分間、熱プレスすることで、硬化させた。得られた硬化物の物性を下記項目について測定し、結果を表1に示す。
<ガラス転移温度(Tg)>
DSC(示差走査熱量測定)装置(TAインスツルメント社製Q2000)を用いて昇温速度10℃/分の条件で昇温し、昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をガラス転移温度とした。
<誘電率試験(Dk)・誘電正接試験(Df)>
株式会社エーイーティー社製の円筒型空洞共振器(TEモード共振器)を用いて10GHzで測定を行った。
【0144】
【0145】
(実施例3、4及び比較例2)
各試薬を表2の組成(重量部)で、固形分濃度が50重量%となるように、トルエンに添加し、混合させた。その後、得られた液体からトルエンをエバポレーターで除去することで粉末状の樹脂組成物を得た。樹脂組成物を200℃で120分間、熱プレスすることで、硬化させた。得られた硬化物の物性を下記項目について測定し、結果を表2に示す。
<ガラス転移温度(Tg)>
DSC(示差走査熱量測定)装置(TAインスツルメント社製Q2000)を用いて昇温速度10℃/分の条件で昇温し、昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をガラス転移温度とした。
<誘電率試験(Dk)・誘電正接試験(Df)>
株式会社エーイーティー社製の円筒型空洞共振器(TEモード共振器)を用いて10GHzで測定を行った。
【0146】