(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151305
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】缶体製造装置および缶体製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 37/053 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B23K37/053 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038903
(22)【出願日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2023064171
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】山田 大智
(57)【要約】
【課題】自動継手嵌合が容易となる缶体製造装置および缶体製造方法を提供する。
【解決手段】缶体製造装置CEは、鏡板2を保持可能に構成された鏡板保持治具4と、円筒胴体3を保持可能に構成された矯正ユニットCUとを備えている。鏡板保持治具4は、円筒胴体3の軸方向に矯正ユニットCUに対して移動可能に構成されている。矯正ユニットCUは、円筒胴体3を円筒胴体3の径方向の外側から吸着可能に構成された複数の吸着パッド12と、円筒胴体3に円筒胴体3の径方向の外側から接触可能に構成された複数のワーク当て部11とを有している。複数の吸着パッド12の各々および複数のワーク当て部11の各々は、円筒胴体3の径方向に移動可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒胴体と前記円筒胴体に突き合わされる鏡板とを有する缶体を製造するための缶体製造装置であって、
前記鏡板を保持可能に構成された鏡板保持治具と、
前記円筒胴体を保持可能に構成された矯正ユニットとを備え、
前記鏡板保持治具は、前記円筒胴体の軸方向に前記矯正ユニットに対して移動可能に構成されており、
前記矯正ユニットは、前記円筒胴体を前記円筒胴体の径方向の外側から吸着可能に構成された複数の吸着パッドと、前記円筒胴体に前記円筒胴体の前記径方向の外側から接触可能に構成された複数のワーク当て部とを有し、
前記複数の吸着パッドの各々および前記複数のワーク当て部の各々は、前記円筒胴体の前記径方向に移動可能に構成されている、缶体製造装置。
【請求項2】
前記鏡板保持治具は、前記矯正ユニットと一体的に構成されている、請求項1に記載の缶体製造装置。
【請求項3】
前記矯正ユニットは、前記円筒胴体の上部を保持可能に構成された上部矯正ユニットと、前記円筒胴体の下部を保持可能に構成された下部矯正ユニットとを含み、
前記上部矯正ユニットと前記下部矯正ユニットとは互いに分離可能に構成されている、請求項1に記載の缶体製造装置。
【請求項4】
前記矯正ユニットは、前記円筒胴体の側部を保持可能に構成された側部矯正ユニットを含み、
前記側部矯正ユニットは、前記上部矯正ユニットおよび前記下部矯正ユニットの少なくともいずれかから分離可能に構成されている、請求項3に記載の缶体製造装置。
【請求項5】
前記矯正ユニットは、ワーク側面押しアクチュエータを含み、
前記ワーク側面押しアクチュエータは、前記円筒胴体の側面を押すことが可能に構成されている、請求項1に記載の缶体製造装置。
【請求項6】
嵌合圧測定ユニットをさらに備え、
前記嵌合圧測定ユニットは、前記缶体の長手方向に前記円筒胴体と前記鏡板を押し付ける嵌合圧を測定するように構成されている、請求項1に記載の缶体製造装置。
【請求項7】
継手形状測定ユニットをさらに備え、
前記缶体の継手形状を認識および定量化するように構成されている、請求項1に記載の缶体製造装置。
【請求項8】
鏡板保持治具が鏡板を保持する工程と、
矯正ユニットの複数の吸着パッドの各々が円筒胴体を前記円筒胴体の径方向の外側から吸着した状態で複数のワーク当て部の各々が前記円筒胴体に前記円筒胴体の前記径方向の外側から接触するように前記複数の吸着パッドの各々が前記円筒胴体を前記径方向に引っ張ることにより前記円筒胴体を変形させる工程と、
前記鏡板保持治具に保持された前記鏡板が、前記複数の吸着パッドの各々および前記複数のワーク当て部の各々によって変形された前記円筒胴体に突き合わされる工程とを備えた、缶体製造方法。
【請求項9】
鏡板保持治具が鏡板を保持する工程と、
矯正ユニットの複数の吸着パッドの各々が円筒胴体を前記円筒胴体の径方向の外側から吸着した状態で複数のワーク当て部の各々が前記円筒胴体に前記円筒胴体の前記径方向の外側から接触するように前記複数の吸着パッドの各々が前記円筒胴体を前記径方向に引っ張ることにより前記円筒胴体を変形させる工程と、
前記鏡板保持治具に保持された前記鏡板が、前記複数の吸着パッドの各々および前記複数のワーク当て部の各々によって変形された前記円筒胴体に突き合わされる工程と、
継手形状測定ユニットで前記円筒胴体と前記鏡板の継手形状を計測する工程と、
嵌合圧測定ユニットで缶体の長手方向に前記円筒胴体と前記鏡板を押し付ける嵌合圧を規定化する工程とを備えた、缶体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、缶体製造装置および缶体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
缶体が溶接により組み立てられる際、胴体と鏡板(蓋)との継手同士を合わせた状態(嵌合状態)を保持しながら胴体と鏡板とが溶接される。胴体と鏡板との継手同士を全周にわたって嵌合状態にすることは難しいため、通常、熟練者が手作業で時間をかけて実施している。
【0003】
熟練者の手作業ではなく装置を用いて自動的に胴体と鏡板との嵌合状態を実現する自動継手嵌合が提案されている。たとえば、特開平8-224693号公報(特許文献1)には、自動継手嵌合で胴体の端部開口部に蓋を周溶接する周溶接装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載された周溶接装置では、複数の把持部(第一部材および第二部材)によって胴体(胴部)を挟み込むことで胴体の端部開口部の形状の歪みが矯正される。しかしながら、胴体の剛性または寸法精度によっては胴体の端部開口部の形状の歪みを十分に矯正することができない。このため、自動継手嵌合が困難である。また、嵌合対象になる鏡板の寸法精度によってはさらに自動継手嵌合が困難になる。
【0006】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は自動継手嵌合が容易となる缶体製造装置および缶体製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の缶体製造装置は、円筒胴体と円筒胴体に突き合わされる鏡板とを有する缶体を製造するための缶体製造装置である。缶体製造装置は、鏡板を保持可能に構成された鏡板保持治具と、円筒胴体を保持可能に構成された矯正ユニットとを備えている。鏡板保持治具は、円筒胴体の軸方向に矯正ユニットに対して移動可能に構成されている。矯正ユニットは、円筒胴体を円筒胴体の径方向の外側から吸着可能に構成された複数の吸着パッドと、円筒胴体に円筒胴体の径方向の外側から接触可能に構成された複数のワーク当て部とを有している。複数の吸着パッドの各々および複数のワーク当て部の各々は、円筒胴体の径方向に移動可能に構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の缶体製造装置によれば、自動継手嵌合が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る缶体製造装置の構造を概略的に示す断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る缶体製造装置の嵌合後の構造を概略的に示す断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る缶体製造装置の上部矯正ユニットおよび下部矯正ユニットの構造および動作を概略的に示す断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る缶体製造装置のワーク当て部の構造を概略的に示す断面図である。
【
図5】実施の形態1に係る缶体製造装置のワーク当て部の構造および動作を概略的に示す断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る缶体製造装置の変形例のワーク当て部の構造および動作を概略的に示す断面図である。
【
図7】実施の形態1に係る缶体製造装置の嵌合不良部における継手部の断面図である。
【
図8】実施の形態1に係る缶体製造装置の嵌合不良部の修正手順(片側回転)を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る缶体製造装置の嵌合不良部の修正手順(両側回転)を示す図である。
【
図10】実施の形態2に係る缶体製造装置の構造および動作を概略的に示す断面図である。
【
図11】実施の形態3に係る缶体製造装置の矯正ユニットの構造および動作を概略的に示す断面図である。
【
図12】実施の形態4に係る缶体製造装置の矯正ユニットの構造および動作を概略的に示す断面図である。
【
図13】実施の形態5に係る缶体製造装置の構造を概略的に示す断面図である。
【
図14】実施の形態5に係る缶体製造装置の嵌合後の構造を概略的に示す断面図である。
【
図15】実施の形態5に係る缶体製造装置の嵌合圧測定ユニットの構造を概略的に示す図である。
【
図16】実施の形態5に係る缶体製造装置の嵌合圧測定ユニットの動作を概略的に示す断面図である。
【
図17】実施の形態5に係る缶体製造装置の嵌合圧測定ユニットの嵌合圧センサの配置を概略的に示す図である。
【
図18】実施の形態6に係る缶体製造装置の構造を概略的に示す断面図である。
【
図19】実施の形態6に係る缶体製造装置の嵌合後の構造を概略的に示す断面図である。
【
図20】実施の形態6に係る缶体製造装置の継手形状測定ユニットの計測箇所を概略的に示す断面図である。
【
図21】実施の形態6に係る缶体製造装置の嵌合良否を概略的に示す図である。
【
図22】実施の形態7に係る缶体製造装置の嵌合不良箇所への認識および嵌合不良修正動作の第1プロセスを概略的に示す図である。
【
図23】実施の形態7に係る缶体製造装置の嵌合不良箇所への認識および嵌合不良修正動作の第2プロセスを概略的に示す図である。
【
図24】実施の形態7に係る缶体製造装置の嵌合不良箇所への認識および嵌合不良修正動作の第3プロセスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して実施の形態を説明する。なお、以下においては、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0011】
実施の形態1.
図1および
図2を参照して、実施の形態1に係る缶体製造装置CEの構造について説明する。なお、以下の図では、説明の便宜のため、適宜、缶体製造装置CEの一部は断面ではなく側面が示されている。また、見易くするため、適宜、缶体製造装置CEの一部の断面にハッチングが付されていない。本実施の形態の缶体製造装置CEは、缶体1を製造するための缶体製造装置CEである。
【0012】
缶体1は、鏡板2と、円筒胴体3とを有している。鏡板2は、円筒胴体3に突き合わされる。鏡板2は、第1鏡板21と、第2鏡板22とを含んでいる。第1鏡板21は、円筒胴体3の軸方向の一方端に接合されている。第2鏡板22は、円筒胴体3の軸方向の他方端に接合されている。第1鏡板21および第2鏡板22は、円筒胴体3を挟み込むように配置されている。
【0013】
本実施の形態において、第1方向DR1は、第1鏡板21および第2鏡板22が円筒胴体3を挟み込む方向である。第1方向DR1は、円筒胴体3の軸方向に沿っている。第2方向DR2は、重力方向である。第3方向DR3は、第1方向DR1および第2方向DR2に直交する方向である。
【0014】
第1鏡板21および第2鏡板22の各々は、起立部2aと、筒状部2bと、カップ部2cとを含んでいる。起立部2aは、筒状部2bから立ち上がるように構成されている。起立部2aの外径は、筒状部2b外径よりも大きい。カップ部2cは、起立部2aとで筒状部2bを挟んでいる。カップ部2cは、缶体1の先端として構成されている。起立部2aおよび筒状部2bは、L形状継手部を構成している。
【0015】
円筒胴体3は、円筒形状に構成されている。
図5に示されるように、円筒胴体3は、軸方向の両端に、円筒部3aと、接続部3bと、大径部3cとを含んでいる。円筒部3aは、円筒形状を有している。接続部3bは、円筒部3aの端から外側に張り出している。円筒部3aは、接続部3bによって大径部3cに接続されている。大径部3cの外径は、円筒部3aの外径よりも大きい。円筒部3a、接続部3bおよび大径部3cは、Z形状継手部を構成している。
【0016】
本実施の形態の缶体製造装置CEは、鏡板保持治具4と、矯正ユニットCUとを備えている。
【0017】
鏡板保持治具4は、鏡板2を保持可能に構成されている。鏡板保持治具4は、円筒胴体3の軸方向に矯正ユニットCUに対して移動可能に構成されている。鏡板保持治具4は、第1方向DR1において両側に向かい合うように設置されている。鏡板保持治具4は、第1方向DR1に沿って缶体1を挟み込むように配置されている。
【0018】
鏡板保持治具4は、底板41と、矯正リング42と、環状部43と、周壁部44と、テーパ部45と、支持板46と、シリンダ47と、ガイド48と、圧縮ばね49とを有している。
【0019】
底板41は、カップ部2cの底面を受けるように構成されている。矯正リング42は、筒状部2bおよびカップ部2cを挿入可能に構成されている。矯正リング42は、起立部2aを係止するように構成されている。環状部43は、矯正リング42を取り囲んでいる。環状部43は、円筒胴体3が第1鏡板21および第2鏡板22に突き合わせられた状態において、大径部3cの先端と接触しないように構成されている。
【0020】
周壁部44は、環状部43を取り囲んでいる。周壁部44は、環状部43によって矯正リング42に接続されている。周壁部44の内径は、円筒胴体3の大径部3cの外径よりも大きい。テーパ部45は、周壁部44の先端に接続されている。テーパ部45は、テーパ部45の内径がテーパ部45の根元側から先端側に向かって大きくなるように構成されている。
【0021】
矯正リング42、環状部43および周壁部44は、支持板46に接続されている。また、シリンダ47およびガイド48は、支持板46に接続されている。シリンダ47は、底板41に固定されている。シリンダ47は、第1方向DR1に沿って支持板46を移動させるように構成されている。これにより、支持板46に接続された矯正リング42、環状部43および周壁部44は、第1方向DR1に沿って移動可能である。圧縮ばね49は、ガイド48を取り囲んでいる。圧縮ばね49のばね力によって、支持板46には、円筒胴体3に近付く向きの力が作用する。
【0022】
図2および
図3を参照して、矯正ユニットCUは、円筒胴体3を保持可能に構成されている。矯正ユニットCUは、上部矯正ユニット6と、下部矯正ユニット7とを含んでいる。上部矯正ユニット6は、円筒胴体3の上部を保持可能に構成されている。下部矯正ユニット7は、円筒胴体3の下部を保持可能に構成されている。上部矯正ユニット6と下部矯正ユニット7とは互いに分離可能に構成されている。
【0023】
また、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7は、上下方向アクチュエータ8と、矯正ユニットフローティング機構9とを含んでいる。上下方向アクチュエータ8は、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7を上下方向に移動可能に構成されている。矯正ユニットフローティング機構9は、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7を長手方向に移動可能に構成されている。
【0024】
矯正ユニットCUは、複数のワーク当て部11と、複数の吸着パッド12とを有している。複数のワーク当て部11は、円筒胴体3に円筒胴体3の径方向の外側から接触可能に構成されている。複数の吸着パッド12は、円筒胴体3を円筒胴体3の径方向の外側から吸着可能に構成されている。複数の吸着パッド12は、円筒胴体3に接触するパッド部(リップ部)を有している。複数の吸着パッド12は、たとえば真空吸着パッドである。以下、適宜、吸着は真空吸着を例に説明する。複数の吸着パッド12の各々および複数のワーク当て部11の各々は、円筒胴体3の径方向に移動可能に構成されている。
【0025】
矯正ユニットCUは、フレーム13をさらに有している。複数のワーク当て部11および複数の吸着パッド12はフレーム13に取り付けられている。フレーム13は、円環状に構成されている。上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7の各々のフレームはそれぞれ半円形状に構成されている。
【0026】
缶体製造装置CEでは、第1方向DR1において両側に向かい合うように設置された鏡板保持治具4にそれぞれ第1鏡板21と第2鏡板22とがセットされ、第1鏡板21と第2鏡板22とで挟むように円筒胴体3がセットされる。
【0027】
鏡板保持治具4は、長手方向アクチュエータ5を有している。長手方向アクチュエータ5は、第1方向DR1に鏡板保持治具4を移動可能に構成されている。鏡板保持治具4の少なくとも片方は、長手方向アクチュエータ5で位置制御可能に構成されている。さらに、鏡板保持治具4の少なくとも片方は、円筒胴体3側に加圧可能に構成されている。円筒胴体3は、薄板で作られているため、重力で簡単に撓むように構成されている。上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7はそれぞれ円筒胴体3の両端付近に接して形状矯正を可能とするように構成されている。
【0028】
上部矯正ユニット6は、上下方向アクチュエータ8により、円筒胴体3に対して非接触になるように上に退避可能に構成されている。下部矯正ユニット7は、上下方向アクチュエータ8により、円筒胴体3に対して非接触になるように下に退避可能に構成されている。また、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7はそれぞれ長手方向に多少ずれることを許容できるように矯正ユニットフローティング機構9を有している。
【0029】
本実施の形態では、端面断面がL形状をした第1鏡板21および第2鏡板22と、端面断面がZ形状をした円筒胴体3とが、
図2に示された継手部10のようにZ形状継手部の方がL形状継手部の外側に来るように全周に渡って嵌めあわされる。第1鏡板21および第2鏡板22の各々と円筒胴体3とは、長手方向アクチュエータ5によって第2鏡板22側から長手方向(第1方向DR1)に加圧されている状態を保ちながら、継手部10を溶接可能とする必要がある。そのため、鏡板保持治具4は、第1鏡板21および第2鏡板22の各々のL形状継手部を抑える状態と退避する状態とを切替え可能に構成されている。
【0030】
図1は、鏡板保持治具4によって第1鏡板21および第2鏡板22の各々のL形状継手部を抑える状態を示している。
図2は、鏡板保持治具4によって第1鏡板21および第2鏡板22の各々のL形状継手部を退避する状態を示している。
図2のように第1鏡板21および第2鏡板22のL形状継手部から退避している状態であっても第1鏡板21および第2鏡板22の中央部は鏡板保持治具4と接触するので、長手方向アクチュエータ5での円筒胴体3側への加圧は保持される。これは長手方向に加圧しながら継手部10を溶接可能とするためである。
【0031】
図3および
図4を参照して、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7の詳細な構造について説明する。
図3は、上部矯正ユニット6および下矯正ユニット7を円筒胴体3の軸方向に垂直な方向から見た断面図である。
【0032】
上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7はそれぞれ半円形状であり円筒胴体3の周囲を囲むように構成されている。上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7は、位置決め機構PMによってフレーム装着時に組み合わせられる。これにより、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7は、多少の外力がかかっても連動するよう構成されている。
【0033】
矯正ユニットCUでは、ベースとなるフレーム13に各部品が取り付けられている。ワーク当て部11と吸着パッド12とは締結等で一体化されている。ワーク当て部11および吸着パッド12は、径方向ガイド14によってフレーム13の径方向にのみ動作可能となるよう規制される。ワーク当て部11および吸着パッド12は、セットで円周上に複数配置される。なお、
図3では、各ユニット5セットずつで図示さているが、セットの数は5つに限定されない。
図3には図示されていないアクチュエータにより、各ユニットは、単独もしくは連動して、円筒胴体3の径方向に動作するように構成されている。つまり、図示されていないアクチュエータにより、複数の吸着パッド12の各々および複数のワーク当て部11の各々は、円筒胴体3の径方向に移動可能に構成されている。
【0034】
図4に示されるように、本実施の形態では、サーボモータ17、ボールねじ18、長手方向ガイド19により長手方向に動く楔フレーム16によって、ワーク当て部11および吸着パッド12は、円筒胴体3の径方向に動作するように構成されている。ワーク当て部11は、ばね15によって常に楔フレーム16側に押し付けられるように構成されている。楔フレーム16は、1個で複数のワーク当て部11を連動させて動かすように構成されていてもよい。また、円筒胴体3の径方向に移動可能なアクチュエータを個別のワーク当て部11にそれぞれ割り当てて、各ユニットを単独で動作させてもよい。
【0035】
図5を参照して、ワーク当て部11と吸着パッド12の詳細な構造について説明する。ワーク当て部11と吸着パッド12は締結で一体化されている。ワーク当て部11は、
図3と同じ方向から見ると円弧形状であるが、横から見るとコの字形状であり、中央に吸着パッド12が入り込むように構成されている。さらに、吸着パッド12は、ワーク当て部11から径方向内側にパッド部がはみ出て、かつ吸着中にパッド部がワーク当て部11のワーク当て面まで縮むことができるように構成されている。そのため、吸着パッド12は、縮み量の大きいベロウ付きのパッド部を有することが望ましい。もしくは、円筒胴体3をワーク当て部11まで引き込めるように、ワーク当て部11と吸着パッド12とがそれぞれ独立して径方向動作するように構成されていてもよい。
【0036】
矯正前の円筒胴体3がワーク当て部11から離れるような形状だとしても、真空吸着前に吸着パッド12が円筒胴体3に接触し、真空吸着中に吸着パッド12が縮んでワーク当て部11の方へ円筒胴体3を引き寄せることで円筒胴体3の形状を矯正することが可能となる。円筒胴体3がワーク当て部11に接触するまで矯正できるかどうかは、円筒胴体3の剛性、ワーク当て部11の位置、吸着パッド12の吸着力に依存する。また、ワーク当て部11は、吸着パッド12と円筒胴体3の形状に合うように円弧面でワークである円筒胴体3に接触するように構成されている。
【0037】
ただし、これは必須ではなく、例えば、
図6のように、ワーク当て部11は、板にピン16を立てただけの構造でも良い。ただし、この構造は、円筒胴体3の剛性が十分にあり、吸着パッド12によって円筒胴体3をピン16とピン16の間に過剰に引き込むことがない場合に採用可能である。
【0038】
円筒胴体3の形状矯正時における上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7の動作について説明する。
図3を参照して、「A:フレーム退避時」、「B:フレーム装着時(吸着パッド退避状態)」、「C:フレーム装着時(吸着パッド装着状態)」の順番で上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7は動作する。まず、「A:フレーム退避時」は、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7が円筒胴体3から上下に大きく退避し、円筒胴体3のセットおよび缶体完成後の搬出が可能な状態である。
【0039】
「B:フレーム装着時(吸着パッド退避状態)」は、
図1に示された上下方向アクチュエータ8によって上部矯正ユニット6と下部矯正ユニット7とがそれぞれ円筒胴体3の周りに接近してきて、上部矯正ユニット6と下部矯正ユニット7とが位置決め機構PMで連結された状態である。さらに、この際にはワーク当て部11および吸着パッド12が円筒胴体3の径方向に退避している。これにより、フレーム13の装着動作中に吸着パッド12のパッド部が円筒胴体3に横から接触することでめくれないようにする。特に、半円形状のフレーム13の両端付近の吸着パッド12は、円筒胴体3が重力方向に潰れやすい影響もあり、円筒胴体3に横から接触しやすいので、十分な退避ストロークが必要となる。
【0040】
「C:フレーム装着時(吸着パッド装着状態)」は、フレーム13の装着後に退避していたワーク当て部11および吸着パッド12が円筒胴体3側に寄せられた状態である。これにより、ワーク当て部11を適切な位置に制御することで円筒胴体3を真円に近い形で保つことができる。この場合も、特に円筒胴体3の上側頂点付近が重力でワーク当て部11に非接触にならないよう、吸着パッド12は吸着状態にしておく必要がある。
【0041】
第1鏡板21および第2鏡板22のL形状継手部が全周に渡って真円を成す場合、上記矯正にて円筒胴体3を真円にできれば、それらを組み合わせることで
図2の継手部10のように継手部が全周嵌ると考えられる。しかしながら、第1鏡板21および第2鏡板22の形状が真円からずれている場合、
図7に示すように、継手部が嵌らない嵌合不良点が発生する。
【0042】
本実施の形態の缶体製造装置CEでは、まず上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7にて
図3の「C:フレーム装着時(吸着パッド装着状態)」のように、円筒胴体3の両端を真円に近い形状に矯正にした上で、
図1に示す長手方向アクチュエータ5で第1鏡板21および第2鏡板22と円筒胴体3とを組み合わせて加圧した状態にする。ある程度加圧している場合には、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7を退避させても円筒胴体3はその形状を保っている。
【0043】
その次に全ての吸着パッド12の吸着を停止し、全てのワーク当て部11を円筒胴体3の径方向に動作させ、
図5の「(1)真空吸着前」のように円筒胴体3に吸着パッド12は触れているがワーク当て部11には触れていない位置に、ワーク当て部11および吸着パッド12を制御する。ここから
図5の「(2)真空吸着中」のように吸着パッド12を吸着開始することで円筒胴体3を外側に引っ張り、
図7に示す継手嵌合不良部を
図2の継手部10の形状に修正することができる。一度、円筒胴体3側のZ形継手が鏡板のL形状継手部よりも外側に来て継手部が嵌った場合には、その箇所の吸着を停止したとしてもZ形状継手部が引っ掛かり元の状態に戻ることは無い。この真空吸着を全周に渡って順番にしていけば継手嵌合不良部を修正可能となる。ここで同時ではなく順番に吸着していく理由は、全周同時吸着をしてしまうと、吸着力のバランスの関係で吸着力が低い箇所は円筒胴体3を引き寄せることができなくなるためである。
【0044】
また、この順番は、隣り合う点を連続して吸着していく必要があり、例えば
図8に示す順番である。
図8では、鏡板は、真円でないことを表すため、極端にギザギザ突起のある形で模式的に図示されている。
図8は、胴位置を吸着して鏡板位置より全周に渡って外側に持ってくることで嵌合するまでの手順をフェイズ1~8の順で説明した図である。最初は上の頂点から吸着を始め、時計回りに吸着位置を次々に変えていくことで、継手嵌合不良部があったとしても継手部が全周嵌る。隣り合う点を連続して吸着する理由は、継手嵌合不良部だけ引っ張ったとしても不良部周囲のL形状継手部とZ形状継手部内側に隙間がない場合には円筒胴体3が外側に変形する余地がないため不良部修正ができない可能性があるからである。これに対し、連続して吸着する場合は、吸着パッド周辺でL形状継手部とZ形状継手部内側の隙間を常に保ったまま次の吸着点を変形させていくので、胴体位置の変形が十分になり、
図8のように継手部が全周嵌る。ただし、継手嵌合不良部の箇所から吸着を開始すると最初の時点では変形しない可能性もあるので、ラップして一周よりも、一周半から二周程度、連続吸着するほうが望ましい。
【0045】
また、
図9で示したように最初の吸着点から両側に分かれるような順番で吸着してもよい。両側に分かれることで一度嵌った場所が引っ張るのをやめた後に他の場所を引っ張ることで再度継手嵌合不良になるリスクが低下する。これらの方法で一通り吸着による矯正動作を実施し嵌合が完了したら、最後に継手部10の溶接が可能なように、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7は、
図3の「A:フレーム退避時」の形に退避する。
【0046】
また、
図1および
図2に示した矯正ユニットフローティング機構9は、例えばガイドとばねから構成される。これらを設ける理由は次の通りである。上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7は、嵌合直前から嵌合後にかけて円筒胴体3を吸着する必要がある。嵌合する際に円筒胴体3は第1鏡板21側に相対的に動くため、吸着中の上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7も一緒に動けるように構成されている。
【0047】
図1~
図3を参照して、本実施の形態の缶体製造方法について説明する。
本実施の形態の缶体製造方法は次の工程を備えている。
図1に示されるように、鏡板保持治具4が鏡板2を保持する。
図2および
図3に示されるように、矯正ユニットCUの複数の吸着パッド12の各々が円筒胴体3を円筒胴体3の径方向の外側から吸着した状態で複数のワーク当て部11の各々が円筒胴体3に円筒胴体3の径方向の外側から接触するように複数の吸着パッド12の各々が円筒胴体3を径方向に引っ張ることにより円筒胴体3を変形させる。
【0048】
図2および
図3に示されるように、鏡板保持治具4に保持された鏡板2が、複数の吸着パッド12の各々および複数のワーク当て部11の各々によって変形された円筒胴体3に突き合わされる。このように、鏡板2と円筒胴体3とが突き合わされた嵌合状態を保持しながら、鏡板2と円筒胴体3との継手部が図示しない溶接装置により溶接される。これにより、缶体1が製造される。
【0049】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態に係る缶体製造装置CEによれば、複数の吸着パッド12の各々および複数のワーク当て部11の各々は、円筒胴体3の径方向に移動可能に構成されている。このため、円筒胴体3の形状の歪みを十分に矯正することができる。また、鏡板2の真円度が悪くても円筒胴体3を鏡板2に嵌合させることができる。したがって、円筒胴体3と鏡板2との自動継手嵌合が容易となる。
【0050】
また、缶体製造装置CEによる自動継手嵌合によって、熟練者の手作業に比べて短い時間で円筒胴体3と鏡板2との嵌合状態を実現することができる。
【0051】
本実施の形態に係る缶体製造方法によれば、矯正ユニットCUの複数の吸着パッド12の各々が円筒胴体3を円筒胴体3の径方向の外側から吸着した状態で複数のワーク当て部11の各々が円筒胴体3に円筒胴体3の径方向の外側から接触するように複数の吸着パッド12の各々が円筒胴体3を径方向に引っ張ることにより円筒胴体3を変形させる。このため、円筒胴体3の形状の歪みを十分に矯正することができる。また、鏡板2の真円度が悪くても円筒胴体3を鏡板2に嵌合させることができる。したがって、自動継手嵌合が容易となる。また、熟練者の手作業に比べて短い時間で円筒胴体3と鏡板2との嵌合状態を実現することができる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態2は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、動作および効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0053】
図10を参照して、実施の形態2に係る缶体製造装置CEでは、鏡板保持治具4は、矯正ユニットCUと一体的に構成されている。
図10の「(A)初期状態」のように、本実施の形態では、鏡板保持治具4は、第2鏡板22側の上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7と一体的に構成されている。鏡板保持治具4は、第1鏡板21側の上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7と一体的に構成されていない。第2鏡板22側の上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7は、長手方向アクチュエータ5で第2鏡板22などと一体化して一緒に動作するように構成されている。
【0054】
図10の「(B)吸着開始」のように、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7が円筒胴体3を吸着する。そして、
図10の「(C)嵌合後」のように、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7が円筒胴体3の形状を矯正しながら円筒胴体3と鏡板2とが嵌合される。
【0055】
第2鏡板22側の矯正ユニットフローティング機構9は、第1鏡板21側の矯正ユニットフローティング機構9とはフローティング方向が逆になる。
【0056】
本実施の形態に係る缶体製造装置CEによれば、鏡板保持治具4は、矯正ユニットCUと一体的に構成されている。したがって、円筒胴体3の長手方向長さに種類がある場合でも、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7をそれぞれ動かす新たなアクチュエータを追加しなくてもそのまま対応可能となる。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態3は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、動作および効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0058】
図11を参照して、実施の形態3に係る缶体製造装置CEでは、矯正ユニットCUは、側部矯正ユニットSUを含んでいる。側部矯正ユニットSUは、円筒胴体3の側部を保持可能に構成されている。側部矯正ユニットSUは、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7の少なくともいずれかから分離可能に構成されている。
【0059】
図3では、矯正ユニットCUは、上部矯正ユニット6と下部矯正ユニット7の二分割で示しているが、分割数はさらに増えても良い。上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7による半円2個の二分割は、シンプルであるが、上下に退避するためのストロークが大きいというデメリットがある。これにより、缶体製造装置CEを上下(縦)に大きくする必要がある。これに対し、
図11に示されるように、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7の円筒胴体3を覆う範囲をそれぞれ小さくし、その分、側部矯正ユニットSUで円筒胴体3を覆う構成にすれば、上下に退避するためのストロークを小さくすることができる。
【0060】
図11では、側部矯正ユニットSUは、上部矯正ユニット6からロータリーアクチュエータ23の動作によって、セットと退避とを切り換える構造を有している。側部矯正ユニットSUは、別の部品に取り付けられたアクチュエータの動作でセットと退避とを切り換える構造でも良い。
【0061】
本実施の形態に係る缶体製造装置CEによれば、側部矯正ユニットSUは、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7の少なくともいずれかから分離可能に構成されている。このため、缶体製造装置CEを上下に大きくならないようにすることができる。したがって、缶体製造装置CEのコンパクト化を実現することが可能となる。
【0062】
実施の形態4.
実施の形態4は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、動作および効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0063】
図12を参照して、実施の形態4に係る缶体製造装置CEでは、矯正ユニットCUは、ワーク側面押しアクチュエータ24を含んでいる。ワーク側面押しアクチュエータ24は、円筒胴体3の側面を押すことが可能に構成されている。ワーク側面押しアクチュエータ24は、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7の少なくともいずれかに取り付けられている。
【0064】
円筒胴体3は、剛性によっては重力方向につぶれる可能性がある。それに対して、
図3では「B:フレーム装着時(吸着パッド退避状態)」から「C:フレーム装着時(吸着パッド装着状態)」にかけて、ワーク当て部11と吸着パッド12とが円筒胴体3に押しつけられる。しかしながら、吸着パッド12が先に当たり円筒胴体3を変形させる際にパッドがめくれるなどの吸着不良を発生する原因になることがありえる。これに対し、
図12に示されるように、本実施の形態では、吸着パッド12の吸着前に円筒胴体3を横方向にワーク側面押しアクチュエータ24により押せる構造にすることで、円筒胴体3の潰れた形状を修正した状態で吸着パッド12が吸着可能となる。
【0065】
図12では、ワーク側面押しアクチュエータ24は上部矯正ユニット6に取り付けられている。ワーク側面押しアクチュエータ24は、下部矯正ユニット7に取り付けられても良く、別のところに取り付けられても良い。
【0066】
本実施の形態に係る缶体製造装置CEによれば、ワーク側面押しアクチュエータ24は、円筒胴体3の側面を押すことが可能に構成されている。このため、重力方向のたわみが大きい円筒胴体3に対しても真円に近い形にあらかじめ矯正することができる。したがって、吸着パッド12がめくれるなどの吸着不良の発生を抑制することができる。
【0067】
実施の形態5.
実施の形態5は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、動作および効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0068】
図13~
図17を参照して、実施の形態5に係る缶体製造装置CEは、嵌合圧測定ユニット101を有している。嵌合圧測定ユニット101は、缶体1の長手方向に円筒胴体3と鏡板2を押し付ける嵌合圧を測定するように構成されている。嵌合圧測定ユニット101は、嵌合圧測定センサ111と、嵌合圧測定フレーム112と、摺動部113とを有している。
【0069】
図15に示されるように、嵌合圧測定ユニット101は、鏡板保持治具4と摺動部113を介して接続可能に構成されている。嵌合圧測定フレーム112は、円盤形状を有している。嵌合圧測定フレーム112の周方向に、嵌合圧測定センサ111および摺動部113が配置されている。
【0070】
嵌合圧測定センサ111は、例えば、ロードセルである。摺動部113は、例えば、丸棒シャフトとブッシュ付きのガイド等である。嵌合圧測定センサ111および摺動部113は、同等の機能を有するものであれば、これらに限らない。嵌合圧測定センサ111および摺動部113と嵌合圧測定フレーム112との固定方法は、嵌合および溶接時の作業を鑑みて、これらの締結が外れることのない十分な強度を有する。
【0071】
嵌合圧測定ユニット101は、鏡板保持治具4に接続された状態において、長手方向アクチュエータ5による長手方向(第1方向DR1)への荷重を作用させた際のセンシングとして機能する。嵌合圧測定ユニット101は、
図16の「(A)接触前基準状態」に示されるように、嵌合圧測定センサ111が鏡板保持治具4に接触していない接触前基準状態を基点に、長手方向アクチュエータ5によって長手方向(第1方向DR1)へ更に押し付けられた際、「(B)接触後状態」に示されるように、底板41が嵌合圧測定センサ111と接触するなどし、嵌合圧(長手方向アクチュエータ5による長手方向(第1方向DR1)への荷重負荷圧)を計測する。
【0072】
嵌合圧測定センサ111および摺動部113はそれぞれ複数配置することができる。
図15に示されるように、例えば、嵌合圧測定センサ111および摺動部113はそれぞれ3点配置されている。配置数、中心からの配置距離に関しては、鏡板保持治具4の取付方次第に応じて決定すればよく、制約はない。
【0073】
嵌合圧測定センサ111の配置数が3点配置の場合、嵌合圧は3点分の計測結果を合成した値に基づいて計算される。
図17に示されるように、3点個別の配置位置(寸法a、b、c)と個別の計測結果をもとに、円筒胴体3と鏡板2がうまく嵌っておらず嵌合不良となっている箇所の推定が行われる。
【0074】
長手方向アクチュエータ5がモータ使用による制御等であれば電流値による嵌合負荷圧制御を行うことも可能であるが、円筒胴体3および鏡板2までの物理的距離も遠く、装置全体のノイズが嵌合負荷圧に影響を及ぼすこともあり、電流値と嵌合負荷圧の相関関係に疑義が生じうる。
【0075】
本実施の形態に係る缶体製造装置CEによれば、長手方向アクチュエータ5による長手方向(第1方向DR1)への円筒胴体3と鏡板2とが押し付けられる際の荷重を、物理的に近い位置において嵌合負荷圧でセンシングすることができ、長手方向アクチュエータ5による位置座標制御ではなく圧力制御が可能となる。
【0076】
実施の形態6.
実施の形態6は、特に説明しない限り、上記の実施の形態5と同一の構成、動作および効果を有している。したがって、上記の実施の形態5と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0077】
図18~
図21を参照して、実施の形態6に係る缶体製造装置CEは、継手形状測定ユニット121を有している。継手形状測定ユニット121は、缶体1の継手形状を認識および定量化するように構成されている。継手形状測定ユニット121は、形状測定センサ131と、固定フレーム132とを有している。
【0078】
形状測定センサ131は、固定フレーム132に接続されている。形状測定センサ131は、円筒胴体3および鏡板2の形状(第1方向DR1の距離、第2方向DR2の距離)を計測可能に構成されている。形状測定センサ131には、円筒胴体3および鏡板2の表面形状で上記形状(第1方向DR1の距離、第2方向DR2の距離)を計測できるセンサが使用される。例えば、形状測定センサ131は、2次元センサ、カメラなどの画像処理機器である。
【0079】
固定フレーム132は、缶体製造装置CEの嵌合動作、溶接動作などの構成要素が駆動している条件下でも、接続された形状測定センサ131が揺れることなく、常に精度のよい位置状態を保持するよう締結することが望ましい。例えば、振動防止クッションを介した締結、堅牢な部材からへの締結などの手法が望ましい。
【0080】
形状測定センサ131で計測する測定範囲133は、円筒胴体3の接続部3bおよび大径部3c、ならびに、鏡板2の起立部2aおよび筒状部2bを覆える範囲とする。
図18および
図19では、継手形状測定ユニット121が円筒胴体3に対して上部に設置される配置となっているが、下部または側部に設置されても構わない。
【0081】
継手形状測定ユニット121の使用状態として、
図20の「(1)測定基準位置」に示されるように、測定基準に対して円筒胴体3の大径部3cの幅Z1が測定される。この際、幅Z1は測定基準に対して寸法zaおよび寸法zbに分解される。これにより、基準位置に対する距離が取得される。
図20の「(2)バラつき有りの位置」に示されるように、測定基準に対して円筒胴体3の製作バラつきまたは位置変動要素が発生した際は、測定基準に対して、寸法zc、寸法zdおよび幅Z2が取得される。測定基準に対する、円筒胴体3の大径部3cの位置および幅のバラつき量が取得および管理される。
【0082】
継手形状測定ユニット121では、測定基準に対して円筒胴体3の大径部3cまでの距離h3が測定される。また、鏡板2の筒状部2bまでの距離h1が測定される。
【0083】
幅Z1、大径部3cまでの距離h3、筒状部2bまでの距離h1について、筒状の形状を有する缶体に対して全周方向に対して計測が行われ、缶体角度成分ごとの継手形状が導出される。
【0084】
例えば、ある缶体角度成分θにおける円筒胴体3と鏡板の嵌合隙間は、次の式で表される。
【0085】
δh(θ)=h3(θ)―h1(θ)
δhが嵌合できているかの判定値として取得される。
【0086】
図21の「A:嵌合不可条件」、「B:嵌合不良修正可能範囲」、「C:溶接時」は嵌合不良を示している。
【0087】
本実施の形態に係る缶体製造装置CEによれば、形状測定センサ131によって、円筒胴体3と鏡板2の継手形状を測定することが可能になる。これにより、円筒胴体3と鏡板2が嵌り合う関係性を、缶体円周方向全体に対して定量的に判定することが可能になる。したがって、円筒胴体3と鏡板2の隙間が微細である場合でも、人手による目視判定では判断が困難な、嵌合ができていない不良領域も認識することに繋がる。
【0088】
実施の形態7.
実施の形態7は、特に説明しない限り、上記の実施の形態6と同一の構成、動作および効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0089】
図22~
図24を参照して、実施の形態7に係る缶体製造装置CEは、嵌合圧測定ユニット101と継手形状測定ユニット121の機能を組み合わせた嵌合不良箇所への認識と嵌合不良修正動作のプロセスを含んでいる。
【0090】
以下に嵌合不良修正動作のプロセスを示す。
缶体製造装置CEにて、第1方向DR1において両側に向かい合うように設置された鏡板保持治具4にそれぞれ第1鏡板21と第2鏡板22とがセットされ、第1鏡板21と第2鏡板22とで挟むように円筒胴体3がセットされる。このとき、円筒胴体3と鏡板2は非接触であり、長手方向(第1方向DR1)において隙間がある。
【0091】
長手方向アクチュエータ5によって長手方向(第1方向DR1)へ円筒胴体3と鏡板2とが押し付けられる。このとき、円筒胴体3と鏡板2は接触する関係になり、うまく嵌め合わされている(1)嵌合状態、鏡板2が円筒胴体3を乗り上げるような(2)嵌合不良状態の状態などが生じる。長手方向アクチュエータ5で押し付ける力は、上部矯正ユニット6および下部矯正ユニット7を退避させても円筒胴体3がその形状を保っている程度とする。嵌合圧測定ユニット101で取得し、長手方向アクチュエータ5でフィードバック調整することで、嵌合圧W1がキープされる。
【0092】
継手形状測定ユニット121にて、缶体に対して全周方向に対して計測が行われ、缶体角度成分ごとの継手形状が導出される。缶体角度成分θ全域において円筒胴体3と鏡板2の嵌合隙間は次の式で算出される。
【0093】
δh(θ)=h3(θ)―h1(θ)
δh<0であれば、嵌合不良箇所であると判定される。
【0094】
また、継手形状測定ユニット121で計測される幅Zに基づき、測定基準に対して円筒胴体3の大径部3cの位置および幅のバラつき量が取得される。取得情報から円筒胴体3と鏡板2が非接触とならない量(後退可能量)が導出された後、後退可能量以内の量で、長手方向アクチュエータ5(第1方向DR1)が後退させられる。このとき、嵌合圧測定ユニット101で取得される嵌合圧値がモニターされながら、嵌合圧W2がキープされる。
【0095】
継手形状測定ユニット121で取得される嵌合不良箇所に対して、実施の形態1の矯正ユニットにて嵌合不良修正が行われる。
【0096】
継手形状測定ユニット121にて、缶体全周方向に対して計測が行われ、缶体角度成分ごとの継手形状が導出される。δh(θ)が算出され、嵌合不良状態になるまで繰り返えされる。
【0097】
長手方向アクチュエータ5(第1方向DR1)が前進し、嵌合圧測定ユニット101で取得される嵌合圧値、および、継手形状測定ユニット121で測定される継手形状をモニターしながら、嵌合圧W3が保持され、以降溶接が実施される。
【0098】
本実施の形態に係る缶体製造装置CEによれば、嵌合圧測定ユニット101と継手形状測定ユニット121の機能を組み合わせた嵌合不良箇所への認識を行うことで、円筒胴体3と鏡板2の第1方向DR1の隙間が微細で狭い場合においても、嵌合不良修正可能な動作を実現できる。缶体の円周方向に生じる嵌合不良部に対して、ピンポイントで嵌合不良修正を試みることが可能となる。すなわち、嵌合不良修正動作のやり直し作業が少なく、サイクルタイム改善につながる。
【0099】
また、上記の各実施の形態を適宜組み合わせることが可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
1 缶体、2 鏡板、3 円筒胴体、4 鏡板保持治具、5 長手方向アクチュエータ、6 上部矯正ユニット、7 下部矯正ユニット、8 上下方向アクチュエータ、9 矯正ユニットフローティング機構、11 ワーク当て部、12 吸着パッド、21 第1鏡板、22 第2鏡板、CE 缶体製造装置、CU 矯正ユニット、SU 側部矯正ユニット、101 嵌合圧測定ユニット、121 継手形状測定ユニット。