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  • 特開-低温流体用の機械的圧力調整器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151309
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】低温流体用の機械的圧力調整器
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/06 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
G05D16/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046442
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】23305538.3
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501044725
【氏名又は名称】ネクサン
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギュンツェル ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】エゲラー ラルフ
【テーマコード(参考)】
5H316
【Fターム(参考)】
5H316BB01
5H316BB07
5H316DD17
5H316EE10
5H316GG01
5H316HH15
5H316JJ01
5H316JJ09
5H316KK02
(57)【要約】
【課題】 低温流体用の機械的圧力調整器を提供する。
【解決手段】 流体用の圧力調整器を説明する。圧力調整器(100)は、移送ライン内の設定圧力を維持するためにセンサー手段(118)によって生成される圧力信号に応じて制御要素(119)によって作動される制御弁(112、113)を含む本体(108)を含む。本体(108)、制御弁(112、113)、制御要素(119)及びセンサー手段(118)は、ハウジング(123)によって囲まれている内部空間(124)に含まれている。大気圧未満の圧力は、内部空間(124)に行き渡る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体用の圧力調整器であって、前記圧力調整器(100)は、移送ライン内の設定圧力を維持するためにセンサー手段(118)によって生成される圧力信号に応じて制御要素(119)によって作動される制御弁(112、113)を含む本体(108)を含み、
前記本体(108)、前記制御弁(112、113)、前記制御要素(119)及び前記センサー手段(118)は、ハウジング(123)によって囲まれている内部空間(124)に含まれており、大気圧未満の圧力は、前記内部空間(124)に行き渡る
ことを特徴とする、流体用の圧力調整器。
【請求項2】
前記移送ラインは、多重壁移送ラインであり、前記ハウジング(123)は、前記多重壁移送ラインの外管(104a、b)と内管(103a、b)との間に囲まれているリング空間(107a、b)が前記内部空間(124)に流体接続されるように、前記多重壁移送ラインの外管(104a、b)に接続されている、請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項3】
前記内部空間(124)及び前記リング空間(107a、b)は、排気される、請求項2に記載の圧力調整器。
【請求項4】
沸点が流体温度未満である気体を内部に充填する気密容器で囲まれている、請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項5】
前記移送ラインの上流部分(101)と下流部分(102)との間に設置されている、請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項6】
前記センサー手段は、膜(118)である、請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項7】
前記センサー手段は、前記膜(118)にばね力を及ぼすばね(122)を更に含み、前記ばねは、前記圧力調整器の前記ハウジング(123)に含まれている、請求項6に記載の圧力調整器。
【請求項8】
前記圧力調整器の異なる設定圧力を選択することができるように、前記ばねに調整可能な力を及ぼすために前記ばね(122)の予荷重を可能にする圧力手段(特に、スピンドル)が設けられている、請求項7に記載の圧力調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体用の圧力調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの規模で、殆ど無数の流体用の移送システムは、国際的なサプライチェーン基盤の不可欠な部分である。例えば、二酸化炭素排出を削減するための国際的な努力の状況で、代替エネルギー源(例えば、液化天然ガス(LNG)及び液化水素(LH2))への関心が促進されている。なぜなら、これらのエネルギー源は、二酸化炭素排出の削減、及び地球規模の気候変動の抑制又は停止に貢献することがあるからである。LNG及びLH2は、極低温(例えば、LNGの場合に110K、及びLH2の場合に20K)で低温流体として液体状態で移送される。移送システムは、多くのモジュール及び構成要素(柔軟移送ライン、パイプ、連結器、タンク、弁、圧力調整器など)からなる。殆どの場合、固定貯蔵タンクと移動収容タンクとの間で様々な液体又は気体物質を移送するために、移送システムを使用する。典型的な用途は、タンカー荷積み、貨物船用の燃料補給、及び鉄道輸送タンク及びタンク車の荷積み/荷降ろし(但し、これらに限定されない)を含む。
【0003】
上述のLNG及びLH2だけでなく、多くの装入物質を、装入物質の特性を維持するために、例えば、装入物質をそのまま液体状態に保つために、サプライチェーン全体にわたって特定の温度に保つ必要がある。低温流体を移送する1つの重要な問題は、少ない熱量でもボイルオフ損失を引き起こすことがあるので、低温流体を低温に保つことである。更に、LH2のような酸素の凝縮温度未満の動作温度を有する極低温流体の場合、大気中の酸素は、移送システムに沿って冷点に凝縮し、酸素を豊富に含む大気のために、燃焼の危険性を高める。移送システムにおいて、移送ラインに負荷をかけ過ぎることなく、十分な移送容量を達成するために、温度だけでなく、システム圧力も制御する必要がある。システム圧力の要件を満たすための2つの主な選択肢がある。第1の選択肢は、移送ライン内の圧力を所望の範囲に保つために、供給ポンプの電力を制御することである。あまり複雑でない第2の選択肢は、移送ライン内の圧力を所望の範囲に保つために制御弁を動作させることによって、移送ライン内の圧力を調整する圧力調整器を移送ラインに含むことである。しかし、現在の圧力調整器は絶縁されていない。これらの圧力調整器を低温流体のために使用する場合、高分子発泡体のような絶縁材料を用いて移送システムに設置した後、デバイスを覆う。残念なことに、高分子発泡体は、低品質の断熱材である。LH2移送デバイスに関連して、高分子発泡体を利用する場合、非常に厚いカバーが、適切な断熱を得るために必要である。この手法は、少なくとも次の理由で不利である。設定圧力を変更すべきである、又は、圧力調整器における保守、修理、又は任意の他の操作が必要である場合、高分子発泡体製の絶縁カバーを、取り外して廃棄する必要がある。圧力調整器における作業を終えた後、新しい発泡体カバーを付ける。
【0004】
更に、圧力調整器における発泡体カバーに関する安全性関連の問題は、更に深刻である。大気中の酸素は、設置及び動作中に、絶縁としての機能を果たす発泡体カバーと圧力調整器の低温壁との間に入ることがある。低温壁が、例えば、20Kまで冷却すると、酸素の凝縮温度は90Kであるので、絶縁カバーの下の酸素は、凝縮し、液体酸素のたまりを形成する。再度、液体酸素の存在は、燃焼の危険性を高める酸素を豊富に含む大気をもたらすことがある。更に、厚い発泡体カバーにより、圧力調整器の漏れ及び流体からの漏れを検出するのが非常に難しい。最後に、従来の圧力調整器は、第2の閉じ込めを与えることなく、単一壁デバイスであることに留意せよ。第2の閉じ込めは、環境有害流体を移送する場合、被害から環境又は運転要員を保護することに非常に関連することがある。
【0005】
既存の圧力調整器の制限を考慮して、上述の問題のうち1つ又は複数の問題を克服する又は少なくとも改善する圧力調整器の要望が残る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、流体用の圧力調整器を提案する。圧力調整器は、移送ライン内の設定圧力を維持するためにセンサー手段によって生成される圧力信号に応じて制御要素によって作動される制御弁を含む本体を含む。本体、制御弁、制御要素及びセンサー手段は、ハウジングによって囲まれている内部空間に含まれている。大気圧未満の圧力は、内部空間に行き渡る。
【0007】
ハウジング以外の圧力調整器の構成要素を、ハウジングによって完全に囲み、環境から絶縁する。特に、高感度流体を移送する場合、これは、重要な利点である。
【0008】
好ましい実施形態において、移送ラインは、多重壁移送ラインである。ハウジングは、多重壁移送ラインの外管と内管との間に囲まれているリング空間が内部空間に流体接続されるように、多重壁移送ラインの外管に接続されている。
【0009】
この実施形態は、移送ラインと同じ方法で圧力調整器を環境から絶縁するという利点を有する。
【0010】
有利なことに、内部空間及びリング空間は、排気される。本開示の文脈で、用語「排気」は、1hPaから10-7hPaの範囲にある圧力を有する真空に関する。しかし、本開示は、このような圧力に限定されない。
【0011】
本圧力調整器は、全デバイスを囲む真空空間を形成する第2の壁を有する機械的圧力調整器である。即ち、機械的接続は言うまでもなく、信号線又は電力線は、絶縁を通さず、従来の圧力調整器に比べてより高いレベルの断熱を保証する。更に、真空断熱は、最良の断熱である。周囲大気からの気体(例えば、酸素)は、絶縁体と圧力調整器の低温壁との間で捕捉されることができない。二重壁設計は、第2の閉じ込めを形成する。
【0012】
圧力調整器の出口圧力は、大気圧から完全に独立している。圧力調整器の圧力基準は、一定、例えば、真空(絶対圧力ベース)である。圧力調整器は、大気圧以下の圧力調整を可能にする。
【0013】
別の実施形態において、断熱圧力調整器は、沸点が流体温度未満である気体を内部に充填する気密容器で囲まれている。容器内の圧力は、一定に保たれる。この実施形態において、内管内の温度は、一定に保たれ、即ち、容器に充填される気体の沸点に保たれる。
【0014】
提案の圧力調整器の応用分野は、圧力を制御する必要があるあらゆる産業及び用途である。温度が特定のレベルを超えて上昇すべきでない低温流体(LH2、LNG、LN2、LOx、LHe、GHeなど)の圧力を調整する必要がある場合、提案の圧力調整器は、特に有利である。
【0015】
同様に、圧力調整器は、温度が特定のレベル未満に低下すべきでない高温流体の圧力調整に適用できる。
【0016】
更に、安全及び危険性の理由で二重壁容器を必要とする有害流体の圧力調整は、本開示による圧力調整器の別の応用分野である。
【0017】
有利なことに、圧力調整器は、移送ラインの上流部分と下流部分との間に設置されている。
【0018】
圧力調整器は、移送ラインに負荷をかけ過ぎることなく、所望の移送容量を維持するために、移送ラインの下流部分内の圧力を効果的に制御する。
【0019】
更なる実施形態において、センサー手段は、膜である。
【0020】
膜は、基準圧力に保たれる圧力調整器の内部空間から圧力調整器の流体搬送部分を分離するのに適している。真空断熱移送ラインの場合、内部空間は排気され、基準圧力は、圧力調整器が大気圧未満の圧力を制御することができる真空である。
【0021】
この場合、センサー手段は、膜にばね力を及ぼすばねを更に含み、ばねは、圧力調整器のハウジングに含まれている場合に有用であることが分かっている。
【0022】
ばねは、圧力調整器によって維持される設定圧力に関する設計の柔軟性を可能にする。膜材料は、膜に及ぼされる適切なばね力を選択することによって、センサー手段の反応性を決定する機械的特性を規定しながら、圧力調整器によって移送される流体に適合可能である。
【0023】
更なる進展において、圧力調整器の異なる設定圧力を選択することができるように、ばねに調整可能な力を及ぼすためにばねの予荷重を可能にする圧力手段(特に、スピンドル)が圧力調整器に設けられている。
【0024】
圧力調整器のこの変型例は、設定圧力に関して柔軟性がある。
【0025】
本開示の例示的な実施形態を、図面に示し、下記の説明でより詳細に説明する。図面において、同一又は同様の要素を、同一又は同様の参照符号で参照する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示による圧力調整器の略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本開示による機械的圧力調整器100を示す。圧力調整器100を、二重壁移送ラインで上流部分101と下流部分102との間に設置する。移送ラインの上流部分101は、内管103a及び外管104aを含む。同様に、移送ラインの下流部分102は、内管103b及び外管104bを含む。内管103a、bは、流体を移送する流路106a、bをそれぞれ囲む。
【0028】
本開示の文脈で、用語「流体」は、集合の固体、液体又は気体状態を有することができる任意の種類の流動性材料に対するプレースホルダーである。以下、集合の状態に関係なく、任意の種類の流動性材料は、ポンプ注入され、液体のように移送ラインを流れることができる固体粉末を含む流体と呼ばれる。この意味で、流体は、エアロゾル及びエマルジョンも含む。
【0029】
内管103a、bと外管104a、bとの間のリング空間107a、bを排気して、内管103a、bの真空断熱を達成する。幾つかの実施形態において、リング空間107a、bは、図1に示されていないスペーサー及び超断熱層を収容できる。スペーサーは、内管103a、bを阻止し、外管104a、bと直接接触する。超断熱層は、放射線が内管103a、bに入るのを防止する。両方の対策は、内管103a、bに流入する流体の加熱を制限することが狙いである。
【0030】
上流及び下流内管103a、bを、例えば、溶接によって、流体密封方法で圧力調整器100の本体108に接続する。上流内管103aの流路106aは、本体108における通路109として続く。通路109は、弁室111の出口113の自由通路のサイズを制御する弁要素112を収容できる弁室111につながる。出口113は、下流内管103bの流路106bに流体接続される通路116に連結される連通室114に入る。従って、通路109、116、出口113、及び連通室114は、上流内管103aの流路106aと下流内管103bとの間の流体接続を確立する。
【0031】
連通室114を、本体108に凹部117として形成する。凹部117を、流体密封方法で膜118によって閉じる。膜118の内側を、作動ロッド119の一端に接続する。作動ロッド119の反対端を、弁要素112に装着する。その結果、連通室114内の圧力の増加及び減少に応じて、膜118が、本体108から遠ざかる、又は本体108に近付くと、弁要素112は、同じ方向に移動する。膜118及び弁要素112の移動を、図1における両頭矢印121で示す。膜118が本体108から遠ざかると、弁要素112は、出口113の自由通路のサイズを減少する。その結果、上流内管103aから下流内管103bへの流体の流れが減少するので、連通室114内の圧力は低下する。連通室114内の圧力が低下すると、膜118は、本体108に戻り、弁要素112の対応する移動を引き起こし、再度、出口113の自由通路を増加する。その結果、上流内管103aから下流内管103bへの流体の流れは増加し、連通室114内の圧力は上昇する。安定した状態で、所定の設定圧力が下流流路106内で得られる。弁要素112と出口113との間の協働は、下流移送ライン内の圧力を制御する制御弁を実現する。
【0032】
連通室114内の圧力に対する膜118の反応性は、膜の機械的特性、及び膜118にばね力を及ぼすばね122によって決定される。膜118及びばね122の設計は、圧力調整器100によって連続的に制御される設定圧力を決定する。実施形態において、ばねの張力は、スピンドルなどによって調整可能である。ばね122(例えば、圧力ばね122)は、圧力調整器100のハウジング123の内壁にある。ハウジング123を、真空密封方法で、上流外管104aの一方の側及び下流外管104bの他方の側に接続する。ハウジング123の内部空間124は、移送ラインの上流及び下流部分101、102のリング空間107a、bと流体連通している。従って、リング空間107a、bを排気すると、内部空間124も同様に、排気され、圧力調整器100の真空断熱が確立される。ばね122とハウジング123との間の機械的接触によって生じる小さい熱の漏れを、設計、及び材料の適切な選択によって、最小化することができる。例えば、ハウジング123とばね122との間の絶縁材料(図1に示されていない)の層は、圧力調整器100の低温部分とハウジング123との間の熱伝導率を減少する。
【0033】
圧力調整器100の内部空間124を排気すると、設定圧力を調整する基準圧力は、真空である。基準圧力のような真空により、圧力調整器100は、設定圧力を大気圧未満に制御することができる。幾つかの流体の場合、これは、利点であることができる。
【0034】
一実施形態において、沸点が流体温度未満である気体を、内部空間124及びリング空間107a、bに充填する。この実施形態において、内管103a、b内の流体の温度は、一定であり、即ち、気体の沸点である。
【0035】
圧力調整器100を二重壁移送ラインに関連して説明しているけれども、圧力調整器100は、3つ以上の壁を有する多重壁移送ラインにも適用できる。
【0036】
特許請求の範囲において、用語「含む(comprising)」は、他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「1つ(a)」は、複数を排除しない。
【0037】
単一のユニット又はデバイスは、特許請求の範囲に列挙された多数の要素の機能を実行してもよい。個々の機能及び要素を異なる従属請求項に列挙するという事実は、それらの機能及び要素の組み合わせを有利に使用することができないことを意味しない。
【符号の説明】
【0038】
100 圧力調整器
101 移送ライン(上流部分)
102 移送ライン(下流部分)
103 内管
104 外管
106 流路
107 リング空間
108 本体
109 通路
111 弁室
112 弁要素
113 出口
114 連通室
116 通路
117 凹部
118 膜
119 作動ロッド
121 両頭矢印
122 ばね
123 ハウジング
124 内部空間
図1