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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151323
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】硬質表面用抗真菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/48 20060101AFI20241017BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20241017BHJP
   C11D 3/28 20060101ALI20241017BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20241017BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20241017BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20241017BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20241017BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20241017BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241017BHJP
   A01N 25/16 20060101ALI20241017BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20241017BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20241017BHJP
   A01N 43/78 20060101ALI20241017BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20241017BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C11D3/48
C11D3/37
C11D3/28
C11D3/26
C11D1/75
C11D1/90
C11D1/68
C11D3/22
A01P3/00
A01N25/16
A01N31/04
A01N33/12 101
A01N43/78 A
A01N59/16 A
A01N47/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063147
(22)【出願日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2023064333
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 聖人
【テーマコード(参考)】
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4H003AC03
4H003AC05
4H003AC18
4H003AE05
4H003DA05
4H003DA06
4H003DA08
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB16
4H003EB19
4H003EB20
4H003EB33
4H003EB42
4H003EB46
4H003FA04
4H003FA17
4H003FA34
4H011AA02
4H011BA05
4H011BB03
4H011BB04
4H011BB10
4H011BB11
4H011BB18
4H011BC03
4H011BC04
4H011BC19
4H011DA18
4H011DC05
4H011DF03
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】硬質表面のカビなどの真菌類による変色(特に黒ずみ)の発生を抑制する効果の持続性に優れる、硬質表面用抗真菌剤組成物、及びそれを用いた硬質表面の洗浄方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物。
(a)成分:抗真菌剤
(b)成分:起泡性界面活性剤(但し、(a)成分を除く)
(c)成分:水溶性高分子
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物。
(a)成分:抗真菌剤
(b)成分:起泡性界面活性剤(但し、(a)成分を除く)
(c)成分:水溶性高分子
【請求項2】
(a)成分が、芳香族基及びヒドロキシ基を有し、且つ分子量が106以上140以下の抗真菌剤である、請求項1に記載の硬質表面用抗真菌剤組成物。
【請求項3】
(a)成分が、第4級アンモニウム塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、銀及び/又は亜鉛の錯体を担体にイオン交換あるいは担持させたもの、及びチアベンダゾールから選ばれる1種以上の抗真菌剤である、請求項1に記載の硬質表面用抗真菌剤組成物。
【請求項4】
(b)成分が、アミンオキシド型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤、アルキル(ポリ)グリコシド、及びアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の硬質表面用抗真菌剤組成物。
【請求項5】
(c)成分が、水溶性変性セルロースである、請求項1又は2に記載の硬質表面用抗真菌剤組成物。
【請求項6】
トイレ、浴室、台所、及び洗面台から選ばれる1以上の硬質表面に用いられる、請求項1又は2に記載の硬質表面用抗真菌剤組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面の洗浄方法。
【請求項8】
前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触後、30秒以上放置する、請求項7に記載の硬質表面の洗浄方法。
【請求項9】
前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡で硬質表面に塗布する、請求項7に記載の硬質表面の洗浄方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面の真菌による変色の発生を抑制する方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる、(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法。
【請求項12】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、液体組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面の真菌による変色の発生を抑制する方法。
(a)成分:抗真菌剤
(b)成分:起泡性界面活性剤(但し、(a)成分を除く)
(c)成分:水溶性高分子
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用抗真菌剤組成物、及び硬質表面の洗浄方法に関する。特に、トイレ、浴室、シンクなど水回りの硬質表面に用いられる抗真菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭における水まわりの設備であるトイレ、浴室、シンクでは、使用時に蛇口やシャワーからの水の飛び散り等により、使用後の設備材質表面に水滴が付着、残留し、カビの発生に繋がりやすい。例えば、トイレでは、便器内で頻発する汚れとして、黒ずみ、黄ばみ、水垢などが挙げられるが、特に黒ずみの原因は特定種類のカビであり、カビ菌体が表面に付着し、一定数以上発育することで黒く視認されると考えられている。この黒ずみは、例えば水洗大便器のボウル部の周縁裏部、洗浄水が流れる箇所、及び水封部付近に発生することが多い。
この黒ずみ汚れに対して、従来はブラシなどの機械力を使って除去する方法や、次亜塩素酸ナトリウムなどのカビ取り剤で漂白する方法、あるいは予防効果を目的とした置き型洗浄剤などの利用(水洗大便器の貯水タンクの上蓋部に設置するか貯水タンク内に入れるなどの方法)が行われている。しかしながら、共働き世帯の増加による家事所要時間の縮小や、増加する高齢者の家事負担感の増加を背景に、トイレ、浴室、シンクなどの水回りの硬質表面の掃除の簡便性とカビによる黒ずみ汚れの発生を予防する効果の持続性が切望されている。
【0003】
特許文献1には、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールとグリコールエーテルを併用することで、浴室等の微生物に対して優れた殺菌効果を発揮できる殺微生物用組成物が開示されている。
特許文献2には殺菌剤とカビへの浸透促進剤として硫酸ナトリウムを併用した硬質表面用殺黴剤組成物が開示されている。
特許文献3には芳香族系アルコールとカビへの浸透促進剤である脂肪族アルコールを併用した硬質表面用殺黴剤組成物が開示されている。
特許文献4には、カチオン基又はアミノ基を有する構成単位を含まない部分ケン化部ポリビニルアルコールと、陰イオン界面活性剤、非イオン面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる界面活性剤、及び防カビ剤を含有し、防カビ性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-140331号公報
【特許文献2】特開2019-81723号公報
【特許文献3】特開2019-81724号公報
【特許文献4】特開2011-190305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの細菌に対する殺菌性に優れる技術であるが、細胞壁が厚く薬剤が有効に作用し難いカビなどの真菌類への有効性は言及されていない。また特許文献2及び3はカビ細胞壁への浸透促進剤を用いて殺黴性の即効性を高めた技術であるが、洗浄処理後のカビ発生の抑制効果は不明である。特許文献4には、防カビ剤を含む洗浄剤をポリビニルアルコールと組み合わせることで、硬質表面に対する乾燥速度を高め、防カビ性に優れる技術が開示されているが、防カビ効果の持続性という観点では、更なる改良の余地があると本発明者らは考えている。
【0006】
本発明は、硬質表面のカビなどの真菌類による変色(特に黒ずみ)の発生を抑制する効果の持続性に優れる、硬質表面用抗真菌剤組成物、及びそれを用いた硬質表面の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物に関する。
(a)成分:抗真菌剤
(b)成分:起泡性界面活性剤(但し、(a)成分を除く)
(c)成分:水溶性高分子
【0008】
また本発明は、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面の洗浄方法に関する。
【0009】
また本発明は、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面の真菌による変色の発生を抑制する方法に関する。
【0010】
また本発明は、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる、(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法に関する。
【0011】
また本発明は、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、液体組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面の真菌による変色の発生を抑制する方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬質表面のカビなどの真菌類による変色(特に黒ずみ)の発生を抑制する効果の持続性に優れる、硬質表面用抗真菌剤組成物、及びそれを用いた硬質表面の洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物、及びそれを用いた硬質表面の洗浄方法が、硬質表面のカビなどの真菌類による変色(特に黒ずみ)の発生を抑制する効果の持続性に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
変色(特に黒ずみ)の発生を抑制し、その効果を持続させるためには、特定種類のカビなどの真菌類に対して殺菌効果を有することに加えて、新たなカビなどの真菌類の繁殖を抑制することが重要である。例えば、水洗大便器のボウル内において、封水部の上部で発生するカビなどの真菌類に対しては、封水部の上部に有効基剤が十分に滞留し効果を持続させることが課題であると考えられる。しかしながら、封水部付近では有効基剤が使用後の流水により容易に流れ落ちることに加えて、水との接触で有効基剤が容易に希釈されるため作用が不十分である。本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、(b)成分と(c)成分を特定の比率で含有することによって、抗真菌剤、好ましくは抗カビ剤である(a)成分を、硬質表面に長時間滞留し、カビなどの真菌類に作用し続ける。特に本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を泡状にして硬質表面に塗布する場合、(b)成分と(c)成分が安定な泡を形成することができるため、硬質表面、特に水洗大便器の封水部上部まで(a)成分が長時間滞留し作用することができる。さらに、流水後も硬質表面に(a)成分が残留しつづけること、且つ(c)成分が流水後も硬質表面に残留することで表面が親水化されることでカビなどの真菌類の繁殖が抑制されたと考えられる。以上の作用により、抗真菌性、特に抗カビ性が持続されたことにより変色(特に黒ずみ)の発生を抑制し、その効果の持続性を得ることを可能にしたと推定される。
なお本発明において、抗真菌剤とは、真菌類の繁殖を抑制できる剤を意味し、真菌類は、カビ(糸状菌)と酵母(酵母様真菌)に分類されるものが含まれる。また、抗カビ剤とは、カビの繁殖を抑制できる剤を意味する。
【0014】
〔硬質表面用抗真菌剤組成物〕
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、硬質表面のカビなどの真菌類による変色の発生を抑制する効果の持続性、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する効果の持続性に優れることから、硬質表面用抗カビ剤組成物であってよい。
本発明の硬質表面用抗カビ剤組成物は、後述する本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物の態様を、「硬質表面用抗真菌剤組成物」から「硬質表面用抗カビ剤組成物」に置き換えて適宜適用することができる。
【0015】
<(a)成分>
本発明の硬質表面用抗カビ剤組成物は、(a)成分として、抗真菌剤を含有する。(a)成分は、好ましくは抗カビ剤である。
(a)成分は、(a1)芳香族基及びヒドロキシ基を有し、且つ分子量が106以上140以下の化合物(以下、(a1)成分という)、(a2)第4級アンモニウム塩(以下、(a2)成分という)、(a3)ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩(以下、(a3)成分という)、(a4)銀及び/又は亜鉛の錯体を担体にイオン交換あるいは担持させたもの(以下、(a4)成分という)、及び(a5)チアベンダゾール(以下、(a5)成分という)から選ばれる1種以上の化合物が挙げられ、抗真菌効果、特に抗カビ効果と配合安定性の観点から、(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、(a1)成分がより好ましい。
【0016】
(a1)成分は、芳香族基及びヒドロキシ基を有し、且つ分子量が106以上140以下の化合物である。芳香族基は、芳香族炭化水素基であり、フェニル基、ベンジル基、及びフェネチル基から選ばれるものが挙げられる。
【0017】
(a1)成分は、抗真菌効果、特に抗カビ効果の観点から、下記一般式(a11)で表される化合物が好ましい。
11aO-(R12aO)-H (a11)
(式中、R11aは、芳香族基を有し、且つ総炭素数6以上10以下の炭化水素基であり、lは0又は1の整数であり、R12aは炭素数2以上4以下のアルキレン基である。但し、該化合物の分子量は106以上140以下である。)
【0018】
11aの総炭素数は、芳香族基を含めた炭素数であり、R11aの総炭素数は、抗真菌効果、特に抗カビ効果の観点から、6以上、そして、配合安定性の観点から、10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。R11aは、芳香族炭化水素基であり、フェニル基、ベンジル基、及びフェネチル基から選ばれるものが挙げられる。
lは、抗真菌効果、特に抗カビ効果の観点から、0が好ましい。
【0019】
(a1)成分としては、具体的には、ベンジルアルコール(分子量:108)、フェノキシエタノール(分子量:138)、2-フェニルエタノール(分子量:122)、3-フェニル-1-プロパノール(分子量:136)、及びシンナミルアルコール(分子量:134)等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
これらの中でも、(a1)成分は、抗真菌効果、特に抗カビ効果の観点から、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、及び3-フェニル-1-プロパノールから選ばれる1種以上が好ましく、ベンジルアルコール、及びフェノキシエタノールから選ばれる1種以上がより好ましく、ベンジルアルコールが更に好ましい。
【0021】
(a2)成分は、抗真菌効果、特に抗カビ効果の観点から、(a21)下記一般式(a21)で表される化合物(以下、(a21)成分という)、及び(a22)下記一般式(a22)で表される化合物(以下、(a22)成分という)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
〔式中、R21aは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R22aは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R23a及びR24aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Xは陰イオンである。〕
【0024】
【化2】
【0025】
〔式中、R25aは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R26a及びR27aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Xは陰イオンである。〕
【0026】
一般式(a21)において、R21aの炭素数は、抗真菌効果、特に抗カビ効果の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。R21aは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
一般式(a21)において、R22aは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基である。
22aが、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基である場合、R22aは、抗真菌効果、特に抗カビ効果の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
【0027】
一般式(a21)において、R23a及びR24aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R23a及びR24aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0028】
一般式(a21)において、Xは陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えばクロ-ルイオン、ブロモイオン及びヨウ素イオンが挙げられる。また、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0029】
一般式(a21)の化合物の好ましい化合物としては、アルキル基の炭素数が12以上18以下であるN-アルキル-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上16以下であるN,N-ジアルキル-N,N-ジメチル-アンモニウム塩、及びアルキル基の炭素数が12以上16以下であるN-アルキル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0030】
一般式(a22)において、R25aは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基である。R25aの炭素数は、抗真菌効果、特に抗カビ効果の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。R25aは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
【0031】
一般式(a22)において、R26a及びR27aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R26a及びR27aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0032】
一般式(a22)において、Xは陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えばクロ-ルイオン、ブロモイオン及びヨウ素イオンが挙げられる。また炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0033】
一般式(a22)の化合物の具体例としては、N-オクチル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-デシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩及びN-ヘキサデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0034】
(a4)成分は、銀及び/又は亜鉛の錯体を担体にイオン交換あるいは担持させたものである。担体としては、シリカアルミナマグネシウム、リン酸カルシウム、シリカゲル、ガラス、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウムである。具体的には、銀ゼオライト、及びリン酸ジルコニウム銀等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0035】
<(b)成分>
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、(b)成分として、起泡性界面活性剤を含有する。但し、(b)成分からは、(a)成分に該当するものは除かれる。本発明の(b)成分は、No.11(口内径×胴径×高さ:φ31.9×φ51.5×95.5mm)の規格瓶(広口)に、界面活性剤とイオン交換水を投入し、1質量%の界面活性剤水溶液50mLを調製し、上下の振とう幅10cm(上端から下端までの長さ)、振とうサイクル3回/秒で、10秒間振とうさせた直後に泡が生成する界面活性剤を起泡性界面活性剤と定義する。
【0036】
(b)成分は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、(b1)アミンオキシド型界面活性剤(以下、(b1)成分という)、(b2)ベタイン型界面活性剤(以下、(b2)成分という)、(b3)アルキル(ポリ)グリコシド(以下、(b3)成分という)、(b4)アルキルグリセリルエーテル(以下、(b4)成分という)、及び(b5)アニオン界面活性剤(以下、(b5)成分という)から選ばれる1種以上が好ましく、(b1)成分、(b2)成分、及び(b3)成分から選ばれる1種以上がより好ましく、(b2)成分が更に好ましい。
【0037】
(b1)成分のアミンオキシド型界面活性剤としては、下記一般式(b1)の化合物が好ましい。
【0038】
【化3】
【0039】
〔式中、R11bは炭素数7以上22以下のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R12b及びR13bは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。q及びpは、q=0かつp=0又はq=1かつp=1を示す。〕
【0040】
上記一般式(b1)において、q=1かつp=1の場合には、R11bは、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、炭素数9以上、好ましくは11以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。
またq=0かつp=0の場合には、R11bは、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、炭素数10以上、好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。本発明ではq=0かつp=0が好ましい。R12b、R13bは、好ましくは炭素数1のメチル基である。
【0041】
(b2)成分としては、炭素数7以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を1つ以上、好ましくは1つ有するベタイン型界面活性剤、好ましくはスルホベタイン型界面活性剤、又はカルボベタイン型界面活性剤が挙げられる。
ベタイン型界面活性剤としては、下記一般式(b2)の化合物が好適である。
【0042】
【化4】
【0043】
〔式中、R21bは炭素数7以上18以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R22bは炭素数1以上6以下のアルキレン基である。Aは-COO-、-CONH-、-OCO-、-NHCO-、-O-から選ばれる基であり、rは0又は1の数である。R23b、R24bは、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R25bはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1以上5以下のアルキレン基である。Bは、-SO 、-OSO 、-COOから選ばれる基である。〕
【0044】
一般式(b2)において、R21bは、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、炭素数7以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基である。
Aは、好ましくは-COO-又は-CONH-であり、より好ましくは-CONH-である。
22bの炭素数は好ましくは2又は3である。
rは、好ましくは0である。
23b、R24bは好ましくはメチル基である。
25bの炭素数は、好ましくは1である。
Bは、好ましくは-COOである。
【0045】
ベタイン型界面活性剤としては、具体的には、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、及びアルキルアミノ脂肪酸塩から選ばれる1種以上が挙げられ、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくはアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルカルボキシベタイン、及びアルキル-N,N-ジメチル酢酸ベタインから選ばれる1種以上である。これらのアルキル基は炭素数7以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
【0046】
(b3)成分のアルキル(ポリ)グリコシドとしては、下記一般式(b3)の化合物が好ましい。
31b-(OR32b (b3)
〔式中、R31bは炭素数8以上16以下のアルキル基、R32bは炭素数2以上4以下のアルキレン基、Gは還元糖に由来する残基、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す0以上6以下の数であり、p個のR32bは同一でも異なっていても良い。qはGの平均縮合度を示し、1以上10以下の数である。〕
【0047】
一般式(b3)において、R31bは、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、炭素数8以上、好ましくは9以上、そして、16以下、好ましくは14以下のアルキル基である。
32bは炭素数2以上4以下のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、より好ましくはエチレン基である。
pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0以上、そして、6以下、好ましくは3以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0の数である。
qはGの平均縮合度を示し、配合安定性の観点から、1以上10以下、好ましくは5以下、より好ましくは2以下の数である。
Gとしては、単糖類ではグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、フルクトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられ、2糖類以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メンジトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられる。これらのうち好ましい原料は、配合安定性の観点から、単糖類ではグルコース及びフルクトースであり、2糖類以上ではマルトース及びスクロースである。
【0048】
(b4)成分としては、具体的には、炭素数8以上18以下、好ましくは炭素数8以上14以下、より好ましくは炭素数8以上12以下のアルキル基を1つ有するアルキルグリセリルエーテルが挙げられる。(b4)成分のアルキル基としては、炭素数8以上12以下、好ましくは8以上10以下の分岐鎖アルキル基が挙げられ、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、2-エチルヘキシル基、イソノニル基又はイソデシル基が好ましく、2-エチルヘキシル基がより好ましい。(b4)成分としては、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、炭素数8以上12以下のアルキル基を1つ有するアルキルグリセリルエーテルが好ましく、2-エチルヘキシルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0049】
(b5)成分のアニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸、リン酸モノ又はジエステル、及びスルホコハク酸エステルから選ばれる1種以上が挙げられる。
アニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、例えば、炭素数8以上22以下であり、好ましくは炭素数10以上16以下であり、より好ましくは炭素数12以上14以下である。アニオン界面活性剤のポリオキシアルキレン基において、オキシアルキレン基は、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる1種以上の基が好ましく、オキシエチレン基が好ましい。ポリオキシアルキレン基において、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、例えば、0以上10以下であり、好ましくは1以上3以下である。
これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
【0050】
(b5)成分は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、及びアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上である。
アルキルベンゼンスルホン酸塩のアルキル基の炭素数は、10以上、好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは14以下であり、アルキル基は直鎖が好ましい。
アルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩は、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩は、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基を有する。ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩は、オキシアルキレン基の炭素数が、好ましくは2または3であり、より好ましくは2であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が、0.5以上、好ましくは1.0以上、そして、4.0以下、好ましくは3.0以下である。
アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、10以上、好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは14以下である。
【0051】
<(c)成分>
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、(c)成分として、水溶性高分子を含有する。
本発明の(c)成分は、25℃の水90gに10g以上溶解しうる高分子化合物をいう。
【0052】
(c)成分としては、水溶性天然高分子化合物、セルロースやデンプンなどの天然高分子化合物のヒドロキシ基が炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カチオン性基、アルキルカルボルシ基等により変性(又は本発明では“置換”ともいう)された水溶性変性天然高分子化合物、並びに不飽和カルボン酸重合体、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール等の水溶性合成高分子化合物を挙げることができる。これらは1種以上を用いることができる。
【0053】
水溶性天然高分子化合物及び水溶性変性天然高分子化合物としてはアラビアゴム、カラーギナン、グアガム、デンプン、キサンタンガム、水溶性変性セルロース(例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化セルロース)、カチオン化デンプン、アルギン酸ナトリウム、及びカチオン化グアガムなどから選ばれる1種以上を挙げることができる。
水溶性天然高分子化合物、水溶性変性天然高分子化合物及び水溶性合成高分子化合物の重量平均分子量は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくは1000以上、そして、好ましくは3000万以下、より好ましくは2000万以下である。
(c)成分の高分子化合物の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりアセトニトリルと水の混合溶液(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ポリエチレングリコールを標準として求めたものをいう。
【0054】
(c)成分は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、起泡性、及び泡の安定性の観点から、水溶性変性セルロース、及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上が好ましく、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上がより好ましく、ヒドロキシエチルセルロースが更に好ましい。
【0055】
カルボキシメチルセルロースの重量平均分子量は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下、更に好ましくは15万以下である。
カルボキシメチルセルロースのカルボキシメチル基の置換度(エーテル化度)は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは1.2以下、より更に好ましくは0.8以下である。
【0056】
ヒドロキシエチルセルロースの重量平均分子量は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくは50万以上、より好ましくは100万以上、更に好ましくは125万以上、そして、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下、更に好ましくは175万以下である。
ヒドロキシエチルセルロースのヒドロキシエチル基の置換度は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.8以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下である。
【0057】
ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、そして、好ましくは250000以下、より好ましくは200000以下、更に好ましくは150000以下である。
ポリビニルアルコールの鹸化度は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。またポリビニルアルコールは、ビニルアルコールと共重合可能な不飽和化合物と共重合していても差し支えない。
【0058】
<組成等>
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、(a)成分を、抗真菌性能、特に抗カビ性能の観点から、該組成物中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下含有する。
本発明において、(a)成分として、(a2)成分を含む場合、(a2)成分の質量はクロ-ル塩に換算した値を用いるものとする。
【0059】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、(b)成分を、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び泡の安定性の観点から、該組成物中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは2.0質量%以上、そして、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、より更に好ましくは4.0質量%以下含有する。
【0060】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物中、(a)成分と(b)成分の合計含有量は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性の観点から、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは4.0質量%以上、そして、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、更に好ましくは5.5質量%以下である。
【0061】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、(c)成分を、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び泡の安定性の観点から、該組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、より更に好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.2質量%以下、より更に好ましくは0.08質量%以下含有する。
【0062】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物中、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び泡の安定性の観点から、0.003以上、好ましくは0.010以上、より好ましくは0.015以上、そして、0.25以下、好ましくは0.23以下、より好ましくは0.20以下、更に好ましくは0.15以下、より更に好ましくは0.10以下、より更に好ましくは0.050以下、より更に好ましくは0.030以下、より更に好ましくは0.020以下である。
【0063】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、更に(d)成分として、水溶性溶剤を含有することが好ましい。但し、(d)成分の水溶性溶剤からは、(a)成分に該当するものは除かれる。(d)成分について「水溶性」とは、20℃の水に5g以上溶解することをいう。
【0064】
(d)成分の水溶性溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(メチルプロピレングリコール)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、及びジブチレンジグリコールから選ばれる1種以上の水溶性溶剤が挙げられる。
(d)成分は、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、エタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、イソプロピルアルコール、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルから選ばれる1種以上の水溶性溶剤がより好ましい。
【0065】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、(d)成分を含有する場合、(d)成分を、抗真菌性能、特に抗カビ性能の持続性、及び起泡性の観点から、該組成物中、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、そして、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下、更に好ましくは6.0質量%以下、より更に好ましくは5.0質量%以下含有する。
【0066】
本発明の硬質表面用抗カビ剤組成物は、洗浄性能の観点から、更に(e)成分として、金属キレート剤を含有することが好ましい。
【0067】
(e)成分の具体例としては、下記(e1)~(e3)から選ばれる1種以上のキレート剤が挙げられる。
(e1)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩
(e2)エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノカルボン酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩
(e3)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩
【0068】
(e)成分は、洗浄性能の観点から、クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸等のアミノカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましく、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が更に好ましい。塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及びアルカノールアミン塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0069】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、(e)成分を含有する場合、(e)成分を、洗浄性能の観点から、該組成物中、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.65質量%以上、更に好ましくは0.95質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下含有する。本発明において、(e)成分の質量は酸換算した値を用いるものとする。
【0070】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、製品の付加価値を増大させるために、香料、色素、防腐剤、酵素、pH調整剤、酸化防止剤等を任意に含有することができる(但し、前記(a)~(e)成分を除く)。
【0071】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、水を含有する。すなわち、前記(a)~(c)成分及び任意成分以外の残部が水である。本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、水を、該組成物中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下含有する。水は、イオン交換水、滅菌イオン交換水等を使用することが好ましい。
【0072】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物の25℃におけるpHは、抗カビ効果の持続性や洗浄性能の観点から、好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上、更に好ましくは6.5以上、より更に好ましくは7.5以上、より更に好ましくは9.0以上、そして、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.0以下、更に好ましくは11.0以下である。pHはガラス電極法で測定した値を用いるものとする。
【0073】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物の25℃における粘度は、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上、そして、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下、より更に好ましくは12mPa・s以下、より更に好ましくは10mPa・s以下である。これら組成物の粘度は(d)成分の水溶性溶剤や(g)成分のハイドロトロープ剤などで調整することができる。ここで、当該粘度は、下記の粘度の測定方法で測定されたものである。上記の粘度を有することにより、スプレー容器から液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布して用いることができる。
<粘度の測定方法>
B型粘度計(例えば、TOKIMEC INC製、モデルBM)に、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備し、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を粘度測定用ビーカーに100mL充填し、25℃の恒温水槽中で充分に温度調節する。この組成物の入ったビーカーを粘度計にセットし、ローター回転数を60r/minとして測定した60秒後の値を、硬質表面用抗真菌剤組成物の粘度として測定する。
【0074】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、トイレ、浴室、台所、及び洗面台などの硬質表面におけるカビなどの真菌類による変色(特に黒ずみ)の発生を抑制する効果の持続性に優れている。よって、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、トイレ、浴室、台所、及び洗面台から選ばれる1以上の硬質表面に用いられる。特に本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、水と接触している硬質表面に用いられることが好ましい。水と接触している硬質表面とは、水で濡れている硬質表面、若しくは喫水部を有する硬質表面をいう。具体的には、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、トイレの硬質表面(壁、床、便器など)、浴室まわりの硬質表面(壁、床、浴槽など)や浴室で用いられる製品(浴室用イス、洗面器など)の硬質表面、台所まわりの硬質表面(壁、床、シンクなど)や台所で用いられる製品(コンロ、電子レンジ、オーブン、冷蔵庫など)に対して適用できる。中でも本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、トイレの硬質表面に用いるのが好適であり、特に水洗大便器のボウル部の周縁縁裏部、洗浄水が流れる箇所、及び水封部付近などのカビによるなどの真菌類による変色(特に黒ずみ)が発生しやすい箇所に好適に用いることができる。
【0075】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物が対象とするカビは、例えば、クラドスポリウム(Cladosporium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、キャンディダ(Candida)属、ペニシリウム(Penicillium)属、アルタナリア(Alternaria)属、フォーマ(Phoma)属、エクソフィアラ(Exophiala)属、及びアウレオバシジウム(Aureobasidium)属真菌から選ばれる1種以上のカビが挙げられ、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、これらのカビによる硬質表面上の黒ずみの発生を抑制する効果を持続させることができる。
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物が対象とする酵母は、例えば、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、スポロボロミケス(Sporobolomyces)属、及びスポリジオボラス(Sporidiobolus)属等から選ばれる1種以上の酵母が挙げられ、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、これらの酵母による硬質表面上のピンク色の変色の発生を抑制する効果を持続させることができる。
【0076】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布して、硬質表面に接触させて用いることが好ましく、泡状にして噴霧又は塗布して、硬質表面に接触させて用いることがより好ましい。噴霧や塗布には、スプレー手段を用いることができる。本発明により、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、スプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品が提供される。また本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品は、スプレー容器入り硬質表面用抗カビ剤物品であってよい。すなわち、本発明は、本発明の硬質表面用抗カビ剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、スプレー容器入り硬質表面用抗カビ剤物品が提供される。本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗カビ剤物品は、後述する本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品の態様を、「硬質表面用抗真菌剤組成物」から「硬質表面用抗カビ剤組成物」に、「スプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品」から「スプレー容器入り硬質表面用抗カビ剤物品」にそれぞれ置き換えて適宜適用することができる。
【0077】
本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品における本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を充填するスプレイヤーを具備する容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布することができるトリガー式スプレー容器が好ましく、内容物を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレー容器又は泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレー容器がより好ましい。
【0078】
また、前記トリガー式スプレー容器は、直圧式または蓄圧式のスプレーヤーを具備する容器用いることができるが、起泡性向上と、飛散抑制の観点から畜圧式のスプレーヤーを具備する容器がより好ましい。
蓄圧式のスプレイヤーを具備する容器としては、特開2017-214464の図1に記載のものを用いることができるが、それに限られるものではなく、各種公知のものを用いることができる。例えば、特開平9-122547号公報、特開平9-308843号公報、特開平10-174911号公報に記載のもの等を用いることができる。
また、蓄圧式のスプレイヤーを具備する容器は、浴室などの広範囲を洗浄対象にする場合には、操作性向上の観点から、容器に充填された硬質表面用抗真菌剤組成物をトリガーを引く時に限らず連続噴射(液が途切れることなく噴射し続ける)が可能な蓄圧式のスプレイヤーを具備する容器が好ましい。連続噴射可能な蓄圧式のスプレイヤーとは、繰り返しトリガーを引く動作を行ったとき、トリガーの動作に応じて(時間的には独立して)連続して硬質表面用抗真菌剤組成物をスプレーできるスプレイヤーである。
このような連続噴射可能な蓄圧式のスプレイヤーとしては、特開2014-166624の図1や特開2017-213497の図1に記載されたもの等を用いることができる。
【0079】
本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品において、液滴状に本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、前記組成物を入れるスプレー容器の噴射ノズルの噴口径は、スプレーのし易さや、噴射された液滴が荒くなく、直線状にスプレーされず、スプレーできる面積が極端に狭くならないために、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下の範囲である。
液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品は、1回の操作で、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.3mL以上、そして、好ましくは5mL以下、より好ましくは2mL以下の組成物を噴霧する。
【0080】
また本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗カビ剤物品において、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、好ましくはスピンエレメント及び直径4~8mmの円形状の空間部分に棒状の突起を数個設置された液体通過板を有するものが好適である。ここでスピンエレメントとは、スピンエレメントを通じて液状物の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出する機構であり、その詳細な構造としては特開平8-332422号公報や特開平8-108102号公報の図4(b)、特開2002-68265号公報の図1などを参考にすることができる。
【0081】
泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品は、1回の操作で、好ましくは0.5mL以上、より好ましくは1mL以上、そして、好ましくは30mL以下、より好ましくは15mL以下、更に好ましくは5mL以下の組成物を噴霧する。
【0082】
泡形成機構のもう一つの部材である液体通過板は、直径5~7mmの円形状の空間部分に棒状の突起を好ましくは3~8個設置されたものであり、通過する板を平面で見た場合に、好ましくは幅0.8~1.2mm、長さ2~4mmの長方形状の棒状の突起が好適である。また、棒状の突起を除いた空間部分に対する棒状の突起の占める面積は、好ましくは30面積%以上、より好ましくは40面積%以上、そして、好ましくは90面積%以下、より好ましくは80面積%以下、更に好ましくは70面積%以下であり、このような液体通過板を設置することで、垂直表面への泡の付着滞留性が良好になる。
【0083】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いて、泡状にして硬質表面に塗布する用途に用いる場合、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物の泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))は、変色の予防効果、特に黒ずみ予防効果の持続性の観点から、好ましくは5ml/g以上、より好ましくは10ml/g以上、更に好ましくは15ml/g以上、より更に好ましくは20ml/g以上、より更に好ましくは30ml/g以上、そして、より好ましくは50ml/g以下、更に好ましくは45ml/g以下、より更に好ましくは40ml/g以下である。泡比容は、実施例の泡比容の評価で記載した方法で測定することができる。
【0084】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いて、泡状にして硬質表面に塗布する用途に用いる場合、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物の泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aは、変色の予防効果、特に黒ずみ予防効果の持続性の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上、より更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.4以上、そして、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.7以下である。泡比容は、実施例の泡比容の評価で記載した方法で測定することができる。
【0085】
本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品の容器は、一般に使用されている容器を用いることができる。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートを原料として得られるものであり、ブロー成形などによって製造することができる。容器の肉厚は底面と側面と異なってもよく、0.01~2mmが好ましく、容器の容量は100~1000mLが好ましい。容器に充填される硬質表面用抗真菌剤組成物の量は、取り扱い上、200~500mLが望ましい。また液の充填は、常識的な空隙を残して行われる。
【0086】
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下であり、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いた場合の、上記した泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、上記した泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下であるものが、硬質表面のカビなどの真菌類による変色(特に黒ずみ)の発生を抑制する効果の持続性の点から好ましい。
すなわち、本発明は、一実施形態において、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物であって、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いた場合の、泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物を提供する。
前記した本発明の一実施形態の硬質表面用抗真菌剤組成物は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。泡形成から5分後の泡比容、及び比率B/Aの好ましい範囲、及び測定方法も、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様と同じである。
【0087】
〔硬質表面用黒ずみ生成抑制剤組成物〕
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、硬質表面のカビによる黒ずみの発生を抑制する効果の持続性に優れる。
すなわち、本発明は、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用黒ずみ生成抑制剤組成物を提供する。
本発明の硬質表面用黒ずみ生成抑制剤組成物は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様を、「硬質表面用抗真菌剤組成物」から「硬質表面用黒ずみ生成抑制剤組成物」に置き換えて適宜適用することができる。
【0088】
また本発明の硬質表面用黒ずみ生成抑制剤組成物は、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下であり、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いた場合の、上記した泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、上記した泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下であるものが、硬質表面のカビによる黒ずみの発生を抑制する効果の持続性の点から好ましい。
すなわち、本発明は、一実施形態において、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗カビ剤組成物であって、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いた場合の、泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下である、硬質表面用黒ずみ生成抑制剤組成物を提供する。
前記した本発明の一実施形態の硬質表面用黒ずみ生成抑制剤組成物は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様を、「硬質表面用抗真菌剤組成物」から「硬質表面用黒ずみ生成抑制剤組成物」に置き換えて適宜適用することができる。泡形成から5分後の泡比容、及び比率B/Aの好ましい範囲、及び測定方法も、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様と同じである。
【0089】
〔硬質表面の洗浄方法〕
本発明は、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を硬質表面に接触させる、硬質表面の洗浄方法に関する。
本発明の硬質表面の洗浄方法では、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を用いる。該組成物の好ましい態様は、前記した本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物と同じである。また前記した本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、本発明の硬質表面用抗カビ剤組成物であってよい。
対象とする硬質表面は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様と同じである。
本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を硬質表面に接触させた後、擦り洗いせずにすすぐ、硬質表面の洗浄方法として好適に実施できる。
【0090】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる。
具体的には、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、原液で、硬質表面に接触させる、又は前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、原液で、希釈せずに硬質表面に接触させる、つまり、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、希釈することなく、硬質表面に接触させる洗浄方法が挙げられる。更に、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、希釈することなく、硬質表面に接触させる洗浄方法が挙げられる。
前記硬質表面用抗真菌剤組成物を希釈することなく硬質表面に接触させるとは、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、意図的に水などで希釈した後、硬質表面と接触させないことである。例えば、水滴等が付着した硬質表面と接触させたり、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を硬質表面に接触させた後、硬質表面に水滴が付着したりする場合は、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を希釈することなく硬質表面に接触させると理解できる。
本発明では、前記硬質表面用抗真菌剤組成物の原液をそのまま、つまり組成を変動させることなく、硬質表面に接触させることが好ましい。例えば、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、含水したスポンジに付着させることなく、硬質表面に接触させる。硬質表面に接触した後は、前記硬質表面用抗真菌剤組成物の組成が変動してもよい。すなわち、硬質表面に接触した後は、前記硬質表面用抗真菌剤組成物の組成が希釈又は濃縮されてもよい。
【0091】
また、本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させた後、擦り洗いをせずにすすぐ、好ましくは硬質表面に接触させた後、所定時間放置した後、擦り洗いせずにすすぐ、洗浄方法が挙げられる。つまり、スポンジ等の可撓性材料や手指等を用いた擦り洗いをすることなく前記硬質表面用抗真菌剤組成物を接触させ、外力をかけずにそのまま放置する洗浄方法が挙げられる。前記硬質表面用抗真菌剤組成物の接触後、必要により所定時間放置した後は、硬質表面を水ですすぐ。すすぐ際は、手などで外力(物理的力)を掛けてもよく、単に水流ですすいでもよい。
【0092】
前記硬質表面用抗真菌剤組成物を硬質表面に接触させる方法は、噴霧又は塗布が好ましく、液滴状にして噴霧する又は泡状にして塗布する方法がより好ましく、泡状にして塗布する方法が更に好ましい。本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記した本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品を用いることが好ましい。また前記した本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗真菌剤物品は、本発明のスプレー容器入り硬質表面用抗カビ剤物品であってよい。
【0093】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、対象物である硬質表面の面積100cmに対して、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.3g以上、更に好ましくは0.4g以上、そして、好ましくは5g以下、より好ましくは3g以下、更に好ましくは2g以下の割合で接触させる。
【0094】
本発明の硬質表面の洗浄方法において、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡状にして硬質表面に塗布する場合、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が、黒ずみ予防効果の持続性の観点から、好ましくは5ml/g以上、より好ましくは10ml/g以上、更に好ましくは15ml/g以上、より更に好ましくは20ml/g以上、より更に好ましくは30ml/g以上、そして、より好ましくは50ml/g以下、更に好ましくは45ml/g以下、より更に好ましくは40ml/g以下である泡で硬質表面に塗布する。泡比容は、実施例の泡比容の評価で記載した方法で測定することができる。
【0095】
本発明の硬質表面の洗浄方法において、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡状にして硬質表面に塗布する場合、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、変色予防効果、特に黒ずみ予防効果の持続性の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上、より更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.4以上、そして、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.7以下である泡で硬質表面に塗布する。泡比容は、実施例の泡比容の評価で記載した方法で測定することができる。
【0096】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、変色予防効果、特に黒ずみ予防効果の持続性の観点から、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触後、好ましくは30秒以上、より好ましくは50秒以上、更に好ましくは60秒以上、より更に好ましくは3分以上、より更に好ましくは5分以上、そして、同様の観点から、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、放置する。この場合、最初に前記組成物が硬質表面に接触した時点を放置の開始としてよい。前記所定時間がこの範囲の時間であってよい。
なお、放置する際の温度は、室温でよく、例えば、10℃以上30℃以下が挙げられる。
【0097】
また、本発明の硬質表面の洗浄方法では、変色予防効果、特に黒ずみ予防効果の持続性の観点から、好ましくは30秒以上、より好ましくは50秒以上、更に好ましくは60秒以上、より更に好ましくは3分以上、より更に好ましくは5分以上、そして、同様の観点から、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、前記硬質表面用抗真菌剤組成物と硬質表面とを接触させる。
【0098】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を直接硬質表面に接触させる。そして、前記硬質表面用抗真菌剤組成物が接触した状態で放置すればよいため、洗浄時において、スポンジ等の可撓性材料による擦り洗いのような外力をかける作業を必要としない。
さらに、本発明の硬質表面の洗浄方法は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、好ましくは泡状の前記組成物を、硬質表面に塗布してそのまま放置するため、硬質表面に前記組成物を長く留めることができる。
本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記硬質表面用抗真菌剤組成物を接触させた硬質表面を、水ですすぐ、好ましくは前記硬質表面用抗真菌剤組成物を接触させた硬質表面を、所定時間放置後、水ですすげばよい。
【0099】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いて、上記した泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、上記した泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下である泡で硬質表面に塗布することが、硬質表面のカビによる黒ずみの発生を抑制する効果の持続性の点から好ましい。
すなわち、本発明は、一実施形態において、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いて、上記した泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、上記した泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下である泡で硬質表面に塗布する、硬質表面の洗浄方法を提供する。
前記した本発明の一実施形態の硬質表面の洗浄方法は、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様を適宜適用することができる。また本発明の一実施形態の硬質表面の洗浄方法で用いる、硬質表面用抗真菌剤組成物は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物と同じであり、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。対象とする硬質表面は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様と同じである。泡形成から5分後の泡比容、及び比率B/Aの好ましい範囲、及び測定方法も、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様と同じである。
【0100】
[硬質表面の真菌による変色の発生を抑制する方法]
本発明は、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面の真菌による変色の発生を抑制する方法に関する。また前記した本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、本発明の硬質表面用抗カビ剤組成物であってよい。
本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を硬質表面に接触させることにより、真菌による変色の発生を抑制することができる。特に、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物、特に硬質表面用抗カビ剤組成物を硬質表面に接触させることにより、カビによる黒ずみの発生を抑制することができる。従って、本発明の硬質表面の真菌による変色の発生を抑制する方法は、硬質表面のカビによる黒ずみの発生を抑制する方法であってよい。すなわち、本発明は、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物、特に硬質表面用抗カビ剤組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面のカビによる黒ずみの発生を抑制する方法に関する。
また本発明は、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、液体組成物を、硬質表面に接触させる、硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する方法に関する。前記液体組成物は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物と同じであり、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する方法において、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を硬質表面に接触させる態様は、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様と同じである。
本発明の硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する方法は、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する方法では、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を用いる。該組成物の好ましい態様は、前記した本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物と同じである。
対象とする硬質表面は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様と同じである。
【0101】
本発明の硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する方法では、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いて、上記した泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、上記した泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下である泡で硬質表面に塗布することが、硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制することができる点から好ましい。
すなわち、本発明は、一実施形態において、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いて、上記した泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、上記した泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下である泡で硬質表面に塗布する、硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する方法を提供する。
前記した本発明の一実施形態の硬質表面の硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する方法は、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様を適宜適用することができる。また本発明の一実施形態の硬質表面の真菌による変色の発生、特にカビによる黒ずみの発生を抑制する方法で用いる、硬質表面用抗真菌剤組成物は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物と同じであり、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。対象とする硬質表面は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様と同じである。泡形成から5分後の泡比容、及び比率B/Aの好ましい範囲、及び測定方法も、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様と同じである。
【0102】
[(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法]
本発明は、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を、硬質表面に接触させる、(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法に関する。
本発明の硬質表面用抗カビ剤組成物を硬質表面に接触させることで、好ましくは泡状にして接触させることにより、(a)成分の硬質表面への残留性が向上することできる。その結果、硬質表面に残留した(a)成分がカビなどの真菌に作用することにより、硬質表面のカビなどの真菌類による変色(特に黒ずみ)の発生を抑制する効果を持続することができる。
本発明の(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法において、前記本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を硬質表面に接触させる態様は、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様と同じである。
本発明の(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法は、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法では、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物を用いる。該組成物の好ましい態様は、前記した本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物と同じである。また前記した本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物は、本発明の硬質表面用抗カビ剤組成物であってよい。
対象とする硬質表面は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様と同じである。
【0103】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いて、上記した泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、上記した泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下である泡で硬質表面に塗布することが、(a)成分の硬質表面への残留性が向上することできる点から好ましい。
すなわち、本発明は、一実施形態において、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(b)が、0.003以上0.25以下である、硬質表面用抗真菌剤組成物を、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いて、上記した泡形成から5分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))が5ml/g以上50ml/g以下であり、上記した泡形成から30秒後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Aという)と、10分後の泡比容(単位質量(g)あたりの泡の体積(ml))(以下、Bという)の比率B/Aが、0.05以上0.9以下である泡で硬質表面に塗布する、(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法を提供する。
前記した本発明の一実施形態の(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法は、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様を適宜適用することができる。また本発明の一実施形態の(a)成分の硬質表面への残留性を向上させる方法で用いる、硬質表面用抗真菌剤組成物は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物と同じであり、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。対象とする硬質表面は、本発明の硬質表面用抗真菌剤組成物で記載した態様と同じである。泡形成から5分後の泡比容、及び比率B/Aの好ましい範囲、及び測定方法も、本発明の硬質表面の洗浄方法で記載した態様と同じである。
【実施例0104】
実施例、比較例で用いた成分を以下に示す。
<(a)成分>
・ベンジルアルコール:(a1)成分、分子量108、東京化成工業(株)製
・フェノキシエタノール:(a1)成分、分子量138、日本乳化剤(株)製
・C12塩化ベンザルコニウム:(a2)成分、一般式(a22)中、R25aが炭素数12のアルキル基、R26a及びR27aがメチル基、Xがクロ-ルイオンの化合物、製品名:サニゾールB-50、花王(株)製
・塩化ラウリルトリメチルアンモニウム:(a2)成分、一般式(a21)中、R21aが炭素数12のアルキル基、R22a、R23a及びR24aがメチル基、Xがクロ-ルイオンの化合物、製品名:コータミン24P、花王(株)製
・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム:(a2)成分、一般式(a21)中、R21aが炭素数18のアルキル基、R22a、R23a及びR24aがメチル基、Xがクロ-ルイオンの化合物、製品名:コータミン86P、花王(株)製
・ポリヘキサメチレングビグアニド塩酸塩:(a3)成分、製品名:Proxel IB、ロンザジャパン(株)製
・銀錯体:(a4)成分、製品名:CF-01、MGCウッドケム(株)製
・チアベンダゾール:(a5)成分、富士フィルム和光純薬(株)製
【0105】
<(b)成分>
・ラウリルジメチルアミンオキシド:(b1)成分、一般式(b1)中、R11bが炭素数12のアルキル基、R12b及びR13bがメチル基、q=0、p=0の化合物、製品名:アンヒトール20N、花王(株)製
・ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:(b2)成分、一般式(b2)中、R21bが炭素数12のアルキル基、rが0、R23b、R24bがメチル基、R25bがメチレン基、Bが-COOの化合物、製品名:アンヒトール20AB、花王(株)製
・アルキルポリグリコシド:(b3)成分、一般式(b3)中、R31bが炭素数10~14のアルキル基、pは0、qは1.4の化合物、製品名:AG124、花王(株)製
【0106】
<(c)成分>
・ヒドロキシエチルセルロース:重量平均分子量156万、ヒドロキシエチル基の置換度1.0~1.3、ダイセルHEC SE850、(株)ダイセル製
・ポリビニルアルコール:重量平均分子量1万~20万(平均重合度1750)、鹸化度70~100モル%、クラレポバールPVA-217、(株)クラレ製
・カルボキシメチルセルロース:重量平均分子量126000、エーテル化度0.65~0.75、サンローズF10MG、日本製紙(株)製
・キサンタンガム:重量平均分子量1480万、住友ファーマフード&ケミカル(株)製
【0107】
<(d)成分>
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:日本乳化剤(株)製
・エタノール:トレーサブル95、日本アルコール産業(株)製
<(e)成分>
・EDTA:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、中部キレスト(株)製
<その他成分>
・香料
【0108】
[硬質表面用抗真菌剤組成物の調製]
表1、2に示す各成分を用いて、下記に示す方法で、表1、2に示す組成の硬質表面用抗真菌剤組成物を調製した。表1、2の硬質表面用抗真菌剤組成物を得るにあたり、まずイオン交換水に、(a)~(e)成分、香料を、表1、2に記載の配合量となるように添加し、室温(25℃)で溶解させた。配合後、pH調整剤として、塩酸及び/又は水酸化ナトリウムを添加し、pHを表1、2に記載の値になるように調整した。なお、pHはガラス電極法で測定した。
なお表1、2中の各配合成分の含有量は、全て有効分量である。
また実施例1~13、及び比較例5の各硬質表面用抗真菌剤組成物について、以下の方法により、25℃における粘度を測定した。実施例1~13ではいずれも20mPa・s以下という低粘度液体であったのに対して、比較例5は180mPa・sという高粘度液体であった。
<粘度の測定方法>
TOKIMEC INC製のB型粘度計(モデルBM)に、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備し、各硬質表面用抗真菌剤組成物を粘度測定用ビーカーに100mL充填し、25℃の恒温水槽中で充分に温度調節した。この組成物の入ったビーカーを粘度計にセットし、ローター回転数を60r/minとして測定した60秒後の値を、硬質表面用抗真菌剤組成物の粘度として測定した。
【0109】
[水封部上における泡比容評価]
水洗大便器の水が張られた水封部を模した立方体の容器(10cm×10cm×10cm)に、表1の硬質表面用抗真菌剤組成物を蓄圧式吐出容器(TA-F、(株)吉野工業所製)に充填して、該組成物5gを泡状に塗布し、泡形成から30秒間、5分間、又は10分間それぞれ放置したあと、泡のみをすくい上げ、円錐型液量計(型番No.1423、PMP製、容量250mL、Kartell社製)に入れて各時間経過後の泡比容を測定した。泡比容は、以下の式により算出した。結果を表1に示す。
泡比容(mL/g)=泡体積(mL)/吐出量(g)
また30秒後の泡比容と10分後の泡比容から、以下の式より求められる泡安定性の指標を算出した。結果を表1に示す。値が1に近い程、泡安定性が良好であることがいえる。
泡の安定性=(10分後の泡比容(mL/g)/30秒後の泡比容(mL/g))
また実施例と比較例の対比において、泡比容の相違がみられた原因の一つとして粘度の影響が考えられる。上記の結果の通り、実施例1~13ではいずれも20mPa・s以下という低粘度液体であったのに対して、比較例5は180mPa・sという高粘度液体であったため、トリガー容器を使った気液混合機構が良好に機能せず、泡比容が小さくなったと考えられる。
【0110】
[黒ずみ抑制の持続性評価]
<黒ずみ抑制の持続性試験(1)>
1週間に1回洗浄する、家庭用水洗大便器(ウォシュレット一体型機能部ネオレストRH1(材質:陶器、品番:TCF9768、TOTO(株)社製、2022年製)、NEWアラウーノV(材質:有機ガラス、品番:CH3010W、Panasonic(株)社製、2016年製)など)を対象に、カビによる黒ずみの発生を抑制する効果の持続性試験を行った。表1の硬質表面用抗真菌剤組成物を蓄圧式吐出容器(TA-F、(株)吉野工業所製)に充填して、試験日初日に(1)硬質表面用抗真菌剤組成物10mlを水洗大便器のボウル部の内部全体を覆うように泡状に塗布し、5分間放置した後、水洗大便器の貯水タンクの水でフラッシュした。その後、7日目に(1)の動作を行った。以上の作業を1カ月間(4サイクル)行い、試験開始から1カ月後の水洗大便器のボウル部の内部の汚れ具合を目視にて観察した。なお試験期間中も評価対象の家庭用水洗大便器は、日常使用されている。試験日初日の黒ずみの残留率を100%とし、専門パネラ―5名により、目視にて以下の判定基準より評価し、平均3点以上で合格とした。点数が高い程、黒ずみ抑制の持続性に優れていることが言える。結果を表1に示す。尚、数字が大きい方がより効果が高いことを意味する。尚、黒ずみはカビの繁殖により生成すると考えられ、黒ずみの残留評価の評価点の平均値が高いほど、抗カビ性に優れると考えられる。
5点:1カ月前と比べて黒ずみの残留量0%(黒ずみが全くない)。
4点:1カ月前と比べて黒ずみの残留量1~10%(黒ずみがほとんどない)。
3点:1カ月前と比べて黒ずみの残留量11~20%(黒ずみが目立たない)。
2点:1カ月前と比べて黒ずみの残留量21~50%(黒ずみがやや目立つ)。
1点:1カ月前と比べて黒ずみの残留量51%以上(黒ずみが目立つ)。
【0111】
<黒ずみ抑制の持続性試験(2)>
表2の硬質表面用抗真菌剤組成物をスクイズ容器(トイレハイターの容器、花王(株)製)に充填して、試験日初日に(1)硬質表面用抗真菌剤組成物10mLを水洗大便器のボウル部の内部全体を覆うように液状に塗布し、5分間放置した後、水洗大便器の貯水タンクの水でフラッシュした以外は、黒ずみ抑制の持続性試験(1)と同様の方法で試験を行った。結果を表2に示す。
【0112】
<黒ずみ抑制の持続性試験(3)>
表2の硬質表面用抗真菌剤組成物を蓄圧式吐出容器(TA-F、(株)吉野工業所製)に充填して、試験日初日に(1)硬質表面用抗真菌剤組成物10mlを水洗大便器のボウル部の内部全体を覆うように泡状に塗布し、30秒間放置した後、水洗大便器の貯水タンクの水でフラッシュした以外は、黒ずみ抑制の持続性試験(1)と同様の方法で試験を行った。結果を表2に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】