(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151326
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】スパークOESシステムにおけるアーク放電移動の磁気閉じ込め
(51)【国際特許分類】
G01N 21/67 20060101AFI20241017BHJP
H01T 1/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G01N21/67 A
H01T1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063780
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】18/298,925
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509027021
【氏名又は名称】サーモ エレクトロン サイエンティフィック インストルメンツ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ランキューバ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー スペンサー ネイバー
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA01
2G043CA05
2G043EA09
2G043FA06
2G043JA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放電形成を安定化させるための分析機器システム、構成要素、及び方法を提供する。
【解決手段】スパークギャップデバイスは、コイル平面に垂直な軸を画定し、かつ軸を実質的に中心とする第1の開口270を画定する第1の平面コイル215-1を含む。スパークギャップデバイスは、軸に沿って第1の平面コイルからオフセットされており、かつコイル平面と実質的に平行な第2の平面コイル215-2であって、軸を実質的に中心とする第2の開口275を画定する、第2の平面コイルを含む。スパークギャップデバイスはまた、第1の開口内に配置されており、軸と実質的に位置合わせされた導電性要素を含む。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパークギャップデバイスであって、
コイル平面に垂直な軸を画定し、かつ前記軸を実質的に中心とする第1の開口を画定する第1の平面コイルと、
前記軸に沿って前記第1の平面コイルからオフセットされており、前記コイル平面と実質的に平行な第2の平面コイルであって、前記軸を実質的に中心とする第2の開口を画定する、第2の平面コイルと、
前記第1の開口内に配置されており、前記軸と実質的に位置合わせされた導電性要素と、を備える、スパークギャップデバイス。
【請求項2】
前記第1の平面コイル又は前記第2の平面コイルが、約10巻~約50巻の巻数を画定する、請求項1に記載のスパークギャップデバイス。
【請求項3】
前記開口が、約100μm~約10cmの幅によって特徴付けられる、請求項1に記載のスパークギャップデバイス。
【請求項4】
前記第2の平面コイルは、約1mm~約50mmの距離だけ前記第1の平面コイルからオフセットされている、請求項1に記載のスパークギャップデバイス。
【請求項5】
前記第1の平面コイル又は前記第2の平面コイルは、約10μF~約1000μFの静電容量定格を有するコンデンサと電気的に結合されている、請求項1に記載のスパークギャップデバイス。
【請求項6】
前記第1の平面コイルの少なくとも一部の上に配置された第1の絶縁層と、前記第2の平面コイルの少なくとも一部の上に配置された第2の絶縁層とを更に備え、前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層は、電気絶縁性かつ熱伝導性の材料を含む、請求項1に記載のスパークギャップデバイス。
【請求項7】
前記第1の絶縁層又は前記第2の絶縁層は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素-炭素複合体、ガラス繊維強化シリコーン、ダイヤモンドライクカーボン、及び合成ダイヤモンドからなる群から選択された1つ以上の材料を含む、請求項6に記載のスパークギャップデバイス。
【請求項8】
前記第1の平面コイルと熱的に結合されており、前記第1の平面コイルから電気的に隔離された第1の基材と、
前記第2の平面コイルと熱的に結合されており、前記第2の平面コイルから電気的に隔離された第2の基材と、を更に備える、請求項1に記載のスパークギャップデバイス。
【請求項9】
前記第1の基材又は前記第2の基材と熱的に結合されており、前記第1の平面コイル又は前記第2の平面コイルから熱を引き出すように構成されている1つ以上の熱除去要素を更に備える、請求項8に記載のスパークギャップデバイス。
【請求項10】
分光システムであって、
スパークギャップデバイスであって
コイル平面に垂直な軸を画定し、かつ前記軸を実質的に中心とする第1の開口を画定する第1の平面コイルと、
前記軸に沿って前記第1の平面コイルからオフセットされており、かつ前記コイル平面と平行な第2の平面コイルであって、前記軸を実質的に中心とする第2の開口を画定する、第2の平面コイルと、
前記第1の開口内に配置されており、前記軸と実質的に位置合わせされた導電性要素と、を備える、スパークギャップデバイスと、
前記スパークギャップデバイスと動作可能に結合された電子回路であって、前記導電性要素と電気的に結合された電圧源、及び前記第1の平面コイル又は前記第2の平面コイルと電気的に結合されたコンデンサを備える、電子回路と、
前記電子回路と動作可能に結合されており、動作を実行するように構成されたコントローラと、を備え、前記動作は、
前記コンデンサを放電することと、
前記導電性要素に電圧を印加すること、を含む、分光システム。
【請求項11】
前記動作は、
約50Hz~約2000Hzの周波数によって特徴付けられるタイミング信号を生成することを更に含み、前記コントローラが、前記タイミング信号を使用して前記動作のうちの少なくともいくつかを調整するように構成されている、請求項10に記載の分光システム。
【請求項12】
前記動作は、
前記導電性要素から前記電圧を除去することと、
前記コンデンサを充電することと、を更に含む、請求項10に記載の分光システム。
【請求項13】
前記コンデンサは、約100A~約5kAの電流を前記第1の平面コイル又は前記第2の平面コイルに放電するように構成されている、請求項10に記載の分光システム。
【請求項14】
前記第1の平面コイルと前記第2の平面コイルとの間の、前記導電性要素の先端付近の領域を観察するように、前記スパークギャップデバイスに対して配向された光学分光計を更に備える、請求項10に記載の分光システム。
【請求項15】
前記動作は、前記光学分光計を使用してスペクトルデータを生成することを更に含む、請求項14に記載の分光システム。
【請求項16】
隔離チャンバを更に備え、前記スパークギャップデバイスの少なくとも一部分は、前記隔離チャンバ内に配置されており、前記隔離チャンバは、前記導電性要素の近傍に制御された環境を提供するように構成されている、請求項10に記載の分光システム。
【請求項17】
1つ以上の非一時的機械可読記憶媒体であって、機械によって実行されると、前記機械に、動作を実施させる命令を記憶しており、前記動作は、
コンデンサを放電することであって、前記コンデンサは、スパークギャップデバイスの第1の平面コイル又は第2の平面コイルと電気的に結合されており、前記スパークギャップデバイスが、
コイル平面に垂直な軸を画定し、かつ前記軸を実質的に中心とする開口を画定する前記第1の平面コイルと、
前記軸に沿って前記第1の平面コイルからオフセットされており、かつ前記コイル平面と平行な前記第2の平面コイルと、
前記開口内に配置されており、前記軸と実質的に位置合わせされた導電性要素と、を備える、放電することと、
前記スパークギャップデバイスの前記導電性要素に電圧を印加することと、を含む、記憶媒体。
【請求項18】
前記動作は、約50Hz~約2000Hzの周波数によって特徴付けられるタイミング信号を生成することを更に含み、コントローラが、前記タイミング信号を使用して前記動作のうちの少なくともいくつかを調整するように構成されている、請求項17に記載の記憶媒体。
【請求項19】
前記動作は、前記第1の平面コイルと前記第2の平面コイルとの間の、前記導電性要素の先端付近の領域を観察するように、前記スパークギャップデバイスに対して配向された光学分光計を使用して、スペクトルデータを生成することを更に含む、請求項17に記載の記憶媒体。
【請求項20】
前記動作は、
前記導電性要素から前記電圧を除去することと、
前記コンデンサを充電することと、を更に含み、
前記スパークギャップデバイスのための動作のシーケンスは、
前記コンデンサを放電することと、
前記電圧を印加することと、
前記電圧を除去することと、
前記コンデンサを充電することと、を含み、
スペクトルデータを生成することは、前記電圧を印加することと少なくとも部分的に重なる、請求項19に記載の記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、分析機器システム、並びにそれらの動作のための技法を対象とする。特に、いくつかの実施形態は、発光分光システムを対象とする。
【背景技術】
【0002】
分光技術は、化学、物理、又は他の材料データ(例えば、純度、組成、相など)を生成する手法として、複合体、鉱石、合金などのバルク材料に適用することができる。スパーク発光分光(spark optical emission spectroscopy、スパークOES)システムでは、バルク試料は、対向電極に対してバイアスされ、典型的には不活性雰囲気中でアーク放電を生成するために使用される。スペクトルデータを生成する分光計によってアーク放電から光子が収集され、スペクトルデータから元素分析及び組成分析を行うことができる。スパークOESデータにおいて見出される特徴的なスペクトルピークの存在及び/又は強度に少なくとも部分的に基づいて、元素識別、相対組成、絶対組成などの有用な情報を収集することができる。
【0003】
スパークOESデータの品質は、アーク付着点が点火間に試料の表面上を移動する傾向によって制限される。アーク移動は、分光計の光収集領域に対する放電領域の移動をもたらし、それによってスペクトルの信号対雑音品質を損なう。例えば、アーク移動は、比較的高いプラズマ温度によって特徴付けられるアーク放電の領域に存在するスペクトル線の相対強度を低減することができる。同様に、アーク移動は、アーク放電の比較的低い温度ゾーンに存在する低エネルギー種及び再結合生成物に起因するスペクトル線の相対強度を増加させる可能性がある。したがって、スパークOES測定中のアーク移動を低減するためのシステム、デバイス、及び技法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、スパークギャップデバイスは、コイル平面に垂直な軸を画定し、かつ軸を実質的に中心とする第1の開口を画定する第1の平面コイルを含む。スパークギャップデバイスは、軸に沿って第1の平面コイルからオフセットされており、コイル平面と実質的に平行な第2の平面コイルであって、軸を実質的に中心とする第2の開口を画定する、第2の平面コイルを含む。スパークギャップデバイスはまた、第1の開口内に配置されており、軸と実質的に位置合わせされた導電性要素を含む。
【0005】
第1の平面コイル及び/又は第2の平面コイルは、約10巻~約50巻の巻数を画定することができる。第1の開口/又は第2の開口は、約100μm~約10cmの幅によって特徴付けることができる。第2の平面コイルは、約1mm~約50mmの距離だけ第1の平面コイルからオフセットされ得る。第1の平面コイル及び/又は第2の平面コイルは、約10μF~約1000μFの静電容量定格を有するコンデンサと電気的に結合され得る。スパークギャップデバイスは、第1の平面コイルの少なくとも一部の上に配置された第1の絶縁層と、第2の平面コイルの少なくとも一部の上に配置された第2の絶縁層とを更に含み得、第1の絶縁層及び第2の絶縁層は、電気絶縁性かつ熱伝導性の材料を含む。スパークギャップデバイスは、第1の平面コイルと熱的に結合されており、第1の平面コイルから電気的に隔離された第1の基材と、第2の平面コイルと熱的に結合されており、第2の平面コイルから電気的に隔離された第2の基材と、を更に含み得る。当業者には、他の技術的特徴が、以下の図面、説明、及び特許請求の範囲から容易に明らかになり得る。
【0006】
第1の絶縁層及び/又は第2の絶縁層は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素-炭素複合体、ガラス繊維強化シリコーン、ダイヤモンドライクカーボン、及び合成ダイヤモンドからなる群から選択される1つ以上の材料を含むことができる。スパークギャップデバイスはまた、第1の基材又は第2の基材と熱的に結合されており、第1の平面コイル又は第2の平面コイルから熱を引き出すように構成されている1つ以上の熱除去要素を更に含むことができる。
【0007】
一態様では、分光システムは、先行の態様によるスパークギャップデバイスと、スパークギャップデバイスに動作可能に結合された電子回路とを含む。電子回路は、導電性要素と電気的に結合された電圧源と、第1の平面コイル又は第2の平面コイルと電気的に結合されたコンデンサと、を含むことができる。分光システムはまた、電子回路と動作可能に結合されており、動作を実行するように構成されたコントローラを含み、動作は、コンデンサを放電することと、導電性要素に電圧を印加することと、を含む。分光システムはまた、隔離チャンバを更に含むことができ、スパークギャップデバイスの少なくとも一部分は、隔離チャンバ内に配置され、隔離チャンバは、導電性要素の近傍に制御された環境を提供するように構成される。当業者には、他の技術的特徴が、以下の図面、説明、及び特許請求の範囲から容易に明らかになり得る。
【0008】
動作は、約50Hz~約2000Hzの周波数によって特徴付けられるタイミング信号を生成することを更に含むことができ、コントローラが、タイミング信号を使用して動作のうちの少なくともいくつかを調整するように構成される。動作は、導電性要素から電圧を除去することと、コンデンサを充電することと、を更に含むことができる。コンデンサは、約100A~約5kAの電流を第1の平面コイル又は第2の平面コイルに放電するように構成され得る。分光システムは、第1の平面コイルと第2の平面コイルとの間の、導電性要素の先端付近の領域を観察するように、スパークギャップデバイスに対して配向された光学分光計を更に含むことができる。動作はまた、光学分光計を使用してスペクトルデータを生成することを含むことができる。
【0009】
一態様では、1つ以上の非一時的機械可読記憶媒体は、機械によって実行されると、機械に動作を実施させる命令を記憶しており、動作は、コンデンサを放電することを含み、コンデンサは、先行の態様のいずれかのスパークギャップデバイスの第1の平面コイル又は第2の平面コイルと電気的に結合されている。動作はまた、スパークギャップデバイスの導電性要素に電圧を印加することを含むことができる。動作は、導電性要素から電圧を除去することを含むことができる。動作は、コンデンサを充電することを含むことができる。スパークギャップデバイスのための動作のシーケンスは、コンデンサを放電することと、電圧を印加することと、電圧を除去することと、コンデンサを充電することと、を含むことができ、スペクトルデータを生成することは、電圧を印加することと少なくとも部分的に同時に起こる。当業者には、他の技術的特徴が、以下の図面、説明、及び特許請求の範囲から容易に明らかになり得る。
【0010】
動作は、約50Hz~約2000Hzの周波数によって特徴付けられるタイミング信号を生成することを更に含むことができ、コントローラが、タイミング信号を使用して動作のうちの少なくともいくつかを調整するように構成される。動作は、第1の平面コイルと第2の平面コイルとの間の領域を観察するように、スパークギャップデバイスに対して配向された光学分光計を使用して、スペクトルデータを生成することを更に含むことができる。当業者には、他の技術的特徴が、以下の図面、説明、及び特許請求の範囲から容易に明らかになり得る。
【0011】
使用されている用語及び表現は、限定の用語としてではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現を使用するに際して、図示され説明される特徴又はその一部分のいかなる同等物も除外する意図はないが、請求される主題の範囲内で様々な修正が可能であることが理解される。したがって、本明細書で請求される主題が実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示されてきたが、本明細書で開示される概念の修正及び変形が、当業者によってなされることが可能であり、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【0012】
本開示の前述の態様及び多くの付随する利点が、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することでより良好に理解されるので、より容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本開示のいくつかの実施形態による、例示的な分析機器システムを図示する概略図である。
【
図1B】本開示のいくつかの実施形態による、例示的なスパーク発光分光構成を図示する概略図である。
【
図2A】本開示のいくつかの実施形態による、スパークOES試料特性評価のための例示的なスパークギャップデバイスを図示する概略図である。
【
図2B】本開示のいくつかの実施形態による、
図2Aのスパーク放電システムの例示的なコイルシステムを図示する概略図である。
【
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、
図2Aのスパーク放電システムのための例示的な磁気閉じ込めシステムを図示する概略図である。
【
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、
図3Bの磁気閉じ込めシステムによって生成される例示的な磁場を図示する概略図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、磁気閉じ込めを伴う例示的スパークOESプロセスを図示する電気信号の概略シーケンスである。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態による、
図2A~
図4の磁気閉じ込めシステムを使用するスパークOESのための例示的なプロセスを図示するブロック図である。
【
図6A】現在の技術による、外部磁場閉じ込めの不在下で生成される、202nm~230nmの紫外領域におけるスパークOESデータのスペクトルである。
【
図6B】本開示のいくつかの実施形態による、外部磁場閉じ込めの存在下で生成される、202nm~230nmの紫外領域におけるスパークOESデータのスペクトルであり、スパーク放電位置の改善された安定性に起因する信号対雑音比の向上を示す。
【
図7A】現在の技術による、外部磁場閉じ込めの不在下で生成される、318nm~346nmの紫外領域におけるスパークOESデータのスペクトルである。
【
図7B】本開示のいくつかの実施形態による、外部磁場閉じ込めの存在下で生成される、318nm~346nmの紫外領域におけるスパークOESデータのスペクトルであり、スパーク放電位置の改善された安定性に起因する信号対雑音の向上を示す。
【0014】
図面において、同様の参照番号は、別段の指定がない限り、様々な図の全体にわたって同様の部分を指す。必要に応じて図面における混乱を低減させるために、要素の全てのインスタンスが必ずしも標識されているわけではない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、説明される原理を例解することに重点が置かれている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例解的な実施形態を例解及び説明してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示において様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。以下の段落では、放電形成を安定化させるための分析機器システム、構成要素、及び方法の実施形態が説明される。本開示の実施形態は、説明を簡単にするために、スパーク発光分光(スパークOES)及び関連機器におけるアーク放電移動の磁気閉じ込めに焦点を当てている。そのために、実施形態は、そのような機器に限定されず、むしろ、分光計の光収集領域に対して有意な距離にわたってバルク材料の表面にわたって移動及び/又は拡散する放電の傾向によって、バルク材料組成の分析が複雑になり得る、分析機器システムのために検討される。例解的な例では、スパークOES信号品質は、アーク移動及び/又は膨張の結果として著しく損なわれる可能性があり、積分時間の増加及びシステム効率の低下をもたらす。そのために、分析システムは、光収集領域が比較的小さい又は無視できる時間的変動を有する放電を含むように、放電の付着を安定化させること及び/又は放電を圧縮することから利益を得ることができる。同様に、本開示の実施形態はアーク放電システム(「スパークOES」と呼ばれる)に焦点を当てているが、時間的不安定性によって影響を受ける可能性がある放電の領域からOESデータが生成される体積「グロー」放電システムを含むがこれに限定されない、追加及び/又は代替の放電様式が企図される。
【0016】
本開示の実施形態は、放電を安定化させるためのシステム、デバイス、方法、アルゴリズム、及びコンピュータ可読命令を記憶する非一時的媒体を含む。例解的な例では、分光システムは、コイル平面に垂直な軸を画定し、かつ軸を実質的に中心とする第1の開口を画定する第1の平面コイルを含むことができる。システムは、軸に沿って第1の平面コイルからオフセットされており、コイル平面と実質的に平行な第2の平面コイルであって、軸を実質的に中心とする第2の開口を画定する、第2の平面コイルを含むことができる。システムはまた、第1の開口内に配置されており、軸と実質的に位置合わせされた導電性要素を含むことができる。コイルに電流を流すことにより、コイル間に磁場を誘導することができる。導電性要素と試料との間の磁場生成とアーク放電形成との協調により、アーク放電移動の磁気閉じ込めは、スペクトルデータの信号対雑音品質を改善することができ、一方で、積分時間を短縮し、分光システムの効率を改善することもできる。
【0017】
図1Aは、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な分析機器システム100を図示する概略図である。例示的なシステム100は、スペクトルデータを生成、記憶、送信、及び/又は処理するように構成された構成要素を含む。
図1Aの図示された実施形態において、例示的なシステム100は、機器105、機器PC(instrument PC、IPC)110、及びクライアントPC115を含み、例示的なシステム100の構成要素のうちの1つ以上は、1つ以上のネットワーク120を介して通信することができる。
【0018】
機器105は、試料操作及び装填構成要素、光学構成要素、並びに電子及び/又は電気機械構成要素を含むことができ、これらは一緒に、電極として材料試料107(例えば、バルク材料、複合体、合金、鉱石など)を使用してアーク放電を生成するように機器105構成する。いくつかの実施形態では、機器105は、試料107に力を加えるように構成されたレバー又は他の部材を有する機械的保持装置を含む。このようにして、試料107は、
図2Aを参照してより詳細に説明されるように、隔離チャンバ109内に封入された不活性雰囲気内で試料107の少なくとも一部分を隔離する手法として、シール、ガスケット、又は他の材料に対して取り外し可能に置くことができる。例えば、機器105は、機器105の周囲雰囲気とは異なる不活性雰囲気又は別様に制御された雰囲気に試料107を導入することができる開口を含むことができる。(例えば、機器105内の負圧及び/又は保持装置の力によって)試料107に印加される力の組み合わせを通して、試料107は、機器105の表面に対してシールを形成することができる。機器105の周囲雰囲気からの隔離は、放電形成のための既知の及び/又は制御された組成を有する既知の及び/又は制御されたガスを使用してOESスペクトルが生成されることを可能にし、次に、試料組成に関する詳細な情報がスペクトルピーク情報から導出されることを可能にする。
【0019】
図1Bを参照してより詳細に説明されるように、機器105は、アーク放電の磁場閉じ込めの使用を含む発光分光(OES)技術の一部として、試料107を電極として使用して形成された1つ以上のアーク放電から放出された電磁放射の少なくとも一部分を収集することによってスペクトルデータを生成することができる。そのために、IPC110及び/又はクライアントPC115は、OES技術の少なくとも一部を形成する機器105の動作を調整することができる。例えば、機器105は、
図2A~
図5を参照してより詳細に説明されるように、コンデンサ、導電性コイル、熱伝達構成要素、電圧源、及び制御回路等の電子構成要素を含むことができ、IPC110及び/又はクライアントPC115は、種々の構成要素のそれぞれの動作を調整することができる。いくつかの実施形態では、IPC110は、機器105に機能的に統合される(例えば、機器105の筐体の内部に格納された回路基板として)が、IPC110はまた、ユーザインターフェース構成要素(例えば、周辺機器及びディスプレイ)を含む、物理的に別個のユーザアクセス可能コンピューティングデバイスであってもよい。IPC110及び/又はクライアントPC115は、パーソナルコンピューティングデバイス、機器105(例えば、特定用途向け機械、すなわちASM)を含む複数の機器の動作を調整するように構成された専用コンピューティングデバイスを含むがこれらに限定されない、1つ以上のタイプのコンピューティングデバイスであるか、又はそれを含むことができる。いくつかの実施形態では、IPC110及び/又はクライアントPC115は、ネットワーク120を介して通信する、連続又は半連続試料分析技法の一部として、機器105を含む複数の機器の動作を並行して調整する。ネットワーク120は、プライベートネットワーク(例えば、イントラネット又はローカルエリアネットワーク、すなわちLAN)、パブリックネットワーク(例えば、インターネット)、及び/又は通信ネットワーク(例えば、セルラー及び/又は衛星)を含むことができる。
【0020】
図1Bは、本開示のいくつかの実施形態による、例示的なスパーク発光分光構成150を図示する概略図である。例示的な構成150は、
図2A~
図7Bを参照して説明される技術に従って、電極としての
図1Aの材料試料107と、対向電極としての導電性要素155と、試料107及び導電性要素155に対して配向され、試料107と導電性要素155との間で点火された放電160から発する電磁束「φ
D」の少なくとも一部分を収集するように構成された分光計165と、を用いる発光分光(optical emission spectroscopy、OES)技術の一例である。
【0021】
分光計165は、入力光学系167、回折格子又は他の分散光学系170、及び検出構成要素175を含む光学構成要素を含むことができる。入力光学系167は、試料107と導電性要素155との間の領域を含む収集容積に向かって配向され得、放電160から発する光子を収集するように構成され得る。この領域は、導電性要素155の先端付近の収集容積の一部分を含むように画定することができる。この文脈では、「付近」という用語は、放電160が試料107の付近であるよりも、比較的導電性要素155の付近ではないように移動する、増加したφDに対応する分光計165及び/又は入力光学系167の光学的位置合わせ/配向を説明するために使用される。例解的な例として、導電性要素155は、試料107に向かって配向され、放電160のための付着点として働く先端で終わるテーパを含むことができ、それにより、入力光学系167を導電性要素155の先端付近の領域に向かって配向することにより、光信号の時間的安定性及び強度を改善することができる(例えば、放電が磁気的に閉じ込められる場合)。入力光学系167は、検出構成要素175の1つ以上の検出器によって登録される構成要素波長185の角度分解セットとして分散され得る入力放射180として、光子を分光計165内に結合することができる。いくつかの実施形態では、回折格子光学系170は、単一の検出器が波長の範囲を走査するために使用され得るように、回転タレット上に搭載されることができる。
【0022】
放電160の領域は、他のパラメータの中でも、異なるエネルギー分布、イオン化率、φ
Dによって特徴付けることができる。例えば、放電160は、他のプラズマ構造の中でも、原子スペクトルデータを収集することができる第1の外側領域161と、イオンスペクトルデータを収集することができる第2の外側領域163とを含むことができる。いくつかの実施形態では、平衡条件は、OESデータにおいてバックグラウンド放射を形成する連続放射を生成することができる。そのため、試料107及び/又は導電性要素155の表面上を移動するアーク放電の傾向は、分光計165の光学系の動きが無視できるか又は全くない場合に比べて、入力光学系167によって収集される電磁放射のタイプ、強度、及び品質に影響を及ぼす可能性がある。有利なことに、
図2A~
図7Bを参照して説明される放電160の磁気閉じ込めのための技術は、少なくとも部分的に放電移動の抑制及び/又は放電160を圧縮することに起因して、磁気閉じ込めのない同等のシステムに対して、例示的なシステム100によって生成されるOESスペクトルデータの品質を大幅に改善する。
【0023】
試料107は、実質的に平坦な面を有する円筒として図示され、導電性要素155は、円錐形の端部を有する円筒として図示されているが、そのような幾何形状は、非限定的な例解的な実施形態として意図されている。円錐形端部は、導電性要素155と試料107との間に電界を集中させることによって、放電155の移動を少なくとも部分的に低減するように機能することができるが、機器105構成要素の耐久性を制限し得る、イオン衝撃及び抵抗加熱等の劣化効果を集中させることもできる。そのために、試料107及び/又は導電性要素155は、同じ構成又は異なる幾何学的構成をとることができる。導電性要素155は、機器105が動作する温度及び圧力で比較的低い蒸気圧を有し、かつ放電160の電子及び/又はイオン衝撃下でスパッタリングに対して比較的低い感受性を有する導電性材料(例えば、金属又は他の導電性材料)であるか、又はそれを含むことができる。例解的な例では、導電性要素は、タングステン、又は比較的低い仕事関数によって特徴付けられる別の導電性材料であるか、又はそれを含むことができる。
【0024】
図2Aは、本開示のいくつかの実施形態による、スパークOES試料特性評価のための例示的なスパークギャップデバイス200を図示する概略図である。例示的なシステム200は、
図1A及び
図1Bに図示される構成の一例であり、導電性要素155及び試料107の少なくとも一部分を機器105の周囲環境から隔離する機器105の内部の制御環境205(例えば、隔離チャンバ109によって形成される)を含む。例示的なシステム200は、機器105の表面と試料107の表面との間に形成された接触を更に図示しており、それによって、制御環境205と周囲環境との間にシールを形成することができる。同様に、試料107は、保持装置109との接触によって少なくとも部分的に保持され、それを介して試料107を電圧源210と電気的に結合することができる。電圧源210は、試料107と導電性要素155との間で放電160を生成/点火することの一部として、導電性要素155と電子的に結合され得る。いくつかの実施形態では、試料107は、保持装置109から独立して電圧源210と電気的に結合される。例示的なシステム200はまた、2つの平面コイル215を含み、これらは簡略化のために、導電性要素155及び試料107が実質的に位置合わせされる軸に対して実質的に垂直な楕円として図示されている。動作中、試料107と導電性要素155との間の間隙にわたって電圧源210によって印加される電圧は、対流効果及び他の物理現象の影響を受けやすいが、
図3A及び
図3Bを参照してより詳細に説明されるように、平面コイル215を通って流れる電流によって生成される磁場の力によって軸に沿って少なくとも部分的に閉じ込められ得る放電160を点火することができる。
【0025】
図1A及び
図1Bを参照してより詳細に説明されるように、制御された環境205において放電160を生成することは、少なくとも部分的に、電磁放射を減衰させ、試料107の化学組成及び/又は構造を変化させ得る(例えば、酸化、窒化など)プラズマ化学反応及びエネルギー散逸効果の数及び程度を制限することによって、試料107のOESデータの品質を改善することができる。追加的に、平面コイル215によって画定される1つ以上のコイル平面に垂直な軸と実質的に位置合わせされる磁場を生成することは、
図4及び
図5を参照してより詳細に説明されるように、放電160の点火、放電、及びクエンチの複数の反復を含み得る、試料分析中の放電160の移動を低減させることができる。いくつかの実施形態では、電圧源210は、試料107及び/又は導電性要素155に対して破壊的であり得、有意な熱を生成し得る、アーク放電(例えば、電圧調節動作)を持続させるのではなく、放電160を繰り返し点火及びクエンチするように構成される、110V又は210Vの線間電圧と比較して比較的高電圧(例えば、1~10kV
DC)の電流調節電源を含む。
【0026】
図2Bは、本開示のいくつかの実施形態による、
図2Aのスパークギャップデバイス200の例示的なコイルシステム250を図示する概略図である。例示的なコイルシステム250は、第1の平面コイル215-1、第2の平面コイル215-2、第1の基材260-1、第2の基材260-2、1つ以上の熱除去要素265、及び1つ以上の熱結合267を含む。本開示の文脈では、「平面」という用語は、円筒座標空間の「Z」座標において実質的に一貫した値を有する導電経路が定義される、放射螺旋、曲線、又は他の関数を有するコイルを指すために使用される。
【0027】
第1の平面コイル215-1及び/又は第2の平面コイル215-2は、コイル平面「R-θ」に垂直な軸方向「Z」に平行な軸Aを画定することができ、軸Aを実質的に中心とする第1の開口270を画定することができる。図示された構成では、基材260は環状であり、軸Aを実質的に中心とする。いくつかの実施形態では、基材260は、それぞれの基材260がそれぞれの平面コイル215と熱的に結合され、それぞれの平面コイル215から電気的に隔離されることを可能にする異なる形状及び/又は幾何形状をとる。このようにして、第1の基材260-1及び/又は第2の基材260-2は、長方形の幾何学的形状、楕円形の幾何学的形状、多角形の幾何学的形状、「馬蹄形」の幾何学的形状、不規則な幾何学的形状などをとることができる。いくつかの実施形態では、基材は、例えば、機器205の筐体又は機器205の内部の他の部品(例えば、分光計260等)の制約によって制限される、異なる形状を有する。基材260は、平面コイル215を封入することができ、又は平面コイル215を少なくとも部分的に制御環境205に露出させたままにすることができる。
【0028】
第2の平面コイル215-2は、軸Aに沿って第1の平面コイル215-1からオフセット275され、コイル平面R-θと実質的に平行であり得る。オフセット275は、約1mm~約100mmとすることができ、その部分範囲、端数、及び内挿を含む。オフセット275は、試料107と導電性要素155との間の間隙と実質的に等しいか、間隙より大きいか、又は間隙より小さくすることができる。オフセット275の値が約1mmよりも小さい場合、平面コイル215間の磁場は、「Z」軸方向における閉じ込めの低下を示す可能性があるが、オフセット275の値が5mmよりも大きい場合、磁場閉じ込めを生成するための電流要求は、少なくとも部分的に、コンデンサのサイズ設定及び熱負荷(その部分範囲、端数、及び内挿を含む)に起因して、約100Hz~約1000Hzのスパーク周波数で動作するスパークOESデバイスに対して実行不可能である可能性がある。
【0029】
第2の平面コイルは、軸Aを実質的に中心とする第2の開口275を画定することができる。第1の開口270及び第2の開口275は、それぞれ、導電性要素155及び試料107を収容するように成形することができる。例えば、開口270及び275は、約100μm~約10cmの幅であって、その部分範囲、端数、及び内挿を含む幅によって特徴付けることができる。開口270及び275は、円形、多角形、楕円形、又は不規則な形状であり得る。放電160の磁気閉じ込めは、開口270及び275のサイズの増加とともに損なわれる可能性があるので、放電160の影響による劣化下でOESデータ品質と試料安定性とのバランスをとる試料直径及び対応する開口サイズを特定することができる。いくつかの実施形態では、開口270及び275は、試料107及び/又は導電性要素155の幅の約2倍又は約3倍の幅であり得る。
【0030】
図3A及び
図3Bを参照してより詳細に記載されるように、開口270及び275は、同じサイズ又は異なるサイズであり得る。例えば、第1の開口270は約100umであり得、第2の開口は約1cmであり得、「Z」軸方向における磁場の潜在的な歪みを考慮するために、それぞれの平面コイル215(例えば、巻き数、動作電流など)に対して対応する修正が行われる。いくつかの実施形態では、開口270及び275は、同じサイズを有し、試料107を収容するように成形され、
図3A及び
図3Bの例示的実施形態に図示されるように、平面コイル215が実質的に対称であることを可能にする。例えば、第1の開口270及び第2の開口275は、両方とも、約0.1cm幅、約0.5cm幅、約1cm幅、約1.5cm幅、約2幅、約2.5cm幅、約3cm等(これらの端数及び内挿を含む)であり得る。
【0031】
例示的なコイルシステム250は、
図2Aの制御された環境205内に少なくとも部分的に配置されるか、又は制御された環境205に別様に露出される構成要素を含む。例えば、基材260は、制御された環境205の境界の一部を形成するために、機器205の内面と機械的に結合され得る。別の例では、基材260は、機器105の内面との機械的結合がほとんど又は全くない制御された環境内に配置することができる。平面コイル215からの熱除去を容易にすることの一部として、基材260は、比較的低い電気伝導率(例えば、絶縁材料)及び比較的高い熱伝導率を有する材料であるか、又はそれを含むことができる。例えば、基材260は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素-炭素複合体、酸化ベリリウム-グラフェン複合体、ガラス繊維強化シリコーン、ダイヤモンドライクカーボン、及び/又は合成ダイヤモンドなどの材料であってもよく、又はこれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、260の基材は、
図3Bを参照してより詳細に説明するように、絶縁層が平面コイル215の少なくとも一部の上に配置される場合のように、アルミニウム、銅、グラフェンなどの比較的高い電気伝導率及び比較的高い熱伝導率を有する材料から形成することができる。
【0032】
熱除去要素265及び熱結合部267は、システム200の動作中に平面コイル215及び/又は基材260から熱を除去するように構成された構造を含むことができる。いくつかの実施形態では、熱除去要素265は、固体冷却要素(例えば、ペルチェ冷却器等)及び/又は冷却剤システム(例えば、ヒートポンプ、冷却装置等)を含む。次に、熱結合部267は、関連する熱伝達様式に適した熱交換を容易にするための構造及び/又は材料を含むことができる。例えば、液体冷却剤が平面コイル215及び/又は基材260から熱を除去するために使用される場合、熱結合部は、基材260と熱接触して配置され、熱除去要素265から低温冷却剤を送達し、高温冷却剤を熱除去要素265に戻すように構成される、1つ以上の冷却剤ループを含むことができる。別の例では、ペルチェ冷却器は、(例えば、界面抵抗を低減するために熱ペーストを使用して)基材260と熱接触して配置することができる。いくつかの実施形態では、単一の熱除去要素265が、例えば、基材260及び/又は平面コイル215の両方と結合され、冷却装置が、並列又は直列冷却剤ループを通して冷却剤を両方の構造に送達するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、平面コイル215は、液体冷却剤が流れることができる導管を含む。いくつかの実施形態では、平面コイル215の対流冷却は、制御された環境205内のガスを循環させることによる制御された環境205内の強制対流を含む。
【0033】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、
図2Aのスパークギャップシステム200のための例示的な磁気閉じ込めシステム300を図示する概略図である。
図3Aのシステム300は、それぞれの平面コイル215と電子的に結合されたコンデンサ305を含む。このようにして、電流「I」は、
図3Bを参照してより詳細に説明されるように、平面コイル215間に磁場を生成することの一部として、コンデンサ305によって平面コイル215内に放電され得る。平面コイル215は、コイル平面「X-Y」を画定しており、軸Aは、コイル平面に垂直であり、導電性要素155は、第1のコイル215-1の開口内に配置されており、軸Aと実質的に位置合わせされている。試料107は示されておらず、試料が存在しない
図2Aのスパークギャップデバイス200の構成要素を示す。X-Y-A座標空間は、円筒対称ではない基準フレームとして
図3A及び
図3Bで使用される。
【0034】
平面コイル215は、銅又は他の金属などの導電性材料を含むことができ、導電性材料は、軸Aの周りに複数の巻310(巻線、ターニングなどとも呼ばれる)で(例えば、基材260上に)配置される。いくつかの実施形態では、平面コイル215は、基材260上への金属層又は膜のパターン化された蒸着によって、基材からの金属のパターン化された除去によって、又は金属ワイヤの機械的回転によって配置される。
図2Bを参照してより詳細に説明されるように、熱負荷は、平面コイル215の寸法、形状、及び材料選択に対する機能的制約であり、磁場強度は、複数の巻き310に対する機能的制約である。磁気閉じ込めは、複数の巻き310に概ね比例する磁場強度の増加とともに改善することができるが、平面コイル215間の磁場に影響を及ぼす可能性がある物理現象によって影響を受ける可能性がある。例えば、平面コイルは、その部分範囲、端数、及び内挿を含む、約10~約50の巻310を画定することができる。単一の物理現象に束縛されるものではないが、50の巻き310を超えると、電気インダクタンスは、平面コイル215を通る電流伝達に遅延を導入する可能性があり、これにより、放電時間が長すぎて磁気閉じ込め及びスパーク周波数が対応しなくなる可能性がある。例えば、スパークOESシステムは、約50Hz~約1000Hzのスパーク周波数で動作することができ、その部分範囲、端数、及び内挿を含む。したがって、前述の周波数範囲に対応する約1ミリ秒~約20ミリ秒の範囲を超えてコンデンサ305の放電速度を延長するインダクタンス効果は、磁気閉じ込めの性能を損なう可能性があり、ひいてはOESデータ生成の改善を低減する可能性がある。
【0035】
いくつかの実施形態では、システム300は、約1kGs~約5kGsの強度を有する(
図3Bに図示されるような)平面コイル間に磁場を生成する電流を平面コイル215に送達するように構成されるコンデンサ305を含み、ここで、kGsは、0.1Tに相当する1000ガウスの単位を示すために使用される。そのために、コンデンサ305は、約10μF~約1000μFの静電容量定格を有することができ、それらの部分範囲、端数、及び内挿を含む。いくつかの実施形態では、平面コイル215は、システム300の充電容量及び/又は動作可能放電周波数を増加させるためのアプローチとして、バンク内の(例えば、並列又は他の配列で配列された)複数のコンデンサ305と電気的に結合される。このようにして、コンデンサ305は、約100A~約5kA(それらの部分範囲、端数、及び内挿を含む)の電流を第1の平面コイル215-1、第2の平面コイル215-2、又はその両方に放電するようにサイズ決め、指定、及び/又は選択することができる。例解的な例では、第1の平面コイル215-1及び第2の平面コイル215-2は、
図4を参照してより詳細に説明するように、スパーク周波数に対応する期間(例えば、約1ミリ秒~約50ミリ秒)の間、各平面コイル215に約1kA~約2kAで放電するのに適した充電容量を有する、共有コンデンサバンク、別個のコンデンサバンク、高容量コンデンサなどのいずれかのコンデンサ305と電気的に結合される。
【0036】
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態による、
図3Aの磁気閉じ込めシステム300によって生成される例示的な磁場350を図示する概略図である。例示的な磁場350は、電流I(例えば、I1及びI2)が両方の平面コイル215を通って流れている期間中に磁場表面をともに画定する破線によって示される一連の磁力線355によって図示される。図示された実施形態では、平面コイル215は、軸Aに関して実質的に対称であり、幅が実質的に等しい開口270、275を有する。結果として生じる磁場350は、Aの所与の値に対してコイル平面X-Y内でAに関して回転対称であり、オフセット280の中心位置に関して鏡面対称である。このようにして、場350は、軸Aと実質的に位置合わせされた電子及びイオンの流れを含むアーク放電に力を及ぼし、この力は、アークがX及び/又はY方向に移動するときにアークを軸Aと位置合わせするように作用する。
【0037】
複数の巻310を含む平面コイル215は、平面コイル215の少なくとも一部の上に配置された絶縁層360によって少なくとも部分的に覆うことができる。例えば、第1の絶縁層360は、第1の平面コイル215-1の少なくとも1つ以上の巻310上に配置することができ、第2の層360は、第2の平面コイル215-2の少なくとも1つ以上の巻310上に配置することができる。同様に、絶縁層360は、巻310の一部分の上に配置することができる。いくつかの実施形態において、絶縁層360は、巻310の上に配置され、実質的に共形の層を形成する。絶縁層360は、電気絶縁性かつ熱伝導性の材料とすることができる。例えば、絶縁層360は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素-炭素複合体、ガラス繊維強化シリコーン、ダイヤモンドライクカーボン、及び合成ダイヤモンドからなる群から選択される1つ以上の材料を含むことができる。有利には、電気絶縁材料を選択することにより、平面コイル215が、そうでなければアーク160を引き付けて試料107又は導電性要素155ではなく巻310のうちの1つに付着させる位置で動作することを可能にすることができる。追加的に、電気絶縁性及び熱伝導性である材料の選択は、熱除去要素265の性能を改善することができる。
【0038】
例解的な実施形態では、平面コイル215は、基材260、平面コイル215、及び絶縁層360を形成することを含む一連の蒸着-エッチングプロセス(例えば、CMOS互換製造技術)によって製造される。例えば、導電性(例えば、金属)層を基材260上に蒸着させることができ、そこから、導電性層の一部を選択的に除去することによって(例えば、マスキング及び反応性イオンエッチングによって)、巻310及び電子構成要素(例えば、コンデンサ305)のための接点のパターンを形成することができる。平面コイル215の形成に続いて、絶縁層360を基材260及び/又は平面コイル215上に蒸着させることができる。このようにして、本開示のスパークギャップデバイスは、平面回路構成要素として製造された構成要素を含む。
【0039】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、磁気閉じ込めを伴う例示的スパークOESプロセス400を図示する電気信号の概略シーケンスである。例示的プロセス400は、
図1A及び
図1Bを参照してより詳細に説明されるように、測定のシーケンス中の時間の関数として、平面コイル215を通る電流、試料107及び/又は導電性要素155に印加される電圧、放電160によって搬送される放電電流、並びに分光計165によって検出される発光のためのシーケンスを含む。本開示の実施形態では、測定のうちの1つ以上を省略及び/又は置換することができる。例えば、スパークOESシステムは、放電電流測定を省略することができる。いくつかの実施形態では、例示的なプロセス400は、スパークギャップデバイスの構成要素の動作を調整するために使用されるタイミング信号を含む。図示された信号は、一定の縮尺で描かれておらず、例示的なプロセス400中の動作の相対的なタイミング及び全般的な調整を図示するために概略的に説明されている。
【0040】
単一のスパーク点火のための動作のシーケンスは、時間T
0と時間T
4との間に図示され、後続のシーケンスは、T
0の次の反復において開始する。T
0は、スパーク点火シーケンスを開始するタイミングトリガ又は他の制御信号を表す。タイミング信号は、コンピュータシステム(例えば、
図1AのIPC又はクライアントPC)のクロック回路又は他の電子構成要素を使用して、及び/又は既知の周波数を有する周期信号を生成するように構成されたソフトウェアによって生成され得る。例えば、タイミング信号は、トランジスタ-トランジスタ論理(transistor-transistor logic、TTL)信号などの4VDC方形波を含むことができる。このようにして、制御回路に含まれる構成要素は、例えば、遅延又は他の手法を使用するソフトウェア制御タイミングによって、TTL信号を参照してスパークギャップデバイスの様々な構成要素を作動させることができる。例解的な例では、タイミング信号は、約1kHzの周波数を有することができるが、
図1A~
図3Bを参照して説明したシステムの構成の一部として、約50Hz~約2000Hzとすることもでき、その部分範囲、端数、及び内挿を含む。
【0041】
時間T1において、コンデンサ305は平面コイル215に放電され、
図3A及び
図3Bを参照してより詳細に説明されるように、試料107及び導電性要素155の近傍に磁場を生成する。T2において、電圧源210は、磁場が印加されて放電160の位置を制限するのと同時に、放電160を点火する。放電電流は、発光が放電電流に比例すること、及び電圧が降伏電圧又は点火電圧「V
B」ではなく放電電圧「V
D」で安定した後に、試料107と導電性要素155との間の電流が放電電流「I
D」に達することを図示するために提供される。いくつかの実施形態では、コンデンサ305の放電時間は、磁場のクエンチの前に電圧を除去することによって放電160を消すのに十分な精度で推定及び/又は決定することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、熱負荷又は電圧源210制限等の他の制約が、T4とT1との間、及びT3とT2との間の相対持続時間を決定する際に役割を果たすことができる。したがって、放電が点火され、コイル電流が流れている時間であるT2~T3の間は、約10μ秒~約1ミリ秒の持続時間に対応し得、その端数、部分範囲、及び内挿を含む。いくつかの実施形態では、T2とT3との間の持続時間は、約100μ秒である。
【0042】
発光信号は、放電160が磁気的に閉じ込められていないシステムと比較して改善された安定性を概略的に示す。比較のために、発光信号は、T
0に先行する信号の最も左のセットにおいて提供され、これは、磁気閉じ込めが提供されないシステムに対応する。発光信号は、不安定性を示し、発光強度が、磁気的に閉じ込められた後続の放電に対して示される発光強度よりも著しく低い、放電が点火される時間の一部分を示す(
図1Bを参照して説明したように、φ
Dと呼ばれる)。ミリ秒のオーダーの積分時間にわたって、改善された安定性の総合効果が、以下の例示的な実施形態を参照して説明される
図7A及び
図7Bに明確に図示されている。
【0043】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、
図2A~
図4の磁気閉じ込めシステムを使用するスパークOESのための例示的なプロセス500を図示するブロック図である。
図1~
図4を参照して説明したように、例示的なプロセス500を構成する1つ以上の動作は、分析機器(例えば、
図1Aの例示的な機器105)の構成要素に動作可能に連結されたコンピュータシステム若しくは他の機械、並びに/又は、特徴評価システム、ネットワークインフラストラクチャ、データベース、コントローラ、リレー、電源システム、及び/又はユーザインターフェースデバイスを含むがこれらに限定されない追加のシステム若しくはサブシステムによって実行及び/又は開始できる。その目的のため、動作は、1つ以上の機械可読媒体において機械実行可能命令として格納することができ、機械実行可能命令は、コンピュータシステムによって実行されると、コンピュータシステムにプロセス500を構成する動作の少なくとも一部分を実施させることができる。プロセス500の構成動作は、
図5A~
図5Bに図示されるように、スペクトルデータを生成するために試料を処理するための分析方法の少なくとも一部を形成する、試料及び/又は機器調製、動作505~525の前に行われる動作等の本説明から省略される動作によって先行される、分散される、及び/又は後続され得る。その目的のため、いくつかの実施形態では、例示的なプロセス500の動作が省略、反復、順序変更、及び/又は置換され得る。
【0044】
動作505において、スペクトルデータ収集は、スパーク点火シーケンスの複数回の反復を含む測定の一部であり得る。
図4を参照してより詳細に説明するように、スパークOES測定は、数十、数百、数千、又はそれ以上の個々の放電160からの発光の積分を含むことができる。そのために、動作505は、分光計(例えば、
図1Bの分光計165)のための初期化及び内部較正ルーチン、並びに放電点火の個々の反復に向けられた動作を含むことができる。そのような動作の例は、信号積分に対するバックグラウンドの影響を低減する動作510~520と協調して、シャッターを開くこと、及び/又は1つ若しくは複数のセンサに通電することを含む。この文脈において、データは、発光スペクトル、及びメタデータ、タイミングデータ、電子信号データ(例えば、
図4に図示されるような)などの他のデータを含むことができる。
【0045】
動作510において、コンデンサ(例えば、
図3Aのコンデンサ305)は、平面コイル(例えば、
図2Aの平面コイル215)内に放電され、コイル平面に垂直な軸(例えば、
図2Bの軸A)と実質的に位置合わせされた磁場を生成する。
図4を参照して図示されるように、放電(例えば、
図1Bの放電160)の点火は、動作515と時間的に調整される。いくつかの実施形態では、プロセス500は、動作520における各スパーク点火シーケンスの反復の一部としてコンデンサを充電するための動作を含む。これは、例えば、同じコンデンサが各反復において放電される場合に関連する。しかしながら、いくつかの実施形態では、コンデンサのバンクが使用され、例えば、1対1の放電及び充電が非実用的であるように、コンデンサの充電及び放電が異なる時間スケールで生じる場合、異なるケイデンスでのコンデンサ充電を可能にする。
【0046】
動作525において、コンピュータシステムは、データ収集を停止する。例示的なプロセス500の反復回数は、受信された信号強度に少なくとも部分的に基づくことができる。例えば、動作525は、閾値カウント数、相対バックグラウンド強度などによってゲート制御することができる。有利なことに、本開示で説明される磁気閉じ込めのための技法は、例示的なプロセス500の反復回数を大幅に低減することができる。次に、以下の例及び
図6A~
図7Bを参照してより詳細に説明されるように、改善された発光信号強度及び品質の結果として、試料スループット、電力消費、及びツールメンテナンスの観点から、全体的なシステム性能が著しく改善される。
【0047】
例:磁気閉じ込めによるスパークOESデータの強化
図6A~
図7Bは、アーク放電(例えば、
図1A及び
図2Aの放電160)の磁場閉じ込めの導入から生じるスパークOESデータにおける信号対雑音特性及び種識別に対する改善を実証するために提供される。本実施例で使用される磁場構成は、放電方向(例えば、導電性要素155と試料107との間)と実質的に位置合わせされた、軸方向に位置合わせされた磁場を誘導した。このようにして、データは、本開示のスパークギャップデバイス(例えば、
図2Aの例示的なスパークギャップデバイス200)によって生成されるような、磁気閉じ込めを省略する現在技術のスパークOESシステムに対する、本開示のスパークOESシステム(例えば、
図1Aの例示的なシステム100)の性能の改善を表す。スパークOESデータは、10秒の積分時間にわたって200Hzのスパーク周波数で大気圧のアルゴン制御環境においてアルミニウム試料を使用して生成された。したがって、スペクトルは、試料材料及び環境の両方からの発光線を含む。
図1A及び
図1Bを参照して説明したように、磁気閉じ込めは、少なくとも部分的に、分光計165の光収集領域に対する放電160の移動を低減することによって、スパークOESデータを改善する。このようにして、
図6B及び
図7Bで観察された改善は、試料線及び環境線の強度の増加を含む。
図6A~
図7Bのスペクトルは、
図7A及び
図7Bが、
図6A及び
図6BのOESデータを生成するときに使用されなかった磁気閉じ込めを使用して生成されたことを除いて、一貫した光学パラメータ及び電気パラメータを用いて収集された。
【0048】
図6Aは、現在の技術による、外部磁場閉じ込めの不在下で生成される、202nm~230nmの紫外領域におけるスパークOESデータのスペクトルである。
図6Aは、縦軸にカウントを、横軸にナノメートル単位の波長を含む紫外発光スペクトルである。波長範囲は、約202nm~約230nmである。スペクトルデータは、ピークに関する議論に焦点を当てるために、破線で示される他のスペクトルデータとともに、黒い実線で示されるピークのセットとして図示される。磁気閉じ込めなしでは、多くのピークがOESスペクトルにおいて識別可能であり、発光強度値は約450カウント~約550カウントに近づく。
図6Bを参照すると、3つのピークが、約202nm、約213nm、及び約226.5nmで標識されている。
【0049】
図6Bは、本開示のいくつかの実施形態による、外部磁場閉じ込めの存在下で生成される、202nm~230nmの紫外領域におけるスパークOESデータのスペクトルであり、スパーク放電位置の改善された安定性に起因する信号対雑音比の向上を示す。
図6Aとは対照的に、磁場閉じ込めの追加は、
図6Aにおいて識別可能な全てのピークの強度を有意に増加させ、
図6Aのスペクトルにおいて存在しないか又はバックグラウンドから識別可能でないいくつかのピークを導入する。例えば、
図6Aで標識された3つのピークは、それぞれ、850カウント、1150カウント、及び500カウントの強度に近づく。約226nmのピークは、約202nm又は約213nmのピークほど大きく増加せず、
図6Bのスペクトルは、約300カウントの強度で
図6Aに存在する、約800カウントでの約226nmのピークの強度を超えたピーク(例えば、約224nm)を含む。
【0050】
図7Aは、現在の技術による、外部磁場閉じ込めの不在下で生成される、318nm~346nmの紫外領域におけるスパークOESデータのスペクトルである。
図7Aは、縦軸にカウントを、横軸にナノメートル単位の波長を含む紫外発光スペクトルである。波長範囲は約318nm~346nmである。スペクトルデータは、ピークに関する議論に焦点を当てるために、破線で示される他のスペクトルデータとともに、黒い実線で示されるピークのセットとして図示される。磁気閉じ込めなしでは、比較的少ないピークがOESスペクトルにおいて識別可能であり、発光強度値は約25カウント~約60カウントに近づく。
図7Bを参照すると、3つのピークが、約325nm、約328nm、及び約335nmで標識されている。
【0051】
図7Bは、本開示のいくつかの実施形態による、外部磁場閉じ込めの存在下で生成される、318nm~346nmの紫外領域におけるスパークOESデータのスペクトルであり、スパーク放電位置の改善された安定性に起因する信号対雑音の向上を示す。
図7Aとは対照的に、磁場閉じ込めの追加は、
図7Aにおいて識別可能な全てのピークの強度を有意に増加させ、
図7Aのスペクトルにおいて存在しないか又はバックグラウンドから識別可能でないいくつかのピークを導入する。例えば、
図7Aで標識された3つのピークは、それぞれ、390カウント、260カウント、及び80カウントの強度に近づく。約335nmのピークは、約325nm又は約328nmのピークほど大きく増加しなかったが、詳細なプラズマ情報を導出することができる(例えば、相対ピーク高さの光量計比較によって)ピークのセットの一部を形成することが明らかになった。このようにして、
図6A及び
図6Bに図示されるスペクトルに対する
図7A及び
図7Bに図示される信号収集の改善は、前述の性能改善に加えて、磁気閉じ込めなしでは可能でなかったであろう分析を可能にする。
【0052】
先行する説明では、様々な実施形態について説明した。説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な構成及び詳細について記載してきた。しかしながら、実施形態はまた、具体的な詳細がなくても実施され得ることが当業者には明らかであろう。更には、説明される実施形態を不明瞭にしないように、周知の特徴が省略又は簡略化されている場合がある。本明細書で説明される例示的な実施形態は、分光システム、具体的には発光分光システムを中心としているが、これらは非限定的、例解的な実施形態であることが意図される。本開示の実施形態は、そのような実施形態に限定されず、むしろ、他の態様の中でも、放電分光が1つの構成プロセスである、化学構造、微量元素組成などを含むが、それらに限定されない、化学特性、生物特性、物理特性、構造特性、又は他の特性を決定するために幅広い材料試料を分析できる分析機器システムを対象にすることが意図される。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路を含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、命令は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路で実行されるときに、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路に、本明細書で開示される1つ以上の方法の一部若しくは全部、及び/又は1つ以上のプロセス若しくはワークフローの一部若しくは全部を実施させる。本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路に、本明細書で開示される1つ以上の方法の一部若しくは全部及び/又は1つ以上のプロセスの一部若しくは全部を実施させるように構成された命令を含む非一時的機械可読記憶媒体において有形で具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0054】
使用されている用語及び表現は、限定の用語としてではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現を使用するに際して、示され説明される特徴又はその一部分のいかなる同等物も除外する意図はないが、請求される範囲内で様々な修正が可能であることが理解される。したがって、本開示は、具体的な実施形態及び任意選択的な特徴を含むが、本明細書で開示される概念の修正及び変形が、当業者によってなされることが可能であり、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【0055】
用語が明示的な定義なしに使用される場合、その用語が荷電粒子顕微鏡システムの分野又は他の関連分野における特別な意味及び/又は具体的な意味を有しない限り、その語の通常の意味が意図されることを理解されたい。「約」又は「実質的に」という用語は、記述された特性からの逸脱を示すために使用され、その逸脱の範囲内では、記載されている構造の対応する機能、特性、又は属性への影響がほとんどない又は全くない。寸法パラメータが別の寸法パラメータに「実質的に等しい」と記載されている図示された例では、「実質的に」という用語は、比較されている2つのパラメータが、製造公差又はシステムの動作に固有の信頼区間などの許容限界内で等しくない可能性があることを反映することが意図される。同様に、位置合わせ又は角度配向などの幾何学的パラメータが、「約」垂直、「実質的に」垂直、又は「実質的に」平行として説明される場合、「約」又は「実質的に」という用語は、位置合わせ又は角度配向が、許容限界内で、厳密に記述された条件と異なり得る(例えば、厳密に垂直ではない)ことを反映することが意図される。直径、長さ、幅などの寸法値について、「約」という用語は、記述される値から最大で±10%の偏差を説明するものと理解することができる。例えば、「約10mm」の寸法は、9mm~11mmの寸法を説明することができる。
【0056】
本明細書は、例示的な実施形態を提供するものであり、本開示の範囲、適用可能性、又は構成を限定することを意図するものではない。むしろ、例示的な実施形態に続く説明は、当業者に、様々な実施形態を実現することを可能にする説明を提供する。添付の特許請求の範囲に記載されている趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができることを理解されたい。実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が本明細書で与えられる。しかしながら、実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることが理解されるであろう。実施形態を不必要な詳細で不明瞭にしないために、例えば、本開示の具体的なシステム構成要素、システム、プロセス、及び他の要素が、概略図の形態で示され得るか、又は例解図から省略され得る。他の場合、周知の回路、プロセス、構成要素、構造、及び/又は技術が、不必要な詳細を伴わずに示され得る。
【外国語明細書】