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特開2024-151333コースティック層の光方向転換表面を設計する方法、設計されたコースティック層の光方向転換表面を備える光学セキュリティ素子、マーク付きの物体、物体を認証する用途及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151333
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】コースティック層の光方向転換表面を設計する方法、設計されたコースティック層の光方向転換表面を備える光学セキュリティ素子、マーク付きの物体、物体を認証する用途及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20241017BHJP
   B42D 25/324 20140101ALI20241017BHJP
   B42D 25/425 20140101ALI20241017BHJP
【FI】
G02B5/18
B42D25/324
B42D25/425
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024107531
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2021517830の分割
【原出願日】2019-10-04
(31)【優先権主張番号】18198938.5
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】カルガーリ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ジリエロン, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】デ フェオ, オスカー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高速で、スケーラブルで、信頼性が高く、かつ正確な、コースティック層の、屈折性の透明若しくは部分的に透明な光方向転換表面、又は反射性の光方向転換表面を設計するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、コースティック層の、屈折性の透明若しくは部分的に透明な光方向転換表面、又は反射性の光方向転換表面を設計する方法であって、入力標的画像の離散的表現を提供するステップと、標的画像の画像画素piのセットのための一般化したパワー図を計算するステップと、画像画素piのセットと関連付けられたコスト関数を最小化する重みの計算された最適セットに基づいて、コースティック層の区分的な光方向転換表面を演算するステップとを含む方法に関する。本発明はまた、光学セキュリティ素子、マーク付きの物体、物体を視覚的に認証する方法、及び認証のため又は偽造から守るための光学セキュリティ素子の使用に関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コースティック層の、屈折性の透明若しくは部分的に透明な光方向転換表面、又は反射性の光方向転換表面を設計する方法であって、前記コースティック層は、光学材料の一部であり、レリーフパターンを有し、光源から受領される入射光を方向転換させるように、及びコースティックパターンを含む投射画像を形成するように構成され、前記方法は、
入力標的画像の離散的表現を提供するコンピュータ実施ステップであり、前記入力標的画像の離散的表現は、前記標的画像の所与の領域内に分散され前記標的画像の標的コースティックパターンに対応する関連付けられた非ゼロ標的光強度{I}、i=1,…,Nを有する画像平面内の座標{(x,y)}におけるN個の画像画素pのセットPを備える、ステップと、
前記コースティック層によって屈折又は反射され、座標(x,y)、i=1,…,Nの前記画像平面の点P(i)に集束される光線の光路長の定常性からそれぞれ得られる交差する複数の表面区分z=f(x,y)、i=1,…,Nを用いて、前記光方向転換表面の表現に基づき、(x,y)座標面より上の高さzを伴う、前記コースティック層の前記光方向転換表面z=F(x,y)の区分的表現を演算するコンピュータ実施ステップであり、各表面区分z=f(x,y)が、高さz=f(x,y)、i=1,…,Nを伴う、点P(i)を通過し、点(x,y,z)において頂点を有する軸の周りでの回転面であり、N個の頂点の高さのそれぞれの値と関連付けられた前記光方向転換表面の前記区分的表現が、対応するN個の表面区分z=f(x,y)、i=1,…,Nの結合によって形成される、ステップと、
前記N個の表面区分の頂点の高さz,…,zのそれぞれの値の所与のセットについて、前記関連付けられた区分的光方向転換表面を介して入射光を方向転換させる前記コースティック層によって前記点P(1),…,P(N)にそれぞれ集束される光強度I(1),…,I(N)の値の対応するセットを計算するコンピュータ実施ステップと、
前記関連付けられた光方向転換表面を介して前記点P(1),…,P(N)に集束される計算された光強度I(1),…,I(N)の前記それぞれの値と、前記標的光強度I,…,Iの前記それぞれの対応する値との間の差を最小化する、前記対応するN個の表面区分の前記N個の頂点の前記N個の高さz,…,zの前記それぞれの値を計算するコンピュータ実施ステップと、
を含み、
以て、前記光源から受領される入射光を方向転換させ、前記標的画像の前記標的コースティックパターンを含む投射画像を形成するように構成されるレリーフパターンを有する前記光方向転換表面を得る、方法。
【請求項2】
各表面区分z=f(x,y)、i=1,…,Nは、近軸近似内において、前記光路長の前記定常性から得られる前記表面区分の式の2以上の位数kのテイラー展開をとることによって、近似される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
i=1,…,Nについて、前記計算された光強度I(i)と前記対応する標的光強度Iとの間の差を最小化する前記高さzを計算する前記ステップが、無勾配最適化法を用いて実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
i=1,…,Nについて、前記計算された光強度I(i)と前記対応する標的光強度Iとの間の差を最小化する前記高さzを計算する前記ステップが、関連コスト関数及びその導関数の計算のためのパワー図に頼る最適化方法を用いて実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記設計された光方向転換表面が、機械加工ツールを制御するための機械対応型表現を生成するために使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記設計された光方向転換表面が、前記光方向転換表面のレプリカを構築するために使用されるべきマスター光方向転換表面である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
基材に前記光方向転換表面のレプリカを作製するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
レプリカを作製するステップが、ロールツーロール、ホイルツーホイル、UV鋳造、及びエンボス加工のうちの1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法に従って設計されるコースティック層の少なくとも1つの屈折性又は反射性の光方向転換表面を備える光学セキュリティ素子。
【請求項10】
消費者製品、価値のある文書、身分証明書、納税印紙、及び紙幣を含む群から選択される物体にマーク付けする、請求項9に記載の光学セキュリティ素子。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の光学セキュリティ素子を備え、消費者製品、価値のある文書、及び紙幣を含む群から選択されるマーク付きの物体。
【請求項12】
ユーザによって、請求項9又は10に記載の光学セキュリティ素子によりマーク付けされる物体を視覚的に認証する方法であって、
前記光方向転換表面から距離dにある点状の光源により前記光学セキュリティ素子の光方向転換表面を照明するステップと、
前記光学セキュリティ素子から距離dにある投射表面に投射されたコースティックパターンを視覚的に観察するステップと、
前記投射されたコースティックパターンが参照パターンと視覚的に同様であるという前記ユーザによる評価時に、前記物体が本物であることを決定するステップと、を含む方法。
【請求項13】
消費者製品、価値のある文書、身分証明書、納税印紙、及び紙幣を含む群から選択される物体を認証し、偽造から守るための、請求項9又は10に記載の光学セキュリティ素子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コースティック光学素子を設計する技術分野、特に、コースティック層の屈折性の透明若しくは部分的に透明な光方向転換表面(又は反射性の光方向転換表面)を設計すること、及び適切な照明でコースティックパターンを投射するように動作可能な屈折性若しくは反射性の光学セキュリティ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に入手可能な手段を使用した、いわゆる「一般人」によって認証され得る、物体上のセキュリティ特徴が必要とされている。これらの手段は、五感-多くの場合、知覚及び触覚-を使用することに加えて、例えば、携帯電話などの、普及したツールを使用することを含む。
【0003】
セキュリティ特徴のいくつかの一般例としては、紙幣、クレジットカード、ID、チケット、証明書、文書、パスポートなどで見ることができる、法医学繊維、糸、又は箔(例えば、紙のような基材内に組み込まれる)、透かし、凹版印刷又はマイクロプリント(おそらくは、光学可変インクで基材に印刷される)が挙げられる。これらのセキュリティ特徴は、光学可変インク、不可視インク若しくは発光性インク(特定の励起光を用いた適切な照明下で蛍光又は燐光を発する)、ホログラム、及び/又は触覚特徴を含み得る。セキュリティ特徴の主な態様は、それが、偽造するのが非常に困難である何らかの物理的性質(光学効果、磁気効果、材料構造、又は化学組成)を有し、その結果として、そのようなセキュリティ特徴でマーク付けされた物体は、この性質が観察され得るか、又は明らかにされ得る(視覚的に、又は特定の装置を用いて)場合に、確実に本物であると考えられ得る。
【0004】
しかしながら、物体が透明又は部分的に透明である場合、これらの特徴は適切ではない場合がある。実際、透明な物体は、多くの場合、必要とされるセキュリティ特徴を有するセキュリティ素子が、審美的又は機能的理由のいずれかのために、それらの透明性又はそれらの外観を変えないことを必要とする。顕著な例としては、医薬品用のブリスタ及びバイアルを挙げることができる。例えば、最近では、ポリマー及びハイブリッド紙幣は、それらのデザインに透明窓を組み込んでおり、したがって、それと親和性のあるセキュリティ特徴の要望を生んでいる。透明性の議論は、反射性コースティックには当てはまらないが、本手法は、当然ながら、例えば、使用事例が、磨かれた鏡のような表面の外観を保護することを必要とする反射性コースティックにまで及ぶ。
【0005】
文書、紙幣、保証付きチケット、パスポートなどのための大半の既存のセキュリティ特徴は、透明の物体/領域のために特に開発されたものではなく、そのようなものとして、そのような用途には適切ではない。他の特徴、例えば、不可視及び蛍光インクにより獲得されるものは、「一般人」には容易に入手可能ではない場合がある特定の励起ツール及び/又は検出ツールを必要とする。
【0006】
半透明の光学可変特徴(例えば、液晶コーティング、又は表面構造からの潜像)が知られており、この種の機能性を提供することができる。残念ながら、そのようなセキュリティ特徴を組み込むマーキングは、一般に、効果が十分に可視であるためには、暗い/均一な背景に対して観察されなければならない。
【0007】
他の知られている特徴は、非金属化表面ホログラムなどの回折光学素子である。これらの特徴における欠点は、直接見たときに、それらが非常に低コントラストの視覚効果を示すことである。さらには、パターンを投射するために単色光源と組み合わせて使用されるとき、それらは、典型的に、満足のいく結果を得るためにはレーザを必要とする。さらに、はっきりと目に見える光学効果をもたらすためには、光源、回折光学素子、及びユーザの目の非常に高精度の相対的空間配置が必要とされる。
【0008】
レーザ彫刻されたマイクロテキスト及び又はマイクロコードは、例えば、ガラスバイアルのために使用されている。しかしながら、それらは、それらの実装のための高価なツール、及びそれらの検出のための特定の拡大ツールを必要とする。
【0009】
したがって、先行技術に存在する問題を解決するために、多くのさらなる試みが、透明又は部分的に透明な物体に好適な光学セキュリティ素子を開発するためになされてきた。
【0010】
考えられる手法のうちの1つは、屈折性の透明若しくは部分的に透明な光方向転換表面、又は反射性の光方向転換表面を有するコースティック層を使用する設計方法論を導入することであり、この場合、コースティック層は、光源から受領される入射光を方向転換させ、コースティックパターンを含む投射画像を形成するように構成されるレリーフパターンを有する。本手法は当然ながら、鏡様の表面を有する不透明な物体の場合は、反射性の光方向転換表面の使用にまで及ぶ。
【0011】
この手法は、コースティック層の表面を成形することによってコースティックパターンを制御することを可能にする。光輸送に基づいた計算ツールは、標的画像から始めて、コースティック光学素子の屈折性又は反射性表面の幾何形状を最適化する(計算する)ことによって、ほとんどどんな所望の形状でも形成するために開発されている。
【0012】
理想のワークフローにおいて、標的画像から始めて、好適な表面を計算することは、高速かつ、広範の標的画像に適用可能でなければならず、過度に重い計算リソースを必要とすべきではなく、また標的画像の選択及び提供を超えたユーザ介入を必要とすべきではない。
【0013】
標的画像から始めてコースティック表面を計算するための方法は、先行技術において開示されている。
【0014】
欧州特許出願公開第2711745 A2号は、生成された表面をメッシュ内へ離散化し、これが後に変形されて画像の対応する領域の輝度を調節することを開示する。メッシュと関連付けられた法線フィールドが次いで決定され、対応するコースティック表面を見つけるために積分される。しかしながら、任意の画像を前提とすると、対応する法線フィールドが積分可能である保証はなく、同じことを確実にするためには追加の注意を払わなければならない。
【0015】
欧州特許出願公開第2963464 A1号は、最適輸送マップ(OTM)を決定するために同様の手法をとり、同様に、積分可能であることが保証されない法線フィールドを計算及び積分することを必要とする。
【0016】
米国特許第9188783B2号及び米国特許出願公開第2016041398号は、生成した表面を、各々がコースティックガウシアンカーネルを投射する役割を果たすマイクロパッチの集合へと分割し、カーネルの重ね合わせが所望の画像を近似する。しかしながら、欧州特許出願公開第2711745 A2号にも記されるように、この方法は、離散化アーチファクトを被り、低強度領域を解像することに困難を有する。法線フィールドもまた、積分される必要がある。
【0017】
これらすべての場合において、計算されたコースティック表面によって投射される実際の画像は、最終的にレイトレーシングによってシミュレートされ、コースティックパターンが標的画像を十分な忠実度で近似しないときに、標的物の画像調節が必要とされ得る。これは、余分な時間及び労力を必要とし、依然として、獲得したコースティックパターンの完全な正確性を保証することはできない。
【0018】
したがって、本発明の目的は、高速で、スケーラブルで、信頼性が高く、かつ正確な、コースティック層の、屈折性の透明若しくは部分的に透明な光方向転換表面、又は反射性の光方向転換表面を設計するための方法を提供することである。これは、補正又は調節に起因するより少ない反復が必要とされ、反復がより高速であることから、標的画像から対応する表面へたどり着くのに必要とされる合計時間を著しく低減することを可能にする。これはまた、設計に必要とされる全体的な時間を低減する。
【0019】
本発明のさらなる目的は、法線フィールドを計算及び積分するステップを排除することである。法線フィールドを積分する必要性を排除することは、以前に知られている方法の主な制約及び不正確性の源のうちの1つを取り除く。
【0020】
本発明のさらなる目的は、標的画像を特定すること、及び結果として生じる表面を受容することを超えたユーザ介入を低減するか、又は完全に排除することである。ユーザ介入の必要性を取り除くことは、専門技能が必ずしも入手可能でない製造ワークフローの文脈において、本方法の実施を著しく簡略化する。
【0021】
本発明のさらなる目的は、透明又は部分的に透明な物体、及び反射性の物体に好適である、適切な照明でコースティックパターンを投射するように動作可能な光学セキュリティ素子を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、光学セキュリティ素子を備え、消費者製品、価値のある文書、及び紙幣を含む群から選択される、マーク付きの物体を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、一般に入手可能な手段を使用して光学セキュリティ素子でマーク付けされた物体を視覚的に認証する方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、消費者製品、価値のある文書、及び紙幣を含む群から選択される物体を認証し、偽造から守るための光学セキュリティ素子を使用することである。
【発明の概要】
【0025】
1つの態様によると、本発明は、光源から受領される入射光を方向転換させるように、及びコースティックパターンを含む投射画像を形成するように構成される、コースティック層の、屈折性の透明若しくは部分的に透明な光方向転換表面、又は反射性の光方向転換表面を設計する方法であって、
入力標的画像の離散的表現を提供するコンピュータ実施ステップであり、入力標的画像の離散的表現は、標的画像の所与の領域内に分散され標的画像の標的コースティックパターンに対応する関連付けられた非ゼロ標的光強度{I}、i=1,…,Nを有する画像平面内の座標{(x,y)}におけるN個の画像画素pのセットPを備える、ステップと、
コースティック層によって屈折又は反射され、座標(x,y)、i=1,…,Nの画像平面の点P(i)に集束される光線の光路長の定常性からそれぞれ得られる交差する複数の表面区分z=f(x,y)、i=1,…,Nを用いて、光方向転換表面の表現に基づき、(x,y)座標面より上の高さzを伴う、コースティック層の光方向転換表面z=F(x,y)の区分的表現を演算するコンピュータ実施ステップであり、各表面区分z=f(x,y)が、高さz=f(x,y)、i=1,…,Nを伴う、点P(i)を通過し、点(x,y,z)において頂点を有する軸の周りでの回転面であり、N個の頂点の高さのそれぞれの値と関連付けられた前記光方向転換表面の区分的表現が、対応するN個の表面区分z=f(x,y)、i=1,…,Nの交点の包絡線によって形成される、ステップと、
N個の表面区分の頂点の高さz,…,zのそれぞれの値の所与のセットについて、関連付けられた区分的光方向転換表面を介して入射光を方向転換させるコースティック層によって点P(1),…,P(N)にそれぞれ集束される光強度I(1),…,I(N)の値の対応するセットを計算するコンピュータ実施ステップと、
関連付けられた光方向転換表面を介して点P(1),…,P(N)に集束される計算された光強度I(1),…,I(N)のそれぞれの値と、標的光強度I,…,Iのそれぞれの対応する値との間の差を最小化する対応するN個の表面区分のN個の頂点のN個の高さz,…,zのそれぞれの値を計算するコンピュータ実施ステップと、
を含み、
以て、光源から受領される入射光を方向転換させ、標的画像の標的コースティックパターンを含む投射画像を形成するように構成されるレリーフパターンを有する光方向転換表面を得る、方法に関する。
【0026】
本発明によると、各表面区分z=f(x,y)、i=1,…,Nは、近軸近似内において、光路長の前記定常性から得られる表面区分の式の2以上の位数kのテイラー展開をとることによって、近似され得る。
【0027】
上記方法において、i=1,…,Nについて、計算された光強度I(i)と対応する標的光強度Iとの間の差を最小化する高さzを計算するステップは、無勾配最適化法を用いて実施され得る。これらの方法は、高い計算コストを犠牲にして簡便性の利点を有する。
【0028】
i=1,…,Nについて、計算された光強度I(i)と対応する標的光強度Iとの間の差を最小化する高さzを計算するステップは、無勾配、又は好ましくは、勾配ベースであり得る(計算コストを低減するために)最適化方法と関連付けられた(容量制約された)パワー図法を用いて実施され得ることが好ましい。
【0029】
本発明のさらなる態様において、設計された光方向転換表面は、例えば、ステレオリソグラフィ(STL:STereoLithography)又は初期グラフィックス変換仕様(IGES:Initial Graphics Exchange Specification)などの業界標準形式を使用して、機械加工目的のための機械対応型表現を生成するために使用される。特に、機械対応型表現は、光学材料基材、又はレプリカによるコースティック光学素子の大量生産のためにさらに使用される中間基材の、光方向転換表面を機械加工するように機械加工ツールを制御するために使用され得る。
【0030】
本発明のさらなる態様において、設計された光方向転換表面は、光方向転換表面のレプリカを構築するために使用されるべきマスター光方向転換表面である。この場合、本方法は、基材に光方向転換表面のレプリカを作製するステップをさらに含み得る。そのようなレプリカを作製するステップは、ロールツーロール、ホイルツーホイル、UV鋳造、及びエンボス加工のうちの1つを含み得る。
【0031】
別の態様において、本発明は、上に説明されるような方法に従って設計されるコースティック層の屈折性又は反射性の光方向転換表面のうちの少なくとも1つを備える光学セキュリティ素子を提供する。上記光学セキュリティ素子は、消費者製品、価値のある文書、身分証明書、納税印紙、及び紙幣を含む群から選択される物体にマーク付けし得る。
【0032】
別の態様において、本発明は、上に説明されるような光学セキュリティ素子を備え、消費者製品、価値のある文書、及び紙幣を含む群から選択される、マーク付きの物体を提供する。
【0033】
別の態様において、本発明は、光学セキュリティ素子でマーク付けされた物体を、ユーザにより視覚的に認証する方法であって、
光方向転換表面から距離dにある点状の光源により光学セキュリティ素子の光方向転換表面を照明するステップと、
光学セキュリティ素子から距離dにある投射表面に投射されたコースティックパターンを視覚的に観察するステップと、
投射されたコースティックパターンが参照パターンと視覚的に同様であるというユーザによる評価時に、物体が本物であることを決定するステップと、を含む方法を提供する。
【0034】
さらに別の態様において、本発明は、消費者製品、価値のある文書、身分証明書、納税印紙、及び紙幣を含む群から選択される物体を認証し、偽造から守るための、上に説明されるような光学セキュリティ素子の使用を提供する。
【0035】
本発明は、以後、本発明の目立った態様及び特徴が例証される添付の図面を参照してより完全に説明されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】コースティック画像の投射のための屈折性の光学セキュリティ素子の典型的な光学構成の概略図である。
図2】単一の画像画素(画像点)のためのコースティック表面を例証する図である。
図3】複数の画像画素(画像点)のためのコースティック表面を例証する図である。
図4】標的画像を例証する図である。
図5】一般化したパワー図を例証する図である。
図6】コースティック表面の概観を例証する図である。
図7】検出器の前にある物体の側面を例証する図である(レイトレーシング幾何形状)。
図8】物体から40mmのところでの画像のグレースケールのレイトレーシングシミュレーションを例証する図である。
【詳細な説明】
【0037】
光学では、用語「コースティック」は、少なくとも1つが曲線である1つ又は複数の表面によって屈折又は反射される光線の包絡線、並びに別の表面上へのそのような光線の投射を指す。より詳細には、コースティックは、光線の包絡線の境界を集光の曲線として規定する、各光線に接する曲線又は表面である。例えば、プールの底に太陽光線により形成される光パターンは、単一の光方向転換表面(波打った空気-水界面)によって形成されるコースティック「画像」又はパターンである一方、コップの曲面を通過する光は、その経路を方向転換させる2つ以上の表面(例えば、空気-ガラス、ガラス-水、空気-水)と交差する際に、コップが載っているテーブルの上に三日月様のパターンを作成する。
【0038】
以下においては、光学セキュリティ素子の(屈折性)コースティック層が1つの曲面、又は光方向転換表面、及び1つの平坦表面によって境界される最もよく見られる構成が、より一般的な事例を制限することなく、例として使用されるものとする。ここでは、より一般的な「コースティックパターン」(又は「コースティック画像」)を、コースティック層の好適に成形された光学表面(適切なレリーフパターンを有する光方向転換表面を伴う)が光をソースから方向転換させて、それを画面のいくつかの領域からそらし、それを画面の他の領域に既定の光パターンで集束させる(すなわち、こうして上記「コースティックパターン」を形成する)ときに画面(投射表面)に形成される光パターンと呼ぶ。方向転換は、コースティック層が存在しない場合のソースから画面までの経路に対する、コースティック層の存在下でのソースからの光線の経路の変化を指す。コースティック層(屈折性又は反射性)は、したがって、光源から受領される光を方向転換させてコースティック画像を形成するように構成されるレリーフパターンを伴う光方向転換表面を有する1つの光学材料である。本発明に従う光学セキュリティ素子は、コースティック層を含み、光方向転換に関与する追加の光学素子(複数可)(例えば、レンズ、又は支持基材)をさらに備え得る。
【0039】
一方、曲線状の光学面は、「レリーフパターン」と呼ばれ、この表面によって境界される光学素子は、コースティック層と呼ばれる。コースティックパターンは、2つ以上の曲面及び2つ以上の物体による光の方向転換の結果であり得るが、複雑性の増大という犠牲を伴う可能性があるということに留意されたい。さらに、コースティックパターンを生成するためのレリーフパターンは、回折パターン(例えば、セキュリティホログラムにおけるものなど)と混同されるべきではない。
【0040】
本発明の概念は、例えば、消費者製品、ID/クレジットカード、紙幣などの日常的な物体に適用され得る。そうするためには、光学セキュリティ素子のサイズを劇的に小さくすること、及び特に、レリーフパターンのレリーフ深さが許容値を下回るようにすることが必要とされる。この目的のため、効率的なワークフローを有することが特に有用であるが、これは、そのような効率的なワークフローが、すべての動作制約が満たされるまでいくつかの設計反復を可能にするためである。
【0041】
この説明では、「レリーフ」とは、谷底と山頂との間の高度差(すなわち、「最大値から最低値まで(peak to valley)」の尺度)と同様に、表面の最高点と最低点との間の高さの差(光学セキュリティ素子の光学軸に沿って測定される)の存在と理解されるべきである。本発明に従う方法は、特定のレリーフに限定されないが、企図される用途の多くについて、光学セキュリティ素子のレリーフパターン最大深さは、典型的には、250μm以下、又はより好ましくは、30μm以下であると同時に、超精密加工(UPM)及び複製プロセスによって課せられる制限、すなわち、約0.2μmを上回る。
【0042】
本説明によると、光方向転換表面上のレリーフパターン内の最高点と最低点との間の高さの差は、レリーフ深さεと呼ばれる。
【0043】
デジタル画像の近似を形成するコースティックパターン(画像)は、好適な点状のソースによって照明されるとき、光学セキュリティ素子によって投射される光パターンと理解されるべきである。上で述べられたように、光学セキュリティ素子は、コースティック画像を作成する役割を果たす屈折性材料の平板と理解されるべきである。
【0044】
光方向転換表面(複数可)は、ソースから画面上へ入射光を方向転換させる役割を担うコースティック層の(光学セキュリティ素子の)表面(複数可)、又はコースティックパターンが形成される(おそらくは平坦な)投射表面である。
【0045】
光学(セキュリティ)素子を作製するために使用される光学材料基材は、生の材料基材であり、そこから表面が、レリーフパターンを有するように、したがって光方向転換表面を形成するように明確に形成される。反射性の光方向転換表面の場合、光学材料基材は、必ずしも均質又は透明ではなく、同じことが、さらなる複製のためだけに使用されるマスター表面の場合にも当てはまる。例えば、材料は、可視光に対して不透明であり得、反射性は、形成された表面の古典的な金属化によって獲得され得る。屈折性の光方向転換表面の場合、生の材料基材は、屈折率nを伴って透明(又は部分的に透明)かつ均質であり(人間の目に見えるスペクトルの光子について)、対応する光方向転換表面は、「屈折率nの屈折性の透明又は部分的に透明な光方向転換表面」と名付けられる。
【0046】
本説明に従うマスター光方向転換表面は、計算されたものからの光方向転換表面の最初の物理的実現である。それは、いくつかのコピー(ツール)へと複製され得、このコピーは次いで、大量複製のために使用される。
【0047】
本説明において使用されるような点状のソースは、角サイズ(光学セキュリティ素子の視点からの)が、光が光方向転換表面から距離dにある単一の点から生じると考えられ得るほど十分に小さい光源である。大まかには、これは、量:(ソース直径)×d/dが、光方向転換表面から距離dにある投射表面における投射画像上の標的コースティックパターンの所望の分解能(例えば、0.05~0.1mm)よりも小さいことを意味する(図1参照)。画面は、コースティックパターンが投射される表面と理解されるべきである。ソースと光方向転換表面との間の距離はまた、ソース距離dと名付けられ、光方向転換表面と画面との間の距離は、画像距離dと名付けられる。
【0048】
ツール(又は、曖昧さを取り除くことが必要なときには、複製ツール)という用語は、大量複製のために使用される光方向転換表面のプロファイルを持つ物理的物体に対して主に使用される。ツールは、例えば、マスター光方向転換表面のコピーを産生するために使用され得る(元のレリーフが、対応する反転レリーフを持つマスターから、エンボス加工又は注入により、再現される)。光方向転換表面のレリーフパターンを機械加工するために使用されるツールについては、機械加工ツールという用語が、曖昧さを取り除くために使用される。
【0049】
図1は、コースティック画像の投射のための屈折性の光学セキュリティ素子の典型的な光学構成の概略図を提供する。屈折性表面を有するコースティック層を含む光学セキュリティ素子(1)は、点状のソースSからの光を方向転換させ、それを好適な画面(3)に投射し、この画面は、図1に示されるように、意味のある画像が形成される、任意の物体などの任意の表面であり得る。光方向転換表面の特別な設計が、(認識可能な)コースティックパターンを曲面に投射することを可能にし得る。画像は、例えば、ロゴ、写真、数字、又は特定の文脈において関連性があり得る任意の他の情報であり得る。画面は、任意の物体の平坦な投射表面又は平坦な部分であることが好ましい。
【0050】
図1の構成は、ソースSからの光が、レリーフパターン(2)を有する好適に成形された光学面によって方向転換されることを示す。この一般的なアイディアは、例えば、自動車ヘッドライトの反射面、LED照明の反射鏡及びレンズ、レーザ光学における光学系、プロジェクタ、並びにカメラから知られている。しかしながら、通常、その目標は、光の非均質分布を均質なものへ変換することである。対照的に、本発明の目標は、参照パターン((デジタル)参照画像に表されるような)の相対輝度のいくつかの領域を(近似的に)再現する、非均質な光パターン、すなわちコースティックパターンを得ることである。光学素子の照明されたレリーフパターン(2)が、画面(3)上にコースティックパターン(4)を形成することを可能にして、十分な品質(おそらくは、全体的な強度倍率によって異なる)で既知の参照パターンを再現する場合、画面上のコースティックパターンを視覚的に観察する人物には、それが参照パターンの有効な再現を構成するか否かが容易に分かり、コースティックパターンが参照パターンと十分に同様である場合には、光学セキュリティ素子でマーク付けされた物体が(高い可能性で)本物であると見なす。
【0051】
図1の実施形態によると、この例によると点状のソースである光源Sからの光線は、レリーフパターン(2)を有する光方向転換表面を伴う、ソース距離dにある(屈折性)光学セキュリティ素子(1)(コースティック層)まで伝搬する。光学セキュリティ素子は、ここでは、屈折率nの透明又は部分的に透明な均質材料で作製される。コースティックパターン(4)は、光学セキュリティ素子(1)の光方向転換表面から画像距離dにある画面(3)に投射される。光学セキュリティ素子の真正性(及びしたがって、このセキュリティ素子でマーク付けされた物体の真正性)は、投射されたコースティックパターンと参照パターンとの類似性の度合いを視覚的にチェックすることによって直接的に評価され得る。
【0052】
レリーフパターン(2)は、指定の標的デジタル画像から始めて、計算されることが好ましい。その計算されたレリーフパターンから、対応する物理的なレリーフパターンが、超精密加工(UPM)を使用して、好適な光学材料基材の表面(例えば、屈折率nの透明若しくは部分的に透明な材料、又は不透明な材料の反射面)に作成され得る。不透明な光学材料基材の表面にレリーフを機械加工して反射面を形成する場合、良好な反射率は、材料自体の好適な性質、又は、レリーフに金属の薄層を堆積する(金属化)というさらなる従来の動作のいずれかによって獲得される。UPMは、ダイアモンド機械加工ツール及び超微細技術ツールを使用して非常に高い正確性を達成し、その結果として、公差は、「サブミクロン」レベル、又はナノスケールレベルにまで達する。これとは対照的に、従来の機械加工における「高精度」とは、1桁台のミクロンの公差を指す。表面に物理的なレリーフパターンを作成するための他の考えられる好適な技術は、レーザ焼灼、及びグレースケールリソグラフィである。微細加工の分野で知られているように、これらの技術の各々は、費用、精度、速度、分解能などに関して、異なる強み及び制限を有する。
【0053】
屈折性の光方向転換光学素子のための好適な光学材料基材は、光学的に明澄で、透明又は少なくとも部分的に透明で、機械的に安定していなければならない。典型的には、透過率T≧50%が好ましく、T≧90%が最も好ましい。また、低ヘイズH≦10%が使用され得るが、H≦3%が好ましく、H≦1%が最も好ましい。光学材料はまた、平滑で欠陥のない表面をもたらすように、機械加工プロセス中に正しく挙動しなければならない。好適な基材の例は、光学的に透明な1枚のPMMA(Plexiglas、Lucite、Perspexなどの商品名でも知られる)である。反射性のコースティック光方向転換光学素子の場合、好適な光学材料基材は、機械的に安定してなければならず、またそれは、鏡様の仕上げをもたらすことが可能でなければならない。好適な基材の例は、罫線入りの格子のマスターのために使用されるもの及びレーザ反射鏡などの金属、又は、さらに金属化され得る非反射性基材である。
【0054】
大量生産の場合、ツール作成及び標的物体への光学セキュリティ素子の大量複製のさらなるステップが必要とされる。マスターからのツール作成のための好適なプロセスは、例えば、電鋳法である。大量複製のための好適なプロセスは、例えば、ポリマーフィルムの熱エンボス加工、又はフォトポリマーのUV鋳造であり、これらは、ロールツーロール又はホイルツーホイルプロセスのいずれかにおいてさらに実施され得る。大量複製の目的では、マスターもそこから派生されるツールも光学的に透明である必要はないため、最終製品が屈折性光学素子であるときにさえ、不透明な材料(とりわけ、金属)もまた使用され得る。それにもかかわらず、場合によっては、マスターは透明であることが有利なことがあり、それは、これが、ツーリング及び大量複製を進める前にコースティック画像の品質をチェックすることを可能にするためである。
【0055】
セキュリティ特徴としての光学素子(レリーフパターンを有する光方向転換表面を伴う)の使用のための重要な態様は、標的物体、及びコースティック画像を投射するために必要とされる光学構成と互換性がなければならない、それらの物理的尺度である。
【0056】
一般に、最大横方向サイズは、物体の全体サイズによって制限され、通常、数cmから、あまり好ましくない事例では1cm未満の範囲に及び得る。例えば、紙幣のような、特定の用途では、標的とされる全厚は、極めて小さい(100μm以下のオーダー)。さらには、許容できる厚さ変動(レリーフ)は、機械的制約(薄い領域と関連付けられる弱い場所)及び動作的制約(例えば、紙幣を積み重ねるとき、その積み重なりは、札の厚い方の部分に応じて膨れ上がり、これが取り扱い及び保管を複雑にする)を含む様々な理由から、さらに小さくなる。典型的には、約100μmの全厚の紙幣の場合、この紙幣に含まれるべき光学セキュリティ素子のレリーフパターンの標的厚さは、約30μmとなり得る。約1mm厚のクレジットカード又はIDカードの場合、このクレジット/IDカードに含まれるべき光学セキュリティ素子のレリーフパターンの標的厚さは、約400μm未満、及び好ましくは約250μm以下となる。
【0057】
さらに、ソース距離及び画像距離は、一般的には、ユーザ快適性により、数十センチメートルに制限される。しかしながら、明らかな例外は、太陽光又は天井に取り付けられたスポットライトであり、これらは、特定の状況下ではあまり容易に入手可能ではない。また、2つの距離間の比d/dは、認識するのがより容易である鮮明な画像を(良好なコントラストで)獲得するように、典型的には、5~10より大きい。さらに、比d/d≧5であることと、光源Sが好ましくは点状である(例えば、従来の携帯電話の照明LED)こととにより、光源が実際にはほぼ「無限」であると考えることを可能にし、したがって、光学セキュリティ素子から焦点距離付近のみにおける投射表面は、投射されたコースティックパターンをはっきりと見るのに好適である。結果として、ユーザによる良好な視覚的観察の条件は、光源、光学セキュリティ素子、及びユーザの目の厳密すぎる相対的空間配置を必要としない。
【0058】
一般に、厚さ及びレリーフは、最も重要なパラメータの一つである。恣意的な標的画像(参照パターン)及び光学幾何学的構成(すなわち、投射されたコースティックパターンの照明/観察の幾何学的条件)を前提とすると、計算された光学面が、定められた制限を下回るレリーフパターンを有するという保証はない。実際、一般的な場合には、反対のことが起こる可能性が高く、これは、上に説明される光学セキュリティ素子についての厳しく課せられた制約では特に当てはまる。提案された方法は、これらの追加の制約を自動的に考慮しない。しかしながら、提案された方法は、所与の入力画像に対応するコースティック表面を素早く演算することができるため、それは、設計されたレリーフが制約に対応するまで、画像設計に対するいくつかの反復を可能にする。対照的に、計算コストの高い従来の方法は、通常、制約を自動的に考慮しないだけでなく、反復設計プロセスに対して厳しい制限も課す。
【0059】
透過型コースティック光学素子の構成のみがここでは説明されるが、同じ論拠が、わずかな変化を伴って(特に、フェルマーの原理の適用に関して)、反射性構成にも当てはまり得る。
【0060】
説明の目的のため、光学軸と整列された(コースティック光学素子に垂直の)z軸を伴い、ソースから画像までを指し示す、デカルト参照系を規定することが簡便である。本発明の概念を例証するため、「平凸」タイプの単純なコースティック光学素子が、検討され(図2図3)、(実質的に)平行の光線のビームと共に例証される。有限距離にある光源がレンズ様の光学素子の追加により分かりやすく、有限距離ソースを無限遠にある仮想ソースへ変換する場合に及ぶこと。レンズ様の素子の機能は、最終的に、コースティック光学素子に直接組み込まれ得る。x軸及びy軸は、したがって、コースティック光学セキュリティ素子の平面(コースティック光学素子の入力面に平行である)上にある。コースティック表面は、コースティック光学素子の座標(x,y)の点における参照平面z=0からの表面の距離zを得るスカラー関数z=F(x,y)によって数学的に説明される。後の説明における簡便性の目的のため、この平面は、コースティック光学素子の裏面に位置し得、この場合、z=F(x,y)は、コースティック光学素子の厚さに等しい(図2参照)。図2に示される例では、この平面は、コースティック画像の平面に平行である。
【0061】
同様に、コースティック画像は、画像平面上の座標(x’,y’)の点(又は画素)における光度を得るスカラー関数I(x’,y’)によって説明される。
【0062】
デカルト座標の使用は、便宜上であり、代わりに他の系も使用され得る(例えば、コースティック表面が曲線状の物体の部分であるか、又はこれによって支持される場合)ということに留意されたい。同様に、コースティック光学素子の裏面は、平坦である必要はないが、これは、当然ながら、計算に入れておかなければならない。
【0063】
本発明は、光路長が経路内の任意の小変動に対して極値である(フェルマーの原理)、固定光路長の経路に沿って光が進む性質を利用する。コースティック画像の任意の所与の点(x,y)の場合、そこに集束する小断面の線束は、同じ光路長の経路を進んできたものである。典型的には、コースティック層の光方向転換表面のレリーフパターンは、コースティック層と、コースティック画像が形成される画像平面との間の距離dと比較して非常に小さいレリーフ深さεを有し(図2参照)、実際、一般には、結果として生じるεの値は、300μm未満である一方、dは、5cmより大きく(したがって、ε/d<6 10-3)、レリーフ深さεは、レリーフパターンの最高点と最低点との間の高さの差と規定される。コースティック層の全厚は(e+ε)であり、式中、eは、コースティック層の光学材料の均質部分の厚さである。一般的に、厚さeはまた、観察距離dと比較して非常に小さく、すなわち、典型的には、eは、1ミリメートル未満である(したがって、e/d≦2 10-2、及び(e+ε)/d≦2.6 10-2)。しかしながら、単に平行光線としてのコースティック層内の入射光線の伝搬に対応する厚さeの層は、光路長の差に関して影響がなく、したがって無視される。図2に例証されるコースティック層を検討すると、(簡便性のため、平行の入射光線を有するように)無限遠に位置する光源(s=∞、d=d)の場合、(i)点(x,y)においてコースティック層の平面(レベルz=0)に入り、等式z=F(x,y)の光方向転換表面のレベルzで点(x,y)に至るまで屈折率nのコースティック層(コースティック光学素子)を通過し、画像平面の焦点(x,y)に達する直線光線の光路長l(x,y)と、(ii)点(x,y)に近い点(x,y)においてコースティック層の平面(レベルz=0)に入り、光方向転換表面のレベルzにおいて点(x,y)に至るまでコースティック層を通過し、画像平面の点(x,y)まで偏向される光路長l(x,y)との間の、光路長Δlの差について検討する。rが、点(x,y)と(x,y)との間の距離、すなわち、
【数1】

である場合、
【数2】

を有する。
【0064】
フェルマーの原理によると、Δl=0を有さなければならず、したがって、zに関する二次方程式を解くと、
【数3】

が得られ、式中、ε≪dの観点では、d-z≒dを有する。故に、上記z=f(x,y)が表面z=F(x,y)の局所表現(すなわち、点(x,y)の周辺)を指定し、z=f(x,y)が、頂点における引用であるとすると、
【数4】

と書くことができ、これは、点(x,y,z)における頂点を有するz軸の周りでの回転面を表す。
【0065】
結果的に、焦点(x,y)の代わりに、画像平面上の焦点(x,y)のうちの任意の1つを検討する場合(i=1,…,N)、
【数5】

によって、F(x,y)の局所(すなわち、点(x,y)において頂点を有する)近似を規定することができ、式中、z=f(x,y)であり、
【数6】

である。故に、コースティック層の光方向転換表面の全体的な形状を得る関数F(x,y)は、光路の上述した定常性と一致して、区分的な表面が、画像平面上の所与の点(x,y)、i=1,…,Nに対応する頂点(x,y)の周辺の「基本形状関数」z=f(x,y)を有する表面区分の交点から生じる包絡線であることによって、局所的に表され得る。
【0066】
本発明は、近軸近似において、すなわち、r≪dの場合、したがって、
【数7】

である場合、コースティック表面のこの局所表現は、大括弧内の式のテイラー展開の最初のいくつかの非ゼロ項により、(x,y)の付近でさらに近似され得るという観察からさらに生じる。
【数8】
【0067】
例えば、点(x,y)周辺のF(x,y)の局所近似f(x,y)について検討し、テイラー展開の最初の非ゼロ項のみを考慮する場合、局所表現の簡略化された近似を獲得し、
【数9】

これは、図3に示されるように、z=0における(x,y)平面に対する、及び(空間座標(x,y,z)の)放物面の頂点に対応する、「高さ」z=f(x,y)を伴う、(x,y)を中心とする軸線を有する回転放物面を説明するものである。
【0068】
次の非ゼロオーダー(k=4)へのテイラー展開では、点(x,y)周辺の局所表現の近似を、
【数10】

として獲得する。
【0069】
局所表現f(x,y)の最初の非ゼロオーダーに至るまでの近似によって得られるF(x,y)の区分的な放物面近似について検討するとき、それぞれ点(x,y)より上の高さz及び隣接する点(x,y)より上の高さzを有する2つのそのような(円形)放物面の交点は、一般的には、2つの点(x,y)及び(x,y)を結合する直線に垂直の平面内に放物面を規定する。したがって、画像平面の点{(x,y),i=1,…,N}のセット、及び上記点とそれぞれ関連付けられた放物面の頂点の高さ{z,i=1,…,N}の対応するセットでは、これらの放物面の交点の結果として生じる(外側)包絡線(区分的な光方向転換表面を規定する)は、鋭い放物曲線によって境界される放物面の部分で形成される。これらの曲線は、単なる位数2の代数方程式を解くことによって計算され得る。位数k=4以上のテイラー展開の場合、対応する「基本形状関数」z=f(x,y)は、単なる放物面よりも複雑であり、表面区分の交差線の計算(それらの頂点の異なる高さを設定するとき)は、より面倒になる。
【0070】
図3に示される例では、入射する平行光線は、均一な強度Iでコースティック層の平面(入力)面z=0を照明し、したがって光方向転換表面z=F(x,y)の所与の区分的な近似では、すなわち、N個の頂点(x,y,z)の所与のセット及び対応する基本形状関数f(x,y)、i=1,…,Nでは、表面の基本区分の交点の包絡線からの画像平面の点(x,y)における強度I(j)への寄与は、
【数11】

によって数学的に説明され得、これは
「トレース関数」(i,jは{1,…,N}に属する)
【数12】

を使用しており、式中、関数H[X]は、
【数13】

によって規定される従来のヘヴィサイドの階段関数であり、コースティック素子(すなわち、「窓」又は集光領域)のサポート領域にわたって積分される。原則的に、窓の形状及び/又はサイズに対する特定の制限は存在しないということに留意されたい。しかしながら、単純な幾何学的形状、コンパクトな形状、及び凸形状は、計算及び実用の目的には有利である。
【0071】
コースティック表面z=F(x,y)の表現の区分的近似の式(所与の数Nの画像点(x,y)、i=1,…,Nについて)は、したがって、
【数14】

によって得られる。
【0072】
光方向転換表面z=F(x,y)の区分的近似が一旦獲得されると(N個の頂点の所与のセットについて)、画像平面の選択されたそれぞれの点(x,y)、i=1,…,Nにおける光強度I(i)、i=1,…,Nの対応する分布を推測すること、及び再現されるべき標的コースティックパターンに対応する同じ点におけるI(i)と所与の(標的)強度Iとの間の、各標的点(x,y)についての差を推測することが必要である。したがって、頂点の高さz、i=1,…,Nは、合計
【数15】

が最小化されるように反復的に設定される。
【0073】
例えば、表面f(x,y)の局所区分が、テイラー展開の主要項によって、すなわち放物面によって近似される場合、画像平面上の点(x,y)における非ゼロ強度I(j)は、それぞれの頂点(x,y,z)、i≠j,i∈{1,…,N}を有する(及びおそらくはコースティック層窓の境界線を有する)区分的な表面Fを形成する残りの放物面との交差後、頂点(x,y,z)の放物面の残ったもの、すなわち放物面(j)からのみ生じる。放物面(j)が少なくとも1つの放物面(i)によって完全にマスクされる場合(すなわち、zがzに対して十分に大きい場合)、強度I(j)はゼロである。上述したように、2つの放物面(i)及び(j)の交点の輪郭は、2つの点(x,y)及び(x,y)を結合する直線に垂直の平面内の放物面であり、この平面はzに沿って光学軸に平行であり、この平面とz=0における(x,y)平面との交点が直線セグメントを規定する。放物面(j)と近隣放物面(i)との交点を検討するとき、平面z=0上の対応する直線セグメントは、凸状の多角形セルΩを描く。明らかに、画像平面の点(x,y)において送達される光強度I(j)は、セルΩによって収集される入射する(均一の)平行光線のみから生じ、したがって、送達された強度I(j)は、セルΩの領域a(j)に比例する。当然ながら、すべての交差する放物面の包絡線と関連付けられたセルのすべての領域の合計は、入射光線の収集(窓)の全領域A(平面z=0上)に等しくなければならない。
【数16】

この制約は、合計
【数17】

を(反復的に)最小化しながら、適切な正規化を選択することによって、考慮される。放物面の頂点の高さ間の相対的な差が修正されるたびに(N個の高さのうちの少なくとも1つを増大又は減少させることによって)、セルの領域はそれに応じて修正され、したがって、頂点の高さを変化させることは、セルの領域を変化させることと同等である。2つの隣接する点(x,y)及び(x,y)に対応する2つの放物面のそれぞれの頂点の高さz及びzが、例えば、zをz+δzへ変更することによって(他の高さは未変更である)修正される場合、セルΩ(放物面(i)に関する)とセルΩ(放物面(j)に関する)との間の境界のセグメントは、δzが正である(すなわち、領域a(i)が減少される)場合はセルΩの方へ移動し、δzが負である(すなわち、領域a(i)が増大される)場合はセルΩの方へ移動する。さらに、強度はセルの領域に比例するため、合計Sを最小化することは、合計
【数18】

を最小化することと同等であり、式中、aは、標的強度I、i=1,…,Nに対応する領域値である。領域a(i)は、セルΩと関連付けられたパラメータとして見ることができ、放物面の頂点の高さを変えることは、領域Aの区画を形成するセルのパラメータを修正することと同等である。領域a(j)は、放物面の交点から生じ、上述したトレース関数を
【数19】

(領域Aの(x,y)平面にわたって積分が実施される)として用いて計算され得る。
【0074】
放物面表面の例を用いた上の論拠は、光路長の定常性から直接派生される表面区分の式が、近似されない、又は任意の(偶数)位数k>2へのそのテイラー展開によって近似される(結果として生じる式は依然として回転面を説明する)場合にさえ、真のままであり、最小化動作の反復ステップnにおいて、値{z (n),i=1,…,N}のセットは、
【数20】

を用いて、N個の表面区分{z=f (n)(x,y),i=1,…,N}の交点を表すセル{Ω (n),i=1,…,N}のセット及びセル領域{a(n)(i),i=1,…,N}の対応するセットを決定し、制約は、
【数21】

であり、コスト関数は、
【数22】

である。光方向転換表面の近似は、
【数23】

によって説明される。
【0075】
関数(すなわち、コスト関数)
【数24】

を最小化するプロセスは、例えば、(導関数不要)ネルダ・ミードシンプレックス法(J.A.Nelder及びR.Mead、“A simplex method for function minimization”、The Computer Journal,vol.7(4)、1965、pp308-313)のような、任意の既知の最小化法に従って実施され得る。当然ながら、例えば、座標降下法(Stephen J.Wright、“Coordinate Descent Algorithms”、Mathematical Programming,vol.151(1)、June 2015、pp3-34を参照)、又はマルチレベル座標探索(「MCS」)法(W.Huyer及びA.Neumaier、“Global Optimization by Multilevel Coordinate Search”、Journal of Global Optimization、vol.14(4)、June 1999、pp331-355を参照)などの他の導関数不要最適化法が使用され得る。
【0076】
本発明によると、及び上記の光方向転換表面の区分的な表現では、光源から受領される入射光を方向転換させて、標的画像の所与のコースティックパターン(すなわち、非ゼロ光強度の所与の分布)を含む投射画像を形成するように構成されるコースティック層の光方向転換表面を計算する技術的問題は、
入力標的画像の離散的表現を提供することであって、入力標的画像の離散的表現は、標的画像の所与の領域内に分散され標的画像の標的コースティックパターンに対応する関連付けられた非ゼロ標的光強度{I}を有する画像平面内の座標{(x,y)},i=1,…NにおけるN個の画像画素pのセットPを備える、提供すること、
コースティック層によって屈折又は反射され、座標(x,y)、i=1,…,Nの画像平面の点P(i)に集束される光線の光路長の定常性からそれぞれ得られる交差する複数の表面区分f(x,y)、i=1,…,Nを用いて、光方向転換表面の表現に基づき、(x,y)座標面より上の高さzを伴う、コースティック層の区分的な光方向転換表面z=F(x,y)を演算することであって、各表面区分z=f(x,y)が、高さz=f(x,y)、i=1,…,Nを伴う、点P(i)を通過し、点(x,y,z)において頂点を有する軸の周りでの回転面であり、N個の頂点の高さのそれぞれの値と関連付けられた区分的光向転換表面が、対応するN個の表面区分の交点の包絡線によって形成される、演算すること、
N個の表面区分の頂点の高さz,…,zのそれぞれの値の所与のセットについて、関連付けられた区分的光方向転換表面を介して入射光を方向転換させるコースティック層によって点P(1),…,P(N)にそれぞれ集束される光強度I(1),…,I(N)の値の対応するセットを計算すること、及び
関連付けられた光方向転換表面を介して点P(1),…,P(N)に集束される計算された光強度I(1),…,I(N)のそれぞれの値と、標的光強度I,…,Iのそれぞれの対応する値との間の差を最小化する対応するN個の表面区分のN個の頂点のN個の高さz,…,zのそれぞれの値を計算することによって解かれる。
【0077】
例えば、ネルダ・ミードのシンプレックス法によるコスト関数Σの最小化では、最適化は、最適化N次元空間内の非縮退シンプレックスSの頂点(すなわち、N個の高さz,…,z)に位置するN+1点Q(1),…,Q(N+1)のセット、及びコスト関数値
【数25】

の対応するセットで始まる。次いで本方法は、作用シンプレックスSの一連の変換を、その頂点におけるコスト関数値を減少させることを目指して、実施する。各ステップにおいて、変換は、1つ又は複数のテスト点を、それらのコスト関数値と一緒に、演算することによって、及び、最も悪い頂点、すなわち最大コスト関数値を有するものを、より良いものと交換することを目指して、これらのコスト関数値を現在の頂点におけるものと比較することによって決定される。テスト点は、最も悪い頂点から離れる方への(1)反射若しくは(2)拡張、又は最も良い頂点(複数可)へ向かう(3)縮小若しくは(4)収縮という4つのヒューリスティックのうちの1つに従って選択され得る。最小化は、作用シンプレックスSが十分に小さくなったとき、又は頂点におけるコスト関数値が十分に近いときに終了する。4つのヒューリスティック変換を用いて、ネルダ・ミードアルゴリズムは、典型的には、各ステップにおいて1つ又は2つのみの関数評価を必要とするが、多くの他の直接検索法は、少なくともN個のコスト関数評価を使用する。ネルダ・ミードアルゴリズムの直感的説明は、(Press,WH;Teukolsky,SA;Vetterling,WT;Flannery,BP(2007).“Section 10.5.Downhill Simplex Method in Multidimensions”.Numerical Recipes:The Art of Scientific Computing(3rd ed.).New York:Cambridge University Press.ISBN 978-0-521-88068-8.)において得られる:「滑降シンプレックス法は、これより一連のステップを踏み、大半のステップは、関数が最大であるシンプレックスの点(「最高点」)をシンプレックスの反対面を通じてより低い点へ移動させるだけである。これらのステップは、反射と呼ばれ、それらは、シンプレックスのボリュームを守る(故に、その非縮退を維持する)ように構築される。それを行うことができるとき、本方法は、シンプレックスを1つ又は別の方向に拡張して、より大きなステップを踏む。それが「谷底」に達すると、本方法は、横方向に収縮し、谷を浸出させようとする。シンプレックスが「針の目を通過」しようとしている状況がある場合、それは、すべての方向に収縮し、その最も低い(最良の)点の周辺へと引っ込む。」
【0078】
本発明の好ましいモードによると、最適な光方向転換表面は、有利には、(一般化された)パワー図法を用いて獲得される(ボロノイ図法又はラゲール/ボロノイ図法としても知られる(F.de Goesら、“Blue Noise through Optimal Transport”,CAN Transactions on Graphics,vol.31(6),(SIGGRAPH Asia)2012を参照)(入手可能なソースコードは、ウェブサイトhttp://www.geometry.caltech.edu/BlueNoise/も参照)。実際、この方法は有力であり、本発明の最適化問題に対応するケースでは、重みwがここでは高さzに対応し、及び容量mがここではセル領域a(i)に対応する、重みの凹関数を最小化する、「任意の定められた容量制約のための」唯一の解決策としてのパワー図法が証明される(特に、Goesらの上で引用した論文の付録を参照)。
【0079】
いかなる画像も画素の有限収集によって近似され得るため、コースティック表面は、対応する表面区分(例えば、放物面)の合成によって近似され得る。故に、標的画像I(x’,y’)(図4を参照)を前提とすると、それを生成するコースティック表面を計算する問題は、I(x’,y’)を近似する点の所与セットのための重み{w}の適切なセットを見つけることを低減する。
【0080】
最適輸送の仮説(Goesらの上で述べた記事を参照)の下では、これは、場所{(x,y)}のパワー図のための重み{w}(ここでは高さ{z})を見つけることと同等であり、結果として、容量{m}(ここではセル領域{a(i)})は、標的画像強度{I(x,y)}に比例する。高さ{z,i=1,...,n}の最適セット及び対応するセル境界∂Ω(領域a(i)のセルΩの)が、パワー図法により獲得されると、区分的な表面が、円筒の交点を検討することによって再構築され、軸zに沿って構築され、その基底は、それぞれの表面区分が上記獲得した高さにおいて頂点を有した状態で、セルの境界によって形成される。好ましいモードでは、表面区分は、放物面によって近似され、この場合、セルΩの境界∂Ωは、多角形であり、境界までの点の距離及び勾配の計算は、大いに簡略化される。より一般的なケース(すなわち、表面区分が近似されない、又は2より大きい位数のテイラー展開により近似される)では、セルΩの境界∂Ωは、依然として閉曲線であるが、曲線からなり、上記の境界までの点の距離及び勾配の計算は、より複雑である。
【0081】
図4に描写される標的画像について獲得される結果は、図5図8に示される。標的画像は、100×100画素を有し、そのうちの900は、非ゼロである(すなわち、非ゼロ光度を有するコースティック画像の領域を表す)。図5は、計算されたパワー図を示し、図6は、対応するコースティック表面を例証し、図7は、レイトレーシング幾何形状を示し、図8は、レイトレーシングの結果を描写する。
【0082】
にわたって最小化することで、関数Σ│m-Iは、単なる勾配降下アルゴリズムによって解かれ得る。このプロセスは、{w}の初期セットから開始し(ほとんどの場合、すべての値を等しくとることによって)、次いで対応する区画の最適セット{w}に向かって容量mのセルΩ内へ収束する。次いで結果として生じる最適セット{w}から、放物面素子{z}の高さのセットが獲得され、結果として生じる多角形セルΩの境界∂Ωから、放物面を伴う基底∂Ωの垂直(zに沿った)円筒の交点により、最終的な区分的コースティック表面が構築される。
【0083】
本発明に従って演算及び設計される光方向転換表面を有するコースティック層は、この光学セキュリティ素子でマーク付けされた物体が、人によって視覚的に容易に認証され得るように、さらなる手段を使用することなく(すなわち、裸眼で)又は一般的な容易に入手可能な手段を使用して、人によって容易に認識可能である参照パターンを再現するコースティックパターンを備える投射画像を形成する。屈折性の光学セキュリティ素子の透明の態様は、それを、少なくとも部分的に透明な基材(例えば、ガラス又はプラスチックボトル、ボトルキャップ、腕時計ガラス、ジュエリー、宝石など)を作製するのに特に好適にする。
【0084】
コースティック層の、屈折性の透明若しくは部分的に透明な光方向転換表面、又は反射性の光方向転換表面を設計するための開示された方法は、高速で、スケール付きで、信頼性が高く、正確である。それは、補正又は調節が必要とされないため、標的画像から対応する表面へたどり着くのに必要とされる反復の数を著しく低減することを可能にする。これはまた、設計に必要とされる全体的な時間を低減する。
【0085】
また、法線フィールドを計算及び積分するステップが排除され、容量制約の最小化による効率的な最適化技術が提供される。
【0086】
その上、標的画像を指定すること及び結果として生じる表面を受容することを超えたユーザ介入は完全に排除される。ユーザ介入の必要性を取り除くことは、専門技能が必ずしも入手可能でない製造の文脈において、本方法の実施を著しく簡略化する。
【0087】
上に開示された主題は、制限的なものではなく、例証的であると考えられるべきであり、独立請求項によって規定される本発明のより良い理解を提供する役割を果たす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】