(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151334
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】光回路基板
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20241017BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20241017BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G02B6/12 301
H05K1/18 J
G02B6/42
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111223
(22)【出願日】2024-07-10
(62)【分割の表示】P 2022545583の分割
【原出願日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2020144510
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 逸朗
(57)【要約】 (修正有)
【課題】配線基板に搭載された光導波路板は配線基板の熱伸縮の影響を受けやすく、光導波路板に割れが発生するおそれがある。
【解決手段】本開示に係る光回路基板は、基材41と、基材の上面に位置する光導波路42と、基材の下面に位置する脚体43とを備える光導波路板4、および絶縁板31と、絶縁板の上面に位置する脚体との嵌合部と、絶縁板の上面に位置し、光学部品と電気的に接続される電極32とを備える配線基板3を含む。光導波路板の脚体が、配線基板の嵌合部に嵌め合わされており、光導波路板の下面と配線基板の上面との間に隙間が存在している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品が実装される光回路基板であり、
基材と、該基材の上面に位置する光導波路と、該基材の下面に位置する脚体とを備える光導波路板、および
絶縁板と、該絶縁板の上面に位置する前記脚体との嵌合部と、該絶縁板の上面に位置し、前記光学部品と電気的に接続される電極とを備える配線基板、
を含み、
前記光導波路板の前記脚体が、前記配線基板の前記嵌合部に嵌め合わされており、
前記光導波路板の下面と前記配線基板の上面との間に隙間が存在していることを特徴とする光回路基板。
【請求項2】
前記絶縁板の上面に、前記嵌合部となる第1開口、および前記電極を露出する第2開口を有するソルダーレジストが位置している請求項1に記載の光回路基板。
【請求項3】
前記脚体が、前記基材から離れるにつれて連続的に細くなる形状を有しており、前記第1開口が、前記絶縁板から離れるにつれて連続的に広くなる形状を有している請求項2に記載の光回路基板。
【請求項4】
前記絶縁板の上面に、前記嵌合部となる第3開口を有する導体が位置している請求項1に記載の光回路基板。
【請求項5】
前記脚体が、前記基材から離れるにつれて連続的に細くなる形状を有しており、前記第3開口が、前記絶縁板から離れるにつれて連続的に広くなる形状を有している請求項4に記載の光回路基板。
【請求項6】
前記脚体が、上面視した場合にL字型形状の断面を有する請求項1~5のいずれかに記載の光回路基板。
【請求項7】
前記光導波路板を上面視した場合に、前記基材の周縁部の少なくとも一部が、前記光導波路で被覆されずに露出している請求項1~6のいずれかに記載の光回路基板。
【請求項8】
前記基材が光透過性を有する請求項1~7のいずれかに記載の光回路基板。
【請求項9】
前記光導波路板が、光ファイバーと接続するためのコネクターをさらに備える請求項1~8のいずれかに記載の光回路基板。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の光回路基板と、少なくとも一側面に送受光部を有する光学部品とを含み、
前記光学部品が、はんだを介して前記光回路基板の電極と接続されており、前記送受光部の下側における下面が、前記光導波路板の前記基材上面と当接していることを特徴とする実装構造体。
【請求項11】
光学部品が実装される光回路基板の製造方法であり、
光透過性を有する基材を準備する工程と、
前記基材の上面に下部クラッド層を形成する工程と、
前記下部クラッド層の上面に感光性を有するコア用材料を被着する工程と、
前記基材の下面に感光性を有する脚体用材料を被着する工程と、
前記コア用材料に光を照射してコアを形成し、前記基材を透過した光を前記脚体用材料に照射して脚体を形成する工程と、
前記下部クラッド層および前記コアを被覆する上部クラッド層を形成する工程と、
を含む光導波路板を形成する工程と;
絶縁板を準備する工程と、
前記絶縁板の上面に前記光学部品と電気的に接続される電極を形成する工程と、
前記絶縁板の上面に前記電極を被覆する感光性のソルダーレジスト用材料を被着する工程と、
前記ソルダーレジスト用材料を露光および現像して、前記脚体との嵌合部となる第1開口、および前記電極を底部に露出する第2開口が同時に形成されたソルダーレジストを形成する工程と、
を含む配線基板を形成する工程と;
前記脚体を前記嵌合部に挿入して、前記光導波路板の下面と前記配線基板の上面との間に隙間が存在するように、前記光導波路板を前記配線基板に搭載する工程と;
を含む光回路基板の製造方法。
【請求項12】
光学部品が実装される光回路基板の製造方法であり、
光透過性を有する基材を準備する工程と、
前記基材の上面に下部クラッド層を形成する工程と、
前記下部クラッド層の上面に感光性を有するコア用材料を被着する工程と、
前記基材の下面に感光性を有する脚体用材料を被着する工程と、
前記コア用材料に光を照射してコアを形成し、前記基材を透過した光を前記脚体用材料に照射して脚体を形成する工程と、
前記下部クラッド層および前記コアを被覆する上部クラッド層を形成する工程と、
を含む光導波路板を形成する工程と;
絶縁板を準備する工程と、
前記絶縁板の上面に前記脚体との嵌合部となる第3開口を有する導体、および前記光学部品と電気的に接続される電極を同時に形成する工程と、
を含む配線基板を形成する工程と;
前記脚体を前記篏合部に挿入して、前記光導波路板の下面と前記配線基板の上面との間に隙間が存在するように、前記光導波路板を前記配線基板に搭載する工程と;
を含む光回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のデータを高速で通信可能な光通信網が拡大しており、このような光通信網を利用した種々の光通信機器が存在する。このような機器には、例えば特許文献1に記載されるように配線基板に光導波路が接続された光回路基板が搭載されている。このような光回路基板は、一般的に、光導波路を配線基板である有機基板(ベース基板)に搭載することによって得られる。
【0003】
しかし、有機基板には反りやうねりが存在するため、平坦度および位置精度に悪影響を及ぼすことなく、光導波路をこのような有機基板の上に搭載するのは困難である。その結果、搭載された光導波路と配線基板上に実装される光学部品との位置合わせ(光軸の調心)が困難となり、光学部品と光導波路との光伝送特性が低下するおそれがある。
【0004】
さらに、平坦性を向上させるために、光導波路をガラスの上に形成した基材付き光導波路(光導波路板)が、配線基板の有機基板に搭載される場合がある。しかし、配線基板に搭載された光導波路板は配線基板の熱伸縮の影響を受けやすく、光導波路板に割れが発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る光回路基板は、基材と、基材の上面に位置する光導波路と、基材の下面に位置する脚体とを備える光導波路板、および絶縁板と、絶縁板の上面に位置する脚体との嵌合部と、絶縁板の上面に位置し、光学部品と電気的に接続される電極とを備える配線基板を含む。光導波路板の脚体が、配線基板の嵌合部に嵌め合わされており、光導波路板の下面と配線基板の上面との間に隙間が存在している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)は、本開示の一実施形態に係る光回路基板を含む実装構造体を示す説明図であり、(B)は、(A)に含まれる光導波路板を上面から見た模式図を示し、(C)は、(A)に含まれる配線基板を上面から見た模式図を示す。
【
図2】本開示の他の実施形態に係る光回路基板を含む実装構造体を示す説明図である。
【
図3】(A)は、光導波路板に備えられる脚体の変形例を示す説明図であり、(B)は、第1開口の変形例を示す説明図であり、(C)は、第3開口の変形例を示す説明図である。
【
図4】コネクターを備える光導波路板を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来の光回路基板は、上記のように、搭載された光導波路と配線基板上に実装される光学部品との位置合わせ(光軸の調心)が困難となり、光学部品と光導波路との光伝送特性が低下するおそれがある。さらに、配線基板に搭載された光導波路板は配線基板の熱伸縮の影響を受けやすく、光導波路板に割れが発生するおそれがある。そのため、搭載された光導波路板に発生する割れを抑制することができ、かつ搭載される光導波路板と実装される光学部品との位置精度に優れた光回路基板が求められている。
【0009】
本開示に係る配線基板は、光導波路板の脚体が、配線基板の嵌合部に嵌め合わされており、光導波路板の下面と配線基板の上面との間に隙間が存在している。したがって、本開示によれば、搭載された光導波路板に発生する割れを抑制することができ、かつ搭載される光導波路板と実装される光学部品との位置精度に優れた光回路基板を提供することができる。
【0010】
本開示の一実施形態に係る光回路基板を、
図1に基づいて説明する。
図1(A)は、本開示の一実施形態に係る光回路基板2を含む実装構造体1を示す説明図である。
図1(A)に示す一実施形態に係る光回路基板2は、配線基板3と光導波路板4とを含む。
【0011】
まず、配線基板3について説明する。配線基板3は、絶縁板31、電極32、支持部材33およびソルダーレジスト34を含む。絶縁板31は、絶縁性を有する素材で形成されていれば特に限定されない。絶縁性を有する素材としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
絶縁板31には、補強材が含まれていてもよい。補強材としては、例えば、ガラス繊維、ガラス不織布、アラミド不織布、アラミド繊維、ポリエステル繊維などの絶縁性布材が挙げられる。補強材は2種以上を併用してもよい。さらに、絶縁板31には、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機絶縁性フィラーが、分散されていてもよい。
【0013】
図1(A)に示す絶縁板31は、コア層のみの1層構造である。しかし、絶縁性を有するコア層の少なくとも一方の表面に絶縁層と導体層とが交互に積層されたビルドアップ構造を有していてもよい。
図1(A)には図示していないが、通常、絶縁板31の上下面を電気的に接続するために、スルーホール導体や、ビルドアップ構造において層間を電気的に接続するためのビアホール導体が形成されている。
【0014】
絶縁板31の表面には、電極32および支持部材33が位置している。電極32は銅などの金属で形成されており、後述する光学部品5と電気的に接続するために使用される。支持部材33は、後述する光導波路板4に備えられる脚体43を支持するために使用される。脚体43も電極32と同様、銅などの金属で形成されている。支持部材33は、配線基板3において必ずしも必要なものではない。支持部材33は、後述する脚体43の底部が当接する位置をかさ上げすることで、脚体43の長さを低減したい場合等に適宜配置するとよい。
【0015】
図1(A)に示す配線基板3には、絶縁板31の表面を被覆するようにソルダーレジスト34が位置している。ソルダーレジスト34は、例えば、アクリル変性エポキシ樹脂で形成されている。ソルダーレジスト34には、
図1(C)に示すように、支持部材33を露出するための第1開口341、および電極32を露出するための第2開口342が形成されている。第1開口341は、光導波路板4の脚体43を挿入する嵌合部35として機能する。第2開口342は、電極32とともに光学部品5の電極52をはんだ6により接続する接続部36として機能する。
図1(C)は、配線基板3を上面から見た模式図を示す。
【0016】
次に、光導波路板4について説明する。光導波路板4は、基材41、光導波路42および脚体43を含む。基材41は、例えば、ガラス、樹脂などで形成されており、光透過性を有する物質で形成されているのがよい。基材41の大きさは限定されず、上面に光導波路42を形成し得る大きさであれば限定されない。例えば、基材41の大きさは、
図1(B)に示すように、光導波路板4を上面視した場合に、基材41の周縁部の少なくとも一部が、光導波路42で被覆されずに露出している。このように露出していると、後述する脚体43を形成する際に容易になる。周縁部の幅は脚体43の径の大きさに応じて適宜設定され、例えば端部から0.5mm以上10mm以下程度である。
【0017】
特に、後述する光学部品5が実装される側の周縁部を光導波路42で被覆せずに露出させているのがよい。このような構成であれば、基材41の周縁部に光学部品5の一部を載せることができる。そのため、光学部品5の送受光部51とコア42bとの高さ方向の位置決めを容易にすることができる。
【0018】
光導波路42は基材41の上面に位置している。基材41の上面側に下部クラッド層41aが位置し、下部クラッド層41aの上面にコア42bが位置している。上部クラッド層42cは下部クラッド層41aの上面およびコア42bを被覆している。
【0019】
光導波路42に含まれるコア42bは光路として作用し、光導波路42に侵入した光は、コア42bの側面および上下面において屈折を繰り返しながら伝送される。コア42bを形成している材料は限定されず、例えば、光の透過性や通る光の波長特性などを考慮して適宜設定される。このような材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。コア42bは、例えば1μm以上100μm以下の厚み、および1μm以上100μm以下の幅を有していてもよい。
【0020】
下部クラッド層42aおよび上部クラッド層42cを形成している材料は限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。下部クラッド層42aおよび上部クラッド層42cは、例えば1μm以上100μm以下の厚みを有していてもよい。下部クラッド層42aおよび上部クラッド層42cは、同じ厚みを有していてもよく、異なる厚みを有していてもよい。
【0021】
コア42b内に侵入した光は、コア42bと下部クラッド層42aおよび上部クラッド層42cとの境界で屈折を繰り返しながら伝送される。そのため、コア42bを形成している樹脂は、下部クラッド層42aおよび上部クラッド層42cを形成している樹脂よりも大きな屈折率を有している。
【0022】
脚体43は基材41の下面に位置している。脚体43は、光導波路板4を配線基板3との間に隙間を確保して固定するために使用される。具体的には、脚体43は、配線基板3に含まれるソルダーレジスト34に形成された第1開口341に挿入され、配線基板3の上面に光導波路板4が搭載される。脚体43は、例えば樹脂などで形成され、コア42bと同じ樹脂で形成されていてもよい。
【0023】
脚体43の径の大きさは第1開口341に挿入される大きさであれば限定されない。挿入性および位置決め精度の観点から、脚体43の径の大きさは、第1開口341の径の大きさよりも1μm以上3μm以下小さい程度がよい。脚体43の長さは、配線基板3の上面と光導波路板4の下面との間に隙間が存在し得るような長さであり、かつ光導波路42に含まれるコア42bが後述の光学部品5の送受光部51との高さが一致するように配線基板3に実装できる長さであれば限定されない。配線基板3の上面と光導波路板4の下面との間に隙間が存在することによって、配線基板3の上面と光導波路板4の基材41の下面とが接触しない。そのため、基材41が、配線基板3に生じる反りやうねりなど熱伸縮による変形の影響を受けにくくなる。その結果、光導波路板4に発生する割れを抑制することができる。このような変形の影響を低減する観点から、隙間は、光導波路42の長さにもよるが、例えば光導波路42の長さ10mm当たり10μm以上であるとよい。脚体43と嵌合部35とを接着剤で補強しても構わない。隙間は、弾性接着剤にて充填されていても構わない。弾性接着剤の引張り弾性率は、1N/mm2以上100N/mm2以下であってもよい。
【0024】
図1(A)に示す本開示の一実施形態に係る実装構造体1は、配線基板3と光導波路板4とを含む光回路基板2に、光学部品5が実装されている。光学部品5は、少なくとも一方の側面に送受光部51を含む。送受光部51は、光学部品5から光信号を送信する部材、あるいは光学部品5に光信号を受信させる部材である。光学部品5に応じて送信する部材か受信する部材か異なるため、送受信の両方を示す用語として便宜的に「送受光部」と記載している。
【0025】
光学部品5において、送受光部51が存在している部分の下面が、上述のように光導波路板4の基材41の周縁部に載っている。すなわち、送受光部51が存在している部分の下面と光導波路板4の基材41の上面とが当接している。このような構成によって、上述のように、光導波路42のコア42bと光学部品5の送受光部51との高さ方向の位置を精度よく決めることができる。
【0026】
さらに、光学部品5は配線基板3と電気的に接続されている。具体的には、光学部品5に含まれる電極52と配線基板3に含まれる電極32とが、はんだ6を介して電気的に接続されている。
【0027】
次に、一実施形態に係る光回路基板2の製造方法について説明する。一実施形態に係る光回路基板2は、光導波路板4を形成する工程と、配線基板3を形成する工程と、光導波路板4を配線基板3に搭載する工程とを含む。
【0028】
光導波路板4を形成する工程を説明する。まず、ガラス、樹脂などの光透過性を有する基材41を準備する。次いで、基材41の上面に光導波路42を形成する。具体的には、基材41の上面に下部クラッド層42a用の材料を被着する。下部クラッド層42a用の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂フィルムや樹脂ペーストが挙げられる。このような材料を被着した後、必要に応じてマスク、露光および現像を行い、下部クラッド層42aを形成する。
【0029】
次いで、下部クラッド層42aの上面に、感光性を有するコア42b用の材料を被着する。感光性を有するコア42b用の材料としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂フィルムや樹脂ペーストが挙げられる。感光性を有するコア42b用の材料を被着する際に、平面透視で脚体43が形成される部分と重複する位置には、コア42b用の材料を被着しないようにする。次いで、基材41の下面に、感光性を有する脚体43用の材料を被着する。脚体43用の材料は、コア42b用の材料と同じ光量で感光し同じ現像液で現像できる感光性および現像性を有する材料であるのがよく、コア42b用の材料と同じ材料であってもよい。
【0030】
コア42b用の材料および脚体43用の材料を被着した後、マスク、露光および現像を行う。具体的には、まず、コア42bのパターンおよび脚体43のパターンに応じた開口を有するマスクを用意する。マスクをコア42b用の材料の上方に配置する。その後、マスクの上方から光を照射する。この際、開口を通過した光が、基材41上面のコア42b用の材料、および基材41下面の脚体43用の材料に照射される。照射された部分は硬化する。基材41の上面および下面を現像する。これにより、光が照射された部分にコア42bと脚体43が同時に形成される。コア42bと脚体43とを同時に形成することによって、コア42bと脚体43との相対的な位置精度をより高めることができる。
【0031】
次いで、下部クラッド層42aおよびコア42bを被覆するように、上部クラッド層42c用の材料を被着する。上部クラッド層42c用の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂フィルムや樹脂ペーストが挙げられる。このような材料を被着した後、必要に応じてマスク、露光および現像を行い、上部クラッド層42cを形成する。
【0032】
次に、配線基板3を形成する工程を説明する。まず、絶縁板31を準備する。絶縁板31は、上述のようにエポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂など絶縁性を有する素材で形成されていれば特に限定されない。絶縁板31は、上述のように、コア層のみの1層構造であってもよく、絶縁性を有するコア層の少なくとも一方の表面に絶縁層と導体層とが交互に積層されたビルドアップ構造を有していてもよい。さらに、絶縁板31の上下面を電気的に接続するために、スルーホール導体や、ビルドアップ構造において層間を電気的に接続するためのビアホール導体が形成されていてもよい。
【0033】
次いで、光導波路板4に含まれる脚体43を支持するための支持部材33および光学部品5を実装するための電極32を、絶縁板31の上面に形成する。電極32および支持部材33は銅などの金属、具体的には、銅箔などの金属箔または銅めっきなどの金属めっきで形成される。上述のように、支持部材33は必ず必要なものではなく、脚体43の長さを短くしたい場合などに適宜設ければよい。
【0034】
次いで、絶縁板31の上面に、支持部材33および電極32を被覆するように感光性のソルダーレジスト34用の材料を被着する。ソルダーレジスト34用の材料としては、例えば、アクリル変性エポキシ樹脂などの樹脂フィルムや樹脂ペーストが挙げられる。このような材料を被着した後、支持部材33を露出する第1開口341および電極32を露出する第2開口342が形成される部分に光が当たらないようにマスクする。その後、露光および現像を行い、ソルダーレジスト34が形成される。第1開口341は、光導波路板4の脚体43を挿入する嵌合部35として機能する。第2開口342は、電極32とともに光学部品5の電極52をはんだ6によって接続する接続部36として機能する。第1開口341と第2開口342とが同時に形成されることによって、第1開口341と第2開口342との相対的な位置精度をより高めることができる。言い換えれば、光導波路板4が搭載される嵌合部35と、光学部品5が実装される接続部36との相対的な位置精度が高い光回路基板2を形成することができる。
【0035】
次に、光導波路板4に含まれる脚体43を、嵌合部35に挿入して支持部材33に当接させることで光導波路板4を配線基板3に搭載する。光導波路板4と配線基板3との接続を強固にするために、脚体43と嵌合部35とを接着剤で補強してもよい。このようにして、一実施形態に係る光回路基板2が得られる。このような光回路基板2に、光学部品5を実装することで、光導波路板4と光学部品5との相対的な位置精度に優れた実装構造体1を提供することができる。
【0036】
次に、本開示の他の実施形態に係る光回路基板を、
図2に基づいて説明する。
図2は、本開示の他の実施形態に係る光回路基板2’を含む実装構造体1’を示す説明図である。
図2に示す他の実施形態に係る光回路基板2’は、配線基板3’と光導波路板4とを含む。
図2に示す実装構造体1’に使用される部材について、
図1(A)に示す実装構造体1と同じ部材については同じ符号を付しており、詳細な説明については省略する。
【0037】
図1(A)に示す一実施形態に係る実装構造体1に含まれる配線基板3には、絶縁板31の上面にソルダーレジストが形成されている。一方、
図2に示す他の実施形態に係る実装構造体1’に含まれる配線基板3’には、絶縁板31’の上面にソルダーレジストが形成されていない点で、配線基板3’は配線基板3と相違する。
【0038】
絶縁板31’の上面には、光導波路板4の脚体43を嵌合するための第3開口331’を有する嵌合部35’が位置している。嵌合部35’の第3開口331’に脚体43を挿入することによって、光導波路板4を配線基板3’の所定の位置に搭載することが容易となる。さらに、脚体43を第3開口331’に嵌合することによって、光導波路板4が配線基板3’から外れにくくなる。
【0039】
嵌合部35’と電極32とは、例えばめっき加工によって同時に形成される。具体的には、例えば絶縁板31’表面に無電解銅めっき処理を行う。次に、平面視で嵌合部35’および電極32のパターンに応じた開口を有するめっきレジストを無電解銅めっき表面に被着する。次に電解銅めっき処理を行い、開口内に銅めっきを析出させる。最後に、めっきレジストを除去して、めっきレジスト下にあった無電解銅めっきを除去することで、嵌合部35’と接合部36’となる電極32とを同時に形成する。嵌合部35’と接合部36’(電極32)とが同時に形成されることによって、嵌合部35’と接合部36’(電極32)との相対的な位置精度をより高めることができる。言い換えれば、光導波路板4が搭載される嵌合部35’と、光学部品5が実装される接合部36’との相対的な位置精度が高い光回路基板2を形成することができる。このような光回路基板2に、光学部品5を実装することで、光導波路板4と光学部品5との相対的な位置精度に優れた実装構造体1’を提供することができる。
【0040】
本開示の光回路基板および実装構造体は、上述の実施形態に限定されない。上述の実施形態において、光導波路板4に含まれる脚体43は、
図1(A)、
図1(B)および
図2に示すように、一定の径を有する円柱形状を有している。
【0041】
しかし、光導波路板には、例えば
図3(A)に示すような脚体43’が含まれていてもよい。脚体43’は、基材41から離れるにつれて連続的に細くなる形状を有している。光導波路板が
図3(A)に示すような脚体43’を含む場合、配線基板に含まれるソルダーレジストに形成される第1開口は、
図3(B)に示すように、脚体43’の形状に合わせて、絶縁板から離れるにつれて連続的に広くなる形状を有する。さらに、ソルダーレジストを含まない配線基板を使用する場合、支持部材に形成される第3開口が、
図3(C)に示すように、脚体43’の形状に合わせて、絶縁板から離れるにつれて連続的に広くなる形状を有する。
【0042】
脚体の形状は、断面を上面視した場合に円形に限定されない。例えば、脚体の形状は、断面を上面視した場合に、三角形状、四角形状などの多角形状であってもよく、楕円形状であってもよく、L字型形状などであってもよい。例えば、脚体の形状が断面を上面視した場合にL字型形状を有する場合、脚体が第1開口および第3開口から抜けにくくなる。第1開口および第3開口も、脚体の形状に合わせて適宜形成される。
【0043】
さらに、光導波路板には、
図4に示すように、光ファイバー8と接続するためのコネクター7が備えられていてもよい。光導波路板がコネクター7を備えることによって、光導波路板を配線基板に搭載する前に、コネクター7と光導波路42とを含んだ光信号の送受信検査を行うことができる。したがって、光回路基板としての不良発生を低減することができ、不良発生による配線基板の無駄を低減することができる。
【符号の説明】
【0044】
1、1’ 実装構造体
2、2’ 光回路基板
3、3’ 配線基板
31 絶縁板
32 電極
33、33’ 支持部材
35、35’ 嵌合部
331’ 第3開口
34 ソルダーレジスト
341 第1開口
342 第2開口
4 光導波路板
41 基材
42 光導波路
42a 下部クラッド層
42b コア
42c 上部クラッド層
43、43’ 脚体
5 光学部品
51 送受光部
52 電極
6 はんだ
7 コネクター
8 光ファイバー
【手続補正書】
【提出日】2024-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の上面に位置する光導波路と、該基材の下面に位置する脚体とを備え、
前記脚体は、少なくとも4本位置している、
光導波路板。
【請求項2】
前記基材は、光透過性を有し、
前記光導波路は、前記基材の上面に位置する下部クラッド層、該下部クラッド層上に位置する感光性材料からなるコア、および前記下部クラッド層上と前記コア上とに位置する上部クラッド層を有しており、
前記脚体は、感光性材料からなり、平面透視で前記コアと重複せずに位置している、
請求項1に記載の光導波路板。
【請求項3】
上面視において、前記基材の周縁部の少なくとも一部が、前記光導波路で被覆されずに露出している、請求項1または2に記載の光導波路板。
【請求項4】
前記コアの材料と前記脚体の材料とが、感光性を有する同じ材料である、請求項2または3に記載の光導波路板。
【請求項5】
前記光導波路は、前記コアが延在する方向に第1端面および第2端面を有しており、
前記第1端面と対向して位置しており、光ファイバーと接続するコネクターと、
前記第2端面と対向して位置しており、第1電極を有する光学部品と、
を備える、請求項1~4のいずれかに記載の光導波路板。
【請求項6】
前記光学部品は、前記第2端面と対向する側面に送受光部を有しており、該送受光部の下側における下面が、前記基材の上面と当接している、請求項5に記載の光導波路板。
【請求項7】
前記第1端面は、該第1端面の下方に位置する前記基材の端面と同一平面に位置している、請求項5または6に記載の光導波路板。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の光導波路板と、
絶縁板の上面に位置する嵌合部および第2電極を有する配線基板と、
を含み、
前記光導波路板の前記脚体が、前記嵌合部に位置しており、
前記光学部品の前記第1電極が前記第2電極と接続している、
光回路基板。
【請求項9】
前記光導波路板の下面と、前記配線基板の上面との間に隙間が存在している、請求項8に記載の光回路基板。
【請求項10】
前記絶縁板の上面に、前記嵌合部となる第1開口、および前記第2電極を露出する第2開口を有するソルダーレジストが位置している、請求項8または9に記載の光回路基板。
【請求項11】
前記脚体が、前記基材から離れるにつれて連続的に細くなる形状を有しており、前記第1開口が、前記絶縁板から離れるにつれて連続的に広くなる形状を有している、請求項10に記載の光回路基板。
【請求項12】
前記絶縁板の上面に、前記嵌合部となる第3開口を有する導体が位置している、請求項8~11のいずれかに記載の光回路基板。