(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151352
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】荷役物運搬機
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20241018BHJP
B66C 23/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B66C15/00 Z
B66C23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064539
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】西川 純平
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA01
3F204CA05
3F204FB03
3F205AA01
3F205AA14
3F205BA06
3F205CA05
3F205CA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】空圧回路を用いた、運搬中の荷役物の落下を抑制することが可能な荷役物運搬機を提供すること。
【解決手段】ハンド機構が把持機構を駆動するための第1空圧回路を有し、操作部および把持部のいずれか一方は、着地検知バルブを有する。着地検知バルブを有することで、操作部3と把持部4との上下方向における距離が小さい間(例えば、操作部と把持部とを上下に連結するヒンジピンを押し込む間)だけ、把持部操作用メカバルブ(把持用メカニカルバルブおよび解放用メカニカルバルブ)に圧縮空気が供給される。一方、それ以外の時には、圧縮空気が遮断される。具体的には、荷役物が宙吊りの状態(例えば、ヒンジピンが抜かれた状態)の場合、把持部操作用メカバルブ(把持用メカニカルバルブおよび解放用メカニカルバルブ)への圧縮空気が遮断され、荷役物の把持操作および解放操作ができなくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役物を運搬する荷役物運搬機であって、
ハンド機構と、前記ハンド機構の昇降を行う昇降機構と、を有し、
前記ハンド機構は、
前記昇降機構から吊り下げられた操作部と、
前記操作部との上下方向における距離が変動可能に、前記操作部から吊り下げられ、前記荷役物を把持する把持機構を有する把持部と、を有し、
前記ハンド機構は、前記把持機構を駆動する第1空圧回路を有し、
前記操作部および前記把持部のいずれか一方は、
前記第1空圧回路に接続された、前記操作部と前記把持部との上下方向における距離が小さいと下流側に圧縮空気を供給し、前記操作部と前記把持部との上下方向における距離が大きいと前記圧縮空気を遮断する着地検知バルブを有し、
前記操作部は、前記第1空圧回路の前記着地検知バルブよりも下流側に接続され、前記荷役物を把持可能とする手動スイッチを有する把持用メカニカルバルブと、前記荷役物を解放可能とする手動スイッチを有する解放用メカニカルバルブと、を有する、荷役物運搬機。
【請求項2】
前記操作部は、直列接続された2つの前記解放用メカニカルバルブを有する、請求項1に記載の荷役物運搬機。
【請求項3】
前記操作部および前記把持部は、2本のヒンジピンによって接続されている、請求項1または請求項2に記載の荷役物運搬機。
【請求項4】
前記昇降機構がエアシリンダを有し、前記操作部は、前記エアシリンダを駆動させる第2空圧回路を有する、請求項1または請求項2に記載の荷役物運搬機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷役物を運搬する荷役物運搬機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、荷役物を運搬するための荷役物運搬機には、運搬中の荷役物の落下を防止する落下防止安全機構が取り付けられている。
【0003】
従来の落下防止安全機構には、電気式の安全回路が用いられる場合がある。電気式の安全回路を用いる場合、電源が必要となり、作業場所が制限される。また、装置が高額となるほか、防爆環境では使用が制限される問題があった。
【0004】
そのため、空圧式の安全回路が用いた荷役物運搬機が提案されている。例えば、特許文献1では、空圧式の回路およびシリンダ圧力により解放する弁を用いて、大気解放時のみ荷役物の把持および解放の切替操作を有効化することで、シリンダ圧空供給下での荷役物の持ち上げ搬送中の誤操作による落下事故を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の荷役物運搬機では、例えば荷役物の下降途中等において、シリンダは大気解放中であるため、把持および解放の切替操作をした場合には荷役物は落下してしまう恐れがある。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、空圧回路を用いた、運搬中の荷役物の落下を抑制することが可能な荷役物運搬機を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、荷役物を運搬する荷役物運搬機であって、ハンド機構と、上記ハンド機構の昇降を行う昇降機構と、を有し、上記ハンド機構は、上記昇降機構から吊り下げられた操作部と、上記操作部との上下方向における距離が変動可能に、上記操作部から吊り下げられ、上記荷役物を把持する把持機構を有する把持部と、を有し、上記ハンド機構は、上記把持機構を駆動する第1空圧回路を有し、上記操作部および上記把持部のいずれか一方は、上記第1空圧回路に接続された、上記操作部と上記把持部との上下方向における距離が小さいと下流側に圧縮空気を供給し、上記操作部と上記把持部との上下方向における距離が大きいと上記圧縮空気を遮断する着地検知バルブを有し、上記操作部は、上記第1空圧回路の上記着地検知バルブよりも下流側に接続され、上記荷役物を把持可能とする手動スイッチを有する把持用メカニカルバルブと、上記荷役物を解放可能とする手動スイッチを有する解放用メカニカルバルブと、を有する、荷役物運搬機を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、防爆環境でも使用可能である空圧回路を用いた、運搬中の荷役物の落下を抑制することが可能な荷役物運搬機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の荷役物運搬機の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本開示におけるハンド機構の一例を示す概略正面図および概略断面図である。
【
図4】本開示の荷役物運搬機の荷役物を運搬する場合の作動機構を例示した概略断面図である。
【
図5】本開示の荷役物運搬機の荷役物を運搬する場合の作動機構を例示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
以下、本開示の荷役物運搬機について説明する。
図1は、本開示の荷役物運搬機の一例を示す概略斜視図である。
図1に示すように、本開示の荷役物運搬機1は、ハンド機構2と、ハンド機構2の昇降を行う昇降機構21と、を有する。ハンド機構2は、昇降機構21からワイヤ8によって吊り下げられた操作部3と、操作部3との上下方向における距離が変動可能に操作部3から吊り下げられ、荷役物を把持する把持機構を有する把持部4と、を有する。
【0014】
図2(a)は、本開示におけるハンド機構の概略正面図である。
図2(b)、(c)は、本開示におけるハンド機構の概略断面図である。
図2(b)、(c)に示すように、ハンド機構2の把持部4は、2本のヒンジピン9により、操作部3から吊下げられるように接続されていてもよい。
図3は、ハンド機構における空圧回路の概略図である。
図3に示すように、ハンド機構2は、把持部4の把持機構41を駆動する第1空圧回路C1を有している。
【0015】
図2(b)および(c)に示すように、操作部3は、着地検知バルブ5を有する。着地検知バルブ5は、
図2(b)に示すように操作部3と把持部4との上下方向における距離が大きい場合と、
図2(c)に示すように操作部3と把持部4との上下方向における距離が小さい場合とで、下流側への圧縮空気の供給と遮断が切り替わるバルブである。
【0016】
着地検知バルブ5は、操作部3と把持部4との間の距離が小さいと開状態となり、
図3に示すように、圧縮空気供給源からの圧縮空気を下流側(具体的には、把持用メカニカルバルブ6および解放用メカニカルバルブ7)に流す。一方、操作部3と把持部4との間の距離が大きいと閉状態となり、圧縮空気が遮断される。着地検知バルブ5は、
図2に示すように操作部3に設けられていてもよいし、把持部4に設けられていてもよい。
【0017】
図3に示すように、操作部3は、着地検知バルブ5よりも下流側に接続された、荷役物Xを把持可能な手動スイッチを有する把持用メカニカルバルブ6と、荷役物Xを解放可能な手動スイッチを有する解放用メカニカルバルブ7を有する。操作部3は、把持用メカニカルバルブ6または解放用メカニカルバルブ7を通って供給される圧空により開閉される第1空気作動弁10を有することが好ましい。
【0018】
本開示における荷役物運搬機の作動機構について、詳述する。
図4および
図5は、
図1から
図3に示す本開示における荷役物運搬機1を用いて、荷役物Xを運搬する場合の作動機構を例示した概略断面図である。
【0019】
まず、
図4(a)に示すように、荷役物Xの把持前には、ハンド機構2は、ワイヤ8によって宙吊り状態となっている。また、
図4(a)においては、把持部4は、接続部材としての2本のヒンジピン9により、操作部3から吊下げられた状態となっている。
【0020】
続いて、
図4(b)に示すように、荷役物Xを把持するにあたり、作業者は、操作部3に配置された持ち手11を掴み、ハンド機構2を荷役物Xに上から押し当てる。このとき、ヒンジピン9も操作部3に押し込まれ、操作部3と把持部4との上下方向における距離が小さくなり、着地検知バルブ5のスイッチ5aが押され、開状態(ON状態)となる。これにより、
図3に示すように、ラインL1およびラインL2を通じて、着地検知バルブ5よりも下流側の把持用メカニカルバルブ6および解放用メカニカルバルブ7に圧縮空気(信号エア)が供給される。この状態において、作業者が、
図2(a)に示す操作部3の側面s2に設けられた把持用メカニカルバルブ6の手動スイッチ6aを押して開状態(ON状態)に切り替えることにより、
図3に示すように、ラインL3を通じて、第1空気作動弁10を開状態に切り替える。これにより、ラインL5、ラインL6を通じて把持機構41に圧縮空気(作動エア)の供給が行われ、荷役物が把持される。
【0021】
荷役物の把持後、作業者は、
図4(c)に示すようにハンド機構2を持ち上げる。
図4(c)に示すように、ハンド機構2が宙吊り状態となり、ヒンジピン9が操作部3から引き抜かれる。これにより、操作部3と把持部4との上下方向における距離が大きくなり、着地検知バルブ5が閉状態(OFF状態)となる。これにより、圧縮空気(信号エア)が遮断される。
【0022】
次に、荷役物Xを上昇させ、所定の位置まで移動させ、下降させる。このとき、作業者は、操作部3に設けられたエアシリンダ操作用バルブ13を操作して切り替え、
図3に示す第2空気作動弁14へ供給する圧空を切り替えることで、エアシリンダ21の上昇および下降を切り替えることができる。
【0023】
この搬送の間(上昇、移動および下降の間)、
図3における着地検知バルブ5が閉状態となっているため、操作部に配置された、解放用メカニカルバルブ7への圧空供給が遮断される。そのため、この時作業者は、
図2(a)に示す解放用メカニカルバルブ7の手動スイッチ7aを誤って押して開状態としたとしても、第1空気作動弁10を切り替えることができないため、把持部4の把持機構41への圧縮空気(作動エア)の供給を解除することができない。したがって、荷役物搬送中の誤操作による把持部の解除とそれに伴う荷役物の落下事故を防止することができる。
【0024】
搬送後、荷役物を所定の位置で解放するにあたり、作業者は、
図5(a)に示すように、ハンド機構2を荷役物Xに上から押しあてる。この時、
図4(b)における把持開始と同様にヒンジピン9が操作部3に押し込まれる形となり、操作部3と把持部4との上下方向における距離が小さくなり、着地検知バルブ5のスイッチ5aが押され、開状態(ON状態)となる。これにより、着地検知バルブ5よりも下流側(具体的には、把持用メカニカルバルブ6および解放用メカニカルバルブ7)に圧縮空気(信号エア)が供給される。このとき作業者は、解放用メカニカルバルブ7の手動スイッチを操作し切り替えることで、第1空気作動弁10を切り替えて、把持部4の把持機構41への圧縮空地の供給を解除し、荷役物を解放できる。
【0025】
次いで、解放完了後、
図5(b)に示すように、ハンド機構2を持ち上げ、
図4(a)に示す把持前の状態に戻る。次の荷役物へ移動し、把持開始以降を繰り返し、荷役物搬送を続けることができる。
【0026】
上述したように、本開示によれば、ハンド機構が把持機構を駆動するための第1空圧回路を有し、操作部および把持部のいずれか一方は、着地検知バルブを有する。着地検知バルブを有することで、操作部3と把持部4との上下方向における距離が小さい間(例えば、操作部と把持部とを上下に連結するヒンジピンを押し込む間)だけ、把持部操作用メカバルブ(把持用メカニカルバルブおよび解放用メカニカルバルブ)に圧縮空気が供給される。一方、それ以外の時には、圧縮空気が遮断される。具体的には、荷役物が宙吊りの状態(例えば、ヒンジピンが抜かれた状態)の場合、把持部操作用メカバルブ(把持用メカニカルバルブおよび解放用メカニカルバルブ)への圧縮空気が遮断され、荷役物の把持操作および解放操作ができなくなる。
【0027】
このように、ハンド機構を荷役物に押し付けた状態となって初めて、荷役物の把持操作および解放操作が可能となる。従って、本開示によれば、荷役物が宙に浮いているか、または、着地しているか、を判別することが可能となり、着地時のみ把持および解放の切替操作を有効化することができる。そのため、荷役物の支えが無い状態からの誤操作による落下事故を根本から防止できる。従って、運搬中の荷役物の落下を抑制することが可能な荷役物運搬機となる。
【0028】
以下、本開示における荷役物運搬機の各構成及び特性について、詳細に説明する。
【0029】
1.ハンド機構
本開示におけるハンド機構2は、荷役物の把持、運搬および解放を行う。
図1および
図2に示すように、ハンド機構2は、昇降機構21から吊り下げられており、昇降機構21によって上下方向に昇降可能となっている。本開示において、ハンド機構は、昇降機構から吊り下げられていればよく、吊り下げの態様は特に限定されないが、
図1および
図2に示すように、ワイヤ8により吊り下げられていることが好ましい。
【0030】
(1)操作部および把持部
図1および
図2に示すように、ハンド機構2は昇降機構21から吊り下げられた操作部3を有する。操作部の形状は、特に限定されず、例えば、
図1に示すように、上面および下面、4つの側面s1~s4を有する略直方体であることが好ましい。
図1および
図2に示すように、操作部3の対向する一組の側面s1およびs3には、作業者が掴んでハンド機構2を移動させるための持ち手11が取り付けられていることが好ましい。また、上記側面s1、s3とは異なる側面s2には、補助持ち手12が取り付けられていることが好ましい。また、
図2に示すように、操作部3の側面s2には、後述する把持用メカニカルバルブ6の手動スイッチ6aおよび解放用メカニカルバルブ7の手動スイッチ7a1,7a2が配置されていることが好ましい。
【0031】
図1および
図2に示すように、ハンド機構2は、把持機構を有する把持部4を有する。把持部4は、把持部4と操作部3との上下方向における距離が変動可能なように、操作部3に吊り下げられている。把持部4と操作部3とは、接続部材を介して接続していることが好ましい。接続部材としては、ハンド機構を荷役物に押し付けたときに、把持部と操作部との上下方向における距離が小さくなり、ハンド機構が宙吊り状態の時に、上記距離が大きくなるように接続可能な部材であれば、特に限定されない。
【0032】
例えば、
図2(b)に示すように、把持部4は、接続部材としての2本のヒンジピン9、9によって操作部3から吊り下げられることによって、操作部3との距離が変動可能に接続されていてもよい。
図2(b)に示すように、2本のヒンジピン9、9は、一方の端部E1に拡径部を有するピンである。ヒンジピン9、9は、操作部3に設けられた孔に挿通され、拡径部が操作部3に支持されることによって、吊り下げっていることが好ましい。また、ヒンジピン9、9の他方の端部E2は、把持部4が固定されている板状部材14に固定されていることが好ましい。
【0033】
接続部材は、ヒンジピンに限定されず、操作部に一端が固定され、把持部に他端が固定された紐等であってもよい。
【0034】
把持部4は、2つ以上の接続部材で、操作部3から吊り下げられていることが好ましい。ハンド機構が宙吊り状態の際に、把持部が回転することや、把持部がずれることを抑制することが可能となる。中でも、
図2(b)に示すように、2本のヒンジピン9、9により、操作部3から吊り下げられていることが好ましい。
【0035】
把持部4と操作部3との上下方向における距離とは、例えば、把持部4の上面中心と操作部の下面中心との間の距離をいう。
【0036】
把持部の形状としては、荷役物の形状および把持の方法によって適宜変更される。例えば、荷役物が中空円筒状である場合、把持部の形状としては、例えば、中空部に挿通可能な円柱状が挙げられる。この場合、把持機構としては、例えば、拡径して荷役物を把持する機構が挙げられる。一方、荷役物の外周面を挟んで掴む機構を有していても良い。把持機構には、例えば、エアシリンダ、エアバルーン等が使用される。
【0037】
(2)第1空圧回路
図3に示すように、ハンド機構2は、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気が流れる空圧回路Cを有する。空圧回路Cは、把持部4の把持機構41を駆動する第1空圧回路C1を有する。第1空圧回路C1は、例えば、信号エアを供給する信号エア供給ラインL1~L4、および、把持部4の把持機構41に作動エアを供給する供給ラインL5、L6を有する。さらに、第1空圧回路C1は、例えば、後述する着地検知バルブ5、把持用メカニカルバルブ6、解放用メカニカルバルブ7、および第1空気作動弁10を有する。
【0038】
(3)着地検知バルブ
操作部および把持部のいずれか一方は、第1空圧回路に接続された着地検知バルブを有する。着地検知バルブは、把持部と操作部との上下方向における距離が小さいと開状態となり、圧縮空気供給源からの圧縮空気を下流側に流し、操作部と把持部との上下方向における距離が大きいと閉状態となり、圧縮空気を遮断するバルブである。着地検知バルブは、操作部と把持部との上下方向における距離が小さくなることにより、ボタン、レバー等のスイッチが操作されることで圧縮空気の供給を行うメカニカルバルブであることが好ましい。スイッチは、押圧式であることが好ましい。
図2に示すように、操作部3が着地検知バルブ5を有することが好ましい。
【0039】
例えば、操作部と把持部との上下方向における距離が大きいとは、
図2(b)に示すように、ハンド機構2が宙吊り状態の場合における操作部3と把持部4との上下方向における距離D
0をいい、操作部と把持部との上下方向における距離が小さいとは、
図2(c)に示すように、ハンド機構2を完全に荷役物Xに押し込んだ場合における操作部3と把持部4との上下方向における距離D
1をいう。
【0040】
(4)把持用メカニカルバルブおよび解放用メカニカルバルブ
操作部3は、
図3に示すように、着地検知バルブ5よりも下流側に接続され、荷役物を把持可能とする手動スイッチを有する把持用メカニカルバルブ6と、着地検知バルブ5よりも下流側に接続され、荷役物を解放可能とする手動スイッチを有する解放用メカニカルバルブ7と、を有する。把持用メカニカルバルブ6および解放用メカニカルバルブ7は、それぞれ、着地検知バルブ5と第1空気作動弁10との間に並列的に配置されていることが好ましい。また、
図2(a)に示されるように、操作部3の側面s2には、把持用メカニカルバルブ6の手動スイッチ6aおよび解放用メカニカルバルブ7の手動スイッチ7a(7a1,7a2)が配置されていることが好ましい。
【0041】
操作部3は、2つの解放用メカニカルバルブを有していることが好ましい。更に、この2つの解放用メカニカルバルブは、第1空圧回路において直列に配置されていることが好ましい。直列に配置することにより、2つの解放用メカニカルバルブの両方を同時に開状態とすることで初めて、荷役物が解放可能となる。この場合、
図2(a)に示すように、操作部3の1つの側面s2には、2つの解放用メカニカルバルブのそれぞれの手動スイッチ7a1,7a2が左右に配置されていることが好ましい。このように配置することにより、作業者は両手で、2つの解放用メカニカルバルブの手動スイッチ7a1,7a2の両方を同時に押すことにより、空気作動弁10に信号エアが供給される。そのため、把持部を手で持ち上げてしまうこと等によって引き起こされる誤作動を抑制することができる。
【0042】
(5)第1空気作動弁
操作部3は、第1空気作動弁を有していることが好ましい。第1空気作動弁は、
図3に示すように、把持用メカニカルバルブ6および解放用メカニカルバルブ7と、把持部4における把持機構41との間に配置されることが好ましい。第1空気作動弁は、把持用メカニカルバルブ6または解放用メカニカルバルブ7から供給される圧縮空気(信号エア)によって、開閉が行われる。具体的には、把持用メカニカルバルブ6から供給された圧縮空気が所定の量以上となった場合に、開状態となり、L5から供給された圧縮空気(作動エア)が把持部4の把持機構41に供給される。また、解放用メカニカルバルブ7から供給された圧縮空気が所定の量以上となった場合に、閉状態となり、L5から供給された圧縮空気(作動エア)の把持部4の把持機構41への供給が遮断される。
【0043】
(6)第2空圧回路C2
昇降機構がエアシリンダを含む場合、
図3に示すように、操作部3は、エアシリンダを駆動させる第2空圧回路C2を有することが好ましい。第2空圧回路C2は、エアシリンダ操作用バルブ13および第2空気作動弁14を有することが好ましい。エアシリンダ操作用バルブ13は、第2空気作動弁14へ供給する圧縮空気の切り替えを行うメカニカルバルブであることが好ましい。第2空気作動弁14は、エアシリンダ操作用バルブ13を通って供給される圧縮空気によって、エアシリンダ21の上昇および下降を切り替える。この場合、
図2(a)に示すように、操作部の側面s2には、エアシリンダ操作用バルブ13のレバー13aが配置されていることが好ましい。レバー13aは上方に倒すと、ハンド機構2が上昇し、下方に倒すとハンド機構2が下降する。
【0044】
第2駆動空圧回路C2は、例えば、信号エアを供給するラインL11、および、ハンド機構2を昇降させるための作動エアをエアシリンダ21に供給するラインL12を有する。
【0045】
2.その他の構成
図1に示すように、本開示の荷役物運搬機1は、ハンド機構2の昇降を行う昇降機構21を有する。昇降機構としては、例えば手動等のように電気的な機構を用いずにハンド機構を昇降させることが可能であれば特に限定されないが、エアシリンダを有することが好ましい。エアシリンダによるエア駆動式とすることで、防爆仕様とすることができる。また、昇降機構としては、手動によりハンド機構を昇降させる機構であってもよい。このように、本開示の荷役物運搬機は、防爆環境でも使用が可能なように、電気的な機構が一切用いられていないものであることが好ましい。
【0046】
図1に示すように、本開示の荷役物運搬機1は、昇降機構21およびハンド機構2を支持する支柱20を有することが好ましい。支柱は、上下方向に延伸する部材であれば、特に限定されない。また、昇降機構21は支柱20に固定して配置されていることが好ましい。支柱20には、ワイヤ8を支持するアーム22が水平方向に回転可能に取り付けられていることが好ましい。昇降機構21とハンド機構2とが、アーム上22を通るワイヤ8を介して接続されていることにより、荷役物の運搬が容易となる。
【0047】
荷役物の形状は、特に限定されないが、例えば、中空円筒状、円柱状、四角柱状等が挙げられる。荷役物の重量は、特に限定されないが、例えば、0kgより大きく、20kg以上であってもよい。一方、例えば、100kg以下であり、50kg以下であってもよい。
【0048】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【0049】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0050】
[1]
荷役物を運搬する荷役物運搬機であって、
ハンド機構と、前記ハンド機構の昇降を行う昇降機構と、を有し、
前記ハンド機構は、
前記昇降機構から吊り下げられた操作部と、
前記操作部との上下方向における距離が変動可能に、前記操作部から吊り下げられ、前記荷役物を把持する把持機構を有する把持部と、を有し、
前記ハンド機構は、前記把持機構を駆動する第1空圧回路を有し、
前記操作部および前記把持部のいずれか一方は、
前記第1空圧回路に接続された、前記操作部と前記把持部との上下方向における距離が小さいと開状態となり、前記操作部と前記把持部との上下方向における距離が大きいと閉状態となる着地検知バルブを有し、
前記操作部は、前記第1空圧回路の前記着地検知バルブよりも下流側に接続され、開状態とすることにより前記荷役物を把持可能とする把持用メカニカルバルブと、開状態とすることにより前記荷役物を解放可能とする解放用メカニカルバルブと、を有する、荷役物運搬機。
【0051】
[2]
前記操作部は、直列接続された2つの前記解放用メカニカルバルブを有する、[1]に記載の荷役物運搬機。
【0052】
[3]
前記操作部および前記把持部は、2本のヒンジピンによって接続されている、[1]または[2]に記載の荷役物運搬機。
【0053】
[4]
前記昇降機構がエアシリンダを有し、前記操作部は、前記エアシリンダを駆動させる第2空圧回路を有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の荷役物運搬機。
【符号の説明】
【0054】
1 … 荷役物運搬機
2 … ハンド機構
3 … 操作部
4 … 把持部
5 … 着地検知バルブ
6 … 把持用メカニカルバルブ
7 … 解放用メカニカルバルブ
8 … ワイヤ
9 … 接続部材(ヒンジピン)
10… 第1空気作動弁
21… 昇降機構(エアシリンダ)