IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナカニシの特許一覧

<>
  • 特開-生検針 図1
  • 特開-生検針 図2
  • 特開-生検針 図3
  • 特開-生検針 図4
  • 特開-生検針 図5
  • 特開-生検針 図6
  • 特開-生検針 図7
  • 特開-生検針 図8
  • 特開-生検針 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151390
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】生検針
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/02 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61B10/02 110H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064590
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000150327
【氏名又は名称】株式会社ナカニシ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(57)【要約】
【課題】組織内に容易に穿刺でき、確実に組織を採取できる生検針を提供する。
【解決手段】生検針1は、細長の挿入部と、挿入部の先端に取り付けられた組織採取部20とを備える。組織採取部は、尖った先端と、先端から延びる刃23とを有し、先端部が筒状の第一部材21と、尖った先端431を有して第一部材に対して回動可能に取り付けられた第二部材41と、を有して開閉可能に構成されている。組織採取部の閉状態において、第二部材の先端は、第一部材の刃より低い位置にある。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長の挿入部と、
前記挿入部の先端に取り付けられた組織採取部と、
を備え、
前記組織採取部は、
尖った先端と、前記先端から延びる刃とを有し、先端部が筒状の第一部材と、
尖った先端を有して前記第一部材に対して回動可能に取り付けられた第二部材と、
を有して開閉可能に構成され、
前記組織採取部の閉状態において、前記第二部材の先端が、前記第一部材の刃より低い位置にある、
生検針。
【請求項2】
前記第二部材は、一方の側に凹状の曲面を有し、他方の側に前記第二部材の先端に連なる斜面を有し、
前記曲面を前記第一部材の内面に向けた状態で前記第一部材に取り付けられている、
請求項1に記載の生検針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学内視鏡や超音波内視鏡等の観察下で使用される生検針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療器具を体内に導入し、各種組織を採取することが行われている。組織採取に用いられる医療器具の一つとして、経内視鏡的に体内に導入される生検針が知られている。生検針は、一般的に中空であり、先端に開口を有する。このような生検針を組織に刺すと、針の内部に組織が進入する。針を組織から抜くと、針とともに進入した組織を回収できる。
【0003】
中空の生検針を組織に刺すと、中空針により組織に円筒形の切込みが生じ、円柱形の組織片が針の内部に進入する。しかし、進入した組織は、中空針の前方で他の組織とつながっているため、進入した組織をすべて回収することが困難である。
【0004】
上記問題に関連して、特許文献1には、一対の先端処置部材を備える医療用処置具が記載されている。先端処置部材は、前方に向けて鋭く尖っている。一対の先端処置部材が閉じた状態で組織に突き刺し、組織内で先端処置部材を開き、さらに押し込んでから閉じることにより、一対の先端処置部材内に組織を採取できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-201939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の医療用処置具は、一対の先端処置部材が閉じることにより穿刺部が構成され、先端部を一致させる機械的精度に限度があるため、組織に穿刺する際の抵抗が大きくなる。また、一対の先端処置部材の両方が回動する両開き構造であるため、実際には組織の中で開きにくい。さらに、一対の先端処置部材が開いた状態で奥深く刺そうとすると、組織から受ける反力が一対の先端処置部材をさらに開く方向に作用するため、抵抗が著しく大きくなる。
以上の要因により、特許文献1に記載の医療用処置具を組織に穿刺して組織を採取することは、実際には困難であり、組織の硬さ等によっては全く採取ができない事態も生じうる。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、組織内に容易に穿刺でき、確実に組織を採取できる生検針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、細長の挿入部と、挿入部の先端に取り付けられた組織採取部とを備える生検針である。
組織採取部は尖った先端と、先端から延びる刃とを有し、先端部が筒状の第一部材と、尖った先端を有して第一部材に対して回動可能に取り付けられた第二部材と、を有して開閉可能に構成されている。
組織採取部の閉状態において、第二部材の先端は、第一部材の刃より低い位置にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生検針は、組織内に容易に穿刺でき、確実に組織を採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る生検針の全体図である。
図2】同生検針の組織採取部の拡大斜視図である。
図3】同組織採取部の拡大側面図である。
図4】同組織採取部を構成する第一部材を示す図である。
図5】同組織採取部を構成する第二部材を示す図である。
図6】同組織採取部の拡大断面図である。
図7】同生検針の使用時の一過程を示す図である。
図8】同生検針の使用時の一過程を示す図である。
図9】本発明の変形例に係る生検針の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る生検針について、図1から図8を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る生検針1の全体図である。図1に示すように、生検針1は、長尺の挿入部10と、挿入部10に挿通された組織採取部20と、挿入部10および組織採取部20の基端側に設けられた操作部70とを備えている。
【0012】
挿入部10は、内視鏡に形成されたチャンネルに通される部位であり、組織採取部20と接続される内シース11と、内シース11が通される外シース12とを有する。内シース11および外シース12は、いずれも管状に形成されており、可撓性を有する。本実施形態の内シース11および外シース12は、図1に示すように、いずれも公知のコイルシースで構成されているが、パイプやチューブなど他の材料で形成されてもよい。
【0013】
内シース11は操作部70と接続されており、操作部70に対して相対移動しないが、外シース12は操作部70に接続されていない。したがって、内シース11と外シース12とは、挿入部10の長手方向において相対移動可能である。したがって、内シース11を外シース12に対して後退させることにより、組織採取部20を外シース12内に収容し、内視鏡のチャンネル内壁との接触(特に内視鏡が蛇行している際の)を防止することができる。上記相対移動を容易にするために、外シースの手元型端部(基端部)に、ツマミなどを設けてもよい。
【0014】
図2は、組織採取部20の拡大斜視図であり、図3は組織採取部20の拡大側面図である。組織採取部20は、内シース11と接続された第一部材21と、第一部材21に取り付けられた第二部材41とを備えている。
【0015】
図4に第一部材21を上方から見た形状を示す。第一部材21は、円筒状のパイプの前端部を斜めに切り落とした一般的な注射針に近い外形を有しており、尖った先端を有する。さらに、前端部の端面が加工されて先端から延びる2つの刃22、23が形成されている。
第一部材21の長手方向中間部には、上下方向に貫通するスリット24が形成されており、このスリット24によって、後述する第二部材41及びリンクの動作が可能となっている。長手方向中間部の外面には、周方向に延びる複数の溝25が形成されており、超音波を反射しやすくなっている。これにより、超音波内視鏡によって生体内における組織採取部20の位置を特定しやすい。
【0016】
図5に第二部材41の形状を示す。第二部材41は、ベース42と、ベース42の前側に設けられたカップ部43と、ベース42の後側に設けられた回動接続部44とを有する。
ベース42は、軸孔42aを有し、図2および図3に示すように、軸部材51を介して第一部材21に取り付けられる。
【0017】
カップ部43は、尖った先端431と、平坦な斜面432(図2参照)とを有する。斜面432はベース42から先端431まで延びている。斜面432の反対側は凹状の曲面433となっており、一定量の試料を収容可能となっている。曲面の態様は、試料を収容できる空間を形成できれば特に制限はないが、本実施形態の曲面433は、先端431とベース42とを結ぶ方向に延びる樋状であるため、ボールエンドミルで形成でき、製造しやすい。
【0018】
回動接続部44は、間隔を空けて位置する2つの板状部441、442を有する。板状部441、442には軸孔が設けられている。
【0019】
図6に、組織採取部20の断面図を示す。
第二部材41は、ベース42が第一部材21に取り付けられているため、軸部材51を中心として、第一部材21に対して回動可能である。
回動接続部44の板状部441、442間には、リンク52の前側が進入しており、軸部材53によって第二部材41とリンク52とが相対回動可能に連結されている。
リンク52の後側は、軸部材53によって操作ワイヤ61の先端に取り付けられた接続部材62と、相対回動に連結されている。操作ワイヤ61は、内シース11内を通って操作部70まで延びている。
【0020】
第二部材41は、曲面433を第一部材21側に向けた状態で第一部材21に取り付けられている。図4に示すように、第二部材の先端431を第一部材21の内面に最も接近させた状態において、先端431は第一部材21の刃22、23よりも下側に位置している。すなわち、組織採取部20の上下方向において、先端431は、第一部材の先端と刃22、23との間にあり、刃22、23よりも低い位置にある。したがって、この状態における組織採取部20の側面視においては、図3に示すように、先端431は第一部材21から突出しておらず、視認できない。
【0021】
操作部70は、図1に示すように、細長の本体71と、本体71に取り付けられたスライダ72とを有する。本体71の先端部には、内シース11の基端部が接続されている。スライダ72は、本体71に対して本体71の長手方向に摺動可能に取り付けられている。
【0022】
スライダ72には、内シース11を通った操作ワイヤ61が接続されているため、スライダ72を操作することにより、操作ワイヤ61を内シース11内で進退させることができる。この操作により、第二部材41が第一部材21に対して軸部材51まわりに回動し、組織採取部20を開閉させることができ、操作ワイヤ61が内シース11に対して最も後退されたときに、組織採取部20が図4に示す状態となる。以降の説明において、この状態を組織採取部20の「閉状態」と称することがある。
【0023】
上記のように構成された生検針1の使用時の動作について説明する。
使用者は、図示しない内視鏡を患者の体内に挿入し、処置対象部位の付近に内視鏡の先端部を接近させる。使用者は、内視鏡の操作部に開口する鉗子口から生検針1を挿入し、内視鏡の処置具チャンネル内に生検針1を挿通する。生検針1は、内視鏡を患者の体内に挿入する前に処置具チャンネルに挿通されてもよい。
対象部位としては、粘膜下、肝臓、膵臓等に生じた腫瘍もしくはその疑いがある部位等を例示できる。
【0024】
生検針1を鉗子口に挿入する際、使用者は、スライダ72を操作して組織採取部20を閉状態とする。さらに、組織採取部20を外シース12に対して後退させ、組織採取部20が完全に外シース12内に収容された状態にしてから挿入する。これにより、内視鏡のチャンネル内面を保護し、かつ生検針1のチャンネル内における引っ掛かりを防止できる。
【0025】
使用者は、処置具チャンネル内で生検針1を内視鏡の先端側に向かって移動(前進)させる。外シース12の先端部が内視鏡の先端に開口した処置具チャンネルから突出したら、使用者は外シース12を内シース11に対して後退させる。その結果、組織採取部20が外シース12から突出する。
【0026】
使用者は、処置対象の組織(以下、対象組織)を観察しながら、内視鏡あるいは生検針1を操作して、閉状態の組織採取部20を対象組織に刺入する。
組織採取部20の閉状態において、第二部材41の先端431は、刃22、23よりも下方に位置するため、刃22、23が設けられた範囲においては、常に第一部材21が先に組織と接触する。したがって、先端431が組織と接触することにより組織採取部20から組織に加えられる押圧力が分散したり、先端431が組織に対して引っ掛かりを生じたりすることがなく、好適に対象組織に刺さる。
【0027】
発明者は、上述した「一般的な注射針」を密な組織に刺入する場合、斜めに切り落とされた先端側端面の最も後ろ側の部分と注射針の内面とで形成されるエッジが組織に引っ掛かりやすく、先端面全体を組織内に進入させるために大きな抵抗を生じることがあることを見出している。
しかし、本実施形態に係る組織採取部20においては、第一部材21にスリット24が設けられることにより上述したエッジがなくなっており、さらに、エッジがあった部位を埋めるように第二部材41が配置され、斜面432が前方に向かってなだらかに延びている。これにより、第一部材21の先端面後部が組織内に進入する際の抵抗は「一般的な注射針」に比べて著しく低減されており、スムーズに刺すことができる。
【0028】
図7に示すように、組織採取部20が概ね対象組織Ts内に進入したら、使用者はスライダ72を本体71に対して前進させる。
すると、カップ部43の先端431が第一部材21から遠ざかる方向に第二部材41が回動し、図8に示すように、組織採取部20が開く。組織採取部20が開きにくい等の場合は、一旦組織採取部20をわずかに後退させてからスライダ72を操作してもよい。
【0029】
続いて使用者は、スライダ72の位置を保持しながら、生検針1全体を前進させる。すると、組織採取部20が開いた状態で対象組織Ts内を前進する。
組織採取部20が対象組織Ts内で前進すると、対象組織Tsの一部が第一部材21と第二部材41との間に進入する。この状態で、使用者がスライダ72を本体71に対して後退させると、カップ部43が第一部材21に接近する方向に第二部材41が回動し、組織採取部20が再び閉状態となる。その結果、曲面433により形成されたカップ部43の空間内に位置する組織が周囲の組織から切り離されて空間内に収容される。
使用者は、内視鏡および生検針1を体外に抜去して組織採取の手技を終了する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の生検針1においては、第一部材21が組織に刺入しやすく構成されている。
【0031】
また、第一部材21の先端部が筒状であるため、組織採取部20の前方から組織が容易に第一部材21内に進入できる上、第二部材41のカップ部43の寸法を大きく設定できる。その結果、生検を行うために十分な量の組織をカップ部の曲面433で囲まれた空間に収容して採取できる。
【0032】
さらに、開閉可能に構成された組織採取部20の第一部材21および第二部材41が、いずれも尖った先端を有する。したがって、組織採取部20が採取対象の組織内で少し開いた状態でも小さい抵抗で前進させて第一部材21内に組織を導入できる。
【0033】
上述した作用により、本実施形態の生検針1は、対象組織に刺入して操作することにより、一定量の組織を安定して確実に採取することができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0035】
例えば、上述した実施形態は、スライダを本体に対して前進させると組織採取部20が開き、本体に対して後退させると組織採取部20が閉じる構成であるが、操作ワイヤと第二部材との接続態様を変更することで、スライダを本体に対して後退させると組織採取部20が開き、スライダを本体に対して後退させると組織採取部20が閉じる構成とすることができる。
【0036】
上述した実施形態では、第一部材の刃が設けられた範囲全体において、第二部材の斜面が刃よりも下方に位置していたが、これは必須ではない。したがって、図9に示す変形例の第二部材41Aのように、刃が設けられた範囲の一部において斜面432Aが突出するような構成であってもよい。この場合でも、引っ掛かりを生じやすいエッジがなくなり、その部分を第二部材41Aが埋めているため、同様に好適な組織刺入性を発揮する。
【符号の説明】
【0037】
1 生検針
10 挿入部
20 組織採取部
21 第一部材
22、23 刃
41 第二部材
43 カップ部
431 先端(第二部材の)
432 斜面
433 曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9