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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151394
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】DBFレーダ受信機
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/292 20060101AFI20241018BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20241018BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20241018BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01S7/292 200
G01S7/02 216
G01S7/03 220
H04B1/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064603
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】吉野 長浩
【テーマコード(参考)】
5J070
5K052
【Fターム(参考)】
5J070AD06
5J070AD09
5J070AH31
5J070AH40
5J070AK28
5K052BB02
5K052DD23
5K052FF32
5K052FF33
(57)【要約】
【課題】 従来のDBFレーダ受信機では、所望信号に折り返される不要信号やノイズを抑圧するため、フィルタの追加や受信機利得を上げるため増幅器を装荷する必要があった。これにより受信回路の規模の増加や消費電力が増加する問題が生じた。またノイズ対策として受信機利得を上げた場合、線形性が劣化するためトレードオフ関係の中で設計する必要があり、受信性能を確保しつつ、DBFレーダに要求される低いSWaP-Cを満足することは困難であった。
【解決手段】 アンダーサンプリングを用い、ADCのクロックの位相とNCOの位相を調整することで信号合成時に所望帯域のナイキストゾーンのみ加算し、折り返される不要波を無相関または打ち消す。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号に基づいて受信機からの出力信号をAD変換する複数のADC(Analog to digital converter)と、
ナイキスト周波数以下の周波数でアンダーサンプリングを用いて、前記クロック信号に基づいて前記それぞれのADCに入力される前記クロック信号の位相が互いに異なるように調整するADCクロック用移相器と、
入力信号の正弦波の波形を離散時間および離散値で表現して合成する複数のNCO(Numerically controlled oscillator)と、
前記クロック信号に同期して前記それぞれのNCOの出力信号の位相が異なるように調整するNCO用移相器と、
前記クロック信号を生成するとともに、前記それぞれのADCのクロック信号の位相と前記それぞれのNCOの出力信号の位相を対応付けて同期するクロック信号生成部と、
を備えることを特徴とするDBFレーダ受信機。
【請求項2】
前記複数のNCO及び複数のNCO用移相器を有して、前記それぞれのNCO用移相器で位相調整された前記それぞれのNCOの出力信号に基づいて前記それぞれのADCからのAD変換後信号を周波数変換するDDC(Digital Down Conversion)部を備えた請求項1記載のDBFレーダ受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DBF(Digital Beam Forming)レーダ用のDBFレーダ受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1にあるようなDBFは、アンテナ素子ごとに受信機 が配置される。感度の高いRF(Radio Frequency)受信回路とノイズ源となるスイッチング電源およびデジタル制御回路が高密度に実装される。そこで、ノイズ対策として、ノイズ抑圧フィルタの装荷や、受信信号とノイズレベルのレベル差を設けるため増幅器を装荷して、受信機の利得を上げる方法が考えられるが、回路規模と消費電力が増加する。
【0003】
DBFの受信機には、レーダの電波の目標からの反射信号と、目標以外の海面や地表等からのクラッタ等の反射信号のレベル差がつかずに入力される。そのため、目標信号を検出するためには、アナログ回路の線形性を高くする必要がある。アナログ回路の線形性を高くするには、高電圧および大電流が必要であることから、消費電力が増加する。ここで、線形性と受信機の利得には、トレードオフの関係があり、ノイズ対策を行って、受信機の利得を上げると、線形性が劣化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S.H.Talisa, K.W.O Haver,T.M.Comberiate,M.D.Sharp and O.F.Somerlock,Benefits of Digital Phased Array Radars,in Proceedings of the IEEE,vol.104,no.3,pp.530-543,March 2016,doi:10.1109/JPROC.2016.2515842.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に基づく従来のDBF受信機では、所望信号に折り返される不要信号やノイズを抑圧するため、フィルタの追加や受信機利得を上げるため増幅器を装荷する必要があった。これにより受信回路の規模の増加や消費電力が増加する問題が生じた。またノイズ対策として受信機利得を上げた場合、受信アナログ回路の線形性が劣化するため、トレードオフ関係の中で設計する必要があり、受信性能を確保しつつ、DBFレーダに要求される低いSWaP-C(Size(サイズ), Weight(重量), Power(電力), Cost(費用))を満足することは困難であるといった問題があった。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、受信アナログ回路
の利得/感度/線形性のトレードオフ関係を緩和し、受信機性能を確保しつつ、DBFレ
ーダに要求される低いSWaP-Cを有する受信機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のDBFレーダ受信機は、クロック信号に基づいて受信機からの出力信号をAD変換する複数のADC(Analog to digital converter)と、ナイキスト周波数以下の周波数でアンダーサンプリングを用いて、前記クロック信号に基づいて前記それぞれのADCに入力される前記クロック信号の位相が互いに異なるように調整するADCクロック用移相器と、入力信号の正弦波の波形を離散時間および離散値で表現して合成する複数のNCO(Numerically
controlled oscillator)と、前記クロック信号に同期して前記それぞれのNCOの出力信号の位相が異なるように調整するNCO用移相器と、前記クロック信号を生成するとともに、前記それぞれのADCのクロック信号の位相と前記それぞれのNCOの出力信号の位相を対応付けて同期するクロック信号生成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示のDBFレーダ受信機によれば、ADCのクロックの位相とNCOの位相を調整することで、信号合成時に所望の帯域のナイキストゾーンのみ加算し、折り返される不要信号を無相関にして打ち消すことにより、受信機の利得/感度/線形性のトレードオフ関係を緩和し、受信機性能を確保しつつ回路規模を縮小する。回路規模を縮小することで低いSWaP-Cを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来のDBFレーダ受信機の構成図である。
図2】従来のDBFレーダ受信機の受信特性図である。
図3】従来の受信機の回路構成図である。
図4】実施の形態1に係るDBFレーダ受信機の構成図である。
図5】実施の形態1に係るDBFレーダ受信機の受信特性図である。
図6】実施の形態1に係る受信機の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図では、同一又は相当する部分に同一の符号を付している。重複する説明は、適宜簡略化あるいは省略する。なお、以下に説明される実施の形態により本開示が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1図3を参照して、本開示の実施の形態1に係るDBFレーダ受信機1について説明する前に、従来のDBFレーダ受信機1について比較例として説明する。図1は、従来のDBFレーダ受信機の構成、図2は従来のDBFレーダ受信機の受信特性、図3は従来のアナログの受信機の回路構成、を示す図である。
【0012】
図1において、DBFレーダ受信機1は、アンテナ部2、受信機3、ADC4、第1のDCD部5a、合成部6、クロック信号生成部7、デジタル回路/電源回路9を備える。複数のDBFレーダ受信機1は、後段のDBF処理器13と接続されて、DBFレーダの一部を構成する。デジタル回路/電源回路9はDBFレーダ受信機1の所要の構成に電力を与える。
【0013】
図1では、DBFレーダ受信機1はDBFレーダ受信機#1~#3の3台の例を示しているが、1台以上であればよい。ここで、DBFレーダ受信機1は、RF信号をADC4で直接サンプリングするダイレクトサンプリングによる受信機構成であり、一般的なアンダーサンプリング技術を用いる。
【0014】
アンテナ部2の各アンテナ(アンテナ♯1~♯4)から得る所望信号は、受信機3に入力される。受信機3は、所望信号とデジタル回路/電源回路11から発生するノイズ、受信機3の高周波回路の非線形歪によって発生する高調波成分等を含んだ、実線で表されるA/D変換前信号10を、ADC4に入力する。ADC4は受信機3からのアナログ信号のA/D変換前信号10をデジタル信号のA/D変換後信号11に変換する。
【0015】
DBFレーダ受信機1において、クロック信号生成部7から同期信号をNCO(Numerically controlled oscillator)8に入力する。
【0016】
ADC4は、破線で表されるA/D変換後信号11を、第1のDDC(Digital
Down Conversion)部5に出力する。
【0017】
第1のDDC部5aは、各受信チャンネルにデジタル周波数変換器5bとNCO8を有している。デジタル周波数変換器5bは、NCO8からの出力信号に基づいてA/D変換後信号11のデジタル信号を周波数変換する。また、NCO8は、正弦波の波形を離散時間、離散値表現で生成するデジタルの出力信号を発生する発生器である。
【0018】
第1のDDC部5aからは、クロック信号生成部7で同期されたA/D変換後信号11から周波数変換した信号を、合成部6に入力する。合成部6からDBF処理器13に合成後信号12を入力する。DBF処理器13は入力された信号の位相をデジタル領域で調整し、同時に複数のアンテナビームを形成する。
【0019】
次に、従来のDBFレーダ受信機1の受信特性を図2により説明する。
【0020】
図2は、従来のDBFレーダ受信機の受信特性である。図2において、(a)A/D変換前の受信特性、(b)はA/D変換後の受信特性、(c)は合成後の受信特性である。図2の(a)~(c)横軸は周波数、縦軸は信号強度である。
【0021】
図2におけるfclkは、クロック周波数である。図2において、符号101は、帯域1を示すものであり、0以上fclk/2未満の帯域を持つ。符号102は、fclk/2以上fclk未満の帯域を示すものである。符号103は、fclk以上3fclk/2未満の帯域を示すものである。符号104は、3fclk/2以上2fclk未満の帯域を示すものである。また、符号105は、0以上fclk未満の帯域を示すものであると共に、信号合成時に無相関となりにくい帯域を示すものである。
【0022】
図2において、符号106は目標信号、符号107はスプリアス等の不要信号であり、不要信号は、複数発生している状況である。符号108aは合成後の第1のスプリアスである。
【0023】
図2(b)は、図2(a)の帯域102、帯域103、帯域104をアンダーサンプリングで折り返し、帯域101に重畳した受信特性である。
【0024】
図2(c)は、図2(b)のA/D変換後信号を合成した、合成後信号の受信特性を表す。図2(c)は、低い周波数帯域のスプリアスは無相関とならないため、合成すると、信号強度が増加し、目標信号が埋もれる傾向となる。
【0025】
ここで、受信機3の受信機回路構成を図3により説明する。図3は、従来の受信機回路構成である。図3において、受信機3は、VGA(Variable-Gain Amplifier、可変利得増幅器)201、AMP(Amplifier、増幅器)202、HPF(High Pass Filter、ハイパスフィルタ)203、BPF(Band-Pass Filter、帯域通過フィルタ)204からなる。
VGA201は、入力信号を増幅させる。AMP202は、入力信号を増幅させる。HPF203は、信号の高い周波数成分を抽出し、信号の低い周波数成分を遮断する。BPF204は、VGA出力の信号から特定の周波数帯の信号を抽出する。
【0026】
受信機3は、低次ナイキストゾーンのスプリアス対策に、AMP202、HPF203を使用している。
【0027】
図1では、受信機3は、ADC4、NCO8、NCO用移送器8、はそれぞれ4台の例を示しているが、それぞれ1台以上であればよい。
【0028】
次に、実施の形態1に係るDBFレーダ受信機を図4図6により説明する。図4は実施の形態1に係るDBFレーダ受信機の構成、図5は実施の形態1に係るDBFレーダ受信機の受信特性、図6は実施の形態1に係るアナログの受信機の回路構成、を示す図である。
【0029】
図4において、実施の形態1によるDBFレーダ受信機1は、アンテナ部2、受信機3、ADC4、第2のDDC部5c、合成部6、クロック信号生成部7、デジタル回路/電源回路9、ADCクロック用移相器14を備える。複数のDBFレーダ受信機1は、後段のDBF処理器13と接続されて、DBFレーダの一部を構成する。デジタル回路/電源回路9はDBFレーダ受信機1の所要の構成に電力を与える。図1と同様に、図4では、DBFレーダ受信機1はDBFレーダ受信機#1~#3の3台の例を示しているが、1台以上であればよい。
【0030】
アンテナ部2の各アンテナ(アンテナ♯1~♯4)から得る所望信号は、受信機3に入力される。受信機3は、所望信号とデジタル回路/電源回路11から発生するノイズ、受信機3の高周波回路の非線形歪によって発生する高調波成分等を含んだ、実線で表されるA/D変換前信号10を、ADC4に入力する。ADC4は、後述する第1のクロック信号により受信機3からのアナログ信号のA/D変換前信号10をデジタル信号のA/D変換後信号11に変換する。ADC4は、破線で表されるA/D変換後信号11を、第2のDDC部5cに出力する。
【0031】
第2のDDC部5cは、各受信チャンネルにデジタル周波数変換器5bとNCO8とNCO移相器15をそれぞれ有している。デジタル周波数変換器5bは、NCO8からの出力信号に基づいてA/D変換後信号11のデジタル信号を周波数変換する。また、NCO8は、正弦波の波形を離散時間、離散値表現で生成するデジタルの出力信号を発生する発生器である。
【0032】
第2のDDC部5cからは、クロック信号生成部7で同期されたA/D変換後信号11から周波数変換した信号を、合成部6に入力する。合成部6からDBF処理器13に合成後信号12を入力する。DBF処理器13は入力された信号の位相をデジタル領域で調整し、同時に複数のアンテナビームを形成する。
【0033】
実施の形態1のDBFレーダ受信機1において、各ADC4を駆動させるそれぞれの第1のクロック信号の経路に、それぞれADCクロック用移相器14を装荷する。ADCクロック用移相器14は、後述するクロック信号生成部7からの第2のクロック信号fclkに同期して、それぞれの第1のクロック信号の位相成分を調整する回路であり、各ADCに対応して、互いに異なる位相量を設定する。図4では、ADC4の各ADC(A/D変換器♯1~A/D変換器♯4)に対応して、ADCクロック用移相器14は、それぞれの第1のクロック信号の位相成分としてそれぞれ異なる位相量Φ1~Φ4を設定している。
【0034】
ここで、ADCクロック用移相器14のそれぞれの位相量は、所望帯域以外のナイキストゾーンの信号が無相関または打消し合うように設定する。ADCクロック用移相器14の位相は既知のため、ADC用クロックの位相成分とアンダーサンプリング後の信号の位相成分の関係から、所望のナイキストゾーンの信号のみ、合成部6で合成されるようDDC部5bの位相を設定する。そして、DDC部5bそれら所望のナイキストゾーンの信号を合成部6で合成し、合成後の信号12を、DBF処理器13に出力する。
【0035】
DDC部5bは、アンテナ部2の各アンテナ(アンテナ♯1~♯4)に対応したそれぞれの受信チャンネルにデジタル周波数変換器5bとNCO8、NCO用移相器15を有しており、DDC部5bの位相を設定するにはNCO用移相器15の位相量を設定する。例えば図4において、位相量Φ1’、Φ2’、Φ3’、Φ4’は、各位相量Φ1、Φ2、Φ3、Φ4にそれぞれ対応した位相補正がなされて設定される。
【0036】
クロック信号生成部7は、ADC4の位相と、NCO8の位相を同期する第2のクロック信号fclkに同期した同期信号を、ADCクロック用移相器14からDDC部5cに送信する。図4では、同期信号に基づき、NCO♯1~NCO♯4により、正弦波の波形を離散時間、離散値で表現して合成する。
【0037】
各ADC4は、破線で表されるA/D変換後信号11を、第2のDDC部5cにそれぞれ出力する。
【0038】
図4では、受信機3は、ADC4、NCO8、ADCクロック用移送器14、NCO用移送器15、はそれぞれ4台の例を示しているが、それぞれ1台以上であればよい。
【0039】
実施の形態1のDBFレーダ受信機1に関する受信特性を図5により説明する。図5は、実施の形態1のDBFレーダ受信機の受信特性である。
【0040】
図5は、実施の形態1に係るDBFレーダ受信機の受信特性である。図5において、(a)A/D変換前の受信特性、(b)はA/D変換後の受信特性、(c)は合成後の受信特性である。図5の(a)~(c)横軸は周波数、縦軸は信号強度である。符号107はスプリアス、符号108bは合成後の第2のスプリアスを示す。図2(c)の従来のDBFレーダ受信機の合成後の第1のスプリアス108aと比べて、図5(c)の合成後の第2のスプリアス108bは、信号強度が小さいため、図5(c)のスプリアスは抑圧されていることがわかる。
【0041】
図6において、受信機3は、VGA(Variable-Gain Amplifier、可変利得増幅器)201、BPF(Band-Pass Filter、帯域通過フィルタ)204からなる。VGA201は、入力信号を増幅させる。BPFは、VGA出力の信号から特定の周波数帯の信号を抽出する。
【0042】
アンテナ部2から得る所望信号は、受信機3から得る、所望信号とデジタル回路/電源回路9から発生するノイズ、受信機3の高周波回路の非線形歪によって発生する高調波成分等を含んだ、実線で表されるA/D変換前信号10として、ADC4に入力される。A/D変換後信号11はアンダーサンプリングによりADCクロック信号の半分の周波数領域である第一ナイキストゾーンにすべて折り返したA/D変換前信号10を表す。合成後の信号12は各受信チャンネルのA/D変換後信号11を合成した信号を表す。
【0043】
ADCクロック用移相器14とNCO用移相器15により、所望信号のみ合成時に加算されるよう位相設定したことで、所望信号が含まれるナイキストゾーン以外の不要信号成分は合成時に無相関または打消し合う。これにより所望信号が含まれるナイキストゾーン以外の不要信号の折り返しの影響を低減する増幅器やフィルタが不要なため、図3と比べて図6に示すように回路規模が削減できる。すなわち、受信機3のAMP202、HPF203が不要となる。さらに、受信機利得を低減可能なため、受信機3のアナログ回路の線形性も確保できる。
【0044】
以上説明した通り、本開示の実施の形態1によるDBFレーダ受信機は、ADCのクロックの位相とNCOの位相を調整することで、信号合成時に所望の帯域のナイキストゾーンのみ加算し、折り返される不要信号を無相関にして打ち消すことにより、受信機の利得/感度/線形性のトレードオフ関係を緩和し、受信機性能を確保しつつ回路規模を縮小するという効果を奏する。また、回路規模を縮小することで低いSWaP-Cを提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 DBFレーダ受信機、2 アンテナ部、3 受信機、4 ADC、5a 第1のDDC部、5b 第2のDDC部、6 合成部、7 クロック信号生成部、8 NCO、9デジタル回路/電源回路、10 A/D変換前信号、11 A/D変換後信号、12 合成後信号、13 DBF処理器、14 ADCクロック用移相器、15 NCO用移相器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6