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特開2024-151410繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸及びそれを用いた成形体の製造方法
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  • 特開-繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸及びそれを用いた成形体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151410
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸及びそれを用いた成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/38 20060101AFI20241018BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20241018BHJP
   D02G 3/44 20060101ALI20241018BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20241018BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
D02G3/38
D02G3/36
D02G3/44
B29B11/16
B29K105:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064679
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518381846
【氏名又は名称】東洋紡せんい株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 岳児
(72)【発明者】
【氏名】中村 知寛
(72)【発明者】
【氏名】豊田 健吾
【テーマコード(参考)】
4F072
4L036
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB04
4F072AB05
4F072AB06
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB15
4F072AB28
4F072AB33
4F072AD04
4F072AD44
4F072AD46
4F072AG02
4F072AG03
4F072AG17
4F072AH49
4F072AJ02
4F072AL01
4F072AL02
4L036MA04
4L036MA06
4L036MA37
4L036RA25
(57)【要約】
【課題】成形体を製造する場合に芯部を構成する連続強化繊維の単繊維同士の間に溶融した熱可塑性樹脂が浸透し易く、成形性が良く、得られた成形体の強度が高い繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸、及びそれを使用した成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】連続強化繊維からなる芯部と熱可塑性短繊維からなる鞘部から形成された実質的に無撚りの繊維束に、熱可塑性長繊維が巻付けられている複合紡績糸。この複合紡績糸を、金型に充填率100~350%で充填し、熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維の融点のうち高い方の融点より高い温度で加熱して、熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維を溶融させることを含む成形体の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続強化繊維からなる芯部と熱可塑性短繊維からなる鞘部から形成された実質的に無撚りの繊維束に、熱可塑性長繊維が巻付けられていることを特徴とする繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
【請求項2】
熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維の各々が、ポリアミド、ポリプロピレン,ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、及びフェノキシからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる繊維であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
【請求項3】
連続強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、PBO繊維、及びアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも一種の繊維であり、連続強化繊維の混率が20~80質量%であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
【請求項4】
複合紡績糸の総繊度が200~500000dtexであることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
【請求項5】
熱可塑性長繊維が、実質的に無撚りの繊維束に撚数1~1000T/mで巻付けられていることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸を、金型に充填率100~350%で充填し、熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維の融点のうち高い方の融点より高い温度で加熱して、熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維を溶融させることを含むことを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続強化繊維と熱可塑性繊維からなる繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸、及びそれを用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や飛行機、義足等の軽量で強度が必要な用途の物品の構成材料としては、従来、金属が使用されていたが、最近では金属から、特に軽量性、高剛性、高強度、耐久性等に優れる炭素繊維やガラス繊維を混用した繊維強化プラスチック(FRP)に置き換えられてきている。FRPに用いられる強化用繊維の形態としては、長繊維、短繊維、ウィスカー等が使用され、マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が主流であるが、一部でナイロン、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂が使用されている。
【0003】
熱可塑性樹脂をマトリックスとして用いた場合は、強化用繊維として主に短繊維が使用され、射出成型法により製造されるが、強化用繊維の長さが短いために剛性と強度が低く、それを補う為に肉厚になって重量が重くなる問題があった。
【0004】
近年、強化用繊維として長繊維を使用した繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)も一部に見られる。FRTPでは、その長繊維の特性を反映して、従来の短繊維を使用したFRPでは達成し得なかった耐衝撃性、振動減衰性などの特性が発現できると期待されている。例えば、特許文献1では、強化用長繊維とマトリックス樹脂となる熱可塑性長繊維とを引き揃えたFRTPが提案されている。しかし、このFRTPは、強化用長繊維と熱可塑性繊維を単に繊維束同士で合糸しただけであり、強化用長繊維が表面に露出するため、製糸中に強化用長繊維が折れたりして、取り扱いが難しい問題があった。
【0005】
強化用長繊維が複合紡績糸の表面に出現するのを防止するために、例えば特許文献2,3では、熱可塑性樹脂フィルムのスリットヤーンを用いて強化用長繊維を被覆した複合紡績糸が提案されている。しかし、スリットヤーンで被覆する方法は、強化用長繊維が炭素繊維やガラス繊維である場合、強化用長繊維に対してスリットヤーンが滑りやすく、繊維束の結束が不十分であり、繊維束を湾曲させた場合に糸がずれて擦れ合い、繊維束の毛羽立ちが生じやすくなる欠点があった。また、被覆する際に繊維束に無理な力が加わりやすくなって、繊維束が折れたりするおそれがあった。更には、スリットヤーンで被覆した複合紡績糸は非常に硬くなるため、取り扱いに難点があった。更には、特許文献2,3のような熱可塑性樹脂フィルムのスリットヤーンを用いて強化用長繊維を被覆した複合紡績糸では、複合紡績糸を加熱してスリットヤーンを溶融させて成形体を製造する場合に、芯部を構成する強化用長繊維の単繊維同士の間に溶融したスリットヤーンの熱可塑性樹脂が浸透しにくく、成形性に劣る問題や、得られた成形体が強度に劣る問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-56545号公報
【特許文献2】特開昭60-28543号公報
【特許文献3】WO2009/131149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術の問題を解消するために創案されたものであり、その目的は、繊維束の結束が十分で、糸ずれや毛羽立ちが生じにくく、更には、成形体を製造する場合に芯部を構成する強化用長繊維(連続強化繊維)の単繊維同士の間に溶融した熱可塑性樹脂が浸透し易く、成形性が良く、得られた成形体の強度が高い繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸、及びそれを使用した成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、連続強化繊維からなる芯部と熱可塑性短繊維からなる鞘部から形成される芯鞘構造の繊維束に熱可塑性長繊維が巻付けられた複合紡績糸の形態とすることにより、巻付いた長繊維の熱可塑性樹脂が繊維束をしっかりと結束するため、糸ずれや毛羽立ちを生じにくくすることができること、そしてかかる複合紡績糸を金型内に充填して熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維を加熱溶融させた場合に繊維束の芯部の連続強化繊維の単繊維同士の間に鞘部の短繊維の熱可塑性樹脂が十分に浸透し、成形性及び強度に優れた均一な物性の成形体が得られること、さらにこの熱可塑性樹脂の浸透は、繊維束を実質的に無撚りとすることによりさらに迅速かつ均一に行わせることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1)~(6)の構成を有するものである。
(1)連続強化繊維からなる芯部と熱可塑性短繊維からなる鞘部から形成された実質的に無撚りの繊維束に、熱可塑性長繊維が巻付けられていることを特徴とする繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
(2)熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維の各々が、ポリアミド、ポリプロピレン,ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、及びフェノキシからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる繊維であることを特徴とする(1)に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
(3)連続強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、PBO繊維、及びアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも一種の繊維であり、連続強化繊維の混率が20~80質量%であることを特徴とする(1)に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
(4)複合紡績糸の総繊度が200~500000dtexであることを特徴とする(1)に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
(5)熱可塑性長繊維が、実質的に無撚りの繊維束に撚数1~1000T/mで巻付けられていることを特徴とする(1)に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸を、金型に充填率100~350%で充填し、熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維の融点のうち高い方の融点より高い温度で加熱して、熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維を溶融させることを含むことを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸は、連続強化繊維を芯部とし、FRTPにしたときにマトリックス樹脂となる熱可塑性短繊維を前記芯部の周囲に被覆して、連続強化繊維の周りに熱可塑性短繊維が直接被覆された芯鞘構造の繊維束とし、更にこの繊維束に熱可塑性長繊維を巻付けて結束しているので、連続強化繊維とその周囲の熱可塑性樹脂の接触面積を大きくすることができる。そのため、長短二種の熱可塑性繊維を形成する熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱して溶融したときに、この溶融した熱可塑性樹脂が連続強化繊維の単繊維同士の間に十分に浸透し、連続強化繊維と熱可塑性樹脂の一体化を均一に行うことができる。その結果、成形性が良く、強度が高く、均一な物性の繊維強化プラスチック成形体を容易に得ることができる。
【0011】
さらに、本発明の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸では、連続強化繊維及び熱可塑性短繊維に実質的に撚りが掛かっていないため、連続強化繊維の単繊維同士の間への熱可塑性樹脂の浸透をさらに迅速かつ均一に行わせることができる。また、撚りが掛かることによる連続強化繊維への負荷が軽減され、張力が掛かったときに偏在的な応力集中を防ぐことができ、結果として出来上がった繊維強化プラスチック成形体の強度を均一に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸の一例の概略斜視図である。
図2図2は、本発明の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸の製造装置の一例の概略図である。
図3図3は、本発明の応用例を示す織物プリプレグの写真である。
図4図4は、実施例2の複合紡績糸の熱可塑性樹脂の含浸状態を示す断面写真である。
図5図5は、比較例1の複合紡績糸の熱可塑性樹脂の含浸状態を示す断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の繊維強化熱可塑性プラスチック用複合紡績糸は、連続強化繊維からなる芯部と熱可塑性短繊維からなる鞘部から形成された実質的に無撚りの繊維束に、熱可塑性長繊維が巻付けられていることを特徴とする。本発明の複合紡績糸は、連続強化繊維からなる芯部の周りに熱可塑性短繊維が直接被覆されているので、加熱溶融した際に、芯部を構成する連続強化繊維の単繊維同士の間に、溶融した熱可塑性短繊維由来の樹脂が浸透し易い。さらに、繊維束、つまり連続強化繊維及び熱可塑性短繊維には実質的な撚りが掛かっていないため、糸軸方向に繊維が揃った状態で加熱して熱可塑性短繊維を溶融させることができ、結果として熱可塑性繊維を構成する熱可塑性樹脂が迅速かつ均一に連続強化繊維束に浸透し、複合一体化が効率的に行われることができる。また、得られた成形体は、ボイドが少なく、強度のバラツキが小さい。
【0014】
本発明の複合紡績糸に使用される連続強化繊維は、強化繊維が長さ方向に連続的に延びているものであり、「強化用長繊維」と同義である。本発明の複合紡績糸に使用される連続強化繊維としては、引張強度が1000MPa以上であり、且つ引張弾性率が30GPa以上である高強度繊維を使用することが好ましい。このような高強度繊維は、非常に曲げにくいため、特許文献1~3のような従来の紡績方法では均一な紡績糸を安定的に生産することが難しいが、本発明の複合紡績糸なら問題なく生産することが可能である。連続強化繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、フェノール繊維、金属繊維、アラミド繊維、セラミック繊維などが挙げられる。本発明では、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、PBO繊維、アラミド繊維からなる群から選択される少なくとも一種の繊維が使用されることが好ましい。より好ましくは、炭素繊維、ガラス繊維であり、更に好ましくは炭素繊維である。炭素繊維は、比強度および比弾性率に優れ、耐吸水性に優れるので好ましい。
【0015】
本発明の複合紡績糸における連続強化繊維の混率は、15~80質量%であることが好ましい。より好ましくは20~75質量%であり、更に好ましくは30~70質量%である。混率が上記範囲未満になると、強化繊維による強度向上効果が低下しやすくなる。混率が上記範囲を超えると、熱可塑性繊維の被覆率が低くなり過ぎて、ボイドが発生しやすくなる。
【0016】
連続強化繊維の単糸繊度(単繊維繊度)は、0.3~10dtexが好ましい。より好ましくは0.5~5dtexである。また、連続強化繊維の総繊度は、500~50000dtexが好ましい。より好ましくは650~40000dtexである。フィラメント数は、好ましくは700~70000本であり、より好ましくは900~60000本である。この範囲の繊度であれば、FRTP用強化繊維として取り扱いやすい。また、連続強化繊維には、実質的に撚りが掛かっていないことが好ましく、撚りが少しあったとしても撚数は10回/inch以下であることが好ましい。より好ましくは5回/inch以下である。撚数が上記範囲を超えると、マトリックスとなる熱可塑性樹脂の浸透性が低下しやすくなる。
【0017】
連続強化繊維の強度は、1000~8000MPaが好ましい。より好ましくは2000MPa以上である。強度が上記範囲未満であると、成形したFRTPが十分な強度を保持することが難しくなる。上記範囲を超えると、複合紡績糸を安定して製造することが難しくなる。
【0018】
本発明の複合紡績糸に使用される熱可塑性短繊維は、通常FRTPのマトリックス樹脂として使用される熱可塑性樹脂からなり、かつ連続強化繊維の分解温度より低い融点を有する樹脂から作られた繊維を用いることが好ましい。例えば連続強化繊維として炭素繊維を使用する場合は、熱可塑性短繊維は、300℃以下の融点又はガラス転移温度を有する樹脂からなる短繊維であることが好ましい。熱可塑性短繊維は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びフェノキシから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる短繊維であることが好ましい。特に、熱可塑性短繊維は、ポリアミド、ポリプロピレン,ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、及びフェノキシからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる短繊維であることが好ましい。
【0019】
熱可塑性短繊維の単糸繊度は0.3~5dtexが好ましい。より好ましくは0.5~3.0dtexであり、更に好ましくは0.8~2.0dtexである。単糸繊度が上記範囲より細いと、紡績性が低下しやすくなる。上記範囲より太い場合は、繊維束が硬くなり過ぎて複合紡績糸を安定して製造し難くなりやすい。熱可塑性短繊維の繊維長は、25~70mmが好ましい。より好ましくは30~60mmであり、更に好ましくは32~55mmである。繊維長が上記範囲からはずれると、均一な紡績が難しくなってくる。
【0020】
本発明の複合紡績糸は、連続強化繊維と熱可塑性短繊維とが実質的に無撚りで混繊した繊維束の形態であり、連続強化繊維が芯部として繊維束横断面の内側に存在し、熱可塑性短繊維群が鞘部として繊維束横断面の外周部に存在した芯鞘構造をとっている。この芯鞘構造では、熱可塑性短繊維群が繊維束横断面の外周部に存在しているが、熱可塑性短繊維が連続強化繊維の大部分を被覆していれば十分であり、完全に被覆していなくてもよい。また、芯部である連続強化繊維の内側に更に熱可塑性繊維が存在していたり、芯部で連続強化繊維が熱可塑性繊維と混ざった形態になっている場合も本発明の芯鞘構造に含まれる。
【0021】
このように、実質的に無撚りの繊維束の芯鞘構造とすることにより、連続強化繊維に対して熱可塑性短繊維が十分に被覆され、加熱により熱可塑性短繊維を溶融させてマトリックス樹脂としたときに、連続強化繊維にマトリックス樹脂を十分にかつ均一に浸透させることができ、ボイドの発生を抑制することができ、強度のバラツキを小さくすることができる。尚、本発明において「実質的に無撚り」とは、複合紡績糸から熱可塑性長繊維を除いたときに繊維束の収束を維持できないほどに甘撚であることを意味する。具体的には、複合繊維を検撚機に取り付けて複合紡績糸の両端を把持した後、熱可塑性長繊維を除去して繊維束のみの状態とし、繊維束の中央部をピンセットで挟んで繊維軸方向にしごいたときに、繊維束の芯部の長繊維から鞘部の短繊維が素抜けてしまって繊維束を維持できない状態であることを意味する。
【0022】
繊維束中の連続強化繊維の混率は、20~90質量%にすることが好ましい。より好ましくは20~70質量%である。連続強化繊維の混率が上記範囲未満であると、強化繊維による強度向上効果が低下しやすくなる。混率が上記範囲を超えると、熱可塑性繊維の被覆率が低くなり過ぎて、ボイドが発生しやすくなる。
【0023】
本発明の複合紡績糸では、芯鞘構造が実質的に無撚りの繊維束からなるため、紡出を安定して生産することができる。芯鞘構造の繊維束が撚りを有すると、連続強化繊維束が複合紡績糸の表面に露出し、被覆性が低下したり、連続強化繊維の剛性により複合紡績糸に撚り戻りが発生してしまって紡出が安定し難く、品質が安定した複合紡績糸を製造することが難しい。これに対して、本発明の複合紡績糸は、芯鞘構造の繊維束が実質的に無撚であるため、上記のような問題が発生せず、紡出が安定しやすい。
【0024】
本発明の複合紡績糸の繊維束は、実質的に無撚りであるため、ばらけやすい。そのため、本発明では、熱可塑性長繊維を押さえ糸(繊維束を結束する糸)として繊維束に巻付けることにより、繊維束がばらけないようにしている。この熱可塑性長繊維は、通常FRTPのマトリックス樹脂として使用される熱可塑性樹脂からなり、かつ連続強化繊維の分解温度より低い融点を有する樹脂から作られた繊維を用いることが好ましい。例えば連続強化繊維として炭素繊維を使用する場合は、熱可塑性長繊維は、300℃以下の融点又はガラス転移温度を有する樹脂からなる長繊維であることが好ましい。熱可塑性長繊維は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びフェノキシから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる長繊維であることが好ましい。特に、熱可塑性長繊維は、ポリアミド、ポリプロピレン,ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、フェノキシからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる長繊維であることが好ましい。なお、前述の熱可塑性短繊維と熱可塑性長繊維は、異なる種類の熱可塑性樹脂からなることもできるが、FRTPをリサイクルする場合には、同じ種類の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
【0025】
熱可塑性長繊維の総繊度は、10~1000dtexが好ましい。より好ましくは30~800dtexである。総繊度が上記範囲より細い場合は、複合紡績糸の結束が弱くて毛羽立ち易くなったり、摩擦で長繊維が切れて糸が素抜けてしまう懸念がある。上記範囲より太いと、連続強化繊維と熱可塑性短繊維からなる繊維束を熱可塑性長繊維で結束するときに繊維束が捩れて安定生産が難しくなりやすい。熱可塑性長繊維の単糸繊度は0.1~10dtexが好ましい。より好ましくは0.5~5.0dtexであり、更に好ましくは0.8~3.0dtexである。単糸繊度が上記範囲より細いと、成形体を作るまでの工程中で、単繊維が切れて毛羽立ち易くなり工程通過性が低下する場合がある。上記範囲より太い場合は、長繊維が硬くなり過ぎて繊維束を長繊維で結束するときに繊維束が捩れて、安定な生産し難しくなりやすい。
【0026】
熱可塑性長繊維の結束撚数は1~1000T/mとすることが好ましい。より好ましくは30~800T/mであり、更に好ましくは50~500T/mである。結束撚数が上記範囲未満であると、結束力が弱くて、繊維束が素抜けてしまいやすくなる。上記範囲を超えると、繊維束を締め付けすぎてしまい、複合糸を安定して製造し難しくなりやすい。尚、繊維束に巻きつけるときの撚方向は、S方向又はZ方向のどちらに巻いても構わない。
【0027】
本発明の複合紡績糸の総繊度は200~500000dtexが好ましい。より好ましくは500~150000dtexであり、更に好ましくは700~100000dtexである。総繊度が上記範囲未満であると、均一な紡績糸を製造することが難しくなりやすい。上記範囲を超えると、本発明の複合形態の糸にするのに特別な装置が必要となり、製造コストが高くなる懸念がある。
【0028】
次に本発明の複合紡績糸について図面を用いて説明する。図1は、本発明の複合紡績糸の一例の斜視図である。図1からわかるように、複合紡績糸1は、芯部になる連続強化繊維2と、連続強化繊維2を被覆して鞘部となる熱可塑性短繊維3から構成される芯鞘構造の繊維束4の周囲に熱可塑性長繊維5が巻き付けられた、複合紡績糸の形態になっている。図1は、熱可塑性長繊維5がS撚りで繊維束4に巻き付いた例である。熱可塑性短繊維3及び熱可塑性長繊維5は、FRTPにするときの加熱により溶融されてマトリックス樹脂となる。
【0029】
次に本発明の複合紡績糸の製造方法の一例を図2を用いて説明する。図2は、本発明の複合紡績糸の製造装置の一例の概略図である。図2からわかるように、まず、連続強化繊維2が芯糸として供給される。鞘部になる熱可塑性短繊維3は、ドラフト装置6でドラフトをかけられてから供給される。次いで、芯糸の連続強化繊維2とドラフトされた熱可塑性短繊維3は、ガイド7を通して合わされ、芯鞘構造の繊維束4となる。この繊維束4は、実質的に無撚である。その後、中空ボビン8から引き出された熱可塑性長繊維5で繊維束4が巻かれることで繊維束が結束して、複合紡績糸1が製造される。複合紡績糸1は、フィードローラ9を通って巻き取りパッケージに巻き取られて複合紡績糸のチーズ10が出来上がる。
【0030】
本発明の複合紡績糸の繊維束の芯部の鞘部による被覆率は、89~100%であることが好ましい。より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上である。被覆率が低いと、プリプレグのような成形体にした場合にボイドが発生しやすくなり、プリプレグの強度のバラツキが大きくなり易くなる。
【0031】
本発明の複合紡績糸中の繊維束の芯部の強度は、500~8000MPaであることが好ましい。より好ましくは1300~7000MPaである。芯部の強度は、連続強化繊維の物性に依存するが、本発明では、連続強化繊維には実質的に撚りが掛かっておらず、また収束しているため、連続強化繊維の本来の強度を発揮しやすい糸形態となっている。
【0032】
本発明の複合紡績糸は、糸そのものをロービング法などにより引き揃えてFRTPに成形したり、織物、編物、多軸挿入たて編物、又は組物とし、繊維強化樹脂用中間体とすることもできる。これらの中間体は、最終成形体に使用するためのプリプレグとすることもできる。複合紡績糸の引き揃え、織物、編物及び多軸挿入たて編物は、シートやテープ状に成形して使用することができ、組物は、パイプ状に成形して使用することができる。織物及び編物の組織は、公知のいかなる組織も採用することができる。
【0033】
このような成形体は、本発明の複合紡績糸を金型に充填し、金型温度を熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維の高い方の融点(融点が無い樹脂の場合はガラス転移温度)の温度より高い温度で加熱して、熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維を溶融させることにより、製造することができる。加熱温度は、連続強化繊維の分解温度より低くすることが好ましい。連続強化繊維中への熱可塑性樹脂の浸透性を考慮するならば、熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維の融点のうち高い方の融点より15℃~300℃高い温度で加熱溶融して成形するのが好ましい。例えば熱可塑性長繊維及び熱可塑性短繊維として同じナイロン6繊維を使用する場合は、金型温度は、220~300℃程度が好ましい。金型への充填率は、100~350%とするのが好ましい。より好ましくは105~200%である。
【0034】
前述の成形体は、従来の公知の成形方法で製造可能であり、ホットスタンピング法、プリプレグ成形法、SMC成形法等が使用可能である。また、熱可塑性樹脂のフィルムを溶融して圧縮加工したフィルムスタッキング法により成形してもよい。
【0035】
本発明の複合紡績糸を織物の繊維補強中間体とし、その織物を重ね合わせて加熱プレスすることでプリプレグとすることもできる。図3は、本発明の複合紡績糸で織物にして、その織物を複数枚重ね合わせてプレス法により作製したプリプレグの写真を示す。
【0036】
本発明の複合紡績糸で作ったプリプレグの外観は、均一で優れたものとすることができる。図3に示すように、成形時の樹脂の流動に合わせた連続強化繊維の乱れは見られない。従来の成形したプリプレグの成形表面は、マトリックス樹脂の浸透が不足している箇所にボイドによる凹凸が多く発生して品位が悪いものになりやすいが、本発明の複合紡績糸を用いると、マトリックス樹脂の浸透が十分かつ均一でボイドが少ないため、プリプレグの表面を滑らかにすることができる。
【0037】
本発明の複合紡績糸から上述のようにして作ったプリプレグは、引張強度で150~1000MPa、引張弾性率で20~100GPa、曲げ強度150~1000MPa、曲げ弾性率15~80GPaを達成することができる。
【0038】
本発明の複合紡績糸から上述のようにして作ったプリプレグは、繊維体積含有率(Vf)が高くても、ボイドの量の指標である空洞率が小さい。具体的には、Vfが20~80%であり、織物断面の空洞率が1.0%以下、更には0.8%以下になり、さらには空洞の発生は全くみられないようにすることができる。
【実施例0039】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明における各特性値の測定方法は、以下の通りである。
【0040】
(1)長繊維の総繊度、単糸繊度
JIS-L1013-8.3により繊度(総繊度)A法にて総繊度を測定してデシテックス(dtex)に換算した。また、JIS-L1013-8.4によりフィラメント数を測定して、総繊度/フィラメント数にて単糸繊度(dpf)を求めた。
【0041】
(2)短繊維の単糸繊度
JIS-L1015-8.5.1正量繊度A法に基づいて単糸繊度(単繊維繊度)を求めた。
【0042】
(3)繊維束が実質的に無撚りであることの確認
複合紡績糸を検撚機に取り付けて複合紡績糸の両端を把持した後、繊維束と熱可塑性長繊維の間に針を差し込んで、熱可塑性長繊維が緩む程度に解撚しながらピンセットと鋏を使って慎重に熱可塑性長繊維のみを除去した。その後、解撚した分だけ繊維束を施撚する。この繊維束の中央部をピンセットで挟んで繊維軸方向にしごいたときに、繊維束からピンセットの動きに合わせて熱可塑性短繊維が移動してしまう場合に実質的に無撚りと判断した。これは繊維束を維持できない状態である。
【0043】
(4)熱可塑性長繊維の繊維束への巻き付きの撚数
JIS-L1095-9.15.1 A法に準じて撚数を求めた。具体的には、複合紡績糸を検撚機に取り付けた後、繊維束と熱可塑性長繊維の間に針を差し込んで解撚し、繊維束と熱可塑性長繊維が分離した撚数を結束撚数とした。
【0044】
(5)複合紡績糸中の連続強化繊維の体積含有率(Vf‘)
複合紡績糸中の連続強化繊維の体積含有率Vf‘(%)を下記式で求めた。
Vf‘=(Tf/ρf)/(Tf/ρf+Tr/ρr)×100
Tf:連続強化繊維の繊度(dtex)
Tr:熱可塑性繊維(短繊維+長繊維)の繊度(dtex)
ρf:連続強化繊維の比重(g/cm
ρr:熱可塑性繊維(短繊維+長繊維)の比重(g/cm
【0045】
(6)芯部の被覆率
長さ1.5cmの複合紡績糸が含まれるよう糸側面の写真を長さ方向に繋がるように10回連続撮影して長さ15cmの連続写真を撮影した。これを10倍に拡大した写真から、15cmの糸長さ範囲について複合紡績糸の側面全体の面積(全体面積)、及び熱可塑性繊維で被覆していない部分の面積(非被覆面積)を測定して、下記式により被覆率を算出した。写真撮影は任意の場所5箇所で行い、5箇所の芯部の被覆率の算術平均を芯部の被覆率として採用した。
芯部の被覆率(%)=((全体面積-非被覆面積)/全体面積)×100
【0046】
(7)複合紡績糸の引張強度
(i)試験片の作成
複合紡績糸の250mm長さを試験片とし、両端50mmの被覆繊維束を取り除いた。両端に長さ50mm、幅20mmのタブエポキシ接着剤で接着し、タブ間距離150mmとした。
(ii)引張強度の測定
得られた試験片を用いて、23℃,湿度50%の環境下で、つかみ具距離を135mmとし、速度2mm/minで引張試験を行い、引張強度を測定した。試験機は、島津製作所製「オートグラフAGS-X 1kN」を用いた。得られた測定値のそれぞれn=3の平均値を引張強度として採用した。
【0047】
(8)紡績安定性
紡績性を以下の基準で判断した。
○:紡出が安定しており、連続強化繊維が複合紡績糸の表面に露出しない
×:紡出が安定せず、連続強化繊維が複合紡績糸の表面に露出してしまう
【0048】
(9)充填率
充填率は次式で求めた。
充填率(%)=W/(V×(d1×Vf‘/100+d2×(1-Vf’/100))
W:成形時に実際に充填した複合材重量(g)
V:得たいプリプレグの体積(cm
Vf‘:連続強化繊維と熱可塑性繊維(短繊維+長繊維)の体積からみた混合割合(vol%)
d1:連続強化繊維の比重(g/cm
d2:熱可塑性繊維(短繊維+長繊維)の比重(g/cm
【0049】
(10)プリプレグ外観
(i)外観1:連続強化繊維の乱れ
○:連続強化繊維の乱れが全く見られないか又は殆ど認められない
×:連続強化繊維の乱れが目立つ
(ii)外観2:表面の凹凸
○:プリプレグ表面に凹凸が全く見られないか又は殆ど見られない
×:プリプレグ表面に凹凸が目立つ
【0050】
(11)プリプレグの繊維体積含有率(Vf)
JIS-K7075に規定する硫酸分解法に準じて測定した。
プリプレグ試験片の質量W0を測定した後、試験片を濃硫酸液30ml中で発煙するまで加熱(約220℃)し、樹脂を溶解させた。繊維をガラスフィルタ(質量W1)で分離ろ過し、洗浄した。その後、熱風乾燥機にガラスフィルタを入れ、105℃で90分間乾燥させた。乾燥終了後、放冷させた。その後、ガラスフィルタごと試験片の質量W2を測定し、下記式により繊維体積含有率Vfを算出した。
繊維体積含有率Vf(%)=((W2-W1)/W0)ρr/ρf
W0:硫酸分解前の試験片質量(g)
W1:ガラスフィルタの質量(g)
W2:硫酸分解後の試験片中の炭素繊維とガラスフィルタの質量(g)
ρf:連続強化繊維の密度(g/cm
ρr:熱可塑性樹脂(短繊維+長繊維)の密度(g/cm
【0051】
(12)空洞率(Vv)
プリプレグ試験片の厚み方向断面を以下のように観察した。カット辺が経糸、緯糸に添うようにプリプレグを15mm×15mmに打ち抜いた試料を用意し、エポキシ樹脂で包埋した。プリプレグの厚み方向断面が良好に観察できるようになるまで、前記試料を研磨した。研磨した試料を、高級システム倒立金属顕微鏡 GX71/DP73 顕微鏡用デジタルカメラ(オリンパス製)を使用して、拡大倍率50倍で撮影した。撮影範囲は、プリプレグの厚み方向1.5mm×緯糸方向(経糸断面を観察する方向)2.0mmの範囲とした。撮影画像において、観察面全体の面積および空隙(ボイド)となっている部位の面積を求め、下記式により空洞率を算出し、5箇所の平均を空洞率として採用した。
空洞率(%)=100×(空洞が占める部位の総面積)/(観察面の総面積)
【0052】
(13)プリプレグの曲げ強度及び曲げ弾性率
JIS-K7074に規定する試験片寸法、試験方法に準じて測定した。
(i)試験片の作成
得られたプリプレグから繊維方向と平行方向(0°)に長さ100mm、幅15mmの試験片を切り出した。
(ii)曲げ強度及び曲げ弾性率の測定
切り出した試験片を用いて、23℃,湿度50%の環境下で、支点間距離を80mmとし、速度5mm/minで圧縮試験を行って強度と弾性率を測定した。試験機としては、島津製作所製「オートグラフAG-X plus 100kN」を用いた。得られた測定値のそれぞれn=3の平均値を曲げ強度と曲げ弾性率として採用した。
【0053】
(14)プリプレグの引張強度及び引張弾性率
JIS-K7164に規定する試験片寸法、試験方法に準じて測定した。
(i)試験片の作成
得られたプリプレグから繊維方向と平行方向(0°)に長さ200mm、幅25mmの試験片を切り出した。
(ii)引張強度及び引張弾性率の測定
切り出した試験片を用いて、23℃,湿度50%の環境下で、つかみ具距離を115mmとし、速度2mm/minで引張試験を行って引張強度と引張弾性率を測定した。試験機としては、島津製作所製「オートグラフAG-X plus 100kN」を用いた。ひずみゲージとして共和電業(株)製KFRPB-5-120-C1-3 L3M2Rを取り付けた。得られた測定値のそれぞれn=3の平均値を引張強度と引張弾性率として採用した。
【0054】
(実施例1)
複合紡績糸を製造するための各原料繊維を次のようにして用意した。
(連続強化繊維)
連続強化繊維として、東レ株式会社製PAN系炭素繊維(「トレカT300B-1000」総繊度660dtex、1000フィラメント、単糸繊度0.66dtex、引張強度3530MPa、密度1.76g/cm)を用いた。この連続強化繊維の分解温度は酸素雰囲気下で500℃以上である。
【0055】
(熱可塑性短繊維)
熱可塑性短繊維としてナイロン6重合体(Ny6)を紡糸して、770dtex/770フィラメントの長繊維(単糸繊度1.0dtex、密度1.13g/cm)を得た。この長繊維を多数本集めてギロチン式カッターで38mmの長さに切断して短繊維を得た。前記ナイロン6短繊維を100%使って小原鉄工製混綿機を用いて混打綿した。その後、豊和製カード機を用いてカードスライバーとし、原織機製練条機に3回通して371.2ゲレン/6ydのスライバーを得た。次いで豊田自動織機製粗紡機を用いて7.90倍のドラフトを掛け、124ゲレン/15ydの熱可塑性短繊維の粗糸を紡出した。この熱可塑性短繊維の融点は225℃であった。
【0056】
(熱可塑性長繊維)
熱可塑性長繊維として、78dtex24フィラメント(単糸繊度3.25dtex、密度1.13g/cm)セミダルの市販ナイロン6(Ny6)の長繊維(生糸)を用いた。この熱可塑性長繊維の融点は225℃であった。
【0057】
(複合紡績糸の作成)
株式会社小関登商店製トライスピン紡績機(ON―2000H)を用いて複合紡績糸を作製した。具体的には、図2の芯糸2として前述の連続強化繊維を供給し、鞘糸3として前述の熱可塑性短繊維の粗糸を供給し、ドラフト装置6で前述の熱可塑性短繊維の粗糸3に6.2倍のドラフトを掛けて、1本の粗糸を連続強化繊維2と重ね合わせて実質無撚りの芯鞘繊維束4とし、その後、結束糸5として前述の熱可塑性長繊維をボビン8のスピンドル回転数1420rpmで芯鞘繊維束4にS撚で巻き付けて繊維束を結束し、複合紡績糸1を作製し、チーズ10に巻き取った。繊維束中の連続強化繊維の混率は28%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0058】
(織物プリプレグの作製)
トヨシマビジネス社製整経機を使って上述の複合紡績糸183本を整経して、織機ビームに巻き取った。これをトヨシマビジネス社製サンプル型レピア織機で製織して、15本/inch、緯15本/inch、巾31cmの平織物を製織した。この織物を15.0cm×20.0cmに切り出して、それを12枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2)
連続強化繊維、熱可塑性短繊維、及び熱可塑性長繊維は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じ装置を用いて実施例1と同様に複合紡績糸を作成した。ただし、実施例1では、熱可塑性短繊維の粗糸を連続強化繊維と重ね合わせる際に粗糸に6.2倍のドラフトを掛けていたが、実施例2では、1本の粗糸を連続強化繊維束と重ね合わせてから8.1倍のドラフトを掛けるように変更することで、繊維束の繊度を911dtexに変更した。繊維束中の連続強化繊維の混率は40%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0060】
この複合紡績糸を用いて実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを17枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
連続強化繊維、熱可塑性短繊維、及び熱可塑性長繊維は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じ装置を用いて実施例1と同様に複合紡績糸を作成した。ただし、実施例1では、熱可塑性短繊維の粗糸を連続強化繊維と重ね合わせる際に粗糸に6.2倍のドラフトを掛けていたが、実施例3では、1本の粗糸を連続強化繊維束と重ね合わせてから10.1倍のドラフトを掛けるように変更することで、繊維束の繊度を558dtexに変更した。繊維束中の連続強化繊維の混率は51%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0062】
この複合紡績糸を用いて実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを23枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例4)
連続強化繊維として、東レ株式会社製PAN系炭素繊維「トレカT300B-3000」総繊度1980dtex、3000フィラメント、単糸繊度0.66dtex、引張強度3530MPa、密度1.76g/cm)を用いた。この連続強化繊維の分解温度は酸素雰囲気下で500℃以上である。熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じ装置を用いて実施例1と同様に複合紡績糸を作成した。ただし、実施例1では、1本の熱可塑性短繊維の粗糸を連続強化繊維と重ね合わせる際に粗糸に6.2倍のドラフトを掛けていたが、実施例4では10.1倍に変更し、さらに連続強化繊維と重ね合わせる粗糸の数を1本から3本に変更することで、繊維束の繊度を1829dtexに変更した。繊維束中の連続強化繊維の混率は51%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0064】
この複合紡績糸を用いて実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを8枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0065】
(実施例5)
連続強化繊維として、三菱ケミカル株式会社製PAN系炭素繊維(「パイロフィルTR50S6L」総繊度4000dtex、6000フィラメント、単糸繊度0.667dtex、引張強度4900MPa、密度1.82g/cm)を用いた。この連続強化繊維の分解温度は酸素雰囲気下で500℃以上である。熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じ装置を用いて実施例1と同様に複合紡績糸を作成した。ただし、実施例1では、1本の熱可塑性短繊維の粗糸を連続強化繊維と重ね合わせる際に粗糸に6.2倍のドラフトを掛けていたが、実施例5では10.1倍に変更し、さらに連続強化繊維と重ね合わせる粗糸の数を1本から6本に変更することで、繊維束の繊度を3647dtexに変更した。繊維束中の連続強化繊維の混率は52%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0066】
実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを4枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0067】
(実施例6)
連続強化繊維として、三菱ケミカル株式会社製PAN系炭素繊維(「パイロフィルTR50S12L」総繊度8000dtex、12000フィラメント、単糸繊度0.667dtex、引張強度4900MPa、密度1.82g/cm)を用いた。この連続強化繊維の分解温度は酸素雰囲気下で500℃以上である。熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じ装置を用いて実施例1と同様に複合紡績糸を作成した。ただし、実施例1では、1本の熱可塑性短繊維の粗糸を連続強化繊維と重ね合わせる際に粗糸に6.2倍のドラフトを掛けていたが、実施例6では10.1倍に変更し、さらに連続強化繊維と重ね合わせる粗糸の数を1本から12本に変更することで、繊維束の繊度を7373dtexに変更した。繊維束中の連続強化繊維の混率は52%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0068】
実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを2枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例7)
熱可塑性短繊維として、ポリプロピレン重合体(PP)を紡糸して、770dtex/770フィラメントの長繊維(単糸繊度1.0dtex、密度0.9g/cm)を得た。この長繊維を多数本集めてギロチン式カッターで38mmの長さに切断して短繊維を得た。前記ポリプロピレン短繊維を100%使って小原鉄工製混綿機を用いて混打綿した。その後、豊和製カード機を用いてカードスライバーとし、原織機製練条機に3回通して371.9ゲレン/6ydのスライバーを得た。次いで豊田自動織機製粗紡機を用いて7.90倍のドラフトを掛け、122ゲレン/15ydの熱可塑性短繊維の粗糸を紡出した。この熱可塑性短繊維の融点は168℃であった。
【0070】
熱可塑性長繊維として、78dtex24フィラメント(単糸繊度3.25dtex、密度0.9g/cm)セミダルの市販ポリプロピレン(PP)の長繊維(生糸)を用いた。この熱可塑性長繊維の融点は168℃であった。尚、連続強化繊維は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じ装置を用いて実施例1と同様に複合紡績糸を作成した。ただし、実施例1では、1本の熱可塑性短繊維の粗糸を連続強化繊維と重ね合わせる際に粗糸に6.2倍のドラフトを掛けていたが、実施例7では、1本の粗糸を連続強化繊維束と重ね合わせてから11.4倍のドラフトを掛けるように変更することで、繊維束の繊度を428dtexに変更した。繊維束中の連続強化繊維の混率は57%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0071】
実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを24枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度180℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0072】
(実施例8)
連続強化繊維として、日本電気硝子株式会社製Eガラス繊維(「ECG 751/01ZY-95S」総繊度660dtex、1000フィラメント、単繊維直径9.0μm、引張強度6.09cN/dtex、密度2.6g/cm)を用いた。この連続強化繊維の軟化温度は約845℃であった。熱可塑性短繊維及び熱可塑性長繊維は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じ装置を用いて実施例1と同様に複合紡績糸を作成した。ただし、実施例1では、1本の熱可塑性短繊維の粗糸を連続強化繊維と重ね合わせる際に粗糸に6.2倍のドラフトを掛けていたが、実施例8では、1本の粗糸を連続強化繊維束と重ね合わせてから13.5倍のドラフトを掛けるように変更することで、繊維束の繊度を352dtexに変更した。繊維束中の連続強化繊維の混率は61%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0073】
実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを35枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0074】
(実施例9)
熱可塑性短繊維として、ポリフェニレンサルファイド重合体(PPS)を紡糸して、770dtex/770フィラメントの長繊維(単糸繊度1.0dtex、密度1.35g/cm)を得た。この長繊維を多数本集めてギロチン式カッターで38mmの長さに切断して短繊維を得た。前記ポリフェニレンサルファイド短繊維を100%使って小原鉄工製混綿機を用いて混打綿した。その後、豊和製カード機を用いてカードスライバーとし、原織機製練条機に3回通して369.7ゲレン/6ydのスライバーを得た。次いで豊田自動織機製粗紡機を用いて7.9倍のドラフトを掛け、122ゲレン/15ydの熱可塑性短繊維の粗糸を紡出した。この熱可塑性短繊維の融点は275℃であった。
【0075】
熱可塑性長繊維として、78dtex24フィラメント(単糸繊度3.25dtex、密度1.35g/cm)セミダルの市販ポリフェニレンサルファイド(PPS)の長繊維(生糸)を用いた。この熱可塑性長繊維の融点は275℃であった。尚、連続強化繊維は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じ装置を用いて実施例1と同様に複合紡績糸を作成した。ただし、実施例1では、1本の熱可塑性短繊維の粗糸を連続強化繊維と重ね合わせる際に粗糸に6.2倍のドラフトを掛けていたが、実施例9では9.4倍に変更することで、繊維束の繊度を681dtexに変更した。繊維束中の連続強化繊維の混率は47%であった。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0076】
実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを24枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度290℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0077】
(比較例1)
比較例1は、熱可塑性短繊維を用いず、鞘部を有さない長繊維束カバーリング糸とした例である。
連続強化繊維は実施例1と同じものを用いた。熱可塑性短繊維は用いなかった。熱可塑性長繊維として、154dtex、48フィラメント(単糸繊度3.2dtex、密度1.13g/cm)セミダルの市販ナイロン6(Ny6)の長繊維(生糸)×6と110dtex、24フィラメント(単糸繊度4.58dtex、密度1.13g/cm)セミダルの市販ナイロン6(Ny6)の長繊維(生糸)とを引き揃えた1034dtexの長繊維束を用いた。この熱可塑性長繊維の融点は225℃であった。合撚機を用いてS撚で110T/mの撚をかけて合撚することで、連続強化繊維と熱可塑性長繊維との複合フィラメント糸を作製した。得られた複合フィラメント糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0078】
実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを17枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0079】
(比較例2)
比較例2は、芯部に連続強化繊維の代わりに熱可塑性長繊維を用いた例である。
芯部の熱可塑性長繊維として、110dtex、24フィラメント(単糸繊度4.583dtex、密度1.13g/cm)セミダルの市販ナイロン6長繊維(生糸)を6本引き揃えた長繊維束を用いた。この熱可塑性長繊維の融点は225℃であった。この芯部の変更以外は実施例1と同様にして複合紡績糸を作製した。得られた複合紡績糸の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0080】
実施例1と同様の装置、織密度で織物を作成した。この織物を20.0cm×20.0cmに切り出してそれを11枚重ねて、三光合成製プレス成形機を使って金型温度240℃、圧力1MPaで5分間加熱圧縮成形し、プリプレグを1枚作製した。このプリプレグの詳細及び評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1からわかるように、本発明の条件を満足する実施例1~9の複合紡績糸は、引張強度及び紡績安定性に優れていた。また、実施例1~9の複合紡績糸から作成されたプリプレグは、外観、空洞率、強度、弾性率の全ての項目について満足のいく結果が得られた。これに対して、芯鞘構造をとらない比較例1は、紡績安定性に劣っていた。また、プリプレグの空洞率が大きいことからわかるように(図5の白枠内の黒い領域が空洞)、マトリックスの熱可塑性樹脂が芯部の連続強化繊維に十分かつ均一に浸透しておらず、そのためプリプレグの強度のバラツキが大きかった(データは示さず)。連続強化繊維を用いない比較例2の複合紡績糸は、引張強度に著しく劣っており、プリプレグも、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、引張弾性率に著しく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の複合紡績糸は、強度、紡績性に優れるので、加熱溶融して繊維強化プラスチックの成形体とした場合に成形性、強度、物性の均一性に優れたものを提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 複合紡績糸
2 連続強化繊維
3 熱可塑性短繊維
4 繊維束
5 熱可塑性長繊維
6 ドラフト装置
7 ガイド
8 中空ボビン
9 フィードローラ
10 チーズ
図1
図2
図3
図4
図5