(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151418
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】非常電話機能付き発信機
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241018BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G08B17/00 H
G08B25/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064700
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松原 淳一
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA37
5C087BB13
5C087DD04
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF05
5C087FF23
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
5G405BA04
5G405CA25
5G405FA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非常電話の通話が可能な発信機を提供する。
【解決手段】防火対象物(建物等)に設けられ、火災の発生場所等にいる人が押しボタンスイッチを押すことにより、防火対象物の防災センター等に設けられる受信機に火災信号を発信して火災を通報する機器である自動火災報知設備の一部をなす発信機1は、火災通報用の押しボタンスイッチ3を備えると共に、マイク4とスピーカ5を備え、押しボタンスイッチ3が押されたときに、受信機側に火災信号の発信と非常電話の呼び出し発信を行い、受信機側が応答したときに、マイク4とスピーカ5を介し、受信機側と非常電話の通話が可能な状態になる。また、非常電話の呼び出し発信中、スピーカから呼び出し音を発する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災通報用の押しボタンスイッチを備えると共に、マイクとスピーカを備え、
前記押しボタンスイッチが押されたときに、受信機側に火災信号の発信と非常電話の呼び出し発信を行い、受信機側が応答したときに、前記マイクと前記スピーカを介し、受信機側と非常電話の通話が可能な状態になることを特徴とする非常電話機能付き発信機。
【請求項2】
前記非常電話の呼び出し発信中、前記スピーカから呼び出し音を発することを特徴とする請求項1に記載の非常電話機能付き発信機。
【請求項3】
発信機前面には、通話が可能であることを示す文字又は記号が付されることを特徴とする請求項1に記載の非常電話機能付き発信機。
【請求項4】
保守通話スイッチをさらに備え、
前記保守通話スイッチがオン操作されたときに、受信機側に保守電話の呼び出し発信を行い、受信機側が応答したときに、前記マイクと前記スピーカを介し、受信機側と保守電話の通話が可能な状態になることを特徴とする請求項1に記載の非常電話機能付き発信機。
【請求項5】
常時は前記保守通話スイッチを覆うカバーをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の非常電話機能付き発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手動で火災を通報するための発信機に関し、より詳細には、非常電話の機能も有する発信機に関する。
【背景技術】
【0002】
発信機は、自動火災報知設備の一部をなすものとして防火対象物(建物等)に設けられ、火災の発生場所等にいる人が押しボタンスイッチを押すことにより、防火対象物の防災センター、中央管理室、守衛室、管理人室等(以下、「防災センター等」という)に設けられる受信機に火災信号を発信して火災を通報する機器である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
非常電話は、発信機と同様、火災を通報するためのものであるが、受信機と共に設けられる親機等との間の専用電話として設けられ、火災の発生場所等にいる人がハンドセットを取り上げることにより、受信機側に呼び出し信号を発信し、それに応答した防災センター等にいる監視員等(守衛等)と通話して火災を通報する機器である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
発信機と非常電話は、防火対象物に対し、一方だけが設けられることもあるし、両方とも設けられることもある。また、両方とも設けられる場合、別々に設けられることもあるし、一緒に設けられることもある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、自動火災報知設備に非常放送設備が併設される場合、発信機と非常電話はどちらも、非常放送の起動装置として機能する。すなわち、発信機の押しボタンスイッチが押されても、非常電話のハンドセットが取り上げられても、どちらも非常放送が鳴動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発信機と非常電話は、どちらも火災を通報するためのものであるが、非常電話によれば、監視員等との通話が可能であり、火災の発生状況等を言葉で伝えることができる。
【0008】
しかしながら、非常電話には、次のような問題がある。
・非常電話は、非常放送設備の起動装置として機能するものであり、ハンドセットが取り上げられるだけで、火災発生の非常放送を鳴動させるものである。そのため、ハンドセットが振動や衝撃等によって落下するだけでも、非常放送が鳴動してしまうことになる。
・非常電話は、消火栓のボックス等の筐体の内部にハンドセットが収納されて設けられることがある。その場合、筐体の扉に非常電話の銘板が貼付されるが(例えば、特許文献1参照)、筐体の内部にハンドセットが収納されていることまでは気付きにくい。
・非常電話という名称は、火災の通報用のものとしては、それほど広くは知られていない。そのため、ハンドセットがあると、火災以外の緊急の通報(急病人の発生や事故の発生の通報等)をするために使用される可能性があり、そのように間違って使用されることによっても、非常放送が鳴動してしまうことになる。
【0009】
発信機であれば、前記のような問題はない。しかしながら、監視員等との通話ができず、火災の発生状況等を言葉で伝えることができない。
【0010】
この発明は、以上の事情に鑑み、非常電話の通話が可能な発信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、火災通報用の押しボタンスイッチを備えると共に、マイクとスピーカを備え、前記押しボタンスイッチが押されたときに、受信機側に火災信号の発信と非常電話の呼び出し発信を行い、受信機側が応答したときに、前記マイクとスピーカを介し、受信機側と非常電話の通話が可能な状態になることを特徴とする非常電話機能付き発信機である(請求項1)。
【0012】
この発明においては、前記非常電話の呼び出し発信中、前記スピーカから呼び出し音を発するものとすることができる(請求項2)。また、発信機前面には、通話が可能であることを示す文字又は記号が付されるものとすることができる(請求項3)。また、保守通話スイッチをさらに備えるものとすることができ、前記保守通話スイッチがオン操作されたときに、受信機側に保守電話の呼び出し発信を行い、受信機側が応答したときに、前記マイクとスピーカを介し、受信機側と保守電話の通話が可能な状態になるものとすることができる(請求項4)。また、常時は前記保守通話スイッチを覆うカバーをさらに備えるものとすることができる(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、マイクとスピーカを介して非常電話の通話をすることができる。すなわち、非常電話の通話が可能な発信機を得ることができる。
【0014】
さらに、この発明によれば、通報者側としては、押しボタンスイッチを押すという、発信機一般の火災通報時の通常の操作をするだけで、非常電話の通話まですることができる。また、非常電話の通話をハンズフリーですることができ、ハンドセットを備える必要がなく、機器の省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施形態の一例を示したものであり、発信機前面側の正面図である。
【
図2】
図1における小カバーによって覆われる部分の、そのカバーを開放した状態の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の発信機の実施形態について、
図1及び2を参照しつつ説明する。
【0017】
[基本構成]
発信機1は、各種部品が設けられる発信機本体(図示省略)と、その発信機本体の前面側をカバーする前面カバー2からなり、火災通報用の押しボタンスイッチ3を備える(
図1参照)。
【0018】
押しボタンスイッチ3は、操作部3aが前面カバー2の前面に露出すると共に(
図1参照)、接点機構部分等の本体部分(図示省略)が前面カバー2の裏面側に位置する状態で発信機本体に設けられ、操作部3aが後方に押されることで接点が閉じ、火災信号を発信させるものとして機能する。
【0019】
発信機1は、火災感知器や受信機等と共に自動火災報知設備を構成するものとして建物等の防火対象物に設けられ、火災の発生場所等にいる人が押しボタンスイッチ3を押すことにより、防災センター等に設けられる受信機に火災信号を発信して火災を通報するものとして用いられる。
【0020】
なお、発信機1は、前記の通り、発信機本体と前面カバー2からなるが、通常、防火対象物には、筐体等(消火栓ボックス等)に取り付けられた状態で設けられる。
【0021】
[非常電話機能]
発信機1は、マイク4とスピーカ5をさらに備える(
図1参照)。そして、押しボタンスイッチ3が押されたときに、受信機側に火災信号の発信と非常電話の呼び出し発信を行い、その呼び出し発信に受信機側が応答したときに、マイク4とスピーカ5を介し、受信機側と通話(同時通話)が可能な状態になるように構成される。すなわち、発信機としての通常の機能を有するだけでなく、非常電話としての機能も有するものとして構成される。
【0022】
したがって、発信機1によれば、火災通報時、受信機側に火災信号を発信することができるだけでなく、受信機側と非常電話の通話をすることもできる。すなわち、防災センター等にいる監視員等に火災の発生状況等を言葉で伝えることもできる。
【0023】
さらに、発信機1によれば、通報者側としては、押しボタンスイッチ3を押すという、発信機一般の火災通報時の通常の操作をするだけで、非常電話の通話まですることができる。また、ハンズフリーで非常電話の通話をすることができ、ハンドセットを備える必要がなく、機器の省スペース化を図ることができる。
【0024】
[電話線]
発信機1と受信機は、専用の電話線で接続される。すなわち、両者間の非常電話は、専用電話として接続される(後記で説明する保守電話も同様)。
【0025】
ここで、発信機1は、従来型の既設の発信機と交換して設けることができる。その場合、非常電話用の電話線として、既設の発信機と受信機との間で接続済みの保守電話用の電話線を用いることができる。
【0026】
[マイクとスピーカの具体例]
マイク4とスピーカ5は、前者が前面カバー2の前方から集音するものとして設けられ、後者が前面カバー2の前方に放音するものとして設けられる。より詳細には、前者がそのように集音するために、前面カバー2の前面に露出する集音部4aを有するものとして設けられ、後者がそのように放音するために、前面カバー2の前面に露出する放音部5aを有するものとして設けられる。図示の例は、集音部4aと放音部5aをいずれも、前面が開口するものとして前面カバー2に設けられる前後方向の貫通孔とする場合を示している。マイク4とスピーカ5のそれぞれの本体部分(マイク本体部分とスピーカ本体部分)については、図示は省略しているが、例えば、前面カバー2の裏面側の発信機本体に設けられるものとすることができる。
【0027】
[非常電話の表示]
発信機1の前面側には、非常電話の通話が可能であることを示す文字等が付されるものとするのが好ましい。そのようにすれば、非常電話の通話が可能であることを通報者に気付かせることができる。
【0028】
図示の例の場合、押しボタンスイッチ3の操作部3a表面(発信機の前面側の一例)に、非常電話の通話が可能であることを示すものとして「(通話)」の文字が「強く押す」の文字の下方の位置に付されるものとしている(
図1参照)。これにより、押しボタンスイッチ3を押すことにより、非常電話の通話が可能であるだけでなく、その操作方法まで通報者に気付かせることができる。
【0029】
非常電話に関する表示については、他の文字が付されるものとしてもよいし、発信機1前面側の他の位置(「火災報知機」の文字の下方の位置等)に付されるものとしてもよい。さらには、文字に代えて、電話のシンボル等の記号が付されるものとしてもよい。
【0030】
[呼び出し音]
押しボタンスイッチ3が押されて、発信機1が受信機側に非常電話の呼び出し発信をしている間は、スピーカ5から呼び出し音が発せられるものとするのが好ましい。そのようにすれば、発信機1が非常電話の呼び出し発信中であることを通報者に気付かせることができる。
【0031】
[保守電話用の通話スイッチ]
発信機1は、保守電話用の保守通話スイッチ8をさらに備える(
図2参照)。そして、通話スイッチ8がオン操作されたときに、受信機側に保守電話の呼び出し発信を行い、受信機側が応答したときに、マイク4とスピーカ5を介して受信機側と保守電話としての通話が可能な状態になるように構成される。
【0032】
なお、通話スイッチ8の操作では、非常放送の起動信号は出力されないため、非常放送を鳴動させずに受信機側と通話可能な状態となる。
【0033】
[小カバー]
保守通話スイッチ8は、保守点検時に点検員が受信機側と保守電話で通話をするために設けられるものであり、常時は外部に露出しないものとするのが好ましい。前面カバー2には、常時は小カバー6によって覆われる(
図1参照)、押しボタンスイッチ3の復旧操作用のリセットレバー9等が設けられる保守操作部7が設けられる(
図2参照)。図示の例の場合、保守通話スイッチ8は、保守操作部7に設けられるものとしており、常時は小カバー6によって覆われるものとしている(
図2参照)。
【0034】
[受信機側の処理]
受信機は、発信機1から火災信号の発信と非常電話の呼び出し発信を受信したときには、火災信号を受信したことや非常電話を着信したことを監視員等に知らせるために、例えば、その情報を文字等としてディスプレイに表示すると共に、音声等(警報音や呼び出し音を含む)としてスピーカから発する。監視員等は、受信機が備えるハンドセットを取り上げる等して非常電話の呼び出しに応答する。これにより、発信機1側の通報者との間で非常電話の通話が可能な状態になる。
【0035】
[構成の変更例]
以上、この発明の実施形態の一例を説明したが、この発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で構成の変更等が可能である。
【0036】
例えば、発信機1は、カメラをさらに備えるものとしてもよく、テレビ電話として受信機側との通話が可能なものとしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:発信機 2:前面カバー 2a:前面 3:押しボタンスイッチ
3a:操作部 4:マイク 4a:集音部 5:スピーカ 5a:放音部
6:小カバー 7:保守操作部 8:保守通話スイッチ 9:リセットレバー