(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151432
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/66 20060101AFI20241018BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B41J11/66
B41J2/01 303
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064747
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 駿一
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA37
2C058AC07
2C058AC11
2C058AE04
2C058AE09
2C058AF51
2C058LA04
2C058LA07
2C058LA14
2C058LB05
2C058LB42
(57)【要約】
【課題】キャリッジやプラテンを小型化しなくてもインクジェットプリンタの小型化を可能とする。
【解決手段】本発明のプリンタ10は、プラテン16と、キャリッジ17と、カッティングヘッド31と、第1ピンチローラ53と、を備えている。キャリッジ17がプラテン16よりも右方に位置するホームポジションHPに配置されているとき、第1ピンチローラ53とキャリッジ17の一部とが搬送方向Xにおいて重なっている。すなわち、キャリッジ17の一部とプラテン16の一部も走査方向において重なっている。これにより、プリンタ10の走査方向の長さを短くすることができる。また、カッティングヘッド31の備えるカッター33は、第1ピンチローラ53よりも右方に配置されている。したがって、カッター33は、走査方向においてメディア5の一端から他端に向かって切断することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアが載置されるプラテンと、
前記プラテンよりも上方に配置され、前記メディアにインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記プラテンよりも上方に配置され、前記メディアを切断するカッターを備えるカッティングヘッドと、
前記インクジェットヘッドが搭載され、走査方向に移動可能に構成されるインクヘッドキャリッジと、前記カッティングヘッドとが搭載され、前記走査方向に移動可能に構成されるカッティングキャリッジを備えるキャリッジと、
前記キャリッジを前記走査方向に移動させる移動機構と、
前記プラテンに配置され、前記メディアを前記走査方向と平面視にて直交する搬送方向に搬送する第1グリットローラと、
前記第1グリットローラに対向するように配置され、前記第1グリットローラに接近または離間する第1ピンチローラと、を備え、
前記キャリッジは、前記プラテンよりも前記走査方向の一方に位置するホームポジションに待機可能に構成され、
前記キャリッジが前記ホームポジションに配置されているとき、前記第1ピンチローラの少なくとも一部と、前記キャリッジの少なくとも一部と、が前記搬送方向で重なるように配置され、かつ前記カッターは、前記第1ピンチローラに対し前記走査方向の一方側に配置されている、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記走査方向に延び、前記プラテンの上方に配置されたシャフトと、
前記シャフトに摺動可能に係合する第1保持部材と、を備え、
前記第1ピンチローラは、前記第1保持部材に保持され、
前記第1保持部材は、作業者により操作される操作ノブを備え、
前記操作ノブは、前記ホームポジションに配置されている前記キャリッジに対して前記走査方向の他方、かつ前記第1ピンチローラに対して前記走査方向の他方に配置されている、請求項1に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記操作ノブは、
前記走査方向の他方に延びる延伸部と、
前記延伸部に接続され、前記搬送方向の下流側に延びる掴み部と、を備えている、請求項2に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記第1ピンチローラは、前記第1グリットローラと共に前記メディアを挟む挟持位置と、前記第1グリットローラから離間した離間位置との間にて前記第1グリットローラに接近または離間し、
前記操作ノブは、前記第1ピンチローラが前記挟持位置に配置されているとき、前記プラテンよりも上方に配置されている、請求項3に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記掴み部の前記搬送方向の下流側の先端の位置は、前記キャリッジの前記搬送方向の上流側の先端の位置よりも前記搬送方向の上流側に配置されている、請求項3に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記シャフトは、前記プラテンの前記走査方向の中間の位置よりも前記ホームポジションに近い位置に、前記第1保持部材の摺動を抑制するストッパを備え、
前記ホームポジションは、前記インクジェットヘッドが前記メディアにインクの吐出を行わないときに待機する位置であり、
前記インクジェットヘッドは、前記プラテンのうち前記第1ピンチローラよりも前記走査方向の他方側の領域においてインクを吐出する、請求項2に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記シャフトの前記走査方向において、前記ストッパに対して前記第1ピンチローラの反対側に配置される第2ピンチローラと、
前記第2ピンチローラを保持し、前記シャフトに摺動可能に係合する第2保持部材と、
前記プラテンのうち前記ストッパに対して前記第1ピンチローラの反対側に複数配置され、前記メディアを前記搬送方向に搬送する第2グリットローラと、を備え、
前記第2ピンチローラは、複数の前記第2グリットローラのいずれか一つと共に前記メディアを挟持し、
前記インクジェットヘッドは、前記プラテンのうち前記第1ピンチローラよりも前記走査方向の他方側かつ前記第2ピンチローラよりも前記走査方向の一方側の領域においてインクを吐出し、
前記第1グリットローラの前記走査方向の長さは、複数の前記第2グリットローラ同士の前記走査方向の間隔よりも長い、請求項6に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャリッジを主走査方向に移動させながらメディアへの画像の印刷およびメディアの切断を行うカッティングヘッド付きインクジェットプリンタが知られている。例えば、特許文献1には、媒体(メディア)が載置されたプラテンと、インクを吐出するインクジェットヘッドと、媒体を切断するカッターを備えるカッティングヘッドと、媒体移動機構と、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。カッティングヘッドは、主走査方向に移動可能なキャリッジに搭載されており、インクジェットヘッドは、カッティングヘッドに連結されている。媒体移動機構は、プラテンに設けられたグリットローラと、グリットローラの上方に配置され、グリットローラと共に媒体を挟むピンチローラと、を備えている。キャリッジは、主走査方向に延びるガイドレールに係合しており、ガイドレールに沿って移動する。係るインクジェットプリンタでは、キャリッジの移動と共に主走査方向にインクヘッドが移動しながら、プラテンに載置された媒体に対してインクを吐出する。その後、グリットローラが回転することにより、グリットローラとピンチローラとの間に挟まれた媒体が主走査方向と直交する副走査方向に搬送される。このように、キャリッジの移動と共にインクが吐出される制御と、媒体が副走査方向に搬送される制御と、を繰り返すことにより媒体に印刷が行われる。また、媒体にカッターが押し当てられたまま、カッティングヘッドが搭載されたキャリッジが移動することにより、媒体が主走査方向に切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたカッティングヘッド付きインクジェットプリンタにおいて、キャリッジは、待機時にホームポジションにて待機する。ここで、ホームポジションとは、例えばガイドレールの右端の位置であり、プラテンの右端よりも右方に配置されている。したがって、上述したカッティングヘッド付きインクジェットプリンタは、カッティングヘッドを有さないインクジェットプリンタに比べて、カッティングヘッドの長さ分だけホームポジションのスペースがさらに必要となる。よって、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタは、プラテンの右端よりも右方においてホームポジションのスペースが拡大され、機体全体が主走査方向に比較的長い形状に形成される。したがって、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタが大型化する。
【0005】
ここで、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタを小型化するためには、キャリッジがホームポジションに配置されているときに、キャリッジの一部をホームポジションからプラテン側にはみ出させることが有効である。例えば、キャリッジがホームポジションに配置されているときに、カッティングヘッドをプラテン上に配置する。ところで、カッティングヘッドに搭載されたカッターは、媒体を一端から他端にかけて主走査方向に切断する。したがって、プラテン上に配置可能なカッティングヘッドの範囲は、カッターの切断範囲との関係で、すなわち、カッターが媒体を一端から他端にかけて主走査方向に切断できるような位置に設定する必要がある。
【0006】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャリッジやプラテンを小型化しなくてもインクジェットプリンタの小型化を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタは、メディアが載置されるプラテンと、前記プラテンよりも上方に配置され、前記メディアにインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記プラテンよりも上方に配置され、前記メディアを切断するカッターを備えるカッティングヘッドと、前記インクジェットヘッドが搭載され、走査方向に移動可能に構成されるインクヘッドキャリッジと、前記カッティングヘッドとが搭載され、前記走査方向に移動可能に構成されるカッティングキャリッジを備えるキャリッジと、
前記キャリッジを前記走査方向に移動させる移動機構と、前記プラテンに配置され、前記メディアを前記走査方向と平面視にて直交する搬送方向に搬送する第1グリットローラと、前記第1グリットローラに対向するように配置され、前記第1グリットローラに接近または離間する第1ピンチローラと、を備えている。前記キャリッジは、前記プラテンよりも前記走査方向の一方に位置するホームポジションに待機可能に構成されている。前記キャリッジが前記ホームポジションに配置されているとき、前記第1ピンチローラの少なくとも一部と前記キャリッジの少なくとも一部と、が前記走査方向に直交する搬送方向で重なるように配置され、かつ前記カッターは、前記第1ピンチローラに対し前記走査方向の一方側に配置されている。
【0008】
かかるインクジェットプリンタによれば、前記ホームポジションに前記キャリッジが配置されたとき、前記第1ピンチローラと前記キャリッジとは、少なくとも一部が前記搬送方向において重なっている。前記第1ピンチローラは、前記プラテンに配置された第1グリットローラに対向して配置されている。したがって、前記キャリッジは、前記プラテンの一部とも前記搬送方方向において重なっている。よって、従来の構造に比べて、前記カッティングヘッド付きインクジェットプリンタの前記走査方向の長さを短くすることができる。また、前記カッターは、前記第1ピンチローラに対して前記走査方向の一方側に配置されている。前記カッティングヘッドは、前記キャリッジが前記ホームポジションに配置されているときの前記カッターに対して前記走査方向の他方において前記メディアの切断を行う。したがって、前記カッターは、前記メディアの前記走査方向の一端から他端にかけて切断することができる。このことにより、前記メディアを前記走査方向に切断可能なまま、前記カッティングヘッド付きインクジェットプリンタの前記走査方向の長さを短くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャリッジやプラテンを小型化しなくても、インクジェットプリンタを小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】インクジェットヘッドおよびカッティングヘッドの正面図である。
【
図5】一実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
【
図6】一実施形態に係る第1保持部材および第1ピンチローラの斜視図である。
【
図8A】第1ピンチローラが離間位置にあるときの第1保持部材周辺の側面図である。
【
図8B】第1ピンチローラが挟持位置にあるときの第1保持部材周辺の側面図である。
【
図9】第2グリットローラ同士の走査方向の間隔が第1グリットローラの走査方向の長さよりも長い場合におけるプラテンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10とする。)について説明する。本実施形態に係るプリンタ10は、メディア5に対して印刷および切断(カッティング)が可能なプリント&カット機である。
【0012】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは走査方向を表す。本実施形態では、走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは搬送方向を表す。搬送方向Xは走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0013】
メディア5は、例えば、記録紙である。ただし、メディア5は、記録紙に限定されない。例えば、メディア5は、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシートや台紙と台紙上に積層されかつ粘着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されたプリンタ本体10aと、ロール支持部材18と、を備えている。プリンタ本体10aには、内部空間12Sが形成されている。プリンタ本体10aは、フロントカバー23を含む。ここでは、フロントカバー23は、上端を軸に回転可能なように、プリンタ本体10aに支持されている。フロントカバー23を上方に回転させることによって、プリンタ本体10aの内部空間12Sと外部空間とが連通される。内部空間12Sは、後述するインクジェットヘッド21によってメディア5に印刷が行われる空間である。このように、内部空間12Sがフロントカバー23により覆われていることによって、印刷中等において外部空間の塵および埃が内部空間12Sに入り込み難い。
【0015】
フロントカバー23の下部には、窓23Aが設けられている。窓23Aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。窓23Aには、外部空間の光(例えば紫外線)が内部空間12Sに到達しないように処理が施されている。ユーザは、窓23Aから本体12aの内部を視認することが可能である。
【0016】
ロール支持部材18は、プリンタ本体10aの下方に配置されている。ロール支持部材18は、走査方向Yに延びる部材であり、ロール状に形成されたメディア5を支持する。ロール支持部材18に支持されたメディア5がプリンタ本体10aを通り、プリンタ10の後方から前方に向かって引き出される。引き出されたメディア5は、後述するプラテン16に載置される。
【0017】
次に、プリンタ10の内部の構成について説明する。
図2に示すように、プリンタ10は、メディア5が載置されるプラテン16と、キャリッジ17と、インクジェットヘッド21(
図3参照)と、カッティングヘッド31(
図3参照)と、移動機構40と、搬送機構50と、制御装置90と、を備えている。インクジェットヘッド21とカッティングヘッド31とは、メディア5に対して所望の加工を行う加工ヘッド70を形成している。
図1に示すように、プラテン16は、その前端付近が内部空間12Sから外部に突出している。プリンタ本体10aは、走査方向Yに延びている。
【0018】
図2に示すように、プラテン16は、メディア5への印刷およびメディア5を切断する際、メディア5を支持するものである。プラテン16には、メディア5が載置される。メディア5への印刷およびメディア5の切断は、プラテン16上で行われる。プラテン16は走査方向Yに延びている。プラテン16の上方には、走査方向Yに延びるガイドレール15が配置されている。
【0019】
図2に示すように、キャリッジ17は、ガイドレール15に支持され、走査方向Yに摺動可能に構成されている。
図4に示すように、キャリッジ17は、後方に係合部材17aを備えている。キャリッジ17は、係合部材17aを介してガイドレール15に係合している。
図3に示すように、キャリッジ17には、インクヘッドキャリッジ20と、カッティングキャリッジ30とを備えている。インクヘッドキャリッジ20には、インクジェットヘッド21が搭載されている。カッティングキャリッジ30には、カッティングヘッド31が搭載されている。したがって、キャリッジ17が走査方向Yに移動すると、インクジェットヘッド21およびカッティングヘッド31が走査方向Yに移動する。本実施形態では、カッティングキャリッジ30は、インクヘッドキャリッジ20の左方に配置されている。
【0020】
インクジェットヘッド21は、プラテン16に載置されたメディア5に印刷を行う。インクジェットヘッド21は、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)を有する記録ヘッド22を備えている。ここでは、5つの記録ヘッド22がインクヘッドキャリッジ20に支持されている。5つの記録ヘッド22は、互いに異なる5つの色、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク、ホワイトインクを吐出する。ただし、記録ヘッド22の個数は5個に限定されない。また、記録ヘッド22が吐出するインクの色も何ら限定されない。
図5に示すように、インクジェットヘッド21は、制御装置90に電気的に接続され、制御装置90によりインクの吐出を制御される。インクジェットヘッド21は、連結部材80によりカッティングヘッド31と連結している。したがって、インクジェットヘッド21とカッティングヘッド31とは、同時に走査方向Yを移動する。
【0021】
カッティングヘッド31は、プラテン16に載置されたメディア5を切断する。カッティングヘッド31は、ソレノイド32と、カッター33と、を備えている。カッター33は、ソレノイド32に取り付けられている。ソレノイド32は、制御装置90(
図5参照)によって制御される。ソレノイド32がON/OFFされると、カッター33は、上下方向に移動してメディア5に接触し、あるいはメディア5から離反する。
【0022】
移動機構40は、プラテン16に載置されたメディア5に対してキャリッジ17を相対的に走査方向Yに移動させる機構である。なお、移動機構40の構成は特に限定されない。
図2に示すように、移動機構40は、プーリ41と、プーリ42と、ベルト43と、キャリッジモータ44と、を備えている。プーリ41は、ガイドレール15の左端に設けられている。プーリ42は、ガイドレール15の右端側に設けられている。ベルト43は、プーリ41とプーリ42とに巻き掛けられている。ベルト43は、カッティングキャリッジ30の背面上部に固定されている。左側のプーリ41には、キャリッジモータ44が接続されている。ただし、キャリッジモータ44は、右側のプーリ42に接続されていてもよい。ここでは、キャリッジモータ44が駆動して、プーリ42が回転することにより、プーリ41とプーリ42との間においてベルト43が走行する。これにより、カッティングキャリッジ30が走査方向Yに移動する。すなわち、キャリッジモータ44は、カッティングキャリッジ30を走査方向Yに移動させる。インクヘッドキャリッジ20は、カッティングキャリッジ30の移動に伴って走査方向Yに移動する。キャリッジモータ44は、カッティングキャリッジ30を介してインクヘッドキャリッジ20を間接的に走査方向Yに移動させる。キャリッジモータ44は、制御装置90に制御される。
【0023】
図4に示すように、キャリッジ17は、印刷やカッティングを行わないとき、ガイドレール15の右端に位置するホームポジションHPに配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、プラテン16の右方に位置し、本実施形態では、ガイドレール15の右端の位置である。キャリッジ17は、ホームポジションHPにて待機可能に構成されている。すなわち、印刷やカッティングの指示がプリンタ10に送られていないとき、キャリッジ17は、ホームポジションHPにて待機している。印刷やカッティングが行われるとき、キャリッジ17は、ホームポジションHPから走査方向Yに往復移動する。なお、ホームポジションHPは、ガイドレール15の右端に限定されない。ホームポジションHPは、プラテン16の左方に配置されていてもよい。カッティングヘッド31の備えるカッター33は、キャリッジ17がホームポジションHPに配置されているとき、後述する第1ピンチローラ53よりも右方に配置されている。
【0024】
図2に示すように、搬送機構50は、プラテン16に載置されたメディア5をインクジェットヘッド21およびカッティングヘッド31に対して搬送方向Xに移動させるものである。ここでは、搬送機構50は、プラテン16に載置されたメディア5を搬送方向Xに移動させる。搬送機構50は、第1グリットローラ51と、第2グリットローラ55と、フィードモータ52と、第1ピンチローラ53と、第2ピンチローラ56と、メディアクランプ54と、昇降機構60と、を備えている。メディアクランプ54は、走査方向Yに2つ並んで設けられている。なお、
図4において、走査方向Yに並んだメディアクランプ54のうち右方のメディアクランプ54は、図示が省略されている。第1ピンチローラ53は、
図6に示すように、第1保持部材63に保持されている。第1保持部材63は、後述する操作ノブ65を備えている。
【0025】
図4に示すように、第1グリットローラ51は、プラテン16に設けられている。第1グリットローラ51は、第1グリットローラ51の上部が外部に露出するようにプラテン16に埋設されている。第1グリットローラ51は、第1ピンチローラ53の下方に配置されている。第1グリットローラ51は、後述する昇降機構60のストッパ66より右方に配置されている。本実施形態では、ストッパ66の右方に第1グリットローラ51が1つ配置されている。ただし、第1グリットローラ51の数は特に限定されない。第1グリットローラ51の走査方向Yの長さは、L1である。第1グリットローラ51は、第1ピンチローラ53との間にメディア5を挟み込む。第1グリットローラ51と第1ピンチローラ53との間にメディア5が挟まれた状態で、フィードモータ52が駆動して第1グリットローラ51が回転すると、メディア5は搬送方向Xに搬送される。本実施形態では、メディア5は、後方から前方に向かって搬送されながら印刷やカッティングが行われる。したがって、後方が搬送方向Xの上流側であり、前方が搬送方向Xの下流側である。
【0026】
第2グリットローラ55は、第1グリットローラ51と同様にプラテン16に埋設されている。第2グリットローラ55は、ストッパ66の左方に配置されている。本実施形態では、
図2に示すように、第2グリットローラ55は、走査方向Yに6個並んで配置されている。6個の第2グリットローラ55は、それぞれ等間隔に並んでいる。ただし、第2グリットローラ55の数は、特に限定されない。
図4に示すように、本実施形態では、第2グリットローラ55同士の走査方向Yの間隔は、L2である。第2グリットローラ55同士の走査方向Yの間隔L2と、第1グリットローラ51の走査方向Yの長さL1と、において、L1>L2の関係が成り立っている。なお、第2グリットローラ55同士の走査方向Yの間隔は、等間隔でなくてもよい。その場合、第2グリットローラ55同士の走査方向Yの間隔のうち最も長いものの長さをL2としたとき、L1>L2が成り立てばよい。
図2に示すように、第2グリットローラ55は、フィードモータ52に接続されている。フィードモータ52は、制御装置90(
図5参照)により制御される。なお、図示は省略するが、第1グリットローラ51と、全ての第2グリットローラ55とは、シャフトにより連結されている。したがって、フィードモータ52が駆動すると、第1グリットローラ51および全ての第2グリットローラ55が回転する。
【0027】
第1ピンチローラ53は、第1グリットローラ51と上下方向で対向するように配置されている。第1ピンチローラ53は、例えば、ゴムにより形成されている。ただし、第1ピンチローラ53の材料は、特に限定されない。第1ピンチローラ53の個数は、第1グリットローラ51の数と同じである。ただし、第1ピンチローラ53の数は、特に限定されない。
図7に示すように、第1ピンチローラ53は、昇降機構60の第1保持部材63により保持されている。第1ピンチローラ53は、昇降機構60により、離間位置と挟持位置との間にて昇降する。ここで、離間位置とは、
図8Aに示すように、第1ピンチローラ53が第1グリットローラ51から上方に離間した位置である。挟持位置とは、
図8Bに示すように、第1ピンチローラ53が第1グリットローラ51に接近し、第1ピンチローラ53が第1グリットローラ51と共にメディア5を挟む位置である。
図4に示すように、第1ピンチローラ53の走査方向Yの長さL3は、第1グリットローラ51の走査方向Yの長さL1よりも短い。したがって、第1ピンチローラ53が第1グリットローラ51の一部と搬送方向Xにおいて重なっている。第1ピンチローラ53が第1グリットローラ51の一部と搬送方向Xにおいて重なっている限りにおいて、第1ピンチローラ53を走査方向Yに移動させても、第1ピンチローラ53および第1グリットローラ51は、メディア5を挟むことができる。第1ピンチローラ53および第1グリットローラ51は、メディア5の右端部5Rを挟む。なお、ここで、「メディア5の右端部」とは、メディア5の右端の位置から左方に向かってある程度の幅を有する範囲である。第1ピンチローラ53の右方には、後述するメディアクランプ54が配置されており、メディア5を付勢する。したがって、第1ピンチローラ53は、メディア5がメディアクランプ54により付勢されている走査方向Yの幅の分の程度だけ、メディア5の右端の位置から左方にずれた位置に配置される。後述する「メディア5の左端部」についても同様である。第1ピンチローラ53は、キャリッジ17がホームポジションHPに配置されているとき、キャリッジ17の一部と搬送方向Xにおいて重なっている。すなわち、キャリッジ17がホームポジションHPに配置されているとき、第1ピンチローラ53の前方にキャリッジ17が配置されている。
【0028】
第2ピンチローラ56は、第2グリットローラ55と上下方向で対向するように配置されている。なお、第2ピンチローラ56が対向する第2グリットローラ55は、6個並んだ第2グリットローラ55のいずれか一つである。第2ピンチローラ56は、第1ピンチローラ53と同様に、例えば、ゴムにより形成されている。ただし、第2ピンチローラ56の材料は、特に限定されない。第2ピンチローラ56は、第1ピンチローラ53と同様に、昇降機構60により、離間位置と挟持位置との間にて昇降する。離間位置と挟持位置については、第1ピンチローラ53および第1グリットローラ51と同様である。また、本実施形態では、第2ピンチローラ56は、第1ピンチローラ53と同様の形状にて形成されている。したがって、第2ピンチローラ56も第1ピンチローラ53と同様に、第2ピンチローラ56が第2グリットローラ55の一部と搬送方向Xにおいて重なっている限りにおいて、第2ピンチローラ56を走査方向Yに移動させても第2ピンチローラ56および第2グリットローラ55は、メディア5を挟むことができる。
【0029】
メディアクランプ54は、プラテン16の上方に配置されている。
図7に示すように、メディアクランプ54は、第1ピンチローラ53および第2ピンチローラ56と共に走査方向Yに並んで配置されている。メディアクランプ54は、後述する第3保持部材64により保持されている。第1ピンチローラ53および第2ピンチローラ56が昇降機構60により昇降するとき、メディアクランプ54も昇降する。第1ピンチローラ53および第2ピンチローラ56が挟持位置に配置されているとき、メディアクランプ54は、プラテン16上に配置され、プラテン16を付勢する。このとき、メディアクランプ54とプラテン16との間に配置されているメディア5の一部(
図4参照)は、メディアクランプ54により浮き上がりが防止される。
【0030】
図7に示すように、昇降機構60は、第1ピンチローラ53、第2ピンチローラ56およびメディアクランプ54を昇降させる機構である。昇降機構60は、シャフト61と、回転手段62と、第1保持部材63と、第2保持部材67と、第3保持部材64と、ストッパ66と、を備えている。本実施形態では、第3保持部材64は、走査方向Yに並んで2つ配置されている。
【0031】
シャフト61は、走査方向Yに延びる。
図8Aに示すように、シャフト61は、プラテン16より上方に配置されている。本実施形態では、シャフト61は、断面形状が六角形である。
図7に示すように、シャフト61は、第1保持部材63、第2保持部材67および第3保持部材64が挿通される。第1保持部材63、第2保持部材67および第3保持部材64は、シャフト61に対して走査方向Yに摺動可能に設けられている。第1保持部材63、第2保持部材67および第3保持部材64は、互いに独立してシャフト61に摺動可能である。
【0032】
回転手段62は、プラテン16の右方に配置されている。回転手段62は、シャフト61を
図7の矢印R1方向および矢印R2方向に回転させる。回転手段62は、ローディングレバー62aとリンク機構62bとを備えている。ローディングレバー62aは、リンク機構62bの前端に設けられている。リンク機構62bの後端は、シャフト61と接続している。
図2に示すように、ローディングレバー62aは、プリンタ本体10aの前方に延びている。作業者は、プリンタ本体10aの前方からローディングレバー62aを操作することができる。ローディングレバー62aを
図7の矢印U1の方向に押し上げると、シャフト61が矢印R1の方向に回転する。このとき、シャフト61の回転に伴い、第1保持部材63、第2保持部材67および第3保持部材64が上方に回転する。一方、ローディングレバー62aを
図7の矢印D1の方向に押し下げると、シャフト61が矢印R2の方向に回転する。このとき、シャフト61の回転に伴い、第1保持部材63、第2保持部材67および第3保持部材64が下方に回転する。
【0033】
第1保持部材63は、プラテン16よりも上方に配置されており、第1ピンチローラ53を保持する。第1保持部材63は、ストッパ66よりも右方の位置にてシャフト61に挿通されている。
図6に示すように、第1保持部材63は、シャフト61(
図7参照)に挿通され、シャフト61に支持される本体部63aと、本体部63aに支持される腕部63bと、本体部63aと腕部63bと挿通された左右方向に延びる軸63d(
図8A参照)と、腕部63bに挿通された左右方向に延びる軸63eと、ねじりコイルばね63fと、を備えている。本体部63aは、側面視にて六角形に形成された孔63aaを備えている。孔63aaにシャフト61が挿通される。腕部63bは、軸63d(
図8A参照)を中心に回転する。腕部63bは、腕部63bから左右方向に突設した突出部63baを備えている。突出部63baは、本体部63aに形成された開口63bbに挿入される。開口63bbは、上下方向に延びる長穴である。突出部63baは、開口63bb内を上下に移動することができる。したがって、メディア5の厚みに応じて、腕部63bが上下方向に移動し、第1ピンチローラ53を上下方向に移動させることができる。腕部63bに挿通された軸63eは、第1ピンチローラ53を回転可能に支持する。ねじりコイルばね63fは、軸63d(
図8A参照)に巻きかけられている。ねじりコイルばね63fにより、腕部63bは、下方へ向かって荷重がかけられている。本実施形態では、2つのねじりコイルばね63fが設けられているが、ねじりコイルばね63fの個数は、特に限定されない。本体部63aの左面63aLには、操作ノブ65が設けられている。操作ノブ65は、後述する凸部63abと軸63d(
図8A参照)により第1保持部材63に取り付けられている。
【0034】
操作ノブ65は、第1保持部材63をシャフト61に沿って走査方向Yに移動させるときに作業者が掴む部材である。
図4に示すように、操作ノブ65は、キャリッジ17がホームポジションHPに配置されているとき、第1ピンチローラ53に対して、キャリッジ17の反対側に配置されている。本実施形態では、操作ノブ65は、第1ピンチローラ53よりも左方に配置されている。
図6に示すように、操作ノブ65は、固定部65aと、延伸部65bと、掴み部65cと、を備えている。本実施形態では、固定部65a、延伸部65bおよび掴み部65cは、単一の部材により形成されている。ただし、固定部65a、延伸部65bおよび掴み部65cは、それぞれ別個の部材により形成されていてもよい。また、固定部65aと延伸部65bとが、または延伸部65bと掴み部65cとが単一の部材により形成されていてもよい。
【0035】
図8Aに示すように、固定部65aは、上下方向に延び、第1保持部材63の左面63aLに固定される部分である。図示は省略するが、固定部65aには、左右方向に貫通した孔が形成されており、当該孔に軸63dが挿通されることにより、第1保持部材63の左面63aLに取り付けられる。さらに、固定部65aの上端には、U字溝65aaが形成されている。本体部63aの左面63aLから左方に突設された凸部63abとU字溝65aaとが嵌め合うことにより、操作ノブ65が前後方向へ回動することが抑制されている。
【0036】
図6に示す延伸部65bは、固定部65aの前端の下部から左方に延びる部分である。延伸部65bは、固定部65aに対して略垂直に延びている。延伸部65bは、掴み部65cに接続されている。
【0037】
掴み部65cは、延伸部65bの左方の先端に接続され、前方に向かって延びる部材である。掴み部65cは、延伸部65bに対して略垂直に延びている。
図8Aに示すように、掴み部65cの先端65Fは、キャリッジ17よりも後方に配置されている。掴み部65cは、第1ピンチローラ53が離間位置に配置されているとき、上方に延びるように形成されている。また、本実施形態では、
図8Bに示すように、第1ピンチローラ53が挟持位置に配置されているとき、操作ノブ65は、プラテン16よりも上方に配置されている。
【0038】
図7に示すように、第2保持部材67は、プラテン16(
図2参照)よりも上方に配置されており、第2ピンチローラ56を保持する。第2保持部材67は、ストッパ66よりも左方の位置にてシャフト61に挿通されている。第2保持部材67の形状および構造は、第1保持部材63と比較して、操作ノブ65を有していない点を除いて同様であるため、ここでは、説明を省略する。
【0039】
第3保持部材64は、プラテン16よりも上方に配置されており、メディアクランプ54を保持する。第3保持部材64は、シャフト61が挿通される本体部64aと、本体部64aに支持される腕部64bと、を備えている。腕部64bは、メディアクランプ54を保持している。シャフト61が矢印R1またはR2の方向に回転するとき、メディアクランプ54も上方または下方に回転する。
【0040】
図7に示すように、ストッパ66は、シャフト61に取り付けられている。本実施形態では、ストッパ66は、板金により形成され、シャフト61の断面の形状である六角形のうち隣り合う2辺に沿うように折り曲げられた形状を有している。
図4に示すように、ストッパ66は、プラテン16の走査方向Yの中心よりも右方に配置されている。ただし、ストッパ66の配置はこれに限定されない。第1保持部材63、第2保持部材67および第3保持部材64をシャフト61に摺動させたときに、第1保持部材63および第2保持部材67がストッパ66に当接することにより、第1保持部材63および第2保持部材67の移動が抑制される。また、第2保持部材67の移動が抑制されることにより、第3保持部材64の移動も抑制される。第1保持部材63と、第3保持部材64のうち右方に配置されているものとが、ストッパ66よりも右方の範囲にてシャフト61に摺動して移動することができる。第2保持部材67と、第3保持部材64のうち左方に配置されているものとが、ストッパ66よりも左方の範囲にてシャフト61に摺動して移動することができる。ストッパ66の形状および材料は、特に限定されない。
【0041】
図5に示すように、制御装置90は、メディア5(
図2参照)への印刷およびメディア5の切断を制御する装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、I/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。制御装置90は、
図1に示すプリンタ本体10aの内部に設けられている。ただし、制御装置90はプリンタ本体10aの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置90は、プリンタ本体10aの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されている。
【0042】
図5に示すように、制御装置90は、キャリッジモータ44の駆動を制御する。このことにより、プーリ42の回転、およびベルト43(
図2参照)の走行を制御する。これにより、制御装置90は、キャリッジ17の走査方向Yへの移動を制御する。制御装置90は、インクジェットヘッド21がインクを吐出するタイミングやインクの吐出量等を制御する。本実施形態では、インクジェットヘッド21は、第1ピンチローラ53よりも左方、かつ第2ピンチローラ56よりも右方の範囲にてインクの吐出を行うように制御されている。制御装置90は、ソレノイド32を制御することにより、カッター33の上下方向の移動を制御する。制御装置90がフィードモータ52の駆動を制御して第1グリットローラ51および第2グリットローラ55の回転を制御することにより、メディア5が搬送方向Xに搬送される。
【0043】
以上、本実施形態にかかるインクジェットプリンタの構成について説明した。次にメディア5をプラテン16に載置したときの第1ピンチローラ53および第2ピンチローラ56の移動について説明する。
【0044】
図4に示すように、第1ピンチローラ53および第2ピンチローラ56がメディア5を挟持することにより、インクジェットヘッド21によるインクの吐出およびカッティングヘッド31における切断を行うことができる。本実施形態では、インクジェットヘッド21は、第1ピンチローラ53よりも左方かつ第2ピンチローラ56よりも右方の範囲においてメディア5にインクの吐出を行う。したがって、第1ピンチローラ53がメディア5の右端部5Rを挟持し、かつ第2ピンチローラ56がメディア5の左端部5Lを挟持することが望ましい。作業者は、第1ピンチローラ53と第1グリットローラ51とが搬送方向Xにおいて重なった位置となる範囲において、メディア5の右端部5Rに第1ピンチローラ53が配置されるように、第1保持部材63を走査方向Yに移動させる。また、第2ピンチローラ56と第2グリットローラ55とが搬送方向Xにおいて重なった位置となる範囲において、メディア5の左端部5Lの位置に第2ピンチローラ56が配置されるように、第2保持部材67を走査方向Yに移動させる。なお、複数並んだ第2グリットローラ55のうちメディア5の左端部5Lの下方に配置されている第2グリットローラ55が、第2ピンチローラ56と共にメディア5を挟持する。
【0045】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、
図4に示すように、プラテン16の右方に位置するホームポジションHPにキャリッジ17が配置されているとき、第1ピンチローラ53とキャリッジ17の一部が搬送方向Xにおいて重なっている。ここで、第1ピンチローラ53は、プラテン16に設けられた第1グリットローラ51に対向して配置されている。したがって、キャリッジ17は、プラテン16の一部とも搬送方向Xにおいて重なっている。このとき、カッター33は、第1ピンチローラ53に対して右方に配置されている。カッティングヘッド31は、キャリッジ17がホームポジションHPに配置されているときのカッター33に対して左方にてメディア5の切断を行う。したがって、カッター33は、メディア5を走査方向Yの右端から左端にかけて切断することができる。このことにより、キャリッジ17の全体がプラテン16よりも右方または左方に配置されている場合に比べ、メディア5を走査方向Yに切断可能なままプリンタ10の走査方向Yの長さを短くすることができる。
【0046】
本実施形態のプリンタ10によると、第1保持部材63の左面63aLには、操作ノブ65が設けられている。第1保持部材63は、シャフト61に摺動可能に支持されている。操作ノブ65は、キャリッジ17がホームポジションHPに配置されているとき、第1ピンチローラ53に対してキャリッジ17の反対側に配置されている。ここで、本実施形態のように、キャリッジ17がホームポジションHPに配置されているときに、第1ピンチローラ53とキャリッジ17の一部とが搬送方向Xにおいて重なっていると、作業者は、第1保持部材63を掴むことができず、第1保持部材63を走査方向Yに摺動させることができない可能性がある。すなわち、第1ピンチローラ53を走査方向Yに移動させることができない可能性がある。しかしながら、第1保持部材63に操作ノブ65が設けられていることにより、作業者は、操作ノブ65を掴んで第1保持部材63を移動させることができる。
【0047】
本実施形態のプリンタ10によると、操作ノブ65は、延伸部65bと掴み部65cとを備えている。延伸部65bおよび掴み部65cは、平面視にてL字状の形状を形成している。延伸部65bおよび掴み部65cがL字状の形状を形成することにより、操作ノブ65は、第1保持部材63の左面63aLと掴み部65cとの間に作業者が指を入れやすい構造となっている。したがって、操作ノブ65は、作業者が第1保持部材63を移動させるときに掴みやすい形状となっている。
【0048】
本実施形態のプリンタ10によると、第1ピンチローラ53は、昇降機構60により挟持位置と離間位置との間にて第1グリットローラ51に接近または離間する。
図8Bに示すように、操作ノブ65は、第1ピンチローラ53が挟持位置に配置されているときに、プラテン16よりも上方に配置されている。第1ピンチローラ53が挟持位置に配置されていても操作ノブ65がプラテン16よりも上方に配置されていることにより、第1ピンチローラ53が離間位置に配置されても操作ノブ65は、プラテン16よりも上方に配置されている。すなわち、昇降機構60により第1保持部材63が上下方向に昇降するとき、操作ノブ65は、常にプラテン16よりも上方に配置されている。仮に、第1保持部材63が昇降するときに操作ノブ65がプラテン16に接触すると、第1保持部材63の昇降が妨げられる。しかしながら、本実施形態のように、常に操作ノブ65がプラテン16よりも上方に配置されていることにより、操作ノブ65がプラテン16に接触し、第1保持部材63の昇降を妨げることが防がれている。
【0049】
本実施形態のプリンタ10によると、操作ノブ65の搬送方向Xの下流側の先端65Fは、キャリッジ17の後端の位置よりも後方に配置されている。このことにより、キャリッジ17が走査方向Yに移動しても、キャリッジ17と操作ノブ65とが接触しない。したがって、操作ノブ65がキャリッジ17の移動を妨げることがない。
【0050】
本実施形態のプリンタ10によると、シャフト61は、
図4に示すように、プラテン16の走査方向Yの中心よりも右方にストッパ66を備えている。したがって、ストッパ66は、走査方向YにおいてホームポジションHPに比較的近い位置に配置されている。また、インクジェットヘッド21は、第1ピンチローラ53よりも左方にてインクの吐出を行うように構成されている。第1ピンチローラ53は、ストッパ66よりも右方に配置されている。すなわち、第1ピンチローラ53は、ストッパ66よりも走査方向YにおいてホームポジションHPに近い位置に配置されている。したがって、メディア5がプラテン16の走査方向Yの中心より左方の範囲のみに配置されることはない。すなわち、インクジェットヘッド21によるインクの吐出がプラテン16の走査方向Yの中心より左方の範囲のみで行われることはない。キャリッジ17は、ホームポジションHPより走査方向Yに往復移動するため、メディア5がホームポジションHPに近い位置に配置されている方が、キャリッジ17の印刷時の移動距離を少なくすることができる。本実施形態のように、第1ピンチローラ53がストッパ66よりも右方に配置されていることにより、キャリッジ17の印刷時の移動距離が少なくなる。このことにより、キャリッジ17の移動に要する時間が削減されるため、メディア5へのインクの吐出を効率的に行うことができる。
【0051】
本実施形態のプリンタ10によると、第1グリットローラ51の走査方向Yの長さL1は、第2グリットローラ55同士の走査方向Yの間隔L2よりも長い。インクジェットヘッド21は、第1ピンチローラ53よりも左方かつ第2ピンチローラ56よりも右方の範囲にてインクの吐出を行うように構成されている。ここで、
図9に示すように、仮に、第2グリットローラ55同士の間隔がL4(>L1)であり、かつメディア5の左端部5Lが走査方向Yにおいて、2つの第2グリットローラ55の間の位置に配置されているものとする。このとき、第1ピンチローラ53と共にメディア5の右端部5Rを第1グリットローラ51上において走査方向Yに移動させても、L4>L1であることから、いずれの第2グリットローラ55上にもメディア5の左端部5Lを配置することができない可能性がある。したがって、第2ピンチローラ56をメディア5の左端部5Lに配置することができず、メディア5の右端部5Rと左端部5Lとを同時に挟持することができない可能性がある。よって、例えば、メディア5の左端部5Lを含むメディア5の一部にインクが吐出されず、メディア5の一部が無駄になる。本実施形態のようにL1>L2であることにより、メディア5の左端部5Lが複数の第2グリットローラ55のいずれかの上方に配置された状態において、第1ピンチローラ53を第1グリットローラ51の上方に配置することができる。メディア5の左端部5Lの位置が、走査方向Yにおいて第2グリットローラ55同士の間に配置されているときは、メディア5を走査方向Yに移動させ、メディア5の左端部5Lをいずれかの第2グリットローラ55の上方に配置させると共に、第1ピンチローラ53も同様に走査方向Yに移動させればよい。したがって、メディア5の走査方向Yの両端の位置をそれぞれ第1ピンチローラ53および第2ピンチローラ56により挟持することができる。このことにより、メディア5の右端部5Rと左端部5Lとの間の範囲において、インクジェットヘッド21によりインクが吐出される。したがって、メディア5の一部が無駄になることがない。
【0052】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えば、メディアを台の上に固定し、台を搬送方向Xに搬送する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、台に対してキャリッジを走査方向Yおよび搬送方向Xに移動させる、所謂、ガントリータイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
5 メディア
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
16 プラテン
17 キャリッジ
21 インクジェットヘッド
31 カッティングヘッド
33 カッター
40 移動機構
51 第1グリットローラ
53 第1ピンチローラ
HP ホームポジション