(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151435
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】切削加工機
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20241018BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B23Q11/00 P
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064750
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】百々 晋平
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB02
3C011BB06
3C011DD03
(57)【要約】
【課題】外扉への切削粉の堆積を抑制する切削加工機を提供する。
【解決手段】切削加工機10は、内部に加工室120が形成され、加工室120の前方に前面開口部121が形成されたケース本体11と、前面開口部121に取り付けられるエアダクトカバー126と、ケース本体11の前方に開閉可能に設けられた加工室扉122とを備えている。エアダクトカバー126と加工室扉122との間には、空気流路127が形成され、下部吸気口95と、導入口96につながっている。導入口96は、前面開口部121を介して加工室120につながっている。下部吸気口95から流入した空気が空気流路127および導入口96を通過するとき、加工室扉122の後面にエアカーテンが形成される。このことより、加工室扉122への切削粉の堆積が抑制される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被切削物を切削する加工室が形成され、前記加工室の前方に開口が形成されたケース本体と、
前記ケース本体に形成され、前記加工室の内部と外部とを連通させるとともに集塵機と接続可能に構成された排気口と、
少なくとも一部が前記ケース本体の前記開口の前方に開閉可能に設けられた外扉と、
前記開口に装着され、前記外扉の後方に配置され、前記外扉に沿って延びるエアダクトカバーと、を備え、
前記エアダクトカバーと前記外扉との間に、エアカーテンを形成する空気が流れる空気流路が形成され、
前記ケース本体の外部と前記空気流路とをつなぐ吸気口と、
前記空気流路と前記加工室とをつなぐ導入口と、を備えた、切削加工機。
【請求項2】
前記吸気口は、前記ケース本体の底壁の前端と前記外扉との隙間により形成されている、請求項1に記載の切削加工機。
【請求項3】
前記エアダクトカバーは、
前記外扉に沿って延びるダクト形成部と、
前記ダクト形成部の上端に接続され、上方に延びる絞り部と、を備え、
前記絞り部は、上端に向かうにしたがって前記外扉に近づくように延びる、請求項2に記載の切削加工機。
【請求項4】
前記エアダクトカバーは、
前記外扉に沿って延びるダクト形成部と、
前記ダクト形成部の下端に接続され、前方に延びる受け部と、を備え、
前記ダクト形成部と前記受け部とのなす角は、直角または鋭角である、請求項2に記載の切削加工機。
【請求項5】
前記ケース本体は、後方に凹み、かつ前記開口が形成された凹部を備え、
前記エアダクトカバーは、前記凹部に着脱可能に嵌め込まれている、請求項1に記載の切削加工機。
【請求項6】
前記凹部および前記エアダクトカバーの一方は磁石を備え、他方は前記磁石と吸着する磁性体を備えている、請求項5に記載の切削加工機。
【請求項7】
前記エアダクトカバーは、その上端の位置が、前記開口の上下方向の中間の位置と同一、または、前記開口の上下方向の中間の位置よりも上方となるように配置されている、請求項1に記載の切削加工機。
【請求項8】
前記エアダクトカバーは、透光性を有している、請求項1に記載の切削加工機。
【請求項9】
前記エアダクトカバーは、透光性を有し、
前記外扉は、透光性を有する外カバーを有し、
前記外カバーは、正面視にて前記エアダクトカバーと少なくとも一部が重なっている、請求項1に記載の切削加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
被切削物に加工ツールを当接させる切削加工により、例えば、歯科用成形品などを作製する切削加工機が従来から知られている。このような切削加工機では、切削加工が実施されるときに切削粉が発生する。切削粉が切削加工機の外部にこぼれるのを防ぐため、加工ツールは、フロントカバー(外扉)などにより覆われている。例えば、特許文献1には、加工ツールと、加工ツールを把持して回転させるスピンドルと、加工ツールを移動させる駆動部と、加工部の前方に配置されたフロントカバーと、を備えた切削加工機が開示されている。加工ツールは、切削加工機の壁部とフロントカバーとによって区画された内部空間に収容されている。係る切削加工機では、切削加工が実施されると切削粉が生じるが、フロントカバーにより、切削加工中に外部に切削粉がこぼれることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントカバーの内部空間側には、徐々に切削粉が堆積する。フロントカバーに比較的多くの切削粉が堆積すると、作業者が被切削物を取り出すためにフロントカバーを開けたときに、切削加工機の外部に切削粉がこぼれる可能性がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、外扉への切削粉の堆積を抑制する切削加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る切削加工機は、内部に被切削物を切削する加工室が形成され、前記加工室の前方に開口が形成されたケース本体と、前記ケース本体に形成され、前記加工室の内部と外部とを連通させるとともに集塵機と接続可能に構成された排気口と、少なくとも一部が前記ケース本体の前記開口の前方に開閉可能に設けられた外扉と、前記開口に装着され、前記外扉の後方に配置され、前記外扉に沿って延びるエアダクトカバーと、を備えている。前記エアダクトカバーと前記外扉との間に、エアカーテンを形成する空気が流れる空気流路が形成され、前記ケース本体の外部と前記空気流路とをつなぐ吸気口と、前記空気流路と前記加工室とをつなぐ導入口と、を備えている。
【0007】
係る切削加工機によれば、前記エアダクトカバーと前記外扉との間に前記空気流路が形成されている。前記空気流路は、前記吸気口と前記導入口とに接続されている。ここで、前記排気口に接続された前記集塵機が駆動することにより、前記空気流路に気流が発生する。当該気流は、前記吸気口から流入し、前記空気流路を通り、前記導入口へと進み、前記加工室に向かって進む。ここで、前記吸気口は、前記外扉と前記エアダクトカバーとの間に配置されている。また、前記エアダクトカバーは、前記外扉の後方に配置されている。したがって、当該気流の一部は、前記外扉の後面に沿って流れる。よって、前記空気流路により前記外扉の後方に前記エアカーテンが形成される。このことにより、前記加工室にて飛散した前記切削粉が前記開口の前方まで到達しても、気流が形成する前記エアカーテンにより、前記切削粉は前記外扉の上方に向かって流される。その後、前記気流とともに前記切削粉は、前記排気口に向かって流れ、前記集塵機に吸引される。したがって、前記外扉への前記切削粉の堆積が抑制されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外扉への切削粉の堆積を抑制する切削加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る切削加工機の斜視図である。
【
図7】
図6におけるA-A断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施の形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0011】
図1は、一実施形態に係る切削加工機10の斜視図である。以下の説明では、切削加工機10を正面から見たときに、切削加工機10から遠ざかる方を前方、切削加工機10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、切削加工機10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0012】
図2は、被切削物1およびアダプタ5の平面図である。本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタ5に保持されたディスク状の被切削物1を切削加工する加工機である。切削加工機10は、被切削物1を切削して、歯科用成形品、例えば、クラウン、ブリッジ、コーピング、インレー、アンレー、ベニア、カスタムアバットメント等の歯冠補綴物や、人工歯、義歯床等を作製する装置である。切削加工機には、クーラントを使用しないドライ式のものと、クーラントを使用するウェット式のものと、が存在する。本明細書では、ドライ式の切削加工機について説明する。
【0013】
被切削物1は、例えば、PMMA、PEEK、ガラス繊維強化樹脂、ハイブリッドレジン等のレジンや、ガラスセラミックス、ジルコニア等のセラミックス材料、コバルトクロムシンターメタル等の金属材料、ワックス、石膏等で構成されている。被切削物1の材料としてジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。被切削物1は、平板状に形成されている。ここでは、被切削物1の形状は、ディスク状(円板状)である。ただし、被切削物1は、他の形状、例えばブロック状(例えば立方体状や直方体状)等であってもよい。
【0014】
図2に示すように、アダプタ5は、ディスク状の被切削物1を保持する。アダプタ5は、ここでは、被切削物1に対応する略円形の挿入孔5aが中央部に形成された平板状のアダプタである。被切削物1は、挿入孔5aに挿入されることにより、アダプタ5に保持される。被切削物1は、アダプタ5に保持された状態で切削加工機10に収容され、加工される。
【0015】
図3は、左方から見た切削加工機10の縦断面図である。
図4は、右方から見た切削加工機10の縦断面図である。
図3および
図4に示すように、切削加工機10は、箱状に構成されたケース本体11を有している。ケース本体11の内部は、アダプタ5(
図2参照)を保持するワークホルダ20が収容された加工室120と、ワークホルダ20を移動させるホルダ移動装置30が収容された駆動装置室130と、切削装置50、エアブロー装置55および移動装置60が収容された切削装置室150と、ワークチェンジャ70が収容されたチェンジャ室170と、切削ツール6をツールストッカ80に収納するためのツール交換室180と、を含む複数の空間に区画されている。
【0016】
ワークホルダ20は、被切削物1を保持する装置である。ワークホルダ20は、ここでは、アダプタ5を介して被切削物1を保持する。ただし、ワークホルダ20は、他の部材を介さず、被切削物1を直接保持してもよい。
図5は、ワークホルダ20の平面図である。
図5に示すように、ワークホルダ20は、左右一対のアーム21を備えている。アダプタ5は、一対のアーム21の間に挿入されることによってワークホルダ20に保持される。
【0017】
図5に示すように、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を支持して移動させるものである。本実施形態では、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を前後方向に移動させる。より詳しくは、
図4に示すように、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20(
図3参照)を斜め前後方向に移動させる。ワークホルダ20は、ホルダ移動装置30により前方に移動されると上方にも移動する。ワークホルダ20は、ホルダ移動装置30により後方に移動されると下方にも移動する。以下では、ホルダ移動装置30によってワークホルダ20が移動される方向をX軸方向とも呼ぶ。また、以下では、特に断る必要がない場合には、X軸方向の前方を単に前方と、X軸方向の後方を単に後方と言うことがある。
【0018】
図5に示すように、ホルダ移動装置30は、左右方向に延びるとともにワークホルダ20を支持する支持アーム31を備えている。
図4に示すように、ホルダ移動装置30は、支持アーム31に接続されたX軸方向移動体32と、一対のX軸ガイドレール33と、X軸方向駆動モータ34と、を備えている。ホルダ移動装置30は、支持アーム31をX軸方向に移動させることにより、ワークホルダ20をX軸方向に移動させる。ホルダ移動装置30は、その少なくとも一部が駆動装置室130に収容されている。ここでは、ホルダ移動装置30のX軸方向移動体32、一対のX軸ガイドレール33、X軸方向駆動モータ34、および支持アーム31の一部が、駆動装置室130に収容されている。
【0019】
一対のX軸ガイドレール33は、X軸方向に延びている。X軸方向移動体32は、一対のX軸ガイドレール33に摺動可能に係合している。X軸方向移動体32は、X軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動することが可能である。図示は省略するが、例えば、X軸方向移動体は、ボールねじに接続されている。X軸方向駆動モータ34は、当該ボールねじを回転させる。X軸方向駆動モータ34を駆動すると、X軸方向移動体32は、X軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動する。なお、ホルダ移動装置30は、ボールねじ機構を有するものには限定されず、例えば、タイミングベルトやワイヤを有していてもよい。
【0020】
図5に示すように、支持アーム31は、左右方向に延びる軸線AXb周りに回転する回転シャフト31aと、軸線AXbと直交するように回転シャフト31aに接続され回転シャフト31aとともに前後方向に回転する第1アーム31bと、軸線AXbに平行に(第1アーム31bと直交するように)第1アーム31bに接続された第2アーム31cと、を備えている。
図4に示すように、X軸方向移動体32には、回転シャフト31a(
図5参照)を軸線AXb周りに回転させるB軸回転モータ41Bが設けられている。B軸回転モータ41Bが駆動して回転シャフト31aが回転すると、ワークホルダ20は前後方向に回転する。
【0021】
図5に示すように、回転装置40は、ワークホルダ20を左右方向に回転させるA軸回転装置40Aを備えている。A軸回転装置40Aは、A軸回転モータ41Aと、回転軸42Aと、を備えている。A軸回転モータ41Aは、第2アーム31cに固定されている。回転軸42Aは、A軸回転モータ41A(より詳細にはA軸回転モータ41Aを含む駆動ユニット)に接続され、軸線AXaに沿って前後方向に延びている。A軸回転モータ41Aを駆動すると、回転軸42Aは軸線AXa周りに回転する。
【0022】
図3に示すように、加工室120の右側壁120Rは、加工室120と駆動装置室130(
図4参照)との間を区画している。
図4に示すように、右側壁120Rは、駆動装置室130の左側壁でもある。
図3に示すように、右側壁120Rには、X軸方向に延びるとともにホルダ移動装置30の支持アーム31が通るスリット129が形成されている。スリット129は、支持アーム31(
図5参照)が挿通される開口部である。
図5に示すように、支持アーム31には、加工室120内で発生した切削粉が駆動装置室130に侵入することを防止する防塵板36が固定されている。
図3に示すように、防塵板36は、スリット129の少なくとも一部を覆うように設けられ、支持アーム31とともにX軸方向に移動する。防塵板36は、支持アーム31のうち加工室120内に位置した部分に固定され、加工室120内に設けられている。防塵板36は、ここでは、支持アーム31のX軸方向の位置に応じて、スリット129の異なる部分を覆うように構成されている。
【0023】
図3に示すように、加工室120の後部かつ下部には、排気口128が開口している。排気口128には、後述する排気ダクト92等を介して集塵機140が接続されている。集塵機140により排気口128から加工室120内の空気や切削粉が排出される。
【0024】
本実施形態では、排気口128の下方には、集塵チャンバ90が設けられている。集塵チャンバ90は、上方が開放された箱状の部材である。集塵チャンバ90には、上方を向くように開口した上方開口部90Uが形成されている。上方開口部90Uは、排気口128に接続されている。集塵チャンバ90には、内部空間が形成されている。
図5に示すように、集塵チャンバ90の内部空間は、平面視において排気口128よりも大きい。
【0025】
図3に示すように、集塵チャンバ90には、ダクト接続孔91が形成されている。ダクト接続孔91は、排気ダクト92が接続される開口部である。切削加工機10は、ダクト接続孔91に接続される排気ダクト92を備えている。排気ダクト92の前端部は、ダクト接続孔91に接続されている。排気ダクト92は、集塵チャンバ90を介して排気口128および加工室120に連通している。排気ダクト92の後端部は、切削加工機10の外部まで延びている。排気ダクト92の後端部には、集塵機140が接続されている。
【0026】
集塵機140は、加工室120の後方に配置されている。集塵機140は、加工室120の内部の空気や切削粉を吸引するものであり、排気口128に接続可能に構成されている。本実施形態では、集塵機140は、集塵チャンバ90の排気ダクト92を介して排気口128に接続されている。集塵機140は、接続管141により排気ダクト92の後端部に接続され、加工室120の後方に配置されている。集塵機140の構成は、特に限定されないが、例えば、集塵機140はファンを有している。当該ファンが回転することにより、集塵機140は、加工室120の内部の空気や切削粉を吸引することができる。
【0027】
ワークチェンジャ70は、複数の被切削物1(
図2参照)を収納可能に構成されており、加工する被切削物1を交換するために使用される。本実施形態では、被切削物1が装着されたアダプタ5(
図2参照)がワークチェンジャ70により交換される。
図3に示すように、ワークチェンジャ70は、アダプタ収納部71と、アダプタ収納部71を加工室120に搬送する搬送装置72と、を備えている。アダプタ収納部71は、被切削物1が装着されたアダプタ5(
図2参照)を収納する。例えば、被切削物1の交換時のような場合を除き、アダプタ収納部71は、チェンジャ室170に収容されている。
図1に示すように、アダプタ収納部71には、それぞれ1つのアダプタ5(
図2参照)を収納する棚状の収納スペース71aが複数設けられている。複数の収納スペース71aは、上下方向に並んでいる。より詳しくは、複数の収納スペース71aは、X軸方向に直交する斜め上下方向(以下、L軸方向とも呼ぶ、
図3参照)に並んで配置されている。
【0028】
図3に示すように、搬送装置72は、L軸方向に延びるスライドアーム72Aと、L軸方向駆動モータ72Bと、を備えている。スライドアーム72Aは、アダプタ収納部71に固定され、L軸方向に摺動可能である。L軸方向駆動モータ72Bが駆動することにより、スライドアーム72AがL軸方向に移動し、加工室120に到達する。これにより、アダプタ収納部71がL軸方向に移動する。アダプタ収納部71がL軸に沿って下方に移動した状態において、ワークホルダ20をX軸方向に前進させ、アダプタ5の収納スペース71a(
図1参照)に突入させることにより、アダプタ5がワークホルダ20に保持される。
【0029】
図3に示すように、切削装置50は、切削装置室150に収容されている。切削装置50は、ワークホルダ20に保持された被切削物1を切削ツール6によって切削する。切削装置50は、ワークホルダ20およびツールストッカ80よりも上方に設けられている。切削装置50は、切削ツール6を把持して回転させるスピンドル51を備えている。スピンドル51は、回転ユニット52と、回転ユニット52の下端部に設けられた把持部53と、を備えている。回転ユニット52は、X軸方向と直交する(ここでは、L軸方向と平行な)方向に延びている。以下、この方向をZ軸方向とも呼ぶ。回転ユニット52は、把持部53をZ軸方向に平行な軸線周りに回転させる。回転ユニット52は、ここでは、モータ内蔵のユニットである。ただし、回転ユニット52は、例えば、外部のモータとベルト等により接続されていてもよい。把持部53は、開閉可能に構成されている。把持部53は、Z軸方向の下方に突き出すように切削ツール6を把持する。把持部53は、例えば、エア駆動式のコレットチャックである。ただし、把持部53の方式は特に限定されない。スピンドル51には、エアブロー装置55が設けられている。エアブロー装置55は、下端部よりエアを噴出する装置であり、切削により生じた被切削物1の切削粉を飛ばすものである。
【0030】
図3に示すように、移動装置60は、切削装置室150に収容されている。移動装置60は、切削装置50およびエアブロー装置55をZ軸方向および左右方向に移動させる装置である。ここで、左右方向とは、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向である。以下では、左右方向のことをY軸方向(
図5参照)とも呼ぶ。移動装置60は、ワークホルダ20よりも上方に設けられている。移動装置60が切削装置50をY軸方向およびZ軸方向に移動させ、ホルダ移動装置30がワークホルダ20をX軸方向に移動させることにより、切削ツール6と被切削物1との位置関係が三次元的に変化する。切削装置50およびエアブロー装置55は、Z軸方向の移動により、加工室120内に出現し、または、切削装置室150内に退避する。なお、加工室120と切削装置室150とは、開口部120Aにより連通している。開口部120Aは、切削装置50およびエアブロー装置55が通過できる程度の大きさを有している。移動装置60は、その少なくとも一部が加工室120内かつワークホルダ20よりも上方に配置されるような位置に切削装置50およびエアブロー装置55を移動させることが可能である。移動装置60は、加工室120と切削装置室150との間で切削装置50およびエアブロー装置55を移動させることが可能である。
【0031】
移動装置60は、Z軸方向移動装置60Zと、Y軸方向移動装置60Yと、を備えている。Z軸方向移動装置60Zは、切削装置50およびエアブロー装置55をZ軸方向に移動させる装置である。Y軸方向移動装置60Yは、切削装置50およびエアブロー装置55をY軸方向に移動させる装置である。Z軸方向移動装置60Zは、Z軸方向に延びる一対のZ軸ガイドシャフト61Zと、Z軸ガイドシャフト61Zに摺動可能に係合し、切削装置50およびエアブロー装置55を支持するZ軸方向移動体62Zと、Z軸方向駆動モータ63Zと、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。Z軸方向移動体62Zは、ボールねじに接続されている。Z軸方向駆動モータ63Zが回転すると、ボールねじが回転し、Z軸方向移動体62Zは、Z軸ガイドシャフト61Zに沿って移動する。これにより、切削装置50とエアブロー装置55とがZ軸方向に移動する。Y軸方向移動装置60Yは、Z軸方向移動装置60Zが切削装置50およびエアブロー装置55をZ方向に移動させるのと同様の仕組みで、切削装置50およびエアブロー装置55をY軸方向に移動させる。
【0032】
切削装置室150の天壁150Uには、上部吸気口152が開口している。上部吸気口152は、例えば、左右方向に並んだ複数のスリットから構成されている。ただし、上部吸気口152の形状は特に限定されない。上部吸気口152は、排気口128から空気が排出されるのに応じて、切削加工機10内に外部の空気を取り込むための開口部である。上部吸気口152は、切削装置室150に連通している。さらに上部吸気口152は、切削装置室150を介して駆動装置室130およびチェンジャ室170にも連通している。切削装置室150と駆動装置室130とは、切削装置室150の底壁(駆動装置室130の天壁)に開口した後方側開口部125(
図4参照)によって連通されている。切削装置室150とチェンジャ室170とは、特に仕切なく連通している。加工室120は、切削装置室150および駆動装置室130を介して上部吸気口152と連通している。駆動装置室130と加工室120とは、加工室120の右側壁120R(駆動装置室130の左側壁)に開口したスリット129によって連通されている。加工室120は、切削装置室150およびチェンジャ室170を介しても上部吸気口152と連通している。チェンジャ室170と加工室120とは、加工室120の天壁120U(チェンジャ室170の底壁)に開口した前方側開口部124によって連通されている。
【0033】
ツールストッカ80は、駆動装置室130に収容されている。
図3に示すように、ツールストッカ80は、棒状に形成された切削ツール6を複数収納可能な箱状の部材である。複数の切削ツール6は、例えば、被切削物1の材料や切削の種類に応じて使い分けられる。ツールストッカ80は、X軸方向移動体32(
図4参照)に支持されている。詳しくは、ツールストッカ80は、X軸方向移動体32の上面に固定されている。
【0034】
ホルダ移動装置30(
図4参照)は、開口部120Aの下方に位置するツール把持位置P1にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。切削装置50に切削ツール6を把持させるには、まず、ツール把持位置P1にツールストッカ80を移動させる。次に、切削装置50をツール把持位置P1の上方の位置に移動させる。この状態で、Z軸方向移動装置60Zを駆動して切削装置50を下降させる。このことにより、切削装置50にツールストッカ80の切削ツール6を把持させることができる。
【0035】
ホルダ移動装置30は、ツール把持位置P1よりも前方に設定されたツール交換位置P2にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。ツール交換位置P2は、ツール交換室180(
図4参照)の下方に設定されている。ツール交換室180の底壁183(
図4参照)には、ツール交換位置P2の上方に位置しかつZ軸方向に開口した開口部(図示せず)が形成されている。開口部は、ユーザがツールストッカ80に切削ツール6を抜き差しするためのものである。ホルダ移動装置30を駆動してツールストッカ80をツール交換位置P2に移動させると、ユーザは、開口部を通してツールストッカ80にアクセスすることができる。開口部が形成されたツール交換室180を設けることにより、切削ツール6の交換時などにユーザがホルダ移動装置30に触れてしまうことが防止されている。また、かかる構成により、切削ツール6の交換時などに駆動装置室130に外部の異物が侵入することが抑制されている。
【0036】
図1に示すように、加工室120の前方に前面開口部121が形成され、前面開口部121の前方に加工室扉122が開閉自在に設けられている。前面開口部121は、本発明における開口の一例である。加工室扉122は、本発明における外扉の一例である。
図6に示すように、本実施形態では、前面開口部121のZ軸方向の高さはL2である。
図1に示すように、駆動装置室130の前面開口部131(
図4参照)の前方には、駆動装置室扉132が設けられている。チェンジャ室170の前面開口部171(
図3参照)の前方には、チェンジャ室扉172が開閉自在に設けられている。ツール交換室180の前面開口部181(
図4参照)の前方には、ツール交換室扉182が開閉自在に設けられている。加工室扉122、チェンジャ室扉172、およびツール交換室扉182には、それぞれ、窓部122a、172a、および182aが設けられている。窓部122a、172a、および182aは透光性を有する材料により形成されている。窓部122aは、本発明における外カバーの一例である。また、窓部122aは、正面視にて後述するエアダクトカバー126と揃った位置に配置されている。ここで、本明細書において正面視とは、X軸方向において、前方から後方に向かう方向に見るときの見方である。なお、窓部122aは、正面視にてエアダクトカバー126と一部が重なっているものであってもよい。駆動装置室扉132の前面には、操作パネル110が設けられている。
図3および
図4に示すように、ケース本体11の前面(ここでは、加工室120、駆動装置室130、チェンジャ室170、およびツール交換室180の前面開口部121、131、171、181)は、底面に対して斜めに形成されている。ケース本体11の前面は、後方に傾くように形成されている。
図7に示すように、ケース本体11の底壁120Dの前端120Daと加工室扉122の下端との間の隙間により、下部吸気口95が形成されている。
【0037】
図1に示すように、加工室扉122の後面には、パッキン122bが取り付けられている。パッキン122bは、窓部122aの上端、左端および右端を囲むように配置されている。パッキン122bを形成する材料は特に限定されないが、例えば、ゴム製である。パッキン122bは、例えば、両面テープなどにより加工室扉122に取り付けられる。パッキン122bは、加工室扉122が閉じられているとき、後述する枠部123(
図6参照)に接するように配置されている。
【0038】
前面開口部121は、加工室120(
図3参照)の前方に配置されている。
図6に示すように、本実施形態では、前面開口部121の形状は、正面視にて矩形形状である。前面開口部121には、エアダクトカバー126が配置されている。
【0039】
図7に示すように、加工室扉122の後方には、枠部123が形成されている。
図6に示すように、枠部123は、加工室120を区画する上方、下方、左方および右方の壁である天壁120U、底壁120D、左壁120Lおよび右側壁120Rに接続されている。枠部123には、前面開口部121が形成されている。枠部123は、後方に延びる凹部123aを備えている。凹部123aには、エアダクトカバー126が嵌め込まれている。エアダクトカバー126には、磁石100が取り付けられている。凹部123aには、磁石100に吸着する磁性体101が嵌め込まれている。
【0040】
凹部123aは、左右一対に配置されている。凹部123aは、後方に向かうほど左右の凹部123a同士の間隔が狭くなるように形成されている。凹部123aのX軸方向の前後方向の傾きは、後述するエアダクトカバー126の側部126d(
図8参照)のX軸方向の前後方向の傾きと略一致している。したがって、エアダクトカバー126の後方にて凹部123aがエアダクトカバー126を支持する。凹部123aには、磁石100に吸着する磁性体101が嵌め込まれている。
【0041】
前述したように、底壁120Dの前端120Daと加工室扉122の下端との隙間により、下部吸気口95が形成されている。
図7は、
図6におけるA-A断面の断面図である。下部吸気口95は、本発明における吸気口の一例である。ただし、下部吸気口95の構成はこれに限定されない。下部吸気口95は、ケース本体11と後述する空気流路127とをつなぐ開口である。
【0042】
エアダクトカバー126は、凹部123aに支持され、前面開口部121に着脱可能に取り付けられている。エアダクトカバー126が取り付けられることにより、エアダクトカバー126と加工室扉122との間に、空気流路127が形成される。
図8に示すように、エアダクトカバー126は、Z軸方向の上下方向に延びるダクト形成部126aと、ダクト形成部126aの上端から上方かつ前方に延びる絞り部126bと、ダクト形成部126aの下端から前方に延びる受け部126cと、ダクト形成部126aの右方および左方に配置され、ダクト形成部126a、絞り部126bおよび受け部126cを接続する側部126dを備えている。本実施形態では、エアダクトカバー126は、透光性を有する樹脂材料により形成されている。ただし、エアダクトカバー126を形成する材料は、特に限定されない。また、本実施形態では、ダクト形成部126a、絞り部126b、受け部126cおよび側部126dが一体に形成されている。ただし、ダクト形成部126a、絞り部126b、受け部126cおよび側部126dがそれぞれ別体により形成されていてもよく、あるいは、ダクト形成部126a、絞り部126b、受け部126cおよび側部126dのいずれか二つまたは三つが一体に形成されていてもよい。
図6に示すように、エアダクトカバー126は、エアダクトカバー126の下端と前面開口部121の下端とが揃うようにして前面開口部121に取り付けられる。エアダクトカバー126の上端の位置は、前面開口部121の上下方向の中間の位置よりも上方となるように配置されている。すなわち、エアダクトカバー126のZ軸方向の高さL1は、前面開口部121のZ軸方向の高さL2の半分よりも長い。なお、エアダクトカバー126のZ軸方向の高さL1は、前面開口部121のZ軸方向の高さL2の半分と同じであってもよい。すなわち、L1とL2において、L1≧L2/2が成り立っている。
【0043】
図6に示すように、ダクト形成部126aは、正面視にて矩形形状を有している。
図7に示すように、ダクト形成部126aは、前面開口部121に取り付けられたとき、Z軸方向において加工室扉122と略平行となる。本実施形態において、ダクト形成部126aと加工室扉122とのX軸方向の間隔は、W1となっている。絞り部126bは、ダクト形成部126aの上端から上方かつ前方に向かって延びている。絞り部126bのX軸方向における前端126baの位置は、枠部123のX軸方向における前端の位置と略面一となっている。したがって、X軸方向において絞り部126bの前端126baの位置は、加工室扉122よりも後方に位置している。絞り部126bの前端126baと加工室扉122とにより、後述する導入口96が形成されている。受け部126cは、ダクト形成部126aの下端からX軸方向の前方に向かって延びている。本実施形態では、ダクト形成部126aと受け部126cとの成す角が90度となるように形成されている。ただし、ダクト形成部126aと受け部126cとの成す角は、鋭角であってもよい。受け部126cのX軸方向における前端126caの位置は、絞り部126bのX軸方向における前端の位置と略面一となっている。
図8に示すように、側部126dは、Z軸方向に延び、ダクト形成部126aと絞り部126bと受け部126cとを接続している。
図7に示すように、エアダクトカバー126が前面開口部121に取り付けられるとき、側部126dの後面が凹部123aに支持される。側部126dの後面には磁石100が取り付けられている。磁石100の取り付け方は、特に限定されない。例えば、磁石100は、両面テープにより側部126dの後面に取り付けられるものであってもよい。
【0044】
図7に示すように、空気流路127は、エアダクトカバー126と加工室扉122との間に形成される空間である。本実施形態では、空気流路127は、加工室扉122の後方にてZ軸方向の上下方向に延びる流路である。したがって、空気流路127を流れる空気により、エアダクトカバー126と加工室扉122との間にエアカーテンが形成される。空気流路127は、その下端の位置にて下部吸気口95と接続し、その上端の位置にて後述する導入口96と接続されている。
【0045】
導入口96は、絞り部126bの前端126baと加工室扉122との隙間により形成される開口である。導入口96は、空気流路127と加工室120の内部とを接続する。本実施形態では、導入口96は、前面開口部121を介して空気流路127と加工室120の内部とを接続している。ただし、導入口96の構成は、これに限定されない。本実施形態において、導入口96のX軸方向の長さはW2となっている。導入口96のX軸方向の長さW2は、ダクト形成部126aと加工室扉122とのX軸方向の間隔W1よりも短い。
【0046】
以上、本実施形態に係る切削加工機10の構成について説明した。次に、下部吸気口95、上部吸気口152および排気口128により形成される気流について説明する。
【0047】
図3に示すように、本実施形態では、集塵機140に接続された排気口128が加工室120の後部かつ下部に配置されている。集塵機140が駆動すると、加工室120の内部の空気が吸引され、排気口128に向かって移動する。排気口128に向かって移動する空気により、切削粉も排気口128に向かって移動する。
図7に示すように、下部吸気口95から流入した空気は、空気流路127を上方に向かって進み、導入口96を通過し、加工室扉122の上端付近(より詳しくは、窓部122aの上方に配置されたパッキン122bの下端)まで流れる。このとき、気流F1が発生する。なお、
図6に示すように、前面開口部121の外側において、枠部123とパッキン122bとが接触している。
図6において、パッキン122bは、破線にて図示されている。枠部123とパッキン122bとが接触している部分には、前後方向に隙間が生じていない。したがって、下部吸気口95(
図7参照)から流入した空気は、左右方向に広がりにくく、そのほとんどが気流F1を形成する。上述の通り、
図7に示す導入口96のX軸方向の長さW2は、ダクト形成部126aと加工室扉122とのX軸方向の間隔W1よりも短い。したがって、気流F1は、導入口96にて、空気の流れが絞られている。よって、導入口96付近にて気流F1の流速が上昇している。下部吸気口95から流入した空気は、気流F1に沿って流れた後、加工室扉122の上端付近にて、集塵機140の吸引により、後方へと進む向きにその進行方向が変わる。あるいは、下部吸気口95から流入した空気は、窓部122aの上方に配置されたパッキン122bに衝突することにより、後方へと進む向きにその進行方向が変わる。このとき、気流F1の上部から前面開口部121を通り加工室120に向かう気流F11が発生する。
【0048】
図3に示すように、上部吸気口152から流入した空気は、排気口128に向かって下方へ移動する。このとき、上部吸気口152から切削装置室150を経由して加工室120に向かう気流F2が発生する。また、上部吸気口152は、チェンジャ室170に連通し、チェンジャ室170と加工室120とが前方側開口部124によって連通している。したがって、集塵機140を駆動させると、上部吸気口152からチェンジャ室170を経由して加工室120に向かう気流F3が発生する。さらに、上部吸気口152が駆動装置室130に連通し、駆動装置室130と加工室120とがスリット129によって連通している。したがって、集塵機140を駆動させると、
図5に示すように、上部吸気口152(
図3参照)から駆動装置室130を経由して加工室120に向かう気流F4が発生する。気流F3および気流F4は、下方に向かって流れる気流である。気流F1に沿って流れた後、気流F11により加工室120に流入した空気は、気流F2、F3およびF4と合流し、排気口128に向かって、加工室120の後部および下部に向かって進む。排気口128に到達した空気および切削粉は、集塵チャンバ90の排気ダクト92を通り、集塵機140に吸引される。
【0049】
以上のように、本実施形態の切削加工機10によると、エアダクトカバー126と加工室扉122との間に空気流路127が形成されている。空気流路127は、下部吸気口95と導入口96とにつながっている。排気口128に接続された集塵機140が駆動することにより、下部吸気口95、空気流路127および導入口96を通過し、加工室扉122の上端付近まで流れる気流F1が発生する。ここで、空気流路127は、エアダクトカバー126と加工室扉122との間に形成されている。また、エアダクトカバー126は、加工室扉122の後方に配置されている。したがって、気流F1は、加工室扉122の後面に沿って流れる。したがって、気流F1により加工室扉122の後面に沿ってエアカーテンが形成される。このことにより、加工室120にて飛散した切削粉が前面開口部121の前方まで到達しても、当該エアカーテンにより切削粉が流される。その後、切削粉は、排気口128に向かって後方および下方に流され、排気口128を通り、集塵機140に吸引される。したがって、加工室扉122への切削粉の堆積が抑制されている。
【0050】
本実施形態の切削加工機10によると、下部吸気口95は、底壁120Dの前端120Daと加工室扉122との隙間により形成されている。したがって、下部吸気口95から空気が流入するとき、底壁120Dと同じ高さから気流F1を形成させることができる。したがって、加工室扉122の後面のうち比較的広い範囲に気流F1を形成することができる。よって、加工室扉122への切削粉の堆積がより抑制されている。
【0051】
本実施形態の切削加工機10によると、エアダクトカバー126は、ダクト形成部126aと絞り部126bとを備えている。絞り部126bは、ダクト形成部126aの上端に接続され、ダクト形成部126aの上端から前方に向かって延びている。すなわち、絞り部126bは、上端に向かうにしたがって、加工室扉122に近づくように延びている。これにより、絞り部126bの前端126baと加工室扉122とにより形成される導入口96のX軸方向の間隔W2は、ダクト形成部126aと加工室扉122とのX軸方向の間隔W1よりも短い。よって、絞り部126bは、気流F1に対する絞りとして機能している。このとき、導入口96を通過する空気の流速は、空気流路127を通過する空気の流速よりも速い。したがって、気流F1のうち導入口96の前後において空気の流れが比較的安定しやすい。すなわち、気流F1を形成する空気の流れがより安定しやすくなる。このことにより、加工室扉122の後面付近を舞う切削粉が、より流されやすくなっている。よって、加工室扉122のへの切削粉の堆積がより抑制されている。
【0052】
本実施形態の切削加工機10によると、エアダクトカバー126は、ダクト形成部126aと受け部126cとを備えている。受け部126cは、ダクト形成部126aの下端からX軸方向の前方に向かって延びており、ダクト形成部126aと受け部126cとの成す角が90度となっている。ここで、切削加工中において、被切削物1に力が加わることにより、被切削物1の一部が割れ、切削片が飛散することがある、切削片は、切削粉に比べて重いため、飛散した切削片を気流F1により流すことは困難である。したがって、飛散した切削片が下部吸気口95を通り、切削加工機10の外部にこぼれる可能性がある。しかしながら、本実施形態のように、エアダクトカバー126が受け部126cを備えていることにより、切削片が飛散しても、エアダクトカバー126の受け部126cに切削片を捕らえることができる。したがって、切削加工機10の外部に切削片が比較的こぼれにくい。また、ダクト形成部126aと受け部126cとの成す角が90度となっており、受け部126cに乗った切削片が比較的落下しにくい形状になっている。よって、切削粉のみならず、切削片が切削加工機10の外部にこぼれることも抑制することができる。
【0053】
本実施形態の切削加工機10によると、ケース本体11は凹部123aを備え、エアダクトカバー126は凹部123aに嵌め込まれている。凹部123aは、枠部123から後方に凹んでいる。凹部123aが形成されていることにより、エアダクトカバー126を取り外したときに、エアダクトカバー126に付着した切削粉が、前面開口部121よりも前方に舞うことが抑制されている。したがって、切削加工機10の外部に切削粉がこぼれることがより抑制されている。
【0054】
本実施形態の切削加工機10によると、凹部123aには、磁性体101が取り付けられている。また、エアダクトカバー126の側部126dには、磁石100が取り付けられている。したがって、磁石100と磁性体101との吸着および取り外しにより、エアダクトカバー126を前面開口部121に容易に着脱させることができる。
【0055】
本実施形態の切削加工機10によると、エアダクトカバー126のZ軸方向の高さL1と前面開口部121のZ軸方向の高さL2とには、L1≧L2/2が成り立っている。したがって、エアダクトカバー126の上端の位置は、前面開口部121のZ軸方向の高さの半分以上の高さの位置に配置されている。よって、空気流路127は、Z軸方向の上下方向の長さが比較的長く形成される。このことにより、気流F1が、加工室扉122の上端付近まで比較的到達しやすくなる。したがって、加工室扉122の上端付近までエアカーテンが形成される。よって、加工室扉122の後面のうち比較的広い範囲にて切削粉の堆積が抑制されている。
【0056】
本実施形態の切削加工機10によると、エアダクトカバー126は、透光性を有している。したがって、作業者は、エアダクトカバー126が取り付けられた状態でも、エアダクトカバー126の前方から加工室120の様子を視認することができる。例えば、作業者は、切削加工中の被切削物1を確認しながら切削加工を実行することができる。
【0057】
本実施形態の切削加工機10によると、エアダクトカバー126および窓部122aは、透光性を有している。さらに、窓部122aは、正面視においてエアダクトカバー126と重なった位置に配置されている。したがって、作業者は、エアダクトカバー126が装着され、かつ加工室扉122が閉じられた状態でも、エアダクトカバー126および窓部122aを通じて加工室120を視認することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0059】
上述した実施形態では、排気口128は、加工室120の後部かつ下部に設けられていたが、排気口の位置は特に限定されない。また、排気口に接続される集塵機は、切削加工機だけのために設けられた集塵機でなくてもよく、例えば、設置場所に設けられた集塵設備であってもよい。
【0060】
その他、特に言及されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。例えば、切削加工機は、歯科用成形品を作製するデンタル用の切削加工機でなくてもよい。被切削物は、アダプタを介して切削加工機に保持されなくてもよく、切削加工機によって直接保持されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 切削加工機
11 ケース本体
95 吸気口
96 導入口
120 切削室
121 前面開口部(開口)
122 加工室扉(外扉)
126 エアダクトカバー
127 空気流路
128 排気口
140 集塵機