(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151443
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】信号処理装置、モータ制御装置、モータ駆動装置、モータシステム、及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H02P 6/17 20160101AFI20241018BHJP
【FI】
H02P6/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064760
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 望人
(72)【発明者】
【氏名】平田 茂
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰伸
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560AA01
5H560BB04
5H560BB12
5H560DA02
5H560DB02
5H560DC12
5H560EB01
5H560XA04
(57)【要約】
【課題】モータが一定速度で回転しているときにロータの位置を誤検出することを抑制できる信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号処理装置(7)は、各相(U相、V相、W相)ホール信号を取得するように構成された取得部(71)と、前記U相ホール信号、前記各相ホール信号の少なくとも一つを用いて、同一の信号の立下りエッジ間隔又は立上がりエッジ間隔のいずれか一方に基づき、前記各相ホール信号の周期を求めるように構成された周期検出部(72)と、前記周期を6等分して1/6周期を求めるように構成された1/6周期検出部(73)と、前記1/6周期に基づき、前記各相ホール信号を補正して補正後各相ホール信号を生成するように構成された補正部(74)と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
U相ホール信号、V相ホール信号、及びW相ホール信号を取得するように構成された取得部と、
前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の少なくとも一つを用いて、同一の信号の立下りエッジ間隔又は立上がりエッジ間隔のいずれか一方に基づき、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の周期を求めるように構成された周期検出部と、
前記周期を6等分して1/6周期を求めるように構成された1/6周期検出部と、
前記1/6周期に基づき、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号を補正して補正後U相ホール信号、補正後V相ホール信号、及び補正後W相ホール信号を生成するように構成された補正部と、
を備える、信号処理装置。
【請求項2】
前記補正後U相ホール信号、前記補正後V相ホール信号、及び前記補正後W相ホール信号の各エッジは、前記1/6周期に同期する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記周期の変化が所定範囲内であるかを判定するように構成された判定部を備え、
前記判定部によって前記周期の変化が前記所定範囲内であると判定された場合に、前記前記補正後のU相ホール信号、前記補正後V相ホール信号、及び前記補正後W相ホール信号を出力するように構成されている、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記判定部によって前記周期の変化が前記所定範囲内でないと判定された場合に、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号を出力するように構成されている、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の全てを用いて、前記周期の変化が所定範囲内であるかを判定するように構成されている、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記周期の複数分における前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の少なくとも一つを用いて、前記周期の変化が所定範囲内であるかを判定するように構成されている、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の信号処理装置と、
前記信号処理装置の出力に基づきモータを制御するように構成された制御部と、を備える、モータ制御装置。
【請求項8】
直流電圧を交流電圧に変換するように構成されたインバータ部と、
前記インバータ部をスイッチング制御するように構成された請求項7に記載のモータ制御装置と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項9】
請求項8に記載のモータ駆動装置と、
前記モータと、
前記モータの回転に応じて、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号を生成するように構成されたホールセンサと、
を備える、モータシステム。
【請求項10】
請求項9にモータシステムを備える、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、信号処理装置、モータ制御装置、モータ駆動装置、モータシステム、及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのロータの位置(回転位置)に応じたパルス状のホール信号に基づいてモータを制御する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
三相モータが一定速度で回転している場合、理想的なU相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwでは、
図1に示すようにデューティが50%になり、各相間のずれは電気角で120°になる。
図1に示す理想的なU相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwでは、各相ホール信号の立上りエッジ及び立下りエッジが電気角60°の周期に同期する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ホールセンサの取り付け位置のばらつき、ロータの位置に対するホール信号の立上り時間、立下がり時間のずれ等の要因により、三相モータが一定速度で回転している場合の実際のU相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwは、
図2に示すように理想からずれてしまう。
図2に示す実際のU相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwでは、各信号の立上りエッジ及び立下りエッジが電気角60°の周期からずれる。
【0006】
ホール信号が理想からずれていると、ホール信号に基づくモータ制御に影響が及ぶ。ホール信号に基づくモータ制御を行う制御部は、各相ホール信号の立上りエッジ及び立下りエッジの間隔からモータの回転速度を検出し、モータの回転速度が目標速度になるようにモータを制御する。ここで、ホール信号が理想からずれていると、制御部は、モータが一定速度で回転しているにもかかわらず、モータが一定速度で回転していないと誤検出してしまう。この誤検出の結果を用いて制御部がモータの回転速度を一定速度にしようとする制御を行うと、実際のモータの回転速度は一定速度からずれてしまい、その結果モータの動作が不安定になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る信号処理装置は、U相ホール信号、V相ホール信号、及びW相ホール信号を取得するように構成された取得部と、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の少なくとも一つを用いて、同一の信号の立下りエッジ間隔又は立上がりエッジ間隔のいずれか一方に基づき、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の周期を求めるように構成された周期検出部と、前記周期を6等分して1/6周期を求めるように構成された1/6周期検出部と、前記1/6周期に基づき、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号を補正して補正後U相ホール信号、補正後V相ホール信号、及び補正後W相ホール信号を生成するように構成された補正部と、を備える。
【0008】
本開示に係るモータ制御装置は、上記の信号処理装置と、前記信号処理装置の出力に基づきモータを制御するように構成された制御部と、を備える。
【0009】
本開示に係るモータ駆動装置は、直流電圧を交流電圧に変換するように構成されたインバータ部と、前記インバータ部をスイッチング制御するように構成された上記のモータ制御装置と、を備える。
【0010】
本開示に係るモータシステムは、上記のモータ駆動装置と、前記モータと、前記モータの回転に応じて、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号を生成するように構成されたホールセンサと、を備える。
【0011】
本開示に係る電気機器は、上記のモータシステムを備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、モータが一定速度で回転しているときにロータの位置を誤検出することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、三相モータが一定速度で回転している場合の理想的なホール信号を示す図である。
【
図2】
図2は、三相モータが一定速度で回転している場合の実際のホール信号を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るモータシステムの概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、信号処理装置の概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、信号処理装置において処理される各種信号の波形を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、モータが一定速度で回転している場合の参考例に係る内部位相信号を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、モータが一定速度で回転している場合の実施形態に係る内部位相信号を示すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、信号処理装置の一構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、空気調和機の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<モータシステム>
図3は、実施形態に係るモータシステムの概略構成を示す図である。
図1に示すモータシステムSYS1は、マイクロコンピュータ1と、制御部2と、ゲートドライバ部3と、インバータ部4と、モータ5と、ホールセンサ6と、信号処理装置7と、を備える。
【0015】
モータ制御装置8は、制御部2と、信号処理装置7と、を備える。
【0016】
モータ駆動装置9は、モータ制御装置8と、インバータ部4と、を備える。モータ駆動装置9は、ゲートドライバ部3をさらに備える。
【0017】
マイクロコンピュータ1は、例えば目標回転数などのモータ制御に関する目標値を制御部2に供給する。
【0018】
制御部2は、信号処理装置7の出力に基づきモータ5を制御する。より詳細には、制御部2は、信号処理装置7の出力とマイクロコンピュータ1から供給される目標値とに基づき、U相、V相、及びW相の三相全てに対応するスイッチング素子をスイッチング制御するための6個のゲート信号を生成する。
【0019】
ゲートドライバ部3から出力される6個のゲート信号それぞれは、ゲートドライバ部3によって増幅されてゲート駆動信号となる。
【0020】
ゲートドライバ部3から出力される6個のゲート駆動信号は、インバータ部4のスイッチング素子を駆動する。インバータ部4は、スイッチング素子のスイッチングによって直流電圧を三相の交流電圧に変換し、三相の交流電圧をモータ5に供給する。モータ5は、インバータ部4から出力される三相の交流電圧によって駆動する。モータ5は、三相ブラシレスモータである。
【0021】
ホールセンサ6は、モータ5の回転に応じて、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを生成する。より詳細には、ホールセンサ6は、ホールセンサ6に含まれる各相ホール素子から出力される正弦波状の各相ホール電圧に基づいて、パルス状のU相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを生成する。
【0022】
信号処理装置7は、ホールセンサ6からU相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを受け取り、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwに基づく信号を制御部2に出力する。
【0023】
<信号処理装置>
図4は、信号処理装置7の概略構成を示す図である。
図5は、信号処理装置7において処理される各種信号の波形を示すタイミングチャートである。
【0024】
図4に示す信号処理装置7は、取得部71と、周期検出部72と、1/6周期検出部73と、補正部74と、を備える。
【0025】
取得部71は、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを取得する。
【0026】
周期検出部72は、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを用いて、同一の信号の立下りエッジ間隔に基づき、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwの周期PDを求める。
【0027】
なお、周期検出部72は、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを用いて、同一の信号の立下りエッジ間隔ではなく、同一の信号の立上りエッジ間隔に基づき、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwの周期PD1を求める構成であってもよい。
【0028】
1/6周期検出部73は、周期検出部72によって求められた周期PD1を6等分して1/6周期PD2を求める。1/6周期検出部(73)は、周期PDを6等分した1/6周期を示す信号TM60を補正部74に出力する。
【0029】
補正部74は、1/6周期PD2に基づき、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを補正して補正後U相ホール信号Ahu、補正後V相ホール信号Ahv、及び補正後W相ホール信号Ahwを生成する。
図5に示す通り、補正後U相ホール信号Ahu、補正後V相ホール信号Ahv、及び補正後W相ホール信号Ahwの各エッジは、1/6周期PD2に同期する。
【0030】
図4に示す信号処理装置7は、判定部75をさらに備える。判定部75は、周期PD1の変化が所定範囲内であるかを判定する。
【0031】
図4に示す信号処理装置7は、出力部76をさらに備える。
【0032】
判定部75によって周期PD1の変化が所定範囲内であると判定された場合に、出力部76は、信号処理装置7の出力として、補正後U相ホール信号Ahu、補正後V相ホール信号Ahv、及び補正後W相ホール信号Ahwを出力する。したがって、モータ5が一定速度で回転している場合、信号処理装置7は、補正後U相ホール信号Ahu、補正後V相ホール信号Ahv、及び補正後W相ホール信号Ahwを出力する。なお、なお、一定速度とは、一定値に固定された速度のみならず、一定値に対して許容される誤差範囲内で変動する速度も含む。
【0033】
一方、判定部75によって周期PD1の変化が所定範囲内でないと判定された場合に、出力部76は、信号処理装置7の出力として、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及び補正後W相ホール信号hwを出力する。したがって、モータ5の回転が加速又は減速している場合、信号処理装置7は、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを出力する。
【0034】
図6は、モータ5が一定速度で回転している場合の参考例に係る内部位相信号を示すタイミングチャートである。モータ5が一定速度で回転している場合、参考例では、制御部2は、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwに基づいて内部位相信号PH1を生成し、内部位相信号PH1に基づくモータ制御を行う。
【0035】
参考例では、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwの立上りエッジ及び立下りエッジの間隔が電気角60°からずれるため、内部位相信号PH1のスロープ部分に段差が発生する。内部位相信号PH1のスロープ部分に発生する段差が、モータ5の電流の急峻な変化につながり、モータ5における振動発生、騒音発生、効率悪化等を引き起こす。
【0036】
図7は、モータが一定速度で回転している場合の実施形態に係る内部位相信号を示すタイミングチャートである。モータ5が一定速度で回転している場合、実施形態では、制御部2は、補正後U相ホール信号Ahu、補正後V相ホール信号Ahv、及び補正後W相ホール信号Ahwに基づいて内部位相信号PH2を生成し、内部位相信号PH2に基づくモータ制御を行う。
【0037】
実施形態では、補正後U相ホール信号Ahu、補正後V相ホール信号Ahv、及び補正後W相ホール信号Ahwの立上りエッジ及び立下りエッジの間隔が電気角60°からずれないため、ロータの位置の誤検出が抑制され、その結果、内部位相信号PH2のスロープ部分に段差が発生しない。内部位相信号PH2のスロープ部分に段差が発生しないため、モータ5がスムースに回転する、つまりモータ5が安定して動作する。
【0038】
図8は、信号処理装置7の一構成例を示す図である。
図8に示す構成例の信号処理装置7は、端子701~703と、NORゲート704と、カウンタ705~707と、ラッチ部708~713と、平均算出部714と、減算器715~717と、除算器718と、比較器719~721と、除算器722と、ANDゲート723と、カウンタ724と、比較器725と、補正部726と、出力部727と、を備える。
【0039】
端子701によって取得されたU相ホール信号huの立下りエッジ間隔がカウンタ705によって測定され、2周期分の測定結果がラッチ部708及び709に保管される。端子702によって取得されたV相ホール信号hvの立下りエッジ間隔がカウンタ706によって測定され、2周期分の測定結果がラッチ部710及び711に保管される。端子703によって取得されたW相ホール信号hwの立下りエッジ間隔がカウンタ707によって測定され、2周期分の測定結果がラッチ部712及び713に保管される。
【0040】
平均算出部714は、U相、V相、及びW相それぞれの2周期分の測定結果(6個の測定結果)の平均uvw_aveを求める。
【0041】
図8に示す構成例により、判定部75は、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwの全てを用いて、周期PD1の変化が所定範囲内であるかを判定することになる。このように三相全てのホール信号を用いた判定が実行されることで、判定精度の向上が期待できる。ただし、判定部75は、一相のホール信号のみ、又は、二相のホール信号のみを用いて、周期PD1の変化が所定範囲内であるかを判定する構成であってもよい。
【0042】
また、
図8に示す構成例により、周期検出部72は、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwの全てを用いて、周期PD1を検出することになる。このように三相全てのホール信号を用いた周期PDの検出が実行されることで、検出精度の向上が期待できる。ただし、周期検出部72は、一相のホール信号のみ、又は、二相のホール信号のみを用いて、周期PD1を検出する構成であってもよい。
【0043】
図8に示す構成例により、判定部75は、周期PD1の複数分におけるホール信号を用いて、周期PD1の変化が所定範囲内であるかを判定することになる。このように周期PD1の複数分におけるホール信号を用いた判定が実行されることで、判定精度の向上が期待できる。ただし、判定部75は、1周期分のホール信号のみを用いて、周期PD1の変化が所定範囲内であるかを判定する構成であってもよい。
【0044】
また、
図8に示す構成例により、周期検出部72は、周期PD1の複数分におけるホール信号を用いて、周期PD1を検出することになる。このように周期PD1の複数分におけるホール信号を用いた周期PDの検出が実行されることで、検出精度の向上が期待できる。ただし、周期検出部72は、1周期分のホール信号のみを用いて、周期PD1を検出する構成であってもよい。
【0045】
減算器715は、平均uvw_aveと、直前のU相の測定結果との差分を求める。減算器716は、平均uvw_aveと、直前のV相の測定結果との差分を求める。減算器717は、平均uvw_aveと、直前のW相の測定結果との差分を求める。
【0046】
除算器718、比較器719~721、及びANDゲート723によって、三相全ての差分が11.25°(=平均uvw_ave/32)以内に収まるかが確認される。そして、三相全ての差分が11.25°(=平均uvw_ave/32)以内に収まると、ANDゲート723から出力される信号stb_cnt_enがHIGHレベルになる。
【0047】
信号stb_cnt_enがHIGHレベルであるときに、カウンタ724がカウントアップ動作を行い、カウンタ724のカウントアップ動作が12回(電気角720°分)以上連続することが比較器725によって確認されると、比較器725から出力される信号update360がHIGHレベルになる。信号update360のHIGHレベルは、判定部75によって周期PD1の変化が所定範囲内であると判定されたことを意味している。
【0048】
信号update360がLOWレベルであるとき、セレクタによって構成される出力部727(出力部76の一例)は、信号処理装置7の出力оuthu、оuthv、及びоuthwとして、U相ホール信号hu、V相ホール信号hv、及びW相ホール信号hwを出力する。
【0049】
除算器722は、平均uvw_aveを用いて生成した1/6周期を示す信号uvw_ave1_6を生成する。カウント、セレクタ等によって構成される補正部726(補正部74の一例)は、1/6周期を示す信号uvw_ave1_6を用いて、補正後U相ホール信号Ahu、補正後V相ホール信号Ahv、及び補正後W相ホール信号Ahwを生成する。信号update360がHIGHレベルであるとき、セレクタによって構成される出力部727(出力部76の一例)は、信号処理装置7の出力оuthu、оuthv、及びоuthwとして、補正後V相ホール信号Ahv、及び補正後W相ホール信号Ahwを出力する。
【0050】
<モータシステムの適用例>
図9は、空気調和機の一構成例を示す外観図である。本構成例の空気調和機Yは、室内機Y1と、室外機Y2と、これらを連結する配管Y3と、を有する。なお、室内機Y1は、主として、蒸発器及び室内ファンを内蔵しており、室外機Y2は、主として、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び室外ファンを内蔵している。
【0051】
本構成例の空気調和機Yは、例えば上述したモータシステムSYS1を2つ備える。2つの上述したモータシステムSYS1の一方は、室内ファンのインペラを回転させるファンモータとして用いられる。また、2つの上述したモータシステムSYS1の他方は、室外ファンのインペラを回転させるファンモータとして用いられる。2つの上述したモータシステムSYS1で用いられるマイクロコンピュータ100は、2つの上述したモータシステムSYS1それぞれで別個のマイクロコンピュータであってもよく、2つの上述したモータシステムSYS1で共通のマイクロコンピュータであってもよい。
【0052】
空気調和機Yの冷房運転時には、まず、室外機Y2の圧縮機で冷媒を圧縮して高温高圧の気体とした後、室外機Y2の凝縮器で放熱して冷媒を液化させる。その際、放熱を促すために室外ファンを回して凝縮器に風が当てられるので、室外機Y2からは熱風が吹き出す。次に、液化された冷媒を室外機Y2の膨張弁で減圧して低温低圧の液体とした後、配管Y3を介して室内機Y1に送り、室内機Y1の蒸発器で気化させる。その際、蒸発器は冷媒の気化熱によって低温となるので、室内ファンを回して蒸発器に風を当てることにより、室内機Y1から室内に向けて冷風が送り出される。気化された冷媒は、再び配管Y3を介して室外機Y2に送られた後、上記と同様の熱交換処理が繰り返される。
【0053】
なお、空気調和機Yの暖房運転時には、冷媒の循環方向が逆となり、室内機Y1の蒸発器と室外機Y2の凝縮器の役割が入れ替わるものの、基本的には上記と同様の熱交換処理が行われる。
【0054】
上述したモータシステムSYS1は、空気調和機以外の電気機器に搭載されてもよい。空気調和機以外の電気機器としては、例えば、給湯ポンプ、食洗器、洗濯機などを挙げることができる。
【0055】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0056】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0057】
本開示の信号処理装置(7)は、U相ホール信号、V相ホール信号、及びW相ホール信号を取得するように構成された取得部(71)と、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の少なくとも一つを用いて、同一の信号の立下りエッジ間隔又は立上がりエッジ間隔のいずれか一方に基づき、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の周期を求めるように構成された周期検出部(72)と、前記周期を6等分して1/6周期を求めるように構成された1/6周期検出部(73)と、前記1/6周期に基づき、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号を補正して補正後U相ホール信号、補正後V相ホール信号、及び補正後W相ホール信号を生成するように構成された補正部(74)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0058】
上記第1の構成の信号処理装置において、前記補正後U相ホール信号、前記補正後V相ホール信号、及び前記補正後W相ホール信号の各エッジは、前記1/6周期に同期する構成(第2の構成)であってもよい。
【0059】
上記第1又は第2の構成の信号処理装置において、前記周期の変化が所定範囲内であるかを判定するように構成された判定部(75)を備え、前記判定部によって前記周期の変化が前記所定範囲内であると判定された場合に、前記前記補正後のU相ホール信号、前記補正後V相ホール信号、及び前記補正後W相ホール信号を出力するように構成されている構成(第3の構成)であってもよい。
【0060】
上記第3の構成の信号処理装置において、前記判定部によって前記周期の変化が前記所定範囲内でないと判定された場合に、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号を出力するように構成されている構成(第4の構成)であってもよい。
【0061】
上記第3又は第4の構成の信号処理装置において、前記判定部は、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の全てを用いて、前記周期の変化が所定範囲内であるかを判定するように構成されている構成(第5の構成)であってもよい。
【0062】
上記第3~第5いずれかの構成の信号処理装置において、前記判定部は、前記周期の複数分における前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号の少なくとも一つを用いて、前記周期の変化が所定範囲内であるかを判定するように構成されている構成(第6の構成)であってもよい。
【0063】
本開示のモータ制御装置(8)は、上記第1~第6いずれかの構成の信号処理装置と、前記信号処理装置の出力に基づきモータ(5)を制御するように構成された制御部(2)と、を備える構成(第7の構成)である。
【0064】
本開示のモータ駆動装置(9)は、直流電圧を交流電圧に変換するように構成されたインバータ部(4)と、前記インバータ部をスイッチング制御するように構成された上記第7の構成のモータ制御装置と、を備える構成(第8の構成)である。
【0065】
本開示のモータシステム(SYS1)は、上記第8の構成のモータ駆動装置と、前記モータと、前記モータの回転に応じて、前記U相ホール信号、前記V相ホール信号、及び前記W相ホール信号を生成するように構成されたホールセンサ(6)と、を備える構成(第9の構成)である。
【0066】
本開示の電気機器(Y)は、上記第9の構成のモータシステムを備える構成(第10の構成)である。
【符号の説明】
【0067】
1 マイクロコンピュータ
2 制御部
3 ゲートドライバ部
4 インバータ部
5 モータ
6 ホールセンサ
7 信号処理装置
71 取得部
72 周期検出部
73 1/6周期検出部
74 補正部
75 判定部
76 出力部
701~703 端子
704 NORゲート
705~707、724 カウンタ
708~713 ラッチ部
714 平均算出部
715~717 減算器
718 除算器
719~721、725 比較器
723 ANDゲート
726 補正部
727 出力部
8 モータ制御装置
9 モータ駆動装置
SYS1 モータシステム
Y 空気調和機
Y1 室内機
Y2 室外機
Y3 配管