(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151444
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】製造設備、および製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/50 20170101AFI20241018BHJP
F25J 3/04 20060101ALI20241018BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20241018BHJP
F25J 1/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C01B32/50
F25J3/04 102
F25J3/04 103
F25J3/04 104
B01D53/04 110
F25J1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064761
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(72)【発明者】
【氏名】貝川 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】前原 大成
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕治
【テーマコード(参考)】
4D012
4D047
4G146
【Fターム(参考)】
4D012CA01
4D012CA03
4D012CA05
4D012CB16
4D012CD07
4D012CD10
4D012CH01
4D012CH02
4D012CK01
4D047AA05
4D047AA08
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4D047AB02
4D047AB04
4D047BA07
4D047BB04
4D047BB09
4D047DA06
4G146JA04
4G146JB01
4G146JB10
4G146JC03
4G146JC20
4G146JC21
4G146JC34
4G146JD03
4G146JD06
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる方法で液化炭酸ガスを製造することが可能な技術を提供する。
【解決手段】液化炭酸ガスの製造設備は、可燃物を燃焼させるための燃焼設備と、酸素を発生させるための発生装置と、燃焼設備で可燃物を燃焼させることで発生した燃焼ガスを燃焼設備に戻すとともに酸素を燃焼設備に供給するための供給機構と、燃焼設備で発生した燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造するための製造装置とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化炭酸ガスの製造設備であって、
可燃物を燃焼させるための燃焼設備と、
酸素を発生させるための発生装置と、
前記燃焼設備で前記可燃物を燃焼させることで発生した燃焼ガスを前記燃焼設備に戻すとともに前記酸素を前記燃焼設備に供給するための供給機構と、
前記燃焼設備で発生した燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造するための製造装置とを備える、製造設備。
【請求項2】
前記供給機構は、
前記燃焼設備と前記製造装置とを接続している第1配管と、
前記燃焼設備と前記発生装置とを接続している第2配管と、
前記第1配管から分岐しており、前記第2配管に接続されている第3配管とを含む、請求項1に記載の製造設備。
【請求項3】
前記製造設備は、さらに、
前記燃焼ガスの炭酸ガス濃度を検出するためのセンサと、
前記第1配管および前記第3配管の分岐点と前記製造装置との間における流路を開閉可能に構成されるバルブと、
前記バルブを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記炭酸ガス濃度が所定値以上になったときに前記流路を閉状態から開状態にするように前記バルブを制御する、請求項2に記載の製造設備。
【請求項4】
前記供給機構は、前記燃焼設備が前記可燃物の燃焼を開始してから所定時間後に、前記燃焼設備への前記酸素の供給を開始するように構成されている、請求項1または2に記載の製造設備。
【請求項5】
前記発生装置は、深冷分離法により空気から前記酸素を製造する深冷分離装置である、請求項1または2に記載の製造設備。
【請求項6】
前記深冷分離装置は、深冷分離法により前記空気から液体酸素と液体アルゴンと液体窒素との少なくとも1つをさらに製造するように構成されている、請求項5に記載の製造設備。
【請求項7】
前記発生装置は、吸着分離法により空気から前記酸素を製造する吸着分離装置である、請求項1または2に記載の製造設備。
【請求項8】
液化炭酸ガスの製造方法であって、
燃焼設備で可燃物を燃焼させる工程と、
酸素を発生させる工程と、
前記燃焼設備で前記可燃物を燃焼させることで発生した燃焼ガスを前記燃焼設備に戻すとともに前記酸素を前記燃焼設備に供給する工程と、
前記燃焼設備で発生した燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造する工程とを備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化炭酸ガスの製造設備、および液化炭酸ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化炭酸ガスは、たとえば、製油所などで発生する副生ガスから製造される。近年、ガソリンや重油の需要量が減っているため、製油所の稼働率も低下している。それに伴って、液化炭酸ガスの生産量も減少しており、供給が逼迫している。
【0003】
一方で、木質バイオマス発電所やごみ焼却炉などの燃焼設備では、多量の炭酸ガス(二酸化炭素,CO2)が発生する。しかしながら、燃焼設備で発生する燃焼ガス中の炭酸ガス濃度は、10%程度である。炭酸ガス濃度が低い燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造するためには、大型の設備が必要となる。
【0004】
これに関して、特開2005-083643号公報(特許文献1)は、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度が上がる燃焼方法を開示している。当該燃焼方法では、純度の高い酸素ガスと純度の高い炭酸ガスとの混合ガスが燃焼炉に供給される。炭酸ガスは、炭酸ガスボンベから供給される。特許文献1には、混合ガス中の炭酸ガス濃度が67.9%であるのに対して、当該混合ガスを燃焼させることで発生する燃焼ガス中の炭酸ガス濃度は95.56%であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される燃焼方法は、炭酸ガスボンベから炭酸ガスガスを供給することで燃焼炉での燃焼効率を改善することを目的としており、液化炭酸ガスを製造することを目的としていない。そのため、特許文献1に開示される燃焼方法では、液化炭酸ガスの不足に対応することができない。したがって、従来とは異なる方法で液化炭酸ガスを製造することが可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例では、液化炭酸ガスの製造設備が提供される。当該製造設備は、可燃物を燃焼させるための燃焼設備と、酸素を発生させるための発生装置と、上記燃焼設備で上記可燃物を燃焼させることで発生した燃焼ガスを上記燃焼設備に戻すとともに上記酸素を上記燃焼設備に供給するための供給機構と、上記燃焼設備で発生した燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造するための製造装置とを備える。
【0008】
本開示の一例では、上記供給機構は、上記燃焼設備と上記製造装置とを接続している第1配管と、上記燃焼設備と上記発生装置とを接続している第2配管と、上記第1配管から分岐しており、上記第2配管に接続されている第3配管とを含む。
【0009】
本開示の一例では、上記製造設備は、さらに、上記燃焼ガスの炭酸ガス濃度を検出するためのセンサと、上記第1配管および上記第3配管の分岐点と上記製造装置との間における流路を開閉可能に構成されるバルブと、上記バルブを制御する制御部とを備える。上記制御部は、上記炭酸ガス濃度が所定値以上になったときに上記流路を閉状態から開状態にするように上記バルブを制御する。
【0010】
本開示の一例では、上記供給機構は、上記燃焼設備が上記可燃物の燃焼を開始してから所定時間後に、上記燃焼設備への上記酸素の供給を開始するように構成されている。
【0011】
本開示の一例では、上記発生装置は、深冷分離法により空気から上記酸素を製造する深冷分離装置である。
【0012】
本開示の一例では、上記深冷分離装置は、深冷分離法により上記空気から液体酸素と液体アルゴンと液体窒素との少なくとも1つをさらに製造するように構成されている。
【0013】
本開示の一例では、上記発生装置は、吸着分離法により空気から上記酸素を製造する吸着分離装置である。
【0014】
本開示の他の例では、液化炭酸ガスの製造方法が提供される。当該製造方法は、燃焼設備で可燃物を燃焼させる工程と、酸素を発生させる工程と、上記燃焼設備で上記可燃物を燃焼させることで発生した燃焼ガスを上記燃焼設備に戻すとともに上記酸素を上記燃焼設備に供給する工程と、上記燃焼設備で発生した燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造する工程とを備える。
【0015】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】燃焼ガスを循環させる工程を表わす図である。
【
図3】燃焼設備での燃焼ガスが製造装置に送られる工程を表わす図である。
【
図4】制御部のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図5】深冷分離装置の装置構成の一例を示す図である。
【
図6】吸着分離装置の装置構成の一例を示す図である。
【
図7】供給機構の装置構成を説明するための図である。
【
図10】製造装置の装置構成の一例を示す図である。
【
図11】製造設備の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】シミュレーション結果をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0018】
<A.製造設備100>
まず、
図1を参照して、液化炭酸ガスの製造設備100について説明する。
図1は、製造設備100の構成の一例を示す図である。
【0019】
図1に示されるように、製造設備100は、燃焼設備200と、酸素発生装置300と、供給機構400と、製造装置500とを含む。
【0020】
燃焼設備200は、可燃物を燃焼させるための設備である。一例として、燃焼設備200は、木質チップを可燃物として燃焼させる木質バイオマス発電所である。他の例として、燃焼設備200は、ゴミを可燃物として燃焼させるゴミ焼却炉である。可燃物が燃焼することで、排ガスである燃焼ガスが燃焼設備200から発生する。
【0021】
酸素発生装置300は、酸素ガスを発生させるための装置である。一例として、酸素発生装置300は、深冷分離法により空気から酸素ガスを製造する深冷分離装置である。酸素発生装置300の詳細については後述する。
【0022】
供給機構400は、燃焼設備200で可燃物を燃焼させることで発生した燃焼ガスを燃焼設備200に戻すとともに、酸素発生装置300で発生させた酸素ガスを燃焼設備200に供給するための機構である。すなわち、供給機構400は、燃焼ガスと酸素ガスとの混合ガスを燃焼設備200に供給する。当該混合ガスが燃焼設備200に供給され続けることで、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度が高められる。
【0023】
製造装置500は、燃焼設備200で発生した燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造するための装置である。製造装置500は、炭酸ガス濃度が高められた燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造する。
【0024】
液化炭酸ガスは、たとえば、ボンベや低温容器などに充填された上で製品として出荷される。あるいは、液化炭酸ガスは、ドライアイスや化成品などの製造に利用されてもよい。
【0025】
以上のように、製造設備100は、燃焼設備200で発生した燃焼ガスを利用して、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度を上げる。すなわち、製造設備100は、ボンベなどから炭酸ガスを供給すること無く、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度を上げることができる。これにより、純度の高い液化炭酸ガスが製造される。
【0026】
また、炭酸ガス濃度が高められた燃焼ガスが製造装置500に送られるため、製造装置500での液化炭酸ガスの製造が容易になる。結果として、製造装置500の構成を単純化することができ、製造装置500の設備規模を小さくすることができる。
【0027】
なお、混合ガスの供給機構400には任意の機構が採用され得る。一例として、供給機構400は、配管F1~F3などで構成される。
【0028】
配管F1(第1配管)は、燃焼設備200と製造装置500とを接続している。配管F1は、燃焼ガスを燃焼設備200から製造装置500に導くことが可能な構成であればよく、単一の配管で構成されていてもよいし、複数の配管で構成されていてもよい。
【0029】
配管F2(第2配管)は、燃焼設備200と酸素発生装置300とを接続している。配管F2は、酸素発生装置300から燃焼設備200に酸素ガスを導くことが可能な構成であればよく、単一の配管で構成されていてもよいし、複数の配管で構成されていてもよい。
【0030】
配管F3(第3配管)は、配管F1上の分岐点P1から分岐しており、配管F2上の分岐点P2に接続されている。配管F3が配管F1上の分岐点P1と配管F2上の分岐点P2とを接続することで、燃焼ガスを製造設備100内で循環させるための流路が形成される。なお、配管F3は、単一の配管で構成されていてもよいし、複数の配管で構成されていてもよい。
【0031】
燃焼設備200で発生した燃焼ガスは、配管F1、配管F3および配管F2の順に流れ、燃焼設備200に戻される。一方で、酸素発生装置300で発生した酸素ガスは、配管F2を介して燃焼設備200に供給される。これにより、供給機構400は、燃焼ガスと酸素ガスとの混合ガスを燃焼設備200に供給し続ける。
【0032】
<B.バルブ制御>
次に、
図2および
図3を参照して、燃焼ガスを循環させる工程から液化炭酸ガスを製造する工程に切り換えるタイミングについて説明する。
図2は、燃焼ガスを循環させる工程S1を表わす図である。
図3は、燃焼設備200での燃焼ガスが製造装置500に送られる工程S2を表わす図である。
【0033】
製造設備100は、燃焼ガスの流れを制御するための構成として、濃度センサ20と、バルブ30と、制御部50とを含む。
【0034】
濃度センサ20は、燃焼設備200で発生した燃焼ガス中の炭酸ガス濃度を検出するためのセンサである。濃度センサ20は、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度を検出可能な任意の位置に設置され得る。
図3の例では、濃度センサ20は、燃焼設備200と分岐点P1との間における配管F1上に設けられている。他の例として、濃度センサ20は、配管F3上に設けられてもよい。濃度センサ20によって検出された炭酸ガス濃度は、制御部50に出力される。
【0035】
なお、濃度センサ20の種類は、特に限定されない。一例として、濃度センサ20は、NDIR(Non-Dispersive Infrared)式のセンサである。他の例として、濃度センサ20は、光音響式のセンサである。
【0036】
バルブ30は、分岐点P1と製造装置500との間における流路を開閉可能に構成される。バルブ30は、製造装置500への燃焼ガスの供給を阻止することが可能な任意の位置に設置され得る。
図3の例では、バルブ30は、分岐点P1と製造装置500との間における配管F1上に設けられている。
【0037】
バルブ30は、制御部50からの制御指令に応じて、開状態と閉状態との少なくとも2つの状態の間で切り換え可能に構成される。バルブ30の開度は、調整可能であってもよいし、一定であってもよい。
【0038】
バルブ30が閉状態である場合、製造装置500への燃焼ガスの供給が阻止される。この場合、燃焼設備200で発生した燃焼ガスは、配管F1→配管F3→配管F2→燃焼設備200の順で循環する。一方で、バルブ30が開状態である場合には、燃焼ガスは、分岐点P1から製造装置500に送られる。
【0039】
制御部50は、濃度センサ20によって検出された炭酸ガス濃度に応じてバルブ30の開閉を制御する。制御部50の装置構成は、任意である。制御部50は、単体の制御ユニットで構成されてもよいし、複数の制御ユニットで構成されてもよい。一例として、制御部50は、PLC(Programmable Logic Controller)である。
【0040】
工程S1において、制御部50は、濃度センサ20から炭酸ガス濃度を逐次的に取得する。このとき、炭酸ガス濃度は、所定閾値以下であるとする。この場合、制御部50は、燃焼ガスが製造装置500に流れないようにバルブ30を閉状態にする。
【0041】
次に、工程S2において、濃度センサ20によって検出された炭酸ガス濃度が所定閾値を超えたとする。当該閾値は、80%以上で95%以下の値である。制御部50は、炭酸ガス濃度が所定閾値を超えた場合に、分岐点P1と製造装置500との間における流路を閉状態から開状態にするようにバルブ30を制御する。これにより、燃焼ガスが製造装置500に供給される。製造装置500は、供給された燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造する。
【0042】
<C.ハードウェア構成>
次に、
図4を参照して、上述の
図2,
図3に示される制御部50のハードウェア構成について順に説明する。
図4は、制御部50のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【0043】
制御部50は、制御回路101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、補助記憶装置120とを含む。これらのコンポーネントは、バス110に接続される。
【0044】
制御回路101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0045】
制御回路101は、制御プログラム122などの各種プログラムを実行することで制御部50の動作を制御する。制御プログラム122は、上述の
図2および
図3に示される各工程を実現するためのプログラムである。制御回路101は、制御プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、補助記憶装置120またはROM102からRAM103に制御プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0046】
通信インターフェイス104は、フィールドネットワークを用いて外部機器と定周期通信を行なうためのインターフェイスである。当該外部機器は、たとえば、上述の濃度センサ20と、上述のバルブ30とを含む。フィールドネットワークとしては、たとえば、EtherCAT(登録商標)、EtherNet/IP(登録商標)、CC-Link(登録商標)、またはCompoNet(登録商標)などが採用される。
【0047】
補助記憶装置120は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置120は、制御プログラム122などを格納する。なお、制御プログラム122の格納場所は、補助記憶装置120に限定されず、制御回路101の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリなど)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0048】
制御プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う各種の処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で制御部50が構成されてもよい。
【0049】
<D.燃焼設備200>
次に、上述の
図1に示される燃焼設備200についてさらに詳細に説明する。
【0050】
上述のように、燃焼設備200は、可燃物を燃焼させるための設備である。一例として、燃焼設備200は、木質チップを可燃物として燃焼させる木質バイオマス発電所である。
【0051】
木質バイオマス発電所としての燃焼設備200は、たとえば、燃焼炉およびボイラなどで構成される。燃焼炉は、投入された木質チップを燃やすことで高温の燃焼ガスを発生させる。ボイラは、当該高温の燃焼ガスから排熱するとともに、その排熱を利用して水を蒸気に変化させる。当該蒸気は、発電に利用される。一例として、燃焼設備200は、発生した蒸気を利用してタービンを回転させ、電力を発生させる。排熱された燃焼ガスは、配管F1に送られる。
【0052】
<E.酸素発生装置300>
次に、
図5および
図6を参照して、上述の
図1に示される酸素発生装置300についてさらに説明する。
【0053】
上述のように、酸素発生装置300は、酸素ガスを発生するための装置である。酸素発生装置300の種類は特に限定されず、酸素ガスを発生させることが可能な任意の装置が酸素発生装置300に採用され得る。
【0054】
一例として、酸素発生装置300は、深冷分離法により空気から酸素ガスを製造する装置であってもよいし、吸着分離法により空気から酸素ガスを製造する装置であってもよいし、膜分離法により空気から酸素ガスを製造する装置であってもよい。
【0055】
以下では、深冷分離装置および吸着分離装置について順に説明する。
【0056】
(E1.深冷分離装置300A)
まず、
図5を参照して、酸素発生装置300の一例である深冷分離装置300Aについて説明する。
図5は、深冷分離装置300Aの装置構成の一例を示す図である。
【0057】
深冷分離装置300Aは、空気に含まれる各種気体(たとえば、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)の沸点の違いを利用して、空気から酸素ガスなどを分離する。このような分離方法は、深冷分離法と呼ばれている。
【0058】
一例として、深冷分離装置300Aは、フィルタ302と、圧縮機304と、吸着器308と、熱交換器310と、精留塔312と、アルゴン精製装置314とで構成されている。
【0059】
まず、深冷分離装置300Aに取り込まれた空気は、フィルタ302に送られる。フィルタ302は、取り込まれた空気から不純物を除去する。不純物が除去された空気は、圧縮機304に送られる。
【0060】
圧縮機304は、不純物が除去された空気を圧縮し、空気に含まれる各種気体を液化しやすい状態にする。一例として、圧縮機304は、0.5MPa程度まで空気を昇圧する。圧縮空気は、吸着器308に送られる。
【0061】
吸着器308は、圧縮機304から送られてきた圧縮空気から水分および炭酸ガスを吸着除去する。吸着除去の方法には、たとえば、TSA(Thermal Swing Adsorption)方式が採用される。
【0062】
TSA方式の吸着器308は、2つの吸着塔を有する。一方の吸着塔が水分および炭酸ガスを吸着しているときに、他方の吸着塔は前回に吸着した水分および炭酸ガスを大気に放出する。各吸着塔は、吸着と放出とを交互に繰り返すことで、圧縮空気から水分および炭酸ガスを吸着除去する。その後、吸着器308を通過した圧縮空気は、熱交換器310に送られる。
【0063】
熱交換器310は、吸着器308から送られてきた空気と、
図5に示される酸素ガスとの間で熱交換を行い、当該空気を-180℃程度に冷却する。その結果、空気に含まれる各種気体(たとえば、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)は液化し、液化空気として精留塔312に送られる。
【0064】
精留塔312は、各種気体の沸点の差を利用して、液体空気から、酸素ガス、液体酸素、液体窒素、および液体アルゴンなどを精製する。なお、大気圧下での液体窒素の沸点は-195.8℃であり、大気圧下での液体アルゴンの沸点は-185.7℃であり、大気圧下での液体酸素の沸点は-183.0℃である。
【0065】
精留塔312は、たとえば、下塔312Aと、上塔312Bとで構成されている。液体空気は、下塔312Aに送られる。下塔312Aは、上塔312Bよりも高い内部圧力を有する高圧塔である。
【0066】
上塔312Bの底部と下塔312Aの頂部とは、凝縮器(図示しない)によって熱的に接続されている。下塔312Aから上塔312Bへの潜熱での熱供給により、下塔312Aの頂部に溜まっている窒素ガスが凝縮され、還流液体窒素が生成される。当該液体窒素は、下塔312Aの上部に設けられている貯蔵室(図示しない)に溜まる。当該液体窒素は、下塔312Aの上部から抜き取られ、ボンベや低温容器などに充填された上で製品として出荷される。
【0067】
下塔312Aの下部に溜まっている液体空気は、上塔312Bに送られる。各種気体の沸点の差により、上塔312Bの底部には液体酸素が溜まる。当該液体酸素は、上塔312Bの底部から抜き取られ、ボンベや低温容器などの容器に充填された上で製品として出荷される。
【0068】
また、下塔312Aから上塔312Bへの潜熱での熱供給により、上塔312Bの底部においては液体酸素が気化し、当該液体酸素上に高純度の酸素ガスが発生する。当該酸素ガスは、上塔312Bから抜き取られ、熱交換器310に送られる。熱交換器310は、当該酸素ガスと、吸着器308から送られてきた空気との間で熱交換を行い、当該酸素ガスの温度を上昇させる。熱交換器310を通過した酸素ガスは、上述の配管F2を介して供給機構400に送られる。
【0069】
また、上塔312Bの中間部とアルゴン精製装置314とは配管で接続されている。上塔312Bの中間部に存在する粗アルゴンは、アルゴン精製装置314に供給される。アルゴン精製装置314は、粗アルゴンから液化アルゴンを製造する。当該液体アルゴンは、たとえば、ボンベや低温容器などの容器に充填された上で製品として出荷される。
【0070】
(E2.吸着分離装置300B)
次に、
図6を参照して、酸素発生装置300の他の例である吸着分離装置300Bについて説明する。
図6は、吸着分離装置300Bの装置構成の一例を示す図である。
【0071】
吸着分離装置300Bは、吸着剤に対するガスの吸着特性の違いを利用して、空気から酸素ガスを分離する。
【0072】
一例として、吸着分離装置300Bは、フィルタ332と、ブロワー334と、吸着塔336A、336Bと、サージタンク338と、真空ポンプ340と、バルブV1~V8とで構成されている。
【0073】
ブロワー334は、送風機の一種であり、外部から吸着分離装置300Bに空気を取り込む。取り込まれた空気は、フィルタ332に送られる。フィルタ332は、当該空気から窒素ガスなどの不要ガスを除去する。
【0074】
フィルタ332を通過した空気は、吸着塔336A,336Bのいずれかに送られる。当該空気の送り先は、バルブV1~V8の開閉に応じて切り換えられる。
図6の例では、バルブV1,V4,V5,V7が開状態に制御され、バルブV2,V3,V6,V8が閉状態に制御されている。この場合、空気は、吸着塔336Aに導かれる。
【0075】
吸着塔336Aでは、水分などの不純物と窒素ガスとが、吸着剤によって吸着される。一方で、吸着剤に吸着されにくい酸素ガスは、吸着塔336Aを通過し、サージタンク338に送られる。その後、サージタンク338に送られた酸素ガスの一部は、上述の配管F2を介して供給機構400に送られる。一方で、酸素ガスの残りは、他方の吸着塔336Bに送られる。
【0076】
真空ポンプ340は、吸着塔336Bを減圧し、吸着塔336B内の吸着剤で前回に吸着した不要ガスを当該吸着剤から脱着する。脱着された不要ガスは、排ガスとして大気中に排出される。
【0077】
その後、吸着分離装置300Bは、バルブV1~V8の開閉を逆転させる。すなわち、バルブV1,V4,V5,V7が開状態から閉状態に切り換えられ、バルブV2,V3,V6,V8が閉状態から開状態に切り換えられる。その結果、吸着塔336A,336Bの機能が逆転する。すなわち、吸着塔336Bは空気から不要ガスを除去することで酸素ガスを分離するように機能し、吸着塔336Aは吸着剤から不要ガスを脱着するように機能する。
【0078】
このように、吸着分離装置300Bは、不要ガスの吸着と脱着とを吸着塔336A,336B間で交互に繰り返すことで酸素ガスを精製する。
【0079】
<F.供給機構400>
次に、
図7および
図8を参照して、上述の供給機構400についてさらに説明する。
図7は、供給機構400の装置構成を説明するための図である。
【0080】
図7に示されるように、供給機構400は、集じん器402と、誘引通風機404と、混合機構406と、送風機408とを含む。集じん器402と誘引通風機404とは、たとえば、配管F1上に設けられている。混合機構406と送風機408とは、配管F2上に設けられている。
【0081】
集じん器402は、たとえば、ろ過式集じん器である。集じん器402は、燃焼設備200で発生した燃焼ガスから煤塵を取り除く。煤塵とは、燃焼設備200が可燃物を燃焼した際に発生する微粒子である。当該微粒子としては、たとえば、煙、ススおよび塵などが挙げられる。煤塵が取り除かれた燃焼ガスは、配管F1を介して誘引通風機404に送られる。
【0082】
誘引通風機404は、送風機の一種であり、集じん器402を通過した燃焼ガスを煙突(図示しない)に送る。これにより、燃焼ガスの一部は、煙突から大気に放出される。一方で、燃焼ガスの残りは、混合機構406または製造装置500に送られる。
【0083】
混合機構406は、誘引通風機404から送られる燃焼ガスと、酸素発生装置300で発生させた酸素ガスとを混合するための機構である。混合機構406には、燃焼ガスと酸素ガスとを混合することが可能な任意の機構が採用される。
【0084】
図8を参照して、混合機構406の一例について説明する。
図8は、混合機構406の断面を示す図である。
【0085】
図8の例では、混合機構406の内部において、複数の邪魔板407が設けられている。邪魔板407の各々は、ガスの流れを阻害するように配管F2内に設けられている。これにより、燃焼ガスおよび酸素ガスが配管F2内において効率的に混合される。なお、当該混合方法は一例であり、混合ノズルなどが燃焼ガスおよび酸素ガスの混合に用いられてもよい。
【0086】
再び
図7を参照して、送風機408は、混合機構406で混合された混合ガスを燃焼設備200に送る。送風機408は、たとえば、ファンなどで構成される。送風機408により、燃焼設備200→配管F1→配管F3→配管F2→燃焼設備200での燃焼ガスの循環や、燃焼設備200への酸素ガスの供給がより効率的に行われる。
【0087】
<G.製造装置500>
次に、
図9および
図10を参照して、上述の
図1に示される製造装置500についてさらに説明する。
【0088】
上述のように、製造装置500は、燃焼設備200で発生した燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造するための装置である。製造装置500の装置構成は特に限定されず、燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造することが可能な任意の装置構成が製造装置500に採用され得る。
【0089】
一例として、製造装置500の装置構成は、酸素発生装置300の種類に応じて決められる。以下では、酸素発生装置300の種類に応じた製造装置500の装置構成について説明する。
【0090】
(G1.製造装置500A)
まず、
図9を参照して、上述の深冷分離装置300A(
図5参照)が酸素発生装置300に採用される場合における製造装置500Aについて説明する。
図9は、製造装置500Aの装置構成の一例を示す図である。
【0091】
深冷分離装置300Aが酸素発生装置300に採用される場合、深冷分離装置300Aは、高純度の酸素ガスを燃焼設備200に供給することができる。その結果、燃焼設備200で発生する燃焼ガス中の炭酸ガス濃度がより高くなる。一例として、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度は、90%以上となる。そのため、製造装置500Aは、吸着分離装置やアミン吸収装置などの濃縮機構を用いることなく、燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造することができる。すなわち、製造装置500Aは、燃焼設備200から供給される燃焼ガスを直接的に圧縮・冷却することで液化炭酸ガスを製造することができる。
【0092】
図9の例では、製造装置500Aは、圧縮機514と、吸着器515と、冷却機構516とで構成されている。
【0093】
圧縮機514は、燃焼ガスを圧縮し、燃焼ガスが液化しやすい状態にする。圧縮された燃焼ガスは、吸着器515に送られる。
【0094】
吸着器515は、圧縮機514から送られてきた燃焼ガスから水分を吸着除去する。吸着除去の方法には、たとえば、TSA方式が採用される。
【0095】
TSA方式の吸着器515は、2つの吸着塔を有する。一方の吸着塔が水分を吸着しているときに、他方の吸着塔は前回に吸着した水分を大気に放出する。各吸着塔は、吸着と放出とを交互に繰り返すことで、圧縮された燃焼ガスから水分を吸着除去する。その後、吸着器515を通過した燃焼ガスは、冷却機構516に送られる。
【0096】
冷却機構516は、吸着器515を通過した燃焼ガスを冷却する。燃焼ガスの冷却方法は任意である。一例として、冷却機構516は、熱交換器を用いて冷媒と燃焼ガスとの間で熱交換を行うことで燃焼ガスを冷却する。当該冷媒には、たとえば、フロン冷媒またはNH3冷媒などが用いられる。
【0097】
製造装置500Aは、以上のような燃焼ガスの圧縮と冷却とを行うことで、当該燃焼ガスに含まれる炭酸ガスを液化する。これにより、製造装置500Aは、燃焼ガスから直接的に液化炭酸ガスを製造することができる。
【0098】
なお、上述の
図5で説明したように、深冷分離装置300Aは、空気から酸素ガスを分離するだけでなく、液体酸素と液体アルゴンと液体窒素とを空気から製造することができる。そのため、本実施の形態に従う製造設備100では、製造装置500Aが液化炭酸ガスを製造するとともに、深冷分離装置300Aが液体酸素と液体アルゴンと液体窒素とを併産することができる。
【0099】
なお、上述では、深冷分離装置300Aが液体酸素、液体アルゴンおよび液体窒素の3つを併産する前提で説明を行ったが、深冷分離装置300Aは、液体酸素、液体アルゴンおよび液体窒素の少なくとも1つを併産するように構成されてもよい。
【0100】
すなわち、深冷分離装置300Aは、液体酸素のみを併産するように構成されてもよい。あるいは、深冷分離装置300Aは、液体アルゴンのみを併産するように構成されてもよい。あるいは、深冷分離装置300Aは、液体窒素のみを併産するように構成されてもよい。あるいは、深冷分離装置300Aは、液体酸素、液体アルゴンおよび液体窒素の内の2つを併産するように構成されてもよい。
【0101】
(G2.製造装置500B)
次に、
図10を参照して、上述の吸着分離装置300B(
図6参照)が酸素発生装置300に採用される場合における製造装置500Bについて説明する。
図10は、製造装置500Bの装置構成の一例を示す図である。
【0102】
上述の吸着分離装置300Bにおいては、燃焼ガス中の空気由来の窒素濃度が高くなり、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度は、80%程度までしか上がらない可能性がある。そのため、製造装置500Bは、吸着分離装置やアミン吸収装置などの濃縮機構を用いて燃焼ガス中の炭酸ガス濃度を90%以上に高める。その上で、製造装置500Bは、燃焼ガスを圧縮・冷却し、燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造する。
【0103】
図10の例では、製造装置500Bは、炭酸ガス濃縮器512と、圧縮機514と、吸着器515と、冷却機構516とで構成されている。製造装置500Bは、炭酸ガス濃縮器512をさらに備える点で
図9に示される製造装置500Aとは異なる。
【0104】
炭酸ガス濃縮器512は、燃焼ガスに含まれる炭酸ガスを吸着する。炭酸ガスの吸着方法には、たとえば、PSA(Pressure Swing Adsorption)方式が採用される。炭酸ガス濃縮器512は、2つ以上の吸着塔を有する。各吸着塔は、ガス中の炭酸ガスを吸着する工程と、回収した炭酸ガスを塔内に戻して空隙に残ったガスを炭酸ガスに置換するパージ工程と、塔内を真空ポンプで減圧し脱着した炭酸ガスを回収する工程と、再度ガスが塔内に受け入れられるように塔内の圧力を常圧に戻す復圧工程とを繰り返す。濃縮された燃焼ガスは、圧縮機514に送られる。
【0105】
圧縮機514は、濃縮された燃焼ガスを圧縮し、当該燃焼ガスが液化しやすい状態にする。圧縮された燃焼ガスは、吸着器515に送られる。
【0106】
吸着器515は、圧縮機514から送られてきた燃焼ガスから水分を吸着除去する。吸着除去の方法には、たとえば、TSA方式が採用される。TSA方式による水分の除去方法については上述の通りである。吸着器515を通過した燃焼ガスは、冷却機構516に送られる。
【0107】
冷却機構516は、吸着器515を通過した燃焼ガスを冷却する。燃焼ガスの冷却方法は任意である。一例として、冷却機構516は、熱交換器を用いて冷媒と燃焼ガスとの間で熱交換を行うことで燃焼ガスを冷却する。当該冷媒には、たとえば、フロン冷媒またはNH3冷媒などが用いられる。
【0108】
製造装置500Bは、以上のような燃焼ガスの圧縮と冷却とを行うことで、当該燃焼ガスに含まれる炭酸ガスを液化する。これにより、製造装置500Aは、燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造することができる。
【0109】
<H.液化炭酸ガスの製造フロー>
次に、
図11を参照して、液化炭酸ガスの製造フローについて説明する。
図11は、製造設備100の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0110】
図11に示される処理は、製造設備100の制御部50が上述の制御プログラム122(
図4参照)を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0111】
ステップS110において、制御部50は、燃焼設備200において可燃物の燃焼工程が開始されたか否かを判断する。燃焼工程が開始されたか否かは、種々の方法で判断される。一例として、制御部50は、燃焼開始操作を受け付けたときに燃焼設備200において可燃物の燃焼工程が開始されたと判断する。制御部50は、燃焼設備200において可燃物の燃焼工程が開始されたと判断した場合(ステップS110においてYES)、制御をステップS112に切り替える。そうでない場合には(ステップS110においてNO)、制御部50は、ステップS110の処理を再び実行する。
【0112】
ステップS112において、制御部50は、上述のバルブ30(
図2参照)を閉状態にする。これにより、燃焼設備200で発生した燃焼ガスは、配管F1、配管F3、配管F2、および燃焼設備200の間で循環することになる。
【0113】
ステップS120において、制御部50は、燃焼ガスの炭酸ガス濃度が所定濃度(たとえば、10%以上30%以下の濃度)を超えたことを示す第1条件が満たされたか否かを判断する。第1条件が満たされたか否かは、種々の方法で判断される。
【0114】
ある局面において、制御部50は、ステップS110で燃焼設備200が可燃物の燃焼を開始してから所定時間が経過したことに基づいて、上記第1条件が満たされたと判断する。当該所定時間は、予め設定されてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。あるいは、当該所定時間は、温度や湿度などの環境条件に応じて自動で調整されてもよい。
【0115】
他の局面において、制御部50は、上述の濃度センサ20から取得した炭酸ガス濃度が閾値th1を超えたことに基づいて、上記第1条件が満たされたと判断する。閾値th1は、たとえば、10%以上30%以下の値である。閾値th1は、予め設定されてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。あるいは、当該閾値th1は、温度や湿度などの環境条件に応じて自動で調整されてもよい。
【0116】
制御部50は、上記第1条件が満たされたと判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御部50は、ステップS120の処理を再び実行する。
【0117】
ステップS122において、制御部50は、酸素発生装置300から燃焼設備200への酸素ガスの供給を開始する。これにより、燃焼ガスと酸素ガスとの混合ガスが燃焼設備200に供給される。
【0118】
このように、制御部50は、上記第1条件が満たされるまでは酸素発生装置300から燃焼設備200への酸素ガスの供給を開始しない。その結果、酸素ガスの供給が開始されるまでに、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度が10%~30%程度まで高められる。燃焼ガス中の炭酸ガス濃度が10%~30%程度まで高められた上で、燃焼ガスと酸素ガスとの混合ガスが燃焼設備200に供給されるため、炭酸ガスを供給するためのボンベなどを燃焼設備200に設ける必要がない。
【0119】
ステップS130において、制御部50は、燃焼ガスの炭酸ガス濃度が所定濃度(たとえば、80%以上95%以下の濃度)を超えたことを示す第2条件が満たされたか否かを判断する。第2条件が満たされたか否かは、種々の方法で判断される。
【0120】
ある局面において、制御部50は、ステップS122で酸素発生装置300が酸素ガスの供給を開始してから所定時間が経過したことに基づいて、上記第2条件が満たされたと判断する。当該所定時間は、予め設定されてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。あるいは、当該所定時間は、温度や湿度などの環境条件に応じて自動で調整されてもよい。
【0121】
他の局面において、制御部50は、上述の濃度センサ20から取得した炭酸ガス濃度が閾値th2を超えたことに基づいて、上記第2条件が満たされたと判断する。閾値th2は、上述の閾値th1よりも大きい。閾値th2は、たとえば、80%以上で95%以下の値である。好ましくは、閾値th2は、90%である。当該閾値th2は、予め設定されてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。あるいは、当該閾値th2は、温度や湿度などの環境条件に応じて自動で調整されてもよい。
【0122】
制御部50は、上記第2条件が満たされたと判断した場合(ステップS130においてYES)、制御をステップS132に切り替える。そうでない場合には(ステップS130においてNO)、制御部50は、ステップS130の処理を再び実行する。
【0123】
ステップS132において、制御部50は、上述のバルブ30(
図2参照)を閉状態から開状態にする。これにより、燃焼設備200で発生した燃焼ガスが製造装置500に送られ、燃焼ガスから高純度の液化炭酸ガスが製造される。
【0124】
<I.シミュレーション結果>
発明者らは、燃焼設備200で発生した燃焼ガスと酸素発生装置300で発生させた酸素ガスとの混合ガスを燃焼設備200に供給し続けることで、燃焼ガス中の組成がどのように変化するかをシミュレーションにより確認した。以下では、
図12を参照して、当該シミュレーション結果について説明する。
【0125】
図12は、シミュレーション結果をグラフG1で示す図である。グラフG1には、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度の推移と、燃焼ガス中の酸素濃度の推移と、燃焼ガス中の窒素濃度の推移と、燃焼ガス中の水分濃度の推移とが示されている。
【0126】
グラフG1の横軸は、酸素発生装置300から燃焼設備200への酸素ガスの供給が開始されてからの経過時間を表わす。当該経過時間の単位は、「hr」で示されている。
【0127】
グラフG1の縦軸は、燃焼ガス中の各ガスの濃度を示す。当該濃度の単位は、たとえば、「mol%」で示されている。
【0128】
グラフG1に示されるように、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度は、時間の経過とともに上昇しており、最終的には90%程度まで上昇している。燃焼ガス中の窒素濃度は、時間の経過とともに下降しており、最終的には0%に近付いている。燃焼ガス中の酸素濃度と、
燃焼ガス中の窒素濃度と、燃焼ガス中の水分濃度とは、10%未満で推移している。
【0129】
このように、発明者らは、燃焼設備200で発生した燃焼ガスと酸素発生装置300で発生させた酸素ガスとの混合ガスを燃焼設備200に供給し続けることで、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度が90%程度まで上昇することを確認した。
【0130】
炭酸ガス濃度が90%程度まで上昇すると、製造装置500は、吸着分離装置やアミン吸収装置などの濃縮機構を用いることなく、燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造することができる。すなわち、製造装置500は、燃焼設備200から供給される燃焼ガスを直接的に圧縮・冷却することで液化炭酸ガスを製造することができる。
【0131】
<J.まとめ>
以上のように、上述の製造設備100は、燃焼設備200で可燃物を燃焼させることで発生した燃焼ガスを燃焼設備200に戻すとともに、酸素発生装置300で発生させた酸素ガスを燃焼設備200に供給する。すなわち、製造設備100は、可燃物の燃焼中において、燃焼ガスと酸素ガスとの混合ガスを燃焼設備200に供給する。当該混合ガスが燃焼設備200に供給され続けることで、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度が高められる。製造装置500は、炭酸ガス濃度が高められた燃焼ガスから液化炭酸ガスを製造する。
【0132】
このように、製造設備100は、燃焼設備200で発生した燃焼ガスを利用して、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度を上げる。すなわち、製造設備100は、ボンベなどから炭酸ガスを供給すること無く、燃焼ガス中の炭酸ガス濃度を上げることができる。これにより、純度の高い液化炭酸ガスが製造される。
【0133】
また、炭酸ガス濃度が高められた燃焼ガスが製造装置500に送られるため、製造装置500での液化炭酸ガスの製造が容易になる。結果として、製造装置500の構成を単純化することができ、製造装置500の設備規模を小さくすることができる。
【0134】
<K.その他>
以上のように、上記開示の製造設備100を用いることによって、燃焼炉排出ガス中の炭酸ガスをそのまま大気へ放出することなく、本来必要とされている液化炭酸ガスやドライアイスとして有効利用することができる。そのため、地球温暖化ガスを削減することができ、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献することができる。
【0135】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0136】
20 濃度センサ、30 バルブ、50 制御部、100 製造設備、101 制御回路、102 ROM、103 RAM、104 通信インターフェイス、110 バス、120 補助記憶装置、122 制御プログラム、200 燃焼設備、300 酸素発生装置、300A 深冷分離装置、300B 吸着分離装置、302 フィルタ、304 圧縮機、308 吸着器、310 熱交換器、312 精留塔、312A 下塔、312B 上塔、314 アルゴン精製装置、332 フィルタ、334 ブロワー、336A 吸着塔、336B 吸着塔、338 サージタンク、340 真空ポンプ、400 供給機構、402 集じん器、404 誘引通風機、406 混合機構、407 邪魔板、408 送風機、500 製造装置、500A 製造装置、500B 製造装置、512 炭酸ガス濃縮器、514 圧縮機、515 吸着器、516 冷却機構、F1 配管、F2 配管、F3 配管、G1 グラフ、P1 分岐点、P2 分岐点、V1 バルブ、V2 バルブ、V3 バルブ、V4 バルブ、V5 バルブ、V6 バルブ、V7 バルブ、V8 バルブ。