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特開2024-151460検査支援システム及び、検査支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151460
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】検査支援システム及び、検査支援方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20241018BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20241018BHJP
   E02B 7/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N29/24
E04G23/02 A
E02B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064801
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】591114803
【氏名又は名称】公益財団法人レーザー技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】新村 亮
(72)【発明者】
【氏名】坪倉 正和
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 慎理
(72)【発明者】
【氏名】染川 智弘
【テーマコード(参考)】
2E176
2G047
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB38
2G047AA10
2G047BC07
2G047CA04
2G047GA19
2G047GA21
2G047GG47
(57)【要約】
【課題】物体に含まれる検査対象物が特定状態にあるかを効率的且つ安全に検査する。
【解決手段】物体210に含まれる検査対象物AGが物体210から少なくとも部分的に剥離した特定状態にあるかを検査する検査支援システム1であって、検査対象物AGの位置情報を取得する取得ユニット10,11と、取得される位置情報に基づき、検査対象物AGに振動を発生させる加振用レーザL1を検査対象物AGに向けて照射する加振装置40と、取得される位置情報に基づき、検査対象物AGに向けて計測用レーザL2を照射するとともに、検査対象物AGにて反射された計測用レーザL2を受信することにより、検査対象物AGの振動情報を取得する振動計測装置50と、取得される振動情報に基づき、検査対象物AGが特定条件にあるかを判定する判定部60,170と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に含まれる検査対象物が前記物体から少なくとも部分的に剥離した特定状態にあるかを検査する検査支援システムであって、
前記検査対象物の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段によって取得される前記位置情報に基づき、前記検査対象物に振動を発生させる加振用レーザを前記検査対象物に向けて照射する加振手段と、
前記位置情報取得手段によって取得される前記位置情報に基づき、前記検査対象物に向けて計測用レーザを照射するとともに、前記検査対象物にて反射された前記計測用レーザを受信することにより、前記検査対象物の振動情報を取得する振動計測手段と、
前記振動計測手段によって取得される前記振動情報に基づき、前記検査対象物が前記特定条件にあるかを判定する判定手段と、を備える
ことを特徴とする検査支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検査支援システムであって、
前記振動計測手段は、前記振動情報として、少なくとも前記検査対象物の卓越周波数、振幅及び、振動開始後収束するまでの収束時間の何れかを取得し、
前記判定手段は、前記振動計測手段によって取得される前記卓越周波数、前記振幅及び、前記収束時間のうち、少なくとも何れか一つが所定条件を満たす場合に、前記検査対象物を前記特定状態にあると判定する
検査支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検査支援システムであって、
前記物体は、コンクリート構造物であり、
前記検査対象物は、前記コンクリート構造物に含まれる骨材であり、
前記位置情報取得手段は、前記コンクリート構造物のコンクリート面に露出した骨材の位置情報を取得し、
前記判定手段は、前記特定状態として、前記骨材が前記コンクリート構造物のモルタルから浮いているかを判定する
検査支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の検査支援システムであって、
前記コンクリート構造物は、ダム堤体であり、
前記位置情報取得手段は、前記ダム堤体のコンクリート面を撮影するカメラを飛行体又は、走行体又は、船体の何れかの移動体に搭載するか、或は、前記カメラを地上に設置することにより構成されており、
前記カメラによって撮影された画像の特徴点の特徴量に基づき、前記画像から前記骨材を判別する判別手段をさらに備え、
前記加振手段は、前記判別手段によって判別された前記骨材に向けて前記振動用レーザを照射し、
前記振動計測手段は、前記判別手段によって判別された前記骨材に向けて前記計測用レーザを照射する
検査支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の検査支援システムであって、
前記カメラは、前記ダム堤体の嵩上げ工事にて、既設堤体のコンクリートを斫った旧コンクリート面を撮影し、
前記加振手段は、前記旧コンクリート面に新たなコンクリートを打設するよりも前に、前記骨材に向けて前記振動用レーザを照射し、
前記振動計測手段は、前記旧コンクリートに新たなコンクリートを打設するよりも前に、前記骨材に向けて前記計測用レーザを照射する
検査支援システム。
【請求項6】
請求項4に記載の検査支援システムであって、
前記カメラによって撮影された少なくとも2以上の画像及び、前記判定手段の判定結果に基づき、前記特定状態にあると判定した骨材の位置情報を含む3次元点群データを生成する3次元点群データ生成手段をさらに備える
検査支援システム。
【請求項7】
物体に含まれる検査対象物が前記物体から少なくとも部分的に剥離した特定状態にあるかを検査する検査支援方法であって、
前記検査対象物の位置情報を取得し、
取得した前記位置情報に基づき、前記検査対象物に振動を発生させる加振用レーザを前記検査対象物に向けて照射し、
取得した前記位置情報に基づき、前記検査対象物に向けて計測用レーザを照射するとともに、前記検査対象物にて反射された前記計測用レーザを受信することにより、前記検査対象物の振動情報を取得し、
取得した前記振動情報に基づき、前記検査対象物が前記特定条件にあるかを判定する
ことを特徴とする検査支援方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査支援システム及び、検査支援方法に関し、物体に含まれる検査対象物が少なくとも部分的に剥離した特定状態にあるかを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力需要の増加や化石燃料を用いる火力発電の削減等を背景に、既存の水力発電用ダムの嵩上げや放水設備の増設による再開発の要請が高まっている。また、地球温暖化による気候変動に対応するために、治水を目的としたダムの嵩上げも増加している。また、治水・利水、砂防、その他擁壁等といったコンクリート構造物のリニューアル工事の要請も高まっている。
【0003】
ダムの嵩上げ工事では、ダム堤体の天端上に新たなコンクリートを打設するとともに、ダム堤体の法面にも新たなコンクリートを打設する。新たなコンクリートの打設は、ブレーカやロードヘッダ等を用いて旧コンクリートを斫った後に行う。この際、旧コンクリートにモルタルから剥離した浮いた骨材が存在する場合には、浮いた骨材を検知して予め除去する必要がある。このような骨材の浮き検知は、堤体の嵩上げ工事以外においても、例えば、既設堤体に放流能力を確保する放流設備を増設改修する際に、堤体に削孔した放流用の穴の内面においても行う必要がある。
【0004】
従来、骨材の浮き検知は、作業員の目視検査や打音検査によって実施されている。しかしながら、ダム堤体の検査は高所での作業になるため、作業員の安全性を十分に確保できない課題がある。また、作業員の人員確保が難しく、検査に時間を要することから、工期や工費が増加するといった課題もある。このため、骨材の浮きを安全且つ容易に検査できるシステムの開発が求められている。
【0005】
物体から剥離した検査対象物を検査する技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1記載の技術は、トンネルの切羽に打撃を与えるコソク作業時に、切羽面に対してレーザ光を照射するとともに、切羽面にて反射されたレーザ光の周波数変化を取得し、取得した周波数変化に基づいて切羽に存在する浮石の有無を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-167538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の技術を、ダム堤体の検査に適用する場合を考える。特許文献1記載の技術では、予め作業員が目視によって浮石を打撃するための打撃位置を決定するとともに、打撃位置近傍に評価対象エリアを設定し、設定した評価対象エリア内にてレーザ光を走査する。このような目視作業やレーザ光の走査を高所且つ面積が大きいダム堤体の法面等で行おうとすると、作業に多大な労力を費やすことになり、検査に時間が掛かるといった課題が生じる。また、打撃位置を決定する際は、作業員が法面等の高所に近づかなければならず、安全性を十分に確保できない課題も生じる。また、計測と並行してダム堤体に重機などを用いて打撃を与えることになるが、重機のアクセスが困難な法面等の高所に対しては、十分な検査を行えない課題も生じる。
【0008】
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、物体に含まれる検査対象物が少なくとも部分的に剥離した特定状態にあるかを効率的且つ安全に検査することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のシステムは、
物体(210)に含まれる検査対象物(AG)が前記物体(210)から少なくとも部分的に剥離した特定状態にあるかを検査する検査支援システム(1)であって、
前記検査対象物(AG)の位置情報を取得する位置情報取得手段(10,11)と、
前記位置情報取得手段(10,11)によって取得される前記位置情報に基づき、前記検査対象物(AG)に振動を発生させる加振用レーザ(L1)を前記検査対象物(AG)に向けて照射する加振手段(40)と、
前記位置情報取得手段(10,11)によって取得される前記位置情報に基づき、前記検査対象物(AG)に向けて計測用レーザ(L2)を照射するとともに、前記検査対象物(AG)にて反射された前記計測用レーザ(L2)を受信することにより、前記検査対象物(AG)の振動情報を取得する振動計測手段(50)と、
前記振動計測手段(50)によって取得される前記振動情報に基づき、前記検査対象物(AG)が前記特定条件にあるかを判定する判定手段(60,170)と、を備える
ことを特徴とする。
【0010】
本開示の他の態様の検査支援システム(1)において、
前記振動計測手段(50)は、前記振動情報として、少なくとも前記検査対象物(AG)の卓越周波数、振幅及び、振動開始後収束するまでの収束時間の何れかを取得し、
前記判定手段(60,170)は、前記振動計測手段(50)によって取得される前記卓越周波数、前記振幅及び、前記収束時間のうち、少なくとも何れか一つが所定条件を満たす場合に、前記検査対象物(AG)を前記特定状態にあると判定する。
【0011】
本開示の他の態様の検査支援システム(1)において、
前記物体は、コンクリート構造物(210)であり、
前記検査対象物は、前記コンクリート構造物(210)に含まれる骨材(AG)であり、
前記位置情報取得手段(10,11)は、前記コンクリート構造物(210)のコンクリート面に露出した骨材(AG)の位置情報を取得し、
前記判定手段(60,170)は、前記特定状態として、前記骨材(AG)が前記コンクリート構造物(210)のモルタル(C)から浮いているかを判定する。
【0012】
本開示の他の態様の検査支援システム(1)において、
前記コンクリート構造物は、ダム堤体(210)であり、
前記位置情報取得手段(10)は、前記ダム堤体(210)のコンクリート面を撮影するカメラ(12)を飛行体(11)又は、走行体又は、船体の何れかの移動体に搭載するか、或は、前記カメラ(12)を地上に設置することにより構成されており、
前記カメラ(12)によって撮影された画像(N,N・・・N)の特徴点(F)の特徴量(F)に基づき、前記画像(N,N・・・N)から前記骨材(AG)を判別する判別手段(60,120)をさらに備え、
前記加振手段(40)は、前記判別手段(60,120)によって判別された前記骨材(AG)に向けて前記振動用レーザ(L1)を照射し、
前記振動計測手段(50)は、前記判別手段(60,120)によって判別された前記骨材(AG)に向けて前記計測用レーザ(L2)を照射する。
【0013】
本開示の他の態様の検査支援システム(1)において、
前記カメラ(12)は、前記ダム堤体(210)の嵩上げ工事にて、既設堤体(210)のコンクリートを斫った旧コンクリート面を撮影し、
前記加振手段(40)は、前記旧コンクリート面に新たなコンクリートを打設するよりも前に、前記骨材(AG)に向けて前記振動用レーザ(L1)を照射し、
前記振動計測手段(50)は、前記旧コンクリートに新たなコンクリートを打設するよりも前に、前記骨材(AG)に向けて前記計測用レーザ(L2)を照射する。
【0014】
本開示の他の態様の検査支援システム(1)において、
前記カメラ(12)によって撮影された少なくとも2以上の画像(N,N・・・N)及び、前記判定手段(60,170)の判定結果に基づき、前記特定状態にあると判定した骨材(AG)の位置情報を含む3次元点群データを生成する3次元点群データ生成手段(60,130)をさらに備える。
【0015】
本開示の方法は、
物体(210)に含まれる検査対象物(AG)が前記物体(210)から少なくとも部分的に剥離した特定状態にあるかを検査する検査支援方法であって、
前記検査対象物(AG)の位置情報を取得し、
取得した前記位置情報に基づき、前記検査対象物(AG)に振動を発生させる加振用レーザ(L1)を前記検査対象物(AG)に向けて照射し、
取得した前記位置情報に基づき、前記検査対象物(AG)に向けて計測用レーザ(L2)を照射するとともに、前記検査対象物(AG)にて反射された前記計測用レーザ(L2)を受信することにより、前記検査対象物(AG)の振動情報を取得し、
取得した前記振動情報に基づき、前記検査対象物(AG)が前記特定条件にあるかを判定する
ことを特徴とする。
【0016】
上記説明においては、本開示の理解を助けるために、実施形態に対応する構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本開示の技術によれば、物体に含まれる検査対象物が少なくとも部分的に剥離した特定状態にあるかを効率的且つ安全に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る検査支援システムを示す模式的な全体構成図である。
図2】本実施形態に係る検査支援システムが備える測定ユニットを示す模式図である。
図3】本実施形態に係る検査支援システムが備える情報処理端末のソフトウェア構成の一例を示す模式図である。
図4】カメラによって撮影された画像の一例を示す模式図である。
図5】本実施形態に係る検査支援システムが実施する検査対象物の画像取得処理のルーチンを説明するフローチャートである。
図6】本実施形態に係る検知支援システムが実施する骨材判別処理、加振点設定処理のルーチンを説明するフローチャートである。
図7】本実施形態に係る検知支援システムが実施する振動計測処理、浮き判定処理のルーチンを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る検査支援システム及び、検査支援方法について説明する。
【0020】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る検査支援システム1を示す模式的な全体構成図である。
【0021】
検査支援システム1は、例えば、コンクリートダム200の嵩上げ工事に適用される。嵩上げ工事は、既設堤体210の天端212及び法面214のコンクリート(以下、旧コンクリートと称する)をブレーカやロードヘッダ等によって斫った後、新たなコンクリートを打設することにより、新設堤体300(破線参照)を構築する。なお、図中の符号201は地表、図中の符号202は堰き止められた水を示している。
【0022】
嵩上げ工事においては、旧コンクリートを斫った後、新たなコンクリートを打設するよりも前に、旧コンクリートに含まれる浮いた骨材AGを除去する必要がある。本実施形態の検査支援システム1は、コンクリートダム200の嵩上げ工事において、旧コンクリートに存在する骨材AGの浮きを検知する。具体的には、検査支援システム1は、骨材情報取得ユニット10と、測定ユニット20とを備えている。
【0023】
骨材情報取得ユニット10は、例えば、既設堤体210の周囲を飛行可能なドローン11である。図1において、ドローン11は回転翼型(マルチコプター)で示されているが、固定翼型のUAVであってもよい。なお、骨材情報取得ユニット10は、ドローン11に限定されず、既設堤体210の高さや幅等に応じて、地表201等を走行可能な走行車(例えば、自動車、移動台車等)を用いてもよく、或いは、地表201等の所定位置に三脚等を用いて設置してもよい。また、工事を行う場所によっては、ダムの貯水池を航行可能な船体等であってもよい。以下では、骨材情報取得ユニット10は、ドローン11を一例に説明する。
【0024】
ドローン11は、カメラ12、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機13、挙動センサ14、送受信機(図示せず)等を備えている。
【0025】
カメラ12は、既設堤体210の天端212や法面214等を撮影する。GNSS受信機13は、ドローン11の現在の位置情報(ワールド座標系の3次元位置座標)を取得する。挙動センサ14は、ドローン11の挙動を検出するセンサであって、例えば、3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサ、3軸地磁気センサ等によって構成される。送受信機は、ドローン11が測定ユニット20と無線通信を行うための通信デバイスである。
【0026】
ドローン11は、自律飛行又は遠隔操作飛行により、既設堤体210の周囲を飛行する。ドローン11の飛行中、カメラ12は旧コンクリートが斫られた既設堤体210の天端212や法面214等を連続的に撮影する。カメラ12が撮影する画像は、ドローン11が飛行し終えた後に測定ユニット20に送信してもよく、或は、ドローン11の飛行中に測定ユニット20に逐次送信してもよい。
【0027】
測定ユニット20は、位置情報取得装置30と、加振装置40と、振動計測装置50と、情報処理端末60とを備えている。これら位置情報取得装置30、加振装置40、振動計測装置50、情報処理端末60は、有線通信又は無線通信を介して互いに通信可能に接続されている。
【0028】
本実施形態において、測定ユニット20は、例えば、移動体Vに搭載される。移動体Vは、運転者が運転操作を行う自動車等の有人走行車でもよく、或いは、自律走行が可能な無人走行車であってもよい。測定ユニット20を移動体Vに搭載すれば、天端212や法面214の測定に適した適宜の位置に移動することができる。なお、測定ユニット20は、既設堤体210の高さや幅に応じて地表201の所定位置に設置することも可能である。また、測定ユニット20の加振装置40及び、振動計測装置50は、装置全体の重量等によってはドローン11に搭載することも可能である。この場合、ドローン11が備えるGNSS受信機13を併用することにより、位置情報取得装置30は省略すればよい。
【0029】
位置情報取得装置30は、測定ユニット20又は、移動体Vの現在の位置情報を取得する。本実施形態において、測定ユニット20又は、移動体Vの位置情報には、ワールド座標系の3次元位置座標及び、方向が含まれる。3次元位置座標を取得する位置情報取得装置30としては、例えば、GNSS受信機やGPS(Global Positioning System)受信機等が挙げられる。方向を取得する位置情報取得装置30としては、例えば、方位角を検出するジャイロセンサ等が挙げられる。位置情報取得装置30は、取得した測定ユニット20の位置情報を情報処理端末60に所定の周期で送信する。
【0030】
図2に示すように、加振装置40は、加振用レーザ発振器41と、加振用スキャナ42と、加振用コントローラ44とを備える。
【0031】
加振用レーザ発振器41は、既設堤体210の加振点P(又は、近傍)に向けて照射する加振用レーザ光L1を発振する。ここで、加振点Pは、旧コンクリートを斫ることにより露出する骨材AGの位置である。骨材AGの位置情報の取得については後述する。加振用レーザ光L1の種類は特に制限されないが、例えば、高出力のパルスレーザ(Nd:YAGレーザ)、COレーザ等を用いることができる。
【0032】
加振用スキャナ42は、例えばガルバノスキャナであって、加振用レーザ発振器41から入射する加振用レーザ光L1を加振点Pに向けさせる加振用反射鏡43を備えている。加振用コントローラ44は、情報処理端末60からの指令に応じて加振用レーザ発振器41から加振用レーザ光L1を発振させるとともに、加振用反射鏡43を所望の角度に回転させる。加振用レーザ光L1を加振点Pに照射すると、その衝撃によって骨材AGに超音波が発生する。骨材AGに超音波が発生すると、骨材AGは所定の振幅で振動する。
【0033】
振動計測装置50は、レーザ振動計51と、計測用スキャナ52と、計測用コントローラ54とを備える。
【0034】
レーザ振動計51は、加振点P(又は、近傍)に照射する計測用レーザ光L2を発振する発振器と、反射された計測用レーザ光L2を受信する受信機とを含む。計測用スキャナ52は、例えばガルバノスキャナであって、計測用レーザ光L2を加振点Pに向けさせる計測用反射鏡53を備えている。計測用コントローラ54は、情報処理端末60からの指令に応じてレーザ振動計51から計測用レーザ光L2を発振させるとともに、計測用反射鏡54を所望の角度に回転させる。
【0035】
レーザ振動計51の発振器から発振された計測用レーザ光L2は、不図示のビームスプリッタによって入射光と参照光とに分岐される。入射光は、加振点Pに照射され、反射された反射光がレーザ振動計51の受信機に入射する。一方、参照光は、加振点Pに照射されることなく受信機に入射する。加振用レーザ光L1の照射により、骨材AGに振動が生じると、骨材AGに照射された計測用レーザ光L2の周波数が変化、すなわち、参照光に対して位相にずれが生じる。
【0036】
レーザ振動計51は、骨材AGで反射された計測用レーザ光L2の周波数の変化を検知し、骨材GAの振動の速度と変位等の振動情報を取得する、いわゆるレーザドップラ振動計である。レーザ振動計51の性能は、特に制限されないが、骨材AGの浮きを検知するにあたり、振動計コントローラ54を利用して、10~20μm程度の変位及び、2KHz以下程度の振動速度を測定できる性能を具備することが望ましい。レーザ振動計51は、取得した骨材GAの振動情報を情報処理端末60に送信する。
【0037】
情報処理端末60は、CPU61などの処理部、ROM62やRAM63などの記憶部、入出力用のインターフェイス64、補助記憶装置65を備えるコンピュータ等の情報処理装置によって構成される。また、情報処理端末60は、ディスプレイなどの表示装置66、キーボードやマウスなどの入力装置67を備えている。情報処理端末60は、ドローン11との連携、骨材AGの浮き判定、3次元点群データの生成、表示装置66への表示処理等を実行する。表示装置66には、判定結果や3次元点群データ等が表示される。作業員は、表示装置66の画面表示に基づき、骨材AGの浮きを検知した場所等を把握することができる。作業員は、入力装置67を操作することにより、検査支援システム1に対する入力指示や設定操作を行うことができる。なお、情報処理端末60を設置する場所は、移動体Vに限定されず、管理事務所等に設置することもできる。また、情報処理端末60は、作業員が携帯するタブレットやスマートフォンなどによって構成することもできる。
【0038】
[ソフトウェア構成]
図3は、情報処理端末60のソフトウェア構成の一例を示す模式図である。
【0039】
図3に示すように、情報処理端末60は、撮影制御部100、画像情報受信部110、骨材判別部120、3次元点群データ生成部130、加振点設定部140、加振制御部150、計測制御部160、骨材浮き判定部170、表示制御部180を備える。これら各機能要素100~180は、情報処理端末60のCPU61がROM62又は補助記憶装置65に格納されているプログラムをRAM63に読み出して実行することにより実現される。なお、各機能要素100~180の全部又は一部は、情報処理端末60とネットワークを介して通信可能な他の情報処理端末に設けることもできる。
【0040】
撮影制御部100は、ドローン11に搭載されたカメラ12の撮影を制御する。撮影制御部100は、ドローン11が飛行を開始すると、ドローン11に対して撮影指令を送信する。ドローン11のコントローラは、撮影指令を受信すると、カメラ12を作動させ、ドローン11の飛行中に既設堤体210の旧コンクリート面を連続撮影することにより、複数の画像N,N・・・Nを取得する。各画像N,N・・Nは、静止画を撮影することにより取得してもよく、或は、動画を撮影し、動画から静止画を切り取ることにより取得してもよい。ドローン11の飛行は、予めROM62又は補助記憶装置65に格納した自律飛行プログラムを用いる自律飛行でもよく、或は、作業員による遠隔操作飛行であってもよい。
【0041】
撮影制御部100がドローン11に送信する撮影指令には、撮影タイミングや撮影角等が含まれる。撮影角は、カメラ12の光軸の傾きである。撮影タイミングは、ドローン11の飛行中にカメラ12が旧コンクリート面を撮影するタイミングであって、各画像の画角に所定のオーバラップ領域が生じるインターバル(距離間隔又は時間間隔)で設定される。撮影タイミングは、好ましくは、オーバラップ領域が後述するSfM(Structure from Motion)処理に適した値となるように設定される。
【0042】
画像情報受信部110は、ドローン11から各画像N,N・・Nを受信する。また、画像情報受信部110は、ドローン11から各画像N,N・・Nに付帯する付帯情報を受信する。付帯情報には、各画像N,N・・・Nの撮影位置及び、撮影姿勢等の撮影条件が含まれる。画像情報受信部110は、各画像N,N・・Nや付帯情報を、ドローン11が飛行を終えてから受信してもよく、或いは、ドローン11の飛行中に逐次受信してもよい。各画像N,N・・Nや付帯情報を逐次受信すれば、後述する加振制御、計測制御、浮き判定等をドローン11の飛行と並行して実施することが可能になる。
【0043】
撮影位置は、各画像N,N・・・Nを撮影したときのカメラ12(すなわち、ドローン11)の3次元座標位置であって、GNSS受信機13の検出結果に基づいて取得することができる。撮影姿勢は、各画像N,N・・・Nを撮影したときのカメラ12(すなわち、ドローン11)の姿勢であって、挙動センサ14の検出結果に基づいて取得することができる。画像情報受信部110は、ドローン11から受信した各画像N,N・・Nを付帯情報と対応付けて補助記憶装置65に格納する。
【0044】
骨材判別部120は、補助記憶装置65に格納された各画像N,N・・・Nから骨材AGを判別する。図4は、カメラ12によって撮影された画像Nの一例を示す模式図である。図4に示すように、既設堤体210の旧コンクリートを斫った面をカメラ12により撮影すると、画像NにはモルタルC及び、骨材AGが写り込む。骨材判別部120は、各画像N,N・・・Nにエッジ検出フィルタ(例えば、方向が異なる複数の微分フィルタ等)を適用することにより特徴点Fを抽出する。特徴点Fは、各画像N,N・・・Nにおいてエッジ部分等の周囲と輝度が明確に異なる箇所である。図4に示す例では、輝度が比較的高いモルタルCと、輝度が比較的低い骨材AGとの境界部分が特徴点Fとして抽出される。
【0045】
骨材判別部120は、各画像N,N・・・Nから特徴点Fを抽出すると、特徴点Fの特徴量F(特徴点の特徴を表す指標)を算出する。特徴量Fは、例えば、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)、SURF(Speeded-Up Robust Features)等の公知の特徴量抽出アルゴリズムを用いて算出すればよい。骨材判別部120は、算出した特徴量Fに基づき、各画像N,N・・・Nから骨材AGを判別するとともに、判別した骨材AGの位置情報(3次元座標位置)を取得する。骨材AGの判別は、例えばパターンマッチング等の機械学習に基づいて行えばよい。骨材AGの位置情報は、各画像N,N・・・Nの付帯情報に基づいて取得すればよい。骨材判別部120は、骨材AGの判別結果及び、位置情報を各画像N,N・・・Nに紐づけて補助記憶装置65に格納する。
【0046】
3次元点群データ生成部130は、補助記憶装置65に格納された各画像N,N・・・N等に基づき、公知のSfM処理を用いることにより3次元点群データを生成する。3次元点群データは、各画像N,N・・・N間のオーバラップ領域内で共通する特徴点を抽出し、付帯情報に含まれる撮影位置や撮影姿勢等に基づいて各画像N,N・・・Nから抽出した特徴点の対応付けを行ことにより生成される。本実施形態において、3次元点群データ生成部130は、骨材判別部120によって判別された各骨材AGの位置情報を含む3次元点群データを生成する。3次元点群データ生成部130は、生成した3次元点群データを補助記憶装置65に格納する。
【0047】
加振点設定部140は、補助記憶装置65に格納された3次元点群データ等に基づき、加振用レーザ光L1を照射する加振点Pを設定する。具体的には、加振点設定部140は、3次元点群データに含まれる各骨材AGの位置情報を加振点Pの位置情報(3次元座標位置)として設定する。加振点設定部140は、設定した加振点Pの位置情報を補助記憶装置65に格納する。
【0048】
加振制御部150は、加振用レーザ光L1を加振点Pに照射させることにより、骨材AGを振動させる加振制御を実行する。具体的には、加振制御部150は、加振用レーザ発振器41から加振用レーザ光L1を発振させる指令を加振用コントローラ44に送信する。また、加振制御部150は、補助記憶装置65に格納された加振点Pの位置情報と、位置情報取得装置30によって取得される測定ユニット20の現在の位置情報とに基づき、測定ユニット20の加振点Pに対する相対位置を算出するとともに、相対位置に応じた指令を加振用コントローラ42に送信する。これにより、加振用反射鏡43が所望の角度に回転され、加振用レーザ発振器41から加振点Pに加振用レーザ光L1が照射される。
【0049】
加振制御部150は、一つの加振点Pに対して加振用レーザ光L1を照射した後、後述する計測制御が終了すると、次の加振点Pに向けて加振用レーザ光L1を照射する。加振制御部150は、加振点設定部140によって設定された全ての加振点Pに対して加振用レーザ光L1の照射をし終えると、加振制御を終了する。
【0050】
計測制御部160は、加振制御と並行し、計測用レーザ光L2を加振点Pに照射させることにより、骨材AGにて反射した計測用レーザ光L2の周波数の変化を検知し、加振点Pの振動の速度や変位等の振動情報を実振動情報Rとして取得する計測制御を実行する。具体的には、計測制御部160は、計測用レーザ発振器51から計測用レーザ光L2を発振させる指令を計測用コントローラ54に送信する。また、計測制御部160は、測定ユニット20の加振点Pに対する相対位置に応じた指令を加振用コントローラ42に送信する。これにより、計測用反射鏡53が所望の角度に回転され、レーザ振動計51から加振点Pに計測用レーザ光L2が照射される。測定ユニット20の加振点Pに対する相対位置は、加振制御部150が算出する値を用いてもよく、或は、計測制御部160が算出してもよい。
【0051】
計測制御部160は、一つの加振点Pに対して計測用レーザ光L2を照射した後、当該加振点Pの実振動情報Rを取得し終えると、次の加振点Pに向けて計測用レーザ光L2を照射する。計測制御部160は、加振点設定部140によって設定された全ての加振点Pに対して実振動情報Rを取得し終えると、計測制御を終了する。計測制御部160は、取得した実振動情報Rを加振点Pの位置情報、すなわち、各骨材AGの位置情報と対応付けて補助記憶装置65に格納する。実振動情報Rを補助記憶装置65に格納するタイミングは、全ての加振点Pの計測を終えた後であってもよく、或は、一つの加振点Pにて計測が終了する毎であってもよい。
【0052】
骨材浮き判定部170は、補助記憶装置65に格納された各加振点Pの実振動情報Rと基準振動情報Sとを比較することにより、当該加振点Pに位置する骨材AGがモルタルCから浮いているか否かを判定する骨材浮き判定を実行する。ここで、骨材AGが浮いているとは、骨材AGのモルタルCに固着すべき部分の少なくとも一部が、モルタルCから剥離している状態をいう。骨材GAがモルタルCから剥離している状態は、本開示の特定状態の一例である。
【0053】
本実施形態において、実振動情報Rと基準振動情報Sとの比較は、(1)卓越周波数、(2)振幅、(3)収束時間の3つの評価指標に基づいて行われる。収束時間とは、振動開始から振動が収束するまでの時間である。基準振動情報Sとは、モルタルCに固着した健全な骨材AGの振動情報であって、予めROM62又は補助記憶装置65に格納されている。基準振動情報Sは、実験やシミュレーションシ等によって取得してもよく、或は、ネットワークで接続された管理サーバ装置等に蓄積される複数のダム現場の実績情報に基づいて取得してもよい。或は、現在の施工現場にて、測定エリア内で健全な骨材を確認するとともに、当該健全な骨材の振動情報(波形)を測定ユニット20によって測定し、測定して得た結果を基準振動情報Sにすることも可能である。
【0054】
ここで、浮いた骨材AGの振動情報は、健全な骨材AGに対して、(1)卓越周波数が低い、(2)振幅が大きい、(3)収束時間が長いといった特徴がある。骨材浮き判定部170は、以下の何れかの条件1~条件3が満たされる場合、該当する加振点Pの骨材AGに「浮きあり」と判定する。
条件1:実振動情報Rの卓越周波数が、基準振動情報Sの卓越周波数よりも所定の第1閾値以上低い。
条件2:実振動情報Rの振幅が、基準振動情報Sの振幅よりも所定の第2閾値以上大きい。
条件3:実振動情報Rの収束時間が、基準振動情報Sの収束時間よりも所定の第3閾値以上長い。
【0055】
第1~第3閾値は、特に限定されず、実際の現場で使用されている骨材AGの種類や大きさ、モルタルCの種類、既設堤体210の経年などに応じて適宜の値を設定すればよい。また、第1~第3閾値は、固定値でもよく、計測を実施した際の気象条件等に応じた可変値としてもよい。骨材浮き判定部170は、条件1~条件3が何れも満たされない場合、該当する加振点Pの骨材AGに「浮きなし」(健全)と判定する。骨材浮き判定部170は、「浮きあり」、「浮きなし」の判定結果を、各骨材AGの位置情報と対応付けて補助記憶装置65に格納する。
【0056】
表示制御部180は、骨材浮き判定部170による判定結果を情報処理端末60の表示装置61に表示する表示制御を実施する。判定結果は、例えば、3次元点群データ生成部130が生成した3次元点群データに、各骨材AGの浮き判定結果を重ね合わせて表示してもよく、或は、3次元点群データの各骨材AGの位置を判定結果に応じて異なる色(例えば、浮きあり:赤、浮き無し:青)で表示してもよい。このように、3次元点群データに、判定結果を合わせて表示することで、作業員は骨材の浮き位置を容易に把握することが可能になる。これにより、旧コンクリートから浮いた骨材を除去する除去作業の効率化が図られるようになる。なお、判定結果の表示は、「浮きあり」と判定した骨材AGの位置に対してレーザポインタを直接照射する、或はプロジェクションマッピング手法を採用してもよく、或は、現場の作業員が装着するMRグラス等に出力することも可能である。
【0057】
[画像取得処理]
次に、図5に示すフローに基づき、本実施形態に係る検査支援システム1(ドローン11)が実施する検査対象物の画像取得処理のルーチンを説明する。本ルーチンは、既設堤体210の旧コンクリートをブレーカやロードヘッダ等によって斫った後に実行される。なお、本ルーチンにおいて、ドローン11は自律飛行するものとして説明する。
【0058】
ステップS100では、ドローン11は、情報処理端末60から飛行指令を受信したか否かを判定する。飛行指令を受信した場合(Yes)、ドローン11は、ステップS110の処理に進み、既設堤体210の周囲を所定の目標飛行ルートに沿って飛行する自律飛行を開始する。一方、飛行指令を受信しない場合(No)、ドローン11は、本ルーチンを終了する。
【0059】
ステップS110にて自律飛行を開始すると、ステップS120では、ドローン11は、情報処理端末60から受信した撮影指令(撮影タイミング、撮影角等)に基づいて既設堤体210の旧コンクリート面を連続撮影することにより、複数の画像N,N・・・Nを取得する。
【0060】
次いで、ステップS130では、ドローン11は、対象となる既設堤体210の旧コンクリート面を全て撮影したか否かを判定する。旧コンクリート面を全て撮影した場合(Yes)、ドローン11は、ステップS140の処理に進み、自律飛行を終了する。一方、旧コンクリート面を全て撮影できていない場合(No)、ドローン11は、ステップS120の処理に戻り、自律飛行及び、撮影を継続する。
【0061】
ステップS150では、ドローン11は、飛行中に取得した各画像N,N・・・N及び、付帯情報(撮影位置,撮影姿勢等)を情報処理端末60に送信し、本ルーチンを終了する。なお、ステップS150の処理は、ドローン11の飛行中に逐次実行することも可能である。
【0062】
[骨材判別処理、加振点設定処理]
次に、図6に示すフローに基づき、本実施形態に係る検査支援システム1(情報処理端末60)が実施する骨材判別処理、加振点設定処理のルーチンを説明する。本ルーチンのステップS200~S240の各処理は、情報処理端末60がドローン11から少なくとも一以上の画像を受信すると実行可能となる。
【0063】
ステップS200では、情報処理端末60(以下、CPU61)は、ドローン11から受信した各画像N,N・・Nを付帯情報と対応付けて補助記憶装置65に格納する。次いで、ステップS210では、CPU61は、ステップS200で格納した各画像N,N・・Nから特徴点Fを抽出する。ステップS220では、CPU61は、ステップS210で抽出した各特徴点Fの特徴量Fを算出する。
【0064】
ステップS230では、CPU61は、ステップS220で算出した特徴量Fに基づき、各画像N,N・・・Nから骨材AGを判別する。次いで、ステップS240では、CPU61は、ステップS230の判別結果及び、骨材AGの位置情報を各画像N,N・・・Nに紐づけて補助記憶装置65に格納する。
【0065】
ステップS250では、ステップS240で格納した判別結果及び、各画像N,N・・・Nに基づき、各骨材AGの位置情報を含む3次元点群データを生成する。ステップS260では、CPU61は、ステップS250で生成した3次元点群データに基づき、加振用レーザ光L1を照射する加振点Pを設定する。ステップS270では、ステップS260で設定した加振点Pの位置情報を補助記憶装置65に格納し、その後、本ルーチンを終了する。
【0066】
[振動計測処理、浮き判定処理]
次に、図7に示すフローに基づき、本実施形態に係る検査支援システム1(測定ユニット20)が実施する振動計測処理、浮き判定処理のルーチンを説明する。本ルーチンは、図6に示す加振点設定処理により、少なくとも一つ以上の加振点Pが設定されると実行可能となる。
【0067】
ステップS300では、CPU61は、加振用レーザ光L1を加振点Pに照射させる加振制御を実行する。具体的には、CPU61は、加振用レーザ発振器41から加振用レーザ光L1を発振させる指令を加振用コントローラ42に送信する。また、CPU61は、測定ユニット20の加振点Pに対する相対位置を算出し、相対位置に応じた指令を加振用コントローラ42に送信することにより、加振用反射鏡43を所望の角度に回転させる。
【0068】
ステップS310では、CPU61は、計測用レーザ光L2を加振点Pに照射させる計測制御を実行する。具体的には、CPU61は、レーザ振動計51から計測用レーザ光L2を発振させる指令を計測用コントローラ54に送信する。また、CPU61は、測定ユニット20の加振点Pに対する相対位置に応じた指令を計測用コントローラ52に送信することにより、計測用反射鏡53を所望の角度に回転させる。なお、ステップS300及び、ステップS310の各処理は、順不同であり、同時であってもよい。
【0069】
ステップS320では、CPU61は、ステップS300及び、S310の処理により加振用レーザ光L1、計測用レーザ光L2が照射されている加振点Pの実振動情報Rを取得する。
【0070】
次いで、ステップS330では、CPU61は、加振点Pの実振動情報Rと基準振動情報Sとを比較することにより、当該加振点Pに位置する骨材AGが浮いているか否かを判定する骨材浮き判定を実行する。前述の条件1~条件3の少なくとも何れかが満たされる場合(Yes)、CPU61は、ステップS340の処理に進み、当該加振点Pに位置する骨材AGに「浮きあり」と判定する。一方、前述の条件1~条件3が何れも満たされない場合(No)、CPU61は、ステップS350の処理に進み、当該加振点Pに位置する骨材AGに「浮きなし」(健全)と判定する。
【0071】
ステップS360では、CPU61は、図6に示すフローのステップS260で設定した全ての加振点Pのうち、実振動情報Rを取得していない未計測の加振点Pが存在するかを判定する。未計測の加振点Pが存在する場合(Yes)、CPU61は、ステップS300の処理に戻る。一方、未計測の加振点Pが存在しない場合(No)、CPU61は、ステップS370の処理に進む。
【0072】
ステップS370では、CPU61は、図6に示すフローのステップS250で生成した3次元点群データに、ステップS340及び、ステップS350の判定結果を重ね合わせて表示装置66に表示し、その後、本ルーチンを終了する。
【0073】
以上詳述した本実施形態によれば、骨材情報取得ユニット10は、既設堤体210の斫られた旧コンクリート面を連続撮影するカメラ12を搭載したドローン11を備える。測定ユニット20は、ドローン11の飛行中にカメラ12が撮影した画像N,N・・Nから骨材AGを判別するとともに、判別した骨材AGの位置を加振点Pに設定する。また、測定ユニット20は、設定した加振点Pに向けて加振用レーザ光L1及び、計測用レーザ光L2を照射し、骨材AGの振動情報を取得することにより、骨材AGがモルタルCから浮いている特定状態にあるかを判定する。
【0074】
すなわち、骨材AGの位置情報の取得、骨材AGの振動情報の取得及び、骨材AGの浮き判定の一連の工程を、既設堤体210から離れた場所にて実施できるように構成されている。これにより、作業員が法面214等の高所に近づく必要がなくなり、安全性を確実に向上することが可能になる。また、作業員の目視作業等が不要になることから、検査の省人化を図ることも可能になる。
【0075】
また、測定ユニット20は、加振用レーザ光L1や計測用レーザ光L2を、画像N,N・・N等から特定した各骨材AGの位置に向けてピンポイントで照射する。すなわち、加振用レーザ光L1や計測用レーザ光L2を既設堤体210の旧コンクリート面上で走査することなく、各骨材AGの振動情報を効率的に取得できるように構成されている。これにより、ダム堤体等、検査範囲が広範囲になる現場においても、検査に要する期間を確実に短縮することができ、工期や工費の増加を効果的に抑えることが可能になる。
【0076】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0077】
例えば、上記実施形態において、骨材情報取得ユニット10は、カメラ12によって骨材AGの位置情報を取得するものとして説明したが、ライダ(LiDAR)やミリ波レーダ、3次元レーザスキャナ等を用いることも可能である。この場合、点群データを公知の手法を用いて処理することにより、骨材AGの形状等を特定し、位置情報を取得すればよい。この場合、点群データから把握することができる凸部を骨材として見做すことも可能である。
【0078】
また、上記実施形態において、骨材判別部120は、各画像N,N・・・Nから骨材AGを判別するものとして説明したが、各画像N,N・・・Nの特徴量から骨材AG以外の異物を含めて判別してもよい。この場合、異物の種別は特定してもよく、或は、特定しなくてもよい。
【0079】
また、本開示は、ダム堤体に限定されず、擁壁やPCタンク、橋梁、塔等のコンクリート構造物、トンネルの覆工コンクリート、ビル等の建築物にも広く適用することが可能である。この場合、コンクリート面は、斫られていないものであってもよい。また、対象はコンクリートに限定されず、トンネルの切羽、切土や盛土の法面等にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…検査支援システム,10…骨材情報取得ユニット,11…ドローン,12…カメラ,13…GNSS受信機,14…挙動センサ,20…測定ユニット,30…位置情報取得装置,40…加振装置,41…加振用レーザ発振器,42…加振用スキャナ,43…加振用反射鏡,44…加振用コントローラ,50…振動計測装置,51…レーザ振動計,52…計測用スキャナ,53…計測用反射鏡,54…計測用コントローラ,60…情報処理端末,61…CPU,62…ROM,63…RAM,64…インターフェイス,65…補助記憶装置,66…表示装置,67…入力装置,100…撮影制御部,110…画像情報受信部,120…骨材判別部,130…3次元点群データ生成部,140…加振点設定部,150…加振制御部,160…計測制御部,170…骨材浮き判定部,180…表示制御部,200…コンクリートダム,210…既設堤体,212…天端,214…法面,300…新設堤体,AG…骨材,C…モルタル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7