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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151465
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】超音波診断装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064813
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広樹
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB06
4C601EE01
4C601EE03
4C601GB04
4C601GB06
4C601HH21
4C601JB34
4C601JC06
4C601JC20
4C601KK47
(57)【要約】
【課題】超音波診断装置において、フレームレートの低下を抑えつつ、被検体の体内における深さ方向の方位分解能や感度を均質にした超音波画像を取得することである。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、画像生成部と、画像推定部と、を持つ。画像生成部は、被検体に向けて送信した単一の第1超音波信号に基づく第1超音波画像を生成する。画像推定部は、少なくとも単一の第2超音波信号に基づく第2超音波画像を入力すると、異なる送信条件で送信した複数の第2超音波信号に基づく複数の第2超音波画像を合成した第3超音波画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、第1超音波画像から推定される被検体の第3超音波画像と等価な第4超音波画像を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて送信した単一の第1超音波信号に基づく第1超音波画像を生成する画像生成部と、
少なくとも単一の第2超音波信号に基づく第2超音波画像を入力すると、異なる送信条件で送信した複数の前記第2超音波信号に基づく複数の前記第2超音波画像を合成した第3超音波画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、前記第1超音波画像から推定される前記被検体の前記第3超音波画像と等価な第4超音波画像を生成する画像推定部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記画像推定部は、前記学習済みモデルに対して前記第1超音波画像を入力することで、前記第4超音波画像を生成する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信条件は、送信する前記第2超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置である、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記学習済みモデルを生成する際に入力する前記第2超音波画像は、前記第3超音波画像よりも少ない数の複数の前記第2超音波画像を合成した第5超音波画像を含む、
請求項2または請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記第1超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置は、前記第2超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置の上限の位置から下限の位置までの範囲内の位置である、
請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記第1超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置は、前記第2超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置の上限の位置から下限の位置までの範囲内で、前記被検体の体内における深さが最も深い最深部の位置である、
請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波診断装置のコンピュータに、
被検体に向けて送信した単一の第1超音波信号に基づく第1超音波画像を生成させ、
少なくとも単一の第2超音波信号に基づく第2超音波画像を入力すると、異なる送信条件で送信した複数の前記第2超音波信号に基づく複数の前記第2超音波画像を合成した第3超音波画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、前記第1超音波画像から推定される前記被検体の前記第3超音波画像と等価な第4超音波画像を生成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波検査を行うための医用画像診断装置として、超音波診断装置が利用されている。超音波診断装置では、超音波プローブから超音波信号を送信し、この超音波信号が被検体(患者)の体内で反射されて戻ってきた超音波信号(反射波信号)を超音波プローブで受信する。そして、超音波診断装置では、超音波プローブが受信した反射波信号に対して画像処理を施して超音波画像を生成し、生成した超音波画像を超音波診断装置が備える表示装置などに表示させることにより、超音波検査の実施者(医師など)に提示する。
【0003】
従来の超音波診断装置では、超音波プローブから被検体の体内に送信する一本の超音波信号のビーム(以下、「超音波ビーム」という)の方向を順次変える(走査する)ことによって、所定の範囲の超音波画像を生成している。ところで、超音波プローブが送信する超音波ビームには、被検体の体内における深さ方向(超音波ビームの軸の方向)に焦点(フォーカス点)が存在する。このため、超音波診断装置が生成した超音波画像には、超音波ビームのフォーカス点付近の分解能は高いものの、フォーカス点から離れるほど分解能が低下してしまうということが起こり得る。つまり、所定の位置にフォーカス点が存在する一本の超音波ビームを走査して得られた超音波画像では、被検体の体内における深さ方向によって方位分解能や感度が異なってしまうということが起こり得る。
【0004】
このため、被検体の体内における深さ方向で方位分解能や感度が均質な超音波画像を得るために、超音波プローブから、深さ方向のフォーカス点の位置を変えた複数の超音波ビームを同じ方向に送信する多段フォーカスの技術を採用した超音波診断装置の実用化も進められている。一本の超音波ビームに着目した場合、多段フォーカスの超音波診断装置では、フォーカス点の位置を変えた超音波ビームを複数回送信し、フォーカス点が異なるそれぞれの超音波ビームの反射波信号を合成することによって、被検体の体内における深さ方向に対する分解能の不均質性を改善した一本の超音波ビームを被検体の体内に送信したのと等価な反射波信号を検出することができる。この分解能の不均質性を改善した超音波ビームによって、多段フォーカスの超音波診断装置では、生成する超音波画像の方位分解能や感度を向上させている。
【0005】
しかしながら、多段フォーカスの超音波診断装置でも、所定の範囲の超音波画像を得るためには、フォーカス点の位置が所定の位置である一本の超音波ビームで所定の範囲内を走査するシングルフォーカスの超音波診断装置と同様に、フォーカス点の位置を変えた複数の超音波ビームで所定の範囲内を走査する必要がある。言い換えれば、多段フォーカスの超音波診断装置では、フォーカス点の位置を変えた複数の超音波画像を得る必要がある。このため、多段フォーカスの超音波診断装置によってシングルフォーカスの超音波診断装置と同様の範囲の超音波画像を得ようとする場合、フォーカス点の位置を変えて得る超音波画像の枚数、つまり、異なるフォーカス点の超音波ビームを同じ方向に送信する回数に応じた分だけ、最終的な超音波画像を得るためのフレームレートが低下してしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2-004351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、超音波診断装置において、フレームレートの低下を抑えつつ、被検体の体内における深さ方向の方位分解能や感度を均質にした超音波画像を取得することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の超音波診断装置は、画像生成部と、画像推定部と、を持つ。画像生成部は、被検体に向けて送信した単一の第1超音波信号に基づく第1超音波画像を生成する。画像推定部は、少なくとも単一の第2超音波信号に基づく第2超音波画像を入力すると、異なる送信条件で送信した複数の前記第2超音波信号に基づく複数の前記第2超音波画像を合成した第3超音波画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、前記第1超音波画像から推定される前記被検体の前記第3超音波画像と等価な第4超音波画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る超音波診断装置の機能構成および使用環境の一例を示す図。
図2】実施形態に係る超音波診断装置が用いる多段フォーカス学習済みモデルの生成方法の一例を模式的に示す図。
図3】実施形態に係る超音波診断装置において生成する超音波画像の一例を示す図。
図4】実施形態に係る超音波診断装置における処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施形態の超音波診断装置、およびプログラムについて説明する。実施形態の超音波診断装置は、例えば、超音波プローブから超音波信号を送信し、この超音波信号が被検体(患者)の体内で反射されて戻ってきた超音波信号(反射波信号:エコー信号)を超音波プローブで検出することにより被検体の超音波検査を行う。実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブで検出された反射波信号に対して画像処理を施して、反射波信号の大きさなどに基づく超音波画像(エコー画像)を生成し、生成した超音波画像を表示装置に表示させることにより超音波検査の検査者(医師など)に提示する。これにより、検査者は、被検体の体内の組織の状態を目視で確認することができる。
【0011】
実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブから被検体の体内に送信する、指向性を有する単一の(一本の)超音波信号のビーム(以下、「超音波ビーム」という)の方向を順次変える(走査する)ことによって、所定の範囲の超音波画像を生成する。実施形態の超音波診断装置は、例えば、シングルフォーカスの技術が採用された超音波診断装置である。実施形態の超音波診断装置は、一本の超音波ビームにおいて存在する被検体の体内における深さ方向(超音波ビームの軸の方向)の焦点(フォーカス点)の位置が所定の位置になっている超音波ビームを、超音波プローブから所定の範囲内に送信することにより、超音波画像を生成する。実施形態の超音波診断装置では、後述する構成によって、例えば、多段フォーカスの技術が採用された超音波診断装置と等価な、方位分解能や深部の感度(以下、単に「感度」という)を向上させた超音波画像を生成する。
【0012】
実施形態の超音波診断装置は、例えば、多段フォーカスの技術が採用された超音波診断装置であってもよい。多段フォーカスの超音波診断装置では、フォーカス点が同じ位置になっている超音波ビームを超音波プローブから所定の範囲内に送信して一つ目の超音波画像を生成し、さらに、フォーカス点を異なる位置に変えた超音波ビームを超音波プローブから同じ所定の範囲内に送信して別の超音波画像を生成する。そして、多段フォーカスの超音波診断装置は、フォーカス点の位置を変えた超音波ビームを送信して別の超音波画像を生成する動作を複数回繰り返し、それぞれのフォーカス点の位置で得られた複数の超音波画像を合成することによって、最終的に生成する超音波画像の方位分解能や感度を向上させることができる。このため、実施形態の超音波診断装置が多段フォーカスの超音波診断装置である場合、後述する構成によらずに、方位分解能や感度を向上させた超音波画像を生成することができる。しかし、実施形態の超音波診断装置が多段フォーカスの超音波診断装置である場合においても、シングルフォーカスの超音波診断装置である場合と同様に、フォーカス点の位置が所定の位置になっている超音波ビームによる走査のみを行うものとする。つまり、実施形態の超音波診断装置が多段フォーカスの超音波診断装置である場合でも、シングルフォーカスの超音波診断装置と同様の動作をするものとする。
【0013】
実施形態の超音波診断装置は、例えば、ビーム合成の技術が採用された超音波診断装置であってもよい。ビーム合成の超音波診断装置では、超音波プローブから、フォーカス点が同じ位置になっている二本の超音波ビームを、例えば、所定の距離だけ離れた隣接する二つの領域などの異なる方向に同時に送信し、超音波ビームの走査をする際に、いずれか一本の超音波ビームを送信する方向を、前回の超音波ビームの送信方向に重複させる。例えば、ビーム合成の超音波診断装置において、第1超音波ビームを領域Aの方向に送信し、第2超音波ビームを領域Aに隣接する領域Bの方向に送信した場合、次に第1超音波ビームを送信する方向を領域Bの方向とし、第2超音波ビームを送信する方向を領域Bに隣接する領域Cの方向とする。このように、ビーム合成の超音波診断装置では、いずれか一方の超音波ビームを送信する方向が、他方の超音波ビームを前回送信した方向となるように、二本の超音波ビームのそれぞれを送信する方向を順次変えることによって、所定の範囲を走査する。これにより、ビーム合成の超音波診断装置では、フォーカス点が同じ位置になっている二本の超音波ビームの反射波信号を合成した超音波画像を生成することができ、生成する超音波画像の方位分解能や感度を向上させることができる。つまり、実施形態の超音波診断装置がビーム合成の超音波診断装置である場合でも、後述する構成によらずに、方位分解能や感度を向上させた超音波画像を生成することができる。しかし、実施形態の超音波診断装置がビーム合成の超音波診断装置である場合においても、超音波プローブから所定の範囲内に送信する超音波ビームは二本ではあるものの、それぞれの超音波ビームのフォーカス点は所定の同じ位置であるため、生成される超音波画像は、シングルフォーカスの超音波診断装置である場合と同様の超音波画像であると考えることができる。このため、実施形態の超音波診断装置がビーム合成の超音波診断装置である場合も、後述する構成によって、例えば、多段フォーカスの技術が採用された超音波診断装置と同様、あるいはそれ以上に、方位分解能や感度を向上させた超音波画像を生成することができる。
【0014】
実施形態の超音波診断装置は、例えば、多段フォーカスの技術とビーム合成の技術とが採用された超音波診断装置であってもよい。実施形態の超音波診断装置が多段フォーカスおよびビーム合成の超音波診断装置である場合でも、上述した多段フォーカスの技術が採用された超音波診断装置と同様に、後述する構成によらずに、方位分解能や感度を向上させた超音波画像を生成することができるが、シングルフォーカスの超音波診断装置と同様の動作をするものとする。
【0015】
図1は、実施形態に係る超音波診断装置の機能構成および使用環境の一例を示す図である。図1には、超音波画像の生成に関連する機能を実現するための超音波診断装置1の機能構成およびその使用環境の一例を示している。
【0016】
一方、図1では、超音波診断装置1において超音波画像の生成に関連しない機能を実現するその他の構成要素や機能構成の図示は省略している。例えば、図1では、超音波プローブ102に超音波信号を送信(発信)させるための制御信号を出力し、超音波プローブ102により出力された反射波信号を受け取る入出力回路や、超音波診断装置1や本体装置100の全体を制御する制御回路(制御機能)の図示を省略している。これら省略している構成要素や機能構成の構成や動作は、既存の超音波診断装置が備える構成要素や機能構成の構成や動作と等価なものであればよい。従って、省略している構成要素や機能構成の構成や動作に関する詳細な説明は省略する。
【0017】
超音波診断装置1は、例えば、本体装置100と、超音波プローブ102と、入力装置104と、表示装置106と、を備える。図1では、入力装置104と表示装置106とが本体装置100に接続されている構成を示しているが、入力装置104および表示装置106は、本体装置100に組み込まれた構成であってもよい。
【0018】
超音波プローブ102は、被検体の体表面に当接または近接させた状態で使用される。超音波プローブ102は、本体装置100からの制御に応じて、フォーカス点の位置が所定の位置になっているそれぞれの超音波ビームを被検体の体内に送信(発信)し、被検体の体内で反射された反射波信号を検出して本体装置100に出力する。超音波プローブ102は、複数の超音波振動子を備える。超音波振動子は、例えば、圧電セラミックスなどの圧電素子である。超音波プローブ102は、さらに、超音波振動子のそれぞれに設けられる整合層、および超音波振動子の後方(被検体と反対側)への超音波信号の伝播を防止するバッキング材などを備える。複数の超音波振動子は、一列、あるいは二次元配列など、任意の配列方法で超音波プローブ102内に配列される。超音波プローブ102は、本体装置100に対して着脱可能であってよい。超音波プローブ102と本体装置100とは、専用のケーブルによって接続されてもよいし、無線通信機能によって接続されてもよい。
【0019】
超音波プローブ102が被検体の体内に送信(発信)する超音波ビーム(超音波プローブ102が検出する反射波信号を含んでもよい)は、「第1超音波信号」の一例である。
【0020】
入力装置104は、例えば、マウスやキーボード、タッチパネル、マイクなどにより実現される。入力装置104がタッチパネルである場合、入力装置104は、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは本体装置100に接続された表示装置106などの表示装置と一体として形成されてよい。入力装置104は、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは本体装置100と無線通信可能な表示装置(例えば、タブレット端末)により実現されてもよい。本明細書において入力装置104は、上述したマウスやキーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは本体装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは本体装置100へ出力する電気信号の処理回路も入力装置104の例に含まれる。
【0021】
表示装置106は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどである。表示装置106は、検査者に提示する超音波画像を含めた各種の情報を表示する。これにより、検査者は、表示装置106に表示された超音波画像を見ることによって、被検体の体内の組織の状態を目視で確認することができる。表示装置106が表示する各種の情報には、検査者による超音波診断装置1、つまり、入力装置104に対する各種の入力操作(例えば、超音波画像の取得開始の指示)を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)の情報(GUI画像)なども含まれる。
【0022】
本体装置100は、超音波プローブ102に超音波信号(超音波ビーム)を送信(発信)させ、超音波プローブ102が検出して出力した反射波信号に基づいて、超音波画像を生成する。本体装置100は、生成した超音波画像を表示装置106に出力して表示させることにより、検査者に提示する。
【0023】
[本体装置の構成]
本体装置100は、例えば、処理回路110を備える。処理回路110は、画像取得機能120や、画像処理機能140、表示制御機能160などの処理を実行する。画像処理機能140は、画像生成機能142や、画像推定機能144などの処理を実行する。処理回路110は、例えば、ハードウェアプロセッサが不図示のメモリに記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより、これらの機能を実現するものである。不図示のメモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、光ディスクなどにより実現される。
【0024】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。不図示のメモリにプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つの専用のLSIに組み込んで各機能を実現するようにしてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROMやRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブなどの記憶装置を構成する記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が本体装置100に備えるドライブ装置に装着されることで、本体装置100に備える記憶装置(不図示)にインストールされてもよい。プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワーク(不図示)を介して予めダウンロードされて、本体装置100に備える記憶装置(不図示)にインストールされてもよい。本体装置100に備える記憶装置(不図示)にインストールされたプログラム(ソフトウェア)は、処理回路110が備える記憶装置(不図示)に転送されて実行されてもよい。
【0025】
画像取得機能120は、超音波プローブ102により出力された反射波信号を取得する。画像取得機能120は、取得した反射波信号を、画像処理機能140に出力する。画像取得機能120は、反射波信号を取得するために超音波プローブ102により被検体の体内に送信(発信)された超音波ビームにおけるフォーカス点の位置を表す情報を、取得した反射波信号とともに画像処理機能140に出力してもよい。フォーカス点の位置を表す情報は、例えば、超音波プローブ102に超音波信号を送信(発信)させるための制御信号を出力する不図示の入出力回路や、超音波診断装置1や本体装置100の全体を制御する不図示の制御回路(制御機能)から取得することができる。
【0026】
画像処理機能140は、画像取得機能120により出力された反射波信号(超音波プローブ102により出力された反射波信号)に基づく超音波画像を生成する。画像処理機能140は、生成した超音波画像を、表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる。
【0027】
画像生成機能142は、画像取得機能120により出力された反射波信号に基づく超音波画像を生成する。つまり、画像生成機能142は、フォーカス点の位置が所定の位置になっている単一の(一本の)超音波ビームに基づく超音波画像(以下、「単フォーカス超音波画像」という)を生成する。画像取得機能120により超音波ビームのフォーカス点の情報が反射波信号とともに出力された場合、画像生成機能142は、超音波ビームのフォーカス点の情報を含む単フォーカス超音波画像を生成する。上述したように、フォーカス点の位置を表す情報は、例えば、不図示の入出力回路や制御回路(制御機能)から取得することができる。このため、画像処理機能140あるいは画像生成機能142は、画像取得機能120に代えて、または加えて、画像取得機能120により出力された反射波信号に対応する超音波ビームのフォーカス点の位置を表す情報を、不図示の入出力回路や制御回路(制御機能)から取得してもよい。画像生成機能142は、生成した単フォーカス超音波画像を画像推定機能144に出力する。画像生成機能142は、生成した単フォーカス超音波画像を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させてもよい。この場合、超音波診断装置1では、被検体の体内に送信した超音波ビームによって得られた(撮影された)超音波画像が、検査者に提示される。
【0028】
画像生成機能142は、「画像生成部」の一例である。画像生成機能142が生成する単フォーカス超音波画像は、「第1超音波画像」の一例である。
【0029】
画像推定機能144は、画像生成機能142により出力された単フォーカス超音波画像に基づいて、超音波ビームのフォーカス点の位置が被検体の体内の複数の位置となっている超音波画像を推定する。そして、画像推定機能144は、推定した超音波画像に基づいて、多段フォーカスの超音波診断装置によって生成される超音波画像と等価な超音波画像を生成する。より具体的には、画像推定機能144は、超音波プローブ102からフォーカス点の位置を変えた超音波ビームを複数回送信(発信)することによって生成された複数の単フォーカス超音波画像を合成することによって得られる、方位分解能や感度を向上させた超音波画像と等価な超音波画像(以下、「推定多段フォーカス超音波画像」という)を生成する。
【0030】
画像推定機能144における推定多段フォーカス超音波画像の推定および生成(以下、単に「生成」という)は、予め学習された学習済みモデル(以下、「多段フォーカス学習済みモデル」という)を用いて行われる。画像推定機能144が用いる多段フォーカス学習済みモデルは、例えば、既存の機械学習のアルゴリズムによって、所定のフォーカス点の位置の超音波画像を入力すると、フォーカス点の位置が異なる複数の超音波画像を合成した超音波画像を出力するように予め学習された学習済みモデルである。多段フォーカス学習済みモデルは、例えば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による機能を用いて学習することで生成される。
【0031】
ここで、画像推定機能144が推定多段フォーカス超音波画像を生成するために用いる多段フォーカス学習済みモデルの一例について説明する。図2は、実施形態に係る超音波診断装置1(より具体的には、画像推定機能144)が用いる多段フォーカス学習済みモデルの生成方法の一例を模式的に示す図である。図2には、被検体の体内における深さが浅い位置(被検体の体表面に近い位置)から深い位置(体表面から遠い位置)に向かって、フォーカス点の位置を四箇所に順次変えて超音波ビームを送信する四段フォーカスの超音波診断装置によって生成されたそれぞれの超音波画像を用いて、多段フォーカス機械学習モデルを生成する場合の一例を示している。
【0032】
多段フォーカス学習済みモデルTMは、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)やDNN(Deep Neural Network)などの技術を用いて学習されたモデルである。より具体的には、多段フォーカス学習済みモデルTMは、超音波ビームのフォーカス点の位置がいずれかの位置になっている単フォーカス超音波画像が入力されると、入力された単フォーカス超音波画像に基づいて、多段フォーカスの超音波診断装置によって生成される超音波画像と等価であると推定される推定多段フォーカス超音波画像を出力するように学習されたモデルである。CNNは、畳み込み(Convolution)層やプーリング(Pooling)層などのいくつかの層が繋がれたニューラルネットワークである。DNNは、任意の形態の層が多層に連結されたニューラルネットワークである。多段フォーカス学習済みモデルTMは、例えば、不図示の演算装置などよる多段フォーカス機械学習モデルLMを用いた機械学習によって生成される。
【0033】
不図示の演算装置は、例えば、パーソナルコンピュータや、サーバ装置などのコンピュータ装置である。不図示の演算装置は、超音波診断装置1が備える機能によって実現されてもよい。不図示の演算装置には、機械学習によって多段フォーカス学習済みモデルTMを生成する際に、多段フォーカス機械学習モデルLMの入力側に、単フォーカス超音波画像DIが入力データとして入力され、多段フォーカス機械学習モデルLMの出力側に、多段フォーカスの超音波診断装置によって複数の超音波画像を合成して生成された超音波画像(以下、「多段フォーカス超音波画像」という)DOが教師データとして入力される。多段フォーカス機械学習モデルLMは、例えば、CNNやDNNなどの形態を有し、暫定的にパラメータが設定されたモデルである。
【0034】
単フォーカス超音波画像DIは、例えば、多段フォーカスの超音波診断装置によって撮影された、いずれか一つの超音波画像である。単フォーカス超音波画像DIにおける超音波ビームのフォーカス点の位置は、被検体の体内における深さ方向のいずれの位置であってもよい。多段フォーカス超音波画像DOは、例えば、多段フォーカスの超音波診断装置が撮影したフォーカス点が異なる複数の単フォーカス超音波画像DIを合成することによって、被検体の体内における深さ方向に対する分解能の不均質性が改善させた、つまり、方位分解能や感度が向上された超音波画像である。
【0035】
多段フォーカスの超音波診断装置が単フォーカス超音波画像DIを撮影するために送信(発信)する超音波ビーム(多段フォーカスの超音波診断装置が単フォーカス超音波画像DIを撮影するために検出する反射波信号を含んでもよい)は、「第2超音波信号」の一例である。多段フォーカスの超音波診断装置が多段フォーカス超音波画像DOを得るために送信(発信)するそれぞれの超音波ビームにおけるフォーカス点の位置は、「異なる送信条件」の一例である。単フォーカス超音波画像DIは、「第2超音波画像」の一例である。多段フォーカス超音波画像DOは、「第3超音波画像」の一例である。
【0036】
ここで、単フォーカス超音波画像DIや多段フォーカス超音波画像DOは、過去の超音波検査において撮影された超音波画像(今回の被検体や、他の被検体を過去に撮影した超音波画像)である。これらの超音波画像は、超音波診断装置1が撮影したものに限定されない。つまり、多段フォーカス機械学習モデルLMに入力される超音波画像は、他の超音波診断装置(多段フォーカスの技術が採用された超音波診断装置に限らず、ビーム合成の技術が採用された超音波診断装置であってもよい)が撮影したものであってもよい。
【0037】
図2には、四段フォーカスの超音波診断装置により撮影された、フォーカス点がいずれかの位置にある一つ(一段分)の超音波画像を、単フォーカス超音波画像DIとして多段フォーカス機械学習モデルLMに入力している様子を示している。さらに、図2には、四段フォーカスの超音波診断装置がフォーカス点の異なる四つ(四段分)の超音波画像を合成することによって生成された超音波画像を、多段フォーカス超音波画像DOとして多段フォーカス機械学習モデルLMに入力している様子を示している。
【0038】
ここで、図2の(a)に示した単フォーカス超音波画像DI-1は、被検体の体表面に近い位置(被検体の体内における深さが最も浅い位置)にフォーカス点F-1が存在する超音波ビームB-1を送信して撮影した超音波画像である。図2の(b)に示した単フォーカス超音波画像DI-2は、フォーカス点F-1よりも深い位置にフォーカス点F-2が存在する超音波ビームB-2を送信して撮影した超音波画像である。図2の(c)に示した単フォーカス超音波画像DI-3は、フォーカス点F-2よりもさらに深い位置にフォーカス点F-3が存在する超音波ビームB-3を送信して撮影した超音波画像である。図2の(d)に示した単フォーカス超音波画像DI-4は、フォーカス点F-3よりもさらに深い位置(体表面から最も遠い位置)にフォーカス点F-4が存在する超音波ビームB-4を送信して撮影した超音波画像である。図2の(e)に示した多段フォーカス超音波画像DOは、単フォーカス超音波画像DI-1~単フォーカス超音波画像DI-4のそれぞれを合成して生成した超音波画像である。
【0039】
多段フォーカス機械学習モデルLMには、単フォーカス超音波画像DI-1~単フォーカス超音波画像DI-4のいずれか一つの単フォーカス超音波画像DIが入力側に入力され、多段フォーカス超音波画像DOが出力側に入力される。より具体的には、多段フォーカス機械学習モデルLMには、例えば、入力側に単フォーカス超音波画像DI-1、出力側に多段フォーカス超音波画像DOがそれぞれ入力される。多段フォーカス機械学習モデルLMには、例えば、入力側に単フォーカス超音波画像DI-2、出力側に多段フォーカス超音波画像DOがそれぞれ入力される。多段フォーカス機械学習モデルLMには、例えば、入力側に単フォーカス超音波画像DI-3、出力側に多段フォーカス超音波画像DOがそれぞれ入力される。多段フォーカス機械学習モデルLMには、例えば、入力側に単フォーカス超音波画像DI-4、出力側に多段フォーカス超音波画像DOがそれぞれ入力される。多段フォーカス機械学習モデルLMの入力側に入力される単フォーカス超音波画像DIは、多段フォーカス超音波画像DOよりも少ない数の単フォーカス超音波画像DI(例えば、二つ(二段分)、あるいは三つ(三段分)の単フォーカス超音波画像DI)を合成して生成した超音波画像であってもよい。例えば、多段フォーカス機械学習モデルLMの入力側に、単フォーカス超音波画像DI-1と単フォーカス超音波画像DI-2とを合成することによって生成された超音波画像が入力され、出力側に多段フォーカス超音波画像DOがそれぞれ入力されてもよい。
【0040】
不図示の演算装置は、単フォーカス超音波画像DIが多段フォーカス機械学習モデルLMに入力された際の多段フォーカス機械学習モデルLMの出力が、多段フォーカス超音波画像DOに近づくように、多段フォーカス機械学習モデルLMのパラメータを調整する。パラメータを調整する方法としては、例えば、バックプロパゲーション法(誤差逆伝播法)などの手法がある。不図示の演算装置によってパラメータが調整された多段フォーカス機械学習モデルLMが、多段フォーカス学習済みモデルTMとなる。
【0041】
不図示の演算装置は、多段フォーカス機械学習モデルLMに入力された単フォーカス超音波画像DIに含まれるフォーカス点の位置を表す情報も利用して、つまり、何段目の単フォーカス超音波画像DIであるかも利用して、多段フォーカス機械学習モデルLMのパラメータを調整してもよい。この場合、不図示の演算装置は、単フォーカス超音波画像DIに含まれるフォーカス点の位置を表す情報ごとに、多段フォーカス機械学習モデルLMのパラメータの調整値を変えてもよい。
【0042】
多段フォーカス学習済みモデルTMは、「学習済みモデル」の一例である。超音波ビームB-1~超音波ビームB-4は、「第2超音波信号」の一例である。フォーカス点F-1~フォーカス点F-4の位置は、「異なる送信条件」の一例である。単フォーカス超音波画像DI-1~単フォーカス超音波画像DI-4は、「第2超音波画像」の一例である。多段フォーカス超音波画像DOは、「第3超音波画像」の一例である。例えば、単フォーカス超音波画像DI-1と単フォーカス超音波画像DI-2とを合成することによって生成された超音波画像は、「第5超音波画像」の一例である。
【0043】
図1に戻り、画像推定機能144は、多段フォーカス学習済みモデルTMに画像生成機能142により出力された単フォーカス超音波画像を入力することによって、推定多段フォーカス超音波画像を生成する。このため、画像生成機能142が生成する単フォーカス超音波画像におけるフォーカス点の所定の位置は、多段フォーカス学習済みモデルTMを生成する際に多段フォーカス機械学習モデルLMの出力側に入力される、多段フォーカス超音波画像DOの合成に用いられたそれぞれの超音波画像におけるフォーカス点の位置の範囲内であることが好適である。つまり、単フォーカス超音波画像におけるフォーカス点の所定の位置は、多段フォーカス超音波画像DOの合成に用いられたそれぞれの超音波画像において、フォーカス点の位置が被検体の体表面に近い上限の位置(被検体の体内における深さが最も浅い位置)から、体表面から最も遠い下限の位置(被検体の体内における深さが最も深い位置)までの範囲内であることが好適である。より具体的には、図2に示した一例では、図2の(a)に示した単フォーカス超音波画像DI-1におけるフォーカス点F-1から、図2の(d)に示した単フォーカス超音波画像DI-4におけるフォーカス点F-4までの範囲内であることが好適である。このため、例えば、不図示の入出力回路や制御回路(制御機能)は、多段フォーカス超音波画像DOの合成に用いられたそれぞれの超音波画像におけるフォーカス点の位置の範囲内の位置がフォーカス点の所定の位置となっている超音波ビームを、超音波プローブ102に送信(発信)させるように制御することが好適である。
【0044】
ここで、画像処理機能140(より具体的には、画像推定機能144)が生成する推定多段フォーカス超音波画像の一例について説明する。図3は、実施形態に係る超音波診断装置1(より具体的には、画像推定機能144)において生成する超音波画像(推定多段フォーカス超音波画像)の一例を示す図である。図3には、被検体の体内における深さが浅い位置(被検体の体表面に近い位置)から深い位置(体表面から遠い位置)に向かって、フォーカス点の位置を八箇所に順次変えて超音波ビームを送信する八段フォーカスの超音波診断装置によって生成されたそれぞれの超音波画像を用いて生成された多段フォーカス学習済みモデルTMを用いて推定多段フォーカス超音波画像を生成する場合の一例を示している。
【0045】
図3の(a)には、画像推定機能144において多段フォーカス学習済みモデルTMに入力される、画像生成機能142により出力された超音波画像(ここでは、「単フォーカス超音波画像DI」という)の一例を示している。図3の(a)に示した単フォーカス超音波画像DIは、フォーカス点の位置が、被検体の体表面から二番目に深い位置である超音波画像の一例である。図3の(a)に示した単フォーカス超音波画像DIにおいて右側に示した三角印は、フォーカス点の位置の一例を示している。図3の(b)には、多段フォーカス学習済みモデルTMにおいて目標(ターゲット)とする、単フォーカス超音波画像DIに対応する超音波画像(ここでは、「多段フォーカス超音波画像DO」という)の一例を示している。図3の(b)に示した多段フォーカス超音波画像DOは、八段フォーカスの超音波診断装置がフォーカス点の異なる八つ(八段分)の超音波画像を合成することによって生成される超音波画像の一例である。図3の(b)に示した多段フォーカス超音波画像DOにおいて右側に示した八つの三角印のそれぞれは、合成した八つ(八段分)の超音波画像のそれぞれにおけるフォーカス点の位置の一例を示している。図3の(c)には、多段フォーカス学習済みモデルTMが出力した推定多段フォーカス超音波画像(以下、「推定多段フォーカス超音波画像DE」という)の一例を示している。
【0046】
図3の(c)に示したように、画像推定機能144が生成した推定多段フォーカス超音波画像DEは、多段フォーカス学習済みモデルTMに入力された単フォーカス超音波画像DIよりも、被検体の体内における深さが深い位置においてより明るい超音波画像となっている。言い換えれば、推定多段フォーカス超音波画像DEでは、被検体の体内における深さが浅い位置から深い位置まで、画像信号が均質になっている。つまり、推定多段フォーカス超音波画像DEでは、被検体の体内における深さ方向に対する分解能(方位分解能)や感度が向上されている。
【0047】
このようにして画像推定機能144は、画像生成機能142により出力された単フォーカス超音波画像に対応する推定多段フォーカス超音波画像を生成する。画像推定機能144は、生成した推定多段フォーカス超音波画像を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる。これにより、超音波診断装置1では、被検体の体内に送信した超音波ビームによって得られた(撮影された)単フォーカス超音波画像に基づいて生成された、多段フォーカスの超音波診断装置によって生成される超音波画像と等価な超音波画像が、検査者に提示される。
【0048】
画像推定機能144は、「画像推定部」の一例である。画像推定機能144が推定(生成)する推定多段フォーカス超音波画像は、「第4超音波画像」の一例である。
【0049】
ところで、図3の(c)に示した推定多段フォーカス超音波画像DEでは、フォーカス点が最も遠い位置(被検体の体内における深さが最も深い位置(以下、「最深部」という))の画像信号が、その他のフォーカス点の位置の画像信号よりも低く(画像が暗く)なっている。これは、多段フォーカス学習済みモデルTMに入力した単フォーカス超音波画像DIが、被検体の体表面から二番目に深いフォーカス点の位置の超音波画像であるため、単フォーカス超音波画像DIを生成するための反射波信号の信号強度が最深部において低下し、例えば、画像信号が欠落してしまっていることに起因するものであると考えられる。言い換えれば、最深部における反射波信号のS/N比(Signal-to-Noise ratio)が低い(例えば、S/N比=0に近くなっている)ことに起因するものであると考えられる。このため、画像推定機能144に入力される単フォーカス超音波画像DI、つまり、画像生成機能142が単フォーカス超音波画像を生成するための反射波信号は、単フォーカス超音波画像DIの生成に必要な強さ以上の信号強度が最深部まで得られている(例えば、S/N比=0に近くなっていない)ことが好適であると考えられる。従って、超音波診断装置1においては、単フォーカス超音波画像を生成するために超音波プローブ102により被検体の体内に送信(発信)させる超音波ビームは、被検体の体内における深さが深い位置(例えば、最も深い位置)にフォーカス点の位置がある、つまり、超音波ビームを送信(発信)するために駆動する超音波振動子の数が多いものが好適である。これは、駆動する超音波振動子の数に応じて、送信(発信)する超音波ビームの強度が強くなるため、被検体の体内で反射されて戻ってくる反射波信号の信号強度も強くなる(S/N比が高くなる)からである。ただし、この場合でも、超音波ビームにおけるフォーカス点の所定の位置は、多段フォーカス機械学習モデルLMの出力側に入力される多段フォーカス超音波画像DOの合成に用いられたそれぞれの超音波画像におけるフォーカス点の位置の範囲内であることが好適である。
【0050】
この場合、フォーカス点の位置が被検体の体表面に向かって深さが浅くなるにつれて、単フォーカス超音波画像DIの方位分解能が低下することが懸念される。例えば、フォーカス点の位置から最も遠い位置となる、被検体の体内における深さが最も浅い位置において、単フォーカス超音波画像DIの方位分解能が最も低くなってしまうことが懸念される。しかしながら、超音波診断装置1では、画像推定機能144が多段フォーカス学習済みモデルTMを用いて推定多段フォーカス超音波画像DEを生成するため、推定多段フォーカス超音波画像DEでは、被検体の体内における深さが浅い位置における方位分解能の低下を補完することができる。
【0051】
図1に戻り、表示制御機能160は、表示装置106への表示画像の表示を制御する。より具体的には、表示制御機能160は、画像処理機能140によって生成されて出力された超音波画像(単フォーカス超音波画像や推定多段フォーカス超音波画像)を表示装置106に表示させるための表示画像を生成し、生成した表示画像を、表示装置106に表示させる。このとき、表示制御機能160は、GUI画像などを、超音波画像の表示画像に重畳させて、表示装置106に表示させてもよい。
【0052】
[超音波診断装置の処理]
次に、超音波診断装置1において、被検体の推定多段フォーカス超音波画像を推定(生成)して表示装置106に表示させる動作について説明する。図4は、実施形態に係る超音波診断装置1における処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、超音波診断装置1によって被検体の超音波検査を行っている間、本体装置100においてそれぞれの機能の処理が繰り返し実行される。以下の説明においては、超音波診断装置1(より具体的には、画像推定機能144)が推定多段フォーカス超音波画像を生成する際に用いる多段フォーカス学習済みモデルTMがすでに準備されているものとする。
【0053】
検査者が超音波診断装置1による超音波検査を開始すると、不図示の制御回路(制御機能)は、超音波プローブ102に超音波ビーム(例えば、フォーカス点の位置が上限の位置から下限の位置までの範囲内で被検体の体内における最も深い位置にある超音波ビーム)を送信(発信)させる(ステップS100)。これにより、超音波プローブ102は、被検体の体内で反射された反射波信号を検出して本体装置100に出力する。
【0054】
画像取得機能120は、超音波プローブ102により出力された反射波信号を取得する(ステップS200)。画像取得機能120は、取得した反射波信号を画像処理機能140に出力する。
【0055】
画像処理機能140が備える画像生成機能142は、画像取得機能120により出力された反射波信号に基づく単フォーカス超音波画像DIを生成する(ステップS210)。画像生成機能142は、生成した単フォーカス超音波画像DIを画像推定機能144に出力する。
【0056】
画像処理機能140が備える画像推定機能144は、画像生成機能142により出力された単フォーカス超音波画像DIを多段フォーカス学習済みモデルTMに入力することによって対応する多段フォーカス超音波画像DOを推定し、推定した多段フォーカス超音波画像DOと等価な推定多段フォーカス超音波画像DEを生成する(ステップS220)。画像推定機能144は、生成した推定多段フォーカス超音波画像DEを、表示制御機能160に出力する。
【0057】
表示制御機能160は、画像推定機能144によって生成されて出力された推定多段フォーカス超音波画像DEを表示装置106に表示させるための表示画像を生成する。そして、表示制御機能160は、生成した表示画像を表示装置106に出力して表示させる。これにより、検査者に表示画像が提示される(ステップS300)。つまり、推定多段フォーカス超音波画像DEが、検査者に提示される。
【0058】
このような構成および処理によって、超音波診断装置1では、本体装置100が備える処理回路110内の画像処理機能140が、画像取得機能120により出力された反射波信号に基づいて生成した単フォーカス超音波画像に基づく推定多段フォーカス超音波画像を生成する。これにより、検査者は、超音波診断装置1が生成した推定多段フォーカス超音波画像に基づいて、被検体の超音波検査を行うことができる。
【0059】
しかも、超音波診断装置1では、多段フォーカス学習済みモデルTMを用いて、一つの単フォーカス超音波画像から、多段フォーカス超音波画像と等価な推定多段フォーカス超音波画像を生成する。つまり、超音波診断装置1では、多段フォーカスの技術が採用された超音波診断装置のように、一つの多段フォーカス超音波画像を得るために、フォーカス点の位置を変えて超音波ビームを走査した複数の単フォーカス超音波画像の撮影を行わなくてもよい。このため、超音波診断装置1では、それぞれの推定多段フォーカス超音波画像を生成するために要する時間、言い換えれば、それぞれの超音波画像を得るフレームレートを低下させることなく、方位分解能や感度を向上させた推定多段フォーカス超音波画像を生成することができる。つまり、多段フォーカスの技術が採用された超音波診断装置では、方位分解能や感度を向上させるためにフォーカス点の位置を変えて撮影する単フォーカス超音波画像の枚数に応じた分だけ、多段フォーカス超音波画像を得るフレームレートが低下してしまうことになる。これに対して、超音波診断装置1では、一つの単フォーカス超音波画像を得ることによって推定多段フォーカス超音波画像を生成するため、フレームレートの低下を抑えた上で、方位分解能や感度を向上させた推定多段フォーカス超音波画像を生成することができる。
【0060】
上記に述べたとおり、実施形態の超音波診断装置では、超音波プローブにより出力された、所定の位置に超音波ビームのフォーカス点がある超音波画像(単フォーカス超音波画像)に基づいて、超音波ビームのフォーカス点の位置が複数の位置となっていることによって方位分解能や感度を向上させた超音波画像(多段フォーカス超音波画像)と等価な超音波画像(推定多段フォーカス超音波画像)を推定して生成する。そして、実施形態の超音波診断装置は、生成した推定多段フォーカス超音波画像を表示装置106に表示して、実施形態の超音波診断装置を利用して超音波検査を行う検査者に提示する。これにより、実施形態の超音波診断装置を利用して超音波検査を行う検査者は、表示装置106に表示された推定多段フォーカス超音波画像に基づいて、好適に被検体の超音波検査を行うことができる。
【0061】
しかも、実施形態の超音波診断装置では、多段フォーカス学習済みモデルを用いて、一つの単フォーカス超音波画像から、多段フォーカス超音波画像と等価な推定多段フォーカス超音波画像を生成するため、フレームレートを低下させることなく、方位分解能や感度を向上させた推定多段フォーカス超音波画像を生成することができる。これにより、実施形態の超音波診断装置を利用して超音波検査を行う検査者は、被検体に対する超音波検査を、より円滑に行うことができる。
【0062】
上述した実施形態では、超音波診断装置1が、シングルフォーカスの技術が採用された超音波診断装置である場合を例に挙げて説明したが、上述したように、実施形態の超音波診断装置は、多段フォーカスの技術が採用された超音波診断装置であってもよいし、ビーム合成の技術が採用された超音波診断装置であってもよいし、多段フォーカスの技術とビーム合成の技術とが採用された超音波診断装置であってもよい。これらの場合における超音波診断装置の構成、動作、処理は、上述した実施形態の超音波診断装置1や本体装置100(処理回路110)のそれぞれの構成要素の構成や、動作、処理と等価なものになるようにすればよい。従って、これらの場合の超音波診断装置の構成や、動作、処理に関する詳細な説明は省略する。
【0063】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
処理回路(processing circuitry)を備え、
前記処理回路は、
被検体に向けて送信した単一の第1超音波信号に基づく第1超音波画像を生成し、
少なくとも単一の第2超音波信号に基づく第2超音波画像を入力すると、異なる送信条件で送信した複数の前記第2超音波信号に基づく複数の前記第2超音波画像を合成した第3超音波画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、前記第1超音波画像から推定される前記被検体の前記第3超音波画像と等価な第4超音波画像を生成する、
超音波診断装置。
【0064】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、被検体に向けて送信した単一の第1超音波信号(超音波ビーム)に基づく第1超音波画像(単フォーカス超音波画像)を生成する画像生成部(142)と、少なくとも単一の第2超音波信号(超音波ビーム)に基づく第2超音波画像(DI)を入力すると、異なる送信条件(フォーカス点の被検体の体内における深さ方向の位置)で送信した複数の前記第2超音波信号に基づく複数の前記第2超音波画像を合成した第3超音波画像(DO)を出力するように学習された学習済みモデル(TM)を用いて、前記第1超音波画像から推定される前記被検体の前記第3超音波画像と等価な第4超音波画像(DE)を生成する画像推定部(144)と、を備えることにより、超音波診断装置(1)において、フレームレートの低下を抑えつつ、被検体の体内における深さ方向の方位分解能や感度を均質にした超音波画像(DE)を取得することができる。
【0065】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0066】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
被検体に向けて送信した単一の第1超音波信号に基づく第1超音波画像を生成する画像生成部と、
少なくとも単一の第2超音波信号に基づく第2超音波画像を入力すると、異なる送信条件で送信した複数の前記第2超音波信号に基づく複数の前記第2超音波画像を合成した第3超音波画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、前記第1超音波画像から推定される前記被検体の前記第3超音波画像と等価な第4超音波画像を生成する画像推定部と、
を備える超音波診断装置。
【0067】
(付記2)
前記画像推定部は、前記学習済みモデルに対して前記第1超音波画像を入力することで、前記第4超音波画像を生成してもよい。
【0068】
(付記3)
前記送信条件は、送信する前記第2超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置であってもよい。
【0069】
(付記4)
前記学習済みモデルを生成する際に入力する前記第2超音波画像は、前記第3超音波画像よりも少ない数の複数の前記第2超音波画像を合成した第5超音波画像を含んでもよい。
【0070】
(付記5)
前記第1超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置は、前記第2超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置の上限の位置から下限の位置までの範囲内の位置であってもよい。
【0071】
(付記6)
前記第1超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置は、前記第2超音波信号の軸の方向に存在する焦点の位置の上限の位置から下限の位置までの範囲内で、前記被検体の体内における深さが最も深い最深部の位置であってもよい。
【0072】
(付記7)
超音波診断装置のコンピュータに、
被検体に向けて送信した単一の第1超音波信号に基づく第1超音波画像を生成させ、
少なくとも単一の第2超音波信号に基づく第2超音波画像を入力すると、異なる送信条件で送信した複数の前記第2超音波信号に基づく複数の前記第2超音波画像を合成した第3超音波画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、前記第1超音波画像から推定される前記被検体の前記第3超音波画像と等価な第4超音波画像を生成させる、
プログラム。
【符号の説明】
【0073】
1・・・超音波診断装置、100・・・本体装置、102・・・超音波プローブ、104・・・入力装置、106・・・表示装置、110・・・処理回路、120・・・画像取得機能、140・・・画像処理機能、142・・・画像生成機能、144・・・画像推定機能、160・・・表示制御機能
図1
図2
図3
図4