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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151468
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064818
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】小林 大謹
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA05
3L045CA09
3L045DA02
3L045EA01
3L045KA00
3L045NA15
3L045NA16
3L045NA21
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】より適切な解凍制御を行うことができる冷蔵庫を提供することである。
【解決手段】実施形態の冷蔵庫は、筐体と、加熱装置と、温度検出器と、制御部とを備える。前記筐体は、貯蔵物を収容可能な貯蔵室を含む。前記加熱装置は、前記貯蔵室に設けられ、前記貯蔵物を解凍可能である。前記温度検出器は、前記貯蔵物または前記貯蔵室に関連する温度を検出可能である。前記制御部は、前記貯蔵物に関する解凍処理において、前記加熱装置の動作を開始させた後、前記貯蔵物の解凍が完了する前に前記加熱装置の動作を少なくとも1度は抑制し、目標解凍温度と、前記加熱装置の動作が抑制された状態で前記温度検出器により検出された温度とに基づき、その後の前記加熱装置の動作継続目標時間を決定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵物を収容可能な貯蔵室を含む筐体と、
前記貯蔵室に設けられ、前記貯蔵物を解凍可能な加熱装置と、
前記貯蔵物または前記貯蔵室に関連する温度を検出可能な温度検出器と、
前記貯蔵物に関する解凍処理において、前記加熱装置の動作を開始させた後、前記貯蔵物の解凍が完了する前に前記加熱装置の動作を少なくとも1度は抑制し、目標解凍温度と、前記加熱装置の動作が抑制された状態で前記温度検出器により検出された温度とに基づき、その後の前記加熱装置の動作継続目標時間を決定する制御部と、
を備えた冷蔵庫。
【請求項2】
前記加熱装置は、電磁波を照射することで前記貯蔵物を解凍可能であり、
前記温度検出器は、前記貯蔵物または前記貯蔵室から放射されて検出される電磁波に基づいて前記温度を検出可能であり、
前記加熱装置から照射される前記電磁波の周波数帯と、前記温度検出器により検出されて温度検出に用いられる前記電磁波の周波数帯とは、少なくとも一部が重複する、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、前記動作継続目標時間に基づき前記加熱装置を再度動作させた後、前記貯蔵物の解凍が完了する前に前記加熱装置の動作を再度抑制し、前記加熱装置の動作が前回抑制された状態で前記温度検出器により検出された温度と、前記加熱装置の動作が今回抑制された状態で前記温度検出器により検出された温度とに基づき、前記加熱装置の動作を次回抑制するまでの動作継続目標時間を決定する、
請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御部は、前記加熱装置の動作中に前記貯蔵室の扉開が検出された場合、前記動作継続目標時間に代えて、予め設定された固定時間に基づき前記加熱装置を制御する、
請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記制御部は、前記固定時間に亘り前記加熱装置を動作させた後、前記加熱装置の動作を再度抑制し、前記目標解凍温度と、前記加熱装置の動作が今回抑制された状態で前記温度検出器により検出された温度とに基づき、前記動作継続目標時間を決定し直す、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記制御部は、前記目標解凍温度と、前記加熱装置の動作が抑制された状態で前記温度検出器により検出された温度とに基づき導出される解凍予測時間と比べて、前記動作継続目標時間が短くなる補正処理を行って前記動作継続目標時間を決定する、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記補正処理は、前記解凍予測時間に基づいて前記動作継続目標時間を導出するために、前記解凍予測時間に対して減算または乗算を行うことである、
請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記制御部は、
前記解凍処理の途中である第1時期に、前記補正処理として第1補正処理を行って前記動作継続目標時間を決定し、
前記解凍処理の途中で前記第1時期よりも遅い第2時期であって、前記第1時期に決定された前記動作継続目標時間に基づき前記加熱装置を動作させた後で前記加熱装置の動作を再度抑制する第2時期に、前記補正処理として、前記第1補正処理と比べて補正割合が大きい第2補正処理を行って前記動作継続目標時間を決定する、
請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記制御部は、前記補正処理を行って導出される前記動作継続目標時間が所定以下となる場合、前記補正処理を抑制して前記動作継続目標時間を決定する、
請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記制御部は、導出された前記動作継続目標時間が所定以下となる場合、前記動作継続目標時間に代えて、予め設定された固定時間に基づき前記加熱装置を制御する、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記制御部は、前記目標解凍温度と、前記加熱装置の動作が抑制された状態で前記温度検出器により検出された前記温度との差が所定以下である場合、前記動作継続目標時間に代えて、予め設定された固定時間に基づき前記加熱装置を制御する、
請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項12】
前記制御部は、前記動作継続目標時間の決定に用いられる前記温度検出器により検出された温度として、前記加熱装置の動作が抑制されてから所定時間経過後の温度を用いる、
請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項13】
前記制御部は、前記解凍処理が完了した後において、前記温度検出器により検出される温度が前記目標解凍温度と比べて所定以下に低下するまでは前記加熱装置の動作を抑制し、前記温度検出器により検出される温度が前記目標解凍温度と比べて前記所定以下に低下した場合に前記加熱装置の動作を再度開始する、
請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
解凍機能を有した冷蔵庫が知られている。ところで冷蔵庫は、より適切な解凍制御を行うことが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-3022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より適切な解凍制御を行うことができる冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の冷蔵庫は、筐体と、加熱装置と、温度検出器と、制御部とを備える。前記筐体は、貯蔵物を収容可能な貯蔵室を含む。前記加熱装置は、前記貯蔵室に設けられ、前記貯蔵物を解凍可能である。前記温度検出器は、前記貯蔵物または前記貯蔵室に関連する温度を検出可能である。前記制御部は、前記貯蔵物に関する解凍処理において、前記加熱装置の動作を開始させた後、前記貯蔵物の解凍が完了する前に前記加熱装置の動作を少なくとも1度は抑制し、目標解凍温度と、前記加熱装置の動作が抑制された状態で前記温度検出器により検出された温度とに基づき、その後の前記加熱装置の動作継続目標時間を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の冷蔵庫を示す正面図。
図2図1に示された冷蔵庫のF2-F2線に沿う断面図。
図3図2に示されたF3線に囲まれた領域を拡大して示す断面図。
図4】実施形態の加熱装置を示す図。
図5】実施形態の切替室の内部を示す断面図。
図6】実施形態の制御装置に関連する構成を示すブロック図。
図7】実施形態の加熱装置による解凍処理を説明するための図。
図8】実施形態の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の冷蔵庫を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本出願で「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含み得る。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含み得る。本出願で「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。これは選択的要素が3つ以上の場合も同様である。XXおよびYYは、任意の要素(例えば任意の情報)である。
【0008】
(実施形態)
<1.冷蔵庫の全体構成>
図1から図8を参照し、実施形態の冷蔵庫100について説明する。まず、冷蔵庫100の全体構成について説明する。ただし、冷蔵庫100は、以下に説明する構成の全てを有する必要はなく、いくつかの構成が適宜省略されてもよい。
【0009】
図1は、冷蔵庫100を示す正面図である。冷蔵庫100は、例えば、筐体10と、複数の扉20とを備える。
【0010】
筐体10は、上壁10a、下壁10b、左右の側壁10c,10d、および後壁10e(図2参照)を有する。上壁10aおよび下壁10bは、水平方向に広がる。左右の側壁10c,10dは、下壁10bの左右の端部から上方に起立し、上壁10aの左右の端部に繋がる。後壁10eは、下壁10bの後端部から上方に起立し、上壁10aの後端部に繋がる。筐体10は、発泡ウレタンのような発泡断熱材を含み、断熱性を有する。
【0011】
筐体10の内部には、複数の貯蔵室11が設けられている。複数の貯蔵室11は、例えば、冷蔵室11A、チルド室11Aa、野菜室11B、製氷室11C、切替室11D、および主冷凍室11Eを含む。冷蔵室11Aは、例えば、平均温度が約2℃~6℃である冷蔵室温度帯に冷却される。チルド室11Aaは、例えば、平均温度が約-1℃~+1℃であるチルド温度帯に冷却される。野菜室11Bは、例えば、平均温度が約3℃~7℃である野菜室温度帯に冷却される。製氷室11Cおよび主冷凍室11Eは、例えば、平均温度が約-20℃~-18℃である冷凍室温度帯に冷却される。
【0012】
切替室11Dは、温度帯の設定が変更可能な貯蔵室11である。切替室11Dは、例えば、冷凍室温度帯(平均温度が約-20℃~-18℃)、チルド温度帯(平均温度が約-1℃~+1℃)、冷蔵室温度帯(平均温度が約2℃~6℃)、野菜室温度帯(平均温度が約3℃~7℃)、および夏野菜温度帯(平均温度が約9℃~13℃)の間で温度帯の設定が切り替え可能である。ただし、これら温度帯は、例示である。切替室11Dは、少なくとも2つの温度帯の間で温度設定が切り替え可能であればよい。また、切替室11Dは、上述した以外の温度帯(例えば、平均温度が約-3℃であるパーシャル温度帯)に切り替え可能であってもよい。
【0013】
なお、冷蔵庫100は、切替室11Dに代えて、冷凍室温度帯に維持される上段冷凍室11Dを有し、上段冷凍室11Dに後述する加熱装置80を用いた解凍機能を有してもよい。すなわち以下の説明における「切替室11D」は、「上段冷凍室11D」と適宜読み替えられてもよい。
【0014】
本実施形態では、最上部に冷蔵室11Aが配置され、冷蔵室11Aの下方に野菜室11Bが配置され、野菜室11Bの下方に製氷室11Cおよび切替室11Dが配置され、製氷室11Cおよび切替室11Dの下方に主冷凍室11Eが配置されている。ただし、貯蔵室11の配置は、上記例に限定されない。例えば、冷蔵室11Aの下方に製氷室11Cおよび切替室11Dが配置され、製氷室11Cおよび切替室11Dの下方に野菜室11Bが配置され、野菜室11Bの下方に主冷凍室11Eが配置されてもよい。筐体10は、各貯蔵室11の前面側に、各貯蔵室11に対して食品の出し入れを可能にする開口を有する。
【0015】
筐体10は、筐体10の内部で複数の貯蔵室11を仕切る仕切壁として、第1仕切壁15、第2仕切壁16、および第3仕切壁17を有する(図2参照)。第1仕切壁15、第2仕切壁16、および第3仕切壁17の各々は、略水平方向に沿う仕切壁である。第1仕切壁15は、冷蔵室11Aおよびチルド室11Aaと、野菜室11Bとの間に位置し、冷蔵室11Aおよびチルド室11Aaと、野菜室11Bとの間を仕切る。第2仕切壁16は、野菜室11Bと、製氷室11Cおよび切替室11Dとの間に位置し、野菜室11Bと、製氷室11Cおよび切替室11Dとの間を仕切る。第3仕切壁17は、製氷室11Cおよび切替室11Dと、主冷凍室11Eとの間に位置し、製氷室11Cおよび切替室11Dと、主冷凍室11Eとの間を仕切る。
【0016】
複数の貯蔵室11は、複数の扉20によってそれぞれ開閉可能に閉じられる。複数の扉20は、例えば、左右の冷蔵室扉20Aa,20Ab、野菜室扉20B、製氷室扉20C、切替室扉20D、および主冷凍室扉20Eを含む。冷蔵室扉20Aa,20Abは、冷蔵室11Aの開口の前方に配置され、冷蔵室11Aの開口を閉じる。冷蔵室扉20Aa,20Abは、例えば、フレンチ扉(観音開き扉)である。野菜室扉20Bは、野菜室11Bの前方に配置され、野菜室11Bの開口を閉じる。製氷室扉20Cは、製氷室11Cの前方に配置され、製氷室11Cの開口を閉じる。切替室扉20Dは、切替室11Dの前方に配置され、切替室11Dの開口を閉じる。主冷凍室扉20Eは、主冷凍室11Eの前方に配置され、主冷凍室11Eの開口を閉じる。野菜室扉20B、製氷室扉20C、切替室扉20D、および主冷凍室扉20Eの各々は、例えば、冷蔵庫100の前方に引き出し可能な引き出し扉である。
【0017】
<2.冷蔵庫の内部構成>
図2は、図1に示された冷蔵庫100のF2-F2線に沿う断面図である。冷蔵庫100は、例えば、複数の棚30、複数の容器40、風路形成部品50、冷却部60、冷気供給調整部70、加熱装置80、切替室温度センサ112、および制御装置90を備える。本実施形態では、冷却部60と、冷気供給調整部70とにより「冷気供給部CU」が実現されている。
【0018】
(棚および容器)
複数の棚30は、冷蔵室11Aに配置されている。複数の容器40は、例えば、チルド室11Aaに収容されたチルド室容器41,42、野菜室11Bに収容された野菜室容器43,44、製氷室11Cに収容された製氷室容器(不図示)、切替室11Dに収容された切替室容器46、および主冷凍室11Eに収容された主冷凍室容器47,48を含む。例えば、切替室容器46は、上述した切替室扉20Dに連結されている。切替室容器46は、切替室扉20Dが冷蔵庫100の前方に引き出された場合、切替室扉20Dとともに冷蔵庫100の前方に引き出される。
【0019】
(風路形成部品)
風路形成部品50は、冷蔵用風路部品51と、冷凍用風路部品52とを含む。冷蔵用風路部品51は、筐体10内に設けられ、後壁10eに沿って鉛直方向に延びている。冷蔵用風路部品51は、筐体10の後壁10eの近くに、冷気(空気)が流れる通路である風路G1を形成している。
【0020】
冷蔵用風路部品51は、冷気吹出口51a,51bおよび冷気戻り口51c,51dを有する。冷気吹出口51aは、冷蔵室11Aに開口し、後述する第1冷却器62により冷却された冷気を冷蔵室11Aに供給する。冷気吹出口51bは、チルド室11Aaに開口し、第1冷却器62により冷却された冷気をチルド室11Aaに供給する。冷気戻り口51cは、チルド室11Aaに開口し、チルド室11Aaを通過することで温められた冷気を風路G1に向けて導く。冷気戻り口51dは、野菜室11Bに開口し、冷蔵室11Aおよび野菜室11Bを通過することで温められた冷気を風路G1に導く。
【0021】
冷凍用風路部品52は、筐体10内に設けられ、後壁10eに沿って鉛直方向に延びている。冷凍用風路部品52は、筐体10の後壁10eの近くに、冷気(空気)が流れる通路である風路G2を形成している。冷凍用風路部品52は、冷気吹出口52aおよび冷気戻り口52bを有する。冷気吹出口52aは、後述する第2冷却器64により冷却された冷気を、製氷室11C、切替室11D、および主冷凍室11Eに供給する。冷気戻り口52bは、主冷凍室11Eの下部に開口し、製氷室11C、切替室11D、および主冷凍室11Eのうち1つ以上を通過することで温められた冷気を風路G2に導く。
【0022】
(冷却部)
冷却部60は、例えば、圧縮機61、第1冷却器62、第1送風機63、第2冷却器64、および第2送風機65を含む。第1冷却器62および第1送風機63は、風路G1に配置されている。第1冷却器62は、圧縮機61により圧縮された冷媒が供給され、風路G1を流れる冷気を冷却する。第1送風機63が駆動されると、第1冷却器62により冷却された冷気が冷気吹出口51a,51bから冷蔵室11Aおよびチルド室11Aaに供給される。そして、冷蔵室11A、チルド室11Aa、および野菜室11Bのうち1つ以上で温められた冷気が冷気戻り口51c,51dから風路G1に戻る。
【0023】
第2冷却器64および第2送風機65は、風路G2に配置されている。第2冷却器64は、圧縮機61により圧縮された冷媒が供給され、風路G2を流れる冷気を冷却する。第2送風機65が駆動されると、第2冷却器64により冷却された冷気が冷気吹出口52aから製氷室11Cおよび主冷凍室11Eに供給される。そして、製氷室11Cおよび主冷凍室11Eのうち1つ以上で温められた冷気が冷気戻り口52bから風路G2に戻る。
【0024】
(冷気供給調整部)
冷気供給調整部70は、冷却部60により冷却された冷気について、切替室11Dに供給する供給量を調整する調整部である。冷気供給調整部70は、例えば、仕切壁71と、開閉装置72とを有する。
【0025】
仕切壁71は、切替室11Dの後方に設けられ、上下および左右に広がる壁部である。仕切壁71は、切替室11Dの後壁を形成している。仕切壁71は、冷気吹出口71aおよび冷気戻り口71bを有する。冷気吹出口71aは、切替室11Dに開口している。冷気吹出口71aは、後述する開閉装置72により冷気吹出口71aが開かれた場合、第2冷却器64により冷却された冷気を切替室11Dに供給する。冷気戻り口71bは、例えば、冷気吹出口71aの下方に配置され、切替室11Dに開口している。冷気戻り口71bは、切替室11Dを通過することで温められた冷気を、通路71cを介して風路G2に向けて導く。
【0026】
開閉装置72は、冷気吹出口71aを開閉する。開閉装置72は、例えば、ダンパである。開閉装置72は、冷気吹出口71aを開くことで、第2冷却器64により冷却されて第2送風機65により送り出される冷気を切替室11Dに供給する。この場合、供給される冷気により切替室11D内の空気温度が低下する。一方で、開閉装置72は、冷気吹出口71aを閉じることで、切替室11Dへの冷気の供給を遮断する。この場合、切替室11D内の空気温度の低下が抑制される。後述する制御部91は、例えば、開閉装置72の開閉角度または開閉装置72を開位置に保持する時間長さを制御することで、切替室11Dに供給する冷気の量を調整可能である。本実施形態では、制御部91は、冷却部60、開閉装置72、および後述する加熱装置80を制御することで、切替室11D内の空気温度を設定された温度帯に管理する。
【0027】
(加熱装置および温度センサ)
加熱装置80は、切替室11Dに設けられ、切替室11D内の少なくとも一部の領域を加熱する。加熱装置80は、切替室11Dに収容された貯蔵物J1を解凍可能である。切替室温度センサ112は、切替室11Dに設けられ、貯蔵物J1または切替室11Dに関連する温度を検出可能である。加熱装置80および切替室温度センサ112については、詳しく後述する。
【0028】
(制御装置)
制御装置90は、回路基板と、回路基板に実装された電子部品とを有する。制御装置90は、冷蔵庫100の全体を統括的に制御する。例えば、制御装置90は、冷却部60を制御することで、冷蔵庫100の冷却制御を実行する。また、制御装置90は、加熱装置80を制御することで、解凍処理を実行する。制御装置90による制御については、詳しく後述する。
【0029】
<3.加熱装置に関連する構成>
次に、加熱装置80に関連する構成について説明する。
加熱装置80は、上述したように、切替室11Dに設けられている。加熱装置80は、例えば、切替室11Dの上端部に設けられている。例えば、加熱装置80は、電磁波を照射することで貯蔵物J1を解凍可能な加熱装置である。本実施形態では、加熱装置80は、上記電磁波の一例として、赤外線を利用して貯蔵物J1を解凍可能な加熱装置である。本出願で「赤外線」とは、例えば、0.7μm~1000μmの範囲内の波長を持つ電磁波であり、近赤外線、中赤外線、および遠赤外線のいずれも該当し得る。
【0030】
(切替室の構成)
まず、切替室11Dの構成について説明する。
図3は、図2に示されたF3線に囲まれた領域を拡大して示す断面図である。本実施形態では、切替室11Dは、第2仕切壁16、第3仕切壁17、および冷気供給調整部70の仕切壁71によって規定される。例えば、切替室11Dの天井壁は、第2仕切壁16によって形成される。切替室11Dの底壁は、第3仕切壁17によって形成される。切替室11Dの後壁は、冷気供給調整部70の仕切壁71によって形成される。
【0031】
(加熱装置の構成)
図4は、加熱装置80を示す図である。図4中の(a)は、加熱装置80を下方から見た図である。図4中の(b)は、図4中の(a)に示されたb-b線に沿う断面図である。本実施形態では、加熱装置80は、細長い形状を持つ赤外線ランプである。加熱装置80の一例は、50[W]のハロゲンヒータである。加熱装置80は、例えば、赤外線照射部81、照射方向規制部82、および保護部83を有する。
【0032】
赤外線照射部81は、例えば、細長い円筒状のガラス管を用いたランプである。赤外線照射部81は、電力が供給されることで、赤外線を照射する。赤外線照射部81は、例えば、円筒状のガラス管の径方向の全方位に赤外線を照射する。
【0033】
照射方向規制部82は、例えば、少なくとも一部に円弧状の内面82aを持つ上面カバーである。照射方向規制部82は、赤外線照射部81を収容し、赤外線照射部81の上面、前面、後面、左側面、および右側面に面する。照射方向規制部82の内面82aは、赤外線を反射可能な反射面(鏡面)である。照射方向規制部82は、例えば、赤外線照射部81から上方、前方、および後方に照射された赤外線を反射させ、加熱装置80から照射される赤外線の照射方向を規制する。例えば、照射方向規制部82は、加熱装置80から照射される赤外線の照射範囲R1を45度以下に規制する。例えば、照射方向規制部82は、加熱装置80から照射される赤外線の照射範囲R1を、鉛直方向VDを中心とする30度以下に規制する。
【0034】
保護部83は、冷蔵庫100のユーザUが赤外線照射部81に触れることを抑制する保護カバーである。保護部83は、赤外線照射部81の下方に配置されて、赤外線照射部81から照射された赤外線が通過可能である。本出願で「赤外線が通過可能」とは、照射源から照射された赤外線の少なくとも一部が通過可能であることを意味する。本実施形態では、保護部83は、照射方向規制部82の下端に取り付けられ、照射方向規制部82によって支持される。保護部83は、例えば、赤外線を通過させるとともに、ユーザUの指が通らない程度の大きさの網目構造を有する。
【0035】
(加熱装置の設置構造)
図3に戻り、加熱装置80の設置構造について説明する。
本実施形態では、加熱装置80は、切替室11Dの天井を形成する第2仕切壁16に沿って配置されている。本実施形態では、加熱装置80は、保護部83を下方に向けて第2仕切壁16に設置されている。なお本出願で「壁に設置されている」とは、当該壁に密着して取り付けられた場合に限定されず、当該壁との間に隙間を空けるとともに、保持具を介して当該壁に取り付けられた場合を含み得る。本実施形態では、加熱装置80は、加熱装置80と第2仕切壁16の下面との間に隙間Sを空けた状態で、保持具85によって第2仕切壁16に取り付けられている。
【0036】
図5は、切替室11Dの内部を示す断面図である。本実施形態では、切替室11D(例えば、切替室11Dに収容された切替室容器46の内部)は、加熱対象領域B11と、非加熱対象領域B12とを含む。
【0037】
加熱対象領域B11は、加熱装置80により赤外線が照射される領域である。例えば、本実施形態では、加熱装置80は、赤外線照射部81から直接照射される赤外線に加え、照射方向規制部82で反射された赤外線を、加熱対象領域B11に向けて照射する。加熱対象領域B11は、加熱対象(解凍対象)である貯蔵物J1(図3参照)が置かれる領域である。貯蔵物J1は、例えば食品である。加熱対象領域B11は、例えば、切替室11Dの長手方向の中央Cを外れた位置に配置され、切替室11Dの短手方向に沿って設けられている。
【0038】
一方で、非加熱対象領域B12は、加熱装置80により赤外線が照射されることが抑制された領域である。例えば、本実施形態では、加熱装置80の照射方向規制部82により、非加熱対象領域B12に向けて赤外線が照射されることが抑制される。非加熱対象領域B12は、非加熱対象(非解凍対象)の貯蔵物J2(図3参照)が置かれる領域である。
【0039】
(金属板の設置)
本実施形態では、加熱対象領域B11には、金属板86が設けられている(図3参照)。金属板86は、加熱装置80の下方に配置されている。金属板86は、例えば、切替室容器46の内面(底面)に取り付けられている。金属板86は、例えばアルミニウム製であるが、これに限定されない。本実施形態では、金属板86は、平板状に形成されている。金属板86は、「金属部材」の一例である。なお、本出願でいう「金属部材」は、金属板に限定されず、トレイのような内部に収納用の窪みを有した金属部材でもよい。加熱対象の貯蔵物J1は、金属板86の上に載せられて、加熱装置80によって加熱される。本実施形態では、金属板86は、加熱装置80によって赤外線が照射されて温度が上昇する。
【0040】
(切替室温度センサ)
図3に示すように、切替室11Dは、切替室温度センサ112を有する。切替室温度センサ112は、貯蔵物J1または切替室11Dに関連する温度を検出する温度センサである。例えば、切替室温度センサ112は、貯蔵物J1または切替室11Dから放射されて検出される電磁波に基づいて上記温度を検出可能な温度センサである。切替室温度センサ112は、例えば、上記電磁波の一例として、赤外線を利用して温度を検出可能なセンサである。切替室温度センサ112は、「温度検出器」の一例である。
【0041】
本実施形態では、加熱装置80から照射される電磁波の周波数帯(例えば赤外線である周波数帯)と、切替室温度センサ112により検出されて温度検出に用いられる電磁波の周波数帯(例えば赤外線である周波数帯)とは、少なくとも一部が重複する。なお、加熱装置80から照射される電磁波の周波数帯と、切替室温度センサ112により検出されて温度検出に用いられる電磁波の周波数帯とは、一部が異なってもよい。例えば、加熱装置80から照射される電磁波の周波数帯は、中赤外線と遠赤外線とを含む周波数帯であるのに対して、切替室温度センサ112により検出されて温度検出に用いられる電磁波の周波数帯は、中赤外線を含むが遠赤外線を含まない周波数帯などでもよい。
【0042】
本実施形態では、切替室温度センサ112は、第2仕切壁16(すなわち切替室11Dの天井壁)の下面に取り付けられ、加熱装置80と貯蔵物J1との両方を視野角R2に含むように配置されている。例えば、切替室温度センサ112は、多眼レンズを有した非接触式の温度センサである。これにより、切替室温度センサ112は、加熱装置80の温度および貯蔵物J1の温度をそれぞれ検出可能である。例えば、切替室温度センサ112は、切替室温度センサ112による検出結果のなかで、加熱装置80に対応する領域からの赤外線の検出結果に基づいて加熱装置80の温度を検出し、貯蔵物J1に対応する領域からの赤外線の検出結果に基づいて貯蔵物J1の温度を検出する。
【0043】
以下の説明において、切替室温度センサ112により検出される温度とは、例えば、貯蔵物J1の温度を意味する。このため以下の説明において「切替室温度センサ112により検出される温度」は、「貯蔵物J1の温度」と読み替えられてもよい。ただし、本出願で「貯蔵物または切替室に関連する温度」とは、貯蔵物J1の温度に限らず、貯蔵物J1の温度に影響を与える、または貯蔵物J1の温度の推定に利用可能な温度であればよい。「貯蔵物または切替室に関連する温度」とは、例えば、貯蔵物J1の温度、金属板86の温度、切替室11Dの壁の温度、または切替室11D内の特定箇所の空気温度などのうち1つ以上が該当し得る。すなわち、本出願でいう「温度検出器」は、サーミスタや熱電対、または測温抵抗体などを含み、金属板86に接して金属板86の温度を検出する接触式センサでもよく、切替室11Dの壁または空気温度を検出可能なセンサなどでもよい。金属板86の温度は、「貯蔵物に関連する温度」の一例である。
【0044】
<4.制御装置に関連する制御>
次に、制御装置90に関連する構成について説明する。
図6は、制御装置90に関連する構成を示すブロック図である。冷蔵庫100は、上述した構成に加え、温度センサ110と、扉開センサ120と、記憶部190とを備える。
【0045】
(温度センサ)
温度センサ110は、複数の貯蔵室11に関する温度を検出可能な複数の温度センサを含む。温度センサ110は、例えば、上述した切替室温度センサ112を含む。温度センサ110による温度の検出結果は、制御装置90に出力される。
【0046】
本実施形態では、切替室温度センサ112は、非接触式温度センサ(非接触式温度検出器)112aと、接触式温度センサ(接触式温度検出器)112bとを含む。非接触式温度センサ112aは、例えば赤外線に基づき温度を検出するセンサであり、上述したように、加熱装置80および貯蔵物J1を視野角R2に含む。一方で、接触式温度センサ112bは、サーミスタや熱電対、または測温抵抗体などを含むセンサであり、切替室11D内の空気温度を検出する。なお、切替室温度センサ112は、非接触式温度センサ112aと、接触式温度センサ112bとのうち一方のみを有してもよい。
【0047】
(扉開センサ)
扉開センサ120は、扉20の開閉を検知可能センサである。扉開センサ120は、例えば、切替室扉20Dの開閉を検知可能な切替室扉センサ122を含む。扉開センサ120による扉20の開閉に関する検出結果は、制御装置90に出力される。
【0048】
(記憶部)
記憶部190は、各種情報を記憶する機能部である。記憶部190は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、またはSSD(Solid State Drive)などの組み合わせにより実現される。記憶部190は、制御用情報191を記憶する。制御用情報191には、冷蔵庫100の制御に用いられる各種設定値(各種閾値や固定時間などの設定値)が含まれる。
【0049】
(制御装置)
制御装置90は、制御部91を有する。制御部91は、冷蔵庫100に搭載されたCPU(Central Processing Unit)のような1つ以上のハードウェアプロセッサがプログラムを実行することにより実現される。ただし、制御部91の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0050】
制御部91は、温度センサ110の検出結果に基づき、冷気供給部CUおよび加熱装置80を制御する。例えば、制御部91は、温度センサ110により検出される各貯蔵室11の温度が目標温度になるように、冷気供給部CUに含まれる装置(圧縮機61、第1送風機63、第2送風機65、および開閉装置72など)の駆動量および駆動時間を制御する。また、制御部91は、冷気供給部CUおよび加熱装置80を制御することで、切替室11Dに収容された貯蔵物J1の解凍処理を実行する。
【0051】
<5.加熱装置による解凍処理>
次に、加熱装置80による解凍処理について説明する。
図7は、加熱装置80による解凍処理を説明するための図である。本実施形態では、制御部91は、加熱装置80により加熱対象領域B11に向けて赤外線を照射することで、加熱対象領域B11に配置された貯蔵物J1の解凍処理を行う。制御部91は、貯蔵物J1に関する解凍処理において、加熱装置80の動作を開始させた後、貯蔵物J1の解凍が完了する前に加熱装置80の動作を少なくとも1度は抑制し、目標解凍温度と、加熱装置80の動作が抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき、その後の加熱装置80の動作継続目標時間Sontargetを決定する。なお、各動作継続目標時間Sontargetにおける加熱装置80の通電率は、例えば一定とする。
【0052】
本出願で「目標解凍温度」とは、解凍完了の温度として予め設定された目標温度である。「目標解凍温度」は、例えば、切替室温度センサ112により検出される温度と同じ対象に関する温度である。すなわち、切替室温度センサ112により検出される温度が貯蔵物J1の温度である場合、「目標解凍温度」は、貯蔵物J1の目標温度である。貯蔵物J1の目標温度の一例は、包丁で食品を切りやすい温度である「-4℃」である。
【0053】
本出願で「動作継続目標時間」とは、推定される解凍までの予測時間を意味し、加熱装置80による加熱を継続する時間である。「動作継続目標時間」とは、例えば、加熱装置80に対する通電のON状態を維持する時間(いわゆるON時間)である。「動作継続目標時間」は、状況に応じて制御部91により長さが設定される可変時間である。
【0054】
本出願で「加熱装置の動作を抑制する」とは、加熱装置の動作の影響を小さくすることを広く意味する。「加熱装置の動作を抑制する」とは、例えば、加熱装置80の動作(例えば赤外線の照射)を停止することである。ただし、「加熱装置の動作を抑制する」とは、上記例に限定されず、赤外線の照射量を小さくする、または赤外線の照射を断続的にすることなども該当し得る。
【0055】
(動作継続目標時間の決定の基本態様)
まず、動作継続目標時間Sontargetの決定の基本態様について説明する。
制御部91は、次の式(1)に基づき、動作継続目標時間Sontargetを決定する。
【0056】
【数1】
【0057】
ここで、Ttarget[℃]は、目標解凍温度である。Tnew[℃]は、現在(今回の加熱装置80の動作抑制状態)において切替室温度センサ112により検出された温度(例えば貯蔵物J1の温度)である。Told[℃]は、前回の加熱装置80の動作の直前(前回の加熱装置80の動作抑制状態)において切替室温度センサ112により検出された温度(例えば貯蔵物J1の温度)である。Son[min]は、前回の加熱装置80の動作継続時間(ON時間)である。
【0058】
(計算式の説明)
式中の右辺の分子(Ttarget[℃]-Tnew[℃])は、目標解凍温度まで温度を何度上昇させる必要があるのかを示す。
【0059】
式中の右辺の分母中の分子(Tnew[℃]-Told[℃])は、前回の加熱装置80の動作により温度が何度上昇したのかを示す。このため、式中の右辺の分母は、加熱装置80の動作中の単位時間当たりの温度上昇率を示す。このため、右辺全体で、推定される解凍予測時間を意味する。
【0060】
なお、ある解凍処理における加熱装置80の初回の動作時の場合、Told[℃]が存在しないため、上記式(1)では動作継続目標時間Sontargetは算出できない。このため、加熱装置80の初回の動作時間としては、動作継続目標時間Sontargetに代えて、固定時間S1が設定される。固定時間S1の一例は、3分である。
【0061】
(計算例)
例えば、目標解凍温度を-4℃、解凍処理の開始前における貯蔵物J1の温度を-20℃、固定時間S1を3分とする場合を仮定する。この場合、加熱装置80の初回の動作として固定時間S1である3分間の赤外線照射が行われた後、加熱装置80の動作が抑制される(例えば停止される)。そして、加熱装置80の初回の動作後に切替室温度センサ112により貯蔵物J1の温度が検出される。検出された貯蔵物J1の温度が-16℃である場合、上記式(1)は次のようになる。
【0062】
動作継続目標時間Sontarget=(-4℃-(-16℃)/(-16℃-(-20℃))/3min = 9min
【0063】
このため、上記解凍処理における加熱装置80の2回目の動作時では、動作継続目標時間Sontargetが上記式(1)に基づいて算出された9分に設定される。この場合、制御部91は、9分間の赤外線照射を行うことで解凍処理を完了する。
【0064】
(固定時間S1の設定)
固定時間S1は、例えば、加熱装置80の予熱時間(加熱装置80の動作開始から加熱装置80の温度が一定温度以上まで上昇するために必要な時間)よりも長く設定される。例えば、固定時間S1は、予熱時間の2倍以上の時間、または、予熱時間に加えて2分以上の時間が設定されてもよい。固定時間S1は、例えば、加熱装置80の種類に応じて設定される。例えば、加熱装置80がハロゲンヒータである場合、固定時間S1は3分に設定される。一方で、加熱装置80が遠赤外線ヒータである場合、予熱時間として7分程度が必要になるため、固定時間S1は10分に設定される。また、固定時間S1は、加熱装置80の定格出力に応じて異なる長さが設定されてもよい。
【0065】
(加熱装置の停止から所定時間経過後の温度を利用)
ここで、加熱装置80を停止した直後では、加熱装置80にまだ余熱が残っており、加熱装置80から赤外線が放射される。この赤外線は、切替室温度センサ112による温度検出に誤差を与える。このため、切替室温度センサ112による温度検出は、例えば、加熱装置80が停止された後、加熱装置80の温度が安定するまで(加熱装置80がある程度冷えるまで)待ってから行う。
【0066】
すなわち本実施形態では、制御部91は、動作継続目標時間Sontargetの決定に用いる切替室温度センサ112により検出された温度として、加熱装置80の動作が抑制されてから所定時間経過後の温度を用いる。すなわち、制御部91は、加熱装置80の動作が抑制された(例えば停止された)直後に検出された温度を用いるのではなく、所定時間経過後に検出された温度を用いる。上記所定時間の一例は、2分である。
【0067】
(複数回繰り返される動作継続目標時間の決定)
ここで、一般的に、食品の温度上昇はリニアではなく、曲線を描くことから(例えば、食品温度が上昇すると加熱装置80から放射される熱との温度差が小さくなるため、食品温度が高いほど温度上昇は徐々に小さくなることから)、単純に動作継続目標時間Sontargetを解凍予測時間(解凍までの残り時間)とすると、当該解凍予測時間と、実際の解凍時間とには大きな乖離が生じる可能性がある。そのため、解凍予測時間よりも早く加熱装置80の動作を抑制して、再度、解凍予測時間を計算し、常に解凍予測時間を更新することを行う。
【0068】
すなわち本実施形態では、制御部91は、加熱装置80の動作開始後に加熱装置80の動作を抑制する(例えば停止する)ことで動作継続目標時間Sontargetを決定し、決定された動作継続目標時間Sontargetに基づき加熱装置80を再度動作させた後、貯蔵物J1の解凍が完了する前に加熱装置80の動作を再度抑制する(例えば再度停止する)。そして、制御部91は、加熱装置80の動作が前回抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度と、加熱装置80の動作が今回抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき、加熱装置80の動作を次回抑制するまでの動作継続目標時間Sontargetを決定する。
【0069】
例えば、動作継続目標時間Sontargetが9分として導出される上記例に当てはめて説明する。上述したように、上記式(1)に基づき動作継続目標時間Sontargetが9分として導出される場合、制御部91は、その後、9分間に亘り加熱装置80による加熱を実行することで解凍処理を完了させてもよい。
【0070】
一方で、本実施形態では、制御部91は、上記式(1)に基づき動作継続目標時間Sontargetが9分として導出される場合、式(1)に基づく動作継続目標時間Sontargetの途中(例えば4分経過時)において加熱装置80の動作を再度抑制する。そして、加熱装置80の動作が前回抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度と、加熱装置80の動作が今回抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき、加熱装置80の動作を次回抑制するまでの動作継続目標時間Sontargetを再度導出して決定し直す。これにより、実際の貯蔵物J1の解凍状態に応じた動作継続目標時間Sontargetの更新が可能になる。
【0071】
なお、式(1)に基づく動作継続目標時間Sontargetの途中のタイミング(例えば4分経過のタイミング)で加熱装置80の動作を再度抑制することは、例えば、下記のような補正処理を行うことで実現される。ただし、動作継続目標時間Sontargetの途中で加熱装置80の動作を再度抑制する手法は、以下に説明する補正処理に限定されない。動作継続目標時間Sontargetの途中で加熱装置80の動作を再度抑制する手法としては、別の手法が採用されてもよい。以下では、上記式(1)に導出される時間を「解凍予測時間」と称する場合がある。
【0072】
(補正処理)
本実施形態では、制御部91は、上記目標解凍温度と、加熱装置80の動作が抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき導出される解凍予測時間(解凍までの残り時間、例えば上記式(1)により導出される時間)と比べて、動作継続目標時間Sontargetが短くなる補正処理を行うことで動作継続目標時間Sontargetを決定する。例えば、制御部91は、上記式(1)に補正項による修正を加えることで、上記補正処理を行う。
【0073】
<実施例1>
実施例1では、上記式(1)に対して減算により解凍予測時間を短くする補正項を加えられることで、上記補正処理が行われる。例えば、制御部91は、上記式(1)に代えて、下記式(2)に基づき動作継続目標時間Sontargetを決定する。
【0074】
【数2】
【0075】
ここで、α[min]は、動作継続目標時間Sontargetを短くするための補正項である。α[min]の一例は、5分である。
【0076】
なお、制御部91は、上記補正処理を行って決定される動作継続目標時間Sontargetが所定以下となる場合、上記補正処理を抑制して動作継続目標時間Sontargetを決定する。ここで「補正処理を抑制する」とは、補正処理を行わない、または、上記補正項の値を小さくすることなどである。また「所定以下となる場合」は、例えば動作継続目標時間Sontargetが0分以下になる場合であるが、これに代えて、動作継続目標時間Sontargetが1分以下になる場合などでもよい。
【0077】
<実施例2>
実施例2では、上記式(1)に対して乗算により解凍予測時間を短くする補正項を加えられることで、上記補正処理が行われる。例えば、制御部91は、上記式(1)に代えて、下記式(3)に基づき動作継続目標時間Sontargetを決定する。
【0078】
【数3】
【0079】
ここで、1/βは、動作継続目標時間Sontargetを短くするための補正項である。(1/β)一例は、1/2である。すなわちこの場合、上記式(1)で求まる解凍予測時間の半分の時間が動作継続目標時間Sontargetとして決定される。
【0080】
なお、制御部91は、上記補正処理を行って決定される動作継続目標時間Sontargetが所定以下となる場合、上記補正処理を抑制して動作継続目標時間Sontargetを決定する、ここで「補正処理を抑制する」とは、補正処理を行わない、または、上記補正項(1/β)の値を大きくすることなどである。また「所定以下となる場合」は、例えば動作継続目標時間Sontarget0分以下になる場合であるが、これに代えて、動作継続目標時間Sontargetが1分以下になる場合などでもよい。
【0081】
(補正処理の変更)
制御部91は、例えば、動作継続目標時間Sontargetを導出する初回時の場合と、2回目以降の場合とで、補正処理の内容を変更してもよい。この補正処理の変更は、上述した第1実施例および第2実施例のいずれにも適用可能である。
【0082】
本実施形態では、制御部91は、解凍処理の途中である第1時期に、上記補正処理(例えば実施例1または実施例2の補正処理)として第1補正処理を行って動作継続目標時間Sontargetを決定する。
【0083】
次に、制御部91は、同じ解凍処理の途中で上記第1時期よりも遅い第2時期であって、上記第1時期に決定された動作継続目標時間Sontargetに基づき加熱装置80を動作させた後で加熱装置80の動作を再度抑制する第2時期に、上記補正処理(例えば実施例1または実施例2の補正処理)として、上記第1補正処理と比べて補正割合が大きい第2補正処理を行って動作継続目標時間Sontargetを決定する。
【0084】
本出願で「補正割合が大きい」とは、式(1)に基づいて導出される解凍予測時間に対して動作継続目標時間Sontargetを短くする程度が大きいことを意味する。「補正割合が大きい」とは、第1実施例に関して述べると、第1時期におけるαが3分であり、第2時期におけるαが5分であることなどを意味する。また、補正割合が大きい」とは、第1実施例に関して述べると、第1時期における1/βが2/3であり、第2時期における1/βが1/2であることなどを意味する。
【0085】
(動作継続目標時間が所定以下である場合の制御)
目標解凍温度と検出温度(例えば食品温度)との差が小さくなりすぎると、解凍予想時間は小さな値となり、動作継続目標時間Sontargetもかなり短くなる。動作継続目標時間Sontargetが所定以下に短い場合、加熱装置80が一瞬だけON状態になり、貯蔵物J1を加熱ができないこともあり得る。また、目標解凍温度と検出温度(例えば食品温度)との差が小さくなりすぎる、切替室温度センサ112の検出誤差から、動作継続目標時間Sontargetが負の値として導出される可能性も有り得る。
【0086】
そこで本実施形態では、制御部91は、導出された動作継続目標時間Sontargetが所定以下となる場合(例えば1分以下となる場合)、動作継続目標時間Sontargetに代えて、予め設定された固定時間S2に基づき加熱装置80を制御する。固定時間S2の一例は、3分である。
【0087】
(目標解凍温度と検出温度が所定以下である場合の制御)
上述したように、目標解凍温度と検出温度(例えば食品温度)との差が小さくなりすぎると、解凍予想時間は小さな値となり、動作継続目標時間Sontargetもかなり短くなる。動作継続目標時間Sontargetが所定以下に短い場合、加熱装置80が一瞬だけON状態になり、貯蔵物J1を加熱ができないこともあり得る。また、目標解凍温度と検出温度(例えば食品温度)との差が小さくなりすぎる、切替室温度センサ112の検出誤差から、動作継続目標時間Sontargetが負の値として導出される可能性も有り得る。
【0088】
そこで本実施形態では、制御部91は、目標解凍温度と、加熱装置80の動作が抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度(例えば貯蔵物J1の温度)との差が所定以下となる(例えば1℃以下となる場合)、動作継続目標時間Sontargetに代えて、予め設定された固定時間S3に基づき加熱装置80を制御する。固定時間S3の一例は、3分である。
【0089】
(扉開閉が検知された場合の制御)
加熱装置80の動作中に切替室扉20Dが開かれると、暖かい空気の流入により、解凍予測時間と実際の解凍時間には大きな乖離が生じる。また本実施形態では、加熱装置80の動作中に切替室扉センサ122により切替室11Dの扉開が検出された場合、加熱装置80の動作を一時停止させる。このように加熱装置80の動作が一時停止されることでも、解凍予測時間と実際の解凍時間には大きな乖離が生じる。
【0090】
制御部91は、加熱装置80の動作中に切替室扉センサ122により切替室11Dの扉開が検出された場合、動作継続目標時間Sontargetに代えて、予め設定された固定時間S4に基づき加熱装置80を制御する。例えば、制御部91は、切替室扉センサ122により切替室11Dの扉閉が検出されたことに応じて加熱装置80の動作を再開させる。この場合、制御部91は、固定時間S4(例えば3分間)に亘り加熱装置80を動作させ、その後、加熱装置80の動作を抑制する(例えば停止させる)。
【0091】
本実施形態では、制御部91は、固定時間S4に亘り加熱装置80を動作させた後、加熱装置80の動作を再度抑制し、目標解凍温度と、加熱装置80の動作が今回抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき、動作継続目標時間Sontargetを決定し直す。すなわち、制御部91は、切替室11Dの扉閉が検出されてから固定時間S4に亘り加熱装置80を動作させることで切替室11D内の状態を安定させた後、上記式(1)、式(2)、または式(3)のいずれかを用いて動作継続目標時間Sontargetを決定し直す。その後、制御部91は、決定し直した動作継続目標時間Sontargetに基づき加熱装置80を制御する。
【0092】
(解凍処理の完了後に貯蔵物が取り出されない場合の制御)
貯蔵物J1の解凍処理が完了しても、ユーザが貯蔵物J1を取り出さない場合がある。ここで、解凍温度(解凍目標温度)よりも検出温度(例えば食品温度)が小さくなったときにすぐに加熱装置80を再動作させると、加熱装置80が不安定な動作となり、食品温度が解凍温度から遠ざかる可能性がある。このため、検出温度(例えば食品温度)が一定以下になったら加熱装置80を再動作させることで、解凍温度付近で安定して温度を保持することが出来る。
【0093】
すなわち本実施形態では、制御部91は、解凍処理が完了した後、切替室温度センサ112により検出される温度が目標解凍温度と比べて所定以下(例えば3℃以下)になるまでは加熱装置80の動作を抑制し(例えば停止状態を維持し)、切替室温度センサ112により検出される温度が目標解凍温度と比べて上記所定以下(例えば3℃以下)に低下する場合に加熱装置80の動作を再度開始する。
【0094】
1つの例では、制御部91は、動作継続目標時間Sontarget、固定時間S2、固定時間S3、または固定時間S4などにより加熱装置80を動作させた後、切替室温度センサ112により検出される温度を取得する。そして、制御部91は、切替室温度センサ112により検出される温度が目標解凍温度である-4℃以上である場合、解凍処理を完了させる。
【0095】
その後、制御部91は、制御用情報191に含まれる切替室11Dの設定温度と、接触式温度センサ112bにより検出された切替室11Dの空気温度とに基づき、切替室11Dに関する冷却制御を行う。
【0096】
そして、制御部91は、切替室温度センサ112により検出される温度の低下が目標解凍温度と比べて所定未満である場合(例えば目標解凍温度と比べて低下が-3℃未満である場合、すなわち-7℃以下にはならない場合)、加熱装置80による加熱を抑制する(例えば停止状態を維持する)。
【0097】
一方で、制御部91は、切替室温度センサ112により検出される温度が目標解凍温度と比べて所定以下に低下する場合(例えば目標解凍温度と比べて-3℃を超えて低下する場合、すなわち-7℃以下になる場合)、加熱装置80による加熱を再度開始し、貯蔵物J1の温度が低下することを抑制する。この場合、制御部91は、貯蔵物J1の温度を再び目標解凍温度に近づける処理を行ってもよい。この処理は、例えば、上述した解凍処理と同じ内容の制御で実現される。
【0098】
<6.制御の流れ>
図8は、制御部91による制御の流れを示すフローチャートである。なお説明の便宜上、図8中では、加熱装置80を「ヒータ」と称する。
【0099】
まず、制御部91は、解凍処理を開始する場合、予め設定された固定時間S1(例えば3分)に亘り加熱装置80を動作させる(S101)。次に、制御部91は、固定時間S1の経過後に加熱装置80の動作を抑制し(例えば停止させ)、加熱装置80の温度を低下させる待機時間(例えば2分間)に亘り待機する(S102)。次に、制御部91は、上記待機時間の経過後、切替室温度センサ112により温度を検出する(S103)。そして、制御部91は、上記式(2)もしくは式(3)に基づき、動作継続目標時間Sontargetを決定する(S104)。
【0100】
次に、制御部91は、S103の処理において切替室温度センサ112により検出された温度が解凍温度(目標解凍温度)に到達しているか否かを判定する(S105)。切替室温度センサ112により検出された温度が解凍温度(目標解凍温度)に到達している場合(S105:YES)、制御部91は、所定周期で切替室温度センサ112により検出される温度を監視し、切替室温度センサ112により検出される温度を目標解凍温度と比べて所定以下に低下するまで、加熱装置80の動作を抑制状態に維持する(S106)。なお、S104の処理とS105の処理は、順序が逆でもよい。
【0101】
一方で、切替室温度センサ112により検出された温度が解凍温度(目標解凍温度)に到達していない場合(S105:NO)、制御部91は、切替室温度センサ112により検出された温度と目標解凍温度との差が所定以下(例えば1℃以下)であるか否かを判定する(S106)。
【0102】
制御部91は、切替室温度センサ112により検出された温度と目標解凍温度との差が所定以下(例えば1℃以下)である場合(S106:YES)、予め設定された固定時間S3(例えば3分)に亘り加熱装置80を動作させる(S107)。その後、フローは、S102の処理に戻る。
【0103】
一方で、制御部91は、切替室温度センサ112により検出された温度と目標解凍温度との差が所定値を超える場合(例えば1℃を超える場合)(S106:NO)、S104の処理で決定された動作継続目標時間Sontargetに基づき、加熱装置80を動作させる(S108)。なおS106の処理に代えて/加えて、動作継続目標時間Sontargetが所定以下であるか否かの判定を含む処理が行われてもよい。
【0104】
次に、制御部91は、動作継続目標時間Sontargetの経過後に加熱装置80の動作を抑制し(例えば停止させ)、加熱装置80の温度を低下させる待機時間(例えば2分間)に亘り待機する(S109)。次に、制御部91は、上記待機時間の経過後、切替室温度センサ112により温度を検出する(S110)。その後、フローは、S104の処理に戻る。
【0105】
また、制御部91は、割り込み処理1として、切替室扉センサ122により切替室扉22Dの扉開が検知された場合、加熱装置80の動作を停止させる(S121)。この場合、制御部91は、切替室扉センサ122により切替室扉22Dの扉閉が検知された場合、予め設定された固定時間S4に基づき、加熱装置80を動作させる(S122)。
【0106】
なお、制御部91は、割り込み処理2として、解凍処理の停止を示す指示(例えば冷蔵庫100の操作部に対するユーザの操作に基づく指示)を受け付けたか否かを判定する(S131)。制御部91は、解凍処理の停止を示す指示を受け付けた場合(S131:YES)、加熱装置80の動作を停止させる。
【0107】
<7.利点>
比較例として、食品温度や状況によらない固定時間に基づき加熱装置の動作が行われる構成について考えられる。この比較例の構成では、効率の良い解凍を行うことが難しく、解凍されにくい食品の場合、解凍に時間がかかる場合がある。例えば、加熱装置のON時間とOFF時間の時間間隔が固定されている場合、食品サイズ、重量、形状などにより、解凍時間は大きく変わるが、解凍しすぎや、加熱装置のON時間とOFF時間に関するスイッチング制御の間隔が遅すぎて、解凍に時間がかかる場合がある。
【0108】
また、加熱装置の動作中に温度検出が行われ、その検出結果に基づき解凍が制御される場合、温度の検出結果に誤差が入りやすく、加熱動作の動作に必要な時間の推定精度が低下しやすい。その結果、不十分な解凍、または過度な解凍が生じることがある。
【0109】
そこで本実施形態では、制御部91は、貯蔵物J1に関する解凍処理において、加熱装置80の動作を開始させた後、貯蔵物J1の解凍が完了する前に加熱装置80の動作を少なくとも1度は抑制し、目標解凍温度と、加熱装置80の動作が抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき、その後の加熱装置80の動作継続目標時間Sontargetを決定する。このような構成によれば、加熱装置80の動作が抑制された状態で温度の検出が行われるため、温度の検出結果に誤差が入りにくく、加熱動作の動作に必要な時間の推定精度を向上させることができる。また、切替室温度センサ112により検出された温度に基づいて決定される可変時間に基づき加熱装置80が動作されるため、これらにより、不十分な解凍、または過度な解凍を避けるとともに、効率の良い解凍を行うことができる。これにより、より適切な解凍制御を行うことができる。
【0110】
本実施形態では、制御部91は、決定された動作継続目標時間Sontargetに基づき加熱装置80を動作させた後、貯蔵物J1の解凍が完了する前に加熱装置80の動作を再度抑制し、加熱装置80の動作が前回抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度と、加熱装置80の動作が今回抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき、加熱装置80の動作を次回抑制するまでの動作継続目標時間Sontargetを決定する。このような構成によれば、解凍処理の途中で動作継続目標時間Sontargetを再決定(更新)することが可能である。そのため、例えば、解凍完了が近付いた時点で動作継続目標時間Sontargetの変更を行うことで、より適切な解凍制御を行うことができる。
【0111】
本実施形態では、制御部91は、加熱装置80の動作中に切替室11Dの扉開が検出された場合、動作継続目標時間Sontargetに代えて、予め設定された固定時間S4に基づき加熱装置80を制御する。このような構成によれば、切替室11Dの扉開閉により温かい空気が流入する場合、および/または、切替室11Dの扉開閉に応じて加熱装置80の動作が抑制される場合などに、古い状況に基づき決定された動作継続目標時間Sontargetを用いて制御を行うことを避けることができる。これにより、より適切な解凍制御を行うことができる。
【0112】
制御部91は、固定時間S4に亘り加熱装置80を動作させた後、加熱装置80の動作を再度抑制し、目標解凍温度と、加熱装置80の動作が今回抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき、動作継続目標時間Sontargetを決定し直す。このような構成によれば、切替室11Dの扉開閉後の状況に応じて動作継続目標時間Sontargetを決定し直すことができる。これにより、より適切な解凍制御を行うことができる。
【0113】
本実施形態では、制御部91は、目標解凍温度と、加熱装置80の動作が抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度とに基づき導出される解凍予測時間と比べて、動作継続目標時間Sontargetが短くなる補正処理を行うことで動作継続目標時間Sontargetを決定する。このような構成によれば、動作継続目標時間Sontargetが決定し直さる前に貯蔵物J1の温度が過度に上昇することを抑制することができる。これにより、より適切な解凍制御を行うことができる。
【0114】
制御部91は、解凍処理の途中である第1時期に、上記補正処理として第1補正処理を行って動作継続目標時間Sontargetを決定する。一方で、制御部91は、解凍処理の途中で上記第1時期よりも遅い第2時期であって、上記第1時期に決定された動作継続目標時間Sontargetに基づき加熱装置80を動作させた後で加熱装置80の動作を再度抑制する第2時期に、上記補正処理として、上記第1補正処理と比べて補正割合が大きい第2補正処理を行って動作継続目標時間Sontargetを決定する。このような構成によれば、第1時期には、比較的長めの動作継続目標時間Sontargetを決定することができるとともに、解凍完了が近付く場合に比較的短めの動作継続目標時間Sontargetを決定することができる。これにより、全体を通じての効率向上と、過度の温度上昇抑制とを同時に図ることができる。これにより、より適切な解凍制御を行うことができる。
【0115】
本実施形態では、制御部91は、導出された動作継続目標時間Sontargetが所定以下となる場合、動作継続目標時間Sontargetに代えて、予め設定された固定時間S2に基づき加熱装置80を制御する。このような構成によれば、動作継続目標時間Sontargetが短いことで、加熱装置80の動作が不安定にあることを抑制することができる。
【0116】
本実施形態では、制御部91は、目標解凍温度と、加熱装置80の動作が抑制された状態で切替室温度センサ112により検出された温度との差が所定以下である場合、動作継続目標時間Sontargetに代えて、予め設定された固定時間S3に基づき加熱装置80を制御する。このような構成によれば、動作継続目標時間Sontargetが短いことで、加熱装置80の動作が不安定にあることを抑制することができる。
【0117】
本実施形態では、制御部91は、動作継続目標時間切替室温度センサ112の決定に用いる切替室温度センサ112により検出された温度として、加熱装置80の動作が抑制されてから所定時間経過後の温度を用いる。このような構成によれば、切替室温度センサ112の検出結果に誤差が入ることをより確実に把握することができる。
【0118】
本実施形態では、制御部91は、解凍処理が完了した後、切替室温度センサ112により検出される温度が目標解凍温度と比べて所定以下に低下するまでは加熱装置80の動作を抑制し、切替室温度センサ112により検出される温度が目標解凍温度と比べて上記所定以下に低下する場合に加熱装置80による動作を再度開始する。このような構成によれば、加熱装置80が不安定になることを抑制するとともに、貯蔵物J1の温度を解凍温度付近で安定して温度を保持することが出来る。
【0119】
以上、1つの実施形態について説明した。ただし、実施形態は上記例に限定されない。例えば、加熱装置80は、赤外線を照射することで貯蔵物J1を解凍する加熱装置に限定されず、別の手段(電熱線または蒸気など)を利用することで貯蔵物J1を解凍する加熱装置でもよい。また、切替室温度センサ112は、赤外線を検出することで温度を検出する温度センサに限定されず、上述したように、別の手段(サーミスタや熱電対、または測温抵抗体など)を利用することで貯蔵物J1または切替室11Dに関連する温度を検出する温度センサでもよい。
【0120】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、実施形態の冷蔵庫は、筐体と、加熱装置と、温度検出器と、制御部とを備える。前記筐体は、貯蔵物を収容可能な貯蔵室を含む。前記加熱装置は、前記貯蔵室に設けられ、赤外線を利用して前記貯蔵物を解凍可能である。前記温度検出器は、前記貯蔵物または前記貯蔵室に関連する温度を検出可能である。前記制御部は、前記貯蔵物に関する解凍処理において、前記加熱装置の動作を開始させた後、前記貯蔵物の解凍が完了する前に前記加熱装置の動作を少なくとも1度は抑制し、目標解凍温度と、前記加熱装置の動作が抑制された状態で前記温度検出器により検出された温度とに基づき、その後の前記加熱装置の動作継続目標時間を決定する。このような構成によれば、より適切な解凍制御を行うことができる
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
10…筐体、11D…切替室(貯蔵室)、80…加熱装置、91…制御部、100…冷蔵庫、112…切替室温度センサ(温度検出部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8