(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151482
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】金型装置
(51)【国際特許分類】
B21D 28/00 20060101AFI20241018BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20241018BHJP
B21D 28/14 20060101ALN20241018BHJP
H02K 15/02 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
B21D28/00 D
B21D28/02 C
B21D28/14 Z
H02K15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064850
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】山際 晃平
(72)【発明者】
【氏名】浦野 雅春
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 剛之
【テーマコード(参考)】
4E048
5H615
【Fターム(参考)】
4E048FA09
5H615AA01
5H615PP06
5H615SS03
(57)【要約】
【課題】高精度かつ安定した加工を行うことができる金型装置を提供する。
【解決手段】金型装置は、板状の材料を打ち抜くためのポンチを有する上型と、上型の下方に位置するストリッパ部と、を備え、ストリッパ部は、ポンチが通過する第1孔部を有するプレートと、第1孔部に上方から重なる位置に設けられ第1孔部よりも径が小さい第2孔部を有しポンチの上下方向の移動を案内するガイド部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の材料を打ち抜くためのポンチを有する上型と、
前記上型の下方に位置するストリッパ部と、を備え、
前記ストリッパ部は、前記ポンチが通過する第1孔部を有するプレートと、前記第1孔部に上方から重なる位置に設けられ前記第1孔部よりも径が小さい第2孔部を有し前記ポンチの上下方向の移動を案内するガイド部と、を有する、
金型装置。
【請求項2】
前記プレートと前記ガイド部とは、別部品で構成されている、
請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記第2孔部は、下方に向かうにつれて径が拡大している、
請求項1又は2に記載の金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば産業機械や自動車等の駆動源として用いられるモータの回転子や固定子の鉄心は、電磁鋼板等の材料から打ち抜かれた鉄心材を積層して構成されている。当該鉄心材を製造するための装置として、ロール状に巻かれた材料を所定のピッチで順次送り、材料を段階的に打ち抜く順送型の金型装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年ではモータの効率を高めるために、材料の薄板化や高効率材料の適用が考えられており、高精度の打ち抜き加工が求められている。また、例えば鉄心スロット部のスロット形状等が複雑化してきており、材料を打ち抜く刃物形状の複雑化が必要となるとともに、刃物のカケ等に起因した不具合の発生確率が高まっている。そのため、従来構成では、高精度かつ安定した加工を行う点において課題があった。
【0005】
そこで、高精度かつ安定した加工を行うことができる金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、一実施形態による金型装置は、板状の材料を打ち抜くためのポンチを有する上型と、前記上型の下方に位置するストリッパ部と、を備え、前記ストリッパ部は、前記ポンチが通過する第1孔部を有するプレートと、前記第1孔部に上方から重なる位置に設けられ前記第1孔部よりも径が小さい第2孔部を有し前記ポンチの上下方向の移動を案内するガイド部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態による金型装置を備える順送加工装置の一例を概略的に示す図
【
図2】一実施形態による金型装置の一例を概略的に示す断面図
【
図3】一実施形態による金型装置について、プレート及びガイド部の各孔部の周辺を拡大して示す断面図
【
図4】一実施形態による金型装置について、ガイド部の一例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図では、説明の便宜上、必要に応じて各構成の寸法を適宜拡大している場合があり、各構成同士の寸法比は実際と同一であるとは限らない。
【0009】
図1に示す順送加工装置1は、板状に形成された材料2に打ち抜き加工を施すことで、例えば三相同期モータを構成する回転子鉄心及び固定子鉄心の鉄心材を製造する。材料2は、例えば電磁鋼板、非晶質磁性材料、及びナノ結晶磁性材料等の軟磁性材料で構成され、0.0数mm~0.数mm程度の厚みで形成されている。材料2は、例えばロール状に巻かれたいわゆるフープ材で構成されている。順送加工装置1は、モータに限らず発電機の製造に用いることもできる。
【0010】
順送加工装置1は、例えばフィーダ3、金型装置10、及び図示しないレベラ等を含んで構成できる。フィーダ3は、例えばロールフィーダで構成されており、金型装置10の上流側に設けられている。フィーダ3は、搬送されてきた材料2を所定のピッチで間欠的に金型装置10に送り出す。金型装置10は、搬送された材料2に対して段階的に打ち抜き加工を施すことによって、例えば回転子鉄心及び固定子鉄心の鉄心材を製造するための装置である。金型装置10は、図示しない制御装置によって駆動が制御される。本実施形態では、金型装置10による打抜き方向は、上下方向である。
【0011】
金型装置10は、
図1及び
図2に示すように、下型20、上型30、及びストリッパ部40を有している。下型20は、搬送されてきた材料2を受ける。下型20は、複数のダイ21を含んで構成されている。複数のダイ21は、例えば下型20の長手方向に沿って複数列で並ぶように設けられている。互いに隣接するダイ21同士は、例えば千鳥状に配置されている。ダイ21は、搬送されてきた材料2を上面で受けて、材料2を下方から支持する。ダイ21は、例えば超硬合金で構成されている。ダイ21は、挿入孔部21aが形成されている。挿入孔部21aは、ダイ21を厚み方向に貫通して形成されており、所定の形状で形成されている。所定の形状とは、打ち抜く材料2の加工形状に応じて、任意に設定されるものである。
【0012】
上型30は、下型20の上方に位置している。上型30は、図示しない駆動機構に接続されており、下型20に対して上下方向に相対的に移動する。上型30は、ホルダ31及びポンチユニット32を有している。ホルダ31は、上型30の大部分を構成しており、上型30の上面を構成している。ポンチユニット32は、ホルダ31の下方に位置している。ポンチユニット32は、ポンチプレート321及びポンチ322を有している。ポンチプレート321は、図示しない敷板を介して例えばボルト等の締結部材によってホルダ31に固定されている。敷板は、ポンチユニット32に作用する荷重を負担する機能を有する。
【0013】
ポンチ322は、ポンチプレート321の下面から下方に突出するように設けられている。ポンチ322は、例えば超硬合金で構成され、材料2を所定の形状に打ち抜くためのものである。ポンチ322は、複数のダイ21に対応した位置に複数設けられており、ダイ21の挿入孔部21aに挿入可能に形成されている。ポンチ322及びダイ21が協働することで、材料2に対する打ち抜き加工が施される。
【0014】
また、ポンチユニット32は、
図2に示すように、ガイドポスト33及びガイドブッシュ34を介して、ホルダ31及び下型20に対して上下方向に相対的に移動可能に構成されている。ガイドポスト33及びガイドブッシュ34は、ポンチ322を、打ち抜き状態と、非打ち抜き状態と、に切り替える機能を有する。打ち抜き状態とは、ポンチ322が材料2を打ち抜く状態を意味し、一方非打抜き状態は、ポンチ322が材料2を打ち抜かない状態を意味する。ガイドポスト33及びガイドブッシュ34は、切替機構として機能する。
【0015】
ガイドポスト33は、上下方向に延びる略円柱状の部材で構成されている。ガイドポスト33は、ポンチプレート321を貫いてホルダ31に固定されている。ガイドブッシュ34は、例えばボールブッシュで構成されており、ガイドポスト33を上下方向に摺動可能に支持している。上型30の下降移動に伴って、ガイドブッシュ34に対してガイドポスト33が摺動することで、ポンチ322が打ち抜き状態と非打ち抜き状態とに切り替わる。
【0016】
ストリッパ部40は、上型30の下方であって、上型30と下型20との間に位置している。ストリッパ部40は、例えば圧縮バネを有する図示しない接続部材を介して上型30に弾性的に取り付けられており、上型30とともに下型20に向かって上昇又は下降する。ストリッパ部40は、材料2の打ち抜き加工時に、ダイ21との間で材料2を挟む機能を有する。なお、詳細は図示しないが、打ち抜き加工時には、例えば下型20の上面に窪んで形成された受け部に対して、ストリッパ部40の底面から下方に突出して形成されたピンの先端が挿入されることで、材料2を位置決めした状態で水平方向の移動が規制される。
【0017】
図2に示すように、ストリッパ部40は、窪み部401を有している。窪み部401は、ガイドポスト33と対向する位置であって、例えばストリッパ部40の上面を下方に窪んで形成されている。窪み部401は、ガイドポスト33の先端つまり下端を収容可能に形成されている。
【0018】
ストリッパ部40は、
図2及び
図3に示すように、プレート41及びガイド部42を有している。本実施形態では、プレート41とガイド部42とは、別部品で構成されている。また、プレート41とガイド部42との材質は同一であって、例えば合金工具鋼で構成されている。ガイド部42とプレート41との材質は、異なっていても良い。
【0019】
プレート41は、ストリッパ部40の主体を構成しており、ストリッパ部40の底面を構成している。プレート41は、第1孔部としてのプレート孔部411及び載置部412を有している。プレート孔部411は、プレート41を厚み方向に貫通して形成されており、ポンチ322が通過可能に形成されている。プレート孔部411の径寸法D1は、ポンチ322の径寸法D0よりも大きく設定されている。プレート孔部411の径寸法D1は、略均一に設定されている。そして、プレート孔部411は、ポンチ322の刃先つまり先端部と重なる位置に配置されている。載置部412は、プレート41の上面側に設けられ、プレート41の上面を下方に窪むように形成されている。
【0020】
ガイド部42は、プレート41の載置部412に載置される。ガイド部42の上面は、載置部412に載置された状態で、プレート41の上面と略同一面に配置される。ガイド部42は、
図4に示すように、例えば略円環状に構成されている。ガイド部42は、位置決め用孔部421、固定用孔部422、及び第2孔部としてのガイド部孔部423を有している。位置決め用孔部421は、ガイド部42を厚み方向に貫通して形成されており、ガイド部42を載置部412に配置する際に位置決めをするために用いられる。位置決め用孔部421は、複数例えば2つ設けられており、載置部412に形成された図示しない位置決めピンが挿入可能に形成されている。
【0021】
固定用孔部422は、ガイド部42を厚み方向に貫通して形成されており、ガイド部42をプレート41に固定するためのものである。固定用孔部422は、複数例えば6つ設けられている。詳細は図示しないが、プレート41には、固定用孔部422に対応した位置に、内面が雌ねじ加工された孔部が形成されている。そして、固定用孔部422を通したボルト51を当該孔部に締め付けることで、プレート41に対してガイド部42を固定できる。
【0022】
ガイド部孔部423は、ガイド部42を厚み方向に貫通して形成され、プレート孔部411に上方から重なる位置に設けられている。本実施形態では、ガイド部孔部423は、プレート孔部411と同心円状に設けられている。ガイド部孔部423の形状は、プレート孔部411の形状と略同一に設定されている。ガイド部孔部423は、ポンチ322が通過可能に形成されている。ガイド部孔部423の径寸法D2は、ポンチ322の径寸法D0よりも大きく設定されている。そして、ガイド部孔部423は、ポンチ322の刃先つまり先端部とは重ならない位置に配置されている。
【0023】
図3に示すように、ガイド部孔部423の径寸法D2は、プレート孔部411の径寸法D1よりも小さく設定されている。つまり、ガイド部孔部423の内面とポンチ322の外面との間の隙間は、プレート孔部411の内面とポンチ322の外面との間の隙間よりも小さく設定される。
【0024】
ここで、材料2を打ち抜き加工するために、例えばガイドポスト33を下方に摺動させてポンチ322を下降させると、ポンチ322には微振動が生じる場合がある。この場合に、ポンチ322の刃先がプレート孔部411の内面に接触すると、当該刃先が摩耗することで、加工精度の悪化等の不具合を招いてしまう。
【0025】
そこで、本実施形態では、上述したように、ガイド部孔部423の径寸法D2は、プレート孔部411の径寸法D1よりも小さく設定されているため、ポンチ322に対してガイド部孔部423の内面がプレート孔部411の内面よりも先に接触する。この場合、ポンチ322は、ガイド部孔部423によって移動が案内される。つまり、ガイド部孔部423は、ポンチ322の上下方向の移動を案内する機能を有する。そして、ガイド部孔部423は、プレート孔部411よりもポンチ322の刃先とは反対側つまり基端部側であって、ポンチ322の刃先とは離れた位置に設けられている。そのため、ガイド部孔部423によってポンチ322の移動を案内する際に、ポンチ322の刃先の摩耗が抑制される。
【0026】
また、ガイド部孔部423は、上面から所定距離離れた位置から下方に向かうにつれて径が拡大している。つまり、ガイド部孔部423は、下端部付近において、ガイド部孔部423の内面とポンチ322の外面との隙間が下方に向かうにつれて徐々に大きくなる。ガイド部孔部423の内面の傾斜角度θこの場合垂直方向に対する傾斜角度θは、例えば1°~5°の範囲で設定されている。
【0027】
以上説明した実施形態によれば、金型装置10は、上型30と、ストリッパ部40と、を備える。上型30は、板状の材料を打ち抜くためのポンチ322を有する。ストリッパ部40は、上型30の下方に位置する。ストリッパ部40は、プレート41及びガイド部42を有する。プレート40は、ポンチ322が通過するプレート孔部411を有する。ガイド部42は、プレート孔部411に上方から重なる位置に設けられプレート孔部411よりも径が小さいガイド部孔部423を有し、ポンチ322の上下方向の移動を案内する。
【0028】
これによれば、ガイド部孔部423によって、ポンチ322先端の刃先から離れた位置でポンチ322の上下方向の移動を案内することができる。これにより、ポンチ322の刃先の摩耗を抑制しつつ、ポンチ322を所定の加工位置に精度よく移動させることができる。よって、高精度かつ安定した加工を行うことができる。
【0029】
また、プレート41とガイド部42とは、別部品で構成されている。これによれば、プレート41とガイド部42との材質や寸法設定等の部品設計の自由度を高めることができる。また、ポンチ322の移動を案内するガイド部42が摩耗した場合に、ガイド部42の交換のみで加工精度の回復ができるため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0030】
更に、ガイド部孔部423は、下方に向かうにつれて径が拡大している。これによれば、例えば上型30が下降移動する際の振動等によって、ポンチ322先端の刃先に水平方向の微動が生じたとしても、当該刃先がガイド部42の先端部に接触することを抑制できる。これにより、ポンチ322の刃先が摩耗による加工精度の悪化等の不具合の発生をより一層抑制できる。
【0031】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
図面中、10は金型装置、30は上型、322はポンチ、40はストリッパ部、41はプレート、411はプレート孔部(第1孔部)、42はガイド部、423はガイド部孔部(第2孔部)、を示す。