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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151483
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241018BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 652C
H01L29/91 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064852
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生井 正輝
(72)【発明者】
【氏名】白石 正樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】逆バイアス安全動作領域(Reverse Bias Safe Operating Area:RBSOA)の拡大を図れるRC-IGBT構成の半導体装置を提供する。
【解決手段】n-型のドリフト層100、p型のボディ層101、n+型の第1拡散層10及びp型コレクタ層104を備え、IGBT素子1trを配置したトランジスタ領域10trと、p型のボディ層101’、ドリフト層及びn+型の第2拡散層106で構成されたFWD(還流ダイオード)素子1dを配置したダイオード領域10dと、を同一の半導体基板に設けた半導体装置1であって、ダイオード領域は、ボディ層とドリフト層との間に、ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型のバリア層103’を有し、ダイオード領域内におけるトランジスタ領域との境界領域10dbは、ボディ層とドリフト層とが接する面積が、ダイオード領域内の他のダイオード領域10daよりも広い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の一主面側の表面層に形成された第2導電型のボディ層と、
前記ボディ層の一主面側の表面層に部分的に形成された第1導電型の第1拡散層と、
前記ドリフト層の他主面側の表面層に分配して形成された第2導電型のコレクタ層および前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型の第2拡散層とを備え、
前記第1拡散層、前記ボディ層、前記ドリフト層、および前記コレクタ層で構成されたIGBT素子を配置したトランジスタ領域と、前記ボディ層、前記ドリフト層、および前記第2拡散層で構成されたFWD素子を配置したダイオード領域とを同一の半導体基板に設けた半導体装置であって、
前記ダイオード領域は、前記ボディ層と前記ドリフト層との間に、前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型のバリア層を有し、
前記ダイオード領域内における前記トランジスタ領域との境界領域は、前記ボディ層と前記ドリフト層とが接する面積が、前記ダイオード領域内の他の領域よりも広い
半導体装置。
【請求項2】
前記ダイオード領域内において、前記境界領域以外の領域のみに前記バリア層が設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記境界領域は、前記トランジスタ領域から100μmまでの範囲の領域である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トランジスタ領域は、前記ボディ層と前記ドリフト層との間に前記バリア層を有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記境界領域は、前記ボディ層の深さが、他の領域よりも深い
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板の一主面側には、トレンチと、前記トレンチ内に絶縁膜を介して埋め込まれた電極パターンとを有し、
前記ボディ層の深さは、前記境界領域において前記トレンチよりも深く、他の領域において前記トレンチよりも浅い
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記境界領域においては、前記ボディ層が前記トレンチの底面を覆って設けられている
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記トランジスタ領域において前記第1拡散層は、前記トレンチ内の絶縁膜に接して設けられ、
前記バリア層は、前記トレンチ間に配置されている
請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)と還流ダイオードとを同一の基板に設けたRC-IGBT構成の半導体装置に関する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、「半導体基板において、IGBT領域及びダイオード領域が形成されている素子領域を取り囲む外周領域に、ダイオード領域のアノード層と同電位の電圧が印加される第2導電型のガードリングが形成される。カソード層とガードリングとは、半導体基板の表面に平行な面へ投影した場合のカソード層とガードリングとの間の距離の最小値をLとし、半導体基板の厚みをdとしたとき、L/d≧1.5を満たす位置に形成される。これにより、ガードリングからドリフト層に多量のキャリアが注入されることが抑制され、ダイオード領域が逆方向バイアスに切り替わった時に、アノード層に多量のホールが流れ込むことを抑制できる。その結果、ダイオードのリカバリ耐量の一層の向上を図ることができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-224685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した構成の半導体装置では、IGBTをオン動作させた場合に、IGBT領域に少数キャリアを蓄積させることで得られる伝導度変調により、高耐圧でありながらもオン抵抗を低く抑える他動作が可能となっている。しかしながら、IGBTのターンオフ動作においては、IGBT領域に蓄積されたキャリアが、スイッチング損失の増大による素子の熱破壊を招く要因となり、逆バイアス安全動作領域(Reverse Bias Safe Operating Area:RBSOA)を狭めている。
【0005】
そこで本発明は、逆バイアス安全動作領域(Reverse Bias Safe Operating Area:RBSOA)の拡大を図ることが可能なRC-IGBT構成の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層の一主面側の表面層に形成された第2導電型のボディ層と、前記ボディ層の一主面側の表面層に部分的に形成された第1導電型の第1拡散層と、前記ドリフト層の他主面側の表面層に分配して形成された第2導電型のコレクタ層および前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型の第2拡散層とを備え、前記第1拡散層、前記ボディ層、前記ドリフト層、および前記コレクタ層で構成されたIGBT素子を配置したトランジスタ領域と、前記ボディ層、前記ドリフト層、および前記第2拡散層で構成されたFWD素子を配置したダイオード領域とを同一の半導体基板に設けた半導体装置であって、前記ダイオード領域は、前記ボディ層と前記ドリフト層との間に、前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型のバリア層を有し、前記ダイオード領域内における前記トランジスタ領域との境界領域は、前記ボディ層と前記ドリフト層とが接する面積が、前記ダイオード領域内の他の領域よりも広い半導体装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、逆バイアス安全動作領域(Reverse Bias Safe Operating Area:RBSOA)の拡大を図ることが可能なRC-IGBT構成の半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の断面模式図(その1)である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の断面模式図(その2)である。
図3】第2実施形態に係る半導体装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した各実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態においては、同一構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明を行うが、導電型は逆であってもよい。
【0010】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1の断面模式図(その1)である。この図に示す半導体装置1は、同一の半導体基板10に、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:以下IGBT素子1trと記す)と、還流ダイオード(Free Wheeling Diode:以下FWD素子1dと記す)とを設けた逆導通型IGBT(RC-IGBT)である。以下、この半導体装置1について、半導体基板10を平面視的に見た場合の領域構成、半導体基板10を断面から見た場合の断面構成の順に説明する。
【0011】
<領域構成>
先ず、半導体装置1の領域構成を説明する。半導体装置1が設けられた半導体基板10は、複数のIGBT素子1trが配置されたトランジスタ領域10trと、複数のFWD素子1dが配置されたダイオード領域10dとを有する。ここでは、トランジスタ領域10trとダイオード領域10dとは、例えば一つの配列方向[x]に沿って交互に配置されていることとするが、これに限定されることはなく、トランジスタ領域10trの中に島状にダイオード領域10dが配置された構成であってもよい。
【0012】
ダイオード領域10dは、トランジスタ領域10trに隣接する領域を境界領域10dbとしている。このような境界領域10dbは、トランジスタ領域10trの境界から100μm程度の領域であり、以降に説明するようにトランジスタ領域10trのキャリアに対して、ダイオード領域10dの拡散層が影響を及ぼすことが可能な範囲であることとする。
【0013】
このような境界領域10dbには、ダイオード領域10d内における他のダイオード領域10daに設けられているFWD素子1daとは異なる構成の境界領域FWD素子1dbが設けられている。以降、境界領域10dbを含むダイオード領域10dのうち、境界領域10db以外の領域を、単にダイオード領域10daと称する。また、境界領域10db以外のダイオード領域10daに設けられたFWD素子1dを、境界領域FWD素子1dbに対して、単にFWD素子1daと称して説明を行う。
【0014】
図1は、トランジスタ領域10tr-境界領域10db-ダイオード領域10da間にわたる配列方向[x]の断面構造を示しており、3素子分のIGBT素子1trと、2素子分の境界領域FWD素子1dbと、3素子部のFWD素子1daの断面を示している。なお、図1においては、境界領域10dbの配列方向[x]に、2つの境界領域FWD素子1dbが配置された例を示しているが、これに限定されることはない。配列方向[x]に対する境界領域FWD素子1dbの配置数は、100μm程度の幅を有する境界領域10db内に配置される1以上の数であればよい。
【0015】
<断面構成>
次に、半導体装置1の断面構成を説明する。半導体装置1が設けられた半導体基板10は、第1導電型の不純物濃度が比較的薄い基板であって、ここではn-基板である。この半導体基板10は、一主面(ここでは表面と称する)側に複数のトレンチ10aを有する。各トレンチ10aは、配列方向[x]に対して垂直方向(図面上の奥行方向)に延設されており、配列方向[x]に対しては、各素子、すなわち各IGBT素子1tr、および各FWD素子1dに対応して設けられている。これらのトレンチ10aは、同一工程で形成されたものであって、同一の深さを有していてよい。
【0016】
各トレンチ10a内には、トレンチ10aの内壁に設けられた絶縁膜11を介して、電極パターン12で埋め込まれている。絶縁膜11は、トレンチ10aの内壁に成膜したものであってもよいし、酸化または窒化によりトレンチ10aの内壁から半導体基板10内に成長させた膜であってもよい。
【0017】
このような絶縁膜11のうち、特にトランジスタ領域10trの絶縁膜11はゲート絶縁膜11gとして機能する。また、電極パターン12のうちトランジスタ領域10trの電極パターン12は、ゲート電極12gとして用いられる。一方、ダイオード領域10dの電極パターン12は、以降に説明するエミッタ電極14に接続されていることする。
【0018】
また半導体基板10の表面上には、電極パターン12を覆う状態で層間絶縁膜13がパターン形成されている。この層間絶縁膜13は、電極パターン12を覆うとともに、トレンチ10a間において半導体基板10を露出する形状にパターニングされている。またさらに、半導体基板10の一主面上には、層間絶縁膜13を介してエミッタ電極14がパターン形成されている。エミッタ電極14は、層間絶縁膜13によって、トレンチ10a内の電極パターン12とは絶縁状態に保たれる一方、層間絶縁膜13間において半導体基板10に接続された状態となっている。
【0019】
これに対し、半導体基板10の他主面(ここでは裏面と称する)上には、コレクタ電極15がパターン形成されている。
【0020】
次に、トランジスタ領域10tr、ダイオード領域10da、および境界領域10dbにおける半導体基板10内部の拡散層構造を説明する。拡散層は、n-の半導体基板10に対してn型不純物またはp型不純物を導入することによって形成された各導電型を有する層である。以下においては、不純物導入による拡散層の形成で残された半導体基板10におけるn-領域を、特にn-ドリフト層100と称して説明を行う。
【0021】
[トランジスタ領域10tr]
トランジスタ領域10trにおいて、トレンチ10aが設けられている半導体基板10の表面側は、p型の拡散層(p型ボディ層101と称する)で覆われている。このp型ボディ層101は、先に説明したトレンチ10aよりも浅く形成されていることとする。
【0022】
p型ボディ層101の表面側には、ゲート絶縁膜11gに接する位置において、層間絶縁膜13から露出する幅を有するn+拡散層102が設けられている。n+拡散層102は、n型(第1導電型)の第1拡散層として設けられたものである。n+拡散層102は、隣り合って配置されているトレンチ10a間において隙間を有して設けられており、この隙間においてp型ボディ層101が半導体基板10の表面に露出した状態となっている。これにより、p型ボディ層101とn+拡散層102とは、トレンチ10a間において、エミッタ電極14に接続した状態となっている。
【0023】
また、p型ボディ層101とn-ドリフト層100との間には、半導体基板10よりもn型不純物の濃度が高いn型の拡散層からなるn型バリア層103が設けられている。n型バリア層103は、トレンチ10aよりも浅い位置に形成されており、トレンチ10a間に配置されていることとする。なお、図面においては、トレンチ10a間を塞ぐようにn型バリア層103を設けた構成を示したが、n型バリア層103は、トレンチ10a間の中央に配置されていて、ゲート絶縁膜11gに対して離間して設けられていてもよい。
【0024】
以上の構成により、トランジスタ領域10trにおける半導体基板10の表面側は、n+拡散層102をドレイン、n型バリア層103およびn-ドリフト層100をソースとしたMOS型トランジスタが配置された状態となっている。
【0025】
一方、トランジスタ領域10trにおいて、半導体基板10の裏面側は、最外面がp型拡散層からなるp型コレクタ層104が設けられている。また半導体基板10において、p型コレクタ層104とn-ドリフト層100との間には、n型拡散層からなるn型バッファ層105が設けられている。なお、このn型バッファ層105は、必要に応じて設けられていればよく、設けられていなくてもよい。
【0026】
以上の構成により、トランジスタ領域10trには、p型ボディ層101と、p型コレクタ層104との間に、n型バリア層103、n-ドリフト層100、およびn型バッファ層105が挟持されたPNPバイポーラトランジスタが配置された状態となっている。そして、このトランジスタ領域10trには、半導体基板10の表面側に配置されたMOS型トランジスタを、PNPバイポーラトランジスタのスイッチング素子として用いたIGBT素子1trが配置された状態となっている。
【0027】
このIGBT素子1trは、エミッタ電極14に対して正の電圧をゲート電極12gに印加することにより、電流導通状態となる。この場合、p型ボディ層101のゲート電極12gに沿った位置に電子が集まり、n型に反転したチャネルが形成されることにより、PNPバイポーラトランジスタにベース電流が流れる。そして、エミッタ電極14から供給された電子は、n+拡散層102、n型のチャネル、n型バリア層103、n-ドリフト層100、n型バッファ層105、およびp型コレクタ層104の経路でコレクタ電極15に達する。またコレクタ電極15から供給された正孔は、電子と逆の経路でエミッタ電極14に到達する。
【0028】
この際、n型バリア層103を設けたことにより、n-ドリフト層100からp型ボディ層101への正孔の移動が防止され、n-ドリフト層100に効果的に正孔を溜めることができる。これにより、IGBT素子1trの伝導度変調効果を確実とし、オン抵抗の上昇を抑えることが可能な構成となっている。
【0029】
[ダイオード領域10da]
ダイオード領域10daにおいて、トレンチ10aが設けられている半導体基板10の表面側は、p型ボディ層101からなるアノード層101’で覆われている。このアノード層101’は、先に説明したトレンチ10aよりも浅く形成されている。またアノード層101’は、トレンチ10a間において、エミッタ電極14に接続した状態となっている。
【0030】
アノード層101’とn-ドリフト層100との間に、半導体基板10よりもn型不純物の濃度が高いn型拡散層からなるn型バリア層103’が設けられている。このn型バリア層103’は、トランジスタ領域10trのn型バリア層103と同一構成のものであって、同一工程で形成された層であってよい。したがって、n型バリア層103’は、トレンチ10aよりも浅い位置に形成されており、トレンチ10a間に配置されていることとする。また、n型バリア層103’は、トレンチ10a間の中央に配置されていて、トレンチ10aの内壁の絶縁膜11に対して離間して設けられていてもよい。
【0031】
一方、ダイオード領域10dにおいて、半導体基板10の裏面側には、ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型(n型)の第2拡散層が、カソード層106として設けられている。半導体基板10の裏面側は、n+拡散層からなるカソード層106で覆われている。このカソード層106は、コレクタ電極15に接して設けられ、コレクタ電極15に接続された状態となっている。このようなカソード層106は、例えばトランジスタ領域10trのp型コレクタ層104と同程度の深さを有していてよい。
【0032】
またカソード層106とn-ドリフト層100との間には、トランジスタ領域10trから延設されたn型拡散層からなるn型バッファ層105が設けられている。n型バッファ層105のn型不純物濃度は、n-ドリフト層100よりも高く、カソード層106よりも低い。なお、このn型バッファ層105は、必要に応じて設けられていればよく、設けられていなくてもよい。
【0033】
以上のような構成により、ダイオード領域10daには、アノード層101’がエミッタ電極14に接続され、カソード層106がコレクタ電極15に接続されたことで、トランジスタ領域10trに配置されたIGBT素子1trに対して逆並列に接続されたFWD素子1daが配置された状態となっている。
【0034】
このFWD素子1daは、IGBT素子1trに対して逆並列に接続されているため、IGBT素子1trを導通状態とした状態においては、アノード層101’とカソード層106には逆方向バイアスが印加されることになり、電流は流れない。一方、FWD素子1daは、IGBT素子1trが導通状態からターンオフした場合に、ターンオフしたIGBT素子1trに生じる還流電流を逃がす経路となり、IGBT素子1trの破損を防止する。
【0035】
また、上記の還流電流が流れることでることによってFWD素子1daが順方向の導通状態となった場合、アノード層101’に接して設けたn型バリア層103’により、アノード層101’からn-ドリフト層100への正孔の移動を防止することができる。
【0036】
[境界領域10db]
境界領域10dbにおける半導体基板10の拡散層構造は、ダイオード領域10daにおける拡散層構造に対して、n型バリア層103’を設けていないことのみが異なる。すなわち、境界領域10dbにおける境界領域FWD素子1dbは、ダイオード領域10daに設けたFWD素子1daからn型バリア層103’を除いた構成となっている。
【0037】
この境界領域FWD素子1dbは、IGBT素子1trに対して逆並列に接続されているため、IGBT素子1trを導通状態とした状態においては、アノード層101’とカソード層106には逆方向バイアスが印加されることになり、電流は流れない。また、FWD素子1dは、IGBT素子1trが導通状態からターンオフした場合に、ターンオフしたIGBT素子1trに生じる還流電流を逃がす経路となり、IGBT素子1trの破損を防止することは、FWD素子1daと同様である。
【0038】
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態の半導体装置1は、境界領域10dbを除いたダイオード領域10daのみに、n型バリア層103’を配置した構成である。これにより、境界領域10dbには、p型のアノード層101’とn-ドリフト層100との間に、n-ドリフト層100よりもn型不純物の濃度が高い領域が存在せず、アノード層101’とn-ドリフト層100とが広い面積で接する構成となっている。このような構成により、次のような効果を得ることができる。
【0039】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置の断面模式図(その2)であり、IGBT素子1trを導通状態からオフ状態に切り替えたターンオフ時の模式図である。図2に示すように、IGBT素子1trをターンオフした状態においては、トランジスタ領域10trのn-ドリフト層100に少数キャリアである正孔が溜まった状態となっている。この際、境界領域10dbは、n型不純物の濃度が高いn型バリア層103’が存在せず、領域p型のアノード層101’が露出した状態となっているため、n-ドリフト層100の正孔が、p型のアノード層101’から排出され易くなっている。
【0040】
これにより、ターンオフしたIGBT素子1trのp型ボディ層101-n型バリア層103の接合部のダイナミックアバランシェによって排出されるキャリア(正孔)の総量を減らすことができる。そして、IGBT素子1trに内在するpnpn型寄生サイリスタへ供給されるベース電流が低減し、IGBT素子1trのラッチアップ破壊を防止できる。この結果、RC-IGBT構成の半導体装置1における逆バイアス安全動作領域の拡大を図ることが可能となる。
【0041】
なお、以上の第1実施形態においては、境界領域10dbにn型バリア層103’を設けない構成とした。しかしながら、境界領域10dbは、トランジスタ領域1daよりも縮小した形状のn型バリア層103’を設けることで、アノード層101’とn-ドリフト層100とが接する面積を、トランジスタ領域1daよりも広くした構成であってもよい。このような構成であっても、上述したような逆バイアス安全動作領域の拡大を図る効果を得ることができる。
【0042】
≪第2実施形態≫
図3は、第2実施形態に係る半導体装置2の断面模式図である。この図に示す第2実施形態の半導体装置2が、先に図1図2を用いて説明した第1実施形態の半導体装置1と異なるところは、境界領域10dbに設けた境界領域FWD素子1db”のアノード層101”の深さにあり、他の構成は同様である。
【0043】
境界領域FWD素子1db”のアノード層101”は、ダイオード領域10daのアノード層101’よりも深く形成されている。アノード層101”の深さは、ダイオード領域10daのアノード層101’よりも深ければよいが、さらにトレンチ10aよりも深いことが好ましい。
【0044】
また、図3に示したように、アノード層101”は、トレンチ10aの底面を覆う形状であることが、さらに好ましい。このようなアノード層101”は、トレンチ10aを形成する前に、トレンチ10aの形成予定深さよりも深くp型不純物を半導体基板10に導入することにより形成することができる。なお、酸化または窒化によりトレンチ10aの内壁から半導体基板10内に絶縁膜11を成長させる場合、絶縁膜11の膜厚を考慮した深さでアノード層101”を形成すればよい。
【0045】
<第2実施形態の効果>
以上のような第2実施形態の半導体装置2によれば、境界領域10dbのアノード層101”を、ダイオード領域10daのアノード層101’よりも深いものとした。これにより、第1実施形態の構成よりも、境界領域10dbにおけるp型のアノード層101”とn-ドリフト層100との界面が、トランジスタ領域10trのn-ドリフト層100に近くなる。このため、第1実施形態の構成よりも、さらに、IGBT素子1trのターンオフ動作に際し、n-ドリフト層100に溜まった正孔を境界領域10dbのアノード層101”から排出され易くなる。
【0046】
また、境界領域10dbのアノード層101”の形状を、トレンチ10aの底面を覆う形状とすることにより、境界領域10dbにおけるp型のアノード層101”とn-ドリフト層100との界面が拡大される。これにより、ターンオフに際しての、n-ドリフト層100からの正孔の排出効果を、さらに効果的に得ることが可能となる。
【0047】
なお、上述した各実施形態においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明を行うが、導電型は逆であってもよく、この場合、各実施形態の記載において、n型をp型に、p型をn型に、アノードをカソードに、電子を正孔に、正孔を電子に置き換えればよい。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,2…半導体装置
1tr…IGBT素子
1d…FWD素子
1db,1db”…境界領域FWD素子
10…半導体基板
10a…トレンチ
10bd…境界領域
10tr…トランジスタ領域
10d…ダイオード領域
11…絶縁膜
12…電極パターン
100…n-ドリフト層
101…p型ボディ層
101’,101”…アノード層(p型ボディ層)
102…n+拡散層(第1導電型の第1拡散層)
103,103’…n型バリア層
104…p型コレクタ層
106…カソード層(第1導電型の第2拡散層)
図1
図2
図3