(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151497
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】経営診断システム、及び経営診断プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0637 20230101AFI20241018BHJP
【FI】
G06Q10/0637
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064875
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】507145732
【氏名又は名称】株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜平
(72)【発明者】
【氏名】長尾 秀友
(72)【発明者】
【氏名】古後 崇
(72)【発明者】
【氏名】森部 諒
(72)【発明者】
【氏名】中田 圭介
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L049AA01
(57)【要約】
【課題】財務指標に基づいて具体的な経営課題を抽出することで的確な経営改善を行うことができる経営診断システム、及び経営診断プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】経営診断システム1は、財務データに基づいて診断対象となる対象企業の経営状態を診断するシステムであり、対象企業の経営状態に影響を与えている財務指標を構成する勘定科目を抽出する。さらに、抽出した勘定科目について、改善難易度と経営状態に与える深刻度の2軸の評価により、優先して改善すべき勘定科目を特定する。これにより、対象企業の経営状態に影響を与える財務指標を改善するための具体的な解決策を効率的に提案することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経営診断の対象となる対象企業の財務データに含まれる複数の財務指標毎に、対象企業の経営状態を示す経営状態指標を演算する経営状態指標演算部と、
前記財務指標の所定の期間における変化率に基づいて、前記財務指標を構成する勘定科目毎の改善難易度を示す所定の統計量を演算する改善難易度演算部と、
診断対象となる会計期間における前記経営状態指標の所定の基準値からの変動量に基づいて、前記勘定科目毎の対象企業の業績に対する深刻度を演算する深刻度演算部と、
前記改善難易度と前記深刻度とに基づいて対象企業の業績に影響を与える所定の前記勘定科目を抽出する勘定科目抽出部と、を備える
経営診断システム。
【請求項2】
前記経営状態指標演算部は、
前記財務指標の実数値を所定のルールに基づいて点数化し、対象企業が属する業種別に選択されたそれぞれの前記財務指標の点数を合計して得られた経営状態スコアを演算する経営状態スコア演算部と、
対象企業の属する業種別の前記経営状態スコアの偏差値である経営状態偏差値を演算する経営状態偏差値演算部と、を有する
請求項1に記載の経営診断システム。
【請求項3】
前記経営状態偏差値を所定の複数の評価項目に基づき、対象企業の属する業種別の平均偏差値との相対的な関係を画像表示する画像表示部を有する
請求項2に記載の経営診断システム。
【請求項4】
前記深刻度演算部は、
当期の会計期間と前期の会計期間とを含む第1会計期間において、前期の会計期間における前記経営状態指標を第1基準値とした場合に、診断対象となる当期の前記経営状態指標である当期経営状態指標と前記第1基準値とを比較して、前記当期経営状態指標の前記第1基準値に対する変動量である第1変動量を演算する第1変動量演算部、第1変動量に対する前記勘定科目の寄与度である第1寄与度を演算する第1寄与度演算部を含む第1深刻度演算部を有し、
前記勘定科目抽出部は、
前記改善難易度と前記第1深刻度とに基づいて、対象企業の短期的な業績に与える所定の勘定科目を抽出する
請求項1または請求項2に記載の経営診断システム。
【請求項5】
前記深刻度演算部は、
当期の会計期間を含み前記第1会計期間よりも所定に長い第2会計期間において、当期よりも過去の複数の会計年度における前記経営状態指標の平均値を第2基準値とした場合に、前記当期経営状態指標と前記第2基準値とを比較して、前記当期経営状態指標の第2基準値に対する変動量である第2変動量を演算する第2変動量演算部、前記第2変動量に対して前記勘定科目の寄与度である第2寄与度を演算する第2寄与度演算部を含む第2深刻度演算部を有し、
前記勘定科目抽出部は、
前記改善難易度と前記第2深刻度演算部で演算された前記第2深刻度とに基づいて、対象企業の長期的な業績に与える所定の勘定科目を抽出する
請求項4に記載の経営診断システム。
【請求項6】
前記勘定科目、前記勘定科目に対応する経営課題、及び前記経営課題を解決するための解決策がそれぞれ関連付けられた課題解決テーブルがデータベースに登録されており、
前記勘定科目抽出部で抽出された前記勘定科目に対応する解決策を前記課題解決テーブルから選択する解決策選択部を有する
請求項1または請求項2に記載の経営診断システム。
【請求項7】
前記統計量は、
対象企業が属する業種別の前期の会計期間に対する当期の会計期間の前記経営状態指標の変化率の分布に基づく尖度である
請求項1または請求項2に記載の経営診断システム。
【請求項8】
経営診断の対象となる対象企業の財務データに含まれる複数の財務指標毎に、対象企業の経営状態を示す経営状態指標を演算するステップと、
前記財務指標の所定の期間における変化率に基づいて、前記財務指標を構成する勘定科目毎の改善難易度を示す所定の統計量を演算するステップと、
診断対象となる会計期間における前記経営状態指標の所定の基準値からの変動量に基づいて、前記勘定科目毎の対象企業の業績に対する深刻度を演算するステップと、
前記改善難易度と前記深刻度とに基づいて対象企業の業績に影響を与える所定の前記勘定科目を抽出するステップと、をコンピュータに実行させるための
経営診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経営診断システム、及び経営診断プログラムに関する。詳しくは、財務指標に基づいて具体的な経営課題を抽出することで的確な経営改善を行うことができる経営診断システム、及び経営診断プログラムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、企業の経営を分析、及び調査をして、その企業が有する経営課題を明らかにする経営診断サービスが金融機関をはじめとするコンサルタント会社により提供されている。経営診断は、主にコンサルタント会社の担当者が、診断対象となる企業の経営者から財務指標をはじめとする経営情報を聞き取り、その聞き取った情報を分析・調査を行い、その企業が有する経営課題を明らかにするとともに、経営課題の解決のための戦略を立案することで、企業の成長や業績改善を支援するものとなっている。
【0003】
ところが、経営者からの聞き取りや、経営者への診断結果の報告は、コンサルタント会社の担当者と経営者との直接の打ち合わせによる人的作業のため、時間や人件費などを要していた。また、診断結果はコンサルタント会社の担当者による主観的な経営診断となる傾向があり、診断結果が担当者によって異なるという問題も生じる。
【0004】
そこで、より客観的に迅速な経営診断を行うための経営診断システムの開発が求められており、例えば特許文献1には、経営診断の対象となる企業の貸借対照表、或いは損益計算書に含まれる所定の財務指標を選択し、選択した各財務指標に対して所定の演算処理を実行して経営分析のための経営指標を取得し、該経営指標を所定の評価基準と比較することでランク付け評価を行い、診断対象となる企業がどの部分に経営課題を有するかを具体的に提示する経営診断システムが開示されている。
【0005】
係る特許文献1に開示の経営診断システムによれば、診断対象となる企業の経営課題の原因となる財務指標をランク付けし、企業がどの部分に経営上の問題を抱えているかを容易に把握できるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に示されている従来技術は、財務指標の相対データに基づいて経営診断を行うものであるため、財務指標のうち最も数値が悪い財務指標を把握することは容易であっても、その財務指標が現実的に改善可能なものであるか否か、或いはその財務指標が経営状態に与える深刻度についてまでは把握することはできないという課題がある。そのため、経営診断による評価結果をその後の経営戦略に有効に活用することができないという課題を有している。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、財務指標に基づいて具体的な経営課題を抽出することで的確な経営改善を行うことができる経営診断システム、及び経営診断プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の経営診断システムは、経営診断の対象となる対象企業の財務データに含まれる複数の財務指標毎に、対象企業の経営状態を示す経営状態指標を演算する経営状態指標演算部と、前記財務指標の所定の期間における変化率に基づいて、前記財務指標を構成する勘定科目毎の改善難易度を示す所定の統計量を演算する改善難易度演算部と、診断対象となる会計期間における前記経営状態指標の所定の基準値からの変動量に基づいて、前記勘定科目毎の対象企業の業績に対する深刻度を演算する深刻度演算部と、前記改善難易度と前記深刻度とに基づいて対象企業の業績に影響を与える所定の前記勘定科目を抽出する勘定科目抽出部とを備える。
【0010】
ここで、経営診断の対象となる対象企業の財務データに含まれる複数の財務指標毎に、対象企業の経営状態を示す経営状態指標を演算する経営状態指標演算部を備えることにより、対象企業の経営状態を経営状態指標として表すことで、経営状態に影響を与える財務指標を把握することができる。
【0011】
また、財務指標の所定の期間における変化率に基づいて、財務指標を構成する勘定科目毎の改善難易度を示す所定の統計量を演算する改善難易度演算部を備えることにより、対象企業の経営状態に影響を与えるそれぞれの財務指標の改善難易度(改善のし易さ)を把握することができる。
【0012】
また、診断対象となる会計期間における経営状態指標の所定の基準値からの変動量に基づいて、勘定科目毎の対象企業の業績に対する深刻度を演算する深刻度演算部を備えることにより、財務指標を構成する勘定科目のうち、何れの勘定科目が対象企業の経営状態に影響を与えているかを深刻度として把握することができる。
【0013】
また、改善難易度と深刻度とに基づいて対象企業の業績に影響を与える所定の勘定科目を抽出する勘定科目抽出部を備えることにより、前記した改善難易度と深刻度との2軸評価に基づいて、対象企業の業績に与える勘定科目のうち、改善難易度が低く(改善がし易く)、かつ深刻度の高い勘定科目を抽出することができる。これにより、抽出された勘定科目を改善するための具体的な経営戦略を容易に計画することができる。
【0014】
また、経営状態指標演算部は、財務指標の実数値を所定のルールに基づいて点数化し、対象企業が属する業種別に選択されたそれぞれの財務指標の点数を合計して得られた経営状態スコアを演算する経営状態スコア演算部を備えることにより、対象企業の財務指標を点数化することで、対象企業の経営状態を客観的に評価することができる。
【0015】
また、対象企業の属する業種別の経営状態スコアの偏差値である経営状態偏差値を演算する経営状態偏差値演算部を備えることで、前記した経営状態スコアに基づいて、対象企業が属する業種における対象企業の相対的な順位を把握することができる。
【0016】
また、経営状態偏差値を所定の複数の評価項目に基づき、対象企業の属する業種別の平均偏差値との相対的な関係を画像表示する画像表示部を有する場合には、経営状態を示す評価項目として健全性、安定性、収益性、効率性、流動性等の複数の指標を軸としたレーダーチャートや棒グラフ等の画像として表示することで、対象企業と対象企業のベンチマーク社との相対的な経営状態を対比させ、対象企業の経営状態を視覚的に把握することができる。
【0017】
また、深刻度演算部は、当期の会計期間と前期の会計期間とを含む第1会計期間において、前期の会計期間における経営状態指標を第1基準値とした場合に、診断対象となる当期の経営状態指標である当期経営状態指標と第1基準値とを比較して、当期経営状態指標の第1基準値に対する変動量である第1変動量を演算する第1変動量演算部、第1変動量に対する勘定科目の寄与度である第1寄与度を演算する第1寄与度演算部を含む第1深刻度演算部を有し、勘定科目抽出部は、改善難易度と第1深刻度とに基づいて、対象企業の短期的な業績に与える所定の勘定科目を抽出する場合には、前期から当期にかけての財務指標の変化、及び財務指標の変化に対する勘定科目の変化の寄与度に基づいて第1寄与度を演算することで、対象企業の勘定科目毎の短期的な深刻度を把握することができる。
【0018】
また、深刻度演算部は、当期の会計期間を含み第1会計期間よりも所定に長い第2会計期間において、当期よりも過去の複数の会計年度における経営状態指標の平均値を第2基準値とした場合に、当期経営状態指標と第2基準値とを比較して、当期経営状態指標の第2基準値に対する変動量である第2変動量を演算する第2変動量演算部、第2変動量に対して勘定科目の寄与度である第2寄与度を演算する第2寄与度演算部を含む第2深刻度演算部を有し、勘定科目抽出部は、改善難易度と第2深刻度演算部で演算された第2深刻度とに基づいて、対象企業の長期的な業績に与える所定の勘定科目を抽出する場合には、過去の複数の会計期間と対比した場合の当期の財務指標の変化、及び財務指標の変化に対する勘定科目の変化の寄与度に基づいて第2寄与度を演算することで、対象企業の勘定科目毎の長期的な深刻度を把握することができる。
【0019】
即ち、第1深刻度演算部と第2深刻度演算部により、対象企業の短期的、及び長期的なそれぞれの目線での業績に与える勘定科目を抽出することができる。従って、係る結果に基づいて対象企業の経営状態を改善させるために、複数の視点での経営戦略を計画することができる。
【0020】
また、勘定科目、勘定科目に対応する経営課題、及び経営課題を解決するための解決策がそれぞれ関連付けられた課題解決テーブルがデータベースに登録されており、勘定科目抽出部で抽出された勘定科目に対応する解決策を課題解決テーブルから選択する解決策選択部を有する場合には、抽出された勘定科目に紐付いた解決策を提案することができる。
【0021】
また、統計量は、対象企業が属する業種別の前期の会計期間に対する当期の会計期間の経営状態指標の変化率の分布に基づく尖度である場合には、尖度が高いほど勘定科目が変化しにくく改善難易度が高いことを示し、尖度が低いほど勘定科目が変化しやすく改善難易度が低いことを示すため、尖度に応じて容易に改善難易度を把握することができる。
【0022】
前記の目的を達成するために、本発明の経営診断プログラムは、経営診断の対象となる対象企業の財務データに含まれる複数の財務指標毎に、対象企業の経営状態を示す経営状態指標を演算するステップと、前記財務指標の所定の期間における変化率に基づいて、前記財務指標を構成する勘定科目毎の改善難易度を示す所定の統計量を演算するステップと、診断対象となる会計期間における前記経営状態指標の所定の基準値からの変動量に基づいて、前記勘定科目毎の対象企業の業績に対する深刻度を演算するステップと、前記改善難易度と前記深刻度とに基づいて対象企業の業績に影響を与える所定の前記勘定科目を抽出するステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。
【0023】
ここで、経営診断の対象となる対象企業の財務データに含まれる複数の財務指標毎に、対象企業の経営状態を示す経営状態指標を演算するステップを備えることにより、対象企業の経営状態を経営状態指標として表すことで、経営状態に影響を与える財務指標を把握することができる。
【0024】
また、財務指標の所定の期間における変化率に基づいて、財務指標を構成する勘定科目毎の改善難易度を示す所定の統計量を演算するステップを備えることにより、対象企業の経営状態に影響を与えるそれぞれの財務指標の改善難易度(改善のし易さ)を把握することができる。
【0025】
また、診断対象となる会計期間における経営状態指標の所定の基準値からの変動量に基づいて、勘定科目毎の対象企業の業績に対する深刻度を演算するステップを備えることにより、財務指標を構成する勘定科目のうち、何れの勘定科目が対象企業の経営状態に影響を与えているかを深刻度として把握することができる。
【0026】
また、改善難易度と深刻度とに基づいて対象企業の業績に影響を与える所定の勘定科目を抽出するステップを備えることにより、前記した改善難易度と深刻度との2軸評価に基づいて、対象企業の業績に与える勘定科目のうち、改善難易度が低く、かつ深刻度の高い勘定科目を抽出することができる。これにより、抽出された勘定科目を改善するための具体的な経営戦略を容易に計画することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る経営診断システム、及び経営診断プログラムは、財務指標に基づいて具体的な経営課題を抽出することで的確な経営改善を行うことができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る経営診断システムと各端末装置とがインターネット回線を介して接続された状態を示す図である。
【
図2】経営診断システムの内部構成を示すブロック図である。
【
図3】画像表示部で出力される図表の一例を示す図である。
【
図4】勘定科目抽出部における尖度と深刻度との2軸評価の例を示す図である。
【
図5】データベースに登録されている課題解決テーブルの一例を示す図である。
【
図6】経営診断プログラムの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、経営診断システム、及び経営診断プログラムに関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0030】
まず、本発明の実施形態に係る経営診断システム1を含むネットワーク構成全体の概略について
図1を用いて説明する。本発明の実施形態に係る経営診断システム1は、経営診断プログラムを動作させるためのコンピュータである。経営診断システム1は、経営診断を実施する企業(例えば銀行やコンサルタント会社であり、以下「運営会社」という。)に設置されたサーバーとすることができ、或いは経営診断プログラムがインストールされたレンタルサーバー(クラウドサーバ)とすることができる。
【0031】
経営診断システム1は、運営会社に設置された管理者端末装置2と、経営診断を受ける企業(以下、「対象企業」という。)に設置された利用者端末装置3とがインターネット回線4を介して互いに通信可能に接続されている。
【0032】
ここで、インターネット回線4に接続可能な端末装置としては、管理者端末装置2、利用者端末装置3に限定されるものではなく、対象企業に関連する関連企業の端末装置を接続してもよく、また経営診断システム1に接続できる端末装置を運営会社の管理者端末装置2のみに制限してもよい。
【0033】
また、必ずしも、経営診断システム1、管理者端末装置2、利用者端末装置3はインターネット回線4を介して互いに接続されている必要はなく、いかなる通信手段により接続されていてもよい。また、管理者端末装置2、利用者端末装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯端末、タブレット型端末等、通信機能を有する情報端末であれば特に限定されるものではない。
【0034】
以下、経営診断システム1の各構成について
図2に基づいて詳細に説明する。経営診断システム1は、各種データが記憶されているデータベース(DB)10、対象企業の経営状態を示す経営状態指標を演算する経営状態指標演算部20、各企業の財務諸表に記載された各財務データ(財務指標)を構成する勘定科目の統計量を演算する改善難易度演算部30、対象企業の業績に対する深刻度を演算する深刻度演算部40、及び対象企業の業績に影響を与える勘定科目を抽出する勘定科目抽出部50から主に構成されている。これら主な構成をはじめとして、経営診断システム1の詳細な構成について、以下説明する。
【0035】
[データベース]
データベース10は、OSや、経営診断プログラム等のアプリケーションソフト、設定データなどが格納される不揮発性メモリである。データベース10には、対象企業をはじめとする本経営診断システム1を利用する各企業の情報(例えば業種、企業規模、各会計期間の財務データ、経営診断結果)や対象企業に対する診断結果に応じて提供されるテーブル形式の課題解決策(課題解決テーブル)等の各種データが格納されている。
【0036】
そしてデータベース10に登録されてる各企業の登録情報については、企業からの情報提供に基づいて常時最新の状態にアップデートされる。また、課題解決テーブルについても経済環境等を踏まえ、運営会社の担当者(管理者)により、その時点で最も有効と思われる解決策にアップデートされる。さらに新規で経営診断システム1のサービスを希望する企業からの申請により、新規企業のデータがその都度、管理者により追加される。
【0037】
[経営状態指標演算部]
経営状態指標演算部20は、対象企業の財務指標に基づいて、対象企業の経営状態を数値化するための演算機能を有しており、経営状態スコア演算部21、及び経営状態偏差値演算部22から構成されている。
【0038】
経営状態スコア演算部21は、対象企業の財務データに含まれる各財務指標について実数値を算出し、算出した実数値を、例えば1~4の4段階評価した点数基準を予め作成しておき、この点数基準に基づいて対象企業の各財務指標に点数を付与する。この経営状態スコアの算出の基準となる財務指標については、業種別(サービス業、飲食業、建設業、製造業、不動産業、卸売業 等)に20前後の適当な財務指標が選択される。そして、選択された財務指標に対して付与された点数の合計が対象企業の経営状態スコアとなる。
【0039】
ここで、必ずしも、経営状態スコアの算出の基準となる財務指標については、業種別に異なる財務指標が選択される必要はなく、業種を問わず共通の財務指標に基づいて経営状態スコアを算出してもよい。但し、業種別に異なる財務指標を選択することで、業種別のビジネスモデルを考慮した経営状態スコアを演算することができる。例えば、製品在庫を有する製造業の場合は「棚卸資産回転期間」が重要な財務指標となるが、建設業の場合には工事の着工から引き渡しまでに時間を要するため「立替期間」が重要となる。このように、業種別に重視されるべき財務指標を適宜選択することで、対象企業の経営診断をより正確に行うことが可能となる。
【0040】
また、必ずしも、各財務指標についての実数値を1~4の4段階評価をしたうえで点数付与する必要はなく、評価段階は適宜調整することができるものとする。
【0041】
前記した経営状態スコアは、対象企業の経営全体の評価を数値化するものであるが、より詳細な経営視点による評価軸毎の経営状態スコアの演算も実行される。この演算においては、評価軸として、例えば「流動性」、「健全性」、「十分性」、「安定性」、「収益性」の5つの評価軸を定義し、各評価軸に紐付く3~6項目の財務指標に基づいて、前記した演算方法により、それぞれの評価軸に対応した経営状態スコアが演算される。
【0042】
なお、前記した5つの評価軸は例示であって、これに限定されるものではなく、さらに評価軸を細分化してもよく、或いは異なる評価軸を採用してもよい。
【0043】
経営状態偏差値演算部22は、経営状態スコア演算部21で演算した経営状態スコアについて、対象企業の属する業種別で区切った母集団データにおいて、対象企業の経営状態スコアの偏差値を演算する機能を有している。なお、経営状態スコアの偏差値の演算の基準となる母集団データについては、母数データが少ない場合には偏差値の信頼性が低下するため、経営診断システム1の利用対象外の企業の財務データも適宜取り込むことで、偏差値のデータとしての信頼性を高めることができる。
【0044】
また、極端に資本力の高い企業の財務データを母集団データに含めると、同じく偏差値の信頼性が低下するため、母集団データとして採用する企業の資本金額の上限を設定し(例えば資本金15億円以下の企業。)、設定した上限の資本金以下の企業を対象とした母集団データにおける偏差値を求めることで、偏差値の信頼性を高めることができる。
【0045】
また、偏差値については母集団データに含まれる企業全体における偏差値の他にも、経営状態スコアが上位10%以内に属する企業内での対象企業の偏差値、或いは経営状態スコアが上位50%以内に属する企業内での対象企業の偏差値のように、所定の基準で区切った母集団データでの偏差値を求めることもできる。このように、所定の基準で区切った母集団データにおける対象企業の偏差値を演算することで、ベンチマークとなる企業群における対象企業の順位を容易に把握することができる。
【0046】
さらに、前記した「流動性」、「健全性」、「十分性」、「安定性」、「収益性」の5つの評価軸に基づいて演算した経営状態スコアについても、それぞれの偏差値が演算される。
【0047】
[画像表示部]
画像表示部60は、経営状態指標演算部20で演算された指標に基づいて、前記した「流動性」、「健全性」、「十分性」、「安定性」、「収益性」の5つの評価軸の視点での対象企業の指標と業種内における平均値とを重ね合わせた相対関係を図表で出力する機能を有している。
【0048】
図3は画像表示部60で表示された図表である。
図3は、前記した5つの評価軸の視点でみた対象企業の偏差値と各評価軸における対象企業の属する業種別の平均偏差値とを重ね合わ、レーダーチャートとして出力した評価結果を示す。このように5つの評価軸に基づいて、対象企業の偏差値と業種内における平均偏差値とを重ね合わせて表示することで、視覚的に対象企業の弱点や強みを容易に把握することができる。
【0049】
ここで、必ずしも、画像表示部60で表示される評価結果として、
図3に示すレーダーチャートである必要はない。例えば折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフ、或いはこれらの組み合わせ等、評価結果を可視化、或いは比較するためのグラフであれば特にその種類が限定されるものではない。
【0050】
また、画像表示部60で表示する比較データとしては、対象企業の属する業種別の平均偏差値である必要はなく、対象企業が属する業種において上位10%以内に属する企業の平均偏差値、或いは上位50%以内に属する企業の平均偏差値等、比較データについても適宜変更することができる。
【0051】
[改善難易度演算部]
改善難易度演算部30は、データベース10に登録されている各企業の財務指標について、当期の会計期間における財務指標の前期比での変化率(財務指標変化率)について、各財務指標毎のばらつき程度を統計的に評価する機能を有している。即ち、財務指標変化率が、どの程度の範囲にわたって分布しているかを財務指標毎に評価する。
【0052】
本発明の実施形態では、具体的なピーク形状によらず、分布幅の違いを敏感に反映しやすい統計指標として尖度を用いる。尖度が大きいほど、財務指標の変化率の分布が鋭いピークをなしており、データのばららつきが小さいとみなすことができるため、その財務指標は変化し難い、即ち、その財務指標を構成する勘定科目は改善難易度が高いということになる。
【0053】
一方、尖度が小さいほど、財務指標の変化率の分布が平均付近から散らばるように分布しており、データのばらつきが大きいとみなすことができるため、その財務指標は変化し易い、即ち、その財務指標を構成する勘定科目は改善難易度が低いということになる。
【0054】
なお、データのサンプルサイズをn、各データxiの平均値をxa、標準偏差をsとした場合に、尖度(k)は、以下の式により求めることができる。
【数1】
【0055】
ここで、必ずしも、統計指標として尖度を用いる必要はない。財務指標変化率のばらつきの幅を定量的に示すものであれば、どのような統計指標を用いてもよく、尖度の他にも標準偏差、歪度、変動係数等を例示することができる。
【0056】
以上のように、財務指標の変化率に関する統計指標としての尖度を用いることで、財務指標を構成する勘定科目の改善難易度を容易に把握することができるため、評価結果に基づいて、企業業績を高めるために何れの勘定科目を改善すれば効果が大きくなるかを把握することができる。
【0057】
[深刻度演算部]
深刻度演算部40は、診断対象となる会計期間(当期)における財務指標のうち、過去の所定の期間における財務指標からの変化率に基づいて、対象企業の業績に影響を与えている勘定科目毎の深刻度(業績に与える影響度)を演算する機能を有している。そして深刻度演算部40は、対象企業の短期的な業績の深刻度を演算する第1深刻度演算部41と、長期的な業績の深刻度を演算する第2深刻度演算部42とから構成されている。
【0058】
[第1深刻度演算部]
第1深刻度演算部41は、直近1年(当期と前期)における各財務指標の変動量である第1変動量を演算する第1変動量演算部411、及び第1変動量に対する各勘定科目の寄与度(影響力)である第1寄与度を演算する第1寄与度演算部412を有し、第1変動量と第1寄与度を乗算することで、各勘定科目の直近の課題としての深刻度を演算する機能を有している。具体的には、例えば財務指標として「売上高金利負担率」と「売掛金回転期間」を例として、以下、第1深刻度の演算例を説明する。
【0059】
ここでは第1変動量として、経営状態指標演算部20で演算した偏差値を採用する。なお、必ずしも、当期と前期との偏差値差分を第1変動量として定義する必要はなく、対象企業の経営状態を示す所定のパラメータから適宜選択することができる。
【0060】
前提として、対象企業の「売上高金利負担率」について、経営状態指標演算部20で演算した前期の偏差値D1が「50」、当期の偏差値D2が「41」と仮定する。また、対象企業の「売掛金回転期間」について、経営状態指標演算部20で演算した前期の偏差値D3が「50」、当期の偏差値D4が「44」と仮定する。
【0061】
このとき、「売上高金利負担率」の当期と前期との変動量である第1変動量、即ち偏差値差分(D2-D1)は「-9」となる。また、「売掛金回転期間」の当期と前期との変動量である第1変動量、即ち偏差値差分(D4-D3)は「-6」となる。
【0062】
次に第1寄与度演算部412による第1寄与度の演算について説明する。第1寄与度演算部412による演算では、各財務指標を構成する各勘定科目の寄与率を演算する。まず、「売上高金利負担率」と「売掛金回転期間」とは勘定科目により以下の式で求められる。
(売上高金利負担率)=(支払利息・割引料)/(売上高)
(売掛金回転期間)=(売掛金)/((売上高)/(決算月数))
【0063】
そして、「売上高金利負担率」における各勘定科目の第1寄与度を演算する場合には、勘定科目のうち「売上高」を固定して、「支払利息・割引料」の値を変数とした結果、前記した第1変動量が起こったと仮定した場合の「支払利息・割引料」の変化量を100%として、実際の勘定科目の変化量を演算する。さらに、勘定科目のうち「支払利息・割引料」を固定して、「売上高」の値を変数とした結果、前記した第1変動量が起こったと仮定した場合の「売上高」の変化量を100%として、実際の勘定科目の変化量を演算する。
【0064】
また、「売掛金回転期間」における各勘定科目の第1寄与度を演算する場合についても同様で、勘定科目のうち「売上高」を固定して、「売掛金」の値を変数とした結果、前記した第1変動量が起こったと仮定した場合の「売掛金」の変化量を100%として、実際の勘定科目の変化量を演算する。さらに、勘定科目のうち「売掛金」を固定して、「売上高」の値を変数とした結果、前記した第1変動量が起こったと仮定した場合の「売上高」の変化量を100%として、実際の勘定科目の変化量を演算する。
【0065】
以上の演算により、「売上高金利負担率」の各勘定科目の第1寄与度として、「支払利息・割引料」が「40%」、「売上高」が「60%」となった場合には、それらを前記した第1変動量に乗算して、勘定科目毎の第1深刻度を演算する。
(支払利息・割引料)=第1変動量(-9)×第1寄与度(40%)=-3.6
(売上高)=第1変動量(-9)×第1寄与度(60%)=-5.4
【0066】
以上より、財務指標「売上高金利負担率」を構成する各勘定科目の第1寄与度が演算される。具体的には、「-3.6」が勘定科目「支払利息・割引料」の第1深刻度であり、「-5.4」が勘定科目「売上高」の第1深刻度となる。
【0067】
また、「売掛金回転期間」の各勘定科目の第1寄与度として、「売掛金」が「10%」、「売上高」が「90%」となった場合には、それらを前記した第1変動量に乗算して、勘定科目毎の第1変動量を演算する。
(売掛金)=第1変動量(-6)×第1寄与度(10%)=-0.6
(売上高)=第1変動量(-8)×第1寄与度(90%)=-5.4
【0068】
以上より、財務指標「売掛金回転期間」を構成する各勘定科目の第1寄与度が演算される。具体的には、「-0.6」が勘定科目「売掛金」の第1深刻度であり、「-5.4」が勘定科目「売上高」の第1深刻度となる。このように、第1変動量と第1寄与度とを用いることで、財務指標を構成する各勘定科目が対象企業の短期的な経営状態に与える深刻度を把握することができる。
【0069】
このように、第1変動量に基づいて、財務指標が対象企業の短期的な経営状態に与える影響を把握することができ、さらに第1変動量と第1寄与度に基づいて、各財務指標を構成する各勘定科目が対象企業の短期的な経営状態に与える影響を把握することができる。
【0070】
[第2深刻度演算部]
第2深刻度演算部42は、当期と過去数年間分(例えば5年分)の財務指標の平均値の財務指標の変動量である第2変動量を演算する第2変動量演算部421、及び第2変動量に対する各勘定科目の寄与度(影響力)である第2寄与度を演算する第2寄与度演算部422を有し、第2変動量と第2寄与度を乗算することで、各勘定科目の中長期の課題としての深刻度を演算する機能を有している。
【0071】
即ち、第1深刻度演算部41における第1変動量の演算においては、当期と対比すべき指標として前期における財務指標の偏差値を基準値としたのに対して、第2深刻度演算部42における第2変動量の演算では、過去5年分の財務指標の偏差値の平均値を基準値として採用する点が異なり、その他の演算フローは第1深刻度演算部41と同一である。
【0072】
なお、第1深刻度演算部41は当期と前期との比較、第2深刻度演算部42は当期と過去5年分の財務指標の平均値との比較に基づいて深刻度を演算しているが、短期的な視点と長期的な視点のそれぞれの深刻度が演算できればよく、評価期間は必ずしも上記の期間に限定されるものではない。
【0073】
例えば、第1深刻度演算部41では当期の指標と過去2年分の会計期間における指標の平均値とを比較し、第2深刻度演算部42では当期の指標と過去10年分の会計期間における指標の平均値とを比較するようにしてもよい。さらに、短期と長期の2つの視点での評価に加え、その中間の中期視点での深刻度を演算してもよい。
【0074】
[勘定科目抽出部]
勘定科目抽出部50は、前記した改善難易度演算部30で演算した改善難易度と、深刻度演算部40で演算した深刻度とに基づいて対象企業の業績に影響を与える所定の勘定科目を抽出する機能を有している。
【0075】
具体的には、
図4に示すように、縦軸に改善難易度(数値が大きいほど改善難易度が低い)、横軸に深刻度(マイナス値が大きいほど深刻度が大きい)をそれぞれ定義し、改善難易度と深刻度との2軸評価により、最も改善が優先される財務指標と勘定科目が抽出される。なお、ここでの改善難易度は、前記した統計指標である尖度の逆数である。
【0076】
図4の例では、最も改善難易度が低く(数値が大きく)かつ深刻度(ここでは第1深刻度)が高い(マイナス値が大きい)指標として、財務指標「売掛金回転期間」のうち勘定科目「売上高」が抽出される。同じく第2深刻度についても改善難易度との2軸評価により、長期的な視点で改善すべき勘定科目が抽出される。
【0077】
[課題解決選択部]
課題解決選択部70は、勘定科目抽出部50で抽出された勘定科目に対応する課題解決策を選択し、ユーザーに対して提示する機能を有している。具体的には、データベース10に、
図5に示すような課題解決テーブル5が記憶されている。
【0078】
課題解決テーブル5は、財務指標毎(
図5の例では財務指標「売掛金回転期間」の課題解決テーブルを示す。)に左側から財務指標を構成する勘定科目、勘定科目に対応する経営課題、経営課題を解決するためのソリューション、業種別フラグの項目からなるテーブル形式データであり、管理者により追加、変更、或いは削除され常に最新の状態にアップデートされる。
【0079】
業種別フラグは、「1」は表示、「0」は非表示として、経営課題に対する各ソリューションの提供有無を業種別に記憶させれている。そして、対象企業の属する業種に応じて最適なソリューションを提供し、業種によっては参考とならないソリューションは提供されない仕組みとなっている。
【0080】
そして、勘定科目抽出部50で対象企業の改善すべき財務指標の勘定科目が抽出されると、課題解決選択部70において、抽出された財務指標の勘定科目に対応するテーブルを参照して、対象企業に対して課題解決のための最適なソリューションが選択される。
【0081】
なお、本発明の実施形態の課題解決テーブルでは、財務指標とは無関係に勘定科目別に異なるソリューションが提供される。即ち、財務指標として「売上高金利負担率」と「売掛金回転期間」は何れも計算式に勘定科目として「売上高」を有する。そして、勘定科目抽出部50で、財務指標「売上高金利負担率」の勘定科目「売上高」が抽出された場合と、財務指標「売掛金回転期間」の勘定科目「売上高」が抽出された場合とでは、同じ勘定科目「売上高」が抽出されるため、提供されるソリューションも同一となるが、これは一例であり、財務指標と勘定科目を紐付けて異なるソリューションを提供するようにしてもよい。
【0082】
課題解決のためのソリューションが選択されると、その選択結果が管理者端末装置2、或いは利用者端末装置3に表示され、その結果をもとに対象企業と運営会社の担当者とが、具体的な課題解決のための実行手段を計画する。
【0083】
以上が、本発明の実施形態に係る経営診断システム1の構成である。次に、経営診断システム1で実行される経営診断プログラムについて
図6のフロー図に基づいて説明する。
【0084】
まず、経営状態指標演算部20において、対象企業の経営状態を数値化するための経営状態指標が演算される(STEP1)。経営状態指標は、前記した通り、経営状態スコア演算部21により対象企業の経営状態スコアが演算され、経営状態スコアに基づいて経営状態偏差値演算部22により対象企業の属する業種内での偏差値が演算される。
【0085】
次に、改善難易度演算部30において、対象企業の当期の会計期間における財務指標の前期比での変化率である財務指標変化率の財務指標毎の統計上のばらつきを示す尖度に基づいて改善難易度が演算される(STEP2)。
【0086】
次に、深刻度演算部40において、対象企業の経営状態に影響をあたる財務指標を構成する勘定科目について、短期的な視点での深刻度である第1深刻度、長期的な視点での深刻度である第2深刻度がそれぞれ演算される(STEP3)。
【0087】
STEP2、及びSTEP3で演算された改善難易度と深刻度の2軸評価に基づいて、最も優先して改善すべき財務指標における勘定科目が抽出される(STEP4)。
【0088】
そして、STEP4で抽出された勘定科目の数値を改善するためのソリューションが課題解決テーブルから選択され(STEP5)、選択結果が管理者端末装置2、利用者端末装置3に出力される。
【0089】
以上の演算を繰り返すことによって、対象企業の経営状態に影響を与える財務指標を特定し、特定した財務指標を改善するための解決策を効率的に提案することができる。
【0090】
以上、本発明に係る経営診断システム、及び経営診断プログラムは、財務指標に基づいて具体的な経営課題を抽出することで的確な経営改善を行うことができるものとなっている。
【符号の説明】
【0091】
1 経営診断システム
10 データベース
20 経営状態指標演算部
21 経営状態スコア演算部
22 経営状態偏差値演算部
30 改善難易度演算部
40 深刻度演算部
41 第1深刻度演算部
411 第1変動量演算部
412 第1寄与度演算部
42 第2深刻度演算部
421 第2変動量演算部
422 第2寄与度演算部
50 勘定科目抽出部
60 画像表示部
2 管理者端末装置
3 利用者端末装置
4 インターネット回線
5 課題解決テーブル