IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

特開2024-151509情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図6
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図7
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図8
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図9
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図10
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図11
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151509
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20241018BHJP
   G06Q 10/0631 20230101ALI20241018BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20241018BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q10/0631
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064890
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】山下 蓮
【テーマコード(参考)】
3C100
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA05
3C100AA14
3C100AA16
3C100BB02
3C100BB03
3C100BB12
5L010AA06
5L049AA06
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】より効率的に投入計画を得る。
【解決手段】情報処理装置は処理部を備える。処理部は、複数の種類の製品を製造する製造ラインの第1投入計画を用いて、製造ラインによる製造のシミュレーションを実行する。処理部は、シミュレーションの結果を用いて、複数の製品ごとの生産性を表す評価値の算出処理を実行する。処理部は、評価値が予め定められた条件を満たさない場合、変更後の投入計画である第2投入計画と、第1投入計画との差分が規定範囲内となるように、第1投入計画を変更して第2投入計画を生成する第1変更処理を実行する。処理部は、評価値が条件を満たす場合、第1変更処理と異なる方法により、第1投入計画を変更して第2投入計画を生成する第2変更処理を実行する。処理部は、シミュレーション、算出処理、第1変更処理、および、第2変更処理を繰り返し実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類の製品を製造する製造ラインの第1投入計画を用いて、前記製造ラインによる製造のシミュレーションを実行し、
前記シミュレーションの結果を用いて、複数の前記製品ごとの生産性を表す評価値の算出処理を実行し、
前記評価値が予め定められた条件を満たさない場合、変更後の投入計画である第2投入計画と、前記第1投入計画との差分が規定範囲内となるように、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第1変更処理を実行し、
前記評価値が前記条件を満たす場合、前記第1変更処理と異なる方法により、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第2変更処理を実行し、
前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行する、
処理部
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、
複数の前記製品ごとの前記評価値を用いて、複数の前記製品を、複数のグループのいずれかにそれぞれ分類し、
複数の前記グループに対して相互に異なる変更方法により、前記グループに分類された前記製品の前記第1投入計画を変更する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、複数の前記製品ごとの前記評価値と、1つ以上の第1閾値と、の比較結果に基づいて、複数の前記製品を複数の前記グループのいずれかにそれぞれ分類する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記規定範囲は、複数の前記製品の総数に基づいて決定される、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記第2投入計画を表示装置に表示する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記条件は、前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行したときの、前記評価値の統計量が第2閾値より小さくなる回数が規定数以上となることを示す条件である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1投入計画および前記第2投入計画は、複数の前記製品を前記製造ラインに投入する順序、投入数、および、投入するタイミングのうち少なくとも1つを表す、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1投入計画および前記第2投入計画は、複数の前記製品を前記製造ラインに投入する順序を表し、
前記第2変更処理は、前記第1投入計画が示す順序をランダムに変更する処理である、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記処理部は、
前記シミュレーションを実行するシミュレーション部と、
前記算出処理を実行する算出部と、
前記第1変更処理を実行する第1変更部と、
前記第2変更処理を実行する第2変更部と、
前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行する制御部と、
を備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置で実行される情報処理方法であって、
複数の種類の製品を製造する製造ラインの第1投入計画を用いて、前記製造ラインによる製造のシミュレーションを実行し、
前記シミュレーションの結果を用いて、複数の前記製品ごとの生産性を表す評価値の算出処理を実行し、
前記評価値が予め定められた条件を満たさない場合、変更後の投入計画である第2投入計画と、前記第1投入計画との差分が規定範囲内となるように、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第1変更処理を実行し、
前記評価値が前記条件を満たす場合、前記第1変更処理と異なる方法により、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第2変更処理を実行し、
前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行する、
ことを含む情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
複数の種類の製品を製造する製造ラインの第1投入計画を用いて、前記製造ラインによる製造のシミュレーションを実行するステップと、
前記シミュレーションの結果を用いて、複数の前記製品ごとの生産性を表す評価値の算出処理を実行するステップと、
前記評価値が予め定められた条件を満たさない場合、変更後の投入計画である第2投入計画と、前記第1投入計画との差分が規定範囲内となるように、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第1変更処理を実行するステップと、
前記評価値が前記条件を満たす場合、前記第1変更処理と異なる方法により、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第2変更処理を実行するステップと、
前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品を製造する工場における装置の改良および歩留まりの改善などを検討するため、シミュレーションモデルを用いて製造ライン(生産ライン)を設計する技術が提案されている。シミュレーションモデルを用いることにより、例えば、多品種製造ラインの生産性を把握することができる。多品種製造ラインは、製造リードタイムが異なる複数の品種(種類)の製品を製造することができる製造ラインである。
【0003】
シミュレーションモデルは、例えば、複数の品種の製品を投入する順序を表す投入計画を入力し、入力した投入計画に従って製造した場合の生産性を評価するために用いる出力結果を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-077081号公報
【特許文献2】国際公開第2017/187517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製品数が増加すると、複数の品種の製品を投入する順序の組み合わせの個数が増加する。このため、例えばシミュレーションモデルに入力する投入計画の個数が増加し、適切な投入計画を得るための処理の負荷が増大する可能性がある。
【0006】
本発明は、より効率的に投入計画を得ることができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の情報処理装置は、処理部を備える。処理部は、複数の種類の製品を製造する製造ラインの第1投入計画を用いて、製造ラインによる製造のシミュレーションを実行する。処理部は、シミュレーションの結果を用いて、複数の製品ごとの生産性を表す評価値の算出処理を実行する。処理部は、評価値が予め定められた条件を満たさない場合、変更後の投入計画である第2投入計画と、第1投入計画との差分が規定範囲内となるように、第1投入計画を変更して第2投入計画を生成する第1変更処理を実行する。処理部は、評価値が条件を満たす場合、第1変更処理と異なる方法により、第1投入計画を変更して第2投入計画を生成する第2変更処理を実行する。処理部は、シミュレーション、算出処理、第1変更処理、および、第2変更処理を繰り返し実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の情報処理装置のブロック図。
図2】投入計画の一例を示す図。
図3】出力結果の一例を示す図。
図4】評価値の一例を示す図。
図5】記憶部に記憶される記憶データの一例を示す図。
図6】分類結果の例を示す図。
図7】変更した投入計画の例を示す図。
図8】統合した投入計画を順序でソートした結果の例を示す図。
図9】順序を振り直した後の投入計画の例を示す図。
図10】投入計画の順序をランダムに変更した例を示す図。
図11】実施形態における投入計画生成処理のフローチャート。
図12】実施形態の情報処理装置のハードウェア構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる情報処理装置の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0010】
以下では、少なくとも1つの設備を用いて複数の品種(種類)の製品を製造する多品種製造ラインの投入計画を求める場合を例に説明する。投入計画は、例えば複数の品種の製品を製造ラインに投入する順序を含む。適用可能な製造ライン(システム、装置)および投入計画は、上記に限られない。多品種製造ライン以外のどのような製造ライン、および、当該製造ラインに投入する製品の計画を示すどのような投入計画であってもよい。例えば、ある製品P_1について、納入先等に応じた複数の仕様が定められる場合がある。このような場合、複数の仕様の製品P_1を、それぞれ複数の品種の製品と解釈することにより、本実施形態を適用できる。
【0011】
実施形態の情報処理装置は、複数の品種の製品に対応する生産性の評価値(指標)に基づき投入計画の微修正(第1変更処理の一例)を繰り返すとともに、微修正の繰り返しにより投入計画がループ構造になり同じ投入計画を評価することを回避するため、投入計画をランダムに変更(シャッフル)する(第2変更処理の一例)。これにより、適切な投入計画をより効率的に得ることが可能となる。
【0012】
また、実施形態の情報処理装置は、製品の生産性の評価値を用いて、各製品を複数のグループ(ランク、カテゴリ)に分類し、グループごとに異なる変更方法により投入計画を変更する。これにより、例えば、共通工程を組み合わせるように投入計画を作成する技術での課題の1つである特定の工程のボトルネックの発生を回避することが可能となる。
【0013】
図1は、実施形態の情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理装置100は、シミュレーション部101と、算出部102と、分類部103と、変更部104と、変更部105と、制御部106と、表示制御部111と、記憶部121と、表示部122と、を備えている。
【0014】
記憶部121は、情報処理装置100で用いられる各種情報を記憶する。例えば記憶部121は、シミュレーション部101によるシミュレーションの結果、および、算出部102により算出された各製品の評価値などを記憶する。
【0015】
記憶部121は、フラッシュメモリ、メモリカード、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、および、光ディスクなどの一般的に利用されているあらゆる記憶媒体により構成することができる。
【0016】
表示部122は、情報処理装置100で用いられる各種情報を表示するための表示装置であり、例えば、液晶ディスプレイなどにより実現される。
【0017】
シミュレーション部101は、例えばシミュレーションモデルを用いて、製造ラインによる製造のシミュレーションを実行する。例えばシミュレーション部101は、製造ラインの投入計画(第1投入計画)を入力する。投入計画は、例えば、複数の品種の製品を製造ラインに投入する順序を含む。
【0018】
図2は、投入計画の一例を示す図である。図2に示すように、投入計画は、順序、製品、および、投入数を含む。順序は、例えば製品を投入する順序を示す数値である。製品は、製品の品種を識別する情報であり、例えば、製品名および識別子などである。図2では、51種類の製品を投入する投入計画の例が示されているが、製品数(製品の品種の個数)はこれに限られない。投入数は、製造ラインに投入される個数を表す。
【0019】
最初に入力する投入計画は、どのように作成されてもよいが、例えば、ユーザの知見に基づき作成された投入計画、および、ランダムな順序となるように作成された投入計画である。
【0020】
図1に戻り、シミュレーション部101は、入力された投入計画で示された順序で各製品を製造するための各工程(内部工程)を模擬するシミュレーションを実行し、シミュレーションの結果(出力結果)を出力する。出力結果は、例えば、複数の品種の製品ごとの製造が完了する時刻(完了時刻)、および、完成した製品の個数である完成数を含む。
【0021】
図3は、出力結果の一例を示す図である。図3に示すように、出力結果は、製品ごとの完了時刻および完成数を含む。完成数は、例えば図2に示すような投入計画に従ったシミュレーション期間中に内部工程で処理されて、シミュレーション期間中に完成に至った個数に相当する。完成数は、投入数以上となってもよい。完了時刻の単位は、図3に示す例に限られず、例えばミリ秒単位で表されてもよい。出力結果に出力される順序は、投入計画が示す順序と一致しなくてもよい。例えば、内部工程の着工ルールに従った順序で製品が出力されてもよい。
【0022】
図1に戻り、算出部102は、シミュレーションの出力結果を用いて、複数の品種の製品ごとの評価値の算出処理を実行する。評価値は、製品ごとの生産性を表す指標であればどのような指標であってもよいが、例えば、完成数、完了時刻、納期までの日数、および、投入数に対する完成数の割合を示す充足率である。
【0023】
図4は、評価値の一例を示す図である。図4では、製品ごとの完成数が、評価値として算出される例が示されている。製品ごとの完成数は、製品ごとおよび完了時刻ごとの完成数を集計することにより得られる。例えば1番目の製品(製品P_1)は、50個投入したところ、シミュレーション期間中に評価値が30となったことを表す。上記のように完成数は投入数以上となってもよいため、評価値が投入数以上となってもよい。
【0024】
なお、記憶部121は、例えば、シミュレーションのために入力する投入計画と、算出部102から出力される製品ごとの評価値とを、投入計画の順序(順序が昇順)で記憶する。図5は、このようにして記憶部121に記憶される記憶データの一例を示す図である。記憶部121は、さらに、シミュレーションの実行回数を記憶してもよい。
【0025】
図1に戻り、分類部103は、複数の品種の製品ごとの評価値を用いて、複数の品種の製品を、複数のグループ(ランク)のいずれかにそれぞれ分類(ランク分け)する。分類するグループの個数(グループ数)は2つでもよいし、3つ以上であってもよい。分類方法はどのような方法であってもよいが、例えば、以下のような方法を用いることができる。
・複数の品種の製品ごとの評価値と、1つ以上の閾値(第1閾値)と、の比較結果に基づいて、複数の品種の製品を複数のグループのいずれかにそれぞれ分類する方法。
・教師なし学習による分類器(サポートベクトルマシン、K-means法など)を用いる方法。
・納期および需要数などについての優先度に基づいて分類する方法。
【0026】
図6は、閾値を用いて3つのグループに分類する場合の分類結果の例を示す図である。図6の例では、30および50の2つの閾値が分類に用いられ、複数の品種の製品が、評価値が50以上のグループG_1と、評価値が30以上50未満のグループG_2と、評価値が30未満のグループG_3と、に分けられる。分類したグループ内の各要素数(グループに分類される製品の個数)は、あらゆる値を取り得る。
【0027】
図1に戻り、変更部104は、製品ごとの評価値に基づいて投入計画を変更する。例えば変更部104は、評価値が条件C1を満たさない場合、評価値を用いて、変更前の投入計画PA(第1投入計画)と、変更後の投入計画PB(第2投入計画)と、の差分が規定範囲内となるように、投入計画PAを変更して投入計画PBを生成する変更処理(第1変更処理)を実行する。
【0028】
また変更部104は、複数のグループに対して相互に異なる変更方法により、グループに分類された製品の投入計画を変更する。
【0029】
図7は、グループごとに異なる変更方法により変更した投入計画の例を示す図である。図7では、グループG_1に含まれる各製品の順序がそれぞれ1ずつ早められ、グループG_2に含まれる各製品の順序がそれぞれ1ずつ遅らせられる。なお、グループG_3に含まれる各製品の順序は変更されない。このように、変更方法は、順序を変更しない方法を含んでもよい。各グループについての投入計画の変更方法(順序を早める、変更しない、順序を遅くするなど)は、どのように決定されてもよい。
【0030】
なお、順序が1の投入計画は、それ以上順序を早めることができないため、順序を早めるグループに分類されていたとしても順序を変更しなくてもよい。同様に、順序が最後尾の投入計画は、それ以上順序を遅くすることができないため、順序を遅らせるグループに分類されていたとしても順序を変更しなくてもよい。このような処理の結果、各グループの投入計画を変更した時点では、複数のグループに順序が一致する投入計画が含まれてもよい。
【0031】
条件C1は、評価値の算出が収束したことを表す条件と解釈することができる。評価値の算出が収束するとは、例えば微修正の繰り返しにより投入計画がループ構造になり同じ投入計画を評価することにより評価値の変動が小さくなることを表す。ループ構造とは、ある投入計画Plan_1を2回以上変更した後の投入計画が投入計画Plan_1に戻るような状況を意味する。
【0032】
条件C1は、例えば、シミュレーション部101によるシミュレーション、算出部102による評価値の算出処理、変更部104による変更処理(第1変更処理)、および、後述する変更部105による変更処理(第2変更処理)を繰り返し実行したときの、評価値の統計量が閾値(第2閾値)より小さくなる回数が規定数以上となることを示す条件である。統計量は、例えば、平均値、最大値、最小値、中央値、標準偏差、および、分散のいずれかである。
【0033】
判定に用いる回数は、例えば直近のN回である。Nおよび規定数は、例えば、全体の計算リソース(シミュレーションの実行回数の上限など)に対する割合(例えば1/10)により決定されてもよいし、固定値(例えば3回~10回)であってもよい。
【0034】
上記の条件C1は一例であり、これに限られない。条件C1は、評価値の算出が収束したこと、言い換えると、評価値の変動が小さくなったことを判定できる他の条件であってもよい。
【0035】
変更部104は、評価値の統計量が閾値より小さくなる回数が規定数未満である場合、すなわち、評価値が条件C1を満たさない場合(評価値の算出が収束していない場合)、変更処理を実行する。なお、評価値の統計量が閾値より小さくなる回数が規定数以上である場合、すなわち、評価値が条件C1を満たす場合(評価値の算出が収束している場合)、後述する変更部105による変更処理が実行される。
【0036】
規定範囲は、投入計画PBが投入計画PAと類似した計画となるように定められる。例えば規定範囲は、順序を変更する幅を表す。変更する幅は、固定値(例えば1)であってもよいし、製品の総数に対して予め定められた割合(例えば1/10)として決定されてもよい。製品の総数は、全グループに分類された製品の総数でもよいし、グループごとの分類された製品の総数でもよい。このように、規定範囲は、複数の品種の製品の総数に基づいて決定されてもよい。変更部104が規定範囲内で投入計画を変更することは、投入計画を微修正することに相当すると解釈することができる。
【0037】
また、変更部104は、グループ内のすべての製品の順序を変更してもよいし、グループ内の一部の製品のみ順序を変更してもよい。変更の対象とする一部の製品は、評価値に応じて選択されてもよいし、ランダムに選択されてもよい。また、変更部104は、グループ内の製品ごとに異なる幅で順序を変更してもよい。例えば変更部104は、あるグループに分類された製品のうち、評価値が閾値以上の製品に対して、評価値が閾値未満の製品より大きい幅で順序を変更してもよい。
【0038】
変更部104は、各グループに対して順序を変更した後、各グループの投入計画を統合(結合)する。統合方法はどのような方法であってもよいが、例えば複数のグループを、評価値が高い順に結合する方法を用いることができる。統合する順序はこれに限られない。変更部104は、さらに、統合した投入計画を、順序によりソート(並び替え)する。
【0039】
図8は、統合した投入計画を順序でソートした結果の例を示す図である。図8に示すように、複数のグループそれぞれで異なる方法で順序を変更することにより、同じ順序となる製品が発生する場合がある。図8では、製品P_4および製品P_3の順序がそれぞれ3となる例が示されている。このような場合、変更部104は、例えば、上から順番に順序を振り直してもよい。
【0040】
図9は、順序を振り直した後の投入計画の例を示す図である。図9の例では、製品P_3の順序が3から4に振り直される。
【0041】
図1に戻り、変更部105は、投入計画がループ構造となることを回避するための処理を実行する。上記のように、変更部104による変更処理(投入計画の微修正)を繰り返すと、変更される投入計画がループ構造となる場合がある。ループ構造の発生は、例えば条件C1により判定することができる。
【0042】
そこで、変更部105は、評価値が条件C1を満たす場合、変更部104による変更処理と異なる方法により、投入計画PAを変更して投入計画PBを生成する変更処理(第2変更処理)を実行する。変更部105による変更処理は、例えば、投入計画PAが示す順序をランダムに変更する処理(順序をシャッフルする処理)である。例えば変更部105は、乱数を用いたランダムサンプリングにより、順序をランダムに変更する。
【0043】
変更部105による変更処理は、上記に限られず、例えば、遺伝的アルゴリズムを利用した方法、および、ランダムに選択した一部の製品の順序を変更する方法などであってもよい。
【0044】
図10は、図2の投入計画の順序をランダムに変更した例を示す図である。変更部105は、変更後の投入計画の並び順になるように新たに順序を昇順に付け直して投入計画PBを生成する。
【0045】
これまでは投入計画を変更する方法として、投入順序を変更する例を説明したが、投入順序の代わりに、または、投入順序とともに他の要素を変更してもよい。他の要素は、例えば、投入数、および、投入するタイミング(時刻)である。投入するタイミングは、投入数をさらに分割した複数の個数を単位として定められてもよい。例えば、製品P_1の投入数が50の場合、50個の製品のうち、10個、20個、および、20個に分けた製品が相互に異なるタイミングで投入されてもよい。
【0046】
図1に戻り、制御部106は、シミュレーション部101によるシミュレーション、算出部102による評価値の算出処理、変更部104による変更処理(第1変更処理)、および、変更部105による変更処理(第2変更処理)の各処理を繰り返し実行する制御を行う。例えば制御部106は、終了の条件が満たされるまで、各処理を繰り返し、最適な評価値が得られる投入計画を求める。
【0047】
終了の条件はどのような条件でもよいが、例えば以下のような条件を用いることができる。
・各処理(シミュレーション)の実行回数が閾値を超える。
・シミュレーションを開始してからの経過時間が閾値を超える。
・評価値が閾値を上回る(または下回る)。
【0048】
制御部106は、上記の複数の条件のうち2つ以上を組み合わせた条件を用いてもよい。
【0049】
表示制御部111は、表示部122に対する情報の表示を制御する。例えば表示制御部111は、変更後の投入計画PBを表示部122に表示する。表示制御部111は、シミュレーションで得られた複数の投入計画PBのうち、評価値が他の投入計画より大きい(例えば、評価値が閾値以上である、評価値が最大である、など)投入計画PBを表示してもよい。表示制御部111は、変更前の投入計画PAと、変更後の投入計画PBとを、対比可能な態様で表示してよい。
【0050】
上記各部(シミュレーション部101、算出部102、分類部103、変更部104、制御部106、変更部105、および、表示制御部111)の少なくとも一部は、1つの処理部により実現されてもよい。上記各部は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のIC(Integrated Circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2つ以上を実現してもよい。
【0051】
また情報処理装置100は、物理的に1つの装置によって構成されてもよいし、物理的に複数の装置によって構成されてもよい。例えば情報処理装置100は、クラウド環境上で構築されてもよい。また、情報処理装置100内の各部を複数の装置に分散して備えてもよい。
【0052】
次に、実施形態の情報処理装置100による情報処理について説明する。図11は、実施形態における投入計画生成処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
シミュレーション部101は、投入計画PAを用いたシミュレーションを実行する(ステップS101)。例えばシミュレーション部101は、投入計画PAをシミュレーションモデルに入力してシミュレーションを実行する。
【0054】
算出部102は、シミュレーションの出力結果から評価値を算出する(ステップS102)。例えば算出部102は、出力結果に含まれる完了時刻を製品ごとにまとめ、評価値として算出する。評価値は、完成数、および、充足率でもよい。
【0055】
算出部102は、算出した評価値と、入力した投入計画PAとを記憶部121に記憶する(ステップS103)。上記の図5は、このときに記憶される記憶データの例である。
【0056】
変更部105は、評価値が条件C1を満たすか否かを判定する(ステップS104)。評価値が条件C1を満たす場合(ステップS104:Yes)、変更部105は、記憶された投入計画PAを変更(例えば順序をシャッフル)し、新たな投入計画PBとする(ステップS109)。
【0057】
評価値が条件C1を満たさない場合(ステップS104:No)、分類部103は、複数の品種の製品をそれぞれ複数のグループのいずれかに分類する(ステップS105)。
【0058】
変更部104は、分類された複数のグループごとに投入計画を変更する(ステップS106)。例えば図6に示すように3つのグループに分類された場合、変更部104は、3つのグループに含まれる製品の投入計画の順序それぞれを、1つ早める、1つ遅くする、変更しない、のように変更する。
【0059】
変更部104は、順序を変更した各グループの投入計画を統合する(ステップS107)。例えば変更部104は、順序を早めたグループ、順序を遅くしたグループ、および、順序を変更しなかったグループの順に、投入計画を結合する。変更部104は、結合後の投入計画に同じ順序の製品が含まれる場合、上から順に順序を振り直してもよい。
【0060】
変更部104は、統合した投入計画を、変更後の投入計画PBとして決定して出力する(ステップS108)。
【0061】
ステップS108およびステップS109の後、制御部106は、シミュレーションを終了するか否かを判定する(ステップS110)。例えば制御部106は、シミュレーションの実行回数が閾値を超えるなどの終了の条件が満たされるかを判定する。
【0062】
シミュレーションを終了しない場合(ステップS110:No)、ステップS101に戻り、処理が繰り返される。シミュレーションを終了する場合(ステップS110:Yes)、投入計画生成処理が終了する。
【0063】
このように実施形態では、投入計画の微修正を繰り返すことで直前の投入計画と類似した投入計画を評価することができる。また、条件を満たした場合に投入計画の変更を行うことで、同じ投入計画ばかり評価することを避け新たな投入計画の微修正を始めることができる。これにより、例えば製品数が増加することにより、順序の組み合わせの個数が増加するような場合であっても、より効率的にさまざまな組み合わせの順序を示す投入計画を評価し、より適切な投入計画を得ることができる。
【0064】
以上説明したとおり、実施形態によれば、より効率的に投入計画を得ることができる。
【0065】
次に、実施形態の情報処理装置のハードウェア構成について図12を用いて説明する。図12は、実施形態の情報処理装置のハードウェア構成例を示す説明図である。
【0066】
実施形態の情報処理装置は、CPU51などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)52やRAM53などの記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F54と、各部を接続するバス61を備えている。
【0067】
実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムは、ROM52等に予め組み込まれて提供される。
【0068】
実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるように構成してもよい。
【0069】
さらに、実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0070】
実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムは、コンピュータを上述した情報処理装置の各部として機能させうる。このコンピュータは、CPU51がコンピュータ読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0071】
実施形態の構成例について以下に記載する。
(構成例1)
複数の種類の製品を製造する製造ラインの第1投入計画を用いて、前記製造ラインによる製造のシミュレーションを実行し、
前記シミュレーションの結果を用いて、複数の前記製品ごとの生産性を表す評価値の算出処理を実行し、
前記評価値が予め定められた条件を満たさない場合、変更後の投入計画である第2投入計画と、前記第1投入計画との差分が規定範囲内となるように、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第1変更処理を実行し、
前記評価値が前記条件を満たす場合、前記第1変更処理と異なる方法により、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第2変更処理を実行し、
前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行する、
処理部
を備える情報処理装置。
(構成例2)
前記処理部は、
複数の前記製品ごとの前記評価値を用いて、複数の前記製品を、複数のグループのいずれかにそれぞれ分類し、
複数の前記グループに対して相互に異なる変更方法により、前記グループに分類された前記製品の前記第1投入計画を変更する、
構成例1に記載の情報処理装置。
(構成例3)
前記処理部は、複数の前記製品ごとの前記評価値と、1つ以上の第1閾値と、の比較結果に基づいて、複数の前記製品を複数の前記グループのいずれかにそれぞれ分類する、
構成例2に記載の情報処理装置。
(構成例4)
前記規定範囲は、複数の前記製品の総数に基づいて決定される、
構成例2に記載の情報処理装置。
(構成例5)
前記処理部は、前記第2投入計画を表示装置に表示する、
構成例1から4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例6)
前記条件は、前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行したときの、前記評価値の統計量が第2閾値より小さくなる回数が規定数以上となることを示す条件である、
構成例1から5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例7)
前記第1投入計画および前記第2投入計画は、複数の前記製品を前記製造ラインに投入する順序、投入数、および、投入するタイミングのうち少なくとも1つを表す、
構成例1から6のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例8)
前記第1投入計画および前記第2投入計画は、複数の前記製品を前記製造ラインに投入する順序を表し、
前記第2変更処理は、前記第1投入計画が示す順序をランダムに変更する処理である、
構成例7に記載の情報処理装置。
(構成例9)
前記処理部は、
前記シミュレーションを実行するシミュレーション部と、
前記算出処理を実行する算出部と、
前記第1変更処理を実行する第1変更部と、
前記第2変更処理を実行する第2変更部と、
前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行する制御部と、
を備える、
構成例1から8のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例10)
情報処理装置で実行される情報処理方法であって、
複数の種類の製品を製造する製造ラインの第1投入計画を用いて、前記製造ラインによる製造のシミュレーションを実行し、
前記シミュレーションの結果を用いて、複数の前記製品ごとの生産性を表す評価値の算出処理を実行し、
前記評価値が予め定められた条件を満たさない場合、変更後の投入計画である第2投入計画と、前記第1投入計画との差分が規定範囲内となるように、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第1変更処理を実行し、
前記評価値が前記条件を満たす場合、前記第1変更処理と異なる方法により、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第2変更処理を実行し、
前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行する、
ことを含む情報処理方法。
(構成例11)
コンピュータに、
複数の種類の製品を製造する製造ラインの第1投入計画を用いて、前記製造ラインによる製造のシミュレーションを実行するステップと、
前記シミュレーションの結果を用いて、複数の前記製品ごとの生産性を表す評価値の算出処理を実行するステップと、
前記評価値が予め定められた条件を満たさない場合、変更後の投入計画である第2投入計画と、前記第1投入計画との差分が規定範囲内となるように、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第1変更処理を実行するステップと、
前記評価値が前記条件を満たす場合、前記第1変更処理と異なる方法により、前記第1投入計画を変更して前記第2投入計画を生成する第2変更処理を実行するステップと、
前記シミュレーション、前記算出処理、前記第1変更処理、および、前記第2変更処理を繰り返し実行するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
100 情報処理装置
101 シミュレーション部
102 算出部
103 分類部
104 変更部
105 変更部
106 制御部
111 表示制御部
121 記憶部
122 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12