(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151510
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】医用情報処理システム、医用情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20241018BHJP
【FI】
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064891
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】オンライン診療の質を担保しつつ、診療に要する時間を低減させること。
【解決手段】実施形態の医用情報処理システムは、検査情報取得部と、通知部と、診断情報取得部と、送信部とを持つ。検査情報取得部は、オンライン経由で患者の疾患に関する検査結果を取得する。通知部は、取得された検査結果をユーザに通知する。診断情報取得部は、検査結果の通知を受けたユーザから、患者の疾患に関する診断情報を取得する。送信部は、取得された診断情報に基づいて、患者の疾患に関する医用物資の入手を許可する許可情報を、患者の患者端末装置に送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンライン経由で患者の疾患に関する検査結果を取得する検査情報取得部と、
取得された前記検査結果をユーザに通知する通知部と、
前記検査結果の通知を受けた前記ユーザから、前記患者の疾患に関する診断情報を取得する診断情報取得部と、
取得された前記診断情報に基づいて、前記患者の疾患に関する医用物資の入手を許可する許可情報を、前記患者の患者端末装置に送信する送信部と、
を備える、医用情報処理システム。
【請求項2】
前記医用物資は、前記患者により使用される検査装置と、前記疾患を治療するための治療薬との少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の医用情報処理システム。
【請求項3】
前記検査結果は、前記患者が患っている可能性のある複数の疾患の各々に対する検査結果を含み、
前記送信部は、前記許可情報として、前記複数の疾患の内、前記ユーザにより特定された1つの疾患に関する前記医用物資の入手を許可する情報を、前記患者端末装置に送信する、
請求項1に記載の医用情報処理システム。
【請求項4】
前記医用物資を取り出し不可能に格納した状態で前記患者に配送される格納部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用情報処理システム。
【請求項5】
前記送信部は、前記患者が所持する前記格納部に対して、前記許可情報として、前記格納部からの前記医用物資の取り出しを可能にするための情報を送信する、
請求項4記載の医用情報処理システム。
【請求項6】
前記送信部は、前記患者端末装置に対して、前記許可情報として、前記格納部からの前記医用物資の取り出しを可能にするための情報を送信する、
請求項4記載の医用情報処理システム。
【請求項7】
前記許可情報は、前記格納部からの前記医用物資の取り出しを可能にするためのパスコードを含む、
請求項6記載の医用情報処理システム。
【請求項8】
前記格納部は、前記患者により使用される検査装置を取り出し可能に格納し、前記疾患を治療するための治療薬を取り出し不可能に格納し、
前記送信部は、前記患者が所持する前記格納部または前記患者端末装置に対して、前記許可情報として、前記格納部からの前記治療薬の取り出しを可能にするための情報を送信する、
請求項4記載の医用情報処理システム。
【請求項9】
前記複数の疾患に対応する複数の医用物資を別々に且つ取り出し不可能に格納した状態で、前記患者に配送される格納部をさらに備える、
請求項3に記載の医用情報処理システム。
【請求項10】
前記患者により入手された前記医用物資を示す物資入手情報を取得する物資情報取得部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用情報処理システム。
【請求項11】
前記患者に対するオンライン問診により確認された症状と、検査、症状、および治療の関係性が定義された検査・治療オントロジーとに基づいて、前記患者に対して行う検査および治療の候補を推定する推定部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医用情報処理システム。
【請求項12】
前記推定部は、1回目のオンライン問診により確認された前記患者の症状および生体情報と、前記1回目のオンライン問診よりも後に実施される2回目のオンライン問診により確認された前記患者の症状および生体情報と、前記検査・治療オントロジーとに基づいて、前記患者の疾患を推定する、
請求項11に記載の医用情報処理システム。
【請求項13】
コンピュータが、
オンライン経由で患者の疾患に関する検査結果を取得し、
取得された前記検査結果をユーザに通知し、
前記検査結果の通知を受けた前記ユーザから、前記患者の疾患に関する診断情報を取得し、
取得された前記診断情報に基づいて、前記患者の疾患に関する医用物資の入手を許可する許可情報を、前記患者の患者端末装置に送信する、
医用情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータに、
オンライン経由で患者の疾患に関する検査結果を取得させ、
取得された前記検査結果をユーザに通知させ、
前記検査結果の通知を受けた前記ユーザから、前記患者の疾患に関する診断情報を取得させ、
取得された前記診断情報に基づいて、前記患者の疾患に関する医用物資の入手を許可する許可情報を、前記患者の患者端末装置に送信させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理システム、医用情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔医療、オンライン診療、仮想空間での診療といった医療が普及した時代においては、医師による診察および診断や患者の治療意思判断等のタスクはオンライン上で実施され、検査や投薬等の治療のみが実空間で行われるようになる。特に、患者との実空間での接触が困難となる感染症等の疾患については、医師と患者とが直接的に接触することなく、ほぼリモートで一連のタスクが完結することも想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のオンライン診療では、はじめにオンラインで診察(問診)が行われ、検査キットが患者の自宅等に配送され、患者が自ら検査キットを用いて検査を実施し、医師は検査結果に基づいて治療法を決定する。その後、決定された治療法に応じた治療薬が患者の自宅等に配送され、患者は、到着しだい治療薬を服薬する。このように、従来のオンライン診療の手順では、診察の開始から治療薬の服用までに時間のロスが多い。特に、発症から治療薬の服用までの時間に制約がある場合(例えば、発症から24時間以内に服用しないと効果がない治療薬の場合)、オンライン診療における時間のロスをできるだけ減らすことが望まれている。一方で、治療法の決定に際しては、医師は得られた情報を総合的に判断した上でその決定を慎重に行う必要がある。
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、オンライン診療の質を担保しつつ、診療に要する時間を低減させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用情報処理システムは、検査情報取得部と、通知部と、診断情報取得部と、送信部とを持つ。検査情報取得部は、オンライン経由で患者の疾患に関する検査結果を取得する。通知部は、取得された検査結果をユーザに通知する。診断情報取得部は、検査結果の通知を受けたユーザから、患者の疾患に関する診断情報を取得する。送信部は、取得された診断情報に基づいて、患者の疾患に関する医用物資の入手を許可する許可情報を、患者の患者端末装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る医用情報処理システムSの構成の一例を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係る医用情報処理システムSを用いたオンライン診療の処理の流れの一例を説明する図。
【
図3】第1の実施形態に係る医用物資を格納する格納部STの一例を示す図。
【
図4】第1の実施形態に係る医用情報処理装置1の構成の一例を示すブロック図。
【
図5】第1の実施形態に係る検査・治療オントロジーの内容の一例を示す図。
【
図6】第1の実施形態に係る医用情報処理装置1の処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】第2の実施形態に係る検査・治療オントロジーの内容の一例を示す図。
【
図8】第2の実施形態に係る医用情報処理装置1の処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら、実施形態の医用情報処理システム、医用情報処理方法、及びプログラムについて説明する。実施形態の医用情報処理システムによれば、オンライン診療の質(確実性、正確性)を担保しつつ、診療に要する時間を低減させることができる。オンライン診療には、インターネット網等のネットワークを介した端末間でのデータの送受信により行われる診療に加えて、電話通信回線網を介した通話により行われる診療が含まれる。
【0009】
<医用情報処理システムSの全体構成>
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムSの構成の一例を示す図である。医用情報処理システムSは、例えば、医用情報処理装置1と、医師端末装置T1と、患者端末装置T2と、配送業者サーバDSとを備える。これらの医用情報処理装置1、医師端末装置T1、患者端末装置T2、および配送業者サーバDSは、ネットワークNWを介して互いに通信可能に接続される。ネットワークNWは、インターネット網、病院基幹LAN(Local Area Network)等の無線/有線LAN、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク、および衛星通信ネットワーク等を含む。
【0010】
医用情報処理装置1は、オンライン診療を実現するための各種処理の制御を行う。医用情報処理装置1は、例えば、ネットワークNWを介して他装置との通信が可能なデータセンター、病院等の医療機関に配置される。
【0011】
医師端末装置T1は、オンライン診療において診療を行う医師D等によって使用される。医師端末装置T1は、例えば、据置型または可搬型のパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等のコンピュータである。医師端末装置T1は、例えば、病院等の医療機関や、医師D等が診察を行う任意の施設に配置される。
図1においては、医師端末装置T1が病院HSに配置された据置型のパーソナルコンピュータである場合を示している。
【0012】
患者端末装置T2は、オンライン診療において診療を受ける患者P等によって使用される。患者端末装置T2は、例えば、据置型または可搬型のパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等のコンピュータである。患者端末装置T2は、例えば、患者Pの自宅等の診療受ける任意の施設に配置される。
図1においては、患者端末装置T2が患者宅HMにおいて使用されるスマートフォンである場合を示している。
【0013】
配送業者サーバDSは、医用物資を保管し、医師Dの指示に応じて所定の医用物資MSを患者Pに配送する配送業者により使用される。配送業者サーバDSは、ネットワークNWを介して他装置との通信が可能なデータセンター、配送業者の施設等に配置される。配送業者は、例えば、医用物資を、医用物資倉庫W等で集中して保管し、所望の配送先に配送する業者であってもよいし、患者Pの自宅付近に位置するドラッグストア等の医用物資を販売する小売店であってもよい。配送業者サーバDSが医用物資MSの配送指示を受け付けた場合、配送業者は、例えば、トラック等の車両Vにより、医用物資MSを患者宅HMに配送する。医用物資MSは、患者Pにより使用される検査装置と、患者Pの疾患を治療するための治療薬との少なくとも一方を含む。医用物資MSの詳細については後述する。検査装置には、特定の疾患を検査するための装置である。検査装置には、例えば、インフルエンザ検査装置、COVID検査装置、アレルギー検査装置、喘息検査装置、唾液検査装置、尿検査装置、便検査装置、呼気検査装置、妊娠検査装置、糖尿病検査装置等が含まれる。治療薬には、例えば、特定の疾患を治療するための飲み薬、塗り薬、湿布、インスリン等を摂取するための注射キット等が含まれる。
【0014】
<オンライン診療の流れ>
図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムSを用いたオンライン診療の処理の流れの一例を説明する図である。オンライン診療では、まず、病院HSに滞在する医師Dと、患者宅HMに滞在する患者Pとの間で、診察(オンライン問診)が行われる(手順S1)。オンライン問診では、医師端末装置T1および患者端末装置T2が使用されてビデオ通話やメッセージ機能を用いたメッセージのやり取りが行われ、医師Dは、患者Pの症状等の問診情報を把握する。オンライン問診は、電話を介した会話により行われてもよい。また、患者Pがウェアラブルデバイス等の生体情報を取得可能な装置を所持している場合、これらの生体情報(体温、血圧、血統値、写真等)が患者端末装置T2から医師端末装置T1に送信され、医師Dは、患者Pの生体情報を把握してもよい。
【0015】
次に、医師Dは、医師端末装置T1を操作して、問診結果や生体情報に基づいて、患者Pの疾患の候補、検査方法、および治療候補を推定する(手順S2)。医師Dは、例えば、医用情報処理装置1に格納されている検査・治療オントロジーを用いて、患者Pの疾患の候補、検査方法、および治療候補を推定する。この推定処理の詳細については後述する。
【0016】
次に、医師Dは、推定された検査方法および治療候補に対応する医用物資MSの配送指示を行う(手順S3)。例えば、医師Dは、医師端末装置T1を操作して、配送指示を配送業者サーバDSに送信する。配送業者は、この配送指示に応じて、医用物資MSを、患者宅HMに配送する。この医用物資MSには、患者Pにより使用される検査キットIKと、患者Pの疾患を治療するための治療キットTKとが同時に配送される。
【0017】
次に、患者Pは、配送業者により配送される医用物資MSを入手する(手順S4)。医用物資MSは、所定の格納部に格納された状態で配送される。
図3は、第1の実施形態に係る医用物資MSを格納する格納部STの一例を示す図である。医用物資MSは、検査キットIK(検査装置)と、患者Pの疾患を治療するための治療キットTK(治療薬)とを含む。格納部STには、検査キットIKを格納するための検査キット格納部と、治療キットTKを格納するための治療キット格納部との組が1以上設けられている。
図3に示す例では、格納部STには、第1検査キット格納部B1-1と第1治療キット格納部B1-2との組、第2検査キット格納部B2-1と第2治療キット格納部B2-2との組、および第3検査キット格納部B3-1と第3治療キット格納部B3-2との組の3組の格納部が設けられている。
【0018】
検査キット格納部の各々には、検査キット扉(第1検査キット扉D1-1,第2検査キット扉D2-1,第3検査キット扉D3-1)が設けられている。検査キット扉は施錠されておらず、患者Pは検査キット扉を自由に開閉し、格納された検査キットIKを取り出すことができる。一方、治療キット格納部の各々には、治療キット扉(第1治療キット扉D1-2,第2治療キット扉D2-2,第3治療キット扉D3-2)が設けられている。治療キット扉の各々はロック機構(第1ロック機構DC1,第2ロック機構DC2,第3ロック機構DC3)により施錠されており、患者Pは治療キット扉を自由に開閉できない。ロック機構は、ネットワークNWを介して、医師端末装置T1から許可信号(解除信号)を受信した場合に、ロックが解除され、患者Pは治療キット扉を開け、格納された治療キットを取り出すことができる。或いは、ロック機構は、格納部STと通信可能な患者端末装置T2の入力インターフェース(不図示)または格納部STに設けられた入力インターフェース(不図示)に対して所定のパスコードが入力された場合に、ロックが解除され、患者Pは治療キット扉を開け、格納された治療キットを取り出すことができる。すなわち、格納部STは、医用物資MS(例えば、治療薬)を取り出し不可能に格納した状態で患者Pに配送される。格納部STは、複数の疾患に対応する複数の医用物資を別々に且つ取り出し不可能に格納した状態で、患者Pに配送される。格納部STは、患者Pにより使用される検査装置を取り出し可能に格納し、疾患を治療するための治療薬を取り出し不可能に格納する。
【0019】
第1検査キット格納部B1-1、第2検査キット格納部B2-1、および第3検査キット格納部B3-1の各々には、互いに異なる検査キットが格納される。互いに異なる検査キットは、例えば、互いに異なる疾患を検査するためのものである。第1治療キット格納部B1-2には、第1検査キット格納部B1-1に格納された検査キットに対応する治療キットが格納される。第2治療キット格納部B2-2には、第2検査キット格納部B2-1に格納された検査キットに対応する治療キットが格納される。第3治療キット格納部B3-2には、第3検査キット格納部B3-1に格納された検査キットに対応する治療キットが格納される。例えば、上記の手順S2において推定された3つの検査方法(検査キット)および3つの治療候補(治療キット)が、検査キット格納部および治療キット格納部に格納される。
【0020】
次に、患者Pは、格納部STの検査キット格納部に格納された検査キットIKを取り出し、検査を実施する(手順S5)。例えば、患者Pは、格納部STに格納された複数の検査キットIKの全ての検査を実施する。そして、患者Pは、患者端末装置T2を介して検査結果を入力し、検査結果を医師端末装置T1に送信する(手順S6)。尚、検査キットIKが通信機能を有する場合、自動的に、検査キットIKから検査結果が送信されてもよい。
【0021】
次に、医師Dは、患者端末装置T2から受信した検査結果および上記の手順S1において実施済みの診察結果を確認し、患者Pの疾患の判定(確定)を行う(手順S7)。そして、医師Dは、確定した疾患に対応する治療薬(治療キットTK)を決定し、患者Pに対して、投薬指示を行う(手順S8)。例えば、医師Dは、医師端末装置T1を操作し、患者端末装置T2に対して、決定した治療キットTKの入手を許可する許可情報(例えば、パスコード)を送信する。或いは、格納部STが通信機能を有する場合、医師Dは、医師端末装置T1を操作し、患者の手元にある格納部STの治療キット格納部の内、決定した治療キットTKが格納されている治療キット格納部の治療キット扉の解除指示を行う。
【0022】
患者Pがパスコードを入力すること、または、格納部STが解除指示を受信することで、投薬指示に対応する治療キットTKを格納した治療キット扉が開放可能となる。これにより、患者Pは、治療キット格納部から、投薬指示を受けた治療キットTKを入手でき、治療キットTKを服用する(手順S9)。患者Pは、予め格納部STに含まれる治療キットTKを受け取っており、医師Dからの投薬指示を受けるとすぐに、治療キットTKの服用を開始することができる。これにより、オンライン診療における時間のロスを減らすことができる。そして、患者端末装置T2は、治療キット格納部から取り出された治療キットTKの情報(患者Pにより入手された治療キットTKの物資入手情報)を医師端末装置T1に送信する(手順S10)。
【0023】
医師Dは、医師端末装置T1を操作し、受信した物資入手情報に基づいて、カルテへの記載処理や、その他、各種医療保険への請求処理を行う(手順S11)。その後、患者Pは、格納部ST(未使用の医用物資)を、例えば、配送元の配送業者に返却する(手順S12)。格納部STが配送業者に返却されると回収記録がなされ、配送業者サーバDSから医師端末装置T1に回収記録が送信される。尚、患者Pによる格納部STの返却が一定期間なされない場合には、返却を促すための通知(メール等)の仕組みが設けられてもよい。これにより、一連のオンライン診療が完了する。
【0024】
格納部TKが、通信機能付きの鍵の機能を有している場合、その解除指示(開錠キー)としては、ワンタイムパスコード、公の機関が発行する身分証明書等(マイナンバーカード等)が使用可能である。格納部TKが、電子錠の機能を有している場合、その解除指示(開錠キー)としては、二次元バーコード、パスワード等が使用可能である。格納部TKが、ダイヤルキーの機能を有している場合、その解除指示(開錠キー)としては、所定の桁数の番号等が使用可能である。また、指定された治療薬のみが格納部TKから取り出し可能となる任意の構成であってもよい。
【0025】
<医用情報処理装置の構成>
次に、上記のようなオンライン診療を実現するための医用情報処理装置1の構成について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置1の構成の一例を示すブロック図である。医用情報処理装置1は、例えば、通信インターフェース10と、処理回路20と、メモリ30とを備える。通信インターフェース10は、例えば、ネットワークNWを介して、医師端末装置T1、患者端末装置T2、および配送業者サーバDS等の外部装置と通信する。通信インターフェース10は、例えば、NIC(Network Interface Card)等の通信インターフェースを含む。
【0026】
処理回路20は、例えば、取得機能21と、推定機能22と、通知機能23と、送信機能24と、表示制御機能25と、管理機能26とを備える。処理回路20は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ(記憶回路)30に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0027】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ30にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各機能を実現する。
【0028】
ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つの専用のLSIに組み込んで各機能を実現するようにしてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めメモリ30に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が医用情報処理装置1に備えるドライブ装置に装着されることで、メモリ30にインストールされてもよい。プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワーク(不図示)を介して予めダウンロードされて、メモリ30にインストールされてもよい。
【0029】
取得機能21は、例えば、問診情報取得機能210と、検査情報取得機能211と、診断情報取得機能212と、物資情報取得機能213とを備える。問診情報取得機能210は、ネットワークNW経由で患者Pの問診結果(例えば、患者の症状)を取得する。検査情報取得機能211は、ネットワークNW経由(オンライン経由)で患者Pの疾患に関する検査結果を取得する。例えば、検査情報取得機能211は、格納部STから取り出された検査キットIKを用いて患者Pにより行われた検査結果を示す検査結果を、患者端末装置T2を介して取得する。或いは、検査情報取得機能211は、通信機能を有する検査キットIKから、検査結果を取得する。検査情報取得機能211は、「検査情報取得部」の一例である。検査結果は、患者Pが患っている可能性のある複数の疾患の各々に対する検査結果を含む。
【0030】
診断情報取得機能212は、検査結果の通知を受けた医師D(ユーザ)から、患者の疾患に関する診断情報(疾患および治療キットTKの確定情報)を取得する。例えば、診断情報取得機能212は、検査結果の通知を受けた医師Dが医師端末装置T1に入力した診断情報を、医師端末装置T1から取得する。診断情報取得機能212は、「診断情報取得機能」の一例である。
【0031】
物資情報取得機能213は、患者Pにより入手された検査キットIKおよび/または治療キットTKを示す物資入手情報を取得する。例えば、物資情報取得機能213は、通信機能を有する格納部STから送信される検査キット扉および/または治療キット扉の開封情報に基づいて、物資入手情報を取得する。或いは、物資情報取得機能213は、患者端末装置T2から物資入手情報を取得する。物資情報取得機能213は、「物資情報取得部」の一例である。
【0032】
推定機能22は、メモリ30に格納されている検査・治療オントロジーをOD用いて、患者Pの疾患の候補、検査方法、および治療候補を推定する。
図5は、第1の実施形態に係る検査・治療オントロジーODの内容の一例を示す図である。検査・治療オントロジーODは、疾患、検査、および治療の関係性が定義されてグラフ構造化されたものである。検査・治療オントロジーODは、オンライン上を含む別の記憶媒体に格納されていてもよい。検査・治療オントロジーODは、例えば、検査・治療概念ネットワークとして表される。検査・治療概念ネットワークには、例えば、「原因(疾患)」、「現象(検査)」、「症状」、および「治療」という階層が示されている。各階層には、それぞれ要素が定義されている。
【0033】
「原因(疾患)」の階層には、例えば、「疾患1(インフルエンザ)」「疾患2(COVID)」「疾患3(アレルギー性鼻炎)」「疾患4(喘息)」等の疾患に関する要素が定義されている。原因(疾患)の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0034】
「現象(検査)」の階層には、例えば、「検査a(インフルエンザ検査)」「検査b(COVID検査)」「検査c(アレルギー性鼻炎検査)」「検査d(喘息検査)」等の検査に関する要素が定義されている。現象(検査)の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0035】
「症状」の階層には、例えば、「食欲不振」「咳」「息切れ」「動悸」「多汗」「痙攣」「胸痛」「浅い呼吸」「失神」「頭痛」「めまい」「黄疸」「吐き気」「高熱」「むくみ」「下痢」等の症状に関する要素が定義されている。症状の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0036】
「治療」の階層には、「治療薬A(タミフル(登録商標))」「治療薬B(経口抗ウイルス薬)」「治療薬C(鼻炎薬)」「治療薬D(ステロイド薬)」等の治療(治療薬)に関する要素が定義されている。治療の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0037】
推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、オンライン問診により確認された症状と関連性(因果関係)の高い「現象(検査)」および「治療」の各要素を少なくとも1つ推定する。さらに、推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、推定された「現象(検査)」と関連性の高い「原因(疾患)」を少なくとも1つ推定する。推定機能22は、例えば、3つの「現象(検査)」と、これに対応する3つの「治療」および「原因(疾患)」を推定する。推定機能22は、「推定部」の一例である。推定機能22は、患者Pに対するオンライン問診により確認された症状と、検査、症状、および治療の関係性が定義された検査・治療オントロジーODとに基づいて、患者Pに対して行う検査および治療の候補を推定する。
【0038】
通知機能23は、各種情報を医師Dに通知する。通知機能23は、例えば、取得された検査結果を医師D(ユーザ)に通知する。通知機能23は、例えば、表示制御機能25を介して各種情報を表示させるための情報を生成して、医師端末装置T1に通知する。通知機能23は、「通知部」の一例である。
【0039】
送信機能24は、取得された診断情報に基づいて、疾患に関する医用物資の入手を許可する許可情報を、患者Pの患者端末装置T2に送信する。送信機能24は、患者端末装置T2に対して、決定した治療キットTKの入手を許可する許可情報(例えば、パスコード)を送信する。或いは、格納部STが通信機能を有する場合、送信機能24は、許可情報として、患者の手元にある格納部STの治療キット格納部の内、決定した治療キットTKが格納されている治療キット格納部の治療キット扉の解除指示を送信する。送信機能24は、「送信部」の一例である。送信機能24は、許可情報として、複数の疾患の内、医師(ユーザ)により特定された1つの疾患に関する医用物資の入手を許可する情報を、患者Pの患者端末装置T2に送信する。送信機能24は、患者Pが所持する格納部STに対して、許可情報として、格納部STからの医用物資MSの取り出しを可能にするための情報を送信する。送信機能24は、患者Pの患者端末装置T2に対して、許可情報として、格納部STからの医用物資MSの取り出しを可能にするための情報(パスコード)を送信する。送信機能24は、患者Pが所持する格納部STまたは患者Pの患者端末装置T2に対して、許可情報として、格納部STからの治療薬の取り出しを可能にするための情報を送信する。
【0040】
表示制御機能25は、医師端末装置T1および患者端末装置T2のディスプレイに表示させる表示内容の制御を行う。表示制御機能25は、各種情報を含む画面を表示させるための情報を生成し、医師端末装置T1および患者端末装置T2に送信する。
【0041】
管理機能26は、取得された物資入手情報や配送業者サーバDSから送信される医用物資の返却情報に基づいて、医用情報の管理処理(カルテサーバ(不図示)への登録処理、保険請求処理等)を行う。
【0042】
メモリ30は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。また、メモリ30には、ROM(Read Only Memory)やレジスタ等の記憶媒体が含まれてもよい。メモリ30は、例えば、検査・治療オントロジーOD等を記憶する。その他、メモリ30は、例えば、問診情報、検査情報、診断情報、物資入手情報等を記憶する。検査・治療オントロジーOD等のデータは、メモリ30ではなく(或いはメモリ30に加えて)、医用情報処理装置1が通信可能な外部メモリ(例えばNAS(Network Attached Storage)等)に記憶されてもよい。
【0043】
<医用情報処理装置の処理フロー>
次に、医用情報処理装置1の処理について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置1の処理の一例を示すフローチャートである。
図6では、医師端末装置T1を操作する医師Dと、患者端末装置T2を操作する患者Pとが、ビデオ通話機能を利用して、オンライン診療を行う事例を説明する。
【0044】
まず、表示制御機能25は、医師Dによる問診情報の入力を受け付けるための問診情報入力画面の情報を生成し、医師端末装置T1に送信する(ステップS101)。これにより、医師端末装置T1のディスプレイ(不図示)には、問診情報入力画面が表示される。医師Dは、オンライン問診において患者Pを問診することにより確認した問診情報(患者Pの症状等)を、問診情報入力画面に入力する。
【0045】
次に、問診情報取得機能210は、医師端末装置T1から送信された問診情報を取得する(ステップS103)。
【0046】
次に、推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、オンライン問診により取得された問診情報(患者Pの症状)と関連性の高い検査方法および治療候補の各要素を少なくとも1つ推定する(ステップS105)。さらに、推定機能22は、推定された検査方法と関連性の高い疾患を少なくとも1つ推定する。推定機能22は、例えば、3つの検査方法(3つの検査キットIK)と、これに対応する3つの治療候補(3つの治療キットTK候補)および3つの疾患候補を推定する。表示制御機能25は、推定された3つの検査方法、3つの治療候補、および3つの疾患候補を含む推定情報を、医師端末装置T1に送信する。尚、検査・治療オントロジーODにおいて関連性(因果関係)が把握できない場合には、とりあえず、症状を緩和するための治療キットが候補として選択されるようにしてもよい。
【0047】
推定情報を確認した医師Dは、医師端末装置T1を操作して、患者Pに配送する医用物資MSの配送指示を行う。例えば、医師Dは、医師端末装置T1を操作して、3つの検査キットIKと3つの治療キットTKとを含む医用物資MSの配送指示を行う。この配送指示に基づいて、送信機能24は、配送業者サーバDSに対して、医用物資の配送指示を送信する(ステップS107)。これにより、配送業者は、医用物資MSを、患者Pの患者宅HMに配送する。この医用物資MSには、患者Pにより使用される検査キットIKと、患者Pの疾患を治療するための治療キットTKとが同時に配送される。
【0048】
患者Pは、配送業者により配送された医用物資MSを入手し、格納部STの検査キット格納部に格納された検査キットを取り出し、検査を実施する。そして、患者Pは、患者端末装置T2を介して検査結果を入力し、検査結果を医用情報処理装置1に送信する。検査情報取得機能211は、患者端末装置T2から送信された検査結果を取得する(ステップS109)。通知機能23は、取得された検査結果を医師端末装置T1に通知する(ステップS111)。
【0049】
医師Dは、検査結果を確認し、患者Pの疾患の判定(確定)を行い、確定した疾患に対応する治療薬(治療キット)を決定し、医師端末装置T1を介して、患者Pに対する投薬指示(診断情報)を医用情報処理装置1に送信する。診断情報取得機能212は、医師端末装置T1から送信された投薬指示(診断情報)を取得する(ステップS113)。次に、送信機能24は、投薬指示(診断情報)を、患者端末装置T2に送信する(ステップS115)。或いは、送信機能24は、投薬指示として、ネットワークNWを介して、患者Pの手元にある格納部STの治療キット格納部の内、決定した治療キットTKが格納されている治療キット格納部の治療キット扉の解除指示を送信する。
【0050】
患者Pは、治療キット格納部から、投薬指示を受けた治療キットを入手し、治療キットを服用する。患者Pは、予め格納部STに含まれる治療キットTKを受け取っており、医師Dからの投薬指示を受けるとすぐに、治療キットTKの服用を開始することができる。これにより、オンライン診療における時間のロスを減らすことができる。そして、患者Pは、患者端末装置T2を介して、治療キット格納部から取り出された治療キットの情報(患者Pにより入手された治療キットの物資入手情報)を医用情報処理装置1に送信する。物資情報取得機能213は、物資入手情報を取得する(ステップS117)。通知機能23は、取得した物資入手情報を医師端末装置T1に送信する。
【0051】
医師Dは、医師端末装置T1を操作し、受信した物資入手情報に基づいて、カルテの更新処理や、その他、各種医療保険への請求処理を行う。管理機能26は、医師Dによる操作に応じて、カルテサーバにおけるカルテ情報の更新を行う(ステップS119)。また、管理機能26は、医師Dによる操作に応じて、患者Pに対して行われた診察や患者Pにより入手された治療キットTKについて、医療保険の請求処理を行う(ステップS121)。
【0052】
その後、患者Pは、未使用の医用物資MSを格納する格納部STを、例えば、配送元の配送業者に返却する。格納部STが配送業者に返却されると回収記録がなされ、配送業者サーバDSから医師端末装置T1に回収記録が送信される。物資情報取得機能213は、回収情報を取得し、管理機能26は、カルテサーバにおけるカルテ情報の更新等を行う(ステップS123)。以上により、本フローチャートの処理が完了する。
【0053】
以上説明した第1の実施形態の医用情報処理システムSによれば、オンライン診療の質を担保しつつ、診療に要する時間を低減させることである。特に、患者は、疾患の診断を受ける前段階で治療薬を受け取っており、医師からの投薬指示を受けるとすぐに、治療薬の服用を開始することができる。これにより、オンライン診療における時間のロスを減らすことができる。
【0054】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の医用情報処理システムSは、第1実施形態と比較して、1回目のオンライン問診により得られる問診情報および検査情報に加えて、診断時に行われる2回目のオンライン問診により得られる問診情報や医用物資MSの発送後の患者Pの生体情報の変化等(体温変化等)に基づいて、検査・治療オントロジー上で疾患等の絞り込みを行う点が主に異なり、各装置構成については共通する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に、第2の実施形態について説明する。
【0055】
図7は、第2の実施形態に係る検査・治療オントロジーODの内容の一例を示す図である。
図5に示す第1の実施形態に係る検査・治療オントロジーODと比較して、第2の実施形態に係る検査・治療オントロジーODでは、「症状」が、1度目のオンライン問診により確認される症状や生体情報に対応する「症状1」と、2回目のオンライン問診により得られる問診情報や医用物資MSの発送後の患者Pの生体情報に対応する「症状2」とに分けて定義される。1度目のオンライン問診は、第1の実施形態に係るオンライン問診と同じであり、
図2に示す手順S1にて実施されるものである。2度目のオンライン問診は、第1の実施形態では行われなかったものであり、
図2に示す手順S7にて疾患の判定が行われる際に実施されるものである。検査・治療オントロジーODには、「原因(疾患)」、「現象(検査)」、「症状1」、「症状2」、および「治療」という階層が示され、これらの関係性が定義される。
【0056】
「原因(疾患)」の階層には、例えば、「疾患1(インフルエンザ)」「疾患2(COVID)」「疾患3(アレルギー性鼻炎)」「疾患4(喘息)」等の疾患に関する要素が定義されている。原因(疾患)の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0057】
「現象(検査)」の階層には、例えば、「検査a(インフルエンザ検査)」「検査b(COVID検査)」「検査c(アレルギー性鼻炎検査)」「検査d(喘息検査)」等の検査に関する要素が定義されている。現象(検査)の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0058】
「症状1」の階層には、1度目のオンライン問診時に確認される症状や生体情報に関する要素が定義される。「症状1」の階層には、例えば、「食欲不振」「咳」「息切れ」「動悸」「多汗」「痙攣」「胸痛」「浅い呼吸」「失神」「頭痛」「めまい」「黄疸」「吐き気」「高熱」「むくみ」「下痢」等の症状に関する要素が定義されている。症状1の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0059】
「症状2」の階層には、2度目のオンライン問診時に確認される症状や生体情報に関する要素が定義される。「症状2」の階層には、例えば、「咳」「黄疸」「高熱」「下痢」等の症状に関する要素が定義されている。症状2の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0060】
「治療」の階層には、「治療薬A(タミフル(登録商標))」「治療薬B(経口抗ウイルス薬)」「治療薬C(鼻炎薬)」「治療薬D(ステロイド薬)」等の治療(治療薬)に関する要素が定義されている。治療の要素としては、その他の要素が含まれていてもよいし、これらの一部が含まれていなくてもよい。
【0061】
推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、1度目のオンライン問診により確認された症状や生体情報と関連性の高い「現象(検査)」および「治療」の各要素を少なくとも1つ推定する。さらに、推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、推定された「現象(検査)」と関連性の高い「原因(疾患)」を少なくとも1つ推定する。推定機能22は、例えば、3つの「現象(検査)」と、これに対応する3つの「治療」および「原因(疾患)」を推定する。この推定結果は、格納部STに格納させる医用物資MSの決定に使用される。
【0062】
さらに、推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、1度目のオンライン問診により確認された症状や生体情報に加えて、2度目のオンライン問診により確認された症状や生体情報と関連性の高い「現象(検査)」および「治療」の各要素を少なくとも1つ推定する。さらに、推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、推定された「現象(検査)」と関連性の高い「原因(疾患)」を少なくとも1つ推定する。この推定結果は、疾患の判定(確定)に使用される。
【0063】
<医用情報処理装置の処理フロー>
次に、医用情報処理装置1の処理について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置1の処理の一例を示すフローチャートである。
図8では、医師端末装置T1を操作する医師Dと、患者端末装置T2を操作する患者Pとが、ビデオ通話機能を利用して、オンライン診療を行う事例を説明する。
【0064】
まず、表示制御機能25は、医師Dによる問診情報の入力を受け付けるための問診情報入力画面の情報を生成し、医師端末装置T1に送信する(ステップS101)。次に、問診情報取得機能210は、医師端末装置T1から送信された問診情報(1回目)を取得する(ステップS103)。次に、推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、1回目のオンライン問診により取得された問診情報(患者Pの症状)と関連性の高い検査方法および治療候補の各要素を少なくとも1つ推定する(ステップS105)。推定情報を確認した医師Dは、医師端末装置T1を操作して、患者Pに配送する医用物資MSの配送指示を行う。例えば、医師Dは、医師端末装置T1を操作して、3つの検査キットIKと3つの治療キットTKとを含む医用物資MSの配送指示を行う。この配送指示に基づいて、送信機能24は、配送業者サーバDSに対して、医用物資の配送指示を送信する(ステップS107)。これにより、配送業者は、医用物資MSを、患者Pの患者宅HMに配送する。
【0065】
患者Pは、配送業者により配送された医用物資MSを入手し、格納部STの検査キット格納部に格納された検査キットを取り出し、検査を実施する。そして、患者Pは、患者端末装置T2を介して検査結果を入力し、検査結果を医用情報処理装置1に送信する。また、患者Pは、1回目のオンライン問診以降にウェアラブルデバイス等により取得された生体情報(体温等)を、患者端末装置T2を介して医用情報処理装置1に送信する。検査情報取得機能211は、患者端末装置T2から送信された検査結果および生体情報を取得する(ステップS201)。通知機能23は、取得された検査結果および生体情報を医師端末装置T1に通知する(ステップS203)。
【0066】
医師Dは、検査結果および生体情報を確認しつつ、2回目のオンライン問診において患者Pを問診することにより確認した問診情報(2回目のオンライン問診時の患者Pの症状等)を、問診情報入力画面に入力する。問診情報取得機能210は、医師端末装置T1から送信された問診情報(2回目)を取得する(ステップS205)。
【0067】
次に、推定機能22は、検査・治療オントロジーODにおいて、1度目のオンライン問診により確認された症状や生体情報に加えて、2度目のオンライン問診により確認された症状や生体情報と関連性の高い「現象(検査)」および「治療」の各要素を少なくとも1つ推定する(ステップS207)。さらに、推定機能22は、推定された検査方法と関連性の高い疾患を少なくとも1つ推定する。表示制御機能25は、推定された検査方法、治療候補、および疾患候補を含む推定情報を、医師端末装置T1に送信する。
【0068】
すなわち、推定機能22は、1回目のオンライン問診により確認された患者Pの症状および生体情報と、1回目のオンライン問診よりも後に実施される2回目のオンライン問診により確認された患者Pの症状および生体情報と、検査・治療オントロジーODとに基づいて、患者Pの疾患を推定する。
【0069】
医師Dは、検査結果および推定情報を確認し、患者Pの疾患の判定(確定)を行い、確定した疾患に対応する治療薬(治療キット)を決定し、医師端末装置T1を介して、患者Pに対する投薬指示(診断情報)を医用情報処理装置1に送信する。診断情報取得機能212は、医師端末装置T1から送信された投薬指示(診断情報)を取得する(ステップS113)。次に、送信機能24は、投薬指示(診断情報)を、患者端末装置T2に送信する(ステップS115)。
【0070】
患者Pは、治療キット格納部から、投薬指示を受けた治療キットを入手し、治療キットを服用する。患者Pは、予め格納部STに含まれる治療キットTKを受け取っており、医師Dからの投薬指示を受けるとすぐに、治療キットTKの服用を開始することができる。これにより、オンライン診療における時間のロスを減らすことができる。そして、患者Pは、患者端末装置T2を介して、治療キット格納部から取り出された治療キットの情報(患者Pにより入手された治療キットの物資入手情報)を医用情報処理装置1に送信する。物資情報取得機能213は、物資入手情報を取得する(ステップS117)。通知機能23は、取得した物資入手情報を医師端末装置T1に送信する。
【0071】
医師Dは、医師端末装置T1を操作し、受信した物資入手情報に基づいて、カルテの更新処理や、その他、各種医療保険への請求処理を行う。管理機能26は、医師Dによる操作に応じて、カルテサーバにおけるカルテ情報の更新を行う(ステップS119)。また、管理機能26は、医師Dによる操作に応じて、患者Pに対して行われた診察や患者Pにより入手された治療キットTKについて、医療保険の請求処理を行う(ステップS121)。
【0072】
その後、患者Pは、未使用の医用物資MSを格納する格納部STを、例えば、配送元の配送業者に返却する。格納部STが配送業者に返却されると回収記録がなされ、配送業者サーバDSから医師端末装置T1に回収記録が送信される。物資情報取得機能213は、回収情報を取得し、管理機能26は、カルテサーバにおけるカルテ情報の更新等を行う(ステップS123)。以上により、本フローチャートの処理が完了する。
【0073】
以上説明した第2の実施形態の医用情報処理システムSによれば、オンライン診療の質を担保しつつ、診療に要する時間を低減させることである。特に、患者は、疾患の診断を受ける前段階で治療薬を受け取っており、医師からの投薬指示を受けるとすぐに、治療薬の服用を開始することができる。これにより、オンライン診療における時間のロスを減らすことができる。また、さらに、医用物資の輸送のタイムラグ効果を利用し、時間あけて複数の検査ができることを利用し、因果関係を徐々に絞れるようにすることができる。例えば、配送中(例えば、24時間の間)に得られた患者の体温等の生体情報を追加して、検査・治療オントロジーのツリーの絞り込みを行うことができる。すなわち、1回目の問診結果と、検査キットIKが到着して検査した結果と、検査キットIKが到着して検査した時点の2回目の問診結果と、配送中に得られた患者の体温等の生体情報を組み合わせて、検査・治療オントロジーのツリーの絞り込みを行って推定結果の確信度を向上させることができる。
【0074】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、オンライン経由で患者の疾患に関する検査結果を取得する検査情報取得部(検査情報取得機能211)と、取得された検査結果をユーザに通知する通知部(通知機能23)と、検査結果の通知を受けたユーザから、患者の疾患に関する診断情報を取得する診断情報取得部(診断情報取得機能212)と、
取得された診断情報に基づいて、患者の疾患に関する医用物資の入手を許可する許可情報を、患者の患者端末装置に送信する送信部(送信機能24)と、を備えることで、オンライン診療の質を担保しつつ、診療に要する時間を低減させることができる。
【0075】
上記の実施形態では、オンライン診療の各種処理の制御を医用情報処理装置1が行う場合を例に挙げて説明したが、医用情報処理装置1の各機能の一部は、医師端末装置T1や患者端末装置T2により実現されてもよい。例えば、患者端末装置T2にアプリケーションがインストールされることで、各機能が実現されてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、格納部STに、検査キットIKと、治療キットTKとの組が格納される場合を例に挙げて説明したが、1回目の検査キットIKと、2回目の検査キットIKとの組が格納されるようにしてもよい。例えば、格納部STに、1回目の検査キットIKと、1回目の検査キットIKでの検査が陽性であった場合にさらに正確な検査を行うための2回目の検査キットIKとの組が格納されるようにしてもよい。格納部STは、2回目の検査キットIKを取り出し不可能に格納してよい。この場合、送信機能24は、取得された診断情報に基づいて、患者Pの疾患に関する医用物資(2回目の検査キットIK)の入手を許可する許可情報を、患者Pに送信するようにしてよい。
【0077】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
処理回路(processing circuitry)を備え、
前記処理回路は、
オンライン経由で患者の疾患に関する検査結果を取得し、
取得された前記検査結果をユーザに通知し、
前記検査結果の通知を受けた前記ユーザから、前記患者の疾患に関する診断情報を取得し、
取得された前記診断情報に基づいて、前記患者の疾患に関する医用物資の入手を許可する許可情報を、前記患者の患者端末装置に送信する、
医用情報処理システム。
【0078】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
1…医用情報処理装置,10…通信インターフェース,20…処理回路,21…取得機能,210…問診情報取得機能,211…検査情報取得機能,212…診断情報取得機能,213…物資情報取得機能,22…推定機能,23…通知機能,24…送信機能,25…表示制御機能,26…管理機能,30…メモリ,D…医師,DS…配送業者サーバ,HM…患者宅,HS…病院,MS…医用物資,NW…通信ネットワーク,OD…検査・治療オントロジー,P…患者,S…医用情報処理システム,T1…医師端末装置,T2…患者端末装置