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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151513
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】コンクリート床版の切断方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20241018BHJP
   B28D 1/08 20060101ALI20241018BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20241018BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E01D24/00
B28D1/08
B24B27/06 S
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064896
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511309481
【氏名又は名称】株式会社ベステムサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 英一
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 伸明
(72)【発明者】
【氏名】尾田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】中山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】新道 俊男
【テーマコード(参考)】
2D059
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG41
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB03
3C069BC02
3C069BC04
3C069CA07
3C069EA01
3C158AA05
3C158AA11
3C158AA16
3C158BA02
3C158BA04
3C158BB02
3C158BC02
3C158CA01
3C158CB02
3C158CB03
3C158DA03
(57)【要約】
【課題】支保工の設置を不要にできるコンクリート床版の切断方法を提供する。
【解決手段】切断部3は、コンクリート床版22に巻き掛けられて循環回転するワイヤーソー5と、ワイヤーソー5が巻き掛けられてワイヤーソー5を回転させる第1駆動プーリー61および第2駆動プーリー62と、を有し、第1駆動プーリー61および第2駆動プーリー62は、互いに同じ回転数で同調して回転するように構成されている。切断装置1を設置する切断装置設置工程と、切断部3を桁軸方向に移動させ、循環回転するワイヤーソー5を桁軸方向に移動させてコンクリート床版22を切断する切断工程と、を有する。切断装置設置工程では、ワイヤーソー5を、桁軸直交方向に隣り合う複数の桁上床版24に連続して巻き掛ける。切断工程では、複数の桁上床版24を、それぞれ桁軸直交方向に隣り合う桁間床版25に接続された状態のまま同時に切断して鋼桁21から切り離す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁軸直交方向に間隔をあけて配列された複数の鋼桁の上にコンクリート床版が接合された合成桁から前記コンクリート床版を切断するコンクリート床版の切断方法において、
前記コンクリート床版は、前記鋼桁に設けられる桁上床版と、桁軸直交方向に隣り合う前記鋼桁の間の領域の上に設けられる桁間床版と、が桁軸直交方向に交互に配列され、
前記コンクリート床版を切断する切断装置は、
前記コンクリート床版を切断する切断部と、
前記切断部を移動させる移動部と、を有し、
前記切断部は、
前記コンクリート床版に巻き掛けられて循環回転するワイヤーソーと、
前記ワイヤーソーが巻き掛けられて前記ワイヤーソーを回転させる第1駆動プーリーおよび第2駆動プーリーと、を有し、
前記第1駆動プーリーおよび前記第2駆動プーリーは、互いに同じ回転数で同調して回転するように構成され、
前記切断装置を設置する切断装置設置工程と、
前記切断部を桁軸方向に移動させ、循環回転する前記ワイヤーソーを桁軸方向に移動させて前記コンクリート床版を切断する切断工程と、を有し、
前記切断装置設置工程では、
前記ワイヤーソーを、桁軸直交方向に隣り合う複数の前記桁上床版に連続して巻き掛け、
前記切断工程では、
複数の前記桁上床版を、それぞれ桁軸直交方向に隣り合う桁間床版に接続された状態のまま同時に切断して前記鋼桁から切り離すコンクリート床版の切断方法。
【請求項2】
前記切断装置設置工程では、
上下方向から見た平面視において、
前記第1駆動プーリーを、同時に切断する複数の前記桁上床版のうちの桁軸直交方向の一方側の端部に配置される前記桁上床版の上方に配置し、
前記第2駆動プーリーを、同時に切断する複数の前記桁上床版のうちの桁軸直交方向の他方側の端部に配置される前記桁上床版の上方に配置する請求項1に記載のコンクリート床版の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床版の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼桁とコンクリート床版とがずれ止めで接合されて一体化した合成桁では、コンクリート床版を交換する際にジャッキアップによってコンクリート床版を鋼桁から剥離させて撤去することができない。このため、既設の合成桁のコンクリート床版を撤去する際には、コンクリート床版における鋼桁の直上の部分(桁上床版)をループ状のワイヤーソーを備える切断装置で切断している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-31868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート床版における桁上床版以外の部分(桁間床版)は、桁上床版を介して鋼桁に支持されているため、桁上床版を鋼桁から切断して切り離す際には、桁間床版を仮受する支保工を設置する必要がある。このため、支保工の設置や撤去に時間や労力がかかるという問題がある。
また、ワイヤーソーでコンクリート床版を切断する場合、ワイヤーソーに弛みが生じると、切断位置にブレが生じてしまい、鋼桁を損傷する虞がある。このため、ワイヤーソーによるコンクリート床版の切断は、余裕をみて鋼桁と間隔をあけた位置、すなわち、鋼桁の上面よりも上方となる切断位置で行っている。
切断位置よりも上側の部分を撤去した後には、切断位置よりも下側の部分をチッピングハンマーやウォータージェットなどで斫って撤去しなければならないため、この斫り作業に時間や労力がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、支保工の設置を不要にできるコンクリート床版の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート床版の切断方法は、桁軸直交方向に間隔をあけて配列された複数の鋼桁の上にコンクリート床版が接合された合成桁から前記コンクリート床版を切断するコンクリート床版の切断方法において、前記コンクリート床版は、前記鋼桁に設けられる桁上床版と、桁軸直交方向に隣り合う前記鋼桁の間の領域の上に設けられる桁間床版と、が桁軸直交方向に交互に配列され、前記コンクリート床版を切断する切断装置は、前記コンクリート床版を切断する切断部と、前記切断部を移動させる移動部と、を有し、前記切断部は、前記コンクリート床版に巻き掛けられて循環回転するワイヤーソーと、前記ワイヤーソーが巻き掛けられて前記ワイヤーソーを回転させる第1駆動プーリーおよび第2駆動プーリーと、を有し、前記第1駆動プーリーおよび前記第2駆動プーリーは、互いに同じ回転数で同調して回転するように構成され、前記切断装置を設置する切断装置設置工程と、前記切断部を桁軸方向に移動させ、循環回転する前記ワイヤーソーを桁軸方向に移動させて前記コンクリート床版を切断する切断工程と、を有し、前記切断装置設置工程では、前記ワイヤーソーを、桁軸直交方向に隣り合う複数の前記桁上床版に連続して巻き掛け、前記切断工程では、複数の前記桁上床版を、それぞれ桁軸直交方向に隣り合う桁間床版に接続された状態のまま同時に切断して前記鋼桁から切り離す。
【0007】
本発明では、回転数を同調させた第1駆動プーリーおよび第2駆動プーリーにワイヤーソーを巻き掛けることにより、ワイヤーソーが一方の駆動プーリーから送り出されて他方の駆動プーリーに巻き取られる形態となるため、1つの駆動プーリーによって巻き出されて巻き取られる場合と比べて、切断速度が向上するとともに、ワイヤーソーの弛みを抑えることができる。このため、ワイヤーソーを桁軸直交方向に隣り合う複数の桁上床版にわたるように巻き掛けた場合でも、ワイヤーソーが弛みにくく、桁軸方向に隣り合う複数の桁上床版を同時に切断できる。切断速度が向上することによって、施工速度を上げることができる。
桁上床版を1つずつワイヤーソーで切断する場合、隣接する桁間床版を先行して切断し、支保工で支持する必要がある。本発明では、桁軸方向に隣り合う複数の桁上床版をその間の桁間床版に接続された状態のまま鋼桁から切断する。このため、本発明では、桁間床版を支持する支保工を設置する必要が無く、支保工の設置や撤去にかかる時間や労力を削減できる。
また、ワイヤーソーの弛みを抑えることができるため、切断位置を鋼桁の上面に近づけても鋼桁を損傷する虞が無い。切断位置を鋼桁の上面に近づけることにより、切断位置よりも下側の部分をチッピングハンマーやウォータージェットなどで斫って撤去する作業を軽減できる。
【0008】
また、本発明に係るコンクリート床版の切断方法では、前記切断装置設置工程では、上下方向から見た平面視において、前記第1駆動プーリーを、同時に切断する複数の前記桁上床版のうちの桁軸直交方向の一方側の端部に配置される前記桁上床版の上方に配置し、前記第2駆動プーリーを、同時に切断する複数の前記桁上床版のうちの桁軸直交方向の他方側の端部に配置される前記桁上床版の上方に配置してもよい。
【0009】
このような構成とすることにより、第1駆動プーリーと第2駆動プーリーとが切断領域における桁軸直交方向の両端部近傍に離れて配置されるため、切断領域全体にわたってワイヤーソーの弛みを抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支保工の設置を不要にでき、支保工の設置や撤去にかかる時間や労力を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】合成桁の側面図である。
図2】本発明の実施形態によるコンクリート床版の切断方法を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態によるコンクリート床版の切断方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態によるコンクリート床版の切断方法について、図1から図3に基づいて説明する。
本実施形態によるコンクリート床版の切断方法は、図1に示すような鋼桁21とコンクリート床版22とが接合されて一体化した合成桁2からコンクリート床版22を撤去する際にコンクリート床版22と鋼桁21とを切断する方法である。
合成桁2は、複数の鋼桁21の上にコンクリート床版22が接合されている。
合成桁2が延びる方向、すなわち鋼桁21が延びる方向を桁軸方向(図1および図2の紙面に直交する方、図3の矢印Aの方向)と表記する。本実施形態では、桁軸方向は、略水平方向である。桁軸方向に直交する水平方向を桁軸直交方向(図1および図2の矢印Bの方向、図3の紙面に直交する方向)と表記する。
【0013】
複数の鋼桁21は、桁軸直交方向に間隔をあけて平行に配列されている。鋼桁21は、I形鋼などである。鋼桁21の上面には、複数の鋼桁21とコンクリート床版22とを一体化させるずれ止め23が接合されている。
コンクリート床版22は、鋼桁21の直上となる部分に下方に突出するハンチ部221が設けられている。ハンチ部221の下面が鋼桁21の上面と接合されている。ハンチ部221は、下方に向かって漸次桁軸直交方向の寸法が小さくなっている。
コンクリート床版22における鋼桁21の直上で鋼桁21と接合されている部分を桁上床版24と表記する。コンクリート床版22における鋼桁21とは上下方向に重ならず鋼桁21に直接接合されていない部分を桁間床版25と表記する。桁上床版24と桁間床版25とは、桁軸直交方向に交互に配列されている。ハンチ部221は、桁上床版24とその桁軸直交方向両側の桁間床版25の端部の下部側に設けられている。
【0014】
図2および図3に示すように、本実施形態によるコンクリート床版の切断方法では、桁上床版24の下部側であり鋼桁21の上面と所定の間隔をあけた位置を、ワイヤーソー5を備える切断装置1で桁軸方向に切断し、桁上床版24を鋼桁21から切り離す。桁上床版24におけるワイヤーソー5で切断される位置、すなわち桁上床版24の下部側であり鋼桁21の上面と所定の間隔をあけた位置を切断位置27と表記する。切断位置27には、ずれ止め23が含まれる。
【0015】
図2に示すように、本実施形態では、桁軸方向の所定長さの切断スパン毎に、桁間床版25を介して桁軸直交方向に隣り合う2つの桁上床版24,24を、その間の桁間床版25が接続されたまま同一の切断装置1によって同時に切断する。2つの桁上床版24,24を切断した後に、これらの2つの桁上床版24,24と、その間の桁間床版25を一体のまま合成桁2から撤去する。2つの桁上床版24,24のうち、桁軸直交方向の一方側に配置される桁上床版24を第1桁上床版241と表記し、桁軸直交方向の他方側に配置される桁上床版24を第2桁上床版242と表記する。
【0016】
図2および図3に示すように、切断装置1は、コンクリート床版22を切断する切断部3と、切断部3を移動させる移動部4と、を有している。切断部3は、コンクリート床版22を切断するループ状のワイヤーソー5と、ワイヤーソー5が巻き掛けられる複数のプーリー61-65と、複数のプーリー61-65を回転させてワイヤーソー5を駆動させる切断駆動部31と、を有する。図3に示す鋼桁21は、上側のフランジのみを表記している。
【0017】
移動部4は、コンクリート床版22の上に設置される一対のレール41,41と、レール41を走行する一対の台車42,42と、一対の台車42,42に設置されたプーリー支持部43と、台車42を走行させる移動駆動部44(図3参照)と、を有する。
一対のレール41,41は、それぞれ直線状に延び、長さ方向に直交する方向に間隔をあけて平行に設置される。一対のレール41,41は、コンクリート床版22にアンカーなどによって固定される。
【0018】
一対の台車42,42の一方の台車42は、一方のレール41を走行する。一対の台車42,42の他方の台車42は、他方のレール41を走行する。プーリー支持部43は、一対の台車42の上に設置され、一対の台車42とともに移動する。プーリー支持部43は、複数のプーリー61-65を支持している。
一対のレール41,41は、長さ方向が桁軸方向となる向きに設置される。一対の台車42,42、プーリー支持部43および切断部3は、一対のレール41,41に沿って桁軸方向に走行する。
【0019】
ワイヤーソー5は、桁軸直交方向から見て、第1桁上床版241と、第2桁上床版242と、第1桁上床版241と第2桁上床版242との間の桁間床版25と、を囲むように設置される。ワイヤーソー5は、上部がコンクリート床版22の上方に配置され、下部が切断位置27の高さに配置される。
コンクリート床版22の切断を行う際には、第1桁上床版241の桁軸方向一方側に隣接する桁間床版25に、桁軸方向に延び上下方向に貫通する第1溝部281を形成する。第2桁上床版242の桁軸方向の他方側に隣接する桁間床版25に、桁軸方向に延び上下方向に貫通する第2溝部282を形成する。ワイヤーソー5は、第1溝部281および第2溝部282を通ってコンクリート床版22の上下にわたって設置される。循環回転するワイヤーソー5における下端部分は、切断位置27の高さにおいて移動する。循環回転するワイヤーソー5における切断位置27の高さにおいて移動する部分を切断部分51と表記する。ワイヤーソー5の切断部分51がコンクリート床版22を切断する。
【0020】
複数のプーリー61-65は、2つの駆動プーリー61,62と、2つの自在プーリー63,64と、複数の補助プーリー65とを有する。駆動プーリー61,62は、ワイヤーソー5を循環回転させる。自在プーリー63,64は、ワイヤーソー5の切断部分51の両側に配置される。補助プーリー65は、循環回転するワイヤーソー5をガイドする。
【0021】
2つの駆動プーリー61,62は、プーリー支持部43に支持され、コンクリート床版22の上方に配置される。2つの駆動プーリー61,62は、互いに同じ径である。2つの駆動プーリー61,62それぞれ軸線は、桁軸方向に延びている。2つの駆動プーリー61,62は、桁軸直交方向に間隔をあけて配置されている。2つの駆動プーリー61,62は、それぞれ移動駆動部44のモーター(不図示)に接続されている。2つの駆動プーリー61,62は、それぞれの回転数が同じとなり同調するように制御される。これにより、第2駆動プーリー62がワイヤーソー5を送り出す力と、第1駆動プーリー61がワイヤーソー5を引き戻す力とが同じ大きさとなる。その結果、ワイヤーソー5は、張った状態となり、弛みが抑えられる。
【0022】
2つの駆動プーリー61,62のうち、桁軸直交方向の一方側に配置される駆動プーリー61を第1駆動プーリー61と表記し、桁軸直交方向の他方側に配置される駆動プーリー62を第2駆動プーリー62と表記する。第1駆動プーリー61は、第1桁上床版241の上方となる位置に設置される。第2駆動プーリー62は、を第2桁上床版242の上方となる位置に設置される。
【0023】
自在プーリー63,64は、それぞれプーリー支持部43に支持されている。自在プーリー63,64のうちの一方を第1自在プーリー63と表記し、他方を第2自在プーリー64と表記する。第1自在プーリー63は、第1溝部281の内部に設置される。第2自在プーリー64は、第2溝部282の内部に設置される。第1自在プーリー63および第2自在プーリー64は、ワイヤーソー5が第1溝部281および第2溝部282の内部では上下方向に移動し、第1溝部281および第2溝部282の下方では切断位置27の高さにおいて移動するようにワイヤーソー5の移動方向を切り替える。
【0024】
第1自在プーリー63および第2自在プーリー64は、プーリー支持部43に上下方向に延びる軸線631,641回りに回転可能に支持されている。第1自在プーリー63および第2自在プーリー64の回転軸632,642は、自在プーリー63,64が上下方向に延びる軸線631,641回りに回転しても常に水平方向に延びている。本実施形態では、上記の軸線631,641と第1自在プーリー63および第2自在プーリー64の回転軸632,642とは、交差しない。
【0025】
第1自在プーリー63は、ワイヤーソー5の切断部分51の桁軸直交方向の一方側に配置されている。第2自在プーリー64は、ワイヤーソー5の切断部分51の桁軸直交方向の他方側に配置されている。第1自在プーリー63および第2自在プーリー64が上下方向に延びる軸線631,641回りに回転可能であることにより、プーリー支持部43に対する切断部分51の桁軸方向の位置を調整できる。例えば、切断部3が桁軸方向の一方側に移動する場合と、他方側に移動する場合とで。プーリー支持部43に対する切断部分51の桁軸方向の位置を調整できる。
【0026】
補助プーリー65は、ワイヤーソー5を送り出す向きを切り替える部分に適宜設けられている。補助プーリー65は、プーリー支持部43に対して設置される位置を調整できるように構成されていてもよい。
【0027】
循環回転するワイヤーソー5は、第1駆動プーリー61に送り出されて下方に向かい、第1溝部281を通過し、第1自在プーリー63に到達すると切断位置27の高さで桁軸直交方向の他方側に向かい、第2自在プーリー64に到達すると上方に向かい第2溝部282を通過して第2駆動プーリー62に到達し、桁軸直交方向の他方側に移動して第1駆動プーリー61の位置に戻る。ワイヤーソー5は、第1駆動プーリー61に送り出され、第2駆動プーリー62に引き戻されるようにして循環回転し、第1自在プーリー63と第2自在プーリー64との間の切断部分51がコンクリート床版22を切断する。
【0028】
次に、合成桁2からコンクリート床版22を切断する方法について説明する。
まず、コンクリート床版22の切断を行う領域に第1溝部281および第2溝部282を形成する。必要に応じて、切断開始時のワイヤーソー5が設置するための桁軸直交方向に延びる桁軸直交溝部を、切断を行う切断スパンにおける切断を開始する側の端部(桁軸方向の一方側の端部)に、桁軸直交方向に延びる桁軸直交溝部を形成する。桁軸直交溝部は、上方に開口する溝部であり、底部が切断位置27に達している。桁軸直交溝部は、切断開始時のワイヤーソー5が設置するために設けられる。本実施形態では、桁軸直交溝部の底部の高さが切断位置27の高さと一致している。切断位置27の高さは、例えば鋼桁21の上面の20mm程度上方である。切断を行う切断スパンよりも桁軸方向の一方側のコンクリート床版22が既に切断され、切断開始時のワイヤーソー5を切断位置27の高さに設置可能な場合は、桁軸直交溝部の形成は不要である。
【0029】
続いて、切断装置1を設置する切断装置設置工程を行う。
切断装置設置工程では、コンクリート床版22の上に一対のレール41,41を桁軸方向に延びる向きに設置する。一対のレール41,41の設置高さは、切断精度と直結するため、一対のレール41,41を設置する際には、設置高さを精度良く調整する。
一対のレール41,41上に、台車42および複数のプーリー61-65を取り付けたプーリー支持部43を設置する。
第1駆動プーリー61が第1桁上床版241の上方となり、第2駆動プーリー62が第2桁上床版242の上方となるように、第1駆動プーリー61および第2駆動プーリー62の位置を調整する。第1自在プーリー63を第1溝部281に配置し、第2自在プーリー64を第2溝部282に配置する。
【0030】
複数のプーリー61-65にワイヤーソー5を巻き掛ける。ワイヤーソー5の切断部分51を切断位置27の高さに配置する。ワイヤーソー5を、桁軸直交方向から見て、第1桁上床版241と、第2桁上床版242と、第1桁上床版241と第2桁上床版242との間の桁間床版25と、を囲むように設置する。
ワイヤーソー5の切断部分51が第1自在プーリー63および第2自在プーリー64よりも後側(桁軸方向の一方側)となるように、切断部分51、第1自在プーリー63および第2自在プーリー64の位置および向きを調整する。
【0031】
続いて、コンクリート床版を切断する切断工程を行う。
切断工程では、第1駆動プーリー61および第2駆動プーリー62を同調させて回転させてワイヤーソー5を循環回転させるとともに、台車42を桁軸方向の一方側から他方側に走行させる。台車42の走行とともに循環回転するワイヤーソー5が桁軸方向の一方側から他方側に移動する。
これにより、第1桁上床版241および第2桁上床版242が鋼桁21から切断される。
【0032】
ワイヤーソー5が切断スパンにおける切断完了位置(桁軸方向の他方側の端部)まで到達したら、切断を行った領域と、この領域よりも桁軸方向の他方側で第1桁上床版241および第2桁上床版242が複数の鋼桁21と接合されている領域と、を切り離す工程を行う。
本実施形態の切断装置1は、第1自在プーリー63および第2自在プーリー64がプーリー支持部43に昇降可能に支持され、ワイヤーソー5の切断部分51を昇降させることができる。本実施形態では、切断部分51を上昇させて上記の切断を行った領域を、その領域よりも桁軸方向の他方側の領域から切り離す。なお切断を行った領域を、その領域よりも桁軸方向の他方側の領域から切り離す工程は、切断装置1とは別のロードカッターなどを用いて行ってもよい。
【0033】
続いて、切断されたコンクリート床版22を撤去し、コンクリート床版22の残りの部分、すなわち、切断位置27よりも下側の部分を、チッピングハンマーやウォータージェットなどで斫って撤去する。
【0034】
次に、本実施形態によるコンクリート床版の切断方法の作用・効果について説明する。
本実施形態によるコンクリート床版の切断方法では、回転数を同調させた第1駆動プーリー61および第2駆動プーリー62にワイヤーソー5を巻き掛けることにより、ワイヤーソー5が第1駆動プーリー61から送り出されて第2駆動プーリー62に巻き取られる形態となるため、1つの駆動プーリーによって巻き出されて巻き取られる場合と比べて、施工速度を向上できるとともに、ワイヤーソー5の弛みを抑えることができる。このため、ワイヤーソー5を桁軸直交方向に隣り合う2つの桁上床版24,24にわたるように巻き掛けた場合でも、ワイヤーソー5が弛みにくく、桁軸方向に隣り合う2つの桁上床版24,24を同時に切断できる。切断速度が向上することによって、施工速度を上げることができる。
【0035】
桁上床版24を1つずつワイヤーソー5で切断する場合、隣接する桁間床版25を先行して切断し、支保工で支持する必要がある。本実施形態によるコンクリート床版の切断方法では、桁軸方向に隣り合う2つの桁上床版24,24をその間の桁間床版25に接続された状態のまま鋼桁21から切断する。このため、本実施形態によるコンクリート床版の切断方法では、桁間床版25を支持する支保工を設置する必要が無く、支保工の設置や撤去にかかる時間や労力を削減できる。
また、ワイヤーソー5の弛みを抑えることができるため、切断位置27を鋼桁21の上面に近づけても鋼桁21を損傷する虞が無い。切断位置27を鋼桁21の上面に近づけることにより、切断位置27よりも下側の部分をチッピングハンマーやウォータージェットなどで斫って撤去する作業を軽減できる。
【0036】
また、本実施形態によるコンクリート床版の切断方法コンクリート床版の切断方法では、第1駆動プーリー61を第1桁上床版241の上方に配置し、第2駆動プーリー62を第2桁上床版242の上方に配置している。
このような構成とすることにより、第1駆動プーリー61と第2駆動プーリー62とが切断領域における桁軸直交方向の両端部近傍に離れて配置されるため、切断領域全体にわたってワイヤーソー5の弛みを抑えることができる。
【0037】
以上、本発明によるコンクリート床版の切断方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、ワイヤーソー5を桁軸直交方向に隣り合う2つの桁上床版24,24にわたるように巻き掛けて、桁軸方向に隣り合う2つの桁上床版24,24を同時に切断しているが、ワイヤーソー5を桁軸直交方向に隣り合う3つ以上の桁上床版24,24にわたるように巻き掛けて、桁軸方向に隣り合う3つ以上の桁上床版24,24を同時に切断するようにしてもよい。
【0038】
上記の実施形態では、第1駆動プーリー61を第1桁上床版241の上方に配置し、第2駆動プーリー62を第2桁上床版242の上方に配置しているが、第1駆動プーリー61および第2駆動プーリー62の配置は適宜設定されてよい。
【0039】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。
本実施形態に係るコンクリート床版の切断方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「12.つくる責任 つかう責任」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0040】
2 合成桁
3 切断部
4 移動部
5 ワイヤーソー
21 鋼桁
22 コンクリート床版
24 桁上床版
25 桁間床版
27 切断位置
43 プーリー支持部
44 移動駆動部
51 切断部分
61 第1駆動プーリー
62 第2駆動プーリー
241 第1桁上床版
242 第2桁上床版
図1
図2
図3