(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151514
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】非接触給電システム、送電装置の試験方法、送電装置、および受電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/70 20160101AFI20241018BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241018BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20241018BHJP
B60M 7/00 20060101ALN20241018BHJP
B60L 5/00 20060101ALN20241018BHJP
B60L 53/122 20190101ALN20241018BHJP
B60L 53/66 20190101ALN20241018BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/10
G01R31/00
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/122
B60L53/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064898
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】谷 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
【テーマコード(参考)】
2G036
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
2G036AA16
2G036AA19
2G036BA12
2G036BA37
2G036CA10
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC04
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC27
5H125BC21
5H125CC06
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】非接触給電において、送電コイルの切り替えを試験する技術を提供する。
【解決手段】非接触給電を行う送電装置100、100cの性能を試験する非接触給電システム10~10cであって、非接触給電により、受電装置200、200cに電力Piの送電を行う送電装置と、電力を受電する受電装置と、を備え、送電装置は、送電を行う送電コイル110と、送電コイルに送電のための電力を出力する電源130と、送電装置を制御する第1制御部120、120a、120bと、を備え、受電装置は、受電を行う受電コイル210を備え、第1制御部は、出力を制御する複数のモードMであって、出力を予め定められた第1周期C1で変化させる周期切替モードM2を含む複数のモードを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電を行う送電装置(100、100c)の性能を試験する非接触給電システム(10、10a、10b、10c)であって、
前記非接触給電により、受電装置(200、200c)に電力(Pi)の送電を行う前記送電装置と、
前記電力を受電する前記受電装置と、を備え、
前記送電装置は、
前記送電を行う送電コイル(110)と、
前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源(130)と、
前記送電装置を制御する第1制御部(120、120a、120b)と、を備え、
前記受電装置は、
前記受電を行う受電コイル(210)を備え
前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモード(M)であって、前記出力を予め定められた第1周期(C1)で変化させる周期切替モード(M2)を含む前記複数のモードを備える、非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、さらに、
前記複数のモードは、さらに、前記出力を周期的に変化させない通常モード(M1)を含む、非接触給電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、外部からの操作により少なくとも前記第1周期の情報を入力する入力部(140)を備える、非接触給電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の非接触給電システムであって、
前記第1周期は、前記出力を実行する第1期間(Ton)と、前記出力を停止する第2期間(Toff)と、の合計時間を1周期とした場合の前記第1周期であり、
前記複数のモードは、さらに、前記第1期間と前記第2期間が異なるオンオフ切替モード(M3)を含み、
前記オンオフ切替モードは、前記第1周期の情報に基づいて、前記出力を制御する、非接触給電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の非接触給電システムであって、
前記電力は、前記第1周期よりも短い第2周期(C2)の交流電力であり、
前記入力部は、前記第2周期の情報を入力可能であり、
前記複数のモードは、前記第1期間中の前記第2周期を変化させる効率可変モード(M4)を含む、非接触給電システム。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の非接触給電システムであって、
前記受電装置は、前記複数のモードのうち1つのモードを選択するモード情報を、前記送電装置に送信する受電通信部(240)を備え、
前記送電装置は、前記受電装置の前記受電通信部と前記モード情報を通信する送電通信部(150)を備え、
前記第1制御部は、前記モード情報に基づいて、前記複数のモードのうち1つのモードを実行する、非接触給電システム。
【請求項7】
非接触給電を行う送電装置の性能を試験する試験方法であって、
(a)前記非接触給電により、受電装置に電力の送電を行う前記送電装置であって、前記送電を行う送電コイルと、前記送電コイルに、前記送電のための前記電力(Pi)を出力する電源と、前記送電装置を制御する第1制御部と、を準備する工程と、
(b)前記試験のために、前記電力を受電するための受電コイルを備えた前記受電装置、を準備する工程と、
(c)前記性能を測定する試験装置を準備する工程と、
(d)前記送電コイルと前記受電コイルが前記非接触給電の可能な範囲内において、前記送電コイルと前記受電コイルを、それぞれが対向しないあらかじめ定められた相対位置に配置する工程と、
(e)予め定められた周期で前記出力を行う工程と、を含む試験方法。
【請求項8】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、さらに、
前記受電装置は、前記試験のための標準器である、非接触給電システム。
【請求項9】
非接触給電システムにおいて、非接触給電の性能を試験される送電装置であって、
前記非接触給電システムは、
前記非接触給電により、受電装置に電力の送電を行う前記送電装置と、
前記電力を受電する前記受電装置と、を備え、
前記送電装置は、
前記送電を行う送電コイルと、
前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源と、
前記送電装置を制御する第1制御部と、を備え、
前記受電装置は、
前記受電を行う受電コイルを備え
前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモードであって、前記出力を予め定められた第1周期で変化させる周期切替モードを含む複数のモードを備える、送電装置。
【請求項10】
非接触給電を行う送電装置の性能を試験する非接触給電システムの受電装置であって、
前記非接触給電システムは、
前記非接触給電により、受電装置に電力の送電を行う前記送電装置と、
前記電力を受電する前記受電装置と、を備え、
前記送電装置は、
前記送電を行う送電コイルと、
前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源と、
前記送電装置を制御する第1制御部と、を備え、
前記受電装置は、
前記受電を行う受電コイルを備え
前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモードであって、前記出力を予め定められた第1周期で変化させる周期切替モードを含む複数のモードを備える、受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電システム、送電装置の試験方法、送電装置、および受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定置の非接触給電のEMC試験は、非特許文献1のように、送電コイルと受電コイルの位置に、位置ずれがある場合と、位置ずれがなく対向している場合と、において連続給電した状態で行われる。
【0003】
非接触給電を行う車両の状態は、停車状態と走行状態とに分かれる。走行状態による給電は、複数の送電コイルにより構成された送電路において、送電コイルを切り替えながら走行することで行われる。このとき、非接触給電装置は、送電コイルの切り替わりによる出力の変動により、切り替わりの周期に依存したノイズが発生する懸念がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Wireless Power Transfer for Light-Duty Plug-in/Electric Vehicles and Alignment Methodology」、SAE J2954、SAE International、2020年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
停車状態の給電に対するEMC試験は、通常、アンテナと供試品の距離を10mにして行われる。すなわち、10m法電波暗室が必要である。走行状態の給電に対するEMC試験は、送電コイルの切り替えが必要であるため、送電コイルに対して受電コイルを移動させることで切り替えを行う。このため、走行状態の給電に対するEMC試験は、停車状態の給電に対するEMC試験に比べて、広い電波暗室で行われる。よって、走行状態の給電に対するEMC試験は、停止状態の給電に対するEMC試験に比べて、試験費用が高価になるため、容易に実施できない。
【0006】
さらに、送電コイルの切り替わりによる非接触給電装置の動作は、経時的な装置や環境の変化によっても変わる場合がある。しかし、例えば、送電コイルが地下に敷設されている場合、点検は容易にできない。したがって、容易に送電コイルの切り替えを試験できる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
本開示の第1形態によれば、非接触給電を行う送電装置(100、100c)の性能を試験する非接触給電システム(10~10c)が提供される。前記非接触給電システムは、前記非接触給電により、受電装置(200、200c)に電力(Pi)の送電を行う前記送電装置と、前記電力を受電する前記受電装置と、を備える。前記送電装置は、前記送電を行う送電コイル(110)と、前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源(130)と、前記送電装置を制御する第1制御部(120、120a、120b)と、を備える。前記受電装置は、前記受電を行う受電コイル(210)を備える。前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモードであって、前記出力を予め定められた第1周期(C1)で変化させる周期切替モード(M2)を含む複数のモード(M)を備える。
【0009】
このような態様とすることで、送電装置は、周期切替モードにおいて、送電のための電力を予め定められた第1周期で出力する。例えば、受電装置として電気自動車を例に挙げた場合、電気自動車は、走行中に送電コイルを切り替えながら受電を行う。このため、送電装置は、送電コイルの切り替わりに応じて、電力を出力する。送電コイルの切り替えは、電気自動車の走行速度に基づく周期により生じる。よって、非接触給電システムは、周期切替モードの第1周期を走行速度に基づく周期に設定することで、電気自動車を走行させずに、送電コイルの切り替え時の送電装置の性能を試験できる。したがって、非接触給電システムは、停止状態で送電コイルの切り替えを試験できるため、走行状態で行うよりも、容易に試験できる。
【0010】
本開示の第2形態によれば、非接触給電を行う送電装置の性能を試験する試験方法が提供される。この試験方法は、(a)前記非接触給電により、受電装置に電力の送電を行う前記送電装置であって、前記送電を行う送電コイルと、前記送電コイルに、前記送電のための前記電力を出力する電源と、前記送電装置を制御する第1制御部と、を準備する工程と、(b)前記試験のために、前記電力を受電するための受電コイルを備えた前記受電装置、を準備する工程と、(c)前記性能を測定する試験装置を準備する工程と、(d)前記送電コイルと前記受電コイルが前記非接触給電の可能な範囲内において、前記送電コイルと前記受電コイルを、それぞれが対向しないあらかじめ定められた相対位置に配置する工程と、(e)予め定められた周期で前記出力を行う工程と、を含む。
【0011】
このような態様とすることで、本開示の試験方法は、送電コイルに対して受電コイルの相対位置を変えることで、送電装置の試験を送電コイルと受電コイルの電磁気的な結合状態に合わせて試験できる。例えば、受電装置として電気自動車を例に挙げた場合、電気自動車は、走行中に送電コイルを切り替えながら受電を行う。このとき、送電コイルに対する受電コイルの相対位置は、電気自動車の移動に合わせて変化するため、電磁気的な結合状態が変化する。したがって、本開示の試験方法は、実際の非接触給電における送電コイルと受電コイルの結合状態に応じた切り替え位置に合わせることで、送電装置をより実使用時に合わせて試験できる。さらに、本開示の試験方法は、電源の出力を、送電コイルの切り替えに応じた周期で出力させることで、走行状態よりも容易に、停止状態で送電コイルの切り替えを試験できる。
【0012】
本開示の第3形態によれば、非接触給電システムにおいて、非接触給電の性能を試験される送電装置が提供される。前記非接触給電システムは、前記非接触給電により、受電装置に電力の送電を行う前記送電装置と、前記電力を受電する前記受電装置と、を備える。前記送電装置は、前記送電を行う送電コイルと、前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源と、前記送電装置を制御する第1制御部と、を備える。前記受電装置は、前記受電を行う受電コイルを備える。前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモードであって、前記出力を予め定められた第1周期で変化させる周期切替モードを含む複数のモードを備える。
【0013】
このような態様とすることで、送電装置は、周期切替モードにおいて、送電のための電力を予め定められた第1周期で出力する。例えば、受電装置として電気自動車を例に挙げた場合、電気自動車は、走行中に送電コイルを切り替えながら受電を行う。このため、送電装置は、送電コイルの切り替わりに応じて、電力を出力する。送電コイルの切り替えは、電気自動車の走行速度に基づく周期により生じる。よって、非接触給電システムは、周期切替モードの第1周期を走行速度に基づく周期に設定することで、電気自動車を走行させずに、送電コイルの切り替え時の送電装置の性能を試験できる。したがって、非接触給電システムは、停止状態で送電コイルの切り替えを試験できるため、走行状態で行うよりも、容易に試験できる。
【0014】
本開示の第4形態によれば、非接触給電を行う送電装置の性能を試験する非接触給電システムの受電装置が提供される。前記非接触給電システムは、前記非接触給電により、前記受電装置に電力の送電を行う前記送電装置と、前記電力を受電する前記受電装置と、を備える。前記送電装置は、前記送電を行う送電コイルと、前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源と、前記送電装置を制御する第1制御部と、を備える。前記受電装置は、前記受電を行う受電コイルを備える。前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモードであって、前記出力を予め定められた第1周期で変化させる周期切替モードを含む複数のモードを備える。
【0015】
このような態様とすることで、送電装置は、周期切替モードにおいて、送電のための電力を予め定められた第1周期で出力する。例えば、受電装置として電気自動車を例に挙げた場合、電気自動車は、走行中に送電コイルを切り替えながら受電を行う。このため、送電装置は、送電コイルの切り替わりに応じて、電力を出力する。送電コイルの切り替えは、電気自動車の走行速度に基づく周期により生じる。よって、非接触給電システムは、周期切替モードの第1周期を走行速度に基づく周期に設定することで、電気自動車を走行させずに、送電コイルの切り替え時の送電装置の性能を試験できる。したがって、非接触給電システムは、停止状態で送電コイルの切り替えを試験できるため、走行状態で行うよりも、容易に試験できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の非接触給電システムの概略構成を示す説明図。
【
図4】電源の通常モード時の出力電流の波形を示す説明図。
【
図5】電源の周期切替モード時の出力電流の波形を示す説明図。
【
図6】非接触給電システムによる試験の工程を示すフローチャート。
【
図7】第2実施形態の第1制御部の機能的な構成を示す説明図。
【
図8】第3実施形態の第1制御部の機能的な構成を示す説明図。
【
図9】電源の効率可変モード時の出力電流の波形を示す説明図。
【
図10】第4実施形態の非接触給電システムの概略構成を示す説明図。
【
図11】送電コイルと受電コイルの相対位置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A1.非接触給電システムの構成:
図1に示す非接触給電システム10は、非接触給電を行う送電装置100の性能を試験する。より具体的には、非接触給電システム10は、送電コイル110の切り替え時における送電装置100の性能を試験する。例えば、送電装置100の性能の試験とは、EMC試験や非接触給電の給電効率などである。非接触給電システム10は、送電装置100と、受電装置200と、試験装置300と、を備える。
【0018】
送電装置100は、非接触給電により受電装置200に電力の送電を行う。より具体的には、送電装置100の備える送電コイル110により、受電コイル210を備える受電装置200に非接触で電力を給電する。送電コイル110と受電コイル210は、磁界共振結合により非接触で電力の伝送を行う。例えば、送電装置100は、敷設された送電コイル110から、受電コイル210を備えた電気自動車EVに非接触で給電を行う充電スタンドである。送電装置100は、送電コイル110と、第1制御部120と、電源130と、入力部140と、を備える。
【0019】
電源130は、送電コイル110に送電のための電力を出力する。電源130は、商用交流電源131と、整流回路132と、インバータ133と、により構成される。商用交流電源131は、整流回路132と電気的に接続される。整流回路132は、インバータ133と電気的に接続される。商用交流電源131は、商用周波数の交流電力Pgを整流回路132に出力する。整流回路132は、受け取った商用周波数の交流電力Pgを直流電力に変換する。
【0020】
インバータ133は、整流回路132から出力された直流電力を、送電コイル110による送電に必要な周波数の交流電力Piに変換する。より具体的には、インバータ133は、後に説明する送電コイル110と受電コイル210の共振周波数に基づく交流電力Piを出力する。インバータ133は、例えば、フルブリッジ接続された4個のスイッチング素子Q1~Q4から構成されたフルブリッジインバータである。
図1では、インバータ133の入出力の理解を容易にするため、インバータ133に繋がる整流回路132と送電コイル110の2本の線は、電気回路の入出力ラインとして図示されている。
【0021】
インバータ133において、スイッチング素子Q1~Q4は、第1制御部120から供給されるスイッチ制御信号によりオン状態とオフ状態が制御される。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q4のペアと、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q3のペアとが交互にオン状態になることにより、各ペアの中間点MP1と中間点MP2のそれぞれに接続された送電コイル110には、送電のための電力として交流電力Piが供給される。交流電力Piの周波数を、給電周波数Fpともよぶ。すなわち、給電周波数Fpは、交流電力Piのためのスイッチング素子Q1~Q4の動作周波数である。なお、本実施形態において、給電周波数Fpと共振周波数は、略一致させた状態として説明する。さらに、インバータ133の出力と電源130の出力は、同じ意味として扱う。
【0022】
送電コイル110は、受電装置200に電力の送電を行う。より具体的には、送電コイル110は、コンデンサを含む共振回路である。送電コイル110は、例えば、受電コイル210と電磁気的に結合した状態において、共振周波数を85kHzになるように設計された共振回路である。送電コイル110は、インバータ133に接続されることで、インバータ133から85kHzの交流電力Piを受ける。送電コイル110は、インバータ133から受け取った交流電力Piにより、交流磁界を発生させる。よって、受電コイル210は、送電コイル110から受けた交流磁界に共振することで、電力を受け取る。送電コイル110の配置については、後に説明する。なお、インバータ133と送電コイル110の間にノイズ抑制用のフィルタを挿入する場合もある。
【0023】
さらに、送電コイル110の共振回路は、直列共振回路である。よって、例えば、インバータ133から85kHzの矩形波の交流電圧が出力される場合、送電コイル110としての共振回路は、85kHzの正弦波の交流電流を出力する。よって、後に説明する図面において、送電のための電力としての電源130の出力電流は、正弦波として図示している。なお、共振の形態としては、並列共振など様々な共振方式へも適用できる。
【0024】
図2に示す第1制御部120は、送電装置100を制御する。より具体的には、第1制御部120は、インバータ133のスイッチング素子Q1~スイッチング素子Q4を制御することで、送電装置100による送電を制御する。
【0025】
第1制御部120は、プロセッサ121とROM122とRAM123とを備える。ROM122は、読み出し専用の半導体メモリであり、インバータ133の制御のための制御プログラムを予め記憶している。
【0026】
ROM122は、電源130の制御のモードMとして、通常モードM1と、周期切替モードM2と、を備える。各モードについては、後に詳細に説明する。
【0027】
RAM123は、半導体メモリであるメインメモリと、補助記憶装置であるハードディスクもしくはソリッドステートドライブなどと、を含む。RAM123は、電源130の制御に必要な情報を記憶する。より具体的には、RAM123は、電源130の制御のモードMのパラメータとしての周期情報Cと、制御のモードMのモード情報Sと、を記憶する。これら情報については、後に説明する。
【0028】
プロセッサ121は、ROM122に記憶された各種プログラムを実施することで、各部の機能を実現する。プロセッサ121は、RAM123を使用して、処理に必要な情報の記憶を行う。プロセッサ121の具体的な機能は、後に詳細に説明する。
【0029】
第1制御部120は、インバータ133のスイッチング素子Q1~スイッチング素子Q4に、駆動回路を介して接続されている。駆動回路は、第1制御部120からの制御信号に応じて、スイッチング素子Q1~スイッチング素子Q4を駆動させるためのスイッチ制御信号を出力する。技術の理解を容易にするため、
図1では駆動回路の図示が省略されている。
【0030】
入力部140は、電源130を制御するための情報を入力する。より具体的には、入力部140は、外部からの操作により少なくとも周期情報Cを入力する。入力部140は、例えば、スイッチである。スイッチは、第1制御部120に電気的に接続される。スイッチは、切り替え操作により、第1制御部120に信号を入力することで、周期情報Cやモード情報Sを変更する。
【0031】
試験装置300は、送電装置100の性能を試験する。試験装置300は、例えば、EMC試験機や電力計である。EMC試験機としての試験装置300は、EMC試験機により、送電コイル110の切り替え時のEMCを試験する。電力計としての試験装置300は、電源130と負荷230に接続されることで、非接触給電される電力の給電効率を測定する。
【0032】
受電装置200は、電力を受電する。より具体的には、受電装置200は、送電装置100の試験のために受電を行う標準器である。受電装置200は、受電コイル210と、整流回路220と、負荷230と、を備える。
【0033】
受電コイル210は、送電コイル110から電力を受電する。受電コイル210は、より具体的には、コンデンサを含み共振回路を構成している。受電コイル210は、例えば、送電コイル110と電磁気的に結合した状態において、共振周波数を85kHzになるように設計された共振回路である。受電コイル210は、送電コイル110からの交流磁界を受ける。受電コイル210は、整流回路220に接続されている。よって、受電コイル210は、交流磁界に共振することで生じた誘導起電力により生じた交流電力を整流回路220に出力する。
【0034】
受電コイル210は、送電コイル110と対向する向きで配置されている。さらに、受電コイル210は、送電コイル110と給電可能な範囲Lonに位置する。例えば、
図3に示すように、複数の送電コイル110が敷設された道路Ro上を、受電コイル210を備えた電気自動車EVが走行する場合を例として説明する。複数の送電コイル110は、電気自動車EVの矢印Am10としての進行方向Am10に沿って等間隔に配列されている状態である。
【0035】
複数の送電コイル110が敷設された道路Ro上には、送電コイル110が受電コイル210に、給電可能な範囲と給電不可能な範囲とが存在する。なお、給電の可能と不可能の判断は、送電コイル110と受電コイル210の電磁気的な結合状態に基づいて判断される。進行方向Am10に平行な方向の長さについて、給電可能な範囲を長さLonとし、給電不可能な範囲を長さLoffとした場合、受電コイル210は、給電可能な範囲Lonに位置する。以下の説明において、長さLonと長さLoffの合計を、走行中の電気自動車EVの給電の間隔として間隔Lとよぶ。なお、長さLonは、送電コイル110の幅に相当する長さR1とは異なる長さである。より具体的には、隣り合う送電コイル110との間における送電コイル110の存在しない範囲を長さR2とした場合、各長さは、長さR1<長さLonと、長さR2>長さLoffと、の関係にある。これらの関係は、等間隔に配列されたそれぞれの送電コイルにおいても同じである。なおここでは
図3に基づく寸法の関係を示しているが、これらの寸法はコイル形状等により様々なバリエーション、例えば受電コイル210の方が送電コイル110より長い場合や複数の送電コイル110から1つの受電コイル210で送電する場合等、がある。
【0036】
受電コイル210は、長さLonの給電可能な範囲に位置する場合、磁界共振結合により共振回路のインピーダンスが低下することで、受電する。このとき、電源130は、出力のオン期間Tonの状態として、交流電力Piのための電流を出力している状態である。受電コイル210は、送電コイル110の長さLoffの給電不可能な位置する場合、共振回路のインピーダンスが高いため、受電できない。このとき、電源130は、出力のオフ期間Toffの状態として、電流を出力していない状態である。出力のオン期間Tonと、出力のオフ期間Toffと、については、後に説明する。出力のオン期間Tonを、第1期間Tonともよぶ。出力のオフ期間Toffを、第2期間Toffともよぶ。
【0037】
図1に示す整流回路220は、受電コイル210から受け取った交流電力を直流電力に変換する。整流回路220は、受電コイル210と負荷230と電気的に接続されている。よって、整流回路220は、変換した直流電力を負荷230に出力する。
【0038】
負荷230は、受電した電力を使用する装置である。より具体的には、負荷230は、電子負荷である。負荷230は、受電装置200が標準試験器であるため、実際に送電装置100から送電を受ける受電装置200の有する負荷を模擬する。負荷230は、例えば、電気自動車EVの場合、バッテリーに相当する。
【0039】
A2:通常モード:
第1制御部120は、電源130の出力を制御する複数のモードMを備える。より具体的には、第1制御部120は、通常モードM1と、周期切替モードM2と、を備える。各モードMは、インバータ133のスイッチング素子Q1~スイッチング素子Q4の制御のモードMである。各モードMは、入力部140により複数のモードMのうち1つのモードMを選択するモード情報Sを受けることで選択される。
【0040】
通常モードM1は、電源130の出力を周期的に変化させないモードMである。より具体的には、通常モードM1時のスイッチング素子Q1~スイッチング素子Q4は、送電コイル110と受電コイル210の共振周波数に基づく給電周波数Fpで駆動している状態である。すなわち、通常モードM1は、試験装置300による試験のためのモードMではなく、送電装置100の実使用時の電源130の出力のモードMである。例えば、インバータ133が送電コイル110と受電コイル210の共振周波数の85kHzに合わせた交流電力Piを出力する場合、
図4に示すように、通常モードM1は、インバータ133の出力の間、給電周波数Fpとして周波数85kHzの交流電流を出力する。なお、
図4では、通常モードM1時の電源130により、定常状態の出力電流の波形が示されている。
【0041】
A3:周期切替モード:
周期切替モードM2は、電源130の出力を予め定められた第1周期で変化させる。より具体的には、周期切替モードM2は、送電装置100の実使用時に生じる送電コイル110の切り替えの周期で、電源130の出力を変化させる。
【0042】
送電コイル110の切り替えは、例えば、
図3に示すように、受電コイル210を備えた電気自動車EVが走行中に複数の送電コイル110から受電する場合に生じる。受電コイル210は、進行方向Am10に長さLoffの給電不可能な範囲を通過することで、次の給電可能な範囲に到達する。よって、受電コイル210は、送電コイル110を切り替えながら非接触給電を行う。すなわち、送電コイル110の切り替えの周期は、受電コイル210に送電を行う送電コイル110の対象が変わる周期である。この周期を、第1周期C1とよぶ。
【0043】
前述のように、受電コイル210が給電可能な範囲または給電不可能な範囲に位置することで、電源130から出力される電流の状態が変わる。より具体的には、電源130の出力電流は、
図5に示すように、電流の出力される出力のオン期間Tonと、電流の出力されない出力のオフ期間Toffと、の期間有する。すなわち、第1周期C1の期間は、電源130の出力を実行する出力のオン期間Tonと、電源130の出力を停止する出力のオフ期間Toffと、の合計時間を1周期とした期間である。出力のオン期間Tonにおいて、受電コイル210は、長さLonの範囲としての、送電コイル110との給電可能な範囲に位置する。出力のオフ期間Toffにおいて、受電コイル210は、長さLoffの範囲としての、送電コイル110との給電不可能な範囲に位置する。
【0044】
よって、送電コイル110の切り替えの第1周期C1は、電気自動車EVの走行速度Vと、送電コイル110の間隔Lと、により決定される。より具体的には、第1周期C1は、C1=L/Vとして算出される。例えば、走行速度Vを100km/hとし、送電コイル110の間隔Lを1mとした場合、第1周期C1は、0.036secである。すなわち、周波数は、約27Hzである。
【0045】
さらに、第1周期C1における出力のオン期間Tonの比は、送電コイル110と受電コイルの間隔Lにおける給電可能な範囲の長さLonの比と同じであるこの比を、デューティ比Donとした場合デューティ比Donは、Don=Lon/(Lon+Loff)として算出される。よって、出力のオン期間Tonは、Ton=Don×C1として算出される。出力のオフ期間Toffは、Toff=C1-Tonとして算出される。
【0046】
周期切替モードM2は、インバータ133を制御することにより、
図5に示す電流の状態を発生させる。より具体的には、周期切替モードM2は、出力のオフ期間Toffにおいて、インバータ133のスイッチング素子Q1~スイッチング素子Q4を全てオフ状態にする。周期切替モードM2は、出力のオン期間Tonにおいて、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q4のペアと、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q3のペアと、が送電コイル110と受電コイル210の共振周波数に基づく給電周波数Fpにより、交互にオン状態とオフ状態に動作させる。すなわち、周期切替モードM2は、給電周波数Fpの周期よりも長い第1周期C1により、出力のオフ期間Toffとしてインバータ133の出力を停止させる。
【0047】
なお、出力のオフ期間Toffは、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q4のペアや、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q3のペアが貫通電流を防止するために、スイッチング素子Q1~スイッチング素子Q4がオフ状態となるデッドタイムとは異なる期間である。
【0048】
周期切替モードM2において、周期情報Cとしての、第1周期C1と出力のオン期間Tonと、出力のオフ期間Toffと、は、前述のように、送電装置100の実使用時の条件により決定される。周期情報Cは、入力部140により操作により設定される。
【0049】
したがって、周期切替モードM2は、出力のオフ期間Toffを有する第1周期C1により電源130の出力を制御することで、送電コイル110の切り替えを模擬できる。なお、技術の理解を容易にするため、
図5では、出力のオン期間Tonと出力のオフ期間Toffのそれぞれの期間の定常状態における電流波形が示されている。
【0050】
A4:試験方法:
図6に示す非接触給電システム10による試験の工程を示すフローチャートである。非接触給電システム10は、
図6に示すフローに従い、送電装置100の性能を試験する。
【0051】
図6のステップS110において、試験を行う作業者は、非接触給電により、受電装置200に電力の送電を行う送電装置100を準備する。より具体的には、作業者は、送電を行う送電コイル110と、送電コイル110に、送電のための電力を出力する電源130と、送電装置100を制御する第1制御部120と、を準備する。すなわち、作業者は、試験対象となる送電装置100を準備する。
【0052】
図6のステップS120において、作業者は、試験のために、電力を受電するための受電コイル210を備えた受電装置200、を準備する。より具体的には、作業者は、受電コイル210と、整流回路220と、負荷230と、を備えた標準試験器としての受電装置200を準備する。
【0053】
図6のステップS130において、作業者は、送電装置100の性能を測定する試験装置300を準備する。すなわち、EMC試験の場合、作業者は、EMC測定用のアンテナや、電波暗室に送電装置100や受電装置200を設置するための準備を行う。非接触給電の給電効率の測定の場合、作業者は、電力計を送電装置100と受電装置200のそれぞれに接続するための準備を行う。
【0054】
図6のステップS140において、作業者は、電源130の制御のモードMを周期切替モードM2に設定する。より具体的には、作業者は、入力部140の操作によるモード情報Sの指示により、周期切替モードM2に設定する。なお、このとき、作業者は、入力部140により周期情報Cも設定する。
【0055】
図6のステップS150において、作業者は、電源130の制御のモードMを選択した後に、送電コイル110と受電コイル210の相対位置を決定する。すなわち、受電コイル210は、給電可能な範囲に配置される。
【0056】
図6のステップS160において、作業者は、送電装置100により予め定められた第1周期で送電のための電力の出力を行う。すなわち、作業者は、周期切替モードM2を設定された電源130により、非接触給電を開始する。
【0057】
図6のステップS170において、作業者は、試験を実施する。例えば、作業者は、試験装置300により、非接触給電システム10のEMC試験や非接触給電の給電効率の測定を行う。
【0058】
したがって、このような態様とすることで、送電装置100は、周期切替モードM2において、送電のための電力を予め定められた第1周期で出力する。例えば、受電装置200として電気自動車EVを例に挙げた場合、電気自動車EVは、走行中に送電コイル110を切り替えながら受電を行う。このため、送電装置100は、送電コイル110の切り替わりに応じて、電力を出力する。送電コイル110の切り替えは、電気自動車EVの走行速度Vに基づく周期により生じる。よって、非接触給電システム10は、周期切替モードM2の第1周期C1を走行速度Vに基づく周期に設定することで、電気自動車EVを走行させずに、送電コイル110の切り替え時の送電装置100の性能を試験できる。したがって、非接触給電システム10は、停止状態で送電コイル110の切り替えを試験できるため、走行状態で行うよりも、容易に試験できる。
【0059】
さらに、送電装置100は、通常モードM1と周期切替モードM2を切り替えられる。このため、非接触給電システム10は、使用時に送電装置100を通常モードM1で動作させ、試験時のみ送電装置100を周期切替モードM2で動作させることができる。よって、非接触給電システム10は、実際に使用されている送電装置100を、試験用に制御の書き換えを必要とせずに、容易に試験できる。
【0060】
このうえ、受電装置200は、試験用の標準器であるため、送電装置100を複数試験する場合に、比較が容易となる。
【0061】
B.第2実施形態:
第2実施形態の非接触給電システム10aにおいて、電源130の出力を制御する複数のモードMは、
図7に示すように、さらに、出力のオン期間Tonと出力のオフ期間Toffが異なるオンオフ切替モードM3を含む。オンオフ切替モードM3は、第1周期C1の情報に基づいて、電源130の出力を制御する。オンオフ切替モードM3は、第1制御部120aのROM122に記憶されている。第2実施形態の非接触給電システム10aの他の構成は、第1実施形態の非接触給電システム10と同様である。
【0062】
オンオフ切替モードM3は、出力のオン期間Tonと出力のオフ期間Toffが異なる。すなわち、オンオフ切替モードM3は、デューティ比Donが0.5以外の状態である。周期情報Cは、出力のオン期間Tonと、出力のオフ期間Toffを含む情報である。よって、オンオフ切替モードM3では、出力のオン期間Tonと出力のオフ期間Toffは、入力部140により設定される。すなわち、オンオフ切替モードM3は、デューティ比Donを変更できる。
【0063】
このような態様とすることで、実際の給電可能な範囲と給電不可能な範囲の比に応じて、試験することが可能となる。
【0064】
C.第3実施形態:
第3実施形態の非接触給電システム10bにおいて、電源130の出力を制御する複数のモードMは、
図8に示すように、さらに、効率可変モードM4を含む。効率可変モードM4は、第1制御部120bのROM122に記憶されている。さらに、第3実施形態の入力部140は、第2周期C2の情報を入力できる。第2周期C2は、交流電力Piの給電周波数Fpの周期である。第2周期C2は、RAM123に記憶される。第3実施形態の非接触給電システム10bの他の構成は、第2実施形態の非接触給電システム10aと同様である。
【0065】
効率可変モードM4は、出力のオン期間Ton中の第2周期C2を変化させる。より具体的には、効率可変モードM4において、第2周期C2は、出力のオン期間Tonの開始から次第に長くなるように変化する。例えば、
図9に示すように、効率可変モードM4は、第2周期C2を、周期Ca~周期Ccの3段階に変化させる。例えば、周期Ca~周期Ccは、順に周期11.1nsecと周期11.8nsecと周期12.7nsecであり、周波数として周波数90kHzと周波数85kHzと周波数79kHzである。
【0066】
効率可変モードM4では、第2周期C2の情報は、入力部140からの操作により入力される。効率可変モードM4は、第2周期C2を、第1周期C1よりも短い周期の範囲内で変化させる。よって、例えば、第2周期C2は、前述の例のように、第1周期C1として0.036secとした場合、0.036secよりも短い周期である。
【0067】
このような態様とすることで、例えば、送電コイル110と受電コイル210としての、地上コイルと車両コイルの相対位置に応じて給電周波数Fpを変更する場合を模擬した試験が可能となる。
【0068】
D.第4実施形態:
図10に示す第4実施形態の非接触給電システム10cにおいて、受電装置200cは、複数のモードMのうち1つのモードMを選択するモード情報Sを送電装置100cに送信する受電通信部240を備える。さらに、送電装置100cは、受電装置200cの受電通信部240とモード情報Sを通信する送電通信部150を備える。第4実施形態の非接触給電システム10cの他の構成は、第3実施形態の非接触給電システム10bと同様である。
【0069】
送電通信部150は、受電装置200cの受電通信部240と、インバータ133の制御に係わる情報を通信する。すなわち、送電通信部150は、モードMを選択するモード情報Sを通信する。例えば、送電通信部150は、Bluetooth(登録商標)により通信可能なハードウェアモジュールである。送電通信部150は、第1制御部120に通信線により接続されている。
【0070】
受電通信部240は、送電装置100cの送電通信部150と通信する。受電通信部240は、Bluetooth(登録商標)により無線通信可能なハードウェアモジュールである。受電通信部240は、第2入力部も備える。受電通信部240は、第2入力部から入力されたモードMを選択するモード情報Sを、無線通信により送電通信部150に送信する。
【0071】
このような態様とすることで、非接触給電システム10は、受電装置200からの指示により送電装置100の試験を開始できる。例えば、送電装置100を敷設した状態であっても、非接触給電システム10は、受電装置200から容易に送電装置100を試験できる。
【0072】
E.第5実施形態:
第5実施形態の非接触給電システム10において、送電コイル110と受電コイル210は、それぞれが対向しないあらかじめ定められた相対位置に配置される。
【0073】
図11では、送電コイル110に対する受電コイル210の位置が示されている。より具体的には、
図11では、受電コイル210の位置として、長さLonの給電可能な範囲内の任意の位置P1と、長さLoffの給電不可能な範囲内の任意の位置P3と、長さLonと長さLoffの範囲をまたぐ任意の位置P2と、が示されている。第5実施形態の非接触給電システム10は、受電コイル210を位置P1~位置P3のいずれかに配置させた状態において、上記実施形態による試験を行う。なお、位置P2と位置P3は、送電コイル110と受電コイル210が対向しない相対位置である。すなわち、第5実施形態の非接触給電システム10において、送電コイル110と受電コイル210は、それぞれが対向しない相対位置にも配置される。
【0074】
例えば、送電装置100の実使用の例としての電気自動車EVの場合、受電コイル210は、位置P1~位置P3の状態に遷移しながら非接触給電を行う。送電コイル110と受電コイル210の電磁気的な結合状態は、位置P1~位置P3のそれぞれにおいて異なる。すなわち、位置P1~位置P3のそれぞれにおいて、給電効率やEMCの状態が異なる。
【0075】
位置P2は、給電可能な範囲から給電不可能な範囲に遷移する位置であり、受電コイル210の切り替えが開始する位置である。よって、位置P2に受電コイル210を配置することで、送電コイル110と受電コイル210の相対位置の条件を、送電装置100の実使用時に生じる送電コイル110の切り替えの条件に近づけることができる。
【0076】
さらに、位置P1~位置P3のそれぞれの位置において、上記実施形態の試験を実施することで、送電装置100の実使用時の送電コイル110と受電コイル210の電磁気的な結合により近い状態で試験できる。
【0077】
なお、試験方法として、送電コイル110と受電コイル210の相対位置の決定は、
図6のフローチャートにおいて、ステップS150の工程の際に行われる。
【0078】
このような態様とすることで、第5実施形態の非接触給電システム10による試験方法は、送電コイル110に対して受電コイル210の相対位置を変えることで、送電装置100の試験を送電コイル110と受電コイル210の電磁気的な結合状態に合わせて試験できる。例えば、受電装置200として電気自動車EVを例に挙げた場合、電気自動車EVは、走行中に送電コイル110を切り替えながら受電を行う。このとき、送電コイル110に対する受電コイル210の相対位置は、電気自動車EVの移動に合わせて変化するため、電磁気的な結合状態が変化する。したがって、本開示の試験方法は、実際の非接触給電における送電コイル110と受電コイル210の結合状態に応じた切り替え位置に合わせることで、送電装置100をより実使用時に合わせて試験できる。さらに、本開示の試験方法は、電源130の出力を、例えば、送電コイル110の切り替えに応じた周期で出力させることで、走行状態よりも容易に、停止状態で送電コイル110の切り替えを試験できる。
【0079】
F.変形例:
(1)上記実施形態では、入力部140は、外部からの装置をスイッチ以外の態様により入力されてもよい。第1制御部120に電源130の制御に必要な情報を送れる態様であればよい。例えば、第1制御部120と接続可能な汎用コンピュータのキーボードの操作により、周期情報Cやモード情報Sなどの情報を入力してもよい。
(2)上記実施形態では、受電装置200は、送電装置100の試験のために受電を行う標準器である。しかし、受電装置200は、標準器ではなく送電装置100の実使用時に受電をする受電装置200でもよい。例えば、電気自動車EV用の充電スタンドとしての送電装置100を試験する場合、受電装置200として電気自動車EVを用いてもよい。
(3)上記実施形態では、給電可能な範囲と給電不可能な範囲は、送電コイル110と受電コイル210の電磁気的な結合状態に基づいて判断されているが、他の方法により判断されてもよい。例えば、これらの範囲は、送電コイルの外径に基づく範囲から判断されてもよい。
(4)上記実施形態では、第1制御部120は、予め通常モードM1と周期切替モードM2を備えている。しかし、第1制御部120は、周期切替モードM2のみを備えた態様でもよい。すなわち、試験のために、第1制御部120は、周期切替モードM2のみを書き込まれた状態でもよい。
(5)上記実施形態では、電源130の出力を制御する複数のモードMは、ROM122に記憶されている。しかし、電源130の出力を制御する複数のモードMは、RAM123に記憶されていてもよい。
(6)上記実施形態では、電源130は、インバータ133により電源130の出力の制御を行っている。しかし、電源130は、他の構成により出力の制御を行ってもよい。例えば、電源130は、リニアアンプを備えることで、出力の制御を行ってもよい。
(7)上記実施形態では、送電装置100は、入力部140を備えている。しかし、送電装置100は、入力部140を備えていなくてもよい。例えば、第1制御部120は、予め周期情報Cを記憶しておくことで、入力部140からの入力を必要としない態様でもよい。
(8)上記実施形態では、入力部140は、周期情報Cとモード情報Sを入力する。しかし、入力部140は、周期情報Cのみを入力してもよい。
(9)上記実施形態では、周期情報Cは、第1周期C1と、出力のオン期間Tonと、出力のオフ期間Toffと、を含む。しかし、周期情報Cは、一部の情報を含む態様や、他の情報を含む態様でもよい。例えば、周期情報Cは、第1周期C1と出力のオン期間Tonのみを有した態様や、第1周期C1とデューティ比Donを有した態様でもよい。
(10)上記実施形態では、第2周期C2は、第1周期C1よりも短い周期である。しかし、第2周期C2は、共振周波数に基づく周期の範囲でもよい。例えば、共振周波数が85kHzの場合、第2周期C2は、周波数85kHzを含む周波数79kHz~90kHzの範囲、すなわち、周期11nsec~13nsecの範囲でもよい。
(11)上記実施形態では、送電装置100cと受電装置200cの通信は、受電通信部240と送電通信部150により行われる。しかし、送電装置100cと受電装置200cは、受電通信部240と送電通信部150を備えていなくてもよい。送電装置100と受電装置200が有線接続に接続される態様でもよい。すなわち、受電装置200は、電源130の出力の制御のための情報を入力できる入力部を備えることで、情報を有線通信により送電装置100に通信する態様でもよい。
(12)上記実施形態では、効率可変モードM4は、
図9に示すように、第2周期C2を、出力のオン期間Tonの開始から次第に長くなるように変化させる。しかし、効率可変モードM4は、3段階に限らず、2段階以上の複数段階で第2周期C2を変化させてもよい。効率可変モードM4は、第2周期C2を、出力のオン期間Tonの開始から次第に短くなるように変化させてもよい。
(13)上記実施形態では、送電通信部150と受電通信部240は、Bluetooth(登録商標)により無線通信を行っている。しかし、送電通信部150と受電通信部240は、IrDA(登録商標)、Zigbee(登録商標)、または、Wi-Fi(登録商標)などの無線LANにより無線通信を行ってもよい。
(14)上記実施形態では、出力のオン期間Tonと、出力のオフ期間Toffと、第1周期C1と、は、インバータ133により制御されている。しかし、これらは、インバータ133以外により制御されてもよい。例えば、電源130は、整流回路132とインバータ133との間にリレーを備えることで、インバータ133に入力される電力を制御してもよい。すなわち、電源130は、リレーを制御することで、出力のオン期間Tonと、出力のオフ期間Toffと、第1周期C1と、を制御してもよい。
(15)上記実施形態では、試験装置300は、EMC試験や給電効率を試験するための試験装置である。しかし、試験装置300は、他の試験装置でもよい。例えば、試験装置300は、電源130の回路の動作確認するためのオシロスコープや、素子の温度上昇を測定するサーモグラフィカメラなどでもよい。また、送電装置100あるいは受電装置200内で測定した電流や電圧の値を受け取り、用いることも可能である。
(16)上記実施形態では、送電装置100は、1つの送電コイル110を備え、受電装置200は、1つの受電コイル210を備えている。しかし、送電装置100は、1以上の送電コイル110を備えていてもよい。さらに、受電装置200も、1以上の受電コイル210を備えていてもよい。
(17)上記実施形態では、受電通信部240は、第2入力部を備えることで、モード情報Sを入力されている。しかし、受電通信部240は、第2入力部を備えていなくてもよい。受電通信部240は、第2入力部の入力を必要とせず、予め記憶したモード情報Sを送電通信部150に送信する態様でもよい。
【0080】
本開示は、上記の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上記の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上記の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0081】
他の形態:
本開示の特徴を以下の通り示す。
(形態1)
非接触給電を行う送電装置(100、100c)の性能を試験する非接触給電システム(10~10c)であって、
前記非接触給電により、受電装置(200、200c)に電力(Pi)の送電を行う前記送電装置と、
前記電力を受電する前記受電装置と、を備え、
前記送電装置は、
前記送電を行う送電コイル(110)と、
前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源(130)と、
前記送電装置を制御する第1制御部(120、120a、120b)と、を備え、
前記受電装置は、
前記受電を行う受電コイル(210)を備え
前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモード(M)であって、前記出力を予め定められた第1周期(C1)で変化させる周期切替モード(M2)を含む前記複数のモードを備える、非接触給電システム。
(形態2)
形態1に記載の非接触給電システムであって、さらに、
前記複数のモードは、さらに、前記出力を周期的に変化させない通常モード(M1)を含む、非接触給電システム。
(形態3)
形態2に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、外部からの操作により少なくとも前記第1周期の情報を入力する入力部(140)を備える、非接触給電システム。
(形態4)
形態3に記載の非接触給電システムであって、
前記第1周期は、前記出力を実行する第1期間(Ton)と、前記出力を停止する第2期間(Toff)と、の合計時間を1周期とした場合の前記第1周期であり、
前記複数のモードは、さらに、前記第1期間と前記第2期間が異なるオンオフ切替モード(M3)を含み、
前記オンオフ切替モードは、前記第1周期の情報に基づいて、前記出力を制御する、非接触給電システム。
(形態5)
形態4に記載の非接触給電システムであって、
前記電力は、前記第1周期よりも短い第2周期(C2)の交流電力であり、
前記入力部は、前記第2周期の情報を入力可能であり、
前記複数のモードは、前記第1期間中の前記第2周期を変化させる効率可変モード(M4)を含む、非接触給電システム。
(形態6)
形態2から5のいずれか1項に記載の非接触給電システムであって、
前記受電装置は、前記複数のモードのうち1つのモードを選択するモード情報を、前記送電装置に送信する受電通信部(240)を備え、
前記送電装置は、前記受電装置の前記受電通信部と前記モード情報を通信する送電通信部(150)を備え、
前記第1制御部は、前記モード情報に基づいて、前記複数のモードのうち1つのモードを実行する、非接触給電システム。
(形態7)
非接触給電を行う送電装置の性能を試験する試験方法であって、
(a)前記非接触給電により、受電装置に電力の送電を行う前記送電装置であって、前記送電を行う送電コイルと、前記送電コイルに、前記送電のための前記電力(Pi)を出力する電源と、前記送電装置を制御する第1制御部と、を準備する工程と、
(b)前記試験のために、前記電力を受電するための受電コイルを備えた前記受電装置、を準備する工程と、
(c)前記性能を測定する試験装置を準備する工程と、
(d)前記送電コイルと前記受電コイルが前記非接触給電の可能な範囲内において、前記送電コイルと前記受電コイルを、それぞれが対向しないあらかじめ定められた相対位置に配置する工程と、
(e)予め定められた周期で前記出力を行う工程と、
を含む試験方法。
(形態8)
形態1に記載の非接触給電システムであって、さらに、
前記受電装置は、前記試験のための標準器である、非接触給電システム。
(形態9)
非接触給電システムにおいて、非接触給電の性能を試験される送電装置であって、
前記非接触給電システムは、
前記非接触給電により、受電装置に電力の送電を行う前記送電装置と、
前記電力を受電する前記受電装置と、を備え、
前記送電装置は、
前記送電を行う送電コイルと、
前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源と、
前記送電装置を制御する第1制御部と、を備え、
前記受電装置は、
前記受電を行う受電コイルを備え
前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモードであって、前記出力を予め定められた第1周期で変化させる周期切替モードを含む複数のモードを備える、送電装置。
(形態10)
非接触給電を行う送電装置の性能を試験する非接触給電システムの受電装置であって、
前記非接触給電システムは、
前記非接触給電により、前記受電装置に電力の送電を行う前記送電装置と、
前記電力を受電する前記受電装置と、を備え、
前記送電装置は、
前記送電を行う送電コイルと、
前記送電コイルに前記送電のための前記電力を出力する電源と、
前記送電装置を制御する第1制御部と、を備え、
前記受電装置は、
前記受電を行う受電コイルを備え
前記第1制御部は、前記出力を制御する複数のモードであって、前記出力を予め定められた第1周期で変化させる周期切替モードを含む複数のモードを備える、受電装置。
【符号の説明】
【0082】
10,10a,10b,10c…非接触給電システム、100,100c…送電装置、110…送電コイル、120,120a,120b…第1制御部、121…プロセッサ、122…ROM、123…RAM、130…電源、131…商用交流電源、132…整流回路、133…インバータ、140…入力部、150…送電通信部、200,200c…受電装置、210…受電コイル、220…整流回路、230…負荷、240…受電通信部、300…試験装置、Am10…進行方向、C…周期情報、C1…第1周期、C2…第2周期、Don…デューティ比、EV…電気自動車、Ca~Cc…周期、Fp…給電周波数、L…間隔、Lon,Loff,R1,R2,…長さ、M…モード、M1…通常モード、M2…周期切替モード、M3…オンオフ切替モード、M4…効率可変モード、MP1,MP2…中間点、P1,P2,P3…位置、Pg,Pi…交流電力、Q1,Q2,Q3,Q4…スイッチング素子、S…モード情報、Toff…第2期間、Ton…第1期間、V…走行速度