(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151519
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】発信機
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G08B17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064929
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大下 剛
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠馬
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA02
5G405CA60
5G405FA04
(57)【要約】
【課題】設置個所の内装に馴染み易いとともに、発信機としての機能を損なうおそれのない応答灯付き発信機を提供する。
【解決手段】前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチ(11)を内蔵した本体部(10)と、本体部の前方に配置されて開口部を有する前面カバー(22)と、押しボタンスイッチの前方であって前記開口部に位置するように配置された透光性を有する保護板(21)とを備えた発信機において、前記前面カバーの表面には、色により防災機器として認知されるように全体的に同系色が施され、前記保護板の後方には、押しボタンスイッチがオン状態にされたことに応じて点灯される発光色が白色の応答灯(18)が設けられているようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体部と、前記本体部の前方に配置された開口部を有する前面カバーと、前記押しボタンスイッチの前方であって前記開口部の近傍に位置するように配置された透光性を有する保護板と、を備えた発信機であって、
前記前面カバーの表面には、全体的に同系色が施され、
前記保護板の後方には、前記押しボタンスイッチがオン状態にされたことに応じて点灯される発光色が白色の応答灯が設けられていることを特徴とする発信機。
【請求項2】
前記保護板は前記前面カバーの表面色と同系色の色を有していることを特徴とする請求項1に記載の発信機。
【請求項3】
前記保護板は無色透明な材料で形成されており、前記保護板の背面に位置する部分には前記前面カバーの表面色と同系色の色が施されていることを特徴とする請求項1に記載の発信機。
【請求項4】
前記保護板は、前方に鍔部を有し該鍔部の背面に後方へ向かって突出するロッド部を有し、
前記本体部は、前記ロッド部の後端部と対向する位置に前記応答灯が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の発信機。
【請求項5】
前記前面カバーは、前面から後方へ向かって窪んだ凹部を有し、前記凹部の底部に前記開口部が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の発信機。
【請求項6】
前記保護板は、前記鍔部が前記開口部よりも前方に位置するように配設されていることを特徴とする請求項4に記載の発信機。
【請求項7】
前記前面カバーは、導光部材と当該導光部材の前面に接合された透光性を有する表層とからなり、
前記導光部材は、開口部の縁部近傍から外縁部近傍まで全径方向のうち少なくとも一部の径方向の領域が導光部として形成され、
前記前面カバーの後方に光源が配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の発信機。
【請求項8】
前記導光部材の裏面には複数の溝が形成されており、前記複数の溝の形成態様が異なることによって前記前面カバーの前面における単位面積当たりの光の放出量が異なるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンを備え緊急事態の発生時に操作されることで警報を発する緊急報知用の発信機、さらには押しボタンが押圧操作された際に点灯する応答灯を備えた発信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部には火災など緊急事態の発生を知らせるために、手動の押しボタン(保護板)を備えた発信機が建物の壁面に適切な高さで設置されている。緊急事態の発生時には、発見者が発信機の押しボタンを強く押して内部のスイッチをオンさせることにより、緊急事態の発生を知らせる信号が受信機等へ伝送されると共に、発信機の近傍に設けられるベルから警報音が発せられて、周囲の人に対し緊急事態の発生を知らせることができるようになっている。
【0003】
また、発信機には、押しボタンが押圧操作され内部のスイッチがオンされると、操作者に認知させるために点灯する応答灯を設けているものがある(例えば特許文献1)。なお、従来の応答灯付きの発信機における応答灯の発光色は赤色が一般的であった。
【0004】
そこで、赤色系統の色を有する本体と、透光性を有する板からなる押釦と、該押釦が操作されると火災信号を火災受信機に出力し、火災受信機から応答信号を受信すると点灯又は点滅する応答灯とを有し、該発信機の周囲を囲むように発光する表示灯が一体に構成された発信機において、表示灯はリング状に赤色系統で点灯又は点滅し、応答灯は青色系統の色で点灯又は点滅し、表示灯の色とは異なる色で点灯するようにした発明が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-210984号公報
【特許文献2】特開2018-28935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、防災機器においては、建物内のデザインの観点から小型化や色の統一化等を施して、設置個所の周囲の環境すなわち建物の内装と馴染むような意匠が要求されている。一方で、色を用いて機能や状態を示している防災機器においては、内装に対応して色を統一してしまうと、防災機器として要求される機能に支障が生じてしまうおそれがある。特に、従来の発信機においては一般に本体が赤色で保護板が黒色で構成されているため、保護板越しに応答灯の赤色発光を視認できるが、保護板も赤色系で構成される場合においては、応答灯の点灯が分かりにくくなる。
また、特許文献2の発信機は、赤色系の色で点灯又は点滅する表示灯に対して、応答灯は青色系の色で点灯又は点滅するように構成されている。そのため、応答灯自体の点灯は視認し易いものの、色に統一性がないため建物の内装に馴染みにくいという課題がある。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、内装に馴染みつつ防災機器として認知され、発信機としての機能を損なうおそれのない応答灯付きの発信機を提供することにある。
本発明の他の目的は、設置個所の内装に馴染み易い応答灯付きの発信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、
前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体部と、前記本体部の前方に配置された開口部を有する前面カバーと、前記押しボタンスイッチの前方であって前記開口部の近傍に位置するように配置された透光性を有する保護板と、を備えた発信機において、
前記前面カバーの表面には、全体的に同系色が施され、
前記保護板の後方には、前記押しボタンスイッチがオン状態にされたことに応じて点灯される発光色が白色の応答灯が設けられているように構成したものである。
【0009】
上記のような構成によれば、応答灯が白色であるため、応答灯が点灯された際に保護板が前面カバーの表面色と異なる色相になるのを回避しながら火災信号を発したことを操作者に認知させる機能を損なわないようにすることができる。さらに、応答灯の点灯色が前面カバーの表面色と異なる色相にならないため、発信機が設置個所の内装に馴染み易くすることができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記保護板は前記前面カバーの表面色と同系色の色を有しているようにする。
かかる構成によれば、応答灯の非点灯状態においてはもちろんのこと点灯状態においても、発信機カバー部全体が同系色の色に統一されるため、火災信号を発したことを認知させつつ発信機が設置個所の内装に馴染み易くすることができる。
【0011】
また、望ましくは、前記保護板は無色透明な材料で形成されており、前記保護板の背面に位置する部分には前記前面カバーの表面色と同系色の色が施されているようにする。
かかる構成によれば、保護板が透明で背面の前面カバーの表面色と同系色の色が透けて見えるため、遠距離からは一体性のあるデザインを有する発信機として視認されるとともに、操作のために近づいた際には保護板を認識することができるため、押圧操作すべき箇所を容易に認知することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記保護板は、前方に鍔部を有し、該鍔部の背面に後方へ向かって突出するロッド部を有し、
前記本体部は、前記ロッド部の後端部と対向する位置に前記応答灯が設けられているようにする。
かかる構成によれば、保護板にロッド部を設けられているため、応答灯が保護板から後方に離れた位置に配設されていたとしても、応答灯の光を保護板の前面まで導いて点灯状態を視認させることができる。
【0013】
また、望ましくは、前記前面カバーは、前面から後方へ向かって窪んだ凹部を有し、前記凹部の底部に前記開口部が設けられているようにする。
従来の発信機においては、一般的に保護板の表面を赤色のカバーとは異なる黒色を施すことで操作時に押圧箇所を分からせるようにしていたため、設置個所の内装に馴染みにくかったが、上記構成によれば、色の差異の代わりに凹陥する形状によって押圧箇所を分からせボタン部(保護板)へ誘導させることができるとともに、意匠的にも内装に馴染み易くなる。
【0014】
また、望ましくは、前記保護板は、前記鍔部が前記開口部よりも前方に位置するように配設する。
従来の発信機においては、保護板の表面を赤色のカバーとは異なる黒色を施すことで操作時に押圧箇所を分からせるようにしていため、設置個所の内装に馴染みにくかったが、上記構成によれば、色の差異の代わりにカバーの前面から突出する形状によって押圧箇所を分からせることができるとともに、意匠的にも内装に馴染み易くなる。
【0015】
また、望ましくは、前記前面カバーは、導光部材と当該導光部材の前面に接合された透光性を有する表層とからなり、
前記導光部材は、開口部の縁部近傍から外縁部近傍まで全径方向のうち少なくとも一部の径方向の領域が導光部として形成され、
前記前面カバーの後方に光源が配設されているようにする。
かかる構成によれば、前面カバーを表示灯として機能させることができるとともに、表示灯と発信機とを一体化させることで、視認性を向上させつつ取り付ける防災機器の数を減らし建物の内装デザインへの影響を低減させることができる。また、ほぼ全面発光する発信機として色彩上の一体化を図ることができる。
【0016】
さらに、望ましくは、前記導光部材の裏面には複数の溝が形成されており、前記複数の溝の形成態様が異なることによって前記前面カバーの前面における単位面積当たりの光の放出量が異なるように構成する。
上記のような構成によれば、表示灯としての発光に明暗を施すことができ、それによって応答灯の点灯時に応答灯を容易に視認することが可能となる。また、発信機全体として色彩上の統一性を図りつつ、応答灯の発光のみが目立つことのない一連の明暗を持つデザインとなることで、デザイン性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る発信機によれば、応答灯を備えている場合においても内装に馴染みつつ防災機器として認知され、発信機としての機能を損なうおそれをなくすことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態の発信機を外方側から見た外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1の発信機の内部構造を示す断面側面図である。
【
図3】本発明の発信機に内蔵される応答灯の発光色の特徴を説明するための色度図(www.my-craft.jp/html/aboutled/led_shikidozu.htmlより引用)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明が適用される発信機は、中央に押しボタン(保護板)を有する外面カバー部と、外面カバー部の内方に設けられ押しボタンの押込み操作によってオン状態にされる押しボタンスイッチ、該スイッチのオンによって信号を生成し火災受信機へ送出する回路基板および火災受信機から応答信号を受信すると点灯又は点滅する応答灯を内蔵した発信機本体部とから構成される。
以下、図面を参照しながら、本発明を適用した応答灯付きの発信機の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、押しボタン(保護板)の外面側を前面または前方と称する。
【0020】
[発信機の構成]
図1及び
図2は本発明を適用した応答灯付きの発信機の一実施形態を示す。このうち、
図1は発信機の全体斜視図、
図2は
図1の発信機の内部構造を示す断面側面図である。
本実施形態の発信機は、
図1に示すように、押しボタンスイッチ11(
図2)を内蔵した箱状の収納ケース12を備えた発信機本体部10と、押しボタンスイッチを保護する押しボタン21(外保護板)を備えその周囲に前面カバー22を有し発信機本体部10の前部に結合された円盤状の発信機カバー部20とから構成されている。
【0021】
図2に示すように、押しボタン21はその背面中央に、内方(後方)へ向かって突出する棒状の押圧ロッド部21aが設けられており、発信機本体部10の収納ケース12内には、上記押圧ロッド部21aの後端面に対向するように、円板状をなし背面中央に内方へ向かって突出する棒状部材13aを有する無色透明な材料からなる内保護板13が配設されている。
【0022】
また、収納ケース12内には、上記内保護板13の棒状部材13aの後端に対向する位置に押しボタンスイッチ11を実装した回路基板14が配設されている。図示しないが、この回路基板14には、上記押しボタンスイッチ11のオンによって信号を生成し外部へ送出する回路が設けられている。また、回路基板14には、棒状部材13aの後端に対向する位置に、発光色が白色である応答灯18が実装されており、この応答灯18から発せられた光が棒状部材13aの後端から入射し、内保護板13の前面より出射されるように構成されている。
【0023】
さらに、回路基板14の背面には、信号を火災受信機へ伝送する外部の配線の端部が接続される端子を備えた端子台15が設けられている。
また、収納ケース12には、内保護板13の外周壁を案内する外側ガイド部16aと内保護板13の棒状部材13aと嵌合してこれを案内する内側ガイド部16bとを有するガイド部材16が、収納ケース12と一体に形成されている。収納ケース12の後端には、埃や異物の侵入を防止するための防塵カバー17が被着されている。一方、収納ケース12の前端側には、フランジ状のプレート部12aが設けられており、プレート部12aの前面側には複数の係合爪12bが設けられている。
【0024】
発信機カバー部20の前面カバー22は、
図2に示すように、押しボタンスイッチ11を内蔵した上記収納ケース12の前面側開口を覆うように結合された円板状の本体プレート22Aと、該本体プレート22Aの外面に接合された導光板22Bと、導光板22Bの前面に接合されたカバー部材22Cとを備える。カバー部材22Cの表面は、防災機器として認知され易い赤色系の色が施されている。そして、この前面カバー22の中央に開口部が設けられ、押しボタンスイッチ11を保護する外保護板としての押しボタン21が配設されている。なお、カバー部材22Cの色としては、赤色系の色の他に例えば黄色系等でもよく、いわゆる警告色であると好ましい。
【0025】
また、前面カバー22の本体プレート22Aは、中央に円板状の内側平坦部22a、その周囲にすり鉢状部22b、さらにその周囲に円環状をなす外側平坦部22cを有し、外側平坦部22cの周縁には後方へ向かって折曲された短円筒状をなす庇部22dが形成されている。また、本体プレート22Aの中央の背面には、後方へ向かって突出する円筒部22eが設けられ、この円筒部22eに、上記押しボタン21の背面に後方へ向かって突出するように形成されたロッド部21aが挿通されている。
【0026】
上記押しボタン21は無色透明もしくは発信機カバー部20の表面色である赤色系の色と同系色を有する透光性材料で形成され、ロッド部21aの後端面が上記内保護板13の前面に対向されており、内保護板13の前面から出射された応答灯18の光はロッド部21aの後端面より入射し、押しボタン21の前面より放出されるように構成されている。また、上記押しボタン21には鍔部21cが設けられている。なお、押しボタン21は鍔部21cがないもしくは鍔部21cが小さな形状のものであっても良い。
【0027】
さらに、円筒部22eの内周面には、一対の係止爪22fが形成されているとともに、ロッド部21aの外周には上記係止爪22fが軸方向移動可能に係合される一対の溝21bが形成されている。この溝21bの後端部は閉塞されて段差を有しており、押しボタン21が前方へ移動した際に、この段差が係止爪22fに当接することで、それ以上の前方への移動が阻止される。つまり、押しボタン21が前方へ抜けるのを規制する位置規制手段として機能する。
また、本体プレート22Aの前面側の中央には、押しボタン21のロッド部21aを囲繞するように、円筒形をなす壁体部22gが設けられており、この壁体部22gは押しボタン21を押し込んだ際のストッパとして機能する。
【0028】
なお、発信機カバー部20の本体プレート22Aは、その背面に設けられた係合爪22hが、前記収納ケース12のプレート部12aの係合爪12bに係合することで、収納ケース12の前端に結合されている。本体プレート22Aは、係合爪22hと係合爪12bとが互いに円周方向にずれている状態で、先ず収納ケース12の前端に接触され、それから少し回転されることで、係合爪22hが係合爪12bに噛み合うように構成されている。これにより、発信機本体部10の外面側に発信機カバー部20を装着することができる。ただし、本体プレート22Aと収納ケース12は、プレート部12aにてビスによって結合するように構成しても良い。
【0029】
一方、上記導光板22Bは、その中央に、押しボタン21のロッド部21aが挿通される円形の開口が形成されている。また、導光板22Bは、本体プレート22Aの形状に対応して、中央にすり鉢状部、その周囲に円環状をなす平坦部を有し、平坦部の周縁には外方へ向かって折曲された短円筒状をなす庇部22jが形成されている。
また、本実施形態の発信機においては、発信機カバー部20の本体プレート22Aの内側平坦部22aの前面に、光源として機能する複数の発光素子(LED:発光ダイオード)23が出射部を前方に向けた状態で実装された回路基板24が配設されている。
【0030】
また、導光板22Bは、中央の開口の縁部の後端に光入射面が形成され、この光入射面に、上記発光素子23の出射部が対向するように配設されている。なお、上記複数の発光素子23は、開口の縁部の光入射面に対応して環状に配設されている。
上記発光素子23の発光色は、例えば従来の表示灯と同様な赤色とされる。赤色の発光素子を使用する代わりに、白色の発光素子を使用し導光板22Bを形成する導光材として赤色に着色されたものを使用するようにしても良い。
【0031】
押しボタン21のロッド部21aは、本体プレート22Aの円筒部22eの内周面に沿って前後に移動可能であり、押しボタン21の外面の押圧部が指で押されると、押圧ロッド部21aが内方へ移動して後端面が収納ケース12内の内保護板13を後方へ移動させ、内保護板13の棒状部材13aの後端が押しボタンスイッチ11のアクチュエータに当たってスイッチをオンさせる。
また、押しボタン21は全体が透光性を有する材料で形成されているため、上記発光素子23から出射された光の一部が押しボタン21の鍔部21cの背面より入射し前面より出射することにより、押しボタン21の表面が発光するように構成されても良い。
【0032】
さらに、本実施形態の発信機においては、導光板22B全体がアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂のような光透過性を有する導光材により形成されている。ここで、導光材とは、内部に光反射粒子が混入もしくは裏面に微細な溝が形成されることで、入射された光が表面と裏面で反射を繰り返して進み、途中で一部の光が光反射粒子または微細な溝に当たって方向を変えて前面側から放出されることで、前面カバー22全体が明るく発光する構造を有する。これにより、前面カバー22が表示灯として機能することとなる。なお、導光板22B全体を導光材により形成する代わりに、径方向の一部の領域が導光材により形成されているようにしても良い。なお、発光素子23を設けないことで、前面カバー22が表示灯として機能しない構成も可能である。
【0033】
さらに、導光板22Bの裏面の溝は前面視で同心円をなすように形成するとともに、中心からの距離に応じて溝の深さが異なるように形成することで、導光板22Bに沿って誘導されて来た光が上記溝の斜面に当たって方向を変え、カバー部材22Cの表面より前方へ放出される。この際、溝が深いほど反射する光の量が多くなって明るくなるようにすることができる。
例えば、カバー部材22Cの最も膨らんでいる部分が最も明るくなり、外側および内側へ向かうほど徐々に明るさが低下するように、溝の深さを設定する。また、溝の深さを変える代わりに、溝のピッチを変化させて、カバー部材22Cの最も膨らんでいる部分において最もピッチが狭く密になり、外側および内側へ向かうほど徐々にピッチが大きくなるように、溝を形成しても良い。
【0034】
一方、発信機カバー部20のカバー部材22Cは、シリコーン樹脂等の透光性を有し形状を保持可能な軟質材料で形成され、この保形部材の表面が例えばメタ系アミド繊維のような柔軟性および耐熱性があり弾性を有する素材からなるファブリック(布)等で形成された表皮22kで被覆されている。そして、カバー部材22Cには、導光板22Bの外縁部の庇部22jを側部から背部まで表皮22kで覆うように形成されている。
【0035】
さらに、上記表皮22kには赤色系の色に着色されているものが使用されている。また、表皮22kの中央部分には開口が形成され、この開口に押しボタン21のロッド部21aが挿通されることで、表皮22kが鍔部21cの背面に接しており、押しボタン21の前方から表皮22kの色が透けて見える状態になる。また、押しボタン21の後方の円筒部22eの前面は、前述したように前面カバー22の表面色と同系色の赤色である。そのため、押しボタン21の背面に位置する部分には前記前面カバー22の表面色と同系色の色が施されていることとなる。
【0036】
上記構成により、発信機カバー部20の表面全体が赤色系の色となり、防災機器として認知される機能を満たすことができる。また、発光素子23がなく前面カバー22が表示灯として機能しない場合にも、表面色によって防災機器として認知される機能を有することができる。
さらに、軟質材料で形成されたカバー部材22Cがあることで、発信機カバー部20の前面に外部から衝撃が加わったとしても保形部材が変形して衝撃を吸収し、表面の損傷を防止できるとともに、庇部22jからの光の放出で発信機側方からの視認性を高めることができる。また、保形部材の表面がファブリックからなる表皮22kで覆われているため、導光板22Bにより導かれて来た光を拡散または透過させて外方へ放出することで、ぼんやりとした柔らかな質感を与えることができる。
【0037】
さらに、発信機カバー部20は、
図2に示すように、押しボタン21の裏面で表皮22kの中央を押さえ込んだ状態で、カバー部材22Cの中央部が収納ケース12側へ凹んだ形状であるため、形状によって押しボタン21の位置すなわち押圧操作すべき位置を分かり易くし誘導することができる。
また、前面カバー22の前面側が湾曲しているとともに、前述したように、カバー部材22Cの最も膨らんでいる部分が最も明るくなり、外側および内側へ向かうほど徐々に明るさが低下するように設定することにより、デザイン性が向上し、発信機の設置環境である建物の内装との調和がとれ、内装に馴染み易くなる。
【0038】
なお、カバー部材22Cの最も膨らんでいる部分が最も明るくなり、外側および内側へ向かうほど徐々に明るさが低下するように、導光板22Bの裏面の溝の形成態様を設定する代わりに、カバー部材22Cの外側ほど明るくなるように、導光板22Bの裏面の溝の形成態様を設定しても良い。これにより、カバー部材22Cすなわち表示灯の側方からの視認性を高めることができる。また、前面カバー22の中央側ほど明るくなるように、導光板22Bの裏面の溝の形成態様を設定しても良い。これにより、押しボタン21の視認性を高めることができる。
【0039】
なお、押しボタン21から押力が解除されて表皮22kがその緊張力で定位置まで戻ると、収納ケース12内の押しボタンスイッチ11がオフされるが、火災警報発生の状態は、回路基板14に設けられている電気回路にて自己保持されるように構成されている。そのため、押しボタンスイッチ11がオフしても火災警報状態が維持される。
図2において、収納ケース12内の一点鎖線B1,B2で示されているような部位に、押しボタン21を前方へ付勢する圧縮バネを配設するように構成しても良い。
【0040】
[応答灯の発光色]
次に、本実施形態の発信機における応答灯18の発光色の設定の仕方について、
図3の色度図を用いて説明する。本実施形態の発信機における応答灯18の発光色として白色を採用している。そして、この応答灯18が発した光が入射される内保護板13やその前方に配設された押しボタン21は、無色透明もしくは発信機カバー部20の表面色である赤色系の色と同系色である。そのため、応答灯18が点灯されると、押しボタン21の表面からは、白色または明るい赤色系の光が放出される。
【0041】
ここで、白色は
図3の色度図を参照すると分かるように、赤色とは色温度が非常に離れた色である。従って、押しボタン21の表面から放出される光が白色の光の場合、応答灯の点灯の視認性が良好である。また、押しボタン21の色が防災機器として認識され易い赤色系の光の場合でも、前面カバー22が表示灯として機能している状態で押しボタン21の表面から放出される光の輝度がある程度高いと、周囲の前面カバー22の表面色との対比で白色に近い色として認識されるため、応答灯の点灯の視認性が良好となり、応答灯の点灯を容易に判別することができる。一方、いずれの場合においても、色相上統一されまとまりのある配色となり、防災機器内においても、設置個所の内装に対しても馴染んだデザインとなる。
【0042】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、押しボタン21と応答灯18との間に無色透明な内保護板13が配設されているが、内保護板13を省略して、応答灯18の光を押しボタン21のロッド部21aの後端面より直接入射し、押しボタン21の前面より放出させるように構成しても良い。また、内保護板13は完全に無色透明である必要はなく、多少色が付いていても良い。
【0043】
また、上記実施形態では、押しボタン21の鍔部21cが前面カバー22の中央に形成されている開口の前方に位置しているが、前面カバー22に形成されている開口の内側に押しボタン21の鍔部21cが位置するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、本発明を、主として火災報知システムを構成する火災発信機に適用したものを説明したが、本発明は火災発信機に限定されず、駅のプラットホームや踏切に設置される列車緊急報知用の発信機、トイレや浴室など設置される緊急呼出し用の発信機に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 発信機本体部
11 押しボタンスイッチ
12 収納ケース
12a フランジ状のプレート部
12b 係合爪
13 内保護板
13a 棒状部材
14 回路基板
15 端子台
16 ガイド部材
16a 外側ガイド部
16b 内側ガイド部
17 防塵カバー
18 応答灯
20 発信機カバー部
21 押しボタン(外保護板)
21a ロッド部
21b 溝
21c 鍔部
22 前面カバー
22A 本体プレート
22B 導光板
22C カバー部材
22a 内側平坦部
22b すり鉢状部
22d 庇部
22e 円筒部
22f 係止爪
22g 壁体部
22h 係合爪
22j 庇部
22k 表皮
23 発光素子(LED)
24 回路基板