(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151521
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】風車
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F03D3/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064935
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA13
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC05
3H178DD02X
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】風力エネルギーの取得効率に優れた風車を提供する。
【解決手段】シャフト1と、シャフト1と直交して径外方向に延出し、シャフト1の周りに回転自在な少なくとも二つの腕部材3と、揺動可能な状態で腕部材3に支持されシャフト1を中心に公転する羽根部材4と、羽根部材4の揺動に伴って回転する第1部材G1と、第1部材G1と相対回転し、シャフト1に設けられた第2部材G2と、を備え、第1部材G1と第2部材G2が連結することで、羽根部材4が風の方向に沿う速度成分を有する順風領域A1と、風の方向に逆らう速度成分を有する逆風領域A2と、を交互に公転し揺動する際に、羽根部材4からの伝達トルクが腕部材3の回転トルクに変換される風車F。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトと直交して径外方向に延出し、前記シャフトの周りに回転自在な少なくとも二つの腕部材と、
揺動可能な状態で前記腕部材に支持され前記シャフトを中心に公転する羽根部材と、
前記羽根部材の揺動に伴って回転する第1部材と、
前記第1部材と相対回転し、前記シャフトに設けられた第2部材と、を備え、
前記第1部材と前記第2部材が連結することで、前記羽根部材が風の方向に沿う速度成分を有する順風領域と、風の方向に逆らう速度成分を有する逆風領域と、を交互に公転し揺動する際に、前記羽根部材からの伝達トルクが前記腕部材の回転トルクに変換される風車。
【請求項2】
前記腕部材が、前記羽根部材の揺動軸芯に沿うと共に前記シャフトに直交する揺動軸を備え、
前記揺動軸の一端に前記第1部材としての第1ギアが設けられ、前記シャフトに前記第2部材として前記第1ギアと歯合する第2ギアが設けられ、
前記第1ギアと前記揺動軸との間に、前記羽根部材が前記順風領域にて風に押されて揺動する際に前記揺動軸と前記第1ギアとを一体回転させ、前記羽根部材が前記逆風領域にて風に抗って揺動する際に前記揺動軸と前記第1ギアとを相対回転させる一方向クラッチを備えている請求項1に記載の風車。
【請求項3】
前記揺動軸と平行に前記腕部材に支持された第2軸を備え、
前記第2軸には前記第1ギアと歯合する第3ギアが設けられ、前記第3ギアは前記第2軸との間に、前記一方向クラッチの機能方向に対して逆回転で機能する第2の一方向クラッチを備えており、
前記揺動軸と前記第2軸が同方向に連動回転するよう構成されている請求項2に記載の風車。
【請求項4】
前記羽根部材が、前記腕部材に支持される揺動軸を備えると共に、前記揺動軸が前記シャフトと平行に延出し、前記揺動軸の一端に第1リンクが設けられ、前記腕部材に前記第1リンクと連結アームによって駆動される第2リンクが設けられ、前記腕部材に、前記第2リンクを一端に備えると共に、他端に前記第1部材としての第1ギアを備える中間軸が備えられ、
前記シャフトに前記第2部材として前記第1ギアと歯合する第2ギアが設けられ、
前記第1ギアと前記中間軸との間に、前記羽根部材が前記逆風領域にて風に抗って揺動する際に前記中間軸と前記第1ギアとを一体回転させ、前記羽根部材が前記順風領域にて風に押されて揺動する際に前記中間軸と前記第1ギアとを相対回転させる一方向クラッチを備えている請求項1に記載の風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表に対して垂直に設けられるシャフトと、シャフトに対して径外方向に延出する腕部材と、腕部材に対して揺動する羽根部材と、を備えた風車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような風車としては例えば特許文献1に示すものがある(〔0005〕,〔0006〕
図1参照)。
【0003】
この風車では、主軸1に取り付けられて回転する副軸2の両側に、二つの風受け板3,4が互いに角度を変えて取り付けられている。無風状態では二枚の風受け板3,4は重さの釣り合う姿勢で停止している。これに対し、風のある状態では一方の風受け板3は風圧によって下方の回転止め具5に当たるまで押し下げられ、大きな風力を受ける姿勢となる。他方の風受け板4は風の力で後部上方に押し上げられ、風圧が減少する姿勢となる。このような揺動を繰り返しつつ二枚の風受け板3,4は主軸1の周囲を回転する。
【0004】
二つの風受け板3,4の複数組が、主軸1に対して高さおよび角度を変えた状態で取り付けられ、夫々の風受け板3,4が風を受けて主軸1が回転する。風の吹く方向が不安定な場合、主軸1が回転方向を迷うことがあるため主軸1にはワンウェイクラッチ6が装着されている。また、主軸1には発電機7が併設されており、主軸1の回転が歯車を介して発電機7に伝達される。
【0005】
この装置では、風受け板3,4を連続して滑らかに回転させる為に、主軸に高さ位置や角度を変えて複数個の副軸2および風受け板3,4を取り付けてある。これにより、風向に拘わらず効率的な回転が得られ、風受け板3,4は低速回転するため騒音が少なくなるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来技術の装置では、風を受けた風受け板3,4が勢いよく揺動して回転止め具5に速い速度で衝突する。このため、緩衝材が必要となったり、風受け板3,4や回転止め具5の信頼性を確保することが困難であった。
【0008】
また、風受け板3,4が風を受けて揺動する際に、風を強く受ける側の風受け板3,4に着目すると、自身が風下側に揺動移動するため、副軸2に対して回転力を伝達する効率が低減する。つまり、揺動に際して風受け板3,4の重心が風下側に移動するが、この移動によっては回転止め具5に回転トルクが付与されず、風受け板3,4が発生させる抗力の一部が主軸1の回転トルクに伝達される際に無駄になっていた。
【0009】
このように、従来の風車では種々の解決すべき課題を有しており、風力エネルギーの取得効率により優れた風車が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(特徴構成)
本発明に係る風車の特徴構成は、
シャフトと、
前記シャフトと直交して径外方向に延出し、前記シャフトの周りに回転自在な少なくとも二つの腕部材と、
揺動可能な状態で前記腕部材に支持され前記シャフトを中心に公転する羽根部材と、
前記羽根部材の揺動に伴って回転する第1部材と、
前記第1部材と相対回転し、前記シャフトに設けられた第2部材と、を備え、
前記第1部材と前記第2部材が連結することで、前記羽根部材が、風の方向に沿う速度成分を有する順風領域と、風の方向に逆らう速度成分を有する逆風領域と、を交互に公転し揺動する際に、前記羽根部材からの伝達トルクが前記腕部材の回転トルクに変換されるよう構成されている点にある。
【0011】
(効果)
本構成の風車では、羽根部材が順風領域を回転通過する際に風に押され、揺動することで腕部材に回転力を付与し回転速度を高める。その際に、羽根部材は、自身の表面が風に対してより多くの投影面積を持つように揺動する。
【0012】
本構成の風車では、羽根部材の揺動に伴って第1部材が回転する。第1部材は、シャフトに設けられた第2部材に対して相対回転する状態に当接する。つまり、第1部材は、第2部材に外力を加えながら第2部材の周囲を相対回転し、この回転が腕部材を加速させることとなる。
【0013】
本構成であれば、風圧を受けた羽根部材が腕部材を押す力に加え、羽根部材の揺動が腕部材の回転トルクに変換されつつ作用するから、エネルギーの取得効率が良い風車を得ることができる。
【0014】
また、羽根部材が揺動し、第1部材が第2部材の反力を受けるとき羽根部材が急激に揺動することがない。よって、羽根部材と例えば腕部材との衝突が生じ難く、羽根部材の信頼性が高まり騒音発生も少なくなる。
【0015】
(特徴構成)
本発明に係る風車にあっては、前記腕部材が、前記羽根部材の揺動軸芯に沿うと共に前記シャフトに直交する揺動軸を備え、前記揺動軸の一端に前記第1部材としての第1ギアが設けられ、前記シャフトに前記第2部材として前記第1ギアと歯合する第2ギアが設けられ、前記第1ギアと前記揺動軸との間に、前記羽根部材が前記順風領域にて風に押されて揺動する際に前記揺動軸と前記第1ギアとを一体回転させ、前記羽根部材が前記逆風領域にて風に抗って揺動する際に前記揺動軸と前記第1ギアとを相対回転させる一方向クラッチが備えられていると好都合である。
【0016】
(効果)
本構成は、第1部材を第1ギアで構成し、第2部材を第2ギアで構成してある。さらに、第1ギアと揺動軸との間には一方向クラッチを備えており、羽根部材が順風領域にて風に押されて揺動する際には揺動軸と第1ギアとが一体回転する。その一方、羽根部材が逆風領域にて風に抗って揺動する際には揺動軸は第1ギアに対して相対回転する。
【0017】
従来の風車における羽根部材は、順風領域で自身の姿勢を素早く変化させる。この場合の姿勢変化は、羽根部材が風に押されて比較的自由に揺動するものであり、この間に揺動軸を介して腕部材を加速させる効果は少ない。
【0018】
これに対し、本構成の羽根部材は、第1ギアおよび第2ギアの歯合を利用して、風を受けて揺動する際の姿勢変化を腕部材の回転トルクに変換することができる。
【0019】
特に、本構成では、羽根部材の揺動軸がシャフトに対して直角、即ち、水平方向に延出している。よって、羽根部材が順風領域で風に押されるとき羽根部材が揺動軸を中心に下方に揺動することとすれば、羽根部材の重量を利用して揺動速度を高めることができる。これにより、羽根部材が受ける風圧が早期に増大し、風車の回転速度を更に高めることも容易である。
【0020】
以上の如く、本構成であれば、風のエネルギーを風車の回転エネルギーとして効率良く取得する風車を得ることができる。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係る風車は、前記揺動軸と平行に前記腕部材に支持された第2軸を備え、前記第2軸には前記第1ギアと歯合する第3ギアが設けられ、前記第3ギアは前記第2軸との間に、前記一方向クラッチの機能方向に対して逆回転で機能する第2の一方向クラッチを備えており、前記揺動軸と前記第2軸が同方向に連動回転するよう構成されたものであってもよい。
【0022】
(効果)
本構成のごとく二つの一方向クラッチを備えることで、羽根部材が順風領域で風に押されて揺動する状態と、逆風状態で風の抵抗を受けて後退する揺動状態の双方において、第1ギアを同じ方向に回転させることができる。これにより、腕部材の回転を加速する効果が高まり、風のエネルギーを風車の回転エネルギーとしてさらに効率良く取得することができる。
【0023】
(特徴構成)
本発明に係る風車は、前記羽根部材が、前記腕部材に支持される揺動軸を備えると共に、前記揺動軸が前記シャフトと平行に延出し、前記揺動軸の一端に第1リンクが設けられ、前記腕部材に前記第1リンクと連結アームによって駆動される第2リンクが設けられ、前記腕部材に、前記第2リンクを一端に備えると共に、他端に前記第1部材としての第1ギアを備える中間軸が備えられ、
前記シャフトに前記第2部材として前記第1ギアと歯合する第2ギアが設けられ、
前記第1ギアと前記中間軸との間に、前記羽根部材が前記逆風領域にて風に抗って揺動する際に前記中間軸と前記第1ギアとを一体回転させ、前記羽根部材が前記順風領域にて風に押されて揺動する際に前記中間軸と前記第1ギアとを相対回転させる一方向クラッチを備えた構成とすることもできる。
【0024】
(効果)
本構成では、羽根部材の揺動軸をシャフトと平行に構成し、揺動軸に設けた第1リンクから第2リンクまでを連結アームで繋げている。第2リンクは揺動軸およびシャフトと平行となるよう腕部材に軸支された中間軸に取り付けられている。また、この中間軸には、第2ギアに歯合する第1ギアが設けられている。これにより、シャフトから離間している揺動軸の回転動作を第2ギアに伝達する。
【0025】
本構成では、中間軸と第1ギアとの間に一方向クラッチを備えている。これにより、風を受けて揺動する羽根部材の姿勢変化を、第2ギアに対する第1ギアの相対回転に変え、腕部材の回転トルクに変換する。このように本構成であれば、風のエネルギーを風車の回転エネルギーとして効率良く取得することができる。
【0026】
特に、羽根部材の揺動軸をシャフトと平行に構成する場合、羽根部材の揺動に対する羽根部材自身の重量の影響が少ない。よって、順風領域と逆風領域での羽根部材の揺動姿勢の切り替えが素早いものとなり、羽根部材の受圧抵抗の変化幅が増大して風力に対する回転トルクの変換効率が向上する。
【0027】
本構成では、特に、羽根部材が順風領域から逆風領域に移動する際の羽根部材の急激な揺動を利用することができる。この領域では、羽根部材の揺動軸の進行方向が順次風に正対する方向に近付き、揺動軸の移動速度と風速とが合計されて羽根部材の対気速度が急速に増大する。よって、風圧により羽根部材は勢いよく揺動する。このとき、羽根部材には強い揺動トルクが発生し、その結果、腕部材に対しても強い回転トルクが付与される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る風車の構成を示す側断面図
【
図3】第1実施形態に係る羽根部材の動作態様を示す説明図
【
図4】第2実施形態に係る風車の構成を示す側断面図
【
図5】第3実施形態に係る風車の構成を示す側断面図
【
図7】第3実施形態に係る羽根部材の動作態様を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
(概要)
本発明の風車Fの第1実施形態を
図1乃至
図3に示す。第1実施形態の風車Fは、地表に対して垂直に設けられたシャフト1の周りに回転するものである。ここでは、シャフト1に対して、径外方向に延出する四つの腕部材3を備えている。夫々の腕部材3には水平方向に張り出した揺動軸41が回転自在に支持され、当該揺動軸41には板状の羽根部材4が設けられている。尚、羽根部材4は、常に揺動軸41を備えている必要はない。羽根部材4は揺動軸芯Xの周りに回転揺動すればよく、腕部材に設けられた揺動軸に対して、羽根部材4に形成した軸孔が挿通されるような構成であっても良い。
【0030】
羽根部材4に風が当たると、羽根部材4が風の方向に沿う速度成分を持つ順風領域A1では、羽根部材4は腕部材3の一部に当接して所定の姿勢を維持する。一方、羽根部材4が風の方向に対向する速度成分を持つ逆風領域A2では、羽根部材4は風圧に応じて任意の揺動姿勢を取る。
【0031】
本実施形態の揺動軸41には、羽根部材4の揺動に伴って回転する第1部材G1が設けられている。一方、シャフト1にはこの第1部材G1と相対回転する状態に当接する第2部材G2が設けられている。羽根部材4が揺動することで第1部材G1が回転し、第2部材G2から反力を受ける。これにより、腕部材3が第2部材G2の周りを回転しようとする回転トルクが発生する。これにより、腕部材3の回転が促進され、風車Fの回転効率が向上する。以下、本実施形態の風車Fにつき詳細に説明する。
【0032】
(腕部材)
図1および
図2に示すように、本実施形態ではシャフト1の所定高さの位置に四つの腕部材3が設けられている。夫々の腕部材3は、シャフト1に挿入された回転基部2に対し、径方向に延出する状態に取り付けられている。夫々の腕部材3は羽根部材4の揺動軸41の両端をベアリングB等を用いて軸支している。腕部材3の数は、羽根部材4の揺動角度などに応じて隣接する羽根部材4どうしの干渉を避け得るのであれば任意である。
【0033】
夫々の腕部材3は、羽根部材4が当接する下側ストッパ31と上側ストッパ32を備えている。下側ストッパ31は、羽根部材4が順風領域A1で風に押された際に、羽根部材4が風圧を最も強く受ける状態に規定する。即ち、
図1および
図2に示すように、羽根部材4が鉛直下方に垂れ下がった姿勢となるように設けられている。この状態では風に対する羽根部材4の投影面積が最大となる。
【0034】
一方、上側ストッパ32は、羽根部材4が逆風領域A2において風圧を減らすべく水平方向に揺動する際に羽根部材4の揺動角度を規制するものである。本実施形態では羽根部材4が水平姿勢を越えて上方に跳ね上がらない位置に取り付けられている。これは、仮に逆風が強い場合に、風圧を受けた羽根部材4が水平方向を越えて上方にオーバーシュートする場合があるが、その際に羽根部材4の一方面が風圧を受け、却って回転抵抗となるのを防止するためである。
【0035】
特に、下側ストッパ31の取付位置は、揺動軸41に対して下方位置に偏位した位置となり風圧抵抗となる。よって、投影面積が最少となるように棒状部材などを用いて形成するとよい。また、図示は省略するが、揺動軸41の軸支部に回転を規制する突起部等を設けておけば、下側ストッパ31が回転方向に沿って見たとき回転基部2あるいは腕部材3の投影面積の中に納まることとなり抵抗が減少して好都合である。
【0036】
(羽根部材)
羽根部材4は、風の方向に沿う速度成分を有する順風領域A1と、風の方向に逆らう速度成分を有する逆風領域A2と、を交互に回転通過する。
図1および
図2に示すように、羽根部材4は、例えば矩形状の板部材で構成する。羽根部材4は順風領域A1と逆風領域A2とで素早い姿勢変化ができるよう軽量に構成することが望ましい。材質そのものを軽量な樹脂材料で構成したり、構成のフレームに布を張ったりする等各種の構成を採り得る。
【0037】
また、揺動変化を素早く行わせるために、揺動軸41を挟んで上下に突出する面積を適宜調整すると良い。揺動軸41から下方の領域が過大な場合、下方の重量も大きくなる。よって、順風領域A1で展開し易い一方、逆風領域A2で閉じ難くなり回転抵抗が増大する。また、上方の領域を大きくすると、逆風領域A2では水平姿勢に変化し易いが、順風領域A1で開き難くなり、回転速度が不十分となる。よって、羽根部材4の材質や、軸支部の回転抵抗、腕部材3に求める回転速度等を勘案して羽根部材4の形状を設定すると良い。
【0038】
(第1部材および第2部材および一方向クラッチ)
本実施形態の風車Fでは、揺動軸41の回転運動を腕部材3の回転トルクに変換するべく揺動軸41の端部に第1部材G1を設け、これと連携する第2部材G2をシャフト1に設けてある。
図1に示すように、本実施形態では、第1部材G1を第1ギアG1aで構成し、第2部材G2を第2ギアG2aで構成する。第1ギアG1aおよび第2ギアG2aとしては例えば傘歯歯車を用いる。
【0039】
第1ギアG1aは、揺動軸41の端部に一方向クラッチCを介して取り付けてある。一方向クラッチCは、羽根部材4が逆風領域A2から順風領域A1に移行するのに際し、下方に展開するべく揺動する際に揺動軸41の回転を第1ギアG1aに伝達するように機能する。一方、羽根部材4が順風領域A1から逆風領域A2に移行し、羽根部材4が回転方向後方に上昇揺動する際には揺動軸41の回転は第1ギアG1aに伝達されない。
【0040】
第1ギアG1aと歯合する第2ギアG2aはシャフト1に固設してあり、回転基部2および腕部材3が回転する際に、第1ギアG1aと第2ギアG2aは必ず相対回転する。この時の第1ギアG1aの回転速度に対し、羽根部材4が順風領域A1で開き動作する際の揺動軸41の回転速度が第1ギアG1aの回転速度を上回るとき、第2ギアG2aが第1ギアG1aとの歯合の反力受部となり、回転基部2および腕部材3がシャフト1の周りの回転トルクを得て加速される。
【0041】
この様子を
図3に示す。
図3は、風車Fを上方から見た平面図である。図中下方から上方に風が吹き、右側を順風領域A1とし、左側を逆風領域A2としてある。羽根部材4が順風領域A1の終端部である位置aに到達するまで羽根部材4は風に押されて展開状態にある。しかし、この後、羽根部材4が逆風領域A2に進入すると、位置a~位置c(
図3中の実線矢印の円弧)において羽根部材4は風圧を受けて進行方向後方に跳ね上がるように揺動する。
【0042】
羽根部材4が位置cに到達したとき腕部材3即ち揺動軸41の対気速度が最大となり、羽根部材4は例えば後方水平姿勢となって揺動角が最大となる。ただし、このように羽根部材4が位置aから位置cに至る際の羽根部材4の揺動方向は、一方向クラッチCがかみ合い機能する方向と逆方向である。よって、この区間では一方向クラッチCは空転し、腕部材3に回転を加速させる方向のトルクは作用しない。
【0043】
次に、羽根部材4が位置cから位置f(
図3中の一点鎖線矢印の円弧)に移動する際には揺動軸41の進行方向が変化するため正対風成分が減少し、羽根部材4の質量も影響して羽根部材4は次第に前方下方に揺動する。位置fにおいては完全な下方姿勢つまり展開姿勢となる。特に、位置eから位置fに於いては羽根部材4が順風領域A1に移行したことで追い風を受け、且つ、羽根部材4の重心が下がろうとすることで素早く展開状態となる。
【0044】
羽根部材4が位置cから位置dを介して位置eに至るまでの間に羽根部材4の下方への揺動速度が次第に高まり、何れかの位置で、第1ギアG1aの回転速度が一方向クラッチCがかみ合い機能する速度に達する。この位置から第1ギアG1aおよび第2ギアG2aの歯合により腕部材3に回転トルクが伝達される。羽根部材4が位置eから位置fに移動する間には羽根部材4は追い風および重力の影響を受けて揺動速度が更に高まるから強い回転トルクが腕部材3に伝達される。この時に、腕部材3には強い回転トルクが付与される。このあと、位置fから位置a(
図3中の点線矢印の円弧)に至るまで、羽根部材4は風に押されて展開姿勢を維持する。
【0045】
従来の風車Fにおける羽根部材4であっても、順風領域A1で自身の姿勢を変化させる。この場合の姿勢変化は、羽根部材4が風に押されて自由揺動するものであり、この間に揺動軸41の軸回転を利用して腕部材3を加速させる効果はない。
【0046】
これに対し、本構成の羽根部材4では、風を受けて自身が揺動する際の姿勢変化に基づき、第1ギアG1aおよび第2ギアG2aの歯合を利用して腕部材3の回転トルクを発生させることができる。特に、本構成では、羽根部材4の揺動軸41がシャフト1に対して直角、即ち水平方向に延出している。特に、羽根部材4が逆風領域A2から順風領域A1に移行する際に羽根部材4が揺動軸41を中心に下方に揺動する。このとき羽根部材4は自身の重量や順風領域A1での風圧を利用して下方への揺動速度が高まる。よって、一方向クラッチCが有効に機能し、風車の回転速度を更に高めることができる。
【0047】
以上の如く、本構成の風車Fであれば、羽根部材4の支持構成を簡便なものとしながら、羽根部材4が風圧を受けて腕部材3を押す力に加えて、羽根部材4の揺動が腕部材3の回転トルクに変換されつつ作用し、風のエネルギーを風車Fの回転エネルギーとして効率良く取得することができる。
【0048】
(出力軸)
図1に示すように、回転基部2の上方には出力軸51が設けられている。シャフト1の上端にギアケース6が設けられ、この中に出力軸51が水平方向に延出する状態に設けられている。回転基部2の上方には、シャフト1の周りに回転する第1出力ギア52が設けられ、この第1出力ギア52と歯合する第2出力ギア53がギアケース6に回転支持されている。第1出力ギア52および第2出力ギア53は例えば傘歯歯車で構成する。
【0049】
第2出力ギア53には出力軸51が挿入されており、図外の増速機および発電機に接続されている。増速機は、出力軸51の回転速度の変化に対して所定の許容範囲を持つものであっても良いし、出力軸51の回転速度変化への対応幅が狭いものであっても良い。特に、出力軸51の回転速度を一定に設定すべき場合には、図示は省略するが、各腕部材3の下側ストッパ31の位置を可変にして、羽根部材4の最大展開姿勢を変更可能に構成するとよい。
【0050】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る風車Fを
図4に示す。本構成では、腕部材3に対する揺動軸41の軸支部に二つの一方向クラッチCが設けられている。これにより、羽根部材4が順風領域A1および逆風領域A2の双方で揺動する際に、何れの方向の揺動においても腕部材3に回転トルクを付与することができる。尚、揺動軸41の端部に設けられた一方向クラッチCを第1クラッチC1と称し、これに近接配置されるもう一方の一方向クラッチCを第2クラッチC2と称する。
【0051】
図4に示すように、第2クラッチC2を設けるべく、腕部材3には揺動軸41と平行に第2軸7が軸支されている。第2軸7には第1ギアG1aと歯合する第3ギアG3aが設けられる。第3ギアG3aと第2軸7との間には第2クラッチC2が備えられている。第2クラッチC2は第1クラッチC1の機能方向に対して逆回転で機能する。
【0052】
揺動軸41には、第1ギアG1aと隣接して第1スプロケットS1が設けられている。第2軸7には第3ギアG3aと隣接する第2スプロケットS2が設けられている。第1スプロケットS1と第2スプロケットS2にはチェーンS3が巻き回され、互いに連動回転可能である。
【0053】
これにより、羽根部材4が逆風領域A2を回転転する際には、羽根部材4の後方への揺動に基づいて第1スプロケットS1が第2スプロケットS2および第2軸7を回転させる。具体的には、
図3における位置aから位置cのうち、羽根部材4の後方揺動の速度が所定速度以上となって第2クラッチC2が噛み合い機能する領域である。このとき第2クラッチC2を介して第3ギアG3aが回転される。第3ギアG3aは第1ギアG1aと歯合しており、羽根部材4が開き揺動する際の第1ギアG1aの回転方向と同じとなる。
【0054】
本構成であれば、羽根部材4が逆風領域A2から順風領域A1に至る際(
図3中の位置c~位置f)の展開揺動する状態では、第1実施形態と同様に、第1クラッチC1を介して第1ギアG1aが第2ギアG2aを反力受部として腕部材3を加速させる。一方、羽根部材4が逆風領域A2で風に向かって回転する状態(
図3中の位置a~位置c)では、羽根部材4の後方且つ上方への揺動に基づいて第2クラッチC2が機能し、第1ギアG1aを順風領域A1における回転方向と同じ方向に回転させる。これにより、腕部材3の回転を加速するトルクが発生し、風のエネルギーを風車Fの回転エネルギーとしてさらに効率良く取得することができる。
【0055】
尚、第1スプロケットS1、第2スプロケットS2およびチェーンS3の構成は任意である。これらに代えて、二つのプーリーとベルトとで構成することもできる。また、第1スプロケットS1および第2スプロケットS2を夫々平歯車とし、両者の間に中間歯車を介装するものであっても良い。
【0056】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る風車Fを
図5乃至
図7に示す。特に
図7は、風車Fを上方から見た平面図である。本実施形態では、羽根部材4の揺動軸41をシャフト1に対して平行に延出させている。回転基部2から四つの腕部材3が径方向に延出し、腕部材3の外方端部から鉛直下方に揺動軸41が延出している。
【0057】
(腕部材)
腕部材3は、揺動軸41を強固に支持するために例えばコの字形状に構成され、鉛直方向に延出する縦部材3cの上下端から、上方腕部3aと下方腕部3bが夫々水平方向に延出している。揺動軸41は上方腕部3aの外方端部と下方腕部3bの外方端部とに亘ってベアリングBなどで軸支されている。
【0058】
(羽根部材)
羽根部材4は、揺動軸41に固定されて揺動軸41と一体回転し、順風領域A1における展開姿勢は、羽根部材4の内周側の縁部が縦部材3cに設けた第1ストッパ33に当接するものとなる。一方、逆風領域A2における羽根部材4の姿勢は、羽根部材4が最大に揺動した状態で自身の平面が腕部材3の延出方向に直交する方向となる(例えば
図7中の位置dおよび位置e)。そのために上方腕部3aの外側端部および下方腕部3bの外側端部の少なくとも一方に、羽根部材4を直交姿勢で規制する第2ストッパ34を設けておく。
【0059】
(クラッチ)
揺動軸41の例えば上端には揺動軸41と一体回転する第1リンクR1が設けられ、回転基部2には第1リンクR1と連結アームR3を介して接続された第2リンクR2が設けられている。第2リンクR2は、回転基部2においてシャフト1と平行に設けられた中間軸R4の端部に固定されている。中間軸R4の下方の端部には一方向クラッチCを介して第1部材G1である第1ギアG1aが設けられている。この第1ギアG1aに歯合するように、第2部材G2としての第2ギアG2aがシャフト1に固定されている。第1ギアG1aおよび第2ギアG2aは例えば平歯車で構成する。
【0060】
図5および
図6に示す一方向クラッチCは、羽根部材4が逆風領域A2にて外方に開くよう揺動する際に腕部材3に回転トルクを付与するように機能する。つまり、羽根部材4が第2ストッパ34に向けて広がる際の第1リンクR1および第2リンクR2の回転動作により、中間軸R4が回転し一方向クラッチCを介して第1ギアG1aを回転させる。第1ギアG1aは第2ギアG2aから反力を受け、その結果、腕部材3に回転トルクが付与される。一方、羽根部材4が逆風領域A2から順風領域に亘って移動する際に第1ストッパ33に向けて揺動する際には中間軸R4は第1ギアG1aに対して空転する。
【0061】
羽根部材4の動作態様を
図7に示す。
図7は、風車Fを上方から見た平面図である。羽根部材4が順風領域A1の終端部である位置aに到達するまで羽根部材4は風に押されて第1ストッパ33に当接した所謂展開状態にある。しかし、この後、羽根部材4が逆風領域A2に進入すると、例えば位置a~位置d(
図7中の実線矢印の円弧)において羽根部材4は風圧を受け、第2ストッパ34に当接するように進行方向後方に揺動する。
【0062】
図7では、羽根部材4が位置dに到達したときに、羽根部材4が第2ストッパ34に当接する。位置aから位置dに至る間、揺動軸41の回転方向は、風に正対する方向に近付く。このため、羽根部材4の対気速度が次第に増大し、風圧の高まりに従って羽根部材4は勢いよく外方に広がろうとする。また、羽根部材4の回転支点が外側の揺動軸41にあり、外方に広がり始めた羽根部材4の重心は、シャフト1の中心と揺動軸41とを結ぶ直線から次第にオフセットして遠心力が強く作用するようになる。この結果、羽根部材4の揺動速度は、位置aから位置dに至る領域で極めて速くなる。
【0063】
このときの羽根部材4の揺動によって第1リンクR1および第2リンクR2を介して中間軸R4が高速で回転し、一方向クラッチCがかみ合い機能する結果、回転を加速させる方向のトルクが腕部材3に作用する。
【0064】
尚、羽根部材4が位置cから位置eに至る間、羽根部材4は揺動軸41に対して風下側にあって、羽根部材4を風の方向に沿って見たとき、羽根部材4の面のうちシャフト1に向く面が見える状態にある。このとき羽根部材4には、羽根部材4に作用する風によって有利な揚力が発生する。揚力の発生方向は、風の方向に対して常に直角方向である。例えば、位置dにおいて羽根部材4に生じる揚力の方向は位置eと位置mを結ぶ直線と平行となる。この方向は位置dにおける回転半径の方向、つまり、シャフト1の中心と揺動軸41を結ぶ直線に対して、羽根部材4の進行方向前方に傾斜したものとなる。この傾斜成分が羽根部材4を介して腕部材3を加速させる。このような加速に寄与する揚力が、例えば位置cから位置eの領域において発生する。
【0065】
次に、羽根部材4が位置eから位置iに移動する際には揺動軸41の進行方向が変化する。羽根部材4は、風の方向に沿う状態を維持しようとする。ただし、羽根部材4には遠心力が作用しているから、風向に沿った揺動軸41の風下方向に対してやや外側に偏位する。羽根部材4が位置iを越えて位置jに至る際には、羽根部材4の開放側縁部が第2ストッパ34に当接して風を受ける展開姿勢となる。位置eから位置jにおいては、羽根部材4の揺動によって第1ギアG1aが腕部材3を減速させる方向に回転するため一方向クラッチCは空転する。このあと、位置jから位置aに至るまで、羽根部材4は風に押されて第1ストッパ33に当接した展開姿勢を維持する。
【0066】
本構成であっても、羽根部材4の支持構成を簡便なものとしながら、風を受けて揺動する羽根部材4の姿勢変化を腕部材3の回転トルクに変換することができ、風のエネルギーを風車の回転エネルギーとして効率良く取得することができる。
【0067】
特に、羽根部材4の揺動軸41をシャフト1と平行に構成する場合、羽根部材4の揺動に対する羽根部材4そのものの重量の影響が少ない。よって、順風領域A1と逆風領域A2での羽根部材4の揺動姿勢の切り替えが素早く行え、羽根部材4の受圧抵抗の差が大きくなって風力に対する回転トルクの変換効率が向上する。
【0068】
尚、図示は省略するが、第1リンクR1および第2リンクR2の代わりに夫々歯車部材を用い、連結アームR3の代わりにチェーンを用いるものであっても良い。さらに、歯車部材とチェーンに代えて二つの転がりプーリーとベルトで構成することもできる。
【0069】
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係る風車Fを
図8に示す。本構成では、
図4と同様に一方向クラッチを二つ備えている。即ち、中間軸R4に第1クラッチC1を設けると共に、第2クラッチC2を備えた第3ギアG3aを設けている。第3ギアG3aには中間ギアG4が歯合しており、中間ギアG4が第2ギアG2aに歯合している。
【0070】
これにより、羽根部材4が、第2ストッパ34に向けて広がり揺動する際(
図7中位置a~位置d)には、第1ギアG1aおよび第2ギアG2aの歯合に基づいて腕部材3が加速される方向の回転トルクを得る。また、羽根部材4が、第1ストッパ33に向けて展開揺動する際(
図7中位置e~位置j)には、第2クラッチC2が噛み合い機能を発揮し、第3ギアG3a・中間ギアG4・第2ギアG2aの歯合に基づいて腕部材3が加速される方向の回転トルクを得る。
【0071】
尚、第1ギアG1aは第2ギアG2aの大径部に歯合し、中間ギアG4は第2ギアG2aの小径部に歯合しているが、これは、羽根部材4の揺動速度を考慮したものである。つまり、
図7において、位置a~位置dに至る際の羽根部材4の揺動速度は、位置e~位置jに至る際の羽根部材4の揺動速度よりも大きい。よって、第1ギアG1aの外径を第3ギアG3aの外径よりも大きくし、夫々、第2ギアG2aの大径部と小径部に歯合させることで、羽根部材4の揺動速度差に拘わらず、腕部材3に作用する回転トルクが安定したものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の風車は、地表に対して垂直に設けられるシャフトと、シャフトに対して径外方向に延出する腕部材と、腕部材に対して揺動する羽根部材と、を備えたものに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 シャフト
3 腕部材
4 羽根部材
41 揺動軸
A1 順風領域
A2 逆風領域
C 一方向クラッチ
C2 第2の一方向クラッチ
F 風車
G1 第1部材
G1a 第1ギア
G2 第2部材
G2a 第2ギア
G3a 第3ギア
R4 中間軸
X 揺動軸芯