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特開2024-151534制御装置、制御方法、及び、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151534
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、及び、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/542 20230101AFI20241018BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20241018BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20241018BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20241018BHJP
【FI】
H04W72/542
H04W16/28
H04W24/10
H04W28/18 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064960
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】式田 潤
(72)【発明者】
【氏名】村岡 一志
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD34
5K067DD42
5K067EE02
5K067EE08
5K067EE10
5K067EE16
5K067JJ17
(57)【要約】
【課題】通信状況に応じた適切な無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を無線端末に割り当てる。
【解決手段】制御装置10は、無線装置と無線端末との間の通信を制御する。制御装置10は、無線端末がビームを用いて送信した参照信号を用いて、当該ビームを用いた場合の無線端末と無線装置との間のチャネル利得を計算する計算部11と、チャネル利得と無線装置の送信電力とに基づいて、無線端末がビームを用いて受信した場合の受信品質を推定する推定部12と、受信品質に基づいて、無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる割当部13とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御装置であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、当該第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算する計算手段と、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定する推定手段と、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる割当手段と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記計算手段は、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信電力であって、前記無線装置が送信した参照信号の受信電力を用いて、前記チャネル利得を計算する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、複数の前記無線装置と前記無線端末との間の通信を制御し、
前記計算手段は、前記複数の無線装置のうちの何れかの無線装置の各々と前記無線端末との間のチャネル利得を計算する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記無線端末が前記無線装置以外から受信した信号の受信電力を推定し、当該受信電力を用いて、前記受信品質を推定する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記推定手段は、前記無線端末が受信する際に用いるアンテナパネル及びビームの少なくとも一方に関する情報に基づいて、前記受信品質を推定する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記計算手段は、前記無線装置が第2のビームを用いた場合の前記チャネル利得を計算し、
前記推定手段は、前記無線装置が前記第2のビームを用いた場合の前記チャネル利得を用いて、前記受信品質を推定する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記推定手段は、前記無線装置が前記無線端末との通信に用いる送受信器ユニットに対応した前記受信品質を推定する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項8】
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御方法であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、前記第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算することと、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定することと、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てることと、
を含む制御方法。
【請求項9】
プロセッサ及びメモリを含むコンピュータに、
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御方法であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、前記第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算することと、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定することと、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てることと、
を含む制御方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動通信システムにおける制御装置、制御方法、及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の高速大容量化を実現するために、広い帯域幅を確保できる高周波数帯の活用が進んでいる。例えば、第5世代移動通信システム(5G:5 Generation)では、ミリ波帯がサポートされている。さらに、第6世代移動通信システム(6G:6 Generation)では、ミリ波帯よりも周波数が高いテラヘルツ波帯のサポートが検討されている。
【0003】
高周波数帯の無線通信では大きな伝搬損失が課題の1つである。高周波数帯では、伝搬損失を補償するために、無線端末に複数のアンテナパネルを搭載することが想定されている。各アンテナパネルが異なる方向にビームを形成することで、どの方向に対しても電波を送受信することができる。
【0004】
移動通信システムにおける基地局は、無線端末のチャネル状態を考慮して、無線端末に無線リソースや変調符号化方式を割り当てる。無線端末が複数のアンテナパネルを搭載してビームフォーミングを行う場合、基地局は、無線端末が使用するアンテナパネルやビームの影響を加味したチャネル状態を把握する必要がある。
【0005】
特許文献1には、無線端末が複数のアンテナパネルを搭載する場合における、無線端末から基地局へのチャネル状態情報の報告方法が記載されている。チャネル状態情報の一例としては、CQI(Channel QualityIndicator)やL1-SINR(Layer 1 Signal to Interference plusNoise Ratio)が記載されている。
尚、本開示に関連する他の先行技術文献として、特許文献2から特許文献4があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2022/201551号公報
【特許文献2】特表2022-547093号公報
【特許文献3】国際公開第2021/220482号公報
【特許文献4】国際公開第2021/192173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で基地局に報告されるチャネル状態情報は、過去の測定時におけるチャネル状態を表したものであり、通信時のチャネル状態とは必ずしも一致しない。例えば、無線端末が移動したり、無線端末の周辺環境が変化したりすると、チャネル状態情報の測定時と通信時とでチャネル状態が大きく異なる可能性がある。測定時と通信時とでチャネル状態が異なる場合には、基地局が無線端末に対して適切に無線リソースや変調符号化方式を割り当てることができず、通信速度が低下する可能性がある。
【0008】
本開示の目的の1つは、上述した課題を解決するためになされたものであり、無線端末がビームフォーミングを行う場合において、通信状況に応じて適切に無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てることが可能な制御装置、制御方法、及び、コンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る制御装置は、
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御装置であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、当該第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算する計算手段と、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定する推定手段と、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる割当手段と、
を備える。
【0010】
本開示に係る制御方法は、
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御方法であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、前記第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算することと、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定することと、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てることと、
を含む。
【0011】
本開示に係るコンピュータプログラムは、
コンピュータに、ビームを形成する無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御方法を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記制御方法は、
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御方法であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、前記第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算することと、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定することと、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てることと、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、無線端末がビームフォーミングを行う場合において、通信状況に応じた適切な無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を無線端末に割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態における制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態における制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図3】第2の実施形態における無線通信システムの構成を示すブロック図である。
図4】第2の実施形態における制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態におけるスケジューリング部の構成を示すブロック図である。
図6】第2の実施形態における制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図7】第1の実施形態における制御装置の機能を実現するソフトウェアとハードウェアとの組み合わせである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
【0015】
図1は、第1の実施形態における制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置10は、無線装置と接続し、無線装置と無線端末との間の通信を制御する装置である。制御装置10は、複数の無線装置と接続してもよく、複数の無線装置と無線端末との間の通信を制御してもよい。制御装置10は、図1に示すように、計算部11と、推定部12と、割当部13とを備える。
【0016】
図2は、第1の実施形態における制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
計算部11は、無線端末と無線装置との間のチャネル利得を計算する(ステップS11)。制御装置10が複数の無線装置と接続する場合、計算部11は、無線端末と複数の無線装置の各々との間のチャネル利得の各々を計算してもよい。具体的には、計算部11は、無線端末がビームを用いて送信した参照信号を用いて、無線端末がビームを用いた場合のチャネル利得を計算する。なお、無線端末が形成するビームを、第1のビームと呼んでもよい。第1の実施形態における無線端末は、第1のビームを用いて送受信を行う。
【0017】
推定部12は、無線端末の受信品質を推定する(ステップS12)。推定部12は、無線端末がビームを用いて受信した場合の受信品質を推定する。具体的には、推定部12は、計算部11で計算されたチャネル利得と、無線装置の送信電力とに基づいて、無線端末の受信品質を推定する。
【0018】
割当部13は、無線端末に対して無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる(ステップS13)。具体的には、推定部12で推定された無線端末の受信品質に基づいて、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる。
【0019】
以上説明したように、第1の実施形態における制御装置10は、無線端末がビームを用いた場合の無線端末と無線装置との間のチャネル利得を計算し、計算したチャネル利得と無線装置の送信電力とに基づいて無線端末の受信品質を推定し、推定した受信品質に基づいて無線端末に無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる。このため、制御装置10は、無線端末がビームフォーミングを行う場合において、通信状況に応じた無線端末の受信品質を推定できる。したがって、制御装置10は、無線端末がビームフォーミングを行う場合において、通信状況に応じた適切な無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を無線端末に割り当てることができる。
(第2の実施形態)
【0020】
続いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態を具体的にした実施形態である。
<無線通信システムの構成>
【0021】
図3は、第2の実施形態における無線通信システムの構成を示すブロック図である。無線通信システム1は、例えば、3GPP(登録商標)(Third Generation Partnership Project)の技術仕様に準拠したシステムである。無線通信システム1は、5Gの技術仕様に準拠したシステムであってもよいし、4Gの技術仕様に準拠したシステムであってもよいし、3Gの技術仕様に準拠したシステムであってもよい。当然ながら、無線通信システム1は、この例に限定されず、3GPPの技術仕様とは異なる技術仕様に準拠したシステムであってもよい。
【0022】
図3に示すように、無線通信システム1は、複数の無線端末20-1~20-Kと基地局装置30とを含む。ただし、Kは2以上の整数である。以降において、無線端末20-1~20-Kを区別する必要がない場合、単に「無線端末20」と表記される場合がある。
【0023】
無線端末20は、ユーザ装置(UE:User Equipment)又は移動局等と称呼されてもよい。無線端末20は、例えば、スマートフォン、携帯電話機又はタブレット等の携帯端末であってもよい。また、無線端末20は、中継機能を有する中継装置であってもよい。
【0024】
基地局装置30は、無線端末20と無線通信を行うことが可能な装置である。基地局装置30は、例えば、無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)のノードであってもよい。基地局装置30は、BTS(Base Transceiver Station)であってもよいし、NodeBであってもよいし、eNodeB(evolved NodeB)であってもよいし、gNodeB(next generation NodeB)であってもよい。
【0025】
なお、以下では、信号が基地局装置30から無線端末20へ送信されるリンクは、「下りリンク(ダウンリンク)」と称呼される。下りリンク上を送信される信号は、「下りリンク信号」と称呼される。更に、信号が無線端末20から基地局装置30へ送信されるリンクは、「上りリンク(アップリンク)」と称呼される。上りリンク上を送信される信号は、「上りリンク信号」と称呼される。
【0026】
図3に示すように、基地局装置30は、制御装置31と、複数の無線装置32-1~32-Mとを備える。制御装置31は、伝送路33-1~33-Mの各々を介して無線装置32-1~32-Mの各々に接続される。ただし、Mは2以上の整数である。以降において、無線装置32-1~32-Mを区別する必要がない場合、単に「無線装置32」と表記される場合がある。また、伝送路33-1~33-Mを区別する必要がない場合、単に「伝送路33」と表記される場合がある。
【0027】
制御装置31は、無線端末20と基地局装置30との間の通信を制御することが可能な装置である。制御装置31は、例えば、CU(Central Unit或いはCentralized Unit)であってもよいし、DU(Distributed Unit)であってもよい。また、制御装置21は、例えば、RU(Radio Unit或いはRemote Unit)の一部機能を備える構成であってもよい。
【0028】
無線装置32は、制御装置31の制御下で、無線端末20と無線通信を行うことが可能な装置である。無線装置32は、例えば、RU(Radio Unit或いはRemote Unit)であってもよいし、TRP(Transmission and Reception point)であってもよいし、アクセスポイント(AP:Access Point)であってもよい。無線装置32は、RUの一部機能のみを備える構成であってもよい。無線装置32は、制御装置31から物理的に離れた位置に配置されてもよい。
【0029】
伝送路33は、情報伝送に使用される媒体である。伝送路33は、例えば、光ファイバ、メタルケーブル、又は、無線伝搬路であってもよい。伝送路33における通信において、RoF(Radio over Fiber)技術が適用されてもよいし、CPRI(Common Public Radio Interface)技術が適用されてもよいし、又は、eCPRI(evolved Common Public Radio Interface)技術等が適用されてもよい。
<制御装置の構成>
【0030】
図4は、第2の実施形態における制御装置31の構成を示すブロック図である。制御装置31は、伝送路インタフェース311と、送信信号処理部312と、受信信号処理部313と、スケジューリング部314とを備える。
【0031】
伝送路インタフェース311は、伝送路33を介して無線装置32と通信を行うためのインタフェースである。
【0032】
送信信号処理部312は、基地局装置30から無線端末20に送信する下りリンク信号の送信処理を行う。送信信号処理部312は、無線端末20に送信する下りリンク信号を生成する。送信信号処理部312は、下りリンク信号を伝送路インタフェース311及び伝送路33を介して無線装置32に送信する。
【0033】
受信信号処理部313は、基地局装置30が無線端末20から受信した上りリンク信号の受信処理を行う。受信信号処理部313は、伝送路インタフェース311及び伝送路33を介して、無線装置32で受信された上りリンク信号を受信する。受信信号処理部313は、上りリンク信号に対して復調処理及び復号処理を行う。
【0034】
受信信号処理部313は、無線端末20が送信した上りリンクの参照信号を受信する。受信信号処理部313は、受信した上りリンクの参照信号が含まれる信号をスケジューリング部314に送信してもよい。あるいは、受信信号処理部313は、受信した上りリンクの参照信号が含まれる信号を用いて上りリンクのチャネルの周波数応答またはインパルス応答を推定し、チャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値をスケジューリング部314に送信してもよい。
【0035】
スケジューリング部314は、無線端末20との通信に使用される無線リソース及び変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)の少なくとも一方の割り当てを行う。無線リソースは、アンテナ、ビーム、送信電力、時間及び周波数等の少なくとも1つを含んでもよい。スケジューリング部314は、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方の割り当て結果を、送信信号処理部312及び受信信号処理部313に送信する。スケジューリング部314は、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方の割り当て結果を、伝送路インタフェース311及び伝送路33を介して、無線装置32に送信してもよい。
<スケジューリング部の構成>
【0036】
図5は、第2の実施形態におけるスケジューリング部314の構成を示すブロック図である。スケジューリング部314は、チャネル利得計算部3141と、受信品質推定部3142と、リソース割当部3143とを備える。
【0037】
チャネル利得計算部3141は、無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得を計算する。チャネル利得計算部3141は、受信信号処理部313から受信した上りリンクの参照信号が含まれる信号を用いて、無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得を計算してもよい。あるいは、チャネル利得計算部3141は、受信信号処理部313から受信したチャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値を用いて、無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得を計算してもよい。チャネル利得計算部3141は、計算した無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得を受信品質推定部3142に送信する。
【0038】
受信品質推定部3142は、チャネル利得計算部3141から受信した無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得と、リソース割当部3143から受信した無線装置32の送信電力に関する情報とを用いて、無線端末20の受信品質を推定する。受信品質推定部3142は、推定した無線端末20の受信品質をリソース割当部3143に送信する。
【0039】
リソース割当部3143は、受信品質推定部3142から受信した無線端末20の受信品質の推定結果に基づいて、無線端末20に無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる。リソース割当部3143は、必要に応じて、無線端末20への無線リソースの割り当て結果を受信品質推定部3142に送信する。リソース割当部3143は、無線端末20への無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方の割り当て結果を送信信号処理部312及び受信信号処理部313に送信する。リソース割当部3143は、無線端末20への無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方の割り当て結果を、伝送路インタフェース311及び伝送路33を介して、無線装置32に送信してもよい。
<制御装置の動作>
【0040】
図6は、第2の実施形態における制御装置31の動作の流れを示すフローチャートである。図6を参照しながら、制御装置31の動作について説明する。
【0041】
受信信号処理部313は、無線端末20が送信した上りリンクの参照信号を含む信号を、伝送路インタフェース311及び伝送路33を介して、無線装置32から受信する(ステップS21)。受信信号処理部313は、受信した上りリンクの参照信号が含まれる信号をスケジューリング部314に送信してもよい。あるいは、受信信号処理部313は、受信した上りリンクの参照信号が含まれる信号から上りリンクのチャネルの周波数応答またはインパルス応答を推定して、チャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値をスケジューリング部314に送信してもよい。
【0042】
無線端末20は、上りリンクの参照信号を送信する際にビームフォーミングを行ってもよい。無線端末20が送信に用いるビームの設定は、制御装置31が無線端末20に指示してもよい。この場合、受信信号処理部313は、無線端末20が送信に用いたビームを区別して受信信号を処理することができる。
【0043】
受信信号処理部313の動作の一例として、受信信号処理部313がチャネルの周波数応答を推定する場合を以下に説明する。以下では、サブキャリア数をNSCとし、無線端末20が使用できるビームの数をBと表す。無線端末20-k(kは1以上K以下の整数)がビームb(bは1以上B以下の整数)を用いて送信した、サブキャリアn(nは1以上NSC以下の整数)における上りリンクの参照信号をsn,k,bと表す。無線装置32-m(mは1以上M以下の整数)が受信した、無線端末20-kからビームbを用いて送信された上りリンクの参照信号が含まれる、サブキャリアnにおける信号をyn,k,b,mと表す。この場合、ビームbを用いたときの無線端末20-kと無線装置32-mとの間の、サブキャリアnにおけるチャネルの周波数応答hn,k,b,mは、式(1)のように表せる。
[式(1)]
【0044】
受信信号処理部313は、推定したチャネルの周波数応答をスケジューリング部314に送信する。ただし、スケジューリング部314に送信するチャネルの周波数応答の数を制限してもよい。すなわち、受信信号処理部313は、無線端末20-k、ビームb、サブキャリアn、及び無線装置32-mの各々の組み合わせにおけるチャネルの周波数応答hn,k,b,mのうちの何れかの、スケジューリング部314への送信を省略してもよい。または、受信信号処理部313は、無線端末20-k、ビームb、サブキャリアn、及び無線装置32-mの各々の組み合わせにおけるチャネルの周波数応答hn,k,b,mのうちの何れかのみを、スケジューリング部314に送信してもよい。例えば、無線端末20から報告された、無線装置32が送信した下りリンクの参照信号の受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)に基づいて、スケジューリング部314に送信するチャネルの周波数応答の数を制限してもよい。あるいは、チャネル利得計算部3141から指示に基づいて、スケジューリング部314に送信するチャネルの周波数応答の数を制限してもよい。
【0045】
チャネル利得計算部3141は、無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得を計算する(ステップS22)。チャネル利得計算部3141は、受信信号処理部313から受信した上りリンクの参照信号が含まれる信号を用いて、無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得を計算してもよい。あるいは、チャネル利得計算部3141は、受信信号処理部313から受信したチャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値を用いて、無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得を計算してもよい。
【0046】
チャネル利得計算部3141におけるチャネル利得の計算方法の一例として、受信信号処理部313から受信したチャネルの周波数応答を用いる場合を以下に説明する。受信信号処理部313から受信した、ビームbを用いたときの無線端末20-kと無線装置32-mとの間の、サブキャリアnにおけるチャネルの周波数応答hn,k,b,mを用いて、ビームbを用いたときの無線端末20-kと無線装置32-mとの間のチャネル利得gk,b,mは、式(2)のように計算される。
[式(2)]
式(2)は、NSC個のサブキャリアを用いて1つのチャネル利得を計算する場合を表しているが、本開示はそれに限定されない。例えば、NSC個のサブキャリアを用いて複数のチャネル利得を計算してもよい。この場合、チャネル利得計算部3141は、1つのチャネル利得の計算に、NSCよりも小さな数のサブキャリアを用いてもよい。
【0047】
受信品質推定部3142は、チャネル利得計算部3141から受信した無線端末20と無線装置32との間のチャネル利得と、リソース割当部3143から受信した無線装置32の送信電力に関する情報とを用いて、無線端末20の受信品質を推定する(ステップS23)。
【0048】
受信品質推定部3142における無線端末20の受信品質の推定方法の一例を以下に説明する。無線端末20の受信品質は、無線装置32の送信方法に依存する。以下では、無線装置32-mが無線端末20-k宛てに下りリンク信号を送信する場合を想定する。この場合、無線端末20-kにとっては、無線装置32-m以外の無線装置から送信された下りリンク信号は干渉信号とみなされる。受信品質推定部3142は、受信品質γとしてSINRを推定する。無線装置32-mの送信電力をPとし、無線端末20-kにおける雑音電力の推定値をσと表す。この場合、ビームb(bは1以上B以下の整数)を用いて受信したときの無線端末20-kの受信品質γk,bkは、式(3)のように表せる。
[式(3)]
式(3)の分母の第1項は、無線装置32-m以外の無線装置から送信された、無線端末20-kに対する干渉信号を表す。ただし、無線装置32-m′が下りリンク信号を送信しない場合には、無線装置32-m′の送信電力Pm′に0が設定されているものとする。式(3)の分母の第2項は、雑音電力の推定値σを表す。雑音電力の推定値σは、例えば、熱雑音を仮定して設定してもよい。あるいは、無線装置32以外からの干渉の存在を加味して、熱雑音よりも大きい値をσに設定してもよい。式(3)の分子は、受信信号のうちの所望信号の電力を表していると言い換えてもよい。また、式(3)の分母は、受信信号のうちの所望信号以外の電力を表していると言い換えてもよい。
【0049】
リソース割当部3143は、受信品質推定部3142から受信した無線端末20の受信品質の推定結果に基づいて、無線端末20に無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる(ステップS24)。
【0050】
リソース割当部3143における無線リソースの割り当て方法の一例を以下に説明する。以下では、無線端末20-1から無線端末20-(k-1)に対してすでに無線リソースが割り当てられている状況下において、無線端末20-kに対して無線リソースの割り当て処理を行うものとする。リソース割当部3143は、例えば、メトリックに基づいて無線リソースの割り当てを判断する。無線端末20-1~20-kに無線リソースを割り当てた場合のメトリックAは、式(4)のように表せる。
[式(4)]
ただし、wk′は無線端末20-k′に対する重み係数を表し、bk′は無線端末20-k′が下りリンク信号の受信に用いるビームを表す。重み係数wk′としては、例えば、無線端末20-k′の平均スループットの逆数を用いてもよい。また、f(γ)は、入力のSINRγを伝送レートに変換する関数である。伝送レートへの変換は、シャノン容量への変換であってもよいし、相互情報量への変換であってもよいし、変調符号化方式に基づいて規定される周波数利用効率への変換であってもよい。リソース割当部3143は、無線端末20-1~20-kに無線リソースを割り当てた場合のメトリックAと、無線端末20-1~20-(k-1)に無線リソースを割り当てた場合のメトリックAk-1とを比較し、AがAk-1よりも大きい場合に、無線端末20-kに無線リソースを割り当ててもよい。なお、無線端末20-1~20-(k-1)のSINRは、無線端末20-kに無線リソースを割り当てるか否かに依存する場合があるため、メトリックAを計算する際には、無線端末20-1~20-kのSINRを受信品質推定部3142が推定してもよい。あるいは、リソース割当部3143が無線端末20-1~20-kのSINRを推定する機能を備えていてもよい。
【0051】
リソース割当部3143は、無線装置32の送信電力を一定値としてもよいし、無線リソースの割り当て状況に基づいて設定してもよい。リソース割当部3143は、例えば、式(4)のメトリックが最大化するように、無線装置32の各々の送信電力を設定してもよい。無線端末20の受信品質は無線装置32の送信電力に依存するため、無線装置32の送信電力を変更した場合には、受信品質推定部3142またはリソース割当部3143が無線端末20の受信品質を推定してもよい。
【0052】
リソース割当部3143における変調符号化方式の割り当て方法の一例を以下に説明する。リソース割当部3143は、無線端末20-1~20-Kに対する無線リソースの割り当てが終了した後に、無線リソースを割り当てた無線端末20の各々に対して変調符号化方式を割り当てる。リソース割当部3143は、無線端末20の受信品質SINRに基づいて、変調符号化方式を割り当てる。リソース割当部3143は、例えば、変調符号化方式の各々に対してSINRの目標値を予め設定しておき、SINRが目標値を上回る条件下において周波数利用効率が最大となる変調符号化方式を割り当ててもよい。
【0053】
送信信号処理部312は、リソース割当部3143から受信した無線端末20への無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方の割り当て結果に基づいて、下りリンク信号を生成する(ステップS25)。送信信号処理部312は、生成した下りリンク信号を伝送路インタフェース311及び伝送路33を介して無線装置32に送信する。
<効果>
【0054】
以上説明したように、第2の実施形態の無線通信システム1では、制御装置31が、無線端末20がビームを用いたときの無線端末20と複数の無線装置32の各々との間のチャネル利得を計算し、計算したチャネル利得と無線装置32の送信電力に関する情報とに基づいて無線端末20の受信品質を推定し、推定した受信品質に基づいて無線端末20に無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる。このため、制御装置31は、無線端末20が用いるビームと無線装置32の送信電力とを加味した無線端末20の受信品質を推定できる。したがって、制御装置31は、無線端末20がビームフォーミングを行う場合において、通信状況に応じて適切な無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を無線端末20に割り当てることができる。
<変形例>
【0055】
本開示に係る技術は、上述した実施形態には限定されない。以上の実施形態及び以下の変形例から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてもよい。
(1)第1の変形例
【0056】
チャネル利得計算部3141におけるチャネル利得の計算方法の第2の例を以下に説明する。第2の例では、チャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値に加えて、無線端末20から報告された下りリンクの参照信号の受信電力RSRPを用いる。
【0057】
無線端末20-kがビームbを用いて受信した場合の、無線装置32-mに対するRSRPをRk,b,mと表す。また、無線装置32-mが送信した下りリンクの参照信号の送信電力をP DL-RSと表す。このとき、ビームbを用いた場合の無線端末20-kと無線装置32-mとの間のチャネル利得gk,b,mは、式(5)のように表せる。
[式(5)]
チャネル利得計算部3141は、無線装置32-m以外の無線装置に対しては、式(5)によって求めたチャネル利得と、チャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値とを用いて、チャネル利得を計算する。ビームbを用いたときの無線端末20-kと無線装置32-m′(m′はmを除く1以上M以下の整数)との間のチャネル利得gk,b,m′は、式(6)のように表せる。
[式(6)]
ただし、式(6)は、NSC個のサブキャリアを用いて1つのチャネル利得を計算する場合を表しているが、本開示はそれに限定されない。例えば、NSC個のサブキャリアを用いて複数のチャネル利得を計算してもよい。この場合、チャネル利得計算部3141は、1つのチャネル利得の計算に、NSCよりも小さな数のサブキャリアを用いてもよい。
【0058】
上述したように、チャネル利得計算部3141におけるチャネル利得の計算方法の第2の例では、チャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値に加えて、無線端末20から報告された下りリンクの参照信号の受信電力RSRPを用いる。式(5)および式(6)からわかるように、第2の例では、チャネル利得計算部3141は、基準となる無線装置32-mに対するチャネル利得をRSRPに基づいて計算し、無線装置32-mと他の無線装置とのチャネル利得の比を計算するために、チャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値を利用する。つまり、第2の例では、チャネル利得計算部3141は、チャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値を、複数の無線装置32の間のチャネル利得の相対値として利用する。このため、第2の例を用いることで、例えば、基地局装置30の実装上の問題でチャネルの周波数応答またはインパルス応答の推定値の絶対値が正確でない場合であっても、精度良くチャネル利得を計算することができる。
(2)第2の変形例
【0059】
チャネル利得計算部3141は、チャネル利得の計算対象となる無線端末20に応じて、チャネル利得を計算する無線装置32の数を制限してもよい。チャネル利得計算部3141は、複数の無線装置32のうちの何れかの無線装置32の各々と無線端末20との間のチャネル利得を計算してもよい。チャネル利得計算部3141は、複数の無線装置32のうちの所定の条件を満たした無線装置32の各々と無線端末20との間のチャネル利得を計算してもよい。例えば、チャネル利得計算部3141は、チャネル利得を計算する無線装置32をRSRPに基づいて決めてもよい。具体的には、チャネル利得計算部3141は、RSRPが大きい無線装置32をチャネル利得の計算対象としてもよい。あるいは、チャネル利得計算部3141は、過去のチャネル利得の計算結果に基づいて、過去にチャネル利得が小さかった無線装置32に対するチャネル利得の計算を省略してもよい。
【0060】
チャネル利得計算部3141は、チャネル利得が小さいと見込まれる無線装置32に対するチャネル利得の計算を省略することで、無線端末20の受信品質の推定精度の劣化を抑えながら制御装置31の処理負荷を低減できる可能性がある。
(3)第3の変形例
【0061】
受信品質推定部3142は、無線端末20の受信品質を推定するために、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定してもよい。受信品質推定部3142は、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定するために、無線端末20から報告されるRSRQ(Reference Signal Received Quality)、SINR、及びCQIの少なくとも1つを用いてもよい。無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定する方法の一例を以下に説明する。
【0062】
受信品質推定部3142が、無線端末20から報告されたRSRQを用いて、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定する方法の一例を説明する。RSRQは、3GPP準拠の移動通信システムにおいて無線端末20の受信品質を表す指標である。無線端末20において、RSRPとRSSI(Received Signal Strength Indicator)は、RSRP及びRSRQと所定の関係を有する。したがって、受信品質推定部3142は、無線端末20から報告されたRSRP及びRSRQからRSSIを計算することができる。また、RSSIは、所望信号、干渉信号、雑音信号のすべての受信電力を足し合わせた値である。このため、受信品質推定部3142は、RSRQとRSRPからRSSIを導出し、導出したRSSIから無線装置32に対応する信号の受信電力を除くことで、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定することができる。なお、RSRQから導出されるRSSIは過去の測定時の値である。したがって、受信品質推定部3142は、RSSIから無線装置32に対応する信号の受信電力を除く際には、RSRQの測定時における無線装置32の送信電力及びチャネル利得の少なくとも一方を用いてもよい。
【0063】
受信品質推定部3142が、無線端末20から報告されたSINRを用いて、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定する方法の一例を説明する。SINRの分子である所望信号の受信電力はRSRPから求めることができる。したがって、受信品質推定部3142は、SINR及びRSRPからSINRの分母を導出することができる。SINRの分母は干渉信号の受信電力と雑音電力の和である。受信品質推定部3142は、SINRの分母から無線装置32に対応する干渉信号の受信電力を除くことで、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定することができる。なお、SINRの分母から無線装置32に対応する干渉信号の受信電力を除く際には、受信品質推定部3142は、SINRの測定時における無線装置32の送信電力及びチャネル利得の少なくとも一方を用いてもよい。
【0064】
受信品質推定部3142が、無線端末20から報告されたCQIを用いて、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定する方法の一例を説明する。CQIは一般的にSINRから変換された値である。したがって、受信品質推定部3142は、CQIから逆変換でSINRを求めることができる。受信品質推定部3142は、求めたSINRから、上述した方法と同様にして、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定してもよい。例えば、CQIとSINRとの対応関係を含む変換テーブルを予め用意してもよい。受信品質推定部3142は、この変換テーブルを用いて、CQIからSINRへの逆変換を行ってもよい。
【0065】
上述したように、受信品質推定部3142は、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を推定する。このため、無線装置32以外からの干渉を含む干渉雑音電力を正確に把握することができ、無線端末20の受信品質を精度よく推定できる。
(4)第4の変形例
【0066】
受信品質推定部3142は、無線端末20が受信する際に用いるアンテナパネル及びビームの少なくとも一方に関する情報に基づいて、受信品質を推定してもよい。受信品質推定部3142は、無線端末20における下りリンク信号の受信する際のアンテナパネル及びビームの少なくとも一方の使用方法に関する情報を、無線端末20から取得してもよい。受信品質推定部3142は、無線端末20におけるアンテナパネル及びビームの少なくとも一方の使用方法に関する情報を用いることで、無線端末20の受信品質の推定精度を改善することができる。例えば、無線端末20が複数のアンテナパネルを備え、使用するアンテナパネル数を通信状況に応じて適応的に変更する場合には、無線端末20からアンテナパネルの使用方法に関する情報を入手することで、無線端末20の受信品質の推定精度を改善することができる。
(5)第5の変形例
【0067】
上記の説明では無線装置32が使用するビームについて言及していないが、本開示は無線装置32が複数のビームを用いる場合にも容易に拡張することができる。無線装置32が複数のビームを用いる場合の制御装置31の動作の一例を以下に説明する。なお、無線装置32が形成するビームを、第2のビームと呼んでもよい。第5の変形例では、無線装置32と無線端末20とは、第1のビームに替えて、又は加えて第2のビームを用いて通信を行ってもよい。
【0068】
受信信号処理部313またはチャネル利得計算部3141は、無線装置32のビームごとにチャネルの周波数応答またはインパルス応答を推定すればよい。
【0069】
チャネル利得計算部3141は、無線装置32のビームごとにチャネル利得を計算してもよい。
【0070】
受信品質推定部3142は、リソース割当部3143が割り当てたビームに対応したチャネル利得を用いて、無線端末20の受信品質を推定してもよい。ただし、リソース割当部3143が割り当てたビームに対応したチャネル利得が、チャネル利得計算部3141で計算されていない場合も起こり得る。例えば、干渉信号に対応するチャネル利得は、無線装置32が用いるすべてのビームに対しては計算されていない可能性がある。チャネル利得計算部3141で計算されていないチャネル利得に対しては、ビーム方向が近い他のビームのチャネル利得を用いてもよいし、他のビームのチャネル利得の平均値を用いてもよい。
【0071】
リソース割当部3143は、例えば、RSRPに基づいて、無線端末20に対して無線装置32が用いるビームを割り当てればよい。無線装置32がビームを変えながら下りリンクの参照信号を送信し、RSRPが大きいビームを無線端末20から制御装置31へ報告することで、リソース割当部3143は無線端末20に適切なビームを割り当てることができる。
(6)第6の変形例
【0072】
上記の説明では無線装置32が備える送受信器ユニット(TXRU:Transceiver Unit)の数が1つの場合を例示したが、本開示は無線装置32が複数のTXRUを備える場合にも容易に拡張することができる。無線装置32が複数のTXRUを用いる場合の制御装置31の動作の一例を以下に説明する。なお、TXRUは、RF(Radio Frequency)チェーンと称される場合がある。
【0073】
受信信号処理部313は、TXRUごとにチャネルの周波数応答を推定してもよい。あるいは、複数のTXRUの間でチャネル利得が同等とみなせる場合には、受信信号処理部313は、1つのTXRUに対してのみチャネルの周波数応答を推定してもよい。
【0074】
チャネル利得計算部3141は、TXRUごとにチャネル利得を計算してもよい。あるいは、複数のTXRUの間でチャネル利得が同等とみなせる場合には、チャネル利得計算部3141は、1つのTXRUに対してのみチャネル利得を計算してもよい。
【0075】
受信品質推定部3142は、リソース割当部3143が割り当てたTXRUに対応したチャネル利得を用いて、無線端末20の受信品質を推定してもよい。なお、無線端末20に割り当てたTXRU以外の他のTXRUからの干渉が見込まれる場合には、他のTXRUからの干渉も加味して無線端末20の受信品質を推定してもよい。例えば、複数のTXRUが異なる偏波に対応する場合には、他のTXRUからの干渉が発生しないとみなしてもよいし、小さいレベルの干渉が発生するとみなしてもよい。
【0076】
リソース割当部3143は、例えば、RSRPに基づいて、無線端末20にTXRUを割り当ててもよい。あるいは、複数のTXRUの間で受信品質が同等とみなせる場合には、リソース割当部3143は無線端末20に、複数のTXRUのうちの何れかをランダムに割り当ててもよい。
(他の実施形態)
【0077】
なお、以上説明した実施形態及び変形例はあくまで一例であり、本開示の技術的思想の範囲は、上述の構成に限定されない。本開示の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本開示の範囲内に含まれる。
【0078】
フローチャートに示した制御方法の処理ステップは、必ずしも図示した順序通りに実行されなくてもよい。処理ステップは図示した順序とは異なる順序で実行されてもよく、2つ以上の処理ステップが並列的に実行されてもよい。また、一部の処理ステップが削除されてもよく、さらなる処理ステップが追加されてもよい。
【0079】
上述した各装置(例えば、制御装置10、基地局装置30、制御装置31、無線装置32)の機能は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組み合わせのうちの何れかで実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムコード(インストラクション)は、例えば、各装置の内部又は外部のコンピュータ読取可能な記録媒体において記憶され、実行時にメモリへ読み込まれてプロセッサにより実行されてよい。また、プログラムコードを記録したコンピュータ読取可能な非一時的記録媒体が提供されてもよい。
例えば、図7は、第1の実施形態で説明した制御装置10の機能を実現するソフトウェアとハードウェアとの組み合わせを示す一例である。情報処理装置40は、非一時的記録媒体41と、メモリ42と、プロセッサ43とを備える。非一時的記録媒体41と、メモリ42と、プロセッサ43は、内部バス44を介して互いに接続される。非一時的記録媒体41は、制御装置10の機能ブロック(具体的には、計算部11、推定部12及び割当部13)を実現するプログラムコードを記録している。制御装置10の機能ブロックを実現するプログラムコードはメモリ42に読み出される。プロセッサ43が、メモリ42に読み出されたプログラムコードを実行することにより、制御装置10の機能ブロックの処理を実行する。基地局装置30、制御装置31及び無線装置32に関しても同様に、非一時的記録媒体、メモリ及びプロセッサの組み合わせによって実現されてもよい。
(付記)
【0080】
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
[付記1]
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御装置であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、当該第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算する計算手段と、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定する推定手段と、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てる割当手段と、
を備える制御装置。
[付記2]
前記計算手段は、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信電力であって、前記無線装置が送信した参照信号の受信電力を用いて、前記チャネル利得を計算する、
請求項1に記載の制御装置。
[付記3]
前記制御装置は、複数の前記無線装置と前記無線端末との間の通信を制御し、
前記計算手段は、前記複数の無線装置のうちの何れかの無線装置の各々と前記無線端末との間のチャネル利得を計算する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
[付記4]
前記推定手段は、前記無線端末が前記無線装置以外から受信した信号の受信電力を推定し、当該受信電力を用いて、前記受信品質を推定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
[付記5]
前記推定手段は、前記無線端末が受信する際に用いるアンテナパネル及びビームの少なくとも一方に関する情報に基づいて、前記受信品質を推定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
[付記6]
前記計算手段は、前記無線装置が第2のビームを用いた場合の前記チャネル利得を計算し、
前記推定手段は、前記無線装置が前記第2のビームを用いた場合の前記チャネル利得を用いて、前記受信品質を推定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
[付記7]
前記推定手段は、前記無線装置が前記無線端末との通信に用いる送受信器ユニットに対応した前記受信品質を推定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
[付記8]
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御方法であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、前記第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算することと、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定することと、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てることと、
を含む制御方法。
[付記9]
プロセッサ及びメモリを含むコンピュータに、
無線装置と無線端末との間の通信を制御する制御方法であって、
前記無線端末が第1のビームを用いて送信した参照信号を用いて、前記第1のビームを用いた場合の前記無線端末と前記無線装置との間のチャネル利得を計算することと、
前記チャネル利得と前記無線装置の送信電力とに基づいて、前記無線端末が前記第1のビームを用いて受信した場合の受信品質を推定することと、
前記受信品質に基づいて、前記無線端末に、無線リソース及び変調符号化方式の少なくとも一方を割り当てることと、
を含む制御方法を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0081】
1 無線通信システム
10,31 制御装置
11 計算部
12 推定部
13 割当部
20 通信端末
30 基地局装置
32 無線装置
33 伝送路
311 伝送路インタフェース
312 送信信号処理部
313 受信信号処理部
314 スケジューリング部
3141 チャネル利得計算部
3142 受信品質推定部
3143 リソース割当部
40 情報処理装置
41 非一時的記録媒体
42 メモリ
43 プロセッサ
44 内部バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7