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特開2024-151538納期設定装置、納期設定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151538
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】納期設定装置、納期設定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241018BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064968
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】小峯 順太
(72)【発明者】
【氏名】辻 泰成
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】需要者による納期遅延の偏りを抑制し、在庫量を削減することができる納期設定装置、納期設定方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】納期設定装置1において、記憶部20は、仕込み生産品の注文の要求納期を含む注文情報201と、注文に係る需要者の過去一定期間における要求納期を遵守できなかった不遵守案件数と、を記憶する。仮予約処理部102は、要求納期に対して仮納期を設定して、仮予約を行う。優先順位付け処理部104は、仮納期が同日である複数の注文に対して、各注文に係る需要者の不遵守案件数を比較し、不遵守案件数がより多い需要者の注文であるほど、より高い優先順位を付し、優先順位の高い順に、仮納期を正式な回答納期に設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕込み生産品の注文の要求納期を含む注文情報と、前記注文に係る需要者の過去一定期間における要求納期を遵守できなかった不遵守案件数と、を記憶する記憶部と、
前記要求納期に対して仮納期を設定して、仮予約を行う仮予約処理部と、
前記仮納期が同日である複数の注文に対して、各注文に係る需要者の前記不遵守案件数を比較し、前記不遵守案件数がより多い需要者の注文であるほど、より高い優先順位を付し、前記優先順位の高い順に、前記仮納期を正式な回答納期に設定する優先順位付け処理部と、を備える、
納期設定装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記注文に係る製品の在庫情報をさらに記憶し、
前記優先順位付け処理部は、在庫量がより少ない製品に係る注文であるほど、より高い優先順位を付し、前記不遵守案件数に基づく優先順位と前記在庫量に基づく優先順位との組合せから決定した総合優先順位の高い順に、前記仮納期を前記回答納期に設定する、
請求項1に記載の納期設定装置。
【請求項3】
前記優先順位付け処理部は、前記仮納期と前記要求納期との差がより大きい注文であるほど、より高い優先順位を付し、前記不遵守案件数に基づく優先順位と、前記仮納期と前記要求納期との差に基づく優先順位と、の組合せから決定した総合優先順位の高い順に、前記仮納期を前記回答納期に設定する、
請求項1に記載の納期設定装置。
【請求項4】
前記記憶部は、仮納期時点の工場の生産能力を含む生産情報を更に記憶し、
前記優先順位付け処理部は、前記仮納期が同日である複数の前記注文の要求台数の和を取得し、前記要求台数の和が前記生産能力の空き台数を超えていない場合は、前記優先順位を付さずに複数の前記注文の前記仮納期を前記回答納期に設定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の納期設定装置。
【請求項5】
前記優先順位付け処理部は、前記要求台数の和が前記生産能力の空き台数を超える場合は、前記優先順位の高い順に各注文の要求台数を取得し、前記要求台数が前記生産能力の空き台数を超えていない注文について、前記仮納期を前記回答納期に設定する、
請求項4に記載の納期設定装置。
【請求項6】
前記記憶部が記憶する前記注文情報は、分割出荷の可否を示す情報を含み、
前記優先順位付け処理部は、前記優先順位の高い順に各注文の前記要求台数を取得し、前記要求台数が前記生産能力の空き台数を超えたときの前記注文に対して、前記分割出荷が可能である場合に、前記要求台数のうち前記生産能力の空き台数だけ分割して前記仮納期を前記回答納期に設定し、残りの台数の前記仮納期を翌日以降に変更する、
請求項5に記載の納期設定装置。
【請求項7】
仕込み生産品の注文の要求納期に対して仮納期を設定する仮納期設定ステップと、
前記仮納期が同日である複数の注文に対して、過去一定期間における要求納期を遵守できなかった不遵守案件数がより多い需要者の注文であるほど、より高い優先順位を付し、前記優先順位の高い順に、前記仮納期を正式な回答納期に設定する優先順位付けステップと、を有する、
納期設定方法。
【請求項8】
コンピュータを、
仕込み生産品の注文の要求納期と、前記注文に係る需要者の過去一定期間における要求納期を遵守できなかった不遵守案件数と、を記憶する記憶部、
前記要求納期に対して仮納期を設定する仮予約処理部、
前記仮納期が同日である複数の注文に対して、前記不遵守案件数がより多い需要者の注文であるほど、より高い優先順位を付し、前記優先順位の高い順に、前記仮納期を正式な回答納期に設定する優先順位付け処理部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、納期設定装置、納期設定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
需要者からの注文に応じて、製造した製品を需要者に販売する際の納期設定方法として、座席予約による納期回答方式が知られている(例えば、特許文献1)。座席予約による納期回答方式は、製造拠点の生産能力を反映させた生産計画を座席に見立て、その座席に対し、需要者の要望を割り当てるものである。
【0003】
特許文献1に記載の座席予約による納期回答方式は、製品の製造計画を座席で表す座席予約に加え、製品の構成部品の座席予約を利用して納期回答を行う。これにより、共通部品を含む完成製品の需要変動に迅速に対応して、顧客に与える納期満足度を向上させることができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-183256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の注文が同日の納期を指定し、製品の供給可能数量を超えている場合には、超えた数量は翌日以降の納期に設定する必要がある。特許文献1に記載の方式を含む座席予約による納期回答方式では、同日の納期を指定した注文に対して、同日の納期日での生産が不可能である場合、注文の早い案件から優先的に供給の可否を判断する。
【0006】
このように早期の注文から優先して納期設定する方法は、需要者によって納期遅延の偏りが発生して満足度が低下する場合がある。また、需要者に対する先々の販売を見越して、販売拠点による過度の在庫取りを誘発し、結果として、販売拠点が過度の在庫を保持する状況が発生しうる。
【0007】
本開示は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、需要者による納期遅延の偏りを抑制し、在庫量を削減することができる納期設定装置、納期設定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の納期設定装置は、仕込み生産品の注文の要求納期を含む注文情報と、注文に係る需要者の過去一定期間における要求納期を遵守できなかった不遵守案件数と、を記憶部に記憶し、要求納期に対して仮納期を設定して、仮予約を行う。さらに、納期設定装置は、仮納期が同日である複数の注文に対して、各注文に係る需要者の不遵守案件数を比較し、不遵守案件数がより多い需要者の注文であるほど、より高い優先順位を付し、優先順位の高い順に、仮納期を正式な回答納期に設定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、過去一定期間の要求納期の不遵守案件数に基づいて設定した優先順位を用いて納期を設定するため、需要者による納期遅延の偏りを抑制し、在庫量を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る納期設定装置の構成例を示すブロック図
図2】注文及び納期回答の流れを表した図
図3】納期設定装置のハードウェア構成例を示した図
図4】(a)注文情報の例を示した図、(b)生産情報の例を示した図
図5】注文の仮納期を設定した状態を説明するための図
図6】(a)機種情報の例を示した図、(b)在庫情報の例を示した図、(c)遅延情報の例を示した図
図7】優先順位付けの手順を説明するための図
図8】納期設定処理のフローチャート
図9】優先順位付け処理のフローチャート
図10】回答納期の正設定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
以下に、本開示を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、この開示の実施の形態に係る納期設定装置1の構成例を示すブロック図である。納期設定装置1は、需要予測又は販売計画に基づいて受注前に生産する仕込み生産品を含む、量産製品の納期設定を行う装置である。
【0013】
図2は、一例として、需要者11、販売拠点12、配送拠点13及び工場14における注文及び納期回答の流れを表した図である。図2に示すように販売拠点12において、需要者11からの注文に基づいて、工場14への注文がなされ、それに対する工場14からの生産情報に基づいて、需要者11への納期回答がなされる。
【0014】
納期設定装置1は、例えば、販売拠点12に備えられ、需要者11の情報、工場14からの生産情報及び各拠点の在庫情報を含む各種情報に基づいて納期設定を行う。以下の説明において、注文又は注文案件は、需要者11から受ける注文のことを指し、回答納期は、需要者11に向けて提示される納期のことを指す。
【0015】
納期設定装置1は、納期設定機能を有する任意のコンピュータであり、例えば、納期設定用のプログラムがインストールされた汎用コンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等である。
【0016】
図3は、納期設定装置1のハードウェア構成例を示したブロック図である。図3の例において、納期設定装置1は、バス310を介して互いに接続された、プロセッサ301と、一次記憶装置302と、二次記憶装置303と、入力部304と、表示部305と、通信インタフェース306と、を備える。
【0017】
プロセッサ301は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央算出装置)を備える。プロセッサ301は、二次記憶装置303に記憶された制御プログラムを一次記憶装置302に読み込んで実行する。
【0018】
一次記憶装置302は、例えばRAM(Random Access Memory)を備え、プロセッサ301のワークメモリとして機能し、プロセッサ301が二次記憶装置303から読み込んだ制御プログラムを一時記憶する。
【0019】
二次記憶装置303は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を備える。二次記憶装置303は、プロセッサ301が実行するプログラム、又は、制御に用いるパラメータ等を記憶する。
【0020】
入力部304は、例えば、キーボード又はポインティングデバイスを備え、納期設定装置1の管理者の入力を受け付け、入力信号をプロセッサ301に渡す。表示部305は、任意の表示デバイスであって、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。入力部304と表示部305は、一体化されたタッチパネルでもよい。
【0021】
通信インタフェース306は、外部の任意のコンピュータとデータの送受信を行うための任意の通信方式のインタフェースであり、例えば、Ethernet(登録商標)又は無線LAN等の通信デバイスを備える。
【0022】
例えば、プロセッサ301と一次記憶装置302とが協働して、図1に示す納期設定装置1の各機能を実現する。また、一次記憶装置302と二次記憶装置303のいずれか一方又は両方が、納期設定装置1の記憶部20として機能する。
【0023】
具体的には、納期設定装置1は、需要者11及び注文に係る情報と製品の生産に係る情報とを含む各種情報を取得する情報取得部101、需要者11からの注文に対して仮予約する仮予約処理部102、及び、仮納期を含む注文に係る情報を記憶部20に記録する仮予約記録部103、として機能する。更に、納期設定装置1は、仮納期が同日である注文の優先順位付けを行う優先順位付け処理部104、生産計画を確定させる生産計画確定処理部105、及び、回答納期を出力する回答納期出力部106、として機能する。各機能部について詳細に説明する。
【0024】
<情報取得部101>
情報取得部101は、需要者11から注文を受けたときに注文内容を示す注文情報201を取得する。情報取得部101は、納期設定装置1の管理者が入力部304へ入力した情報、又は、通信インタフェース306を介して外部からの受信した情報を、注文情報201として取得する。
【0025】
図4(a)は注文情報201の例を示した図である。注文情報201は例えば、図4(a)に示すように、注文毎に付与された注文番号、需要者11の名称である需要者名、需要者11が求める製品の台数である要求台数、需要者11が求める製品機種を示す要求製品、需要者11が製品を注文した注文日時、需要者11が求める納期である要求納期、及び、分割出荷の可否の情報を含む。分割出荷の可否は、工場14の1日の生産能力内で要求台数を生産できない場合に、出荷を分割し、生産できた製品から出荷しても良いか否かを示す需要者11の意向を示した情報である。
【0026】
情報取得部101は、更に、要求製品について工場14が保有する生産情報202を取得する。図4(b)は、図4(a)に示す注文情報201に含まれる要求製品に係る生産情報202を示した図である。生産情報202は例えば、図4(b)に示すように、需要者11の注文案件と工場14での工事案件を1対1対応させる番号である工事番号、要求製品が仕込み生産品か受注生産品かを示す生産方式、及び、要求製品に対する工場の1日あたりの生産能力を含む。生産情報202は、注文番号、要求製品及び要求台数と対応づけて記憶されている。
【0027】
<仮予約処理部102>
仮予約処理部102は、情報取得部101が取得した注文情報201及び生産情報202に基づいて仮納期を設定して注文の仮予約を行う。具体的には、仮予約処理部102は、従来の座席予約の納期回答方式を用いて、工場14の生産能力及び製造工程等に基づいて設定した座席に、需要者11からの仕込み生産品及び受注生産品の注文を割り当てることにより仮納期を算出する。
【0028】
ここで、仕込み生産品に関しては生産能力による注文数の上限を設けず、仮予約処理部102は、先着順に要求納期を満たす日程で仮納期を設定する。図5は、注文の仮納期を設定した状態を説明するための図であり、仮予約時の注文A~Eの仮納期をa月b日とa月c日に設定した状態を示す。注文状況によっては、図5に例示するように、仮納期が同じである注文(a月c日の注文C~E)の合計要求台数が工場の生産能力を超過した状態になりうる。
【0029】
<仮予約記録部103>
仮予約記録部103は、仮予約処理部102が注文に対して算出した仮納期を記憶部20に記録する。仮納期は、図4(a)に示す注文情報201の一要素として格納される。
【0030】
需要者11が注文した製品が受注生産品の場合は、仮予約記録部103が記録した仮納期について、優先順位付け処理部104が優先順位付け処理を実行することなく、需要者11に回答する回答納期として正設定され、生産計画確定処理部105に回答納期が渡される。
【0031】
一方、需要者11が注文した製品が仕込み生産品の場合は、記憶部20は仮納期を含む注文情報201を保持し、優先順位付け処理部104が記憶部20に記憶されている各情報に基づいて、優先順位付け処理を実行する。優先順位付け処理部104の処理については、後述する。
【0032】
ここで、記憶部20には、優先順位付け処理に用いられる各種情報が記憶されている。記憶部20は、図1に示すように、前述の注文情報201、生産情報202に加え、注文に係る製品の機種情報203、製品の各拠点における在庫情報204、及び、注文した需要者11の遅延情報205が記憶されている。図6(a),(b),(c)は、それぞれ機種情報203、在庫情報204、遅延情報205の例を示した図である。
【0033】
機種情報203は、図6(a)に示すように、製品の機種と、仕込み生産品か受注生産品かを示す生産方式と、1日あたりの生産能力と、を含む。在庫情報204は、図6(b)に示すように、製品の機種と、工場14における在庫と、配送拠点13における在庫と、販売拠点12における在庫と、を含み、定期的に更新される情報である。機種情報203及び在庫情報204は、製品毎に記憶されている情報である。
【0034】
遅延情報205は、注文及び需要者11毎に記憶されている遅延に係る情報であり、仮納期の要求納期からの遅延日数と、過去一定期間の要求納期の不遵守案件数と、を含む。仮納期の要求納期からの遅延日数は、仮予約処理部102が算出する仮納期と需要者11の要求納期との日数差である。過去一定期間の要求納期の不遵守案件数は、注文以前の一定期間において、注文に係る需要者が要求した納期に対して、回答納期が遅延して要求納期を遵守できなかった案件数である。要求納期の不遵守案件を計数する期間は任意であり、例えば図6(c)に示すように1年間である。要求納期の不遵守案件は、注文に対する納品の度にあるいは定期的に集計される。
【0035】
<優先順位付け処理部104>
優先順位付け処理部104は、記憶部20に記憶されている各種情報に基づいて、仕込み生産品の注文案件の優先順位付けを行う。ここでの優先順位付けは、仮予約処理部102が付与した仮納期を正式な回答納期にする処理を行う順番を決定することである。
【0036】
優先順位付け処理部104は、まず、優先順位付けを行う対象の判定を行い、次に対象となる注文案件について優先順位付けの処理を行い、決定した優先順位に従い、仮納期を正式な回答納期に設定する処理を行う。優先順位付けを行う対象であるか否かは、次の条件Iに基づいて判定される。
【0037】
条件I:同日の仮納期が付された全ての注文に対し、同日の回答納期日での生産を引き受けることができない
【0038】
すなわち、同日の仮納期が設定された注文案件のうち、注文に係る製品の仮納期時点の生産能力を超える場合の全て注文案件を、優先順位付けの対象と判定する。具体的な判定方法は、図5に示したように、縦軸を台数、横軸を仮予約処理部102が算出した仮納期として、仕込み生産品の注文の要求台数を積み上げる。要求台数の合計が仮納期時点の生産能力以下である場合には、その仮納期を設定された注文案件全てが優先順位付けの対象でないと判定する。一方、要求台数の合計が生産能力を超えた場合には、その仮納期を設定された注文案件全てが優先順位付けの対象であると判定する。
【0039】
図5の例において、仮納期のa月b日の注文A,Bの要求台数の合計が生産能力以下であるため、優先順位付け処理部104は、注文A,Bを優先順位付けの対象でないと判定する。一方、仮納期のa月c日の注文C,D,Eの要求台数の合計が生産能力を超えているため、注文C,D,Eを優先順位付けの対象と判定する。
【0040】
条件Iを満たさない場合、すなわち、同日の仮納期が付された全ての注文の要求台数の合計が、仮納期時点の生産能力以下である場合は、優先順位付けは実施されない。この場合の同日の仮納期が付された全注文の仮納期が、正式な回答納期に設定される。条件Iを満たす場合、すなわち、同日の仮納期が付された全ての注文の要求台数の合計が、仮納期時点の生産能力を超える場合は、優先順位付けが実施される。優先順位は次の3つの変数に基づいて決定する。
【0041】
第1変数は、注文に係る需要者11の、過去一定期間における要求納期を遵守できなかった案件数である。不遵守案件数を計数する一定期間は任意であり、例えば1年間である。第2変数は、注文に係る製品の在庫量である。在庫量は、工場在庫、配送拠点在庫及び販売拠点在庫の合計でもよい。第3変数は、仮納期の要求納期からの遅延日数、すなわち、仮納期と要求納期との差の日数である。
【0042】
第1変数及び第3変数は、記憶部20に需要者11毎に記憶されている遅延情報205のうち、優先順位付け対象の注文に係る需要者11に対応づけられた情報から得られる。第2変数は、記憶部20に製品機種毎に記憶されている在庫情報204のうち、注文に係る製品機種に対応づけられた情報から得られる。
【0043】
優先順位付け処理部104は、第1変数、第2変数及び第3変数に基づいて、優先順位付けの対象である注文案件の優先順位を決定する。優先順位付けの手順は、任意である。例えば、第1変数、第2変数及び第3変数のそれぞれについて順位を1から昇順に付して、順位の合計の小さい注文案件を、合計の大きい注文案件より優先順位を高くしてもよい。図7は、優先順位付けの手順の例を説明するための図である。
【0044】
図7の例において、第1変数である要求納期の不遵守案件数の多い順に、第1変数の順位を昇順に付す。同様に、第2変数である製品の在庫量が少ない順に、第2変数の順位を昇順に付し、第3変数である仮納期の要求納期からの遅延日数が多い順に、第3変数の順位を昇順に付す。なお、いずれの変数についても、同じ変数の値を有する2以上の注文案件には、それぞれ1に近い数字の同順位を付してもよい。
【0045】
その後、優先順位付け処理部104は、第1変数、第2変数及び第3変数のそれぞれに基づく優先順位の任意の組合せから、注文案件の総合優先順位を決定する。図7の例においては、各変数の順位の合計を算出し、合計値が小さい方から高い順位とする総合優先順位を決定する。
【0046】
なお、順位の合計が互いに同じ場合に、第1変数、第2変数及び第3変数のいずれかの順位に従ってもよい。複数の変数の順位を参照する場合には、参照する変数の順番を予め決めておく。例えば、順位の合計が同じときに第1変数の順位に従うことを予め決めておいた場合には、図7の例において、注文C,注文E、注文Dの順番に上位とする総合優先順位を決定する。第1変数、第2変数及び第3変数を参照しても総合優先順位が決まらない場合は、注文時期を比較し、先に注文した注文案件に上位の総合優先順位を設定してもよい。
【0047】
注文案件の優先順位付けの他の手順として、第1変数である要求納期の不遵守案件数の多い順に優先順位を昇順に付して、第1変数が同じ値であった場合に、第2変数である製品の在庫量が少ない順に優先順位を昇順に付してもよい。更に、第2変数が同じ値であった場合に、第3変数である仮納期の要求納期からの遅延日数が多い順に優先順位を昇順に付してもよい。このように、優先順位付けのための各変数の比較を第1変数、第2変数、第3変数の順で行ってもよいが、第1変数、第2変数、第3変数の順番を互いに入れ替えてもよい。
【0048】
優先順位付け処理部104は、優先順位又は総合優先順位の高い順に、生産能力を超えない範囲で、注文案件の仮納期を正式な回答納期に設定する処理を行う。具体的には、優先順位又は総合優先順位の高い順に、注文案件の要求台数を加算していき、要求台数が生産能力の空き台数を超えていない注文案件について、仮納期を正式な回答納期に設定する。さらに要求台数を加算していった結果、要求台数が生産能力を超えたときの注文案件について注文情報201を参照し、分割出荷が可能であるか否かを判定する。
【0049】
分割出荷が可能である場合には、優先順位付け処理部104は、要求台数のうち生産能力の空き台数だけ分割して仮納期を正式な回答納期に設定し、残りの生産能力の空き台数を超えた台数の仮納期を翌日以降に変更する。分割出荷が不可能である注文案件に対しては、要求台数全てについて仮納期を翌日以降に変更する。このようにして、優先順位付け処理部104は、早い日付の仮納期から順に、また、同じ日付の仮納期の優先順位の高い順に、正式な回答納期を決定する。
【0050】
<生産計画確定処理部105>
生産計画確定処理部105は、正式な回答納期を決定した注文案件に対し、生産計画の確定を行う。確定された生産計画は、配送拠点13及び工場14に送信され、工場14は生産計画に基づいて、仕込み生産品又は受注生産品の生産を行う。
【0051】
<回答納期出力部106>
回答納期出力部106は、生産計画が確定された注文案件から順に、優先順位付け処理部104が決定した正式な回答納期を、本回答として出力する。出力された正式の回答納期が、需要者11に対して送達される。
【0052】
以上のように構成された納期設定装置1の動作について、図8~10に示したフローチャートに沿って説明する。図8は納期設定処理のフローチャートである。
【0053】
まず、納期設定装置1の情報取得部101は、需要者11から注文を受けたときに、注文内容を示す注文情報201と、注文に係る製品の生産に係る生産情報202と、を取得する(ステップS1)。注文情報201は、納期設定装置1の管理者が入力部304へ入力した情報、又は、通信インタフェース306を介して外部から受信した情報であり、図4(a)に示すように、注文毎に付与された注文番号、需要者11の名称である需要者名、需要者11が求める製品の台数である要求台数、需要者11が求める製品名を示す要求製品、需要者11が製品を注文した注文日時、需要者11が求める納期である要求納期、分割出荷の可否の情報を含む。
【0054】
生産情報202は、要求製品について工場14が保有する生産情報であり、図4(b)に示すように、需要者11の注文案件と工場14での工事案件を1対1対応させる番号である工事番号、要求製品が仕込み生産品か受注生産品かを示す生産方式、及び、要求製品に対する工場14の日毎の生産能力を含む。
【0055】
次に、仮予約処理部102が、情報取得部101が取得した注文情報201及び生産情報202に基づいて仮納期を設定し(ステップS2;仮納期設定ステップ)、仮予約記録部103が仮納期を含む仮予約の情報を記憶部20に記録する。例えば、仮予約処理部102は、従来の座席予約の納期回答方式を用いて、工場14の生産能力に基づいて設定した座席に、需要者11からの仕込み生産品及び受注生産品の注文を割り当てることにより仮納期を算出する。
【0056】
ここで、仕込み生産品に関しては生産能力による上限を設けず、仮予約処理部102は先着順に要求納期を満たす日程で回答納期を仮予約する。このため、注文状況によっては、同じ仮納期の注文案件の合計要求台数が工場14の生産能力を超過した状態になりうる。よって、注文案件に係る製品が仕込み生産品の場合は(ステップS3:No)、優先順位付け処理により(ステップS4;優先順位付けステップ)、注文案件の回答納期が調整される。
【0057】
一方、注文案件に係る製品が受注生産品の場合は(ステップS3:Yes)、仮予約記録部103がステップS2で設定した仮納期を正式な回答納期として設定する。
【0058】
ステップS4の優先順位付け処理について、図9を用いて詳細に説明する。図9は優先順位付け処理のフローチャートである。
【0059】
まず、優先順位付け処理部104は、図8のステップS2で仮予約処理部102が設定した仮納期の昇順に注文案件を並び替える(ステップS101)。次に、優先順位付け処理部104は、正式な回答納期が決まっていない注文の仮納期のうち、最も早い日付であるt(日)を選択し、仮納期がt(日)に設定されている注文を選択する(ステップS102)。
【0060】
次に、優先順位付け処理部104は、仮納期であるt(日)時点の生産能力を取得し(ステップS103)、仮納期がt(日)である注文案件の要求台数の和と比較する(ステップS104)。仮納期がt(日)である注文案件の要求台数の和が、t(日)時点の生産能力を超えている場合には(ステップS104:Yes)、優先順位付けを行う(ステップS105)。
【0061】
一方、仮納期がt(日)である注文案件の要求台数の和が、t(日)時点の生産能力以下である場合には(ステップS104:No)、仮納期がt(日)の注文案件を全て供給することができるため、仮納期t(日)を正式な回答納期に設定する(ステップS106)。
【0062】
ステップS105の優先順位付けは、前述したように、各注文案件に係る需要者11の、過去一定期間における要求納期の不遵守案件数である第1変数と、各注文案件に係る製品の在庫量である第2変数と、仮納期t(日)の要求納期からの遅延日数である第3変数と、の少なくともいずれか1つを用いて行う。
【0063】
ここで、優先順位付け処理部104は、第1変数及び第3変数を、記憶部20に需要者11毎に記憶されている遅延情報205のうち、優先順位付け対象の注文に係る需要者に対応づけられた情報から取得する。また、優先順位付け処理部104は、第2変数を、記憶部20に製品機種毎に記憶されている在庫情報204のうち、注文に係る製品機種に対応づけられた情報から取得する。
【0064】
優先順位付け処理部104は、第1変数である要求納期の不遵守案件数の多い程、優先順位を高く設定する。又は、第2変数である製品の在庫量が少ない程、優先順位を高く設定する。又は、第3変数である仮納期の要求納期からの遅延日数が多い程、優先順位を高く設定する。あるいは、第1~3変数による優先順位の組合せにより総合優先順位を決定する。以下の処理において、優先順位は各変数による優先順位又は総合優先順位を指す。
【0065】
優先順位付けが実行された注文案件について、回答納期の正設定処理を行う(ステップS107)。回答納期の正設定処理について、図10を用いて詳細に説明する。
【0066】
図10のフローチャートにおいて、まず、優先順位を示す変数nに1を代入する(ステップS201)。次に、優先順位付け処理部104は、図9のフローチャートのステップS105で決定した優先順位nの注文案件xを選択して(ステップS202)、注文案件xの要求台数がt(日)時点の生産能力の空き台数を超えているか否かを判定する(ステップS203)。
【0067】
優先順位付け処理部104は、注文案件xの要求台数がt(日)時点の生産能力の空き台数以下の場合は(ステップS203:No)、注文案件xの回答納期をtに設定する(ステップS204)。注文案件xの要求台数がt(日)時点の生産能力の空き台数を超える場合は(ステップS203:Yes)、分割出荷が可能か否かを判定する(ステップS205)。分割出荷が可能か否かを示す情報は、需要者11の注文時の要望に基づくものであり、注文情報201に格納されている
【0068】
優先順位付け処理部104は注文情報201を参照し、分割出荷が可能でない場合は(ステップS205:No)、注文案件xの仮納期をt+1に更新する(ステップS206)。一方、分割出荷が可能である場合は(ステップS205:Yes)、t時点の生産能力の空き台数だけ分割する(ステップS207)。優先順位付け処理部104は、分割した台数の正式な回答納期をtに設定し(ステップS208)、残りの、生産能力の空き台数を超えた台数については仮納期をt+1に変更する(ステップS209)。
【0069】
ステップS204で注文xの回答納期を設定し、又は、ステップS206,S209で仮納期を設定した後、優先順位付け処理を行った注文が最後であるか判定する(ステップS210)。まだ処理を行っていない注文があり、最後の注文でない場合は(ステップS210:No)、nをn+1に変更して(ステップS211)、ステップS202に戻る。最後の注文である場合は(ステップS210:Yes)処理を終了する。
【0070】
回答納期の正設定処理の終了後、図9のフローチャートに戻り、ステップS108で、t(日)が全注文案件に設定された仮納期の中で最終日であるか否かを判定する。t(日)が最終日でない場合は(ステップS108:No)、優先順位付け処理を行う仮納期tをt+1に更新して(ステップS109)、ステップS102にもどり、仮納期t+1の注文について処理を継続する。一方、t(日)が最終日である場合は(ステップS108:Yes)処理を終了する。
【0071】
優先順位付け処理の終了後(ステップS4)、図8のフローチャートに戻り、正式な回答納期を決定した注文に対し、生産計画確定処理部105が生産計画の確定を行う(ステップS5)。確定された生産計画は、配送拠点13及び工場14に送信され、工場14は生産計画に基づいて、仕込み生産品又は受注生産品の生産を行う。
【0072】
次に、回答納期出力部106は、生産計画が確定された注文案件から順に、優先順位付け処理部104が決定した正式な回答納期を本回答として出力する(ステップS6)。出力された正式の回答納期は、需要者に対して送達される。ここで、回答納期出力部106は、優先順位付け処理部104が決定した正式の回答納期が要求納期を遵守できていない場合は、遅延情報205の不遵守案件数に1を追加する。これにより、過去一定期間の不遵守案件数を集計することができ、以後の優先順位付けに反映させることができる。
【0073】
以上説明したように本実施の形態に係る納期設定装置1において、情報取得部101は、注文の要求納期を含む注文情報201と、注文に係る製品の生産情報202と、を取得し、仮予約処理部102は、要求納期に対して仮納期を設定して注文を仮予約する。優先順位付け処理部104は、仕込み生産品に関して、仮納期が同日である複数の注文に対して、各注文に係る需要者11の要求納期の不遵守案件数と、各注文の製品の在庫量と、仮納期と要求納期との差と、の少なくともいずれか1つに基づいて優先順位を決定し、優先順位の最も高い注文から順に、仮納期を正式な回答納期に設定することとした。これにより、需要者による納期遅延の偏りを抑制することができ、在庫量を削減することができる。
【0074】
なお、上記実施の形態において、各注文に係る需要者11の要求納期の不遵守案件数と、各注文の製品の在庫量と、仮納期と要求納期との差と、の少なくともいずれか1つに基づいて優先順位を決定するとしたが、さらに他の変数も含めて優先順位を決定してもよい。
【0075】
また、上記実施の形態において、仮納期及び正式な回答納期を日にちで設定したが、これに限られない。週又は月で設定してもよく、さらに1日の午前及び午後、又は、時間単位で仮納期又は正式な回答納期を設定してもよい。
【0076】
また、上記実施の形態に示したハードウェア構成及びフローチャートは一例であり、任意に変更及び修正が可能である。納期設定装置1で実現する各機能は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。
【0077】
例えば、上記実施の形態の動作を実行するためのプログラムを、コンピュータが読み取り可能なCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disc)、メモリカード等の記録媒体に格納して配布し、プログラムをコンピュータにインストールすることにより、各機能を実現することができるコンピュータを構成してもよい。そして、各機能をOS(Operating System)とアプリケーションとの分担、又はOSとアプリケーションとの協同により実現する場合には、OS以外の部分のみを記録媒体に格納してもよい。
【0078】
本開示は、上記実施の形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 納期設定装置、11 需要者、12 販売拠点、13 配送拠点、14 工場、20 記憶部、101 情報取得部、102 仮予約処理部、103 仮予約記録部、104 優先順位付け処理部、105 生産計画確定処理部、106 回答納期出力部、201 注文情報、202 生産情報、203 機種情報、204 在庫情報、205 遅延情報、301 プロセッサ、302 一次記憶装置、303 二次記憶装置、304 入力部、305 表示部、306 通信インタフェース、310 バス。
図1
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