IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛三工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子装置 図1
  • 特開-電子装置 図2
  • 特開-電子装置 図3
  • 特開-電子装置 図4
  • 特開-電子装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151543
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064976
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄輝
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS04
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB27
5H730DD02
5H730FD61
5H730FG05
5H730XC03
5H730XC04
5H730ZZ12
(57)【要約】
【課題】半田にクラックが生じることを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】電子装置は、基板の上に配置された電子部品を備える電力変換装置と、基板と電子部品を接合する半田と、電力変換装置の出力を制御する制御装置と、を備えている。制御装置は、所定の第1基準時間以上の時間で電力変換装置の出力を目標出力まで上昇させてもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に配置された電子部品を備える電力変換装置と、
前記基板と前記電子部品を接合する半田と、
前記電力変換装置の出力を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、所定の第1基準時間以上の時間で前記電力変換装置の出力を目標出力まで上昇させる、電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置であって、
前記基板の温度を検出する温度センサを更に備え、
前記制御装置は、前記電力変換装置の出力を前記目標出力にする指示を受け付ける場合に、前記温度センサにより検出される前記基板の温度が所定の第1基準温度未満である場合は、前記第1基準時間以上の時間で前記電力変換装置の出力を前記目標出力まで上昇させ、前記温度センサにより検出される前記基板の温度が前記第1基準温度以上である場合は、前記第1基準時間未満の所定の第2基準時間未満の時間で前記電力変換装置の出力を前記目標出力まで上昇させる、電子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置であって、
前記制御装置は、前記電力変換装置の出力を前記目標出力にする指示を受け付ける場合に、前記電力変換装置の出力を早期に上昇させるための要求を受け付ける場合は、前記温度センサにより検出される前記基板の温度が前記第1基準温度未満であるか否かにかかわらず、前記第2基準時間未満の時間で前記電力変換装置の出力を前記目標出力まで上昇させる、電子装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電子装置であって、
前記制御装置は、前記電力変換装置の出力を前記目標出力にする指示を受け付ける前に、前記温度センサにより検出される前記基板の温度が前記第1基準温度未満の所定の第2基準温度未満である場合は、前記電力変換装置の出力を前記目標出力未満の所定の待機出力まで上昇させ、その後に前記電力変換装置の出力を前記目標出力にする指示を受け付ける場合に、前記電力変換装置の出力を前記目標出力まで上昇させる、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に電力用半導体装置が開示されている。特許文献1の電力用半導体装置は、裏パターンが放熱板上に半田付けされると共に、表主面に形成された主回路パターン上に電力用スイッチング半導体チップが半田付けされてなるパワーモジュールを備えている。特許文献1の電力用半導体装置では、パワーモジュールの温度を温度検出素子で検出し、その検出温度が所定以下のとき、加熱手段でパワーモジュールを加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-7934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電力用半導体装置では、パワーモジュールの温度が急激に上昇することにより半田にクラックが生じることがある。そこで本明細書は、半田にクラックが生じることを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術の第1の態様は、電子装置が、基板の上に配置された電子部品を備える電力変換装置と、前記基板と前記電子部品を接合する半田と、前記電力変換装置の出力を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、所定の第1基準時間以上の時間で前記電力変換装置の出力を目標出力まで上昇させてもよい。
【0006】
この構成によれば、電力変換装置の出力が急激に上昇することを抑制することができ、その結果、電力変換装置の電子部品の温度と基板の温度とが急激に乖離することを抑制することができる。これにより、基板と電子部品を接合する半田にひずみが生じることを抑制することができ、半田にクラックが生じることを抑制することができる。
【0007】
第2の態様では、上記第1の態様において、電子装置が、前記基板の温度を検出する温度センサを更に備えていてもよい。前記制御装置は、前記電力変換装置の出力を前記目標出力にする指示を受け付ける場合に、前記温度センサにより検出される前記基板の温度が所定の第1基準温度未満である場合は、前記第1基準時間以上の時間で前記電力変換装置の出力を前記目標出力まで上昇させ、前記温度センサにより検出される前記基板の温度が前記第1基準温度以上である場合は、前記第1基準時間未満の所定の第2基準時間未満の時間で前記電力変換装置の出力を前記目標出力まで上昇させてもよい。
【0008】
この構成によれば、基板の温度が低いときに電力変換装置の出力が急激に上昇することを抑制することができる。その結果、基板の温度が低いときに、電力変換装置の電子部品の温度と基板の温度とが急激に乖離することを抑制することができる。これにより、半田にクラックが生じることを抑制することができる。一方、基板の温度が高いときには、電力変換装置の出力を早期に上昇させることができる。基板の温度が高いときには、基板の温度と電子部品の温度との急激な乖離が生じにくいので、電力変換装置の出力を早期に上昇させることができる。
【0009】
第3の態様では、上記第2の態様において、前記制御装置は、前記電力変換装置の出力を前記目標出力にする指示を受け付ける場合に、前記電力変換装置の出力を早期に上昇させるための要求を受け付ける場合は、前記温度センサにより検出される前記基板の温度が前記第1基準温度未満であるか否かにかかわらず、前記第2基準時間未満の時間で前記電力変換装置の出力を前記目標出力まで上昇させてもよい。
【0010】
この構成によれば、電力変換装置の出力を早期に上昇させることが要求される場合に、基板の温度にかかわらず、電力変換装置の出力を早期に上昇させることができる。
【0011】
第4の態様では、上記第2又は第3の態様において、前記制御装置は、前記電力変換装置の出力を前記目標出力にする指示を受け付ける前に、前記温度センサにより検出される前記基板の温度が前記第1基準温度未満の所定の第2基準温度未満である場合は、前記電力変換装置の出力を前記目標出力未満の所定の待機出力まで上昇させ、その後に前記電力変換装置の出力を前記目標出力にする指示を受け付ける場合に、前記電力変換装置の出力を前記目標出力まで上昇させてもよい。
【0012】
この構成によれば、基板の温度が低い場合に予め基板の温度を高めておくことができる。これにより、電力変換装置の出力が仮に急激に上昇してとしても、半田にクラックが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の電子装置のブロック図。
図2】実施例のDC-DCコンバータの回路図。
図3】実施例の電子部品の断面図。
図4】実施例の出力制御処理のフローチャート。
図5】実施例の昇圧処理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施例の電子装置2について図面を参照して説明する。図1に示すように、電子装置2は、DC-DCコンバータ20(電力変換装置の一例)と、DC-DCコンバータ20を制御する制御装置100とを備えている。
【0015】
実施例のDC-DCコンバータ20は、入力電圧を昇圧して出力する昇圧コンバータである。DC-DCコンバータ20の入力側(一次側)は、直流の電源40に接続される。電源40は、直流電圧をDC-DCコンバータ20に印加する。DC-DCコンバータ20の出力側(二次側)は、例えば二次電池90に接続される。変形例では、DC-DCコンバータ20の出力側(二次側)は、電動製品92(例えばモータ)に接続されてもよい。DC-DCコンバータ20は、電源40の電圧を昇圧して二次電池90又は電動製品92に入力する。二次電池90は、DC-DCコンバータ20を介して電源40から供給される電力を蓄電する。電動製品92は、DC-DCコンバータ20を介して電源40から供給される電力により動作する。
【0016】
図2に示すように、DC-DCコンバータ20は、一次側回路50と、二次側回路60と、一次側回路50と二次側回路60の間に構成されているトランス70とを備えている。DC-DCコンバータ20は、一次側回路50と二次側回路60が絶縁されている絶縁型のコンバータである。
【0017】
実施例のDC-DCコンバータ20は、位相シフトフルブリッジ型のコンバータである。なお、DC-DCコンバータ20の型式は特に限定されない。DC-DCコンバータ20は、位相シフトフルブリッジ型ではないコンバータであってもよい。また、DC-DCコンバータ20は、非絶縁型のコンバータであってもよい。以下では、位相シフトフルブリッジ型のDC-DCコンバータ20の一例について説明する。
【0018】
DC-DCコンバータ20の一次側回路50は、複数のスイッチング素子51-54と、一次側コイル55と、一次側インダクタンス56と、一次側コンデンサ58とを備えている。
【0019】
複数のスイッチング素子51-54は、第1スイッチング素子51と、第2スイッチング素子52と、第3スイッチング素子53と、第4スイッチング素子54とを含む。DC-DCコンバータ20では、複数のスイッチング素子51-54のオン/オフの切り替えが繰り返し行われることにより入力直流電圧が出力直流電圧に変換される。以下では、一次側回路50の複数のスイッチング素子51-54のうち、主に第1スイッチング素子51について説明する。第2スイッチング素子52、第3スイッチング素子53、及び第4スイッチング素子54については、第1スイッチング素子51と同様の構成なので詳細な説明を省略する。
【0020】
第1スイッチング素子51は、トランジスタ51aと、ダイオード51bとを備えている。トランジスタ51aとダイオード51bは、並列接続されている。第1スイッチング素子51は、トランジスタ51aにPWM(Pulse Width Modulation)信号が入力され、それによってトランジスタ51aがオン/オフすることによりオン/オフする。第2スイッチング素子52、第3スイッチング素子53、及び第4スイッチング素子54についても同様である。複数のスイッチング素子51-54は、一次側コイル55と直列接続されている。
【0021】
一次側コイル55は、コア(不図示)に巻き回されており、二次側コイル65と共同でトランス70を構成している。トランス70を介して一次側回路50の電力が二次側回路60に伝送される。一次側インダクタンス56は、一次側コイル55と直列接続されている。一次側インダクタンス56は、一次側回路50を流れる電流のエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーを放出する。一次側コンデンサ58は、一次側インダクタンス56と並列接続されている。一次側コンデンサ58は、一次側回路50の電荷を蓄積し、蓄積した電荷を放出する。
【0022】
DC-DCコンバータ20の二次側回路60は、複数のスイッチング素子61-64と、二次側コイル65と、二次側インダクタンス66と、二次側コンデンサ68とを備えている。
【0023】
複数のスイッチング素子61-64は、第5スイッチング素子61と、第6スイッチング素子62と、第7スイッチング素子63と、第8スイッチング素子64とを含む。DC-DCコンバータ20では、一次側回路50の複数のスイッチング素子51-54のオン/オフの切り替えと共に、二次側回路60の複数のスイッチング素子61-64のオン/オフの切り替えが繰り返し行われることにより入力直流電圧が出力直流電圧に変換される。以下では、二次側回路60の複数のスイッチング素子61-64のうち、主に第5スイッチング素子61について説明する。第6スイッチング素子62、第7スイッチング素子63、及び第8スイッチング素子64については、第5スイッチング素子61と同様の構成なので詳細な説明を省略する。
【0024】
第5スイッチング素子61は、トランジスタ61aと、ダイオード61bとを備えている。トランジスタ61aとダイオード61bは、並列接続されている。第5スイッチング素子61は、トランジスタ61aにPWM(Pulse Width Modulation)信号が入力され、それによってトランジスタ61aがオン/オフすることによりオン/オフする。第6スイッチング素子62、第7スイッチング素子63、及び第8スイッチング素子64についても同様である。複数のスイッチング素子61-64は、二次側コイル65と直列接続されている。
【0025】
二次側コイル65は、コア(不図示)に巻き回されており、一次側コイル55と共同でトランス70を構成している。二次側インダクタンス66は、二次側コイル65と直列接続されている。二次側インダクタンス66は、二次側回路60を流れる電流のエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーを放出する。二次側コンデンサ68は、二次側インダクタンス66と並列接続されている。二次側コンデンサ68は、二次側回路60の電荷を蓄積し、蓄積した電荷を放出する。
【0026】
次に、DC-DCコンバータ20のスイッチング素子の配置について説明する。以下では、DC-DCコンバータ20の複数のスイッチング素子51-54、61-64のうち、二次側回路60の第5スイッチング素子61(電子部品の一例)について説明する。他のスイッチング素子52-54、61-64については、第5スイッチング素子61と同様の構成なので詳細な説明を省略する。
【0027】
図3に示すように、第5スイッチング素子61は、プリント基板10の上に配置されている。第5スイッチング素子61は、モールド樹脂26により封止された状態でプリント基板10の上に配置されている。
【0028】
プリント基板10は、絶縁性の板状の基材12と、基材12の上に配置された配線14(入力配線14a及び出力配線14b)とを備えている。基材12は、例えばガラス繊維とエポキシ樹脂の混合材料から構成されている。配線14は、例えば銅箔から構成されており、基材12の表面に印刷されている。
【0029】
第5スイッチング素子61は、本体22(トランジスタ51a及びダイオード51b)と、端子24(入力端子24a及び出力端子24b)とを備えている。第5スイッチング素子61の本体22は、例えば、シリコンの半導体チップの内部にトランジスタ51a及びダイオード51bの回路が形成された構成である。
【0030】
第5スイッチング素子61の入力端子24aは、プリント基板10の入力配線14aに接続されている。入力端子24aは、半田30aにより入力配線14aに接合されている。これにより、プリント基板10と第5スイッチング素子61が半田30aにより接合されている。半田30aは、例えば、鉛と錫を主成分とした合金からなる。半田30aは、入力端子24aと入力配線14aを覆っている。入力端子24aは、入力配線14aを介して電源40(図1及び図2参照)に接続されている。
【0031】
第5スイッチング素子61の出力端子24bは、プリント基板10の出力配線14bに接続されている。出力端子24bは、半田30bにより出力配線14bに接合されている。これにより、プリント基板10と第5スイッチング素子61が半田30bにより接合されている。半田30bは、例えば、鉛と錫を主成分とした合金からなる。半田30bは、出力端子24bと出力配線14bを覆っている。出力端子24bは、出力配線14bを介して二次電池90又は電動製品92に接続されている。
【0032】
実施例の電子装置2は、更に、プリント基板10の温度を検出する温度センサ18を備えている。温度センサ18は、例えば、基材12の裏面に固定されており、基材12の裏面側の温度を検出する。
【0033】
(出力制御処理;図4
次に、実施例の出力制御処理について説明する。出力制御処理は、例えば、所定の開始指示が制御装置100に入力される場合に開始される。出力制御処理の開始指示は、例えば、DC-DCコンバータ20に接続されている電源40がオフからオンになる場合に制御装置100に入力される。
【0034】
図4に示すように、出力制御処理のS10では、制御装置100が、昇圧指示を受け付けるか否かを判断する。昇圧指示は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を所定の目標出力電圧(例えば、10V)に上昇させるための指示である。昇圧指示は、目標出力電圧の情報を含んでいる。S10の昇圧指示は、例えば、DC-DCコンバータ20に接続されている二次電池90の蓄電量が所定の第1基準蓄電量未満になる場合に制御装置100に入力される。第1基準蓄電量は、例えば、二次電池90の最大蓄電量の50%の蓄電量である。また、昇圧指示は、例えば、DC-DCコンバータ20に接続されている電動製品92の起動スイッチがオフからオンになる場合に制御装置100に入力される。制御装置100が昇圧指示を受け付ける場合(S10でYES)、処理はS20に進む。制御装置100が昇圧指示を受け付けない場合(S10でNO)、処理はS12に進む。
【0035】
S10でNOの後のS12では、制御装置100が、温度センサ18により検出されるプリント基板10の温度が所定の低温基準温度(例えば0℃)以上であるか否かを判断する。温度センサ18の検出温度(即ち、プリント基板10の温度)が低温基準温度以上であると判断される場合(S12でYES)、処理はS14に進む。温度センサ18の検出温度が低温基準温度以上でない(未満である)と判断される場合(S12でNO)、処理はS16に進む。
【0036】
S12でYESの後のS14では、制御装置100が、通常待機処理を実行する。通常待機処理では、制御装置100は、DC-DCコンバータ20にPWM信号を入力しない。S14の後、処理はS10に戻る。
【0037】
一方、S12でNOの後のS16では、制御装置100が、保温待機処理を実行する。保温待機処理は、スイッチング素子(例えば、第5スイッチング素子61)のプリント基板10の温度を所定の保温待機温度(例えば5℃)以上に保つための処理である。保温待機処理では、制御装置100が、保温待機用のPWM信号をDC-DCコンバータ20に入力する。保温待機用のPWM信号は、例えば、信号のDuty比が後述する通常昇圧処理(S24参照)でDC-DCコンバータ20に入力されるPWM信号のDuty比よりも小さいPWM信号である。制御装置100は、保温待機用のPWM信号をDC-DCコンバータ20に入力することにより、DC-DCコンバータ20の出力電圧を所定の保温待機出力電圧(例えば1V)まで上昇させる。保温待機出力電圧は、目標出力電圧未満の出力電圧である。DC-DCコンバータ20では、保温待機用のPWM信号が入力されることにより複数のスイッチング素子51-54、61-64がオン/オフする。そのときに発生する熱によりスイッチング素子(例えば、第5スイッチング素子61)が配置されているプリント基板10が保温される。S16の後、処理はS10に戻る。
【0038】
S10でYESの後のS20では、制御装置100が、早期応答要求を受け付けるか否かを判断する。早期応答要求は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を早期に上昇させるための要求である。早期応答要求は、例えば、DC-DCコンバータ20に接続されている二次電池90の蓄電量が所定の第2基準蓄電量未満になる場合に制御装置100に入力される。第2基準蓄電量は、上記の第1基準蓄電量(S10参照)未満の蓄電量である。第2基準蓄電量は、例えば、二次電池90の最大蓄電量の10%の蓄電量である。また、早期応答要求は、例えば、DC-DCコンバータ20に接続されている電動製品92の消費電力が所定の基準消費電力(例えば、10kW)以上である場合に制御装置100に入力される。制御装置100が早期応答要求を受け付ける場合(S20でYES)、処理はS24に進む。制御装置100が早期応答要求を受け付けない場合(S20でNO)、処理はS22に進む。
【0039】
S20でNOの後のS22では、制御装置100が、温度センサ18により検出されるプリント基板10の温度が所定の高温基準温度(例えば50℃)以上であるか否かを判断する。高温基準温度は、上記の低温基準温度(S12参照)よりも高い温度である。温度センサ18の検出温度(即ち、プリント基板10の温度)が高温基準温度以上であると判断される場合(S22でYES)、処理はS24に進む。温度センサ18の検出温度が高温基準温度以上でない(未満である)と判断される場合(S22でNO)、処理はS26に進む。
【0040】
上記のS20でYES又はS22でYESの後のS24では、制御装置100が、通常昇圧処理を実行する。通常昇圧処理では、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を通常の速さで上昇させる。例えば、図5に示すように、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を、所定の短期基準時間(例えば3秒)未満の時間(例えば2秒)で目標出力電圧まで上昇させる。S24の後、出力制御処理は終了する。
【0041】
一方、図4に示すS22でNOの後のS26では、制御装置100が、漸次昇圧処理を実行する。漸次昇圧処理では、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を通常よりも遅い速さで上昇させる。漸次昇圧処理では、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を漸次的に上昇させる。例えば、図5に示すように、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を所定の長期基準時間(例えば10秒)以上の時間(例えば12秒)で目標出力電圧まで上昇させる。長期基準時間は、上記の通常昇圧処理(S24参照)の短期基準時間よりも長い時間である。制御装置100は、例えば、DC-DCコンバータ20に入力するPWM信号のDuty比を漸次的に上昇させることによりDC-DCコンバータ20の出力電圧を漸次的に上昇させる。変形例では、制御装置100は、DC-DCコンバータ20に入力するPWM信号の周波数を漸次的に上昇させることによりDC-DCコンバータ20の出力電圧を漸次的に上昇させる。他の変形例では、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の一次側回路50に入力するPWM信号の位相と二次側回路60に入力するPWM信号の位相とを漸次的に一致させることにより、DC-DCコンバータ20の出力電圧を漸次的に上昇させる。S26の後、出力制御処理は終了する。
【0042】
(効果)
以上、実施例の電子装置2について説明した。以上の説明から明らかなように、制御装置100は、長期基準時間(第1基準時間の一例)以上の時間でDC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧まで上昇させる(S24参照)。この構成によれば、DC-DCコンバータ20の出力電圧が急激に上昇することを抑制することができ、その結果、DC-DCコンバータ20の第5スイッチング素子61の温度とプリント基板10の温度とが急激に乖離することを抑制することができる。これにより、プリント基板10と第5スイッチング素子61を接合する半田30a、30bにひずみが生じることを抑制することができ、半田30a、30bにクラックが生じることを抑制することができる。
【0043】
また、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧にする指示を受け付ける場合に、温度センサ18により検出されるプリント基板10の温度が高温基準温度(第1基準温度の一例)未満である場合は、長期基準時間以上の時間でDC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧まで上昇させ、温度センサ18により検出されるプリント基板10の温度が高温基準温度以上である場合は、長期基準時間未満の短期基準時間(第2基準時間の一例)未満の時間でDC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧まで上昇させる(図4のS10、S22、S24、S26、図5参照)。
【0044】
この構成によれば、プリント基板10の温度が低いときにDC-DCコンバータ20の出力電圧が急激に上昇することを抑制することができる。その結果、プリント基板10の温度が低いときに、DC-DCコンバータ20のスイッチング素子(例えば、第5スイッチング素子61)の温度とプリント基板10の温度とが急激に乖離することを抑制することができる。これにより、半田30a、30bにクラックが生じることを抑制することができる。一方、プリント基板10の温度が高いときには、DC-DCコンバータ20の出力電圧を早期に上昇させることができる。プリント基板10の温度が高いときには、プリント基板10の温度とスイッチング素子(例えば、第5スイッチング素子61)の温度との急激な乖離が生じにくいので、DC-DCコンバータ20の出力電圧を早期に上昇させることができる。
【0045】
また、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧にする指示を受け付ける場合に、DC-DCコンバータ20の出力電圧を早期に上昇させるための要求を受け付ける場合は、温度センサ18により検出されるプリント基板10の温度が高温基準温度未満であるか否かにかかわらず、短期基準時間未満の時間でDC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧まで上昇させる(図4のS10、S20、S24、図5参照)。この構成によれば、DC-DCコンバータ20の出力電圧を早期に上昇させることが要求される場合に、プリント基板10の温度にかかわらず、DC-DCコンバータ20の出力電圧を早期に上昇させることができる。
【0046】
また、制御装置100は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧にする指示を受け付ける前に、温度センサ18により検出されるプリント基板10の温度が低温基準温度(第2基準温度の一例)未満である場合は、DC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧未満の所定の保温待機出力電圧まで上昇させ、その後にDC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧にする指示を受け付ける場合に、DC-DCコンバータ20の出力電圧を目標出力電圧まで上昇させる(図4のS10、S12、S16、S20-S26、図5参照)。
【0047】
この構成によれば、プリント基板10の温度が低い場合に予めプリント基板10の温度を高めておくことができる。これにより、DC-DCコンバータ20の出力電圧が仮に急激に上昇してとしても、半田30a、30bにクラックが生じることを抑制することができる。
【0048】
(変形例)
(1)変形例の通常待機処理(S14参照)では、制御装置100が、DC-DCコンバータ20に通常待機用のPWM信号を入力してもよい。通常待機用のPWM信号は、例えば、信号のDuty比が保温待機用のPWM信号(S16参照)のDuty比よりも小さいPWM信号である。
【0049】
(2)DC-DCコンバータ20は、入力電圧を降圧して出力する降圧コンバータであってもよい。この場合、制御装置100は、S24の通常昇圧処理では、DC-DCコンバータ20の出力電圧を、例えば0V(ゼロボルト)の状態から目標出力電圧まで短期基準時間未満の時間で上昇させる。制御装置100は、S26の漸次昇圧処理では、DC-DCコンバータ20の出力電圧を、例えば0V(ゼロボルト)の状態から目標出力電圧まで長期基準時間以上の時間で上昇させる。
【0050】
(3)上記の実施例では、電子部品の一例として第5スイッチング素子61について説明したが、この構成に限定されない。変形例では、他のスイッチング素子51-54、62-64が電子部品の一例であってもよい。また、他の変形例では、DC-DCコンバータ20の他の部品(例えば、一次側コイル55、一次側インダクタンス56、一次側コンデンサ58等)が電子部品の一例であってもよい。
【0051】
(4)上記の実施例では、電力変換装置の一例としてDC-DCコンバータ20について説明したが、この構成に限定されない。変形例では、交流電圧を直流電圧に変換するAC-DCコンバータが電力変換装置の一例であってもよい。また、他の変形例では、直流電圧を交流電圧に変換するインバータが電力変換装置の一例であってもよい。
【0052】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
2:電子装置、10:プリント基板、12:基材、14:配線、18:温度センサ、20:DC-DCコンバータ、22:本体、24:端子、26:モールド樹脂、30a、30b:半田、40:電源、50:一次側回路、51-54:スイッチング素子、55:一次側コイル、56:一次側インダクタンス、58:一次側コンデンサ、60:二次側回路、61-64:スイッチング素子、65:二次側コイル、66:二次側インダクタンス、68:二次側コンデンサ、70:トランス、90:二次電池、92:電動製品、100:制御装置
図1
図2
図3
図4
図5