(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151547
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】比例弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/32 20060101AFI20241018BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16K1/32 B
F16K31/06 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064983
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】志知 和幸
【テーマコード(参考)】
3H052
3H106
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052CD02
3H106DA05
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD05
(57)【要約】
【課題】比例弁であって、ダイヤフラム5に連結される弁体6に設けた上側バネ受け座61と流出室3に設けた下側バネ受け座31との間に弁体6を上方に付勢するバネ8を介設し、上側バネ受け座61に、バネ8を芯決めする芯決め部621と下方に向けて径方向内方に傾斜してのびるバネガイド部622とを有する突起部62を突設するものにおいて、衝撃でバネ8が強く圧縮しても、バネ8が上側バネ受け座61の芯決め部621で芯決めされる状態に確実に復帰させることができるようにする。
【解決手段】突起部62を、バネガイド部622からバネ8が下方に最大限圧縮したときのバネ8の上端よりも下方までのびる延長部623を有するものとする。更に、バネガイド部622及び延長部623の外面を、バネ8が圧縮状態から伸長する際に、バネ8の上端が弁体6の外周部の短筒部6bの下端面に乗り上げることを防止できるように形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側の流入室と、下側の流出室と、流入室と流出室との間の弁座とを有する弁筐と、流入室の上端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結された、弁座の流出室側の面に対向し、外周部に下方にのびる短筒部を有する弁体と、弁体に下方への押圧力を付与すると共にこの押圧力を可変するソレノイドとを備える比例弁であって、
弁体に設けた上側のバネ受け座と流出室に設けた下側のバネ受け座との間に、弁体を上方に付勢するコイルバネが介設され、各バネ受け座に、コイルバネに内挿される突起部が設けられ、この突起部は、コイルバネの上下両端の各座巻部の内周面に近接対向してコイルバネを芯決めする芯決め部を有し、上側のバネ受け座の突起部は、更に、芯決め部の下端から下方に向けて弁体の径方向内方に傾斜してのびるバネガイド部を有するものにおいて、
上側のバネ受け座の突起部は、バネガイド部の下端から更に下方にのびる延長部を有し、延長部の下端の位置は、弁体が弁座に着座している状態で、コイルバネが下方に最大限圧縮したときのコイルバネの上端の座巻部の上端よりも下方になるように設定され、バネガイド部及び延長部の外面は、当該外面の母線が、全長に亘り、当該母線から周方向に180°離れた弁体の短筒部の下端内周縁の部分を中心として当該母線を含む仮想面上に描かれる、コイルバネの上端の座巻部の中心径に等しい半径の円弧よりも上側のバネ受け座の突起部の径方向外方に位置するように形成されることを特徴とする比例弁。
【請求項2】
前記上側のバネ受け座の前記突起部の前記バネガイド部及び前記延長部は、円筒状の突起部本体の外周面の周囲複数箇所に突設したリブで構成されることを特徴とする請求項1記載の比例弁。
【請求項3】
前記延長部は、その外面の母線が上下方向に真直なストレート形状になるように形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の比例弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上側の流入室と、下側の流出室と、流入室と流出室との間の弁座とを有する弁筐と、流入室の上端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結された、弁座の流出室側の面に対向し、外周部に下方にのびる短筒部を有する弁体と、弁体に下方への押圧力を付与すると共にこの押圧力を可変するソレノイドとを備える比例弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の比例弁では、弁体に設けた上側のバネ受け座と流出室に設けた下側のバネ受け座との間に、弁体を上方に付勢するコイルバネを介設している。そして、コイルバネの付勢力により弁体の自重をキャンセルして、自重の影響で制御精度が悪化することを回避できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このものでは、上側と下側の各バネ受け座に、コイルバネに内挿される突起部を設けている。この突起部は、コイルバネの上下両端の各座巻部の内周面に近接対向してコイルバネを芯決めする芯決め部を有し、コイルバネが傾かないようにしている。上側のバネ受け座の突起部は、更に、芯決め部の下端から下方に向けて弁体の径方向内方に傾斜してのびるバネガイド部を有している。
【0004】
然し、従来例のものは、バネガイド部の長さが短いため、以下の不具合を生ずることが判明した。即ち、輸送時等に比例弁に衝撃が加わると、コイルバネが強く圧縮して、コイルバネの上端の座巻部が瞬間的に上側のバネ受け座のバネガイド部の下端、即ち、突起部の下端よりも下方に変位し、コイルバネが伸長する際に、上端の座巻部が上側のバネ受け座の突起部下端面に乗り上げて、弁体に対し上動不能になってしまうことがある。また、上端の座巻部が上側のバネ受け座のバネガイド部の下端よりも下方に変位した状態で弁体に対し径方向に大きくずれて、コイルバネが伸長する際に、上端の座巻部が弁体の短筒部下端面に乗り上げて、弁体に対し上動不能になってしまうこともある。このように上端の座巻部が弁体に対し上動不能になると、上端の座巻部を上側のバネ受け座の芯決め部で芯決めできなくなり、正常な流量制御を行えなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、衝撃でコイルバネが強く圧縮しても、上端の座巻部が上側のバネ受け座の芯決め部で芯決めされる状態に確実に復帰させることができるようにした比例弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、上側の流入室と、下側の流出室と、流入室と流出室との間の弁座とを有する弁筐と、流入室の上端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結された、弁座の流出室側の面に対向し、外周部に下方にのびる短筒部を有する弁体と、弁体に下方への押圧力を付与すると共にこの押圧力を可変するソレノイドとを備える比例弁であって、弁体に設けた上側のバネ受け座と流出室に設けた下側のバネ受け座との間に、弁体を上方に付勢するコイルバネが介設され、各バネ受け座に、コイルバネに内挿される突起部が設けられ、この突起部は、コイルバネの上下両端の各座巻部の内周面に近接対向してコイルバネを芯決めする芯決め部を有し、上側のバネ受け座の突起部は、更に、芯決め部の下端から下方に向けて弁体の径方向内方に傾斜してのびるバネガイド部を有するものにおいて、上側のバネ受け座の突起部は、バネガイド部の下端から更に下方にのびる延長部を有し、延長部の下端の位置は、弁体が弁座に着座している状態で、コイルバネが下方に最大限圧縮したときのコイルバネの上端の座巻部の上端よりも下方になるように設定され、バネガイド部及び延長部の外面は、当該外面の母線が、全長に亘り、当該母線から周方向に180°離れた弁体の短筒部の下端内周縁の部分を中心として当該母線を含む仮想面上に描かれる、コイルバネの上端の座巻部の中心径に等しい半径の円弧よりも上側のバネ受け座の突起部の径方向外方に位置するように形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、コイルバネが衝撃で下方に最大限圧縮しても、コイルバネの上端の座巻部は、上側のバネ受け座の延長部の下端、即ち、上側のバネ受け座の突起部の下端よりも下方に変位することはない。そのため、上端の座巻部が上側のバネ受け座の突起部下端面に乗り上げて、弁体に対し上動不能となることを防止できる。また、後記詳述する如く、上端の座巻部が弁体の短筒部下端面に乗り上げて、弁体に対し上動不能となることも防止できる。従って、衝撃でコイルバネが強く圧縮しても、上端の座巻部は、上側のバネ受け座の延長部とバネガイド部とに案内されて、芯決め部に外挿される位置まで確実に上動し、即ち、上端の座巻部が芯決め部で芯決めされる状態に確実に復帰させることができ、流量制御の正確性を損なうことがない。
【0009】
また、本発明において、上側のバネ受け座の突起部のバネガイド部及び延長部は、円筒状の突起部本体の外周面の周囲複数箇所に突設したリブで構成されることが望ましい。これによれば、弁体を樹脂成形する場合、弁体全体の形状を安定させることができ、更に、使用する樹脂量を削減することができ、有利である。
【0010】
更に、本発明において、上記延長部は、その外面の母線が上下方向に真直なストレート形状になるように形成されることが望ましい。これによれば、延長部をロボットチャックで掴み易くなり、加工性、組立性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態の比例弁に設けられる弁体の斜視図。
【
図3】
図2の弁体のハッチングを省略した拡大切断側面図。
【
図4】比較例の弁体のハッチングを省略した拡大切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、1は、燃焼装置のガス供給路に介設する本発明の実施形態の比例弁の弁筐を示している。この弁筐1は、流入口2aに連なる上側の流入室2と、流出口3aに連なる下側の流出室3と、流入室2と流出室3との間の弁座4とを有している。尚、弁筐1は、流入室2及び弁座4を形成した上部筐体1aと流出室3を形成した下部筐体1bとを結合して構成されている。
【0013】
また、比例弁は、流入室2の上端面を閉塞するダイヤフラム5と、弁座4の流出室3側の面(下面)に対向する弁体6とを備えている。弁体6は、これに一体の軸部6aを介してダイヤフラム5に連結されている。また、弁体6は、外周部に下方にのびる短筒部6bを有している。
【0014】
比例弁は、更に、弁体6に下方への押圧力を付与すると共にこの押圧力を可変する、ダイヤフラム5の上方に配置されたソレノイド7を備えている。ソレノイド7は、コイル7aと、コイル7aの内周に配置した上下動自在な可動鉄心7bとを備えている。そして、可動鉄心7bの下端をダイヤフラム5の上方に突出する軸部6aの上端に当接させ、コイル7aへの通電電流値に比例した下方への押圧力が弁体6に付与されるようにしている。これにより、比例弁に流れる流体の流量(ガス流量)が通電電流値に比例して変化する。また、流入室2の流体圧(一次圧)が変動しても、ダイヤフラム5に連動して弁体6が変位し、一次圧の変動による流量の変動が防止される。
【0015】
また、比例弁は、弁体6に設けた上側のバネ受け座61と流出室3に設けた下側のバネ受け座31との間に介設したコイルバネ8を備えている。そして、コイルバネ8により弁体6を弁体6及び可動鉄心7bの自重分の付勢力で上方に付勢し、弁体6及び可動鉄心7bの自重の影響で制御精度が悪化することを防止できるようにしている。尚、下側のバネ受け座31は、流出室3の底部に放射状に複数枚立設した起立片3bの上端に設けられている。
【0016】
ここで、コイルバネ8が傾くと、弁体6を所定の付勢力、即ち、弁体6及び可動鉄心7bの自重分の付勢力で上方に付勢できなくなる。そこで、上側と下側の各バネ受け座61,31に、コイルバネ8に内挿される突起部62,32を設けている。各突起部62,32は、コイルバネ8の上下両端の各座巻部8a,8bの内周面に近接対向してコイルバネ8を芯決めする芯決め部621,321を有している。更に、上側のバネ受け座61の突起部62は、芯決め部621の下端から下方に向けて弁体6の径方向内方に傾斜してのびるバネガイド部622を有しており、下側のバネ受け座31の突起部32も、芯決め部321の上端から上方に向けて弁体6の径方向内方に傾斜してのびるバネガイド部322を有している。そして、コイルバネ8の上下両端の各座巻部8a,8bをバネガイド部622,322を通して芯決め部621,321に外挿するようにしている。これによれば、コイルバネ8の上下両端の各座巻部8a,8bが芯決め部621,321により芯決めされた状態になり、コイルバネ8が傾くことを防止できる。
【0017】
ところで、輸送時等に比例弁に衝撃が加わると、コイルバネ8が強く圧縮することがある。そこで、本実施形態では、上側のバネ受け座61の突起部62を、バネガイド部622の下端から更に下方にのびる延長部623を有するものとしている。そして、延長部623の下端の位置を、弁体6が弁座4に着座している状態で、コイルバネ8が下方に最大限圧縮したときのコイルバネ8の上端の座巻部8aの上端よりも下方になるように設定している。
【0018】
これによれば、コイルバネ8が衝撃で下方に最大限圧縮しても、コイルバネ8の上端の座巻部8aは、上側のバネ受け座61の延長部623の下端、即ち、上側のバネ受け座61の突起部62の下端よりも下方に変位することはない。そのため、上端の座巻部8aが上側のバネ受け座61の突起部62の下端面に乗り上げて、弁体6に対し上動不能となることを防止できる。
【0019】
また、本実施形態では、
図3に示す如く、上側のバネ受け座61のバネガイド部622及び延長部623の外面を、当該外面の母線が、全長に亘り、当該母線から周方向に180°離れた弁体6の短筒部6bの下端内周縁の部分を中心として当該母線を含む仮想面上に描かれる、コイルバネ8の上端の座巻部8aの中心径に等しい半径rの円弧8cよりも上側のバネ受け座61の突起部62の径方向外方に位置するように形成している。尚、座巻部8aの中心径は、座巻部8aの周方向に180°離れた一方の部分の内周縁から他方の部分の外周縁までの距離に等しい。
【0020】
ここで、
図4に示す比較例の如く、上側のバネ受け座61のバネガイド部622及び延長部623の外面を、当該外面の母線の少なくとも一部が上記円弧8cよりも上側のバネ受け座61の突起部62の径方向内方に位置するように形成した場合は、コイルバネ8の上端の座巻部8aが弁体6の短筒部6bの下端面に乗り上げて、弁体6に対し上動不能になることがある。これに対し、本実施形態によれば、上端の座巻部8aが上記の如く上側のバネ受け座61の突起部62の下端面に乗り上げて、弁体6に対し上動不能となることを防止できると共に、上端の座巻部8aが弁体6の短筒部6bの下端面に乗り上げて、弁体6に対し上動不能になることも防止できる。従って、本実施形態によれば、衝撃でコイルバネ8が強く収縮しても、上端の座巻部8aは、上側のバネ受け座61の延長部623とバネガイド部622とに案内されて、芯決め部621に外挿される位置まで確実に上動し、即ち、上端の座巻部8aが芯決め部621で芯決めされる状態に確実に復帰させることができ、流量制御の正確性を損なうことがない。
【0021】
尚、本実施形態では、
図2に示す如く、上側のバネ受け座61の突起部62のバネガイド部622及び延長部623を、円筒状の突起部本体62aの外周面の周囲複数箇所に突設したリブ62bで構成している。これによれば、弁体6を樹脂成形する場合、弁体6全体の形状を安定させることができ、更に、使用する樹脂量を削減することができ、有利である。
【0022】
また、本実施形態では、上側のバネ受け座61の延長部623を、その外面の母線が上下方向に真直なストレート形状になるように形成している。尚、上側のバネ受け座61の延長部623を、
図5に示す如く、その外面の母線が下方に向けて弁体6の径方向内方に傾斜するように形成することも可能である。この場合、バネガイド部622と延長部623とが一体化されることになる。但し、延長部623をストレート形状に形成すれば、延長部623をロボットチャックで掴み易くなる。そのため、加工性、組立性が向上し、有利である。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…弁筐、2…流入室、3…流出室、31…下側のバネ受け座、32…突起部、321…芯決め部、4…弁座、5…ダイヤフラム、6…弁体、6b…短筒部、61…上側のバネ受け座、62…突起部、62a…突起部本体、62b…リブ、621…芯決め部、622…バネガイド部、623…延長部、7…ソレノイド、8…コイルバネ、8a…上端の座巻部、8b…下端の座巻部、8c…仮想面上に描かれる円弧。