(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151559
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】超電導マグネット装置
(51)【国際特許分類】
G01N 24/00 20060101AFI20241018BHJP
H01F 6/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N24/00 600D
H01F6/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065002
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】502147465
【氏名又は名称】ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】永濱 秀明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
(57)【要約】
【課題】マグネット装置本体での測定に影響のある振動を抑制する。
【解決手段】超電導マグネット装置1は、超電導マグネット13を有するマグネット装置本体10と、マグネット支持部20と、冷凍機31と、冷凍機支持部40と、連結部材50と、を備える。マグネット支持部20は、設置面Fよりも上側Z1にマグネット装置本体10が配置されるように、マグネット装置本体10を設置面Fから支持する。冷凍機支持部40は、設置面Fよりも上側Z1に冷凍機31が配置されるように、冷凍機31を下側Z2から支持する。連結部材50は、設置面Fよりも上側Z1の位置で、冷凍機支持部40とマグネット支持部20とを連結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導マグネットを有するマグネット装置本体と、
設置面よりも上側に前記マグネット装置本体が配置されるように、前記マグネット装置本体を前記設置面から支持するマグネット支持部と、
前記マグネット装置本体から離れた位置に配置され、前記超電導マグネットを冷却する冷媒を冷却する冷凍機と、
前記設置面よりも上側に前記冷凍機が配置されるように、前記冷凍機を下側から支持する冷凍機支持部と、
前記設置面よりも上側の位置で、前記冷凍機支持部と前記マグネット支持部とを連結する連結部材と、
を備える、
超電導マグネット装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導マグネット装置であって、
前記マグネット装置本体と前記冷凍機とに接続され、前記冷媒が通る冷媒流通管を備え、
前記冷凍機は、前記冷凍機で凝縮した前記冷媒が、前記冷媒の自重により、前記冷凍機から前記冷媒流通管を通って前記マグネット装置本体の内部に流れることが可能な高さに配置される、
超電導マグネット装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超電導マグネット装置であって、
前記マグネット支持部は、
前記連結部材が接続されるマグネット支持部本体部と、
前記マグネット支持部本体部と前記マグネット装置本体との間に配置され、前記マグネット支持部本体部から前記マグネット装置本体に伝わる振動を低減させる装置である振動低減装置と、
を備える、
超電導マグネット装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超電導マグネット装置であって、
前記連結部材は、複数設けられ、
複数の前記連結部材は、上下方向に互いに間隔をあけて配置される、
超電導マグネット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機を備える超電導マグネット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、従来の超電導マグネット装置が記載されている(特許文献1の
図3を参照)。同文献に記載の装置は、試料の測定を行うマグネット装置本体(同文献におけるNMR)と、超電導マグネットを冷却するための冷媒(同文献ではヘリウムおよび窒素)を冷却する冷凍機と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍機が、設置面(床など)に立てられた支柱に支持される場合がある。この場合、冷凍機が加振源となり、支柱および冷凍機が振動する。すると、この振動が、マグネット装置本体に伝わり、マグネット装置本体での測定に影響を与えるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、マグネット装置本体での測定に影響のある振動を抑制できる超電導マグネット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
超電導マグネット装置は、マグネット装置本体と、マグネット支持部と、冷凍機と、冷凍機支持部と、連結部材と、を備える。前記マグネット装置本体は、超電導マグネットを有する。前記マグネット支持部は、設置面よりも上側に前記マグネット装置本体が配置されるように、前記マグネット装置本体を前記設置面から支持する。前記冷凍機は、前記マグネット装置本体から離れた位置に配置され、前記超電導マグネットを冷却する冷媒を冷却する。前記冷凍機支持部は、前記設置面よりも上側に前記冷凍機が配置されるように、前記冷凍機を下側から支持する。前記連結部材は、前記設置面よりも上側の位置で、前記冷凍機支持部と前記マグネット支持部とを連結する。
【発明の効果】
【0007】
上記の超電導マグネット装置により、マグネット装置本体での測定に影響のある振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】超電導マグネット装置1を横から見た図である。
【
図2】
図1に示すマグネット支持部20とは異なる配置のマグネット支持部120を備える超電導マグネット装置1を横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図2を参照して、超電導マグネット装置1について説明する。
【0010】
超電導マグネット装置1は、
図1に示すように、超電導マグネット13を有する装置である。超電導マグネット装置1は、核磁気共鳴(NMR;Nuclear Magnetic Resonance)を利用して試料Sの測定(NMR測定)を行うための装置(NMR装置)である。超電導マグネット装置1は、マグネット装置本体10と、マグネット支持部20と、冷媒蒸発抑制装置30と、冷凍機支持部40と、連結部材50と、を備える。
【0011】
マグネット装置本体10は、超電導マグネット装置1の本体部分である。マグネット装置本体10は、クライオスタット11と、超電導マグネット13と、を備える。
【0012】
クライオスタット11は、超電導マグネット13を低温状態にするための容器である。クライオスタット11は、超電導マグネット13を収容し、超電導マグネット13を保冷する。ここで、鉛直方向または略鉛直方向を上下方向Zとする。鉛直方向または略鉛直方向における上を上側Z1とし、上側Z1とは反対側を下側Z2とする。クライオスタット11の外面は、例えば、略円柱状などである。例えば、上下方向Zから見たとき、クライオスタット11は、円形または略円形などである。クライオスタット11の外面は、底面部11aと、側面部11bと、上面部11cと、を備える。クライオスタット11は、冷媒槽11dと、真空槽11eと、マグネット側接続部11pと、を備える。
【0013】
底面部11aは、クライオスタット11の下側Z2部分の面であり、下側Z2を向く面である。側面部11bは、クライオスタット11の、横方向(上下方向Zに交差する方向)を向く面である。クライオスタット11が略円柱状の場合、側面部11bは、クライオスタット11の径方向における外側を向く面である。上面部11cは、クライオスタット11の上側Z1部分の面であり、上側Z1を向く面である。
【0014】
冷媒槽11dは、後述する冷媒R(例えば、保冷用冷媒Ra)が入れられる槽である。冷媒槽11dは、
図1に示す例のように1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい(図示なし)。例えば、冷媒槽11dが複数設けられる場合は、超電導マグネット13を収容する冷媒槽11dと、この冷媒槽11dの外側(超電導マグネット13から遠い側、例えば径方向外側など)に配置される冷媒槽11dと、が設けられてもよい。
【0015】
真空槽11eは、真空状態とされる槽である。真空槽11eは、冷媒槽11dの外側(超電導マグネット13から遠い側)に配置される。なお、クライオスタット11は、冷媒槽11dおよび真空槽11e以外にも、超電導マグネット13を保冷するための構成要素(例えば、輻射シールドなど)を備えてもよい。
【0016】
マグネット側接続部11pは、冷媒流通管33の露出部分33a(後述)が接続される部分(ポート)である。マグネット側接続部11pは、上面部11cから上側Z1に突出する。マグネット側接続部11pは、例えば、上面部11cと一体的に構成される。
【0017】
超電導マグネット13は、強磁場を発生させるマグネットである。超電導マグネット13は、超電導線材が巻かれたコイルを備える。超電導マグネット13は、クライオスタット11に収容され、冷媒槽11dに収容される。超電導マグネット13は、クライオスタット11により低温状態とされ、超電導状態とされる。
【0018】
マグネット支持部20は、マグネット装置本体10を支持する。マグネット支持部20は、設置面Fよりも上側Z1にマグネット装置本体10が配置されるように、マグネット装置本体10を支持する。設置面Fは、超電導マグネット装置1が設置される面であり、例えば床面などである。マグネット支持部20は、設置面Fからマグネット装置本体10を支持する。具体的には、マグネット支持部20は、設置面Fから上側Z1に延びるように配置される。
図1に示す例では、マグネット支持部20は、底面部11aに取り付けられ、底面部11aに固定される。マグネット支持部20は、側面部11bに取り付けられ、側面部11bに固定されてもよい(
図2のマグネット支持部120を参照)。
【0019】
このマグネット支持部20は、
図1に示すように、設置面Fからマグネット装置本体10に伝わる振動を低減できるように構成されることが好ましい。マグネット支持部20は、例えば除振脚であることが好ましい。具体的には例えば、マグネット支持部20は、マグネット支持部本体部21と、振動低減装置23と、を備える。
【0020】
マグネット支持部本体部21は、設置面Fから上側Z1に延びるように設けられる。マグネット支持部本体部21は、例えば、設置面Fに固定される。マグネット支持部本体部21は、設置面Fに直接接触してもよく、マグネット支持部本体部21とは別体の部材(例えばゴムなど)を介して設置面Fに置かれてもよい。マグネット支持部本体部21の形状は、様々に設定可能である。例えば、マグネット支持部本体部21の形状は、脚部21aを備える形状でもよく、脚部21aを含むテーブル状などでもよく、脚部21aを備えない形状(例えば箱状など)でもよい。
【0021】
脚部21aは、柱状の部材である。脚部21aは、例えば円柱状でもよく、多角形断面を有する柱状(例えば四角柱状など)でもよい。脚部21aは、複数本設けられる。脚部21aは、例えば、3本設けられてもよく、4本以上設けられてもよい。
【0022】
振動低減装置23は、マグネット支持部本体部21からマグネット装置本体10に伝わる振動を低減させる装置である。振動低減装置23は、この振動を減衰させ、この振動を略遮断する。振動低減装置23は、この振動を低減させる結果、設置面Fからマグネット装置本体10に伝わる振動を低減させる。振動低減装置23は、マグネット支持部本体部21からマグネット装置本体10に伝わる振動を低減させる結果、連結部材50からマグネット装置本体10に伝わる振動を低減させる。振動低減装置23は、マグネット支持部本体部21とマグネット装置本体10との間(振動が伝わる経路における間)に配置される。振動低減装置23は、連結部材50(後述)とマグネット装置本体10との間に配置される。振動低減装置23は、マグネット支持部本体部21の、例えば上側Z1端部などに接続される。振動低減装置23は、底面部11aに接続されてもよく、側面部11bに接続されてもよい(
図2参照)。
【0023】
この振動低減装置23は、流体を利用して振動を低減させる装置を備えてもよい。例えば、振動低減装置23は、流体の圧力を利用した装置(エアダンパなど)を備えてもよく、流体の粘性抵抗を利用した装置(オイルダンパなど)を備えてもよい。振動低減装置23は、弾性部材(ゴム、エラストマーなど)の変形を利用して振動を低減させる装置を備えてもよい。
【0024】
冷媒蒸発抑制装置30は、冷媒Rの蒸発を抑制するための装置である。冷媒蒸発抑制装置30は、冷凍機31と、熱交換器35と、冷媒流通管33と、を備える。
【0025】
(冷媒Rについて)
冷媒Rは、超電導マグネット13を冷却する。例えば、冷媒Rには、保冷用冷媒Raと、熱交換用冷媒Rbと、がある。保冷用冷媒Raは、冷媒槽11dに入れられ、超電導マグネット13を保冷する。保冷用冷媒Raは、1種類のみ用いられてもよく、複数種類用いられてもよい。保冷用冷媒Raが1種類のみ用いられる場合、保冷用冷媒Raは、具体的には液体ヘリウムである。保冷用冷媒Raが複数種類用いられる場合は、保冷用冷媒Raは、主冷媒と、補助冷媒と、を含む。主冷媒は、超電導マグネット13が収容される冷媒槽11dに入れられる。主冷媒は、具体的には液体ヘリウムである。補助冷媒は、超電導マグネット13が収容される冷媒槽11dの外側に設けられる冷媒槽11dに入れられる。補助冷媒は、例えば、液体窒素でもよく、液体アルゴンでもよい。
【0026】
熱交換用冷媒Rbは、保冷用冷媒Raを冷却し、保冷用冷媒Raを凝縮(液化)させるための冷媒Rである(詳細は後述)。熱交換用冷媒Rbは、保冷用冷媒Raと同様に、1種類のみ用いられてもよく、複数種類用いられてもよい。なお、保冷用冷媒Raのみが用いられ、熱交換用冷媒Rbが用いられなくてもよい(熱交換器35が用いられなくてもよい)。以下では、主に、熱交換用冷媒Rbが用いられる場合について説明する。
【0027】
冷凍機31は、冷媒R(例えば熱交換用冷媒Rb)を冷却する。冷凍機31は、冷凍用冷媒の断熱膨張により発生する冷熱により、凝縮室31c(後述)内の冷媒Rを冷却する。なお、上記「冷凍用冷媒」は、超電導マグネット13を冷却するための冷媒Rには含まれない。冷凍機31は、極低温冷凍機であり、例えば、ギフォード・マクマホン冷凍機でもよく、パルスチューブ冷凍機でもよく、その他の極低温冷凍機でもよい。
【0028】
この冷凍機31は、冷凍機31の振動がマグネット装置本体10に伝わることを抑制できるように配置されることが好ましい。具体的には、冷凍機31は、マグネット装置本体10から離れた位置(間隔をあけた位置)に配置される。冷凍機31は、マグネット装置本体10に直接的には接触しない位置に配置される。なお、冷凍機31の上下方向Zにおける配置(高さ)については後述する。冷凍機31は、駆動部31aと、ピストン31bと、凝縮室31cと、冷凍機側接続部31pと、を備える。
【0029】
駆動部31aは、ピストン31bを駆動する装置である。駆動部31aは、例えばモータである。駆動部31aは、冷凍機31の下側Z2部分に配置されることが好ましい(後述)。ピストン31bは、冷凍用冷媒を断熱膨張させる。凝縮室31cは、蒸発した冷媒Rを凝縮させる部分(空間)である。冷凍機側接続部31pは、冷媒流通管33の露出部分33a(後述)が接続される部分(ポート)である。
【0030】
冷媒流通管33は、冷媒R(例えば熱交換用冷媒Rb)が通される管である。冷媒流通管33は、マグネット装置本体10と冷凍機31との間で冷媒Rが行き来できるように構成される。冷媒流通管33は、マグネット装置本体10と冷凍機31とに接続される。さらに詳しくは、冷媒流通管33は、マグネット装置本体10の内部の熱交換器35と、冷凍機31の内部の凝縮室31cと、に接続される。冷媒流通管33は、凝縮室31cから熱交換器35に向かって下側Z2に延びる(後述)。冷媒流通管33には、凝縮した冷媒R(液体)と、蒸発した冷媒R(気体)と、が通される。冷媒流通管33を通る凝縮した冷媒Rは、具体的には、冷凍機31で凝縮した冷媒R(例えば熱交換用冷媒Rb)であって、冷凍機31からマグネット装置本体10に流れる冷媒Rである。冷媒流通管33を通る蒸発した冷媒Rは、マグネット装置本体10の内部で蒸発した冷媒R(例えば熱交換用冷媒Rb)であって、マグネット装置本体10から冷凍機31に流れる冷媒Rである。冷媒流通管33は、凝縮した冷媒Rが通る管と、蒸発した冷媒Rが通る管と、のそれぞれを(別々に)備えてもよい。例えば、冷媒流通管33は、二重管を備えてもよく、2本の管を備えてもよい。また、冷媒流通管33は、1本のみの管を備えてもよい。凝縮した冷媒Rと蒸発した冷媒Rとが、1本の管である冷媒流通管33を通ってもよい。冷媒流通管33は、露出部分33aを備える。
【0031】
露出部分33aは、冷凍機31の外部、かつ、マグネット装置本体10の外部に配置される。露出部分33aは、マグネット側接続部11pと冷凍機側接続部31pとに接続される。露出部分33aは、所定の範囲内(変形可能範囲内)で変形可能であり、所定の範囲内で曲がることが可能である(可撓性を有する)。これにより、冷凍機31から露出部分33aを介してマグネット装置本体10に伝わる振動が抑制される。
【0032】
熱交換器35は、保冷用冷媒Raと熱交換用冷媒Rbとの間で熱交換を行う。熱交換器35は、マグネット装置本体10の内部に配置される。熱交換器35は、冷媒槽11dの内部に配置される。熱交換器35は、保冷用冷媒Raの液面よりも上側Z1に配置される。熱交換器35は、例えば、内部が空洞の略円柱状などである。
【0033】
この熱交換器35での熱交換などは、次のように行われる。凝縮室31cで凝縮した熱交換用冷媒Rb(液体)が、冷媒流通管33を通り、熱交換器35の内部に入る。保冷用冷媒Raの一部が、冷媒槽11dの内部で蒸発する。蒸発した保冷用冷媒Raが、熱交換器35の外面に接触し、冷却され、凝縮する。この凝縮した保冷用冷媒Raは、冷媒槽11dの内部の液面に落下し、冷媒槽11dに貯留される。熱交換器35の内部の熱交換用冷媒Rbが、保冷用冷媒Raから熱交換器35を介して伝わった熱により、蒸発する。蒸発した熱交換用冷媒Rb(気体)が、冷媒流通管33を通り、凝縮室31cに戻る。
【0034】
(冷凍機31などの配置)
冷凍機31は、気液の冷媒Rの自然循環を利用できるように配置されることが好ましい。さらに詳しくは、冷凍機31は、冷凍機31で凝縮した冷媒R(液体)が、冷媒Rの自重により、冷凍機31から冷媒流通管33を通ってマグネット装置本体10の内部に流れることが可能な高さ(上下方向Zにおける位置)に配置されることが好ましい。この配置により、冷凍機31で凝縮された冷媒Rを、冷凍機31からマグネット装置本体10の内部に強制的に流すポンプを設ける必要がない。その結果、このポンプにより生じる振動がマグネット装置本体10に伝わることを回避することができる。
【0035】
具体的には、冷凍機31は、凝縮室31cで凝縮した熱交換用冷媒Rb(液体)が、熱交換用冷媒Rbの自重により、凝縮室31cから冷媒流通管33を通って熱交換器35に流れることが可能な高さに配置されることが好ましい。さらに具体的には、凝縮室31cは、熱交換器35よりも上側Z1に配置されることが好ましい。冷凍機側接続部31pは、マグネット側接続部11pよりも上側Z1に配置されることが好ましい。冷媒流通管33は、凝縮室31cから熱交換器35に向かって下側Z2に延びることが好ましい。露出部分33aは、冷凍機側接続部31pからマグネット側接続部11pに向かって、下側Z2に延びることが好ましい。冷媒流通管33は、直線的に延びる部分があってもよく、曲線的に延びる部分があってもよい。冷媒流通管33の一部が水平方向に延びてもよい(この場合も上記「下側Z2に延びる」に含まれる)。
【0036】
この冷凍機31は、できるだけ低い位置(下側Z2の位置)に配置されることが好ましい。冷凍機31ができるだけ低い位置に配置されることで、後述する梁Bの長さを短くすることができる。具体的には例えば、駆動部31aは、凝縮室31cよりも下側Z2に配置されることが好ましい。この場合、駆動部31aが凝縮室31cよりも上側Z1に配置される場合に比べ、冷凍機31を低い位置に配置することができる。例えば、駆動部31aは、冷凍機31の下側Z2部分に配置されることが好ましい。駆動部31aは、ピストン31bよりも下側Z2に配置されることが好ましい。例えば、冷凍機31の下側Z2端部は、クライオスタット11の上面部11cの上側Z1端部よりも下側Z2に配置されることが好ましい。
【0037】
冷凍機支持部40は、設置面Fよりも上側Z1に冷凍機31が配置されるように、冷凍機31を支持する。冷凍機支持部40は、熱交換器35よりも上側Z1に凝縮室31cが配置されるように、冷凍機31を支持することが好ましい。冷凍機支持部40は、冷凍機31を下側Z2から支持する。具体的には、冷凍機支持部40は、冷凍機31の位置よりも下側Z2の位置から上側Z1に延びるように配置される。冷凍機支持部40は、マグネット装置本体10から離れた位置(間隔をあけた位置)に配置される。冷凍機支持部40は、マグネット装置本体10に直接的には接触しない位置に配置される。冷凍機支持部40は、マグネット装置本体10との間に水平方向の間隔をあけて配置される。冷凍機支持部40は、冷凍機支持部本体41と、冷凍機取付部43と、を備える。
【0038】
冷凍機支持部本体41は、冷凍機支持部40の本体部分である。冷凍機支持部本体41は、冷凍機31の位置よりも下側Z2の位置から上側Z1に延びるように配置される。例えば、冷凍機支持部本体41は、設置面Fから上側Z1に延びるように配置される。冷凍機支持部本体41は、例えば、設置面Fに固定される。冷凍機支持部本体41は、設置面Fに直接接触してもよく、冷凍機支持部本体41とは別体の部材(例えばゴムなど)を介して設置面Fに置かれてもよい。なお、冷凍機支持部本体41は、設置面Fから上側Z1に延びるように設けられなくてもよく、例えば、連結部材50から上側Z1に延びるように設けられてもよい。冷凍機支持部本体41は、柱状の部材を含む。冷凍機支持部本体41は、例えば円柱状でもよく、多角形断面を有する柱状(例えば四角柱状など)でもよい。冷凍機支持部本体41は、1本のみ設けられる。冷凍機支持部本体41は、複数本設けられてもよい(図示なし)。
【0039】
冷凍機取付部43は、冷凍機31が取り付けられる部分である。冷凍機取付部43は、冷凍機支持部本体41に対して冷凍機31を保持する。
【0040】
連結部材50は、冷凍機支持部40および冷凍機31を含む梁B(後述)の振動を抑制する。連結部材50は、設置面Fよりも上側Z1の位置で、冷凍機支持部40とマグネット支持部20とを連結する(詳細は後述)。連結部材50が複数設けられる場合(後述)は、最も上側Z1に配置される連結部材50を、最上連結部材50aとする。
【0041】
(振動について)
ここで、連結部材50が設けられない場合について検討する。この場合、設置面Fに対して高い位置に配置された冷凍機31が加振源となって、冷凍機支持部40および冷凍機31の全体が振動する。このとき、冷凍機支持部40および冷凍機31が、設置面Fを固定点Aaとする片持ち梁(梁A)となる。梁Aの長さ(上下方向Zにおける長さ)が長いほど、梁Aの振動の振幅が大きくなり、梁Aの固有振動数は低くなる。梁Aの振動は、冷媒流通管33および設置面Fを介して、マグネット装置本体10に伝わる。マグネット装置本体10に伝わる振動は、マグネット装置本体10での試料Sの測定(NMR測定)に影響を及ぼし、具体的にはノイズとなって現れてしまう。特に、マグネット装置本体10に伝わる低周波(例えば10Hz以下)の振動は、NMR測定に及ぼす影響が大きい。
【0042】
そこで、連結部材50は、冷凍機支持部40および冷凍機31の全体(梁A)の振動を抑制する。具体的には、連結部材50は、設置面Fよりも上側Z1の位置で、冷凍機支持部40とマグネット支持部20とを連結する。これにより、冷凍機支持部40のうち連結部材50よりも上側Z1の部分と冷凍機31とが、片持ち梁(梁B)となる。この梁Bの固定点Baの高さ(上下方向Zにおける位置)は、連結部材50の高さとなり、固定点Aaよりも上側Z1となる。連結部材50が複数設けられる場合は、固定点Baの高さは、最上連結部材50aの高さとなる。連結部材50が設けられることで、梁Bの長さは、梁Aの長さよりも短くなる。よって、梁Aでの振動の振幅に比べ、梁Bでの振動の振幅が小さくなる。よって、梁Bからマグネット装置本体10に伝わる振動の振幅が抑制される。また、梁Bの長さは、梁Aの長さよりも短いので、梁Bの固有振動数は、梁Aの固有振動数よりも高くなる。よって、梁Bからマグネット装置本体10に伝わる低周波が抑制される。よって、マグネット装置本体10での試料Sの測定に与える影響が抑制される。
【0043】
連結部材50は、冷凍機支持部40に接続される。さらに詳しくは、連結部材50は、冷凍機支持部本体41に接続される。連結部材50は、冷凍機支持部本体41に固定される。連結部材50は、締結部材などにより着脱可能に冷凍機支持部本体41に固定されてもよく、溶接などにより冷凍機支持部本体41に固着されてもよい。
【0044】
連結部材50は、マグネット支持部20に接続される。さらに詳しくは、連結部材50は、マグネット支持部本体部21に接続される。例えば、マグネット支持部本体部21が脚部21aを備える場合、連結部材50は、脚部21aに接続される。脚部21aが複数本設けられる場合、連結部材50は、1本のみの脚部21aに接続されてもよく、複数本の脚部21aに接続されてもよい。連結部材50は、マグネット支持部本体部21に固定される。連結部材50は、締結部材などにより着脱可能にマグネット支持部本体部21に固定されてもよく、溶接などによりマグネット支持部本体部21に固着されてもよい。マグネット支持部20が振動低減装置23を備える場合は、連結部材50は、振動低減装置23に対して、マグネット装置本体10側とは反対側の位置で、マグネット支持部本体部21に接続される。具体的には、連結部材50は、振動低減装置23よりも下側Z2の位置で、マグネット支持部本体部21に接続される。
【0045】
連結部材50は、例えば、水平方向に延びるように配置される。具体的には、連結部材50は、水平方向に延びるように設けられる板状などでもよい。なお、連結部材50は、水平方向に対して傾斜してもよい。連結部材50は、板状でなくてもよく、棒状でもよく、ブロック状などでもよい。
【0046】
連結部材50は、できるだけ高い位置(上側Z1の位置)に配置されることが好ましい。連結部材50が複数設けられる場合は、最上連結部材50aは、できるだけ高い位置(上側Z1の位置)に配置されることが好ましい。連結部材50ができるだけ高い位置に配置されることで、固定点Baがより上側Z1に配置され、梁Bが短くなる。その結果、梁Bの振幅がより低減され、また、梁Bの固有振動数がより高くなる。
図1および
図2に示す例では、連結部材50(例えば最上連結部材50a)は、振動低減装置23よりも下側Z2、かつ、振動低減装置23の近傍に配置される。
図2に示す例では、連結部材50(例えば最上連結部材50a)は、マグネット装置本体10の底面部11aよりも上側Z1に配置される。具体的には例えば、連結部材50は、設置面Fよりも約1m高い位置などに配置される。
【0047】
連結部材50は、複数設けられてもよい。この場合、複数の連結部材50は、上下方向Zに互いに間隔をあけて配置される。
図1に示す例では連結部材50は2つ設けられ、
図2に示す例では連結部材50は4つ設けられる。連結部材50は、3つ設けられてもよく、5つ以上設けられてもよい。連結部材50が複数設けられることで、マグネット支持部20と、複数の連結部材50と、冷凍機支持部40と、が一体的に連結および固定される。よって、マグネット支持部20と、冷凍機支持部40と、複数の連結部材50と、の全体での剛性が向上する(変形が抑制される)。その結果、梁Bの振動が抑制され、マグネット装置本体10の振動が抑制される。
【0048】
(第1の発明の効果)
図1に示す超電導マグネット装置1による効果は、次の通りである。超電導マグネット装置1は、超電導マグネット13を有するマグネット装置本体10と、マグネット支持部20と、冷凍機31と、冷凍機支持部40と、連結部材50と、を備える。マグネット支持部20は、設置面Fよりも上側Z1にマグネット装置本体10が配置されるように、マグネット装置本体10を設置面Fから支持する。
【0049】
[構成1-1]冷凍機31は、マグネット装置本体10から離れた位置に配置され、超電導マグネット13を冷却する冷媒Rを冷却する。冷凍機支持部40は、設置面Fよりも上側Z1に冷凍機31が配置されるように、冷凍機31を下側Z2から支持する。
【0050】
[構成1-2]連結部材50は、設置面Fよりも上側Z1の位置で、冷凍機支持部40とマグネット支持部20とを連結する。
【0051】
上記[構成1-1]では、冷凍機支持部40および冷凍機31が片持ち梁(梁B)となる。上記[構成1-2]により、設置面Fよりも上側Z1の連結部材50(
図1の例では最上連結部材50a)の位置を、梁Bの固定点Baとすることができる。よって、連結部材50が設けられない場合の固定点Aaの高さ(上下方向Zにおける位置)に比べ、連結部材50が設けられる場合の固定点Baの高さを、高く(上側Z1に)することができる。よって、梁Bの長さ(上下方向Zの長さ)を短くすることができる。よって、梁Bの振動の振幅を抑制することができる。その結果、マグネット装置本体10に伝わる振動の振幅を抑制することができる。また、梁Bの長さを短くすることができるので、梁Bの固有振動数を高くすることができる。よって、マグネット装置本体10に伝わる低周波(例えば10Hz以下)の振動を抑制することができる。したがって、超電導マグネット装置1は、マグネット装置本体10での測定(試料Sの測定)に影響のある振動を抑制できる。
【0052】
(第2の発明の効果)
超電導マグネット装置1は、冷媒流通管33を備える。冷媒流通管33は、冷媒Rが通るものである。冷媒流通管33は、マグネット装置本体10と冷凍機31とに接続される。
【0053】
[構成2]冷凍機31は、冷凍機31で凝縮した冷媒Rが、冷媒Rの自重により、冷凍機31から冷媒流通管33を通ってマグネット装置本体10の内部に流れることが可能な高さに配置される。
【0054】
上記[構成2]では、冷凍機31は、冷媒Rが自重により冷凍機31からマグネット装置本体10の内部に流れるような高い位置(上側Z1の位置)に配置される。そのため、冷凍機31を支持する冷凍機支持部40が上下方向Zに長くなりやすく、梁Bが長くなりやすい。そのため、連結部材50が設けられなければ、マグネット装置本体10での測定に影響のある振動が問題になるおそれがある。しかし、超電導マグネット装置1では、上記[構成1]の連結部材50により、梁Bを短くすることができる。よって、超電導マグネット装置1は、冷凍機31が上記[構成2]のような高さに配置される場合でも、マグネット装置本体10での測定に影響のある振動を抑制できる。
【0055】
(第3の発明の効果)
マグネット支持部20は、マグネット支持部本体部21と、振動低減装置23と、を備える。マグネット支持部本体部21は、連結部材50が接続されるものである。
【0056】
[構成3]振動低減装置23は、マグネット支持部本体部21とマグネット装置本体10との間に配置される。振動低減装置23は、マグネット支持部本体部21からマグネット装置本体10に伝わる振動を低減させる装置である。
【0057】
上記[構成3]により、次の効果が得られる。上記[構成1]では、冷凍機支持部40とマグネット支持部20とが連結部材50により連結される。そのため、冷凍機31および冷凍機支持部40の振動(梁Bの振動)が、連結部材50を介して、マグネット支持部20に伝わる。一方、超電導マグネット装置1は、上記[構成3]の振動低減装置23を備える。よって、冷凍機31および冷凍機支持部40の振動(梁Bの振動)が、連結部材50を介して、マグネット支持部本体部21に伝わっても、この振動は、マグネット装置本体10に伝わりにくい。よって、超電導マグネット装置1は、マグネット装置本体10での測定に影響のある振動が、マグネット装置本体10に伝わることを抑制できる。
【0058】
(第4の発明の効果)
[構成4]連結部材50は、複数設けられる。複数の連結部材50は、上下方向Zに互いに間隔をあけて配置される。
【0059】
上記[構成4]により、マグネット支持部20、冷凍機支持部40、および、複数の連結部材50を、互いに一体的に連結および固定することができる。よって、マグネット支持部20と、冷凍機支持部40と、複数の連結部材50と、の全体での剛性を向上させることができる(変形を抑制することができる)。よって、超電導マグネット装置1は、マグネット装置本体10での測定に影響のある振動を抑制できる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の変形例どうしが様々に組み合わされてもよい。例えば、上記実施形態の構成要素(変形例を含む)の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。具体的には例えば、連結部材50の数などは変更されてもよい。例えば、構成要素の配置は変更されてもよい。例えば、構成要素の包含関係は様々に変更されてもよい。例えば、ある上位の構成要素に含まれる下位の構成要素として説明したものが、この上位の構成要素に含まれなくてもよく、他の構成要素に含まれてもよい。具体的には例えば、連結部材50は、冷媒蒸発抑制装置30の構成要素でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。具体的には例えば、冷凍機支持部本体41は、複数の部材(例えば柱状部材)を含んでもよい。この場合、冷凍機支持部本体41を構成する複数の部材のそれぞれに連結部材50が接続されてもよい。例えば、各構成要素は、各特徴(作用機能、配置、形状、作動など)の一部のみを有してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 超電導マグネット装置
10 マグネット装置本体
13 超電導マグネット
20、120 マグネット支持部
21 マグネット支持部本体部
23 振動低減装置
31 冷凍機
33 冷媒流通管
40 冷凍機支持部
50 連結部材
F 設置面
R 冷媒