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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151561
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241018BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60H1/00 102Z
B60H1/22 651Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065006
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 赳之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 良寛
(72)【発明者】
【氏名】上村 幸男
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康太
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA34
3L211BA51
(57)【要約】
【課題】排熱回収専用の熱交換器を設けることなく、簡素なサイクル構成によって車室外へ排出される空気から熱を回収し、空調性能を向上させることが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1は、ヒートポンプサイクル10、高温側ユニット20、低温側ユニット30、制御装置50を有する。高温側ユニット20は、凝縮器12を内部に収容し、高温側空気導入部21と高温側送風先切替部24を有する。低温側ユニット30は、蒸発器14を内部に収容し、低温側空気導入部31と低温側送風先切替部34を有する。制御装置50は、凝縮器12及び蒸発器14の少なくとも一方に対して、内気Ai及び外気Aoを同時に導入し、凝縮器12を通過した空気及び蒸発器14を通過した空気の少なくとも一方の送風先を車室Rの内部に切り替える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧冷媒の有する熱を放熱させて冷媒を凝縮させる凝縮器(12)と、低圧冷媒に対して熱を吸熱させて蒸発させる蒸発器(14)と、を有するヒートポンプサイクル(10)と、
前記凝縮器を内部に収容し、前記凝縮器を介した送風空気の空気通路を構成する高温側ユニット(20)と、
前記蒸発器を内部に収容し、前記蒸発器を介した送風空気の空気通路を構成する低温側ユニット(30)と、
前記高温側ユニット及び前記低温側ユニットの作動を制御する制御部(50)と、を有し、
前記高温側ユニットは、
車室(R)の内部に存在する内気(Ai)と、前記車室の外部に存在する外気(Ao)の少なくとも一方を、前記凝縮器における放熱対象として導入する高温側空気導入部(21)と、
前記凝縮器にて放熱された空気の送風先を、前記車室の内部と、前記車室の外部の少なくとも一方に切り替える高温側送風先切替部(24)と、を有し、
前記低温側ユニットは、
前記内気と、前記外気の少なくとも一方を、前記蒸発器における吸熱対象として導入する低温側空気導入部(31)と、
前記蒸発器にて吸熱された空気の送風先を、前記車室の内部と、前記車室の外部の少なくとも一方に切り替える低温側送風先切替部(34)と、を有し、
前記制御部は、
前記高温側空気導入部及び前記低温側空気導入部の少なくとも一方を制御して、前記凝縮器及び前記蒸発器の少なくとも一方に対して、前記内気及び前記外気を同時に導入すると共に、
前記高温側送風先切替部及び前記低温側送風先切替部の作動を制御して、前記凝縮器を通過した空気及び前記蒸発器を通過した空気の少なくとも一方の送風先を、前記車室の内部に切り替える車両用空調装置。
【請求項2】
前記蒸発器は、前記低温側ユニットの内部において、前記蒸発器の内部における前記冷媒の流れの上流側に相当する部位(Aa)を、前記低温側空気導入部を介して導入された前記内気が通過するように配置されている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記蒸発器は、前記低温側ユニットの内部において、前記蒸発器の内部における前記冷媒の流れの下流側に相当する部位(Aa)を、前記低温側空気導入部を介して導入された前記内気が通過するように配置されている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記蒸発器は、前記低温側ユニットの内部において、前記蒸発器における重力方向下方側となる部位(Aa)を、前記低温側空気導入部を介して導入された前記内気が通過するように配置されている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記凝縮器は、前記高温側ユニットの内部において、前記凝縮器の内部における前記冷媒の流れの上流側に相当する部位(Aa)を、前記高温側空気導入部を介して導入された前記内気が通過するように配置されている請求項1ないし4の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記凝縮器は、前記高温側ユニットの内部において、前記凝縮器の内部における前記冷媒の流れの下流側に相当する部位(Aa)を、前記高温側空気導入部を介して導入された前記内気が通過するように配置されている請求項1ないし4の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートポンプサイクルを用いた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプサイクルを用いた車両用空調装置において、外気導入モードの際に車室から車室外へ排出される空気から熱を回収して省動力を図る技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1の車両用空調装置では、冷凍サイクルに排熱回収用の熱交換器を、車室から車室外へ排出される空気が流れる排気通路に追加し、四方弁等の作動を制御して冷媒回路を切り替えることにより、排出空気に含まれる熱を回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-155245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、排熱回収用の熱交換器としては、全熱交換器や顕熱交換器が考えられる。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、冷凍サイクルに排熱回収用の熱交換器を追加することによる部品点数の増加、搭載スペースの増加、および搭載重量の増加等を招いてしまう。
【0006】
又、特許文献1に記載された技術では、排熱回収用の熱交換器を含む冷凍サイクルの構成が複雑化してしまい、冷凍サイクルの作動制御に関する負担が増大することが考えられる。
【0007】
本開示は、上記点に鑑みて、排熱回収専用の熱交換器を設けることなく、簡素なサイクル構成によって車室外へ排出される空気から熱を回収し、空調性能を向上させることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る車両用空調装置は、ヒートポンプサイクル(10)と、高温側ユニット(20)と、低温側ユニット(30)と、制御部(50)と、を有する。ヒートポンプサイクルは、高圧冷媒の有する熱を放熱させて冷媒を凝縮させる凝縮器(12)と、低圧冷媒に対して熱を吸熱させて蒸発させる蒸発器(14)と、を有する。高温側ユニットは、凝縮器を内部に収容し、凝縮器を介した送風空気の空気通路を構成する。低温側ユニットは、蒸発器を内部に収容し、蒸発器を介した送風空気の空気通路を構成する。制御部は、高温側ユニット及び低温側ユニットの作動を制御する。
【0009】
高温側ユニットは、高温側空気導入部(21)と、高温側送風先切替部(24)と、を有している。高温側空気導入部は、車室(R)の内部に存在する内気(Ai)と、車室の外部に存在する外気(Ao)の少なくとも一方を、凝縮器における放熱対象として導入する。高温側送風先切替部は、凝縮器にて放熱された空気の送風先を、車室の内部と、車室の外部の少なくとも一方に切り替える。
【0010】
低温側ユニットは、低温側空気導入部(31)と、低温側送風先切替部(34)と、を有する。低温側空気導入部は、内気と、外気の少なくとも一方を、蒸発器における吸熱対象として導入する。低温側送風先切替部は、蒸発器にて吸熱された空気の送風先を、車室の内部と、車室の外部の少なくとも一方に切り替える。
【0011】
制御部は、高温側空気導入部及び低温側空気導入部の少なくとも一方を制御して、凝縮器及び蒸発器の少なくとも一方に対して、内気及び外気を同時に導入する。この動作と共に、制御部は、高温側送風先切替部及び低温側送風先切替部の作動を制御して、凝縮器を通過した空気及び蒸発器を通過した空気の少なくとも一方の送風先を、車室の内部に切り替える。
【0012】
従って、車両用空調装置によれば、車室内に外気を導入した空調運転を行う際に、凝縮器及び蒸発器の少なくとも一方に対して、内気及び外気を同時に導入すると共に、凝縮器を通過した空気及び蒸発器を通過した空気の少なくとも一方を、車室に供給できる。これにより、車両用空調装置は、車室内に対する外気導入に伴って、車室内から排出される内気に含まれる排熱を有効に活用して、ヒートポンプサイクルにおける空調性能を向上させることができる。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の構成図である。
図2】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御系を示すブロック図である。
図3】車両用空調装置における外気導入暖房モードの一例を示す説明図である。
図4】車両用空調装置における外気導入暖房エコモードの一例を示す説明図である。
図5】車両用空調装置における外気導入冷房エコモードの一例を示す説明図である。
図6】第2実施形態における低温側ユニット内の蒸発器の配置に関する説明図である。
図7】第3実施形態における低温側ユニット内の蒸発器の配置に関する説明図である。
図8】第4実施形態における高温側ユニット内の凝縮器の配置に関する説明図である。
図9】第5実施形態における高温側ユニット内の凝縮器の配置に関する説明図である。
図10】第6実施形態における低温側ユニット内の蒸発器の配置に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0016】
(第1実施形態)
本開示における第1実施形態について、図1図6を参照して説明する。第1実施形態に係る車両用空調装置1は、例えば、電動モータから走行用の駆動力を得る車両である電気自動車に搭載されている。車両用空調装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行うと共に、電池等の車載機器の温度調整を行う車載機器温調機能を有している。
【0017】
図1に示すように、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、ヒートポンプサイクル10、高温側ユニット20、低温側ユニット30、制御装置50等を備えている。尚、図1にて高温側ユニット20と低温側ユニット30の間に記載されている二重線は、車室R内と室外Oを区画する区画壁Wを示す。この点については以後の図面でも同様である。
【0018】
先ず、車両用空調装置1を構成するヒートポンプサイクル10について説明する。ヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、車室R内へ送風される空気の温度を調整する。ヒートポンプサイクル10は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14、アキュムレータ15を有しており、いわゆる、アキュムレータサイクルとして構成されている。
【0019】
ヒートポンプサイクル10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用している。ヒートポンプサイクル10は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成する。冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油(例えば、PAGオイル)が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにヒートポンプサイクル10を循環している。
【0020】
圧縮機11は、ヒートポンプサイクル10において、冷媒を吸入し圧縮して吐出する。圧縮機11は、車室の前方側の駆動装置室内に配置されている。駆動装置室は、走行用の駆動力を出力するための駆動用装置(例えば、電動モータ)の少なくとも一部が配置される空間を形成している。
【0021】
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータで回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11の回転数(即ち、冷媒吐出能力)は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
【0022】
圧縮機11の吐出口には、凝縮器12における冷媒通路の一方の出入口が接続されている。凝縮器12は、圧縮機11から吐出され冷媒通路を流通する高圧冷媒と、高温側ユニット20内の空気通路を流通する空気とを熱交換させる熱交換器である。凝縮器12は、高温側ユニット20のケーシング内に形成された空気通路内に配置されている。凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が有する熱を、高温側ユニット20を流通する送風空気に対して放熱し、送風空気を加熱する。
【0023】
凝縮器12における冷媒通路の他方の出入口には、膨張弁13の一方の冷媒出入口側が接続されている。膨張弁13は、ヒートポンプサイクル10の高圧冷媒を減圧させる減圧部である。膨張弁13は、絞り開度を変化させる弁体、及び弁体を変位させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)を有する電気式の可変絞り機構である。膨張弁13の作動は、制御装置50から出力される制御パルスによって制御される。
【0024】
膨張弁13は、弁開度を全開にすることで冷媒減圧作用及び流量調整作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有している。膨張弁13は、弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
【0025】
膨張弁13の他方の冷媒出入口には、蒸発器14における冷媒通路の一方の冷媒出入口側が接続されている。蒸発器14は、膨張弁13で減圧され冷媒通路を流通する低圧冷媒と低温側ユニット30内部を流れる空気とを熱交換させる熱交換器である。蒸発器14は、低温側ユニット30のケーシング内に形成された空気通路内に配置されている。蒸発器14は、低温側ユニット30を流通する送風空気の有する熱を、膨張弁13で減圧された低圧冷媒に対して吸熱させて、送風空気を冷却する。
【0026】
尚、第1実施形態に係る車両用空調装置1では、凝縮器12及び蒸発器14として、所謂、タンクアンドチューブ型の熱交換器が採用されている。
【0027】
蒸発器14における冷媒通路の他方の出入口には、アキュムレータ15の入口側が接続されている。アキュムレータ15は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として貯える低圧側の貯液部である。アキュムレータ15の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0028】
このように構成されたヒートポンプサイクル10によれば、蒸発器14で吸熱した熱を用いて、凝縮器12で放熱させて車室R内に送風される空気を加熱することで、車室R内の暖房を実現することができる。又、ヒートポンプサイクル10は、蒸発器14にて車室Rへ供給される空気から吸熱し、凝縮器12で放熱させることで、吸熱により冷却された空気を車室R内に供給することができ、車室R内の冷房を実現することができる。
【0029】
次に、車両用空調装置1を構成する高温側ユニット20について説明する。高温側ユニット20は、車両用空調装置1において、凝縮器12の放熱対象としての送風空気の導入及び凝縮器12で加熱された送風空気の送風先を切り替える為に、複数の構成機器を一体化したユニットである。高温側ユニット20は、例えば、車室Rの前方側に形成された駆動装置室の内部に配置されている。
【0030】
図1に示すように、高温側ユニット20は、凝縮器12と、高温側空気導入部21と、高温側送風機22と、高温側送風先切替部24を有している。高温側ユニット20において、高温側ユニット20の外殻を形成するケーシングの内部には、凝縮器12等の構成機器が収容されている。高温側ユニット20のケーシングは、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されており、内部に空気通路を有している。
【0031】
上述したように、高温側ユニット20の空気通路には、凝縮器12が配置されている。従って、空気通路は、凝縮器12を通過する送風空気を流通させる空気通路である。そして、高温側ユニット20における空気通路の空気流れ最上流側には、高温側空気導入部21が配置されている。
【0032】
高温側空気導入部21は、内気導入口21a、外気導入口21b、導入切替ドア21cを有して構成されている。内気導入口21aは、車室R内に存在する空気である内気Aiを高温側ユニット20の空気通路に導入させる為の開口部であり、高温側ユニット20のケーシングに形成されている。外気導入口21bは、室外Oに存在する空気である外気Aoを高温側ユニット20の空気通路に導入させる為の開口部であり、高温側ユニット20のケーシングにおいて、内気導入口21aと隣接するように形成されている。外気導入口21bには、室外Oと連通する外気導入路が接続されている。
【0033】
導入切替ドア21cは、図示しない電動アクチュエータに連結されており、内気導入口21aと外気導入口21bとを切り替え開閉する。導入切替ドア21c用の電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。従って、高温側空気導入部21は、凝縮器12に導入される空気(内気Ai、外気Ao)の比率を調整することができる。
【0034】
高温側空気導入部21の空気流れ下流側には、高温側送風機22が配置されている。高温側送風機22は、高温側ユニット20の空気通路に流入した空気を吸入して、凝縮器12及び高温側送風先切替部24へ向けて送風する電動送風機である。そして、高温側送風機22の回転数(即ち、送風能力)は、制御装置50から出力される制御電圧によって制御される。
【0035】
又、高温側ユニット20の空気通路の内部において、高温側空気導入部21と凝縮器12の間には、仕切壁23が空気通路の伸びる方向に沿って形成されている。高温側ユニット20の仕切壁23は、導入切替ドア21cと協働することで、高温側ユニット20の空気通路を2つに区画する。即ち、仕切壁23は、導入切替ドア21cと協働することで、内気導入口21aから凝縮器12の一部に向かって伸びる空気通路と、外気導入口21bから凝縮器12の他の部分に向かって伸びる空気通路に区画することができる。
【0036】
高温側ユニット20における空気通路の最下流部を形成する部位には、高温側送風先切替部24が形成されている。高温側送風先切替部24は、凝縮器12を通過した送風空気の送風先を、車室R内と室外Oの少なくとも一方に切り替える機構部であり、高温側室内送風路25、室内側ドア26、高温側室外送風路27、室外側ドア28を有している。
【0037】
高温側室内送風路25は、高温側ユニット20の空気通路において、凝縮器12よりも下流側に形成されており、高温側室内送風口25aを有している。高温側室内送風口25aは、車室R内と高温側室内送風路25とを連通する開口部であり、凝縮器12を通過した空気を車室R内に供給する。高温側室内送風路25は、凝縮器12を通過した送風空気が車室R内に向かって流れる空気通路ということができる。
【0038】
高温側室内送風口25aは、凝縮器12を通過した空気を車室R内へ吹き出すための図示しない複数の開口穴を有している。開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空気を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空気を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空気を吹き出すための開口穴である。
【0039】
これらの開口穴の上流側には、図示しない吹出モード切替ドアが配置されている。吹出モード切替ドアは、各開口穴を開閉することによって、空調風を吹き出す開口穴を切り替える。吹出モード切替ドアは、吹出モード切替ドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。吹出モード切替ドア駆動用の電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
【0040】
室内側ドア26は、高温側室内送風路25における上流側部分を開閉する為のドア部材であり、図示しない電動アクチュエータに連結されている。室内側ドア26用の電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。室内側ドア26の作動を制御することで、凝縮器12を通過し、車室R内へ供給される送風空気の流量を調整することができる。尚、室内側ドア26は、高温側室内送風路25の開度を最大にした全開状態と、高温側室内送風路25を閉塞した全閉状態に切り替えることも可能である。
【0041】
高温側室外送風路27は、高温側ユニット20の空気通路の凝縮器12よりも下流側において、高温側室内送風路25と並んで形成されており、高温側室外送風口27aを有している。高温側室外送風口27aは、車室Rの外部(即ち、室外O)と高温側室内送風路25を連通する開口部であり、凝縮器12を通過した空気を室外Oに排出する。従って、高温側室外送風路27は、凝縮器12を通過した送風空気が室外Oに向かって流れる空気通路ということができる。
【0042】
室外側ドア28は、高温側室外送風路27における上流側部分を開閉する為のドア部材であり、図示しない電動アクチュエータに連結されている。室外側ドア28用の電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。室外側ドア28の作動を制御することで、凝縮器12を通過し、室外Oへ排出される送風空気の流量を調整することができる。尚、室外側ドア28についても、高温側室外送風路27の開度を最大にした全開状態と、高温側室外送風路27を閉塞した全閉状態に切り替えることも可能である。
【0043】
続いて、車両用空調装置1を構成する低温側ユニット30について説明する。低温側ユニット30は、車両用空調装置1において、蒸発器14の吸熱対象としての送風空気の導入及び蒸発器14で吸熱された送風空気の送風先を切り替える為に、複数の構成機器を一体化したユニットである。低温側ユニット30は、高温側ユニット20と同様に、車室Rの前方側に形成された駆動装置室の内部に配置されている。
【0044】
図1に示すように、低温側ユニット30は、蒸発器14と、低温側空気導入部31と、低温側送風機32と、低温側送風先切替部34を有している。低温側ユニット30において、低温側ユニット30の外殻を形成するケーシングの内部には、蒸発器14等の構成機器が収容されている。低温側ユニット30のケーシングは、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されており、内部に空気通路を有している。
【0045】
上述したように、低温側ユニット30の空気通路には、蒸発器14が配置されている。従って、空気通路は、蒸発器14を通過する送風空気を流通させる空気通路である。そして、低温側ユニット30における空気通路の空気流れ最上流側には、低温側空気導入部31が配置されている。
【0046】
低温側空気導入部31は、内気導入口31a、外気導入口31b、導入切替ドア31cを有して構成されている。内気導入口31aは、車室R内の空気である内気Aiを低温側ユニット30の空気通路に導入させる為の開口部であり、低温側ユニット30のケーシングに形成されている。外気導入口31bは、室外Oの空気である外気Aoを低温側ユニット30の空気通路に導入させる為の開口部であり、低温側ユニット30のケーシングにおいて、外気導入口31bと隣接するように形成されている。外気導入口31bには、室外Oと連通する外気導入路が接続されている。
【0047】
導入切替ドア31cは、図示しない電動アクチュエータに連結されており、内気導入口31aと外気導入口31bとを切り替え開閉する。導入切替ドア31c用の電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。従って、低温側空気導入部31は、蒸発器14に導入される空気(内気Ai、外気Ao)の比率を調整することができる。
【0048】
低温側空気導入部31の空気流れ下流側には、低温側送風機32が配置されている。低温側送風機32は、低温側ユニット30の空気通路に流入した空気を吸入して、蒸発器14及び低温側送風先切替部34へ向けて送風する。そして、低温側送風機32の回転数(即ち、送風能力)は、制御装置50から出力される制御電圧によって制御される。
【0049】
又、低温側ユニット30の空気通路の内部において、低温側空気導入部31と蒸発器14の間には、仕切壁33が空気通路の伸びる方向に沿って形成されている。低温側ユニット30の仕切壁33は、導入切替ドア31cと協働することで、低温側ユニット30の空気通路を2つに区画する。即ち、仕切壁33は、導入切替ドア31cと協働することで、内気導入口31aから蒸発器14の一部に向かって伸びる空気通路と、外気導入口31bから蒸発器14の他の部分に向かって伸びる空気通路に区画することができる。
【0050】
低温側ユニット30における空気通路の最下流部を形成する部位には、低温側送風先切替部34が形成されている。低温側送風先切替部34は、蒸発器14を通過した送風空気の送風先を、車室R内と室外Oの少なくとも一方に切り替える機構部であり、低温側室内送風路35、室内側ドア36、低温側室外送風路37、室外側ドア38を有している。
【0051】
低温側室内送風路35は、低温側ユニット30の空気通路において、蒸発器14よりも下流側に形成されており、低温側室内送風口35aを有している。低温側室内送風口35aは、車室R内と低温側室内送風路35とを連通する開口部であり、蒸発器14を通過した空気を車室R内に供給する。低温側室内送風路35は、蒸発器14を通過した送風空気が車室R内に向かって流れる空気通路ということができる。
【0052】
低温側室内送風口35aは、蒸発器14を通過した空気を車室R内へ吹き出すための図示しない複数の開口穴を有している。開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴が設けられている。フェイス開口穴、フット開口穴、デフロスタ開口穴は、上述した高温側ユニット20と同様の機能を有する。又、これらの開口穴の上流側には、図示しない吹出モード切替ドアが配置されている。各吹出モード切替ドアの機能についても、上述した高温側ユニット20と同様に、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
【0053】
室内側ドア36は、低温側室内送風路35における上流側部分を開閉する為のドア部材であり、図示しない電動アクチュエータに連結されている。室内側ドア36用の電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。室内側ドア36の作動を制御することで、蒸発器14を通過し、車室R内へ供給される送風空気の流量を調整することができる。尚、室内側ドア36は、低温側室内送風路35の開度を最大にした全開状態と、低温側室内送風路35を閉塞した全閉状態に切り替えることも可能である。
【0054】
低温側室外送風路37は、低温側ユニット30の空気通路の凝縮器12よりも下流側において、低温側室内送風路35と並んで形成されており、低温側室外送風口37aを有している。低温側室外送風口37aは、車室Rの外部(即ち、室外O)と低温側室内送風路35を連通する開口部であり、蒸発器14を通過した空気を室外Oに排出する。従って、低温側室外送風路37は、蒸発器14を通過した送風空気が室外Oに向かって流れる空気通路ということができる。
【0055】
室外側ドア38は、低温側室外送風路37における上流側部分を開閉する為のドア部材であり、図示しない電動アクチュエータに連結されている。室外側ドア38用の電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。室外側ドア38の作動を制御することで、蒸発器14を通過し、室外Oへ排出される送風空気の流量を調整することができる。尚、室外側ドア38についても、低温側室外送風路37の開度を最大にした全開状態と、低温側室外送風路37を閉塞した全閉状態に切り替えることも可能である。
【0056】
次に、車両用空調装置1の制御系について図2を参照して説明する。制御装置50は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置50は、ROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
【0057】
図2に示すように、制御装置50に接続された制御対象機器には、圧縮機11、膨張弁13、高温側空気導入部21、高温側送風機22、高温側送風先切替部24、低温側空気導入部31、低温側送風機32、低温側送風先切替部34等が含まれる。
【0058】
高温側空気導入部21には、導入切替ドア21c用の電動アクチュエータが含まれ、低温側空気導入部31には、導入切替ドア31c用の電動アクチュエータが含まれている。又、高温側送風先切替部24には、室内側ドア26用の電動アクチュエータ、室外側ドア28用の電動アクチュエータが含まれている。そして、低温側送風先切替部34には、室内側ドア36用の電動アクチュエータ、室外側ドア38用の電動アクチュエータが含まれている。
【0059】
そして、制御装置50の入力側には、各種の制御用センサが接続されている。制御用センサとしては、内気温度センサ51a、外気温度センサ51b、日射量センサ51c等が含まれる。更に、制御用センサとしては、高圧圧力センサ51d、蒸発器温度センサ51e、第1冷媒温度センサ51f、第2冷媒温度センサ51g等が含まれる。
【0060】
内気温度センサ51aは、車室R内の温度である内気温度Trを検出する内気温度検出部である。図1に示すように、内気温度センサ51aは、車室R内に配置されている。外気温度センサ51bは、室外Oの温度である外気温度Tamを検出する外気温度検出部である。外気温度センサ51bは、例えば、車室Rの外部に配置されている。
【0061】
日射量センサ51cは、車室R内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧圧力センサ51d、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の高圧圧力Pdを検出する高圧圧力検出部である。蒸発器温度センサ51eは、蒸発器14における冷媒蒸発温度を検出する温度検出部である。第1冷媒温度センサ51fは、凝縮器12の冷媒通路から流出した冷媒の温度である第1冷媒温度T1を検出する温度検出部である。第2冷媒温度センサ51gは、蒸発器14から流出した冷媒の温度である第2冷媒温度T2を検出する温度検出部である。
【0062】
更に、制御装置50の入力側には、車室R内前部に位置する計器盤付近に配置された操作パネル52が接続されている。操作パネル52には、各種操作スイッチが設けられており、制御装置50には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル52に設けられた各種操作スイッチには、具体的に、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、エコスイッチ等が含まれる。
【0063】
オートスイッチは、ヒートポンプサイクル10の自動制御運転を設定あるいは解除する操作スイッチである。エアコンスイッチは、蒸発器14にて空気の冷却を行うことを要求する操作スイッチである。風量設定スイッチは、車室R内に供給される送風空気の風量をマニュアル設定する操作スイッチであり、高温側送風機22及び低温側送風機32の少なくとも一方の送風能力を決定する為の操作スイッチである。
【0064】
温度設定スイッチは、車室R内の目標温度Tsetを設定する操作スイッチである。エコスイッチは、車室R内の空調運転に際して、少ない消費エネルギ(例えば、電力)で必要な空調能力を車両用空調装置1に発揮させるエコモードを有効にするか否かを決定する際に操作される操作スイッチである。
【0065】
又、制御装置50は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。従って、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(即ち、ハードウェア及びソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0066】
例えば、制御装置50のうち、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11の作動を制御する構成は、圧縮機制御部50aである。又、制御装置50のうち、ヒートポンプサイクル10の膨張弁13の作動を制御する構成は減圧制御部50bである。
【0067】
そして、制御装置50のうち、車室R内の空調を行う場合に、凝縮器12及び蒸発器14に導入される空気を設定する為に、高温側空気導入部21及び低温側空気導入部31の作動を制御する構成は、導入空気切替制御部50cである。又、制御装置50のうち、車室R内の空調を行う際に、凝縮器12及び蒸発器14を通過した送風空気の送風先を設定する為に、高温側送風先切替部24及び低温側送風先切替部34の作動をそれぞれ制御する構成は、送風先切替制御部50d部である。
【0068】
続いて、上述した第1実施形態に係る車両用空調装置1の作動について説明する。車両用空調装置1は、車室R内の空調を行う為に、4つの空調運転モードを有している。具体的には、車両用空調装置1は、車室R内の空調に際して、外気導入暖房モード、内気循環暖房モード、外気導入冷房モード、内気循環冷房モードの何れかの運転モードに切り替えることができる。
【0069】
又、車両用空調装置1においては、これら4種類の空調運転モードの夫々に対して、消費エネルギを抑えて、効率よく空調能力を発揮させるエコモードを設定可能に構成されている。即ち、車両用空調装置1は、外気導入暖房エコモード、内気循環暖房エコモード、外気導入冷房エコモード、内気循環冷房エコモードの何れかの運転モードに切り替えることも可能である。
【0070】
先ず、第1実施形態に係る車両用空調装置1の外気導入暖房モードでの作動について、図3を参照して説明する。
【0071】
外気導入暖房モードでは、高温側ユニット20の高温側空気導入部21は、導入切替ドア21cによって、内気導入口21aを閉塞すると共に、外気導入口21bを開放するように制御される。又、低温側ユニット30の低温側空気導入部31は、導入切替ドア31cによって、内気導入口31a及び外気導入口31bを開放し、仕切壁33と共に、空気通路の仕切りを構成するように制御される。
【0072】
そして、外気導入暖房モードにおいて、高温側ユニット20の高温側送風先切替部24は、室内側ドア26により高温側室内送風路25を開放すると共に、室外側ドア28により高温側室外送風路27を閉塞するように制御される。又、低温側ユニット30の低温側送風先切替部34は、室内側ドア36により低温側室内送風路35を閉塞すると共に、室外側ドア38により低温側室外送風路37を開放するように制御される。
【0073】
高温側ユニット20及び低温側ユニット30をこの状態に制御することで、車室R内に外気を導入する外気導入モードの一態様が実現される。
【0074】
外気導入暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11の冷媒吐出能力及び膨張弁13の絞り開度は、暖房運転に設定されている目標温度に応じて、適宜定められ、目標温度を実現するようにそれぞれ制御される。
【0075】
これにより、外気導入暖房モードのヒートポンプサイクル10においては、冷媒は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14、アキュムレータ15、圧縮機11の順に流れて循環する。従って、外気導入暖房モードのヒートポンプサイクル10では、凝縮器12において、高圧冷媒の有する熱が、高温側空気導入部21から導入された送風空気に放熱される。又、蒸発器14において、低温側空気導入部31を介して導入された送風空気が有する熱が、膨張弁13で減圧された低圧冷媒に吸熱される。
【0076】
そして、外気導入暖房モードの高温側ユニット20では、高温側送風機22の作動によって、外気が、外気導入口21bを介して、空気通路内に吸い込まれる。空気通路内に吸い込まれた外気は、凝縮器12を通過する際に高圧冷媒との熱交換により加熱されて、車室R内に供給される。これにより、車室R内の暖房が実現される。
【0077】
又、外気導入暖房モードの低温側ユニット30では、低温側空気導入部31にて解放されている内気導入口31a及び外気導入口31bを介して、車室R内の内気Aiと、室外Oの外気Aoが低温側ユニット30の空気通路内に導入される。低温側ユニット30の空気通路を流通すると、送風空気は、蒸発器14で低圧冷媒と熱交換した後、室外Oへ排出される。
【0078】
これにより、蒸発器14の一部の領域を、内気Aiで構成される排出空気が通過すると共に、蒸発器14における残余の領域を外気Aoが通過することになる。排熱を含む内気Aiに由来する排出空気が、吸熱器として機能する蒸発器14を通過する為、車両用空調装置1は、内気Aiに含まれる排熱を回収し有効活用することができ、車室R内の暖房を効率よく実現できる。
【0079】
そして、外気導入暖房モードは、外気温度よりも内気温度が高い場合に採用される暖房運転モードの一つである。従って、蒸発器14にて、内気Aiに由来する排出空気から吸熱することで、内気Aiに含まれる排熱を回収して、暖房熱源として活用できるので、車両用空調装置1の暖房性能を向上させることができる。
【0080】
又、外気導入暖房モードによれば、低温側ユニット30を介して、車室Rから室外Oへ内気Aiを含む空気を排出すると共に、高温側ユニット20にて、外気Aoを含む空気を車室R内に導入することができる。これにより、車両用空調装置1は、車室R内が負圧になることを防止することができる。
【0081】
又、外気導入暖房モードでは、高温側ユニット20及び低温側ユニット30の作動を制御して車室R内に外気Aoを導入することにより、車室R内の二酸化炭素濃度の上昇及び外気導入に伴う熱のロスを抑制しつつ、車室R内の快適性を向上させることができる。
【0082】
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の外気導入暖房エコモードでの作動について、図4を参照して説明する。
【0083】
外気導入暖房エコモードは、外気導入暖房モードで実現される外気導入暖房運転を、消費エネルギを抑えて実現する運転モードであり、操作パネル52のエコスイッチをオンに設定することで実行される。
【0084】
外気導入暖房エコモードにおいて、高温側ユニット20の高温側空気導入部21は、導入切替ドア21cによって、内気導入口21a及び外気導入口21bを開放し、仕切壁23と共に空気通路の仕切りを構成するように制御される。又、低温側ユニット30の低温側空気導入部31は、外気導入暖房モードと同様に、導入切替ドア31cによって、内気導入口31a及び外気導入口31bを開放し、仕切壁33と共に、空気通路の仕切りを構成するように制御される。
【0085】
そして、外気導入暖房エコモードにおいて、高温側ユニット20の高温側送風先切替部24は、室内側ドア26により高温側室内送風路25を開放すると共に、室外側ドア28により高温側室外送風路27を閉塞するように制御される。又、低温側ユニット30の低温側送風先切替部34は、室内側ドア36により低温側室内送風路35を閉塞すると共に、室外側ドア38により低温側室外送風路37を開放するように制御される。
【0086】
高温側ユニット20及び低温側ユニット30をこの状態に制御することで、車室R内に外気を導入する外気導入モードの一態様が実現される。
【0087】
外気導入暖房エコモードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11の冷媒吐出能力及び膨張弁13の絞り開度は、暖房運転に設定されている目標温度に応じて、適宜定められ、目標温度を実現するようにそれぞれ制御される。
【0088】
これにより、外気導入暖房エコモードのヒートポンプサイクル10においては、冷媒は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14、アキュムレータ15、圧縮機11の順に流れて循環する。従って、外気導入暖房エコモードのヒートポンプサイクル10では、凝縮器12において、高圧冷媒の有する熱が、高温側空気導入部21から導入された送風空気に放熱される。又、蒸発器14において、低温側空気導入部31を介して導入された送風空気が有する熱が、膨張弁13で減圧された低圧冷媒に吸熱される。
【0089】
そして、外気導入暖房エコモードの高温側ユニット20では、高温側送風機22の作動によって、内気Ai及び外気Aoが、内気導入口21a及び外気導入口21bを介して、空気通路内に吸い込まれる。空気通路内に吸い込まれた内気Ai及び外気Aoは、凝縮器12を通過する際に高圧冷媒との熱交換により加熱されて、車室R内に供給される。これにより、車室R内の暖房が実現される。
【0090】
又、外気導入暖房エコモードの低温側ユニット30では、低温側空気導入部31にて解放されている内気導入口31a及び外気導入口31bを介して、車室R内の内気Aiと、室外Oの外気Aoが低温側ユニット30の空気通路内に導入される。低温側ユニット30の空気通路を流通すると、送風空気は、蒸発器14で低圧冷媒と熱交換した後、室外Oへ排出される。
【0091】
これにより、凝縮器12の一部の領域を、内気Aiで構成される排出空気が通過すると共に、凝縮器12における残余の領域を外気Aoが通過することになる。凝縮器12を通過する送風空気の温度に関して、外気導入暖房エコモードのように、内気Ai及び外気Aoで構成された送風空気の温度の方が、外気導入暖房モードのように、内気Aiによって構成される送風空気よりも高くなると考えられる。
【0092】
これにより、車両用空調装置1によれば、凝縮器12における放熱対象となる空気の温度を変更することによって、外気導入暖房エコモードにおけるヒートポンプサイクル10の空調能力(即ち、暖房能力)を向上させることができる。
【0093】
又、蒸発器14の一部の領域を、内気Aiで構成される排出空気が通過すると共に、蒸発器14における残余の領域を外気Aoが通過することになる。排熱を含む内気Aiに由来する排出空気が、吸熱器として機能する蒸発器14を通過する為、車両用空調装置1は、内気Aiに含まれる排熱を回収し有効活用することができ、車室R内の暖房を効率よく実現できる。
【0094】
そして、外気導入暖房エコモードは、外気温度よりも内気温度が高い場合に採用される暖房運転モードの一つである。従って、蒸発器14にて、内気Aiに由来する排出空気から吸熱することで、内気Aiに含まれる排熱を回収して、暖房熱源として活用できるので、車両用空調装置1の暖房性能を向上させることができる。
【0095】
又、外気導入暖房エコモードによれば、低温側ユニット30を介して、車室Rから室外Oへ内気Aiを含む空気を排出すると共に、高温側ユニット20にて、外気Aoを含む空気を車室R内に導入することができる。これにより、車両用空調装置1は、車室R内が負圧になることを防止することができる。
【0096】
又、外気導入暖房エコモードでは、高温側ユニット20及び低温側ユニット30の作動を制御して車室R内に外気Aoを導入することで、車室R内の二酸化炭素濃度の上昇及び外気導入に伴う熱のロスを抑制しつつ、車室R内の快適性を向上させることができる。
【0097】
続いて、第1実施形態に係る車両用空調装置1の外気導入冷房エコモードでの作動について、図5を参照して説明する。
【0098】
外気導入冷房エコモードは、外気導入冷房モードで実現される外気導入冷房運転を、消費エネルギを抑えて実現する運転モードであり、操作パネル52のエコスイッチをオンに設定することで実行される。
【0099】
外気導入冷房エコモードにおいて、高温側ユニット20の高温側空気導入部21は、導入切替ドア21cによって、内気導入口21a及び外気導入口21bを開放し、仕切壁23と共に空気通路の仕切りを構成するように制御される。又、低温側ユニット30の低温側空気導入部31は、導入切替ドア31cによって、内気導入口31aを閉塞すると共に、外気導入口31bを開放するように制御される。
【0100】
そして、外気導入冷房エコモードにおいて、高温側ユニット20の高温側送風先切替部24は、室内側ドア26により高温側室内送風路25を閉塞すると共に、室外側ドア28により高温側室外送風路27を開放するように制御される。又、低温側ユニット30の低温側送風先切替部34は、室内側ドア36により低温側室内送風路35を開放すると共に、室外側ドア38により低温側室外送風路37を閉塞するように制御される。
【0101】
高温側ユニット20及び低温側ユニット30をこの状態に制御することで、車室R内に外気を導入する外気導入モードの一態様が実現される。
【0102】
外気導入冷房エコモードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11の冷媒吐出能力及び膨張弁13の絞り開度は、冷房運転に設定されている目標温度に応じて、適宜定められ、目標温度を実現するようにそれぞれ制御される。
【0103】
これにより、外気導入冷房エコモードのヒートポンプサイクル10においては、冷媒は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14、アキュムレータ15、圧縮機11の順に流れて循環する。従って、外気導入冷房エコモードのヒートポンプサイクル10では、凝縮器12において、高圧冷媒の有する熱が、高温側空気導入部21から導入された送風空気に放熱される。又、蒸発器14において、低温側空気導入部31を介して導入された送風空気が有する熱が、膨張弁13で減圧された低圧冷媒に吸熱される。
【0104】
そして、外気導入冷房エコモードの高温側ユニット20では、高温側送風機22の作動によって、内気Ai及び外気Aoが、内気導入口21a及び外気導入口21bを介して、空気通路内に吸い込まれる。これにより、凝縮器12の一部の領域を、内気Aiで構成される排出空気が通過すると共に、凝縮器12における残余の領域を外気Aoが通過することになる。空気通路内に吸い込まれた内気Ai及び外気Aoは、凝縮器12を通過する際に高圧冷媒との熱交換により加熱されて、室外Oに排出される。
【0105】
又、外気導入冷房エコモードの低温側ユニット30では、低温側空気導入部31にて解放されている外気導入口31bを介して、室外Oの外気Aoが低温側ユニット30の空気通路内に導入される。低温側ユニット30の空気通路を流通すると、送風空気は、蒸発器14で低圧冷媒と熱交換した後、開放されている低温側室内送風路35を介して、車室R内に供給される。即ち、外気導入冷房エコモードでは、車室R内の冷房が実現される。
【0106】
ここで、車室R内の冷房運転が利用される状況として、夏の炎天下に電気自動車が放置されていた状況を想定すると、車室Rの内気温度は、室外Oの外気温度よりも高温となる。そうすると、凝縮器12を通過する送風空気の温度に関して、内気Ai及び外気Aoで構成された送風空気の温度の方が、外気導入冷房モードのように、内気Aiによって構成される送風空気よりも低くなると考えられる。
【0107】
これにより、車両用空調装置1によれば、凝縮器12における放熱対象となる空気の温度を低くすることによって、外気導入冷房エコモードにおけるヒートポンプサイクル10の空調能力(即ち、冷房能力)を向上させることができる。
【0108】
又、凝縮器12の一部の領域を、内気Aiで構成される排出空気が通過すると共に、凝縮器12における残余の領域を外気Aoが通過することになる。放熱対象である送風空気のうち、内気Aiが通過する領域と外気Aoが通過する領域を区分して、凝縮器12を通過させることで、凝縮器12における放熱効率を向上させることができ、車室R内の冷房を効率よく実現できる。
【0109】
そして、外気導入冷房エコモードは、外気温度よりも内気温度が高い場合に採用される冷房運転モードの一つである。従って、凝縮器12における放熱対象である送風空気の温度をより低い状態にすることで、ヒートポンプサイクル10の高圧側における放熱量を増大させることで、車両用空調装置1の冷房暖房性能を向上させ、効率の良い冷房運転を実現できる。
【0110】
又、外気導入冷房エコモードによれば、低温側ユニット30を介して、室外Oから車室Rへ含む空気を導入すると共に、高温側ユニット20にて、外気Aoを含む空気に対してヒートポンプサイクル10で汲み上げた熱を放熱して、室外Oへ排気することができる。これにより、車両用空調装置1は、車室R内が負圧になることを防止することができる。
【0111】
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、ヒートポンプサイクル10と、高温側ユニット20と、低温側ユニット30と、制御装置50を有している。高温側ユニット20は、凝縮器12を介した送風空気の空気通路を構成し、高温側空気導入部21と、高温側送風先切替部24を有している。低温側ユニット30は、蒸発器14を介した送風空気の空気通路を構成し、低温側空気導入部31と、低温側送風先切替部34を有している。
【0112】
制御装置50は、高温側空気導入部21及び低温側空気導入部31の少なくとも一方を制御して、凝縮器12及び蒸発器14の少なくとも一方に対して、内気Ai及び外気Aoを同時に導入する。この動作と共に、制御装置50は、高温側送風先切替部24及び低温側送風先切替部34の作動を制御して、凝縮器12を通過した空気及び蒸発器14を通過した空気の少なくとも一方の送風先を、車室Rの内部に切り替える。
【0113】
従って、車両用空調装置1によれば、車室R内に外気Aoを導入した空調運転を行う際に、凝縮器12及び蒸発器14の少なくとも一方に対して、内気Ai及び外気Aoを同時に導入することができる。これと同時に、車両用空調装置1は、凝縮器12を通過した空気及び蒸発器14を通過した空気の少なくとも一方を、車室R内部に供給できる。これにより、車両用空調装置1は、車室R内に対する外気導入に伴って、車室R内から排出される内気Aiに含まれる排熱を有効に活用して、ヒートポンプサイクル10における空調性能を向上させることができる。
【0114】
図3に示す外気導入暖房モードによれば、低温側空気導入部31により、蒸発器14に対して内気Ai及び外気Aoが同時に導入され、高温側送風先切替部24により、凝縮器12にて加熱された送風空気が車室R内に供給される。
【0115】
これにより、車両用空調装置1は、外気導入暖房モードにて、室外Oに排気される排熱を蒸発器14で効率よく吸熱し、排熱を熱源として利用して、車両用空調装置1の暖房性能を向上させることができる。
【0116】
又、図4に示す外気導入暖房エコモードによれば、高温側空気導入部21により、凝縮器12に対して、内気Ai及び外気Aoが同時に導入され、低温側空気導入部31により、蒸発器14に対して、内気Ai及び外気Aoが同時に導入される。そして、内気Ai及び外気Aoの導入と同時に、高温側送風先切替部24により、凝縮器12にて加熱された送風空気が車室R内に供給される。
【0117】
これにより、車両用空調装置1は、外気導入暖房エコモードにて、室外Oに排気される排熱を蒸発器14で効率よく吸熱し、排熱を熱源として利用して、車両用空調装置1の暖房性能を向上させることができる。又、外気導入暖房エコモードでは、凝縮器12に対して内気Ai及び外気Aoを同時に導入している為、凝縮器12における放熱量を増大させることができ、暖房運転における効率を向上させることができる。
【0118】
そして、図5に示す外気導入冷房エコモードによれば、高温側空気導入部21により、凝縮器12に対して、内気Ai及び外気Aoが同時に導入され、低温側送風先切替部34により、蒸発器14にて冷却された送風空気が車室R内に供給される。
【0119】
これにより、車両用空調装置1は、外気導入冷房エコモードにて、室外Oに排気される排熱を有効に活用して、凝縮器12における放熱能力を向上させることで、車両用空調装置1の冷房性能を向上させることができる。
【0120】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第2実施形態について、図6を参照して説明する。第2実施形態に係る車両用空調装置1では、重要視される車両用空調装置1の状況に応じて、低温側ユニット30における蒸発器14の配置が変更されている。第2実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(ヒートポンプサイクル10、高温側ユニット20等)については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0121】
第2実施形態に係る車両用空調装置1では、外気導入暖房モード等の運転初期にて大能力を発揮させることを重視して、低温側ユニット30内における蒸発器14の配置が定められている。
【0122】
ここで、第2実施形態に係る低温側ユニット30内における蒸発器14の配置について説明する。上述したように、車両用空調装置1における蒸発器14として、所謂、タンクアンドチューブ型の熱交換器が採用されている。蒸発器14は、図6に示すように、第1冷媒タンク61、第2冷媒タンク62からなる一対の冷媒タンクと、複数の冷媒チューブ66を積層配置した熱交換部65を有している。
【0123】
熱交換部65は、複数の冷媒チューブ66を所定方向に間隔を空けて積層配置して構成されている。隣り合う冷媒チューブ66同士の間には、冷媒と熱交換する空気を流通させる空気通路が形成される。熱交換部65における各空気通路には、冷媒と空気との熱交換を促進させるフィン67が配置されている。
【0124】
第1冷媒タンク61は、冷媒チューブ66の積層方向に沿って伸びる金属製の箱状に形成されており、内部に複数の隔壁64を有している。第1冷媒タンク61の内部は、2つの隔壁64によって、第1貯留部70a、第3貯留部70c、第5貯留部70eに区画されている。
【0125】
第2冷媒タンク62は、第1冷媒タンク61と同様に、金属製の箱状に形成されており、複数の冷媒チューブ66を有して構成される熱交換部65を介して、第1冷媒タンク61と対向するように配置されている。第2冷媒タンク62の内部空間には、一つの隔壁64が配置されている。従って、第2冷媒タンク62の内部空間は、隔壁64によって、第2貯留部70b、第4貯留部70dに区画されている。
【0126】
第1冷媒タンク61は、複数の冷媒チューブ66の一端側に配置されており、第2冷媒タンク62は、複数の冷媒チューブ66の他端側に配置されている。第1冷媒タンク61の内部空間および第2冷媒タンク62の内部空間は、複数の冷媒チューブ66を介して連通している。
【0127】
第1冷媒タンク61の第1貯留部70aの一側面には、冷媒が流入する冷媒入口68が配置されている。第1貯留部70aには、熱交換部65を構成する複数の冷媒チューブ66の一端部が接続されており、複数の冷媒チューブ66の他端部は、第2冷媒タンク62の第2貯留部70bに接続されている。以下の説明では、複数の冷媒チューブ66のうち、第1貯留部70a及び第2貯留部70bに接続されているものを第1チューブ66aという。
【0128】
以下の説明では、複数の冷媒チューブ66のうち、第2冷媒タンク62の第2貯留部70bと、第1冷媒タンク61の第3貯留部70cに接続されているものを第2チューブ66bという。そして、複数の冷媒チューブ66のうち、第1冷媒タンク61の第3貯留部70cと、第2冷媒タンク62の第4貯留部70dに接続されているものを第3チューブ66cという。
【0129】
又、複数の冷媒チューブ66のうち、第2冷媒タンク62の第4貯留部70dと、第1冷媒タンク61の第5貯留部70eに接続されているものを第4チューブ66dという。そして、第1冷媒タンク61における第5貯留部70eの一側面には、蒸発器14の内部を流通した冷媒が流出する冷媒出口69が配置されている。
【0130】
従って、図6に示す蒸発器14では、冷媒は、冷媒入口68から冷媒出口69へ向かって、第1冷媒タンク61と第2冷媒タンク62の間を往復するように流れる。即ち、冷媒は、冷媒入口68から第1冷媒タンク61の第1貯留部70aに流入し、第1チューブ66a、第2貯留部70b、第2チューブ66b、第3貯留部70c、第3チューブ66c、第4貯留部70d、第4チューブ66d、第5貯留部70eの順に流れる。第5貯留部70eに流入した後、冷媒は、第5貯留部70eに配置された冷媒出口69から蒸発器14の外部へと流出する。
【0131】
ここで、第2実施形態に係る車両用空調装置1においては、蒸発器14は、外気導入暖房モード等の運転初期にて大能力を発揮させることを重視して、低温側ユニット30の内部に配置されている。第2実施形態においては、蒸発器14は、低温側ユニット30の内部において、蒸発器14内部の冷媒流れの上流側に相当する部位を、低温側空気導入部31を介して導入された内気Aiが通過するように配置されている。
【0132】
以下の説明では、低温側ユニット30の内部に導入された内気Aiが通過することにより、車両用空調装置1の空調能力を向上させることができる領域を、内気流入領域Aaという。内気流入領域Aaは、蒸発器14における熱交換部65の一部に設定される。
【0133】
第2実施形態における内気流入領域Aaは、熱交換部65のうち蒸発器14内部の冷媒流れの上流側に相当する部位に対して設定される。具体的には、第2実施形態に係る内気流入領域Aaは、蒸発器14の熱交換部65のうち、第1冷媒タンク61の第1貯留部70aから第2冷媒タンク62の第2貯留部70bまでの部分(即ち、第1チューブ66aにより構成される部分)に設定される。
【0134】
そして、上述したように、低温側ユニット30の低温側空気導入部31において、内気導入口31aと外気導入口31bが隣接して配置されている。従って、第2実施形態においては、蒸発器14における内気流入領域Aaが低温側ユニット30の内部において、内気導入口31aに近い側に位置し、冷媒流れ下流側にあたる部分が外気導入口31bに近い側に位置するように、蒸発器14が配置される。
【0135】
又、低温側空気導入部31は、外気導入暖房モード等において、内気導入口31a及び外気導入口31bを開放して、導入切替ドア31cが仕切壁33と共に空気通路の仕切りを構成する状態になる。即ち、この場合、低温側ユニット30内部の空気通路は、導入切替ドア31c及び仕切壁33によって、内気導入口31aから伸びる空気通路と、外気導入口31bから伸びる空気通路に区画される。
【0136】
導入切替ドア31c及び仕切壁33により2つの空気通路に区画した場合に、第2実施形態における内気流入領域Aaが内気導入口31aから伸びる空気通路の内部に位置するように、蒸発器14は低温側ユニット30の内部に配置される。
【0137】
低温側ユニット30内部における蒸発器14を上述した態様で配置することで、蒸発器14の内部における冷媒流れの上流側に対して、排熱を有する内気Aiを送風することができる。これにより、蒸発器14を流れる冷媒と、低温側ユニット30内部を流れる送風空気との温度差を大きくすることができ、送風空気と冷媒との熱交換量を大きくすることができる。
【0138】
この結果、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、蒸発器14により、内気Aiに含まれる排熱を多く回収することができ、外気導入暖房モード等の運転初期にて大能力が必要な場合に対応することができる。
【0139】
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、低温側ユニット30における蒸発器14の配置を変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0140】
そして、第2実施形態に係る車両用空調装置1において、蒸発器14は、低温側ユニット30において、蒸発器14内部の冷媒流れの上流側に相当する部位(内気流入領域Aa)を、低温側空気導入部31から導入された内気Aiが通過するように配置されている。これにより、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、蒸発器14を流れる冷媒と、低温側ユニット30内部を流れる送風空気との温度差を大きくして、送風空気と冷媒との熱交換量を大きくすることができる。即ち、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、外気導入暖房モード等の運転初期にて大能力を発揮させることができる。
【0141】
(第3実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第3実施形態について、図7を参照して説明する。第3実施形態に係る車両用空調装置1においては、第2実施形態とは異なる車両用空調装置1の使用状況を重要視して、低温側ユニット30における蒸発器14の配置が設定されている。第3実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(ヒートポンプサイクル10、高温側ユニット20等)については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0142】
第3実施形態に係る蒸発器14は、外気導入暖房モード等における空調運転の安定性を重視することを目的として、低温側ユニット30における空気通路の内部に配置される。ここで、第3実施形態に係る蒸発器14は、図7に示すように、タンクアンドチューブ型の熱交換器として構成されている。
【0143】
即ち、蒸発器14は、第1冷媒タンク61、第2冷媒タンク62からなる一対の冷媒タンクと、複数の冷媒チューブ66を積層配置した熱交換部65を有している。一対の冷媒タンク及び熱交換部65の構成については、第2実施形態と同様である。従って、第3実施形態における蒸発器14にて、冷媒入口68から冷媒出口69へ向かう冷媒の流れは第2実施形態と同様である。
【0144】
ここで、第3実施形態に係る車両用空調装置1においては、蒸発器14は、外気導入暖房モード等における空調運転の安定性を重視して、低温側ユニット30の内部に配置されている。第3実施形態においては、蒸発器14は、低温側ユニット30の内部において、蒸発器14内部の冷媒流れの下流側に相当する部位を、低温側空気導入部31を介して導入された内気Aiが通過するように配置されている。
【0145】
第3実施形態における内気流入領域Aaは、図7に示すように、熱交換部65のうち蒸発器14内部の冷媒流れの下流側に相当する部位に対して設定される。具体的には、第3実施形態に係る内気流入領域Aaは、蒸発器14の熱交換部65のうち、第2冷媒タンク62の第4貯留部70dから第1冷媒タンク61の第5貯留部70eまでの部分(即ち、第4チューブ66dにより構成される部分)に設定される。
【0146】
上述したように、低温側ユニット30の低温側空気導入部31において、内気導入口31aと外気導入口31bが隣接して配置されている。従って、第3実施形態においては、蒸発器14における内気流入領域Aaが低温側ユニット30の内部において、内気導入口31aに近い側に位置し、冷媒流れ上流側にあたる部分が外気導入口31bに近い側に位置するように、蒸発器14が配置される。
【0147】
又、低温側ユニット30内部の空気通路は、導入切替ドア31c及び仕切壁33によって、内気導入口31aから伸びる空気通路と、外気導入口31bから伸びる空気通路に区画される。
【0148】
導入切替ドア31c及び仕切壁33により2つの空気通路に区画した場合に、第3実施形態における内気流入領域Aaが内気導入口31aから伸びる空気通路の内部に位置するように、蒸発器14は低温側ユニット30の内部に配置される。
【0149】
低温側ユニット30内部における蒸発器14を上述した態様で配置することで、蒸発器14の内部における冷媒流れの下流側に対して、排熱を有する内気Aiを送風することができる。これにより、蒸発器14を流れる冷媒のうち、冷媒の乾き度が小さく液相成分が多い状態の冷媒に対して、車室Rからの内気Aiを送風することができる。つまり、熱伝達率が高い部分で内気Aiと熱交換させることができるので、車両用空調装置1は、ヒートポンプサイクル10の効率を向上させることができ、外気導入暖房モード等における空調運転の安定性を向上させることができる。
【0150】
以上説明したように、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、低温側ユニット30における蒸発器14の配置を使用環境に応じて変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0151】
そして、第3実施形態に係る車両用空調装置1において、蒸発器14は、蒸発器14内部の冷媒流れの下流側に相当する部位(内気流入領域Aa)を、低温側空気導入部31を介して導入された内気Aiが通過するように配置されている。これにより、第3実施形態に係る車両用空調装置1は、熱伝達率が高い部分の冷媒と内気Aiとを熱交換させることができるので、ヒートポンプサイクル10の効率を向上させて、外気導入暖房モード等における空調運転の安定性を向上させることができる。
【0152】
(第4実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第4実施形態について、図8を参照して説明する。第4実施形態に係る車両用空調装置1では、重要視される車両用空調装置1の状況に応じて、高温側ユニット20における凝縮器12の配置が変更されている。第4実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(ヒートポンプサイクル10、低温側ユニット30等)については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0153】
第4実施形態に係る車両用空調装置1では、外気導入冷房エコモード等の運転初期にて大能力を発揮させることを重視して、高温側ユニット20内における凝縮器12の配置が定められている。
【0154】
ここで、第4実施形態に係る高温側ユニット20内における凝縮器12の配置について説明する。上述したように、車両用空調装置1における凝縮器12として、所謂、タンクアンドチューブ型の熱交換器が採用されている。凝縮器12は、図8に示すように、第1冷媒タンク81、第2冷媒タンク82からなる一対の冷媒タンクと、複数の冷媒チューブ86を積層配置した熱交換部85を有している。
【0155】
熱交換部85は、複数の冷媒チューブ86を所定方向に間隔を空けて積層配置して構成されている。熱交換部85の構成は、上述した蒸発器14の熱交換部65と同様に構成されており、隣り合う冷媒チューブ86同士の間に形成された各空気通路には、フィン87が配置されている。
【0156】
第1冷媒タンク81は、冷媒チューブ86の積層方向に沿って伸びる金属製の箱状に形成されており、上述した蒸発器14の第1冷媒タンク61と同様に構成されている。第1冷媒タンク81の内部は、2つの隔壁84によって、第1貯留部90a、第3貯留部90c、第5貯留部90eに区画されている。
【0157】
第2冷媒タンク82は、第1冷媒タンク81と同様に、上述した蒸発器14の第2冷媒タンク62と同様に構成されている。第2冷媒タンク82の内部空間は、隔壁84によって、第2貯留部90b、第4貯留部90dに区画されている。
【0158】
第1冷媒タンク81は、複数の冷媒チューブ86の一端側に配置されており、第2冷媒タンク82は、複数の冷媒チューブ86の他端側に配置されている。第1冷媒タンク81の内部空間および第2冷媒タンク82の内部空間は、複数の冷媒チューブ86を介して連通している。
【0159】
第1冷媒タンク81の第1貯留部90aの一側面には、冷媒が流入する冷媒入口88が配置されている。第1貯留部90aには、熱交換部85を構成する複数の冷媒チューブ86の一端部が接続されており、複数の冷媒チューブ86の他端部は、第2冷媒タンク82の第2貯留部90bに接続されている。以下の説明では、複数の冷媒チューブ86のうち、第1貯留部90a及び第2貯留部90bに接続されているものを第1チューブ86aという。
【0160】
以下の説明では、複数の冷媒チューブ86のうち、第2冷媒タンク82の第2貯留部90bと、第1冷媒タンク81の第3貯留部90cに接続されているものを第2チューブ86bという。そして、複数の冷媒チューブ86のうち、第1冷媒タンク81の第3貯留部90cと、第2冷媒タンク82の第4貯留部90dに接続されているものを第3チューブ86cという。
【0161】
又、複数の冷媒チューブ86のうち、第2冷媒タンク82の第4貯留部90dと、第1冷媒タンク81の第5貯留部90eに接続されているものを第4チューブ86dという。そして、第1冷媒タンク81における第5貯留部90eの一側面には、凝縮器12の内部を流通した冷媒が流出する冷媒出口89が配置されている。
【0162】
従って、図8に示す凝縮器12では、冷媒は、冷媒入口88から冷媒出口89へ向かって、第1冷媒タンク81と第2冷媒タンク82の間を往復するように流れる。即ち、冷媒は、冷媒入口88から第1冷媒タンク81の第1貯留部90aに流入し、第1チューブ86a、第2貯留部90b、第2チューブ86b、第3貯留部70c、第3チューブ86c、第4貯留部90d、第4チューブ86d、第5貯留部90eの順に流れる。第5貯留部90eに流入した後、冷媒は、第5貯留部90eに配置された冷媒出口89から凝縮器12の外部へと流出する。
【0163】
ここで、第4実施形態に係る車両用空調装置1においては、凝縮器12は、外気導入冷房エコモード等の運転初期にて大能力を発揮させることを重視して、高温側ユニット20の内部に配置されている。第4実施形態においては、凝縮器12は、高温側ユニット20の内部において、凝縮器12内部の冷媒流れの上流側に相当する部位を、高温側空気導入部21を介して導入された内気Aiが通過するように配置されている。
【0164】
以下の説明では、高温側ユニット20の内部に導入された内気Aiが通過することにより、車両用空調装置1の空調能力を向上させることができる領域を、内気流入領域Aaという。内気流入領域Aaは、凝縮器12における熱交換部85の一部に設定される。
【0165】
第4実施形態における内気流入領域Aaは、熱交換部85のうち凝縮器12内部の冷媒流れの上流側に相当する部位に対して設定される。具体的には、第4実施形態に係る内気流入領域Aaは、凝縮器12の熱交換部85のうち、第1冷媒タンク81の第1貯留部90aから第2冷媒タンク82の第2貯留部90bまでの部分(即ち、第1チューブ86aにより構成される部分)に設定される。
【0166】
そして、上述したように、高温側ユニット20の高温側空気導入部21において、内気導入口21aと外気導入口21bが隣接して配置されている。従って、第4実施形態においては、凝縮器12における内気流入領域Aaが高温側ユニット20の内部において、内気導入口21aに近い側に位置し、冷媒流れ下流側にあたる部分が外気導入口21bに近い側に位置するように、凝縮器12が配置される。
【0167】
又、高温側空気導入部21は、外気導入冷房エコモード等において、内気導入口21a及び外気導入口21bを開放して、導入切替ドア21cが仕切壁23と共に空気通路の仕切りを構成する状態になる。即ち、この場合、高温側ユニット20内部の空気通路は、導入切替ドア21c及び仕切壁23によって、内気導入口21aから伸びる空気通路と、外気導入口21bから伸びる空気通路に区画される。
【0168】
導入切替ドア21c及び仕切壁23により2つの空気通路に区画した場合に、第4実施形態における内気流入領域Aaが内気導入口21aから伸びる空気通路の内部に位置するように、凝縮器12は高温側ユニット20の内部に配置される。
【0169】
高温側ユニット20内部における凝縮器12を上述した態様で配置することで、凝縮器12の内部における冷媒流れの上流側に対して、排熱を有する内気Aiを送風することができる。これにより、凝縮器12を流れる冷媒と、高温側ユニット20内部を流れる送風空気との温度差を大きくすることができ、送風空気と冷媒との熱交換量(即ち、凝縮器12における放熱量)を大きくすることができる。
【0170】
この結果、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、凝縮器12により、内気Aiに含まれる排熱を有効に活用して、ヒートポンプサイクル10の運転効率を向上させることができる。即ち、第4実施形態に係る車両用空調装置1は、車室Rから排出される内気Aiの排熱を有効に活用して、外気導入冷房エコモード等の運転初期にて大能力が必要な場合に対応することができる。
【0171】
以上説明したように、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、高温側ユニット20における凝縮器12の配置を変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0172】
そして、第4実施形態に係る車両用空調装置1において、凝縮器12は、高温側ユニット20において、凝縮器12内部の冷媒流れの上流側に相当する部位(内気流入領域Aa)を、高温側空気導入部21から導入された内気Aiが通過するように配置されている。これにより、第4実施形態に係る車両用空調装置1は、凝縮器12を流れる冷媒と、高温側ユニット20内部を流れる送風空気との温度差を大きくして、送風空気と冷媒との熱交換量を大きくすることができる。即ち、第4実施形態に係る車両用空調装置1は、外気導入冷房エコモード等の運転初期にて大能力を発揮させることができる。
【0173】
(第5実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第5実施形態について、図9を参照して説明する。第5実施形態に係る車両用空調装置1においては、第4実施形態とは異なる車両用空調装置1の使用状況を重要視して、高温側ユニット20における凝縮器12の配置が設定されている。第5実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(ヒートポンプサイクル10、低温側ユニット30等)については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0174】
第5実施形態に係る凝縮器12は、外気導入冷房エコモード等における空調運転の安定性を重視することを目的として、高温側ユニット20における空気通路の内部に配置される。ここで、第5実施形態に係る凝縮器12は、図9に示すように、タンクアンドチューブ型の熱交換器として構成されている。
【0175】
即ち、凝縮器12は、第1冷媒タンク81、第2冷媒タンク82からなる一対の冷媒タンクと、複数の冷媒チューブ86を積層配置した熱交換部85を有している。一対の冷媒タンク及び熱交換部85の構成については、第4実施形態と同様である。従って、第5実施形態における凝縮器12にて、冷媒入口88から冷媒出口89へ向かう冷媒の流れは第4実施形態と同様である。
【0176】
ここで、第5実施形態に係る車両用空調装置1においては、凝縮器12は、外気導入冷房エコモード等における空調運転の安定性を重視して、高温側ユニット20の内部に配置されている。第5実施形態においては、凝縮器12は、高温側ユニット20の内部において、凝縮器12内部の冷媒流れの下流側に相当する部位を、高温側空気導入部21を介して導入された内気Aiが通過するように配置されている。
【0177】
第5実施形態における内気流入領域Aaは、図9に示すように、熱交換部65のうち凝縮器12内部の冷媒流れの下流側に相当する部位に対して設定される。具体的には、第5実施形態に係る内気流入領域Aaは、凝縮器12の熱交換部85のうち、第2冷媒タンク82の第4貯留部90dから第1冷媒タンク81の第5貯留部90eまでの部分(即ち、第4チューブ86dにより構成される部分)に設定される。
【0178】
上述したように、高温側ユニット20の高温側空気導入部21において、内気導入口21aと外気導入口21bが隣接して配置されている。従って、第5実施形態においては、凝縮器12における内気流入領域Aaが高温側ユニット20の内部において、内気導入口21aに近い側に位置し、冷媒流れ上流側にあたる部分が外気導入口21bに近い側に位置するように、凝縮器12が配置される。
【0179】
又、高温側ユニット20内部の空気通路は、導入切替ドア21c及び仕切壁23によって、内気導入口21aから伸びる空気通路と、外気導入口21bから伸びる空気通路に区画される。
【0180】
導入切替ドア21c及び仕切壁23により2つの空気通路に区画した場合に、第5実施形態における内気流入領域Aaが内気導入口21aから伸びる空気通路の内部に位置するように、凝縮器12は高温側ユニット20の内部に配置される。
【0181】
高温側ユニット20内部における凝縮器12を上述した態様で配置することで、凝縮器12の内部における冷媒流れの下流側に対して、排熱を有する内気Aiを送風することができる。これにより、凝縮器12を流れる冷媒のうち、冷媒の乾き度が小さく液相成分が多い状態の冷媒に対して、車室Rからの内気Aiを送風することができる。
【0182】
つまり、熱伝達率が高い部分で内気Aiと熱交換させることができるので、車両用空調装置1は、凝縮器12における放熱量を増大させて、ヒートポンプサイクル10の効率を向上させることができる。この結果、第5実施形態に係る車両用空調装置1は、外気導入冷房エコモード等における空調運転の運転効率を向上させることができ、空調運転の安定性を向上させることができる。
【0183】
以上説明したように、第5実施形態に係る車両用空調装置1によれば、高温側ユニット20における凝縮器12の配置を使用環境に応じて変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0184】
そして、第5実施形態に係る車両用空調装置1において、凝縮器12は、凝縮器12内部の冷媒流れの下流側に相当する部位(内気流入領域Aa)を、高温側空気導入部21を介して導入された内気Aiが通過するように配置されている。これにより、第5実施形態に係る車両用空調装置1は、熱伝達率が高い部分の冷媒と内気Aiとを熱交換させることができるので、ヒートポンプサイクル10の効率を向上させて、外気導入冷房エコモード等における空調運転の安定性を向上させることができる。
【0185】
(第6実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第6実施形態について、図10を参照して説明する。第6実施形態に係る車両用空調装置1では、低温側ユニット30に収容されている蒸発器14の構成及び、低温側ユニット30内部における蒸発器14の配置が上述した実施形態と相違している。第6実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(ヒートポンプサイクル10、高温側ユニット20等)については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0186】
図10に示すように、第6実施形態に係る車両用空調装置1では、蒸発器14として、上述した第2、第3実施形態とは異なる構成の熱交換器が採用されている。従って、第6実施形態に係る蒸発器14の構成について、図10を参照して説明する。第6実施形態に係る蒸発器14は、複数の冷媒タンク(第1冷媒タンク61~第3冷媒タンク63)と、複数の冷媒チューブ66を積層配置した熱交換部65を有している。即ち、第6実施形態の蒸発器14は、上述した第2実施形態等と同様に、タンクアンドチューブ型の熱交換器である。
【0187】
第6実施形態に係る蒸発器14の熱交換部65は、重力方向(即ち、上下方向)に伸びる複数の冷媒チューブ66を水平方向に積層配置して構成されている。複数の冷媒チューブ66の間には、空気通路が形成されると共にフィン67が配置されている。
【0188】
図10に示すように、第6実施形態に係る蒸発器14の上方側には、第1冷媒タンク61及び第3冷媒タンク63が配置されている。第1冷媒タンク61は、蒸発器14の上方における一面側(例えば、正面側)に配置されており、上面部分に冷媒入口68を有している。第3冷媒タンク63は、蒸発器14の上方における他面側(例えば、背面側)に配置されており、上面部分に冷媒出口69を有している。
【0189】
そして、第6実施形態に係る蒸発器14の下方側には、第2冷媒タンク62が配置されている。第2冷媒タンク62は、蒸発器14の一面側に配置された熱交換部65を介して、第1冷媒タンク61と接続されている。又、第2冷媒タンク62は、蒸発器14の他面側に配置された熱交換部65を介して、第3冷媒タンク63と接続されている。
【0190】
従って、第6実施形態に係る蒸発器14では、冷媒は、冷媒入口68から第1冷媒タンク61内に流入すると、一面側の熱交換部65を構成する各冷媒チューブ66を介して、第2冷媒タンク62へ向かって流れる。第2冷媒タンク62内の冷媒は、蒸発器14の他面側の熱交換部65を構成する各冷媒チューブ66を介して、第3冷媒タンク63へ流れて、冷媒出口69から蒸発器14の外部へ流出する。この為、第6実施形態に係る蒸発器14では、2つの熱交換部65が一面側から他面側に向かって並んで配置されており、それぞれの熱交換部65内を流れる冷媒と、低温側ユニット30内部に導入された送風空気との熱交換が行われる。
【0191】
ここで、車両用空調装置1では、車室R内の暖房運転を行う際には、蒸発器14は吸熱器として利用される為、蒸発器14の熱交換部65を構成する各冷媒チューブ66には、外気温度より低温の冷媒が流れる。これにより、蒸発器14における熱交換部65の表面には、凝縮水、霜、氷が発生することが想定される。
【0192】
通常、蒸発器14の熱交換部65に生じた凝縮水や、霜や氷が溶けた水分は、重力の影響によって下方側へ向かって流れ、蒸発器14の下部に配置されたドレン(図示せず)から外部に排出される。
【0193】
ここで、熱交換部65に付着した凝縮水、霜、氷に由来する水分は、例えば、外気温度が0℃以下の場合には、熱交換部65表面で氷結して、熱交換部65における空気通路を閉塞する場合がある。熱交換部65における空気通路が閉塞されてしまうと、蒸発器14の熱交換性能が低下する為、車両用空調装置1の空調性能が低下する要因となる。
【0194】
この為、第6実施形態では、凝縮水等に由来する水分による蒸発器14の熱交換性能の低下を抑制する為に、高温側ユニット20内における蒸発器14の配置を定めている。
【0195】
具体的には、第6実施形態においては、熱交換部65の下方側(第2冷媒タンク62側)に、高温側空気導入部21を介して導入された内気Aiが流通する内気流入領域Aaが位置するように、蒸発器14を配置する。
【0196】
上述したように、低温側ユニット30の低温側空気導入部31において、内気導入口31aと外気導入口31bが隣接して配置されている。この為、第6実施形態においては、低温側ユニット30は、低温側空気導入部31の内気導入口31aが重力方向下方側に位置し、外気導入口31bは、内気導入口31aに対して上方側に位置するように配置される。
【0197】
このように配置された低温側ユニット30の内部において、図10に示す構成の蒸発器14が配置されることで、第6実施形態に係る蒸発器14の内気流入領域Aaは、低温側ユニット30の内部において、内気導入口31aに近い側に位置する。
【0198】
又、外気導入暖房モード等の場合、低温側ユニット30の低温側空気導入部31は、内気導入口31a及び外気導入口31bを開放して、導入切替ドア31cが仕切壁33と共に空気通路の仕切りを構成する状態になる。即ち、この場合、低温側ユニット30内部の空気通路は、導入切替ドア31c及び仕切壁33によって、内気導入口31aから伸びる空気通路と、外気導入口31bから伸びる空気通路に区画される。そして、内気導入口31aから伸びる空気通路は、外気導入口31bから伸びる空気通路の下方に位置する。
【0199】
第6実施形態に係る蒸発器14は、導入切替ドア31c及び仕切壁33により2つの空気通路に区画した場合に、内気流入領域Aaが内気導入口31aから伸びる空気通路の内部に位置するように、低温側ユニット30の内部に配置される。
【0200】
これにより、蒸発器14の熱交換部65において、凝縮水等に由来する水分の排水経路の下流側にあたる部分が、内気流入領域Aaに設定される。即ち、車両用空調装置1によれば、排水経路の下流側にあたる部分に対して、排熱を有する内気Aiを送風することができ、凝縮水等に由来する水分の再氷結を抑制して、熱交換性能の低下を防止することができる。
【0201】
以上説明したように、第6実施形態に係る車両用空調装置1によれば、上下方向に伸びる複数の冷媒チューブ66を積層配置した蒸発器14を採用した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0202】
又、第6実施形態に係る車両用空調装置1によれば、図10に示すように、蒸発器14の重力方向下流側に相当する位置(内気流入領域Aa)に対して、低温側空気導入部31を介して導入された内気Aiをあてることができる。これにより、車両用空調装置1は、蒸発器14の熱交換部65における排水経路の下流側における水分の再凍結を抑制することができる。更に、凝縮水等に由来する水分の再凍結を抑制することで、車両用空調装置1は、蒸発器14の熱交換性能の低下を抑制し、空調性能の低下を防止できる。
【0203】
(他の実施形態)
本開示は上述の実施形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0204】
(a)上述した実施形態において、ヒートポンプサイクル10として、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14、アキュムレータ15を有するアキュムレータサイクルを採用していたが、この態様に限定されるものではない。
【0205】
本開示におけるヒートポンプサイクル10は、少なくとも圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14を有していればよく、更に構成機器を追加した構成を採用することも可能である。例えば、凝縮器12と膨張弁13の間にレシーバが配置されたレシーバサイクルを採用しても良い。レシーバは、凝縮器から流出した冷媒の気液を分離して液相冷媒を下流側に流出させると共に、サイクルの余剰冷媒を貯える気液分離部である。
【0206】
(b)又、上述した実施形態において、ヒートポンプサイクル10は、1つの凝縮器12と、1つの蒸発器14を有しており、ヒートポンプサイクル10を構成する熱交換器の総数は2つであったが、この態様に限定されるものではない。例えば、ヒートポンプサイクル10を構成する熱交換器の総数を3つ以上にすることも可能である。具体的には、1つの凝縮器12、1つの蒸発器14に対して、室外熱交換器を追加してヒートポンプサイクル10を構成しても良い。
【0207】
(c)上述した実施形態においては、高温側ユニット20内部に高温側送風機22が配置され、低温側ユニット30の内部に低温側送風機32が配置されていたが、予め定められた方向に送風することができれば、送風機としての形式は限定されるものではない。例えば、高温側送風機22、低温側送風機32として、軸流ファンを採用しても良いし、遠心ファンを採用しても良い。
【0208】
(d)又、上述した実施形態では、図1等に示すように、高温側ユニット20における各種ドア(導入切替ドア21c、室内側ドア26、室外側ドア28)として、支持軸まわりに回動するドア部材によって構成しているが、この態様に限定されるものではない。同様に、低温側ユニット30における各種ドア(導入切替ドア31c、室内側ドア36、室外側ドア38)として、支持軸まわりに回動するドア部材によって構成しているが、この態様に限定されるものではない。高温側ユニット20、低温側ユニット30における各種ドアの構成は、適宜変更することができ、例えば、スライドドアを採用しても良い。
【符号の説明】
【0209】
1 車両用空調装置
10 ヒートポンプサイクル
12 凝縮器
14 蒸発器
20 高温側ユニット
21 高温側空気導入部
24 高温側送風先切替部
30 低温側ユニット
31 低温側空気導入部
34 低温側送風先切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10