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特開2024-151564無線装置間の通信方法、無線装置間の通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151564
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】無線装置間の通信方法、無線装置間の通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20241018BHJP
【FI】
H04W16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065012
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】中村 道春
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
(72)【発明者】
【氏名】沢田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】表 昌佑
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅文
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD11
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】無線装置間の通信方法において、第1無線装置が、第1信号を送信した指向性に対応した指向性で受信を行う無線リソースを特段に指定しなくとも、第1信号を送信した後の第1の時間区間内の無線リソースにおいて第1信号を送信した指向性に対応する指向性で受信を行っていると特定可能とし、第2無線装置から確実に第1無線装置にランダムアクセス信号を届けることが可能な無線装置間の通信方法を提供する。
【解決手段】少なくとも指向性を有するアンテナを介して送受信を行う第1無線装置と第2無線装置との間の無線装置間の通信方法において、第1無線装置は、第1指向性を用いて第1信号を送信し、前記第1信号の送信後、一定の時間、前記第1指向性を用いて受信を行い、第2無線装置から第2信号を受信した場合に、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた通信を、前記第1指向性を用いて前記第2無線装置と行うことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも指向性を有するアンテナを介して送受信を行う第1無線装置と第2無線装置との間の無線装置間の通信方法において、
第1無線装置は、第1指向性を用いて第1信号を送信し、前記第1信号の送信後、一定の時間、前記第1指向性を用いて受信を行い、第2無線装置から第2信号を受信した場合に、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた通信を、前記第1指向性を用いて前記第2無線装置と行う、
ことを特徴とする無線装置間の通信方法。
【請求項2】
前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的は、
第1無線装置と第2無線装置間の伝搬路における電波の伝搬時間の測定、第1無線装置との間の通信の開始の要求又は通信を開始するための情報の要求、第2無線装置に向けられた指向性により受信を行う無線リソースを設定する要求、詳細なアンテナ指向性を求めるためのプロセスの開始の要求、通信データの送信のうち、いずれか一以上の目的である、
ことを特徴とする請求項1記載の無線装置間の通信方法。
【請求項3】
前記第1無線装置が、前記第1指向性を用いて前記第1信号を送信した後に、前記第1指向性を用いて受信を行う前記一定の時間は、前記第1無線装置と前記第2無線装置との間を電波が往復するのに要する時間と、前記第2無線装置が前記第1信号を受信してから前記第2信号を送信するまでに必要とされる時間を加えた時間である、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の無線装置間の通信方法。
【請求項4】
前記第1無線装置は、複数の前記第1信号の送信機会を設定し、設定した各送信機会のそれぞれにおいて対応する前記第1指向性を用いて、前記第1信号の送信、前記一定の時間の受信、及び、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた前記通信を行い、
前記設定した各送信機会において設定される第1指向性は、前記第1無線装置において利用可能な全て又は主要な指向性を網羅する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線装置間の通信方法。
【請求項5】
前記第1無線装置は、前記設定した各送信機会において、複数の指向性に対応する複数の第1信号をそれぞれの指向性により同時に送信し、前記複数の第1信号の送信後、一定時間、前記複数の指向性を用いて受信を行い、前記第2無線装置から前記第2信号を受信した場合に、前記複数の指向性のうち、前記第2信号を受信した指向性を用いて、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた前記通信を、前記第2無線装置と行う、
ことを特徴とする請求項4に記載の無線装置間の通信方法。
【請求項6】
少なくとも指向性を有するアンテナを介して送受信を行う第1無線装置と第2無線装置との間の無線装置間の通信システムにおいて、
第1無線装置は、第1指向性を用いて第1信号を送信し、前記第1信号の送信後、一定の時間、前記第1指向性を用いて受信を行い、第2無線装置から第2信号を受信した場合に、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた通信を、前記第1指向性を用いて前記第2無線装置と行う、
ことを特徴とする無線装置間の通信システム。
【請求項7】
前記第1無線装置は、複数の前記第1信号の送信機会を設定し、設定した各送信機会のそれぞれにおいて対応する前記第1指向性を用いて、前記第1信号の送信、前記一定の時間の受信、及び、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた通信を、前記第2無線装置と行い、
前記設定した各送信機会において設定される第1指向性は、利用可能な全て又は主要な指向性を網羅する、
ことを特徴とする請求項6に記載の無線装置間の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置間の通信方法、無線装置間の通信システムに関し、特に指向性アンテナを介して無線通信を行うPCや携帯端末、IoT端末、及び、それらと接続するアクセスポイント、無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
電話機が電話線で接続されている場所にとらわれず、移動しながらでも音声通話を行うことのできるシステムとして開発されたセルラ無線通信システムは、現在、音声通話のためだけでなく、情報通信を活用した多種多様なサービスを利用するために用いられている。さらには、人間が手元の端末によりサービスを利用するだけでなく、各種センサーや産業機械の遠隔操作など産業分野での利用も広がっている。
【0003】
一方、オフィスや家庭でパーソナルコンピュータを手軽にコンピュータ間ネットワークに接続するために開発された無線LAN(Local area network)も、情報通信を活用した多種多様なサービスを利用する際に用いられている。このため、セルラ無線通信システム及び無線LANは、通信が行われる地理的場所の広がりや通信を利用可能にする契約形態に差異があるものの、情報通信を活用したサービス利用の観点では垣根のないものとなっている。
【0004】
情報通信を活用したサービスについては、当初は短い文字情報の送受信で実現するものであったが、画像や音楽データ、動画データを送受信するもの、特に近年においてより高詳細、高画質な動画データ、仮想現実環境を伝達するものへと広がってきており、通信すべきデータ量は増大し続けている。また、一度に多量の機器を接続することへの要求も高まっている。
【0005】
セルラ無線通信システム及び無線LANは、これまで、高次の変調方式を利用し、多数のアンテナ素子を使用するMIMO(Multi-Input Multi-Output)通信路等のような電波の単位周波数幅当たりに伝達できるデータ量を増大する技術の導入と、システムが利用する周波数帯域幅の増大により、通信データ量の増大に応えてきた。
【0006】
ここで、電波の単位周波数幅当たりに伝達できるデータ量は、信号の電力に応じた上限があり、安全上の理由および通信システム全体のグリーン化の要求により、電波として放射が許容されるエネルギーの絶対量に制限がかけられる場合があった。また通信を行うために消費が許容される電力に制限がかけられる中では、電波の単位周波数幅当たりに伝達できるデータ量を現状以上に増大させることは難しい。
【0007】
従って、システムが利用する周波数帯域幅の増大が必要になるが、放送、衛星による測位やセンシング、気象レーダー、警察や消防の無線、航空機や船舶用の無線、アマチュア無線等、既存の電波利用システムが集中する概ね6GHz以下の周波数でセルラ無線通信システムや無線LANが利用できる周波数帯を新たに確保するのは難しい。
【0008】
そこで、概ね10GHz~100GHzの周波数の電波を示すミリ波や、100GHzを超えるサブテラ波、1~10THzに及ぶテラヘルツ波をセルラ無線通信システムや無線LANで利用することが検討されている。3GPP(登録商標)は主に28GHz帯のミリ波を使用するセルラ無線通信標準を作成し、一部で実用化されている。IEEEでは、60GHz帯を利用する無線LAN規格802.11adや802.11ayを、300GHz帯を使用してPoint to Pointで通信を行う802.15.3d等の技術標準を作成した。これらミリ波、サブテラ波、テラヘルツ波では、一度にまとまった帯域幅が使用可能になる。例えば、IEEE802.11ay標準では、2.16GHz幅を基本として、それを4個束ねた8.7GHzの帯域幅を利用可能としており、802.15.3d標準では最大で32個束ねた69GHz幅の使用を可能にしている。この様な広い帯域幅を10GHz以下の周波数で確保することはできない。
【0009】
Friisの伝送公式によれば、電波が自由空間を伝搬する際の受信端における受信電力Prは、Pr=(λ/4πd)2・Gr・Gt・Ptで与えられる。λ、d、Gr、Gt、Ptは、それぞれ電波の波長、送受信点間の距離、受信アンテナの指向性利得、送信アンテナの指向性利得、送信電力である。波長は周波数に反比例して短くなるので、受信電力は、周波数の2乗に反比例して弱くなる。室内や路上等、自由空間でない伝搬路については、統計的に2乗から外れることがあることも知られているが、周波数の2乗に近い値で受信電力が弱くなることには変わりない。従って、高い周波数を使用する通信では、互いに送受信する一方あるいは双方で指向性利得の高いアンテナを使用して、受信電力の低下を補わなければならない。指向性利得の高いアンテナは、電波を特定の方向に集中して放射し、或いは特定の方向から到来する電波に対して電波を強く受信する一方、その他の方向に対して放射或いは受信する電波の強度が弱くなるアンテナである。
【0010】
セルラ無線通信システムの多くは、使用する電波の周波数帯について免許制を前提としており、許可を受けた事業者が与えられた周波数帯を排他的に使用して無線通信システムを構築、運用する。セルラ無線通信システムは、使用が許可された周波数帯をさらに細かく分割した個々の周波数リソースとその周波数リソースを使用する時間帯の両方を指定して無線リソースとし、一定のエリアごとに設置された無線基地局がそのエリアにおける無線リソースの使用を管理、制御する。一方、無線LANの多くは、免許を必要としない周波数帯(アンライセンスドバンド)で使用され、CSMA-CA(Carrier Sense Multiple Access Collision Avoidance)方式を採用している。端末およびアクセスポイントは通信を行おうとする無線リソースの直前でその周波数帯の電波の使用状況をモニタし、他者によって電波が使用されていないと判断したときに通信を行う。
【0011】
セルラ無線通信システムでは、無線基地局がそのエリアでの無線リソースの使用を制御すると述べたが、3GPP(登録商標)は、LTE Release14やNR Release16で、車に搭載されることを想定した端末同士が基地局の制御を受けることなく自律的に電波の使用状況をモニタし使用する無線リソースを決定して送受信を行う無線リソース制御法を盛り込んだCV2X(Cellular V2X)標準を定めた。この無線リソース制御法では、図7に示すように、端末が、セレクションウィンドウ内で無線リソースを選択して送信を行う際、それに先行するセンシングウィンドウ内で他の端末が行う通信の制御情報をモニタする。この制御情報には、それを送信した端末が次に使う無線リソースの予約情報が含まれ、それがセレクションウィンドウ内の無線リソースである場合、端末は、その無線リソースを選択して送信すると衝突する可能性が高いことを知る。従って端末は、予約情報のない無線リソースの中から送信に用いる無線リソースを選択して送信を行う。
【0012】
無線LANが採用しているCSMA-CA方式では、無線リソースの予約情報を送信することをせず、送信を行おうとする全ての端末が送信を行おうとする無線リソースの直前でその周波数帯での電波の使用状況をモニタし、空きであれば送信を行う。電波の使用状況をモニタする時間はランダムに設定され、短い時間を設定した端末が先に送信を始めれば、他の端末は電波が空きでないことを検出して送信を保留し、先行した送信と衝突することを避ける。
【0013】
無線LANにおけるCSMA-CA方式には、隠れ端末問題という問題がある。これは、例えば、図8に示す端末Cが送信を行おうとして電波の使用状況をモニタしたとき、送信中である端末Bの電波が、距離が遠いあるいは途中に障害物があるなどの理由で端末Cに受信されないとき、端末Cはその無線リソースが空きであると誤認して送信を開始し、端末Aにおいて端末Bの送信する電波と衝突する、という問題である。C-V2Xによる無線リソース制御を行う場合においても、端末Bの送信する電波が端末Cにおいて受信されなければ、端末Bが送信する無線リソース予約情報が端末Cにおいて受信されないことになるので、CSMA-CA方式のみならず、C-V2Xによる無線リソース制御を行う場合にも依然とこの問題は存在する。
【0014】
さらに隠れ端末問題は、端末が指向性アンテナを使用しているときより顕著になる。図9に示すように、端末Bが端末Aに向けた指向性で送信している電波は、端末Cとの間に障害物がなく、また距離が比較的近くとも、端末Cが、端末Bが送信を行う指向性の外にあれば、端末Cに受信されにくい。このため、端末Cが無線リソースは空きであると誤認し、端末Aに影響を与えうる指向性で送信すれば、端末Aにおいて端末Bの送信する電波と衝突する。
【0015】
セルラ無線標準では、基地局が定期的に同期信号を送信している。端末がこの同期信号を発見し、それを手がかりに基地局が送信しているシステム情報を受信する。このシステム情報には、端末が接続要求を行う際に最初に送信するランダムアクセス信号を送信するための無線リソース情報が含まれ、端末は指定された無線リソースにおいてランダムアクセス信号を送信する。基地局は、ランダムアクセス信号が送信されたのを検出するとそれに応答し、以後、標準に定められた手順に従って、端末を特定し、認証、その他の手続きを経て端末は接続状態となる。接続状態となった端末は、制御情報を受信するためのIDを基地局から与えられ、そのIDを用いて受信できる制御情報に従い基地局とデータの送受を行う。基地局から制御情報を受信していないときに端末から送信を行う必要が生じたときは、接続要求を行う際と同様なランダムアクセス信号を送信し、その後に端末が基地局にデータ送信を行うための無線リソース割り当てを要求する。データ送信を行うための無線リソースに関する制御情報を基地局から受け取れば、その無線リソースにおいて基地局にデータを送信する。
【0016】
基地局が指向性アンテナを用いる場合、指向性ごとに同期信号を送信し、指向性ごとにランダムアクセス信号を送信するための無線リソースを指定することが可能となっている端末は、最も状態よく受信された同期信号に対応して与えられた無線リソースにおいてランダムアクセス信号を送信する。基地局は、対応する指向性を持つアンテナにより指定した無線リソースで受信を行い、ランダムアクセス信号の検出を行う。
【0017】
アンライセンスドバンドを使用し、無線リソースの使用を制御する基地局がなく、CSMA-CA方式で無線リソースの空き状態を検出し送信を行う無線LANでは、送信されるパケットのヘッダーに送信元や宛先の情報が入っている。端末やアクセスポイントは、受信される全てのパケットのヘッダーを調べ、自分宛であると判断すれば、自分宛ての通信データであるとしてしかるべき処理を行う。端末やアクセスポイントが指向性アンテナを使用する場合、大まかな指向性を探索するためのSLS(Sector-level Sweep)やさらに正確に指向性を絞るためのBRP(Beam Refinement Phase)の手順が定められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】武田、他、”5GにおけるNR物理レイヤ仕様,”NTT DoCoMo テクニカルジャーナル,vol.26,no.3,pp.47-58,Nov.2018.
【非特許文献2】服部 武、藤岡 雅宣(編著)、”5G教科書-LTE/IoTから5Gまで-,”インプレス出版,2018年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ミリ波、サブテラヘルツ波、テラヘルツ波を使用した通信を行う場合、指向性アンテナを使用して伝搬ロスを補わなければならない。より高い周波数の電波を使用する場合、より利得の高いアンテナが必要になり、このため、アンテナが持つ指向性がより鋭いものとなる。基地局やアクセスポイントが指向性アンテナを使用する場合、基地局やアクセスポイントと接続状態を確立していない端末がこの基地局やアクセスポイントに対してランダムアクセス信号を送信するときに、基地局やアクセスポイントの使用するアンテナの指向性がランダムアクセス信号の送信を行う端末の方向へ向けられたものでなければ、送信されるランダムアクセス信号の検出に失敗する可能性が大きくなる。
【0020】
アンライセンスドバンドを使用する場合、他の端末による無線リソースの使用状況を考慮しなければならないので、アクセスポイントは、特定の指向性のアンテナでの受信を行う無線リソースをあらかじめ設定することができない。設定したとしても、送信を行う時点で他の端末が当該無線リソースを空きであると判断して送信を行っていると、端末は当該無線リソースを使用してランダムアクセス信号の送信をすることができない。あるいは無線リソースが空きと判断するタイミングによっては端末が送信するランダムアクセス信号と他の端末が送信する信号との間で衝突が発生する。従って、何等かの手段によって、ランダムアクセス信号の送信を行おうとする端末が、送信相手の基地局やアクセスポイントが自局に向けた指向性のアンテナによって受信が可能な無線リソースを特定しその無線リソースでランダムアクセス信号の送信を行う必要がある。
【0021】
本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、少なくとも指向性を有するアンテナを介して送受信を行う第1無線装置と第2無線装置との間の無線装置間の通信方法において、第1無線装置が、第1信号を送信した指向性に対応した指向性で受信を行う無線リソースを特段に指定しなくとも、第1信号を送信した後の第1の時間区間内の無線リソースにおいて第1信号を送信した指向性に対応する指向性で受信を行っていると特定可能とし、第2無線装置から確実に第1無線装置にランダムアクセス信号を届けることが可能な無線装置間の通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した課題を解決するために、第1発明に係る無線装置間の通信方法は、少なくとも指向性を有するアンテナを介して送受信を行う第1無線装置と第2無線装置との間の無線装置間の通信方法において、第1無線装置は、第1指向性を用いて第1信号を送信し、前記第1信号の送信後、一定の時間、前記第1指向性を用いて受信を行い、第2無線装置から第2信号を受信した場合に、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた通信を、前記第1指向性を用いて前記第2無線装置と行うことを特徴とする。
【0023】
第2発明に係る無線装置間の通信方法は、第1発明において、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的は、第1無線装置と第2無線装置間の伝搬路における電波の伝搬時間の測定、第1無線装置との間の通信の開始の要求又は通信を開始するための情報の要求、第2無線装置に向けられた指向性により受信を行う無線リソースを設定する要求、詳細なアンテナ指向性を求めるためのプロセスの開始の要求、通信データの送信のうち、いずれか一以上の目的であることを特徴とする。
【0024】
第3発明に係る無線装置間の通信方法は、第1発明又は第2発明において、前記第1無線装置が、前記第1指向性を用いて前記第1信号を送信した後に、前記第1指向性を用いて受信を行う前記一定の時間は、前記第1無線装置と前記第2無線装置との間を電波が往復するのに要する時間と、前記第2無線装置が前記第1信号を受信してから前記第2信号を送信するまでに必要とされる時間を加えた時間であることを特徴とする。
【0025】
第4発明に係る無線装置間の通信方法は、第1発明において、前記第1無線装置は、複数の前記第1信号の送信機会を設定し、設定した各送信機会のそれぞれにおいて対応する前記第1指向性を用いて、前記第1信号の送信、前記一定の時間の受信、及び、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた前記通信を行い、前記設定した各送信機会において設定される第1指向性は、前記第1無線装置において利用可能な全て又は主要な指向性を網羅することを特徴とする。
【0026】
第5発明に係る無線装置間の通信方法は、第4発明において、前記第1無線装置は、前記設定した各送信機会において、複数の指向性に対応する複数の第1信号をそれぞれの指向性により同時に送信し、前記複数の第1信号の送信後、一定時間、前記複数の指向性を用いて受信を行い、前記第2無線装置から前記第2信号を受信した場合に、前記複数の指向性のうち、前記第2信号を受信した指向性を用いて、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた前記通信を、前記第2無線装置と行うことを特徴とする。
【0027】
第6発明に係る無線装置間の通信システムは、少なくとも指向性を有するアンテナを介して送受信を行う第1無線装置と第2無線装置との間の無線装置間の通信システムにおいて、第1無線装置は、第1指向性を用いて第1信号を送信し、前記第1信号の送信後、一定の時間、前記第1指向性を用いて受信を行い、第2無線装置から第2信号を受信した場合に、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた通信を、前記第1指向性を用いて前記第2無線装置と行うことを特徴とする。
【0028】
第7発明に係る無線装置間の通信システムは、第6発明において、前記第1無線装置は、複数の前記第1信号の送信機会を設定し、設定した各送信機会のそれぞれにおいて対応する前記第1指向性を用いて、前記第1信号の送信、前記一定の時間の受信、及び、前記第2無線装置が前記第2信号を送信した目的に応じた通信を、前記第2無線装置と行い、前記設定した各送信機会において設定される第1指向性は、利用可能な全て又は主要な指向性を網羅することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
上述した構成からなる第1発明~第7発明によれば、第1無線装置が、第1信号を送信した指向性に対応した指向性で受信を行う無線リソースを特段に指定しなくとも、第1信号を送信した後の第1の時間区間内の無線リソースにおいて第1信号を送信した指向性に対応する指向性で受信を行っていると特定されるので、第2無線装置はこの無線リソースで送信を行うことにより、確実に第1無線装置にランダムアクセス信号を届けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1(a)は、本発明を適用した無線装置間の通信システムの構成図であり、図1(b)は、本発明を適用した無線装置間の通信システムの他の構成図である。
図2図2は、第1実施形態における無線装置のブロック構成図である。
図3図3は、第1実施形態における第1信号の系列を生成するシフトレジスタを説明するための図である。
図4図4は、第1実施形態における第1無線装置と第2無線装置のやりとりを示す概略図である。
図5図5は、第2実施形態における第1無線装置が第1信号の送信に用いる指向性を説明するための図である。
図6図6は、第2無線装置が2つ以上ある場合の第1無線装置と第2無線装置のやりとりを示す概略図である。
図7図7は、C-V2Xにおける無線リソース選択を説明するための図である。
図8図8は、隠れ端末問題を示す概念図である。
図9図9は、指向性アンテナを使用する際の隠れ端末問題を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を適用した無線アクセスの方法、及び装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図1(a)(b)は、本発明を適用した無線装置間の通信システムの全体構成を示す図である。図1(a)は第1無線装置1aと第2無線装置1bが1台の例を示し、図1(b)は第2無線装置1b、1cが複数台の例を示している。
この通信システムにおいて、図1(a)又は(b)に示すように、第1無線装置1aと第2無線装置1b又は1cを備えている。以下の例においては、第1無線装置1aと第2無線装置1bとが1台ずつにより構成される場合を例にとり説明するが、これに限定されるものではなく、無線装置は2又は3以上により構成する場合も含まれる。
【0033】
第1無線装置1aは、基地局や無線アクセスポイントに相当する。また、第2無線装置1bは、端末に相当する。ここで、端末とは、無線装置1aとの間で無線通信可能なあらゆる電子機器であり、スマートフォンや携帯端末、モバイル型PC、ウェアラブル端末、タブレット型端末、IoT端末等、これらを携帯する携帯者の移動によって通信位置が変化する。
【0034】
無線装置1aは、セルラ無線通信システムの無線基地局あるいは無線LANにおけるアクセスポイントであり、自身がマスターとなり、無線装置1bとの間で無線通信を行う。また無線装置1aは、他の無線装置との間でも互いに無線通信することができる。但し、この無線装置1aは、このような無線基地局やアクセスポイントで構成される場合に限定されるものではなく、無線装置1a自身がスマートフォンや携帯端末、PC(パーソナルコンピュータ)、ウェアラブル端末、タブレット型端末で構成されるものであってもよい。
【0035】
図2は、無線装置1(1a、1bを含む)のブロック構成図である。なお、この図2に示すブロック構成図は、本発明所期の効果を発現させる上で最低限必要な構成要素を示しており、無線基地局やアクセスポイントとして動作するためのその他の構成要素は図示していない。
【0036】
このような通信システムの構成において、本実施形態1の無線装置間の通信方法について説明する。
【0037】
第1無線装置1aは、第1信号を第1指向性により送信し、第1信号の送信に引き続く第1の時間区間内の無線リソースにおいて、第2無線装置1bからの信号を第1指向性により受信する。第1無線装置1aは、第1信号を送信するのに先立ち、当該周波数の電波の使用状況をモニタし、空きであることを確認した場合に第1信号を送信することにすることができる。また、第1無線装置1aは、第1信号を送信する無線リソース、および、受信を行う第1の時間区間内の無線リソース、の予約情報を含む信号を、第1信号の送信に先立って送信してもよい。第2無線装置1bからの信号は以下のいずれかである。(1)第1無線装置1aと第2無線装置1b間の伝搬路における電波の伝搬時間を測定する信号、(2)第1無線装置1aとの間の通信の開始を要求する信号、(3)第1無線装置1aとの間の通信を開始するために必要な情報を要求する信号、(4)第2無線装置1bが第1無線装置1aに向けて通信データと制御信号の一方又は両方の送信をするため、第2無線装置1bに向けられた指向性のアンテナで受信を行う無線リソースを設定することを要求する信号、(5)詳細なアンテナ指向性を求めるためのプロセスの開始を要求する信号、(6)第2無線装置1bから第1無線装置1aに送る通信データ。
【0038】
指向性ごとに識別可能な複数の第1信号が同一の無線リソース上で多重されて送信されてもよい。この場合、第1無線装置1aは、第1信号の送信に引き続く第1の時間区間の無線リソースにおいて、送信した複数の第1信号に対応する複数の指向性で第2無線装置1bからの信号を受信する。
【0039】
第1無線装置1aは、第1信号を、定期的に、あるいは、定められた時間間隔が経過するごとに無線リソースの空き状態を検出し、空き状態であることを検出したときに送信を行うことができる。あるいは、定められた時間間隔が経過するごとに、無線リソース予約情報を送信し、予約した無線リソースにおいて第1信号を送信することもできる。
【0040】
<実施形態1 構成>
図2は、本発明を実施するための無線装置のブロック構成図である。
第1実施形態における無線装置1は、図2に示すように、送受アンテナ10と、送受信制御部12と、受信フレーム解析部13と、送信フレーム生成部14と、上位レイヤ15と、無線プロトコル制御部16と、を有する。
【0041】
<実施形態1 構成の説明>
送受アンテナ10は、指向性を有し、信号の送受信を行う指向性アンテナである。THz帯では、十分な指向性アンテナを使わないと信号強度が得られないので、指向性アンテナが用いられる。また、無線装置が端末の場合、無線アクセスポイントのビームが自身を向いているときに応答するのが基本である。5Gではビームごとに同期信号を送っている。
【0042】
無線部11は、無線信号の増幅、周波数変換、必要な周波数成分の抽出、変復調等を行って、受信した無線信号から受信フレームを取り出す、あるいは送信フレームを送信する無線信号にする。また、複数のアンテナ素子による送受信号の信号処理により送受アンテナ7の指向性を制御する場合、その信号処理を行う。
【0043】
送受信制御部12は、使用する電波の周波数や帯域幅、無線部1を動作させて送受信を行うタイミング、送信電力や受信機の増幅度、送受アンテナ10が持つべき指向性の制御を行う。図2には示していないが、送受アンテナ10の指向性を無線部1の信号処理ではなくアンテナ部で実現する場合は、アンテナ部に対して指向性の制御を行う。
【0044】
受信フレーム解析部13は、受信フレーム中から制御信号や自分宛の通信データを取り出す。
【0045】
送信フレーム生成部14は、送信する通信データおよび送信すべき送信制御信号から、無線部1に送る送信フレームを生成する。通信データは上位レイヤ3においてアプリケーションが使用する。
【0046】
上位レイヤ15は、通信データをアプリケーションで使用する。
【0047】
無線プロトコル制御部16は、いつ、どの無線リソースで、どんな無線フレームを送信するか決定し、送信フレーム生成部14や無線部1に指示を送る。例えば、第1無線装置は、ある設定した時間間隔で定期的に第1信号を送信する。第1信号に相当する送信フレームの作成を送信フレーム生成部14に指示し、生成した無線フレームが所定の無線リソースで所定の送信電力により所定の指向性によって送信されるよう、送受信制御部12を通して無線部1を制御する。
【0048】
第1信号は、例えば、図3に示すシフトレジスタによって発生できる疑似ランダムシーケンスによる2値の位相変調(Binary Phase Shift Keying:BPSK)波とすることができる。
【0049】
図3に示す7段のシフトレジスタは、原子多項式g(x)=x7+x3+1によるm系列発生器であり、127bit周期で一意に定まる1と0の列を発生する。シフトレジスタの初期値を定めれば(例えば1000000)、発生する1と0の列は特定される。特定された127bitの1あるいは0に対応して送信する高周波の無線信号の位相を0°あるいは180°に変化させる。変化の周期は利用可能な周波数帯域幅の逆数に等しいものとする。あるいは、利用可能な周波数帯域幅の逆数よりも若干大きな周期とし、送信信号(この場合第1信号)のスペクトルが利用可能な周波数帯域幅の外に広がらないようにパルスシェーピングが行われても良い。
【0050】
図4は、第1実施形態における第1無線装置と第2無線装置のやりとりの概略図である。以下、図4を用いて詳細を説明する。
【0051】
図4に示すように、第1信号を送信した第1無線装置1aは、第1信号の送信後一定の時間、第1信号を送信した指向性と同一の指向性を設定して受信を行い、他の無線装置(以後、第2無線装置1b)から第2信号が送られてくるかを検出する。第2信号は、第1信号と同様にあらかじめ特定できる1と0の列によってBPSK変調された信号であっても良い。1と0の列は、例えば、3GPP(登録商標)TS38.211で定められているフィジカルランダムアクセス(Physical random access)のシーケンスに従ってもよい。ここでは、64種類の839bitあるいは139bitのシーケンスの生成方法が定義されている。複数のシーケンスが定義されていることによって、複数の第2無線装置が異なるシーケンスによる第2信号を送信した場合、それらをそれぞれ識別することが可能になる。第2無線装置は、第1信号を最も良く受信した指向性を用いて第2信号を送信すればよい。
【0052】
第2信号は、いくつかの目的で使用される。一つには、第1無線装置と第2無線装置の間の伝搬路における電波の伝搬時間を測定するために送信される。この場合、第2無線装置は、第1無線装置が発する第1信号を受信した後定められた時間において第2信号を送信する。第1無線装置は、第1信号を発してから第2無線装置から第2信号を受信するまでの時間を計測し、定められた時間を差し引いて二等分すれば、第1無線装置と第2無線装置の間の伝搬路における電波の伝搬時間を計算することができる。これを第2無線装置に通知する。
【0053】
他の目的としては、第2無線装置が、第1無線装置との間の通信の開始を要求する信号として用いられる。この場合、第1無線装置は、第2無線装置と認証等を行うプロセスを開始する。あるいは、第1無線装置との通信で利用可能な周波数帯域や変復調方式の情報、第1無線装置が属するネットワークのIDなど、第1無線装置と通信を行うために必要な情報を要求することに用いられる。この場合、第1無線装置は第2無線装置に対してそれらの情報を提供する。
【0054】
またその他には、第2無線装置が第1無線装置に向けて通信データと制御信号の一方あるいは両方の送信をするため、第2無線装置に向けられた指向性のアンテナで受信を行う無線リソースを設定することを要求する信号として用いられる。この場合、第1無線装置は、第2無線装置に向けられた指向性のアンテナで受信を行う無線リソースを設定し、その無線リソース情報を第2無線装置に通知するとともに、当該無線リソースで第1信号の送信や第2信号の受信に用いた指向性と同じ指向性を用いて第2無線装置からの通信データあるいは制御情報の受信を行う。当該無線リソースが、第1信号を送信した無線リソース、第2信号が送信された無線リソース、無線装置のID等その他の情報の一つある複数から導かれるようにあらかじめ定めておけば、第1無線装置は当該リソースについて第2無線装置に通知を行う必要はない。
【0055】
さらには、詳細なアンテナ指向性を求めるためのプロセスの開始を要求する信号として用いることもできる。この場合、第1無線装置は、詳細なアンテナ指向性を定めるためのパイロット信号の送信を開始する。開始に先立って、開始することを了承する情報や、パイロット信号が送信される無線リソースの情報等を第2無線装置に通知してもよい。第2無線装置に第1無線装置に送るべき通信データがあり、その通信データが十分短く、第1無線装置が第1信号を送信した指向性と同一の指向性を設定して第2無線装置からの第2信号の受信を行っていると想定できる時間内に受信されうると想定できるならば、第2信号は当該通信データを含めるものであってもよい。第2信号が、これらいずれの目的であっても、第1無線装置は、第1信号の送信や第2信号の受信に用いた指向性と同じ指向性を用いて第2無線装置との間で制御情報や通信データの送受を行う。第2信号の目的ごとに異なるシーケンスを用いるように定めておけば、第1無線装置は、第2信号を識別した段階で適切な動作をすることができる。
【0056】
第1無線装置が、第1信号を送信した後、第2無線装置が送信する第2信号の検出を行うため、第1信号を送信した指向性と同一の指向性を設定して受信を行う所定の時間は、第1無線装置と第2無線装置の間を電波が往復するのに要する時間に、第2無線装置が第1信号を受信してから第2信号を送信するまでに必要とされる時間を加えたものに設定するとよい。例えば、第1無線装置と第2無線装置の間の距離として0.1mから30mを想定し、第2無線装置が第1信号を受信してから第2信号を送信するまでに必要とされる時間が10nsecとするならば、電波の往復に必要な時間は0.6nsecから200nsecの範囲であるので、第1信号の送信後、10.6~210nsecの範囲に選べばよいことになる。
【0057】
第2信号の長さは、分布する複数の第2無線装置のそれぞれと第1無線装置間の距離の差に相当する距離の2倍の距離を電波が伝搬する時間と同程度あるいはそれ以下に選ぶことができる。この場合、第1無線装置との距離が近い第2無線装置による第2信号と第1
無線装置との距離が遠い第2無線装置による第2信号が時間的に分離され衝突することなく第1無線装置に受信されるので、第1無線装置はそれぞれに応答することができる。例えば、二つの第2無線装置が、第1無線装置から1.5mと3mの距離にある場合、距離の差の2倍である3mの距離を電波が伝搬する時間は10nsecである。第2信号の長さが10nsecであれば、第1無線装置から1.5mの距離にある第2無線装置は、第1無線装置が第1信号の送信を終えてから5nsec後に第1信号の受信を終えることになり、これと同時に長さが10nsecである第2信号を送信すれば、それが第1無線装置に受信されるのは、第1無線装置が第1信号の送信を終えてから10nsec後から20nsec後となる。一方、第1無線装置から3mの距離にある第2無線装置が第2信号の送信を開始するのは第1無線装置が第1信号の送信を終えてから10nsec後であり、これが第1無線装置に受信されるのは第1無線装置が第1信号の送信を終えてから20nsec後から30nsec後の間となる。つまり、これらは、衝突することなく第1無線装置に受信される。
【0058】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態における第1無線装置が第1信号の送信に用いる指向性を示す概略図である。
第2実施形態における第1無線装置は、第1実施形態における第1無線装置の動作に加え、図5に示すように、第1信号を送信する際に使用する指向性、従って、第1信号の送信後に第2無線装置から第2信号を受信するための指向性およびその後に第2信号の目的に沿って行われる第2無線装置との信号の送受に用いる指向性を選択する。
【0059】
望ましくは、第1信号の送信の機会ごとに異なる指向性を選択し、複数の第1信号の送信機会の後、第1無線装置で利用可能な全てのあるいは主要な指向性が網羅されることである。第2無線装置は、様々な指向性の範囲内に存在しうるが、これにより、いずれかの第1信号の送信の機会において送信される第1信号を受信し、第2信号を送信することができる。
【0060】
<第3実施形態>
第3実施形態における第1無線装置は、第1信号の送信に先立ち、一定時間第1信号を送信しようとする周波数帯のモニタを行い、当該無線リソースが空きであると判断される場合に第1信号を送信する。あるいは、C-V2Xと同様な無線リソースの予約情報の送信が採用されているシステムでは、一定時間の受信を行ってそこで得られる予約情報により無線リソースの空き状況を推定し、空きとみなされる無線リソースにおいて第1信号を送信することもできるし、空きとみなされる無線リソースにおいて、第1信号の送信を予定する無線リソースおよび第2信号の受信が想定される無線リソースについて予約情報を送信することもできる。第1信号を送信した後の動作、第1信号を送信する際の指向性の選択については第1・第2実施形態の第1無線装置と同様とすることができる。
【0061】
第1無線装置における第1信号の送信機会は、前回に第1信号を送信したタイミングによらず、一定時間経過ごとに無線リソースが空きと判断できるできるだけ早いタイミングとすることもできるし、前回に第1信号を送信したタイミングから一定時間経過後で無線リソースが空きと判断できるタイミングとすることができる。
【0062】
<第4実施形態>
第4実施形態における第1無線装置は、複数の異なる指向性に対応するそれぞれの第1信号を同じ無線リソースにおいて多重して送信する。この場合、第1信号とするシーケンスには異なるシーケンス、望ましくは直交するか相互相関の低いシーケンスを使用する。例えば、4つの第1信号を多重する場合、原始多項式g(x)=x5+x3+1に従って長さが31のm系列を、4bit長のWalsh-Hadamard符号を用いて拡散すれば、直交する4つのシーケンスが得られる。
【0063】
第4実施形態における第1無線装置は、多重した第1信号のそれぞれに対応する指向性を用いて受信を行い、第2無線装置が送信する第2信号の検出を行う。検出されれば、検出した際に使用していた指向性を使用して、第2信号の目的に応じた通信を第2無線装置と行う。この手順は第1実施形態における第1無線装置に従うことができる。また、本実施形態の第1無線装置は、1回の第1信号の送信機会に、複数の指向性を選択しうることを除けば、第2実施形態と第1無線装置と同様な処理を行うことができる。
【0064】
さらに、第4実施形態における第1無線装置が無線リソースの空き状態を検出して、空き状態である無線リソースにおいて第1信号を送信する場合は、複数の指向性を用いてそれぞれで無線リソースの空き状態を検出し、空きと判定された無線リソースの検出に対応する指向性の中から所定の数の指向性を選択して対応する第1信号を多重することができる。この際、対応する指向性を用いて無線リソースの予約情報を送信してもよい。
上記実施形態については、基本的に第1無線通信装置と第2無線通信装置とが1対1の通信を行う例について説明したが、図6に示すように、第2無線通信装置が2つ以上ある場合、第2信号の長さを、例えば、10nsecとしておけば、第2無線装置1bからの第2信号と、第2無線通信装置からの第2信号が分離して受信される。すなわち、短時間で第2信号を送りきってしまうように構成しても良い。というのは、図6の下段に示すように、第2無線通信装置からの第2信号の時間が長いと、第1無線装置1aの受信時に重なってしまうからである。
【0065】
<発明の効果が最も発揮される利用例>
昨今の通信の高速化・大容量化の要求に応えるため、ミリ波以上の高い周波数の使用が必至であるが、指向性が鋭い指向性アンテナを使用して十分な信号強度を得る必要がある。しかしながら、特に基地局やアクセスポイントと通信状態が確立されていない端末が基地局やアクセスポイントに通信状態の確立を求める信号を送信するとき、基地局やアクセスポイントの適用する指向性が自局に向いているときに送信を行わなければ、送信した信号が基地局やアクセスポイントに正しく受信されない可能性が高い。本発明によれば、基地局やアクセスポイントが受信時に適用する指向性が自局に向いたときに信号を送信することを可能とするので、鋭い指向性のアンテナを用いて高速・大容量通信を行うミリ波以上の周波数を使用する通信での利用価値が高い。
【符号の説明】
【0066】
1 無線装置
1a 第1無線装置
1b 第2無線装置
1c 第2無線装置
10 送受アンテナ
11 無線部
12 送受信制御部
13 受信フレーム解析部
14 送信フレーム生成部
15 上位レイヤ
16 無線プロトコル制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9