(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151574
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】風力発電装置、及び風力発電方法
(51)【国際特許分類】
F03D 7/06 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F03D7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065032
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 繁朗
(72)【発明者】
【氏名】松原 初穂
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB04
3H178BB08
3H178BB31
3H178CC02
3H178DD12Z
3H178DD54X
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】低風速下における発電効率が改善され、且つ突風に伴う破損を防止することができる風力発電装置を提供する。
【解決手段】回転翼11に風を受けて回転するロータ12と、ロータ12の回転力で発電する発電機30と、ロータ12の周速が所定の安定周速よりも低い場合に、回転翼11に送風してロータ12の回転を加速させる送風機40と、を備える風力発電装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼に風を受けて回転するロータと、
前記ロータの回転力で発電する発電機と、
前記ロータの周速が所定の安定周速以下の場合に、前記回転翼に送風して前記ロータの回転を加速させる送風機と、を備える風力発電装置。
【請求項2】
前記ロータから前記発電機へ伝達される前記回転力の断接を制御するギアボックスを備え、
前記ギアボックスは、前記ロータの周速が前記安定周速以下、且つ自然風の風速が所定の発電可能風速以下の期間において、前記ロータから前記発電機への前記回転力の伝達を遮断する、請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記送風機は、自然風の風速が前記発電可能風速よりも高い期間において送風を保留する、請求項2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
晴天時に前記送風機に電力を供給可能な太陽光発電機と、
雨天時に集めた雨水を落下させて前記送風機を回転駆動可能な雨水駆動装置と、を備える請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項5】
温風の上昇気流で前記送風機を回転駆動可能な温風駆動装置、を備える請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項6】
回転翼に風を受けて回転するロータの回転力で発電機を駆動する風力発電方法であって、
前記ロータの周速が所定の安定周速以下の場合に、送風機で前記回転翼に送風して前記ロータの回転を加速させる、風力発電方法。
【請求項7】
前記ロータの周速が前記安定周速以下、且つ自然風の風速が所定の発電可能風速以下の期間において、前記ロータから前記発電機への前記回転力の伝達を遮断する、請求項6に記載の風力発電方法。
【請求項8】
自然風の風速が前記発電可能風速よりも高い期間において、前記送風機による送風を保留する、請求項7に記載の風力発電方法。
【請求項9】
晴天時に太陽光発電機から前記送風機に電力を供給し、
雨天時に集めた雨水を落下させて前記送風機を回転駆動する、請求項6に記載の風力発電方法。
【請求項10】
温風の上昇気流で前記送風機を回転駆動する、請求項6に記載の風力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置、及び風力発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置は、回転翼に風を受けて回転するロータの回転エネルギーを電力に変換するものであり、再生可能エネルギーを利用した発電装置の一つとして知られている。このような風力発電装置は、風速及び風向が安定しない自然風に対し高効率な発電を行うことができるよう様々な技術開発が成されている。例えば、特許文献1には、回転翼と発電機との間に変速機を介在させ、伝達される回転力を風速に応じて変速することにより当該発電機に適した負荷トルクに調整している。
【0003】
また、特許文献2には、全方向の風向に対応した縦軸風力発電装置であって、縦長揚力型ブレードの上下両端部において回転軸を向く内向き傾斜部が形成された回転翼を採用することにより、低風速下においてもロータが回転する従来技術が開示されている。当該縦長揚力型ブレードの場合、平均風速が2m/sに達した場合に発電可能になるものの、このような低風速条件では必ずしも発電効率が高いとは言えない。そこで、当該従来技術では、ロータに設けられた歯車にクラッチを介してモータの動力を伝達できるように構成し、安定した周速に達するまでロータを回転駆動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-162652号公報
【特許文献2】特開2017-020374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自然風は風速が時々刻々変化するため、モータの動力をロータに伝達しているタイミングで突風が生じる可能性がある。このような場合、ロータには、歯車を介してモータから入力される駆動力よりも大きな回転力が突風を受けた回転翼から入力されることになるため、突風の強さによっては接続部が破損してしまう虞が生じる。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低風速下における発電効率が改善され、且つ突風に伴う破損を防止することができる風力発電装置、及び風力発電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、回転翼に風を受けて回転するロータと、前記ロータの回転力で発電する発電機と、前記ロータの周速が所定の安定周速以下の場合に、前記回転翼に送風して前記ロータの回転を加速させる送風機と、を備える風力発電装置である。
【0008】
本発明の第1の態様に係る風力発電装置によれば、ロータの加速中に突風が生じた場合であっても、送風による加速が突風に伴う回転入力に抗うことにはならず、ロータには無理な応力が印加されない。従って、本発明に係る風力発電装置によれば、低風速下における発電効率が改善され、且つ突風に伴う破損を防止することができる。
【0009】
また、本発明の第1の態様に係る風力発電装置によれば、風速に拘らずロータの周速に基づいて送風機によるロータの加速を制御しているため、メンテナンス等の例外を除き、回転翼を常時回転状態に維持し、エネルギー効率を向上させることができる。
【0010】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記ロータから前記発電機へ伝達される前記回転力の断接を制御するギアボックスを備え、前記ギアボックスは、前記ロータの周速が前記安定周速以下、且つ自然風の風速が所定の発電可能風速以下の期間において、前記ロータから前記発電機への前記回転力の伝達を遮断する、風力発電装置である。
【0011】
本発明の第2の態様に係る風力発電装置によれば、無風状態に近い状況においても、発電機から発電負荷を受けることなくロータを速やかに安定周速まで加速することができる。
【0012】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第2の態様において、前記送風機は、自然風の風速が前記発電可能風速よりも高い期間において送風を保留する、風力発電装置である。
【0013】
本発明の第3の態様に係る風力発電装置によれば、ロータの周速が安定周速よりも低い状況であっても、送風機で電力が消費されることなく最小限のエネルギー消費で回転翼を常時回転状態に維持することができる。
【0014】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第1の態様において、晴天時に前記送風機に電力を供給可能な太陽光発電機と、雨天時に集めた雨水を落下させて前記送風機を回転駆動可能な雨水駆動装置と、を備える風力発電装置である。
【0015】
本発明の第4の態様に係る風力発電装置によれば、晴天時であっても雨天時であっても送風機を駆動することができ、低風速下でも天候に左右されることなく効率的な発電が可能になる。
【0016】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、上記した本発明の第1の態様において、温風の上昇気流で前記送風機を回転駆動可能な温風駆動装置、を備える風力発電装置である。
【0017】
本発明の第5の態様に係る風力発電装置によれば、熱源を利用して暖気した空気の気流により、電力を使用せずに送風機を駆動することができる。
【0018】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、回転翼に風を受けて回転するロータの回転力で発電機を駆動する風力発電方法であって、前記ロータの周速が所定の安定周速以下の場合に、送風機で前記回転翼に送風して前記ロータの回転を加速させる、風力発電方法である。
【0019】
本発明の第6の態様に係る風力発電方法によれば、ロータの加速中に突風が生じた場合であっても、送風による加速が突風に伴う回転入力に抗うことにはならず、ロータには無理な応力が印加されない。従って、本発明に係る風力発電方法によれば、低風速下における発電効率が改善され、且つ突風に伴う破損を防止することができる。
【0020】
また、本発明の第6の態様に係る風力発電方法によれば、風速に拘らずロータの周速に基づいて送風機によるロータの加速を制御しているため、メンテナンス等の例外を除き、回転翼を常時回転状態に維持し、エネルギー効率を向上させることができる。
【0021】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、上記した本発明の第6の態様において、前記ロータの周速が前記安定周速以下、且つ自然風の風速が所定の発電可能風速以下の期間において、前記ロータから前記発電機への前記回転力の伝達を遮断する、風力発電方法である。
【0022】
本発明の第7の態様に係る風力発電方法によれば、無風状態に近い状況においても、発電機から発電負荷を受けることなくロータを速やかに安定周速まで加速することができる。
【0023】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第7の態様において、自然風の風速が前記発電可能風速よりも高い期間において、前記送風機による送風を保留する、風力発電方法である。
【0024】
本発明の第8の態様に係る風力発電方法によれば、ロータの周速が安定周速よりも低い状況であっても、送風機で電力が消費されることなく最小限のエネルギー消費で回転翼を常時回転状態に維持することができる。
【0025】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、上記した本発明の第6の態様において、晴天時に太陽光発電機から前記送風機に電力を供給し、雨天時に集めた雨水を落下させて前記送風機を回転駆動する、風力発電方法である。
【0026】
本発明の第9の態様に係る風力発電方法によれば、晴天時であっても雨天時であっても送風機を駆動することができ、低風速下でも天候に左右されることなく効率的な発電が可能になる。
【0027】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、上記した本発明の第6の態様において、温風の上昇気流で前記送風機を回転駆動する、風力発電方法。
【0028】
本発明の第10の態様に係る風力発電方法によれば、熱源を利用して暖気した空気の気流により、電力を使用せずに送風機を駆動することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、低風速下における発電効率が改善され、且つ突風に伴う破損を防止することができる風力発電装置、及び風力発電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係る風力発電装置の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図3】第2実施形態に係る制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】第3実施形態に係る送風機の概略構成図である。
【
図5】第4実施形態に係る送風機の概略構成図である。
【
図6】第1変形例に係るサーキュレータの配置を示す概略上面図である。
【
図7】第2変形例に係るサーキュレータを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略などを行なっており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る風力発電装置1の概略構成図である。風力発電装置1は、風向を選ばすに発電することができる垂直軸タイプの発電装置であり、主要構成として、風車部10、ギアボックス20、発電機30、送風機40、及び制御装置50を備える。
【0033】
風車部10は、回転翼11、ロータ12、及び接続部材13を含み、回転軸としてのロータ12に接続部材13を介して複数の回転翼11が接続されている。回転翼11は、例えば縦長揚力型ブレードからなり、上下両端部がロータ12の方向に傾斜する形状に形成されている。ロータ12は、回転翼11に風を受けることにより矢印R1で示すように回転する。
【0034】
ギアボックス20は、フライホイール21、アクチュエータ22、クラッチディスク23、及び出力ギア24を含む。フライホイール21は、ロータ12と共に回転する円盤状の部材である。アクチュエータ22は、フライホイール21を矢印Vで示す回転軸方向に変位させることにより、フライホイール21とクラッチディスク23との断接を制御する。クラッチディスク23は、フライホイール21と圧着されることによりロータ12の回転力が伝達され、矢印R2で示すように回転する。出力ギア24は、クラッチディスク23との間でヘリカルギアとして連動する歯車であり、ロータ12の回転速度を発電機30が効率的に発電可能な回転速度に変速して出力する。すなわち、ギアボックス20は、クラッチ機能と変速機能とを備えている。
【0035】
発電機30は、公知のジェネレータであり、矢印R3で示すように回転する出力ギア24と回転軸を共有することにより、伝達される回転力を電力に変換する。尚、発電機30は、発電した電力で図示しない蓄電用バッテリに充電することができ、又は当該電力を所望の負荷装置に供給してもよい。
【0036】
送風機40は、上記した回転翼11に送風することで回転翼11の回転を加速させることが可能なサーキュレータシステムである。送風機40は、本実施形態においては、3台のサーキュレータ41が鉛直方向に並べて配置され、初期起動用バッテリ42から供給される電力で駆動する。また、サーキュレータ41は、回転翼11の始動時における加速を補助する場合には、初期起動用バッテリ42に替えて商用電源により駆動されてもよい。
【0037】
尚、初期起動用バッテリ42は、充電量が低下した場合には発電状態の発電機30から充電されてもよい。また、初期起動用バッテリ42は、太陽光発電機、家庭用燃料電池、又は川や農業用水を利用した水力発電設備等から供給される電力で充電されてもよい。
【0038】
制御装置50は、例えば公知のマイコン制御回路からなり、風力発電装置1の全体を統括制御する。例えば、制御装置50は、自然風の風速を測定する風速計Sw、ロータ12の周速を測定する周速センサSr、及び発電機30の回転速度を測定する回転速度センサSgのそれぞれから測定値を取得することにより、風力発電装置1の管理に必要な情報を収集する。また、制御装置50は、アクチュエータ22を制御することによりギアボックス20におけるクラッチの断接を制御し、ロータ12の周速に応じて変速ギアのギア比を制御する。更に、制御装置50は、必要に応じてサーキュレータ41を回転駆動させることで、詳細を後述するように回転翼11の回転を加速させる制御を行う。
【0039】
次に、風力発電装置1による風力発電方法について説明する。
図2は、第1実施形態に係る制御装置50の制御手順を示すフローチャートである。制御装置50は、風力発電装置1の運用開始時、及び風力発電装置1がメンテナンス等により稼働中断後に運用を再開する場合に、
図2に示す制御手順を開始する。尚、当該制御手順の開始時においては、ギアボックス20のクラッチが接続状態であり、サーキュレータ41が停止状態であるものとする。
【0040】
風力発電装置1が所定の場所に設置され運用が開始されると、制御装置50は、周速センサSrを介してロータ12の周速を測定し(ステップS1)、ロータ12の当該周速が5m/sよりも早いか否かを判定する(ステップS2)。ここで、本実施形態のロータ12は、所定の安定周速よりも高い周速で回転する状態において発電負荷による失速が抑制されて発電効率が向上する。安定周速は、風力発電装置1の設計段階又は製造段階における事前の実験等で確認されるものとし、ここでは5m/sであるとしている。
【0041】
風力発電装置1の運用開始時における自然風の風速が十分高い場合、ロータ12の周速が安定周速よりも高くなり得る。そのため、ロータ12の周速が安定周速よりも高いと判定された場合(ステップS2でYes)、制御装置50は、ギアボックス20のクラッチをONとしたまま(ステップS3)、且つサーキュレータ41を停止した初期状態のまま(ステップS4)、発電機30において発電を開始する。
【0042】
その後、制御装置50は、ロータ12が安定周速よりも高い期間において、そのまま発電を継続する(ステップS1~S4)。
【0043】
これに対し、運用開始時又は発電期間中にロータ12の周速が安定周速以下と判定された場合(ステップS2でNo)、制御装置50は、風速計Swを介して自然風の平均風速を測定する(ステップS5)。平均風速は、例えば10秒間の風速を平均することにより算出される。
【0044】
そして、制御装置50は、平均風速が2m/sよりも高いか否かを判定する(ステップS6)。ここで、ロータ12は、平均風速が所定の発電可能風速に達した場合に発電可能となる回転力が生じる。発電可能風速は、風力発電装置1の設計段階又は製造段階における事前の実験等で確認されるものとし、ここでは2m/sであるとしている。
【0045】
平均風速が2m/sよりも高いと判定された場合(ステップS6でYes)、制御装置50は、ギアボックス20のクラッチをONとしたまま発電機30における発電を許可する。ただし、制御装置50は、より高効率な発電が可能となるよう、サーキュレータ41を駆動させることにより回転翼11に送風する(ステップS8)。これによりロータ12は、回転翼11と共に回転が加速される。そして、制御装置50は、ロータ12の周速が安定周速よりも高くなった場合に(ステップS2でYes)、効率的な発電状態に達したとしてサーキュレータ41を停止する(ステップS4)。
【0046】
一方、運用開始時又は発電期間中において、ロータ12の周速が安定周速よりも低く(ステップS2でNo)、且つ平均風速が2m/s以下と判定された場合(ステップS6でNo)、制御装置50は、アクチュエータ22を介してギアボックス20のクラッチをOFFに切り替える(ステップS7)。これにより、ロータ12は、ギアボックス20から受ける負荷から切り離されて回転速度の加速が容易になる。そして、風力発電装置1は、サーキュレータ41により回転翼11の回転が加速され(ステップS8)、ロータ12の周速が安定周速より高くなると(ステップS2でYes)、クラッチをONに切り替え(ステップS3)、サーキュレータ41を停止することで(ステップS4)、上記と同様に効率的な発電状態とすることができる。
【0047】
以上のように、風力発電装置1は、ロータ12の周速が所定の安定周速よりも低い場合に、送風機40により回転翼11に送風してロータ12の回転を加速させている。このため、ロータ12の加速中に突風が生じた場合であっても、送風による加速が突風に伴う回転入力に抗うことにはならず、ロータ12には無理な応力が印加されない。従って、本発明に係る風力発電装置1によれば、低風速下における発電効率が改善され、且つ突風に伴う破損を防止することができる。
【0048】
また、一般的に風力発電装置は、風車部分のフリクションやジェネレータにおけるコギングトルクが生じることで、無風状態で停止した風車の再始動には回転を維持するよりも大きなエネルギーが必要となる。そのため、間欠的な自然風が生じる状況において、無風状態でロータ12の回転が停止し、発電可能風速でロータ12を駆動させる制御を繰り返す場合には、長期的な運用においてエネルギー効率が低下する。そこで、本発明に係る風力発電装置1は、風速に拘らずロータ12の周速に基づいて送風機40によるロータ12の加速を制御しているため、メンテナンス等の例外を除き、回転翼11を常時回転状態に維持し、エネルギー効率を向上させることができる。
【0049】
また、風力発電装置1は、ロータ12の周速が所定の安定周速よりも低く、且つ自然風の風速が所定の発電可能風速よりも低い期間において、ロータ12から発電機30への回転力の伝達を遮断し、送風機40によりロータ12の回転を加速させている。これにより、風力発電装置1は、無風状態に近い状況においても、発電機30から発電負荷を受けることなくロータ12を速やかに安定周速まで加速することができる。
【0050】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る風力発電装置1は、上記した第1実施形態の風力発電装置1における制御手順の一部が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
図3は、第2実施形態に係る制御装置50の制御手順を示すフローチャートである。第2実施形態の制御手順では、
図2のステップS6でYesの場合の動作のみが第1実施形態と異なる。より具体的には、第2実施形態の制御装置50は、平均風速が2m/sよりも高いと判定された場合(ステップS6でYes)、クラッチをONのままとし(ステップS3)、サーキュレータ41の駆動も保留することで(ステップS4)、ロータ12の周速が安定周速よりも低い状況であっても発電可能風速よりも高い風速の自然風でロータ12の回転を維持する。
【0052】
この場合、風力発電装置1は、ロータ12が安定周速で回転している訳ではないため発電効率が最適であるとは言えないものの、サーキュレータ41で電力が消費されないため、最小限のエネルギー消費で回転翼11を常時回転状態に維持することができる。
【0053】
<第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る風力発電装置1は、上記した第1実施形態の風力発電装置1における送風機40の構成が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
図4は、第3実施形態に係る送風機40の概略構成図である。第3実施形態に係る送風機40は、サーキュレータ41を駆動するための構成として、晴天時に送風機40に電力を供給可能な太陽光発電機43と、雨天時に集めた雨水を落下させて送風機40を回転駆動可能な雨水駆動装置44と、を備える。
【0055】
より具体的には、送風機40は、太陽光発電機43で発電した電力を直接、又は初期起動用バッテリ42を介して間接的にサーキュレータ41に送電することにより、ロータ12の周速が所定の安定周速よりも低い期間に回転翼11に送風できるよう構成されている。また、雨水駆動装置44は、例えば建物や設備の屋根等に設置された雨樋により雨水を集め、任意のサーキュレータ41を駆動する場合に雨水を落下させることにより回転翼11に送風できるよう構成されている。これにより、本実施形態に係る風力発電装置1によれば、晴天時であっても雨天時であっても送風機40を駆動することができる。
【0056】
尚、風力発電装置1は、送風機40に太陽光発電機43又は雨水駆動装置44のいずれか一方のみを備える場合であっても、少なくとも上記した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
<第4実施形態>
続いて、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る風力発電装置1は、上記した第1実施形態の風力発電装置1における送風機40の構成が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
図5は、第4実施形態に係る送風機40の3パターンの概略構成図である。第3実施形態に係る送風機40は、サーキュレータ41を駆動するための構成として、温風の上昇気流で送風機40を回転駆動可能な温風駆動装置、を備える。
【0059】
より具体的には、第4実施形態に係る送風機40は、例えば図示しない集光ミラーや他の用途で使用されているガス給湯器等の熱源を利用して温風を生成し、鉛直方向に並ぶ複数のサーキュレータ41を囲むように設けられた温風流路45の下方から供給することにより、温風の上昇気流でサーキュレータ41を駆動できるよう構成されている。尚、サーキュレータ41には、
図4で示すよう羽根車を形成してもよい。
【0060】
第4実施形態に係る風力発電装置1によれば、ロータの周速が安定周速よりも低い状況であっても、送風機で電力が消費されることなく最小限のエネルギー消費で回転翼を常時回転状態に維持することができる。
【0061】
以上で本実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば上記の実施形態では
図1に示すように送風機40において3台のサーキュレータ41が鉛直方向に並べて配置される構成を例示したが、サーキュレータ41の数や配置は任意に変更することができる。
図6は、第1変形例に係るサーキュレータ41の配置を示す概略上面図である。
図6に見られるように、複数のサーキュレータ41は、回転翼11に対してそれぞれ異なる方向から送風できるように配置してもよい。
【0062】
また、
図7は、第2変形例に係るサーキュレータ41を示す概略構成図である。第2変形例に係る送風機40は、公知の家庭用扇風機のように、内蔵されたサーキュレータ41で吸引した空気を縦長O型の枠体に形成されたスリットから吹き出すように送風する機構を採用している。このように、送風機40による送風形態は、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 風力発電装置
10 風車部
11 回転翼
12 ロータ
20 ギアボックス
30 発電機
40 送風機
41 サーキュレータ
50 制御装置