▶ 株式会社アイ.エス.テイの特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151577
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ポリイミドチューブ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065037
(22)【出願日】2023-04-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】391059399
【氏名又は名称】株式会社アイ.エス.テイ
(72)【発明者】
【氏名】吉本 晃正
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA23
2H033AA24
2H033AA25
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB08
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、定着ベルト等に好適に使用できる熱伝導性に優れ、ジャムが発生した際の用紙の引き抜きによる破れに強い定着ベルトを提供することである。
【解決手段】本発明に係るポリイミドチューブは、ポリイミド樹脂を含んでなり、前記ポリイミド樹脂中に無機粒子を含み、前記ポリイミドチューブの熱伝導率が1.00W/mK以上であり、前記熱伝導率の長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上であり、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000kgf2/mm2以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂を含んでなるポリイミドチューブにおいて、前記ポリイミド樹脂中に無機粒子を含み、前記ポリイミドチューブの熱伝導率が1.00W/mK以上であり、前記熱伝導率の長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上であり、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上であることを特徴とするポリイミドチューブ。
【請求項2】
前記ポリイミドチューブの長手方向の引張弾性率が700kgf/mm2以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドチューブ。
【請求項3】
前記無機粒子がカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブのいずれかから選択される1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリイミドチューブ。
【請求項4】
請求項1に記載のポリイミドチューブを基層に用いたことを特徴とする定着ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置等に搭載される定着ベルトなどに好適に使用できるポリイミドチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、記録紙等の記録媒体に形成された未定着トナー像が定着装置によって定着される。この方法は、裏側にヒーターが設置された定着ベルトとプレスローラーの間に、定着ベルト側表面に感熱インクが仮着された転写紙を送込み、感熱インクを転写紙に溶融定着させ、併せて押圧により定着を強固にする方法である。
【0003】
定着ベルトの熱伝導性を改良して、定着性を向上させるとともに、電源投入後の待ち時間の短縮、消費電力の低減、定着速度の高速化等を達成させるために、定着ベルトの基材層に熱伝導性に優れたフィラー(高熱伝導性フィラー)を含有させる方法が知られている。
【0004】
このような問題を解決するために、過去に「耐熱性樹脂を基材とする樹脂製管状物であって、熱伝導率が60W/mkを超える充填剤が、1~25体積部配合されていることを特徴とする樹脂製管状物」が提案されている(例えば、特開2006-330405号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画像形成装置内で用紙詰まり(いわゆるジャム)が生じた場合には、使用者は定着装置を取り外して、用紙搬送路からジャムしている用紙を引き抜くことにより、ジャムを解除する必要がある。ただ、用紙を引き抜く際に無理に引き抜こうとすると定着部材などに負荷がかかり、ベルト端部が破れてしまう問題があり、熱伝導性を維持しながら、ジャムが発生した際の破れに強い定着ベルト等に使用できるポリイミドチューブが求められている。
【0007】
本発明の課題は、定着ベルト等に好適に使用できる熱伝導性に優れ、ジャムが発生した際の用紙の引き抜きによる破れに強いポリイミドチューブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリイミドチューブは、ポリイミド樹脂を含んでなるポリイミドチューブにおいて、前記ポリイミド樹脂中に無機粒子を含み、前記ポリイミドチューブの熱伝導率が1.00W/mK以上であり、前記熱伝導率の長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上であり、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上である。
【0009】
また、前記ポリイミドチューブの長手方向の引張弾性率が700kgf/mm2以上である。
【0010】
前記無機粒子がカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブのいずれかから選択される1つである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリイミドチューブを用いることで、熱伝導性に優れ、ジャムが発生した際の用紙の引き抜きによる破れにくい定着ベルトなどに使用できるポリイミドチューブを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係るポリイミドチューブは、ポリイミド樹脂を含んでなるポリイミドチューブにおいて、前記ポリイミド樹脂中に無機粒子を含み、前記ポリイミドチューブの熱伝導率が1.00W/mK以上であり、前記熱伝導率の長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上であり、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上である。また、本発明のポリイミドチューブは画像形成装置に備えられる定着ベルトの基層として好適に使用することができる。本発明でいう長手方向はチューブにおける周方向に対して垂直方向のことを示す。
【0013】
本実施の形態に係るポリイミドチューブは、上記の物性を有することにより、熱伝導性が高く、ジャムが発生した際の用紙の引き抜きによる破れが起こりにくくすることができる。また、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率により長手方向の熱伝導率が高くなり、定着ベルト等で使用される場合には用紙などが通ることによる起こるベルト端部の過昇温なども抑制することができる。
その理由は以下の通り推察される。
【0014】
本発明の実施の形態に係るポリイミドチューブは、無機粒子を含むことにより、熱伝導率が1.00W/mK以上であり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上となるように長手方向に無機粒子が配向されることで長手方向の熱伝導率が高くなることで用紙が通ることによるベルト間に生じる長手方向の温度ムラが抑えられることで用紙が通らない定着ベルト端部の過昇温を抑えることができる。
【0015】
また、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上であることでジャムが発生した際の無理な用紙の引き抜きなどで発生する破れを抑制できる。ジャムが発生した際に無理に用紙を引き抜こうとする場合、長手方向に負荷がかかることで定着ベルト端部が変形され、定着ベルト端部から破れが発生すると思われ、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上で定着ベルトの端部の変形や破れを抑制されると思われる。また、破断試験力とは、JIS P8113に準じて最大傾きにおける破断時の試験力である。
【0016】
また、本発明の実施の形態に係るポリイミドチューブは、長手方向の引張弾性率が700kgf/mm2以上であることが好ましく、更に好ましくは710kgf/mm2以上である。
【0017】
次に、本実施の形態で用いられるポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミド酸(ポリアミック酸) のイミド化物が挙げられる。ポリイミド樹脂として具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との等モル量を溶媒中で重合反応させてポリアミド酸の溶液として得て、そのポリアミド酸をイミド化して得られたものが挙げられる。
【0018】
テトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1.05-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1.05-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9-ビス[4-(3,4’-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1-シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物が挙げられる。なお、これらのテトラカルボン酸二無水物を2種以上混合して使用しても何ら差し支えない。これらのテトラカルボン酸二無水物の中でも、特に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)が好ましい。
【0019】
ジアミン化合物としては具体的には、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)1.05,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)1.05,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0020】
中でも、ポリイミド樹脂としては、耐久性、熱伝導性、及び、屈曲耐久性などの観点から、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンとからなるポリイミド樹脂(BPDA-PPD)、又は、3,3’,4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとからなるポリイミド樹脂(BPDA-ODA)、又は、ピロメリット酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとからなるポリイミド樹脂(PMDA-ODA)が好ましく挙げられ、これらのポリイミド樹脂を組み合わせても良い。
【0021】
なお、上記のポリイミド樹脂を得るためのテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解する有機極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらのジアミンの中でも、特に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。なお、これらの有機極性溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。また、この有機極性溶媒には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が混合されてもよい。
【0022】
前記無機粒子がカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブのいずれかから選択される1つである。前記無機粒子がカーボンナノファイバーやカーボンナノチューブであることで、周方向と長手方向の熱伝導率が制御することができるため好ましい。
本発明の強度や熱伝導率を損なわない程度に他の熱伝導粒子などを加えてもよい。
【0023】
本発明のポリイミドチューブは、シームレスの管状層であって、主に、ポリイミド樹脂および無機粒子から形成される。本発明の実施の形態に係るポリイミドチューブにおいて、チューブの厚みは、機械的特性等の観点から30μm以上100μm以下であることが好ましく、製造しやすさや定着ベルト等で使用する際に必要とされる可撓性を考慮すると50μm以上80μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
次に、本発明のポリイミドチューブを用いた定着ベルトの製造方法について詳述する。本発明のポリイミドチューブを用いた定着ベルトは主に、ポリアミド酸溶液調製工程、基材層成形工程(本発明のポリイミドチューブ)、プライマー層形成工程、離型層成形工程、焼成工程および脱型工程を経て製造される。
【0025】
(1)ポリアミド酸溶液調製工程
ポリアミド酸溶液調製工程では、以下の通りに調製されるポリイミド前駆体溶液に上述の無機粒子が添加されてポリアミド酸溶液が得られる。なお、ポリアミド酸溶液への前記無機粒子の添加方法は特に限定されず、ポリアミド酸溶液に無機粒子を直接添加する方法はもちろん、ポリアミド酸溶液調製中に無機粒子を添加する方法であってもよい。
【0026】
なお、上記のポリアミド酸溶液を調製し得る有機極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらのジアミンの中でも、特に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。なお、これらの有機極性溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。また、この有機極性溶媒には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が混合されてもよい。
【0027】
本実施の形態では、ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを用いると共にテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を用いることが好ましく、ジアミンとしてパラフェニレンジアミンを用いると共にテトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることが特に好ましい。これらのモノマーから得られるポリイミド樹脂は機械的特性に優れ強靭であり、定着ベルトの温度が上昇しても熱可塑性樹脂のように軟化、あるいは溶融することがなく、優れた耐熱性や機械的特性を有するからである。また、前記ジアミンとテトラカルボン酸からなるポリアミド酸溶液を組み合わせることで屈曲性などの機械的特性を有するポリイミド樹脂となるため、好適に使用できる。
【0028】
また、必要であれば、本発明の本質を損なわない範囲内で、このポリアミド酸溶液にポリアミドイミドやポリエーテルスルホンなどの樹脂が添加されてもかまわない。
【0029】
また、ポリアミド酸溶液には、本発明の性質を損なわない範囲内で、分散剤、固体潤滑剤、沈降防止剤、レベリング剤、表面調節剤、水分吸収剤、ゲル化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、皮張り防止剤、界面活性剤、帯電防止剤、消泡剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐剤、増粘剤などの公知の添加剤が添加されてもよい。さらに、このポリアミド酸溶液には、化学量論以上の脱水剤およびイミド化触媒が添加されてもよい。
【0030】
また、ポリアミド酸溶液は、使用に際して予めろ過、脱泡などの処理が行われるのが好ましい。
【0031】
(2)基材層(ポリイミドチューブ)成形工程
本発明の管状物は、芯体の外側に、前記芯体の外径と所定の間隙で位置するスリットヘッドを備えた装置を用い、前記スリットヘッドから前記芯体の外表面に対して、外側から 被膜前駆体溶液を所定の吐出速度で制御しながら吐出し、前記芯体を移動させながら前記芯体の外側表面に前記被膜前駆体溶液を所定の膜厚でキャスト成形し、前記キャスト被膜を少なくとも管状物として強度を保持できる状態まで前記芯体に保持し、前記芯体と被膜とを分離して得られる管状物である。
別の方法として芯体外表面に前駆体溶液を塗布後、ダイスを速度100mm/s以上で芯体外表面を走行させることで無機粒子を長手方向に配向させることができる。
【0032】
(3)プライマー層形成工程
プライマー層形成工程では、フッ素樹脂を含む分散質や水溶性耐熱樹脂などを含むプライマー液に、基材層が形成された芯体をディッピングすることによって、基材層の外周面にプライマー液が均一に塗布される。プライマー層は、基材層と離型層を接着する役目を担う層であって、フッ素樹脂や、アクリル樹脂等の接着性樹脂、水溶性のポリアミドイミド樹脂や水溶性のポリイミド樹脂等の水溶性耐熱樹脂等から構成されている。そして、そのプライマー液付きの基材層(芯体付)が加熱される。なお、このときの加熱温度は、溶媒が揮発するが先のポリイミド前駆体のイミド化が進行しない程度の温度、例えば320℃以下の範囲内の温度であることが好ましい。
【0033】
(4)離型層成形工程
離型層成形工程では、フッ素樹脂ディスパーション液が塗布された後、その塗膜が乾燥させられて、プライマー層上にフッ素樹脂ディスパーション液の塗膜が形成される。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が挙げられ、これらは単体で利用されてもよいし、混合して利用されてもよい。
【0034】
(5)焼成工程
焼成工程では、離型層成形工程で得られたものが焼成処理されて、定着ベルトが得られる。このときの焼成温度は300℃以上450℃以下の範囲内の温度であることが好ましい。また、処理時間は30分以上2時間以下の範囲内であるのが好ましい。基材層のイミド化の完結と、離型層のフッ素樹脂の焼成とが同時に行われ、定着ベルトの製造時間の短縮化や熱効率の向上を実現することができるのみならず、各層の接着力を高めることもできるからである。
【0035】
(6)脱型工程
脱型工程では、芯体から定着ベルトが抜き取られる。
【0036】
<定着ベルトの特徴>
一般的な定着ベルトを用いた画像成形装置では、定着ベルトはトナーを紙などの記録媒体に溶融定着させて用いられる。そのため、定着ベルト内側に設けられるヒーターによる定着ベルトが加熱され、紙などの記録媒体が通過することで記録媒体に熱が奪われるため、通過部分と非通過部分に温度差が生まれ、非通過部分が過昇温になりやすいのを定着ベルト長手方向に無機粒子が配向することで、長手方向への熱伝導率が向上することで均一に温度を保たれ、過昇温を抑えることができる。また、無機粒子が長手方向に配向することで、ジャムが発生した際に無理な引き抜きによる長手方向に負荷がかかることで定着ベルト端部が変形による破れを抑えることもできる。
【0037】
本実施の形態の定着ベルトは基材層と離型層の間に弾性層を設けても良い。
【0038】
<実施例および比較例>
以下、実施例および比較例を示して、本実施の形態に係る定着ベルトをより詳しく説明する。なお、これらの実施例および比較例によって本願発明が限定されることはない。
【実施例0039】
1.定着ベルトの作製
先ず、表面に離型処理した外径18mmおよび長さ500mmの金型を用意した。
【0040】
次に、ポリアミド酸溶液(組成:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)/パラフェニレンジアミン(PPD):ピロメリット酸二無水物(PMDA)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)=97.5:2.5の比率、固形分18.8質量部)中に無機粒子としてカーボンナノチューブ(昭和電工社製VGCF-H)を、ポリアミド酸溶液の固形分に対して17.0体積部になるように添加し、カーボンナノチューブが均一になるまでそのポリアミド酸溶液を攪拌して、粘度900ポイズのポリアミド酸溶液を得た。
【0041】
次いで、ポリアミド酸溶液を艦型の外径と所定の間隙で位置するスリットヘッドを備えた装置を用い、前記スリットヘッドから前記金型の外表面に対して、外側からポリアミド酸溶液を所定の吐出速度で制御しながら吐出し、前記芯体を100mm/sの速度で移動させながら金型の外表面にポリアミド酸溶液を塗布した後、乾燥工程としてその金型を120℃のオーブンに入れ、30分間乾燥後、200℃の温度まで20分間で昇温させ、同温度で20分間保持し、常温まで冷却して基材層を作製した。
【0042】
続いて、プライマー液を基材層表面に塗布して、150℃で10分間乾燥してプライマー層を作製した。
【0043】
その後、PFAディスパージョンを乾燥後のプライマー層上にコーティングした。そして、常温で30分乾燥させた後、段階的に350℃まで昇温させて、350℃で30分間焼成して目的とする基材層の厚みが60μmの定着ベルトを得た。
【0044】
2.物性評価
(1)基材層の熱伝導率の測定
JIS R2616を参考にして、定着ベルト基材層のみを2cm×2cm片に切り取り、基材層の一方の面に熱伝導グリスを介してトランジスタを設け、その反対の面に熱伝導グリスを介してヒートシンク(アルミ製)を設け、トランジスタの温度が60℃になるまで電流をかけて昇温させ、3分間60℃で基材層を加熱し、トランジスタ表面の温度Aとヒートシンクを設けた基材層表面の温度Bを熱電対を用いて測定した。その際の消費電力を測定し、各表面の温度と消費電力を用いて、下記の式から熱抵抗を算出した。
熱抵抗=(トランジスタ表面の温度A-基材層表面の温度B)/消費電力
上記算出した熱抵抗を用いて、下記の式から熱伝導率を算出した。
熱伝導率=基材層の膜厚/(トランジスタの断面積×熱抵抗)
基材層の熱伝導率は1.10W/mKであった。
次に、長手方向と周方向の熱伝導率をホットプレート上に、断熱材で覆った、幅15mm×厚み5mm×長さ60mm×アルミ棒を乗せ、その上にポリイミド層のみのフィルムを1.5cm×1.5cmの正方形に切り取り、厚さが5mmになるまで長手方向と周方向がフィルムの厚みとなるように重ね、断熱材で覆わせたポリイミドフィルムを載せて、アルミ板の上・下と、重ねたフィルム上・下の温度を熱電対で測定した。
また、フィルム上部には冷却用のファンを取り付け、ホットプレートの設定温度は180℃で測定を行った。
測定した結果から、下記の式を用いて熱伝導率を算出した。
λf=((λa×ΔTa/La)×(Lf/ΔTf)
λf:フィルム熱伝導率、λa:アルミ棒熱伝導率、ΔTf:フィルム上下温度差、ΔTa:アルミ棒上下温度差、Lf:フィルム厚み、La:アルミ棒長さ
測定を行った結果、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05であることが確認され、無機粒子が長手方向に配向していることが確認された。
【0045】
(2)引張弾性率及び破断試験力の測定
定着ベルトを切り開き長手方向にJIS-3号ダンベル(JIS K6301)で打ち抜き、試料を作製する。そのサンプルを島津製作所製オートグラフAGS-50Aを用いてチャック間距離30mm、引張り速度50mm/minで試験し、JIS P8113に準じて最大傾きの引張弾性率と破断時の試験力を測定した。その結果、引張弾性率は982kgf/mm2であり、破断試験力は7.2kgfであり、引張弾性率と破断試験力の積は7070.4kgf2/mm2であることが確認された。また、ジャムを繰り返し発生させ、無理に引き抜いても破れにくいことが確認された。
【実施例0046】
次に、無機粒子としてカーボンナノチューブ(昭和電工社製VGCF-H)を、ポリアミック酸溶液の固形分に対して21.0体積部になるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で定着ベルトを得た。
【0047】
得られた定着ベルトの熱伝導率は1.45W/mKであり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05であり、引張弾性率は976kgf/mm2であり、破断試験力は6.6kgfであり、引張弾性率と破断試験力の積は6441.6kgf2/mm2であることが確認された。また、ジャムを繰り返し発生させ、無理に引き抜いても破れにくいことが確認された。
【実施例0048】
次に、ポリアミド酸溶液(組成:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)/パラフェニレンジアミン(PPD):ピロメリット酸二無水物(PMDA)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)=80:20の比率、(固形分17.0質量部)中に無機粒子としてカーボンナノチューブ(昭和電工社製VGCF-H)を、ポリアミック酸溶液の固形分に対して26.0体積部になるように添加し、カーボンナノチューブが均一になるまでそのポリアミド酸溶液を攪拌して、粘度900ポイズのポリアミド酸溶液を得て、基材の厚みを70μmにした以外は実施例1と同様の方法で定着ベルトを得た。
【0049】
得られた定着ベルトの熱伝導率は1.85W/mKであり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.06であり、引張弾性率は932kgf/mm2であり、破断試験力は5.6kgfであり、引張弾性率と破断試験力の積は5219.2kgf2/mm2であることが確認された。また、ジャムを繰り返し発生させ、無理に引き抜いても破れにくいことが確認された。
【実施例0050】
次に、無機粒子としてカーボンナノチューブ(昭和電工社製VGCF-H)を、ポリアミック酸溶液の固形分に対して30.0体積部になるように添加した以外は実施例3と同様の方法で定着ベルトを得た。
【0051】
得られた定着ベルトの熱伝導率は2.20W/mKであり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.07であり、引張弾性率は923kgf/mm2であり、破断試験力は5.4kgfであり、引張弾性率と破断試験力の積は4984.2kgf2/mm2であることが確認された。また、ジャムを繰り返し発生させ、無理に引き抜いても破れにくいことが確認された。
【0052】
(比較例1)
次に、ポリアミド酸溶液(組成:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)/パラフェニレンジアミン(PPD):ピロメリット酸二無水物(PMDA)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)=80:20の比率、(固形分18.8質量部)中に無機粒子として窒化ホウ素(三井化学社製MBN-010T)を、ポリアミック酸溶液の固形分に対して40.0体積部になるように添加し、窒化ホウ素が均一になるまでそのポリアミド酸溶液を攪拌して、粘度900ポイズのポリアミド酸溶液を得た以外は実施例1と同様の方法で定着ベルトを得た。
【0053】
得られた定着ベルトの熱伝導率は1.05W/mKであり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.00であり、引張弾性率は915kgf/mm2であり、破断試験力は4.0であり、引張弾性率と破断試験力の積は3660.0kgf2/mm2であることが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂を含んでなるポリイミドチューブにおいて、前記ポリイミド樹脂中にカーボンナノチューブを含み、前記ポリイミドチューブの膜厚方向の熱伝導率が1.00W/mK以上であり、前記熱伝導率の長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上であり、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上であることを特徴とするポリイミドチューブ。
【請求項2】
前記ポリイミドチューブの長手方向の引張弾性率が700kgf/mm2以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドチューブ。
【請求項3】
請求項1に記載のポリイミドチューブを基層に用いたことを特徴とする定着ベルト。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置等に搭載される定着ベルトなどに好適に使用できるポリイミドチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、記録紙等の記録媒体に形成された未定着トナー像が定着装置によって定着される。この方法は、裏側にヒーターが設置された定着ベルトとプレスローラーの間に、定着ベルト側表面に感熱インクが仮着された転写紙を送込み、感熱インクを転写紙に溶融定着させ、併せて押圧により定着を強固にする方法である。
【0003】
定着ベルトの熱伝導性を改良して、定着性を向上させるとともに、電源投入後の待ち時間の短縮、消費電力の低減、定着速度の高速化等を達成させるために、定着ベルトの基材層に熱伝導性に優れたフィラー(高熱伝導性フィラー)を含有させる方法が知られている。
【0004】
このような問題を解決するために、過去に「耐熱性樹脂を基材とする樹脂製管状物であって、熱伝導率が60W/mkを超える充填剤が、1~25体積部配合されていることを特徴とする樹脂製管状物」が提案されている(例えば、特開2006-330405号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画像形成装置内で用紙詰まり(いわゆるジャム)が生じた場合には、使用者は定着装置を取り外して、用紙搬送路からジャムしている用紙を引き抜くことにより、ジャムを解除する必要がある。ただ、用紙を引き抜く際に無理に引き抜こうとすると定着部材などに負荷がかかり、ベルト端部が破れてしまう問題があり、熱伝導性を維持しながら、ジャムが発生した際の破れに強い定着ベルト等に使用できるポリイミドチューブが求められている。
【0007】
本発明の課題は、定着ベルト等に好適に使用できる熱伝導性に優れ、ジャムが発生した際の用紙の引き抜きによる破れに強いポリイミドチューブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリイミドチューブは、ポリイミド樹脂を含んでなるポリイミドチューブにおいて、前記ポリイミド樹脂中にカーボンナノチューブを含み、前記ポリイミドチューブの膜厚方向の熱伝導率が1.00W/mK以上であり、前記熱伝導率の長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上であり、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上である。
【0009】
また、前記ポリイミドチューブの長手方向の引張弾性率が700kgf/mm2以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリイミドチューブを用いることで、熱伝導性に優れ、ジャムが発生した際の用紙の引き抜きによる破れにくい定着ベルトなどに使用できるポリイミドチューブを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るポリイミドチューブは、ポリイミド樹脂を含んでなるポリイミドチューブにおいて、前記ポリイミド樹脂中にカーボンナノチューブを含み、前記ポリイミドチューブの膜厚方向の熱伝導率が1.00W/mK以上であり、前記熱伝導率の長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上であり、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上である。また、本発明のポリイミドチューブは画像形成装置に備えられる定着ベルトの基層として好適に使用することができる。本発明でいう長手方向はチューブにおける周方向に対して垂直方向のことを示す。
【0012】
本実施の形態に係るポリイミドチューブは、上記の物性を有することにより、熱伝導性が高く、ジャムが発生した際の用紙の引き抜きによる破れが起こりにくくすることができる。また、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率により長手方向の熱伝導率が高くなり、定着ベルト等で使用される場合には用紙などが通ることによる起こるベルト端部の過昇温なども抑制することができる。
その理由は以下の通り推察される。
【0013】
本発明の実施の形態に係るポリイミドチューブは、カーボンナノチューブを含むことにより、膜厚方向の熱伝導率が1.00W/mK以上であり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05以上となるように長手方向にカーボンナノチューブが配向されることで長手方向の熱伝導率が高くなることで用紙が通ることによるベルト間に生じる長手方向の温度ムラが抑えられることで用紙が通らない定着ベルト端部の過昇温を抑えることができる。
【0014】
また、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上であることでジャムが発生した際の無理な用紙の引き抜きなどで発生する破れを抑制できる。ジャムが発生した際に無理に用紙を引き抜こうとする場合、長手方向に負荷がかかることで定着ベルト端部が変形され、定着ベルト端部から破れが発生すると思われ、長手方向の引張弾性率と引張試験における破断試験力の積が4000.0kgf2/mm2以上で定着ベルトの端部の変形や破れを抑制されると思われる。また、破断試験力とは、JIS P8113に準じて最大傾きにおける破断時の試験力である。
【0015】
また、本発明の実施の形態に係るポリイミドチューブは、長手方向の引張弾性率が700kgf/mm2以上であることが好ましく、更に好ましくは710kgf/mm2以上である。
【0016】
次に、本実施の形態で用いられるポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミド酸(ポリアミック酸) のイミド化物が挙げられる。ポリイミド樹脂として具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との等モル量を溶媒中で重合反応させてポリアミド酸の溶液として得て、そのポリアミド酸をイミド化して得られたものが挙げられる。
【0017】
テトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1.05-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1.05-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9-ビス[4-(3,4’-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1-シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物が挙げられる。なお、これらのテトラカルボン酸二無水物を2種以上混合して使用しても何ら差し支えない。これらのテトラカルボン酸二無水物の中でも、特に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)が好ましい。
【0018】
ジアミン化合物としては具体的には、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)1.05,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)1.05,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0019】
中でも、ポリイミド樹脂としては、耐久性、熱伝導性、及び、屈曲耐久性などの観点から、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンとからなるポリイミド樹脂(BPDA-PPD)、又は、3,3’,4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとからなるポリイミド樹脂(BPDA-ODA)、又は、ピロメリット酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとからなるポリイミド樹脂(PMDA-ODA)が好ましく挙げられ、これらのポリイミド樹脂を組み合わせても良い。
【0020】
なお、上記のポリイミド樹脂を得るためのテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解する有機極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらのジアミンの中でも、特に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。なお、これらの有機極性溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。また、この有機極性溶媒には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が混合されてもよい。
【0021】
本発明の強度や熱伝導率を損なわない程度に他の熱伝導粒子などを加えてもよい。
【0022】
本発明のポリイミドチューブは、シームレスの管状層であって、主に、ポリイミド樹脂およびカーボンナノチューブから形成される。本発明の実施の形態に係るポリイミドチューブにおいて、チューブの厚みは、機械的特性等の観点から30μm以上100μm以下であることが好ましく、製造しやすさや定着ベルト等で使用する際に必要とされる可撓性を考慮すると50μm以上80μm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
次に、本発明のポリイミドチューブを用いた定着ベルトの製造方法について詳述する。本発明のポリイミドチューブを用いた定着ベルトは主に、ポリアミド酸溶液調製工程、基材層成形工程(本発明のポリイミドチューブ)、プライマー層形成工程、離型層成形工程、焼成工程および脱型工程を経て製造される。
【0024】
(1)ポリアミド酸溶液調製工程
ポリアミド酸溶液調製工程では、以下の通りに調製されるポリイミド前駆体溶液に上述のカーボンナノチューブが添加されてポリアミド酸溶液が得られる。なお、ポリアミド酸溶液への前記カーボンナノチューブの添加方法は特に限定されず、ポリアミド酸溶液にカーボンナノチューブを直接添加する方法はもちろん、ポリアミド酸溶液調製中にカーボンナノチューブを添加する方法であってもよい。
【0025】
なお、上記のポリアミド酸溶液を調製し得る有機極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらのジアミンの中でも、特に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。なお、これらの有機極性溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。また、この有機極性溶媒には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が混合されてもよい。
【0026】
本実施の形態では、ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを用いると共にテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を用いることが好ましく、ジアミンとしてパラフェニレンジアミンを用いると共にテトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることが特に好ましい。これらのモノマーから得られるポリイミド樹脂は機械的特性に優れ強靭であり、定着ベルトの温度が上昇しても熱可塑性樹脂のように軟化、あるいは溶融することがなく、優れた耐熱性や機械的特性を有するからである。また、前記ジアミンとテトラカルボン酸からなるポリアミド酸溶液を組み合わせることで屈曲性などの機械的特性を有するポリイミド樹脂となるため、好適に使用できる。
【0027】
また、必要であれば、本発明の本質を損なわない範囲内で、このポリアミド酸溶液にポリアミドイミドやポリエーテルスルホンなどの樹脂が添加されてもかまわない。
【0028】
また、ポリアミド酸溶液には、本発明の性質を損なわない範囲内で、分散剤、固体潤滑剤、沈降防止剤、レベリング剤、表面調節剤、水分吸収剤、ゲル化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、皮張り防止剤、界面活性剤、帯電防止剤、消泡剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐剤、増粘剤などの公知の添加剤が添加されてもよい。さらに、このポリアミド酸溶液には、化学量論以上の脱水剤およびイミド化触媒が添加されてもよい。
【0029】
また、ポリアミド酸溶液は、使用に際して予めろ過、脱泡などの処理が行われるのが好ましい。
【0030】
(2)基材層(ポリイミドチューブ)成形工程
本発明の管状物は、芯体の外側に、前記芯体の外径と所定の間隙で位置するスリットヘッドを備えた装置を用い、前記スリットヘッドから前記芯体の外表面に対して、外側から 被膜前駆体溶液を所定の吐出速度で制御しながら吐出し、前記芯体を移動させながら前記芯体の外側表面に前記被膜前駆体溶液を所定の膜厚でキャスト成形し、前記キャスト被膜を少なくとも管状物として強度を保持できる状態まで前記芯体に保持し、前記芯体と被膜とを分離して得られる管状物である。
別の方法として芯体外表面に前駆体溶液を塗布後、ダイスを速度100mm/s以上で芯体外表面を走行させることでカーボンナノチューブを長手方向に配向させることができる。
【0031】
(3)プライマー層形成工程
プライマー層形成工程では、フッ素樹脂を含む分散質や水溶性耐熱樹脂などを含むプライマー液に、基材層が形成された芯体をディッピングすることによって、基材層の外周面にプライマー液が均一に塗布される。プライマー層は、基材層と離型層を接着する役目を担う層であって、フッ素樹脂や、アクリル樹脂等の接着性樹脂、水溶性のポリアミドイミド樹脂や水溶性のポリイミド樹脂等の水溶性耐熱樹脂等から構成されている。そして、そのプライマー液付きの基材層(芯体付)が加熱される。なお、このときの加熱温度は、溶媒が揮発するが先のポリイミド前駆体のイミド化が進行しない程度の温度、例えば320℃以下の範囲内の温度であることが好ましい。
【0032】
(4)離型層成形工程
離型層成形工程では、フッ素樹脂ディスパーション液が塗布された後、その塗膜が乾燥させられて、プライマー層上にフッ素樹脂ディスパーション液の塗膜が形成される。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が挙げられ、これらは単体で利用されてもよいし、混合して利用されてもよい。
【0033】
(5)焼成工程
焼成工程では、離型層成形工程で得られたものが焼成処理されて、定着ベルトが得られる。このときの焼成温度は300℃以上450℃以下の範囲内の温度であることが好ましい。また、処理時間は30分以上2時間以下の範囲内であるのが好ましい。基材層のイミド化の完結と、離型層のフッ素樹脂の焼成とが同時に行われ、定着ベルトの製造時間の短縮化や熱効率の向上を実現することができるのみならず、各層の接着力を高めることもできるからである。
【0034】
(6)脱型工程
脱型工程では、芯体から定着ベルトが抜き取られる。
【0035】
<定着ベルトの特徴>
一般的な定着ベルトを用いた画像成形装置では、定着ベルトはトナーを紙などの記録媒体に溶融定着させて用いられる。そのため、定着ベルト内側に設けられるヒーターによる定着ベルトが加熱され、紙などの記録媒体が通過することで記録媒体に熱が奪われるため、通過部分と非通過部分に温度差が生まれ、非通過部分が過昇温になりやすいのを定着ベルト長手方向にカーボンナノチューブが配向することで、長手方向への熱伝導率が向上することで均一に温度を保たれ、過昇温を抑えることができる。また、カーボンナノチューブが長手方向に配向することで、ジャムが発生した際に無理な引き抜きによる長手方向に負荷がかかることで定着ベルト端部が変形による破れを抑えることもできる。
【0036】
本実施の形態の定着ベルトは基材層と離型層の間に弾性層を設けても良い。
【0037】
<実施例および比較例>
以下、実施例および比較例を示して、本実施の形態に係る定着ベルトをより詳しく説明する。なお、これらの実施例および比較例によって本願発明が限定されることはない。
【実施例0038】
1.定着ベルトの作製
先ず、表面に離型処理した外径18mmおよび長さ500mmの金型を用意した。
【0039】
次に、ポリアミド酸溶液(組成:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)/パラフェニレンジアミン(PPD):ピロメリット酸二無水物(PMDA)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)=97.5:2.5の比率、固形分18.8質量部)中にカーボンナノチューブ(昭和電工社製VGCF-H)を、ポリアミド酸溶液の固形分に対して17.0体積部になるように添加し、カーボンナノチューブが均一になるまでそのポリアミド酸溶液を攪拌して、粘度900ポイズのポリアミド酸溶液を得た。
【0040】
次いで、ポリアミド酸溶液を艦型の外径と所定の間隙で位置するスリットヘッドを備えた装置を用い、前記スリットヘッドから前記金型の外表面に対して、外側からポリアミド酸溶液を所定の吐出速度で制御しながら吐出し、前記芯体を100mm/sの速度で移動させながら金型の外表面にポリアミド酸溶液を塗布した後、乾燥工程としてその金型を120℃のオーブンに入れ、30分間乾燥後、200℃の温度まで20分間で昇温させ、同温度で20分間保持し、常温まで冷却して基材層を作製した。
【0041】
続いて、プライマー液を基材層表面に塗布して、150℃で10分間乾燥してプライマー層を作製した。
【0042】
その後、PFAディスパージョンを乾燥後のプライマー層上にコーティングした。そして、常温で30分乾燥させた後、段階的に350℃まで昇温させて、350℃で30分間焼成して目的とする基材層の厚みが60μmの定着ベルトを得た。
【0043】
2.物性評価
(1)基材層の熱伝導率の測定
JIS R2616を参考にして、定着ベルト基材層のみを2cm×2cm片に切り取り、基材層の一方の面に熱伝導グリスを介してトランジスタを設け、その反対の面に熱伝導グリスを介してヒートシンク(アルミ製)を設け、トランジスタの温度が60℃になるまで電流をかけて昇温させ、3分間60℃で基材層を加熱し、トランジスタ表面の温度Aとヒートシンクを設けた基材層表面の温度Bを熱電対を用いて測定した。その際の消費電力を測定し、各表面の温度と消費電力を用いて、下記の式から熱抵抗を算出した。
熱抵抗=(トランジスタ表面の温度A-基材層表面の温度B)/消費電力
上記算出した熱抵抗を用いて、下記の式から熱伝導率を算出した。
熱伝導率=基材層の膜厚/(トランジスタの断面積×熱抵抗)
基材層の熱伝導率は1.10W/mKであった。
次に、長手方向と周方向の熱伝導率をホットプレート上に、断熱材で覆った、幅15mm×厚み5mm×長さ60mm×アルミ棒を乗せ、その上にポリイミド層のみのフィルムを1.5cm×1.5cmの正方形に切り取り、厚さが5mmになるまで長手方向と周方向がフィルムの厚みとなるように重ね、断熱材で覆わせたポリイミドフィルムを載せて、アルミ板の上・下と、重ねたフィルム上・下の温度を熱電対で測定した。
また、フィルム上部には冷却用のファンを取り付け、ホットプレートの設定温度は180℃で測定を行った。
測定した結果から、下記の式を用いて熱伝導率を算出した。
λf=((λa×ΔTa/La)×(Lf/ΔTf)
λf:フィルム熱伝導率、λa:アルミ棒熱伝導率、ΔTf:フィルム上下温度差、ΔTa:アルミ棒上下温度差、Lf:フィルム厚み、La:アルミ棒長さ
測定を行った結果、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05であることが確認され、カーボンナノチューブが長手方向に配向していることが確認された。
【0044】
(2)引張弾性率及び破断試験力の測定
定着ベルトを切り開き長手方向にJIS-3号ダンベル(JIS K6301)で打ち抜き、試料を作製する。そのサンプルを島津製作所製オートグラフAGS-50Aを用いてチャック間距離30mm、引張り速度50mm/minで試験し、JIS P8113に準じて最大傾きの引張弾性率と破断時の試験力を測定した。その結果、引張弾性率は982kgf/mm2であり、破断試験力は7.2kgfであり、引張弾性率と破断試験力の積は7070.4kgf2/mm2であることが確認された。また、ジャムを繰り返し発生させ、無理に引き抜いても破れにくいことが確認された。
【実施例0045】
次に、カーボンナノチューブ(昭和電工社製VGCF-H)を、ポリアミック酸溶液の固形分に対して21.0体積部になるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で定着ベルトを得た。
【0046】
得られた定着ベルトの熱伝導率は1.45W/mKであり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.05であり、引張弾性率は976kgf/mm2であり、破断試験力は6.6kgfであり、引張弾性率と破断試験力の積は6441.6kgf2/mm2であることが確認された。また、ジャムを繰り返し発生させ、無理に引き抜いても破れにくいことが確認された。
【実施例0047】
次に、ポリアミド酸溶液(組成:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)/パラフェニレンジアミン(PPD):ピロメリット酸二無水物(PMDA)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)=80:20の比率、(固形分17.0質量部)中にカーボンナノチューブ(昭和電工社製VGCF-H)を、ポリアミック酸溶液の固形分に対して26.0体積部になるように添加し、カーボンナノチューブが均一になるまでそのポリアミド酸溶液を攪拌して、粘度900ポイズのポリアミド酸溶液を得て、基材の厚みを70μmにした以外は実施例1と同様の方法で定着ベルトを得た。
【0048】
得られた定着ベルトの熱伝導率は1.85W/mKであり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.06であり、引張弾性率は932kgf/mm2であり、破断試験力は5.6kgfであり、引張弾性率と破断試験力の積は5219.2kgf2/mm2であることが確認された。また、ジャムを繰り返し発生させ、無理に引き抜いても破れにくいことが確認された。
【実施例0049】
次に、カーボンナノチューブ(昭和電工社製VGCF-H)を、ポリアミック酸溶液の固形分に対して30.0体積部になるように添加した以外は実施例3と同様の方法で定着ベルトを得た。
【0050】
得られた定着ベルトの熱伝導率は2.20W/mKであり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.07であり、引張弾性率は923kgf/mm2であり、破断試験力は5.4kgfであり、引張弾性率と破断試験力の積は4984.2kgf2/mm2であることが確認された。また、ジャムを繰り返し発生させ、無理に引き抜いても破れにくいことが確認された。
【0051】
(比較例1)
次に、ポリアミド酸溶液(組成:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)/パラフェニレンジアミン(PPD):ピロメリット酸二無水物(PMDA)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)=80:20の比率、(固形分18.8質量部)中に無機粒子として窒化ホウ素(三井化学社製MBN-010T)を、ポリアミック酸溶液の固形分に対して40.0体積部になるように添加し、窒化ホウ素が均一になるまでそのポリアミド酸溶液を攪拌して、粘度900ポイズのポリアミド酸溶液を得た以外は実施例1と同様の方法で定着ベルトを得た。
【0052】
得られた定着ベルトの熱伝導率は1.05W/mKであり、長手方向熱伝導率/周方向熱伝導率が1.00であり、引張弾性率は915kgf/mm2であり、破断試験力は4.0であり、引張弾性率と破断試験力の積は3660.0kgf2/mm2であることが確認された。
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