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特開2024-151589固体酸化物形電解システム及び固体酸化物形電解システムの運転方法
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  • 特開-固体酸化物形電解システム及び固体酸化物形電解システムの運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151589
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】固体酸化物形電解システム及び固体酸化物形電解システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/027 20210101AFI20241018BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241018BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
C25B15/027
C25B9/00 A
C25B1/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065052
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】村本 知哉
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼岡 慎也
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC05
4K021CA12
4K021DB36
4K021DB53
(57)【要約】
【課題】熱効率のよい状態で長時間運転することが可能な固体酸化物形電解システムを提供する。
【解決手段】固体酸化物形電解システム1は、固体酸化物形電解セル20を含むホットモジュール10と、酸素極側流路50と、水素極側流路55と、固体酸化物形電解セル20に供給されるガスの温度を測定する入口側温度測定部61と、固体酸化物形電解セル20から排出されるガスの温度を測定する出口側温度測定部62と、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節する温度調節部70とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素極と水素極とを含む固体酸化物形電解セルと、前記固体酸化物形電解セルを収容する筐体とを含むホットモジュールと、
前記酸素極に空気を供給し、前記酸素極で生成された酸素を排出する酸素極側流路と、
前記水素極に水蒸気を供給し、前記水素極で生成された水素を排出する水素極側流路と、
前記酸素極側流路及び前記水素極側流路の少なくともいずれか一方に設けられ、前記固体酸化物形電解セルに供給されるガスの温度を測定する入口側温度測定部と、
前記酸素極側流路及び前記水素極側流路の少なくともいずれか一方に設けられ、前記固体酸化物形電解セルから排出されるガスの温度を測定する出口側温度測定部と、
前記入口側温度測定部で測定されたガスの温度と、前記出口側温度測定部で測定されたガスの温度との温度差が、閾値温度を超えた場合に、前記温度差が小さくなるように前記固体酸化物形電解セルの温度を調節する温度調節部と、
を備える、固体酸化物形電解システム。
【請求項2】
前記温度調節部は、前記出口側温度測定部で測定されたガスの温度から、前記入口側温度測定部で測定されたガスの温度を減じた温度差が、第1閾値温度を超えた場合には、前記温度調節部の設定温度を下げ、
前記温度調節部は、前記入口側温度測定部で測定されたガスの温度から、前記出口側温度測定部で測定されたガスの温度を減じた温度差が、第2閾値温度を超えた場合には、前記温度調節部の設定温度を上げる、請求項1に記載の固体酸化物形電解システム。
【請求項3】
前記入口側温度測定部と前記出口側温度測定部は、前記酸素極側流路に設けられる、請求項1又は2に記載の固体酸化物形電解システム。
【請求項4】
前記入口側温度測定部と前記出口側温度測定部は、前記水素極側流路に設けられる、請求項1又は2に記載の固体酸化物形電解システム。
【請求項5】
前記酸素極側流路は、前記酸素極に空気を供給する空気供給流路と、前記酸素極で生成された酸素を排出する酸素排出流路とを含み、
前記温度調節部は加熱部を含み、
前記加熱部は前記空気供給流路に設けられる、請求項1又は2に記載の固体酸化物形電解システム。
【請求項6】
前記温度調節部は加熱部を含み、前記加熱部は前記筐体の内側の空間に配置されている、請求項1又は2に記載の固体酸化物形電解システム。
【請求項7】
酸素極と水素極とを含む固体酸化物形電解セルと、前記固体酸化物形電解セルを収容する筐体とを含むホットモジュールと、
前記酸素極に空気を供給し、前記酸素極で生成された酸素を排出する酸素極側流路と、
前記水素極に水蒸気を供給し、前記水素極で生成された水素を排出する水素極側流路と、
前記酸素極側流路及び前記水素極側流路の少なくともいずれか一方に設けられ、前記固体酸化物形電解セルに供給されるガスの温度を測定する入口側温度測定部と、
前記固体酸化物形電解セルから排出されるガスの温度を測定する出口側温度測定部と、
を含む、固体酸化物形電解システムの運転方法であって、
前記入口側温度測定部で測定されたガスの温度と、前記出口側温度測定部で測定されたガスの温度との温度差が、閾値温度を超えた場合に、前記温度差が小さくなるように前記固体酸化物形電解セルの温度を温度調節部によって調節する、固体酸化物形電解システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体酸化物形電解システム及び固体酸化物形電解システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の原因として問題視されており、世界的に二酸化炭素の排出を抑制する動きが活発化している。水素は、利用時に二酸化炭素を排出せず、再生可能エネルギーで水を電気分解することによっても得ることができるため、化石燃料に代わる燃料として注目されている。水を電気分解して水素を生成する方法としては、固体酸化物形水電解法が知られている。固体酸化物形水電解法は、固体酸化物形電解セル(SOEC)を用い、高温で水蒸気を電気分解することによって水素を生成することができる。
【0003】
高温で運転するSOECは、熱中立点電圧で運転すると熱効率がよいことが知られている。熱中立点電圧よりも高い電圧で運転すると、SOECから発熱が生じて熱損失となる。熱中立点電圧よりも低い電圧で運転すると、SOECに外部から熱を供給する必要があり、SOECの運転温度よりも高い外部熱源が必要となる。
【0004】
長期間の運転でSOECの劣化が進行した場合、熱中立点電圧での運転を維持するためには、通常、運転温度が上げられるか、電流が下げられる。しかしながら、電流を下げた場合、水素製造量が低下し、プラントの生産性が低下する。このため、特許文献1では、運転初期には温度設定値をSOECの運転最高温度よりも低い温度に設定し、電圧測定値がSOEC単体の熱中立点電圧よりも規定値だけ増加したときに、温度設定値を所定値だけ順次増加して設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7039504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気化学反応の観点からは、SOECを熱中立点電圧で運転することが望ましい。しかしながら、SOEC及びSOECを収容するホットモジュールから熱が逃げてしまうため、システム全体で考えた場合、SOECを熱中立点電圧で運転することが最適でない場合がある。また、熱中立点電圧はSOECの運転温度及びSOECに供給されるガスの組成などによって変わる。そのため、様々な運転状態を考慮してSOECの制御条件を定める必要がある。
【0007】
そこで、本開示は、熱効率のよい状態で長時間運転することが可能な固体酸化物形電解システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る固体酸化物形電解システムは、酸素極と水素極とを含む固体酸化物形電解セルと、固体酸化物形電解セルを収容する筐体とを含むホットモジュールを備える。固体酸化物形電解システムは、酸素極に空気を供給し、酸素極で生成された酸素を排出する酸素極側流路と、水素極に水蒸気を供給し、水素極で生成された水素を排出する水素極側流路とを備える。固体酸化物形電解システムは、酸素極側流路及び水素極側流路の少なくともいずれか一方に設けられ、固体酸化物形電解セルに供給されるガスの温度を測定する入口側温度測定部を備える。固体酸化物形電解システムは、酸素極側流路及び水素極側流路の少なくともいずれか一方に設けられ、固体酸化物形電解セルから排出されるガスの温度を測定する出口側温度測定部を備える。固体酸化物形電解システムは、入口側温度測定部で測定されたガスの温度と、出口側温度測定部で測定されたガスの温度との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セルの温度を調節する温度調節部を備える。
【0009】
温度調節部は、出口側温度測定部で測定されたガスの温度から、入口側温度測定部で測定されたガスの温度を減じた温度差が、第1閾値温度を超えた場合には、温度調節部の設定温度を下げてもよい。温度調節部は、入口側温度測定部で測定されたガスの温度から、出口側温度測定部で測定されたガスの温度を減じた温度差が、第2閾値温度を超えた場合には、温度調節部の設定温度を上げてもよい。
【0010】
入口側温度測定部と出口側温度測定部は、酸素極側流路に設けられてもよい。
【0011】
入口側温度測定部と出口側温度測定部は、水素極側流路に設けられてもよい。
【0012】
酸素極側流路は、酸素極に空気を供給する空気供給流路と、酸素極で生成された酸素を排出する酸素排出流路とを含んでもよい。温度調節部は加熱部を含んでもよい。加熱部は空気供給流路に設けられてもよい。
【0013】
温度調節部は加熱部を含み、加熱部は筐体の内側の空間に配置されてもよい。
【0014】
本開示に係る運転方法は、固体酸化物形電解システムの運転方法である。固体酸化物形電解システムは、酸素極と水素極とを含む固体酸化物形電解セルと、固体酸化物形電解セルを収容する筐体とを含むホットモジュールを備える。固体酸化物形電解システムは、酸素極に空気を供給し、酸素極で生成された酸素を排出する酸素極側流路と、水素極に水蒸気を供給し、水素極で生成された水素を排出する水素極側流路とを備える。固体酸化物形電解システムは、酸素極側流路及び水素極側流路の少なくともいずれか一方に設けられ、固体酸化物形電解セルに供給されるガスの温度を測定する入口側温度測定部を備える。固体酸化物形電解システムは、固体酸化物形電解セルから排出されるガスの温度を測定する出口側温度測定部を備える。入口側温度測定部で測定されたガスの温度と、出口側温度測定部で測定されたガスの温度との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セルの温度を温度調節部によって調節する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、熱効率のよい状態で長時間運転することが可能な固体酸化物形電解システム及びその運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る固体酸化物形電解システムを示す概略図である。
図2】一実施形態に係る固体酸化物形電解セルの例を示す概略図である。
図3】固体酸化物形電解システム1の設定温度の設定方法を示すフロー図である。
図4】一実施形態に係る固体酸化物形電解システムを示す概略図である。
図5】一実施形態に係る固体酸化物形電解システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る固体酸化物形電解システム1について図1及び図2を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る固体酸化物形電解システム1は、ホットモジュール10と、酸素極側流路50と、水素極側流路55と、入口側温度測定部61と、出口側温度測定部62と、温度調節部70とを備えている。
【0019】
ホットモジュール10は、固体酸化物形電解セル20と、筐体40とを含んでいる。筐体40は、固体酸化物形電解セル20を収容している。筐体40の内側には、固体酸化物形電解セル20の熱、及び、筐体40内の熱が外側に逃げないように、図示しない断熱材が設けられている。本実施形態においては、ホットモジュール10は、単体の固体酸化物形電解セル20を含んでいる。
【0020】
固体酸化物形電解セル20は、図2に示すように、電解質層21と、電解質層21の一方の面に設けられた酸素極22と、電解質層21のもう一方の面に設けられた水素極23とを含んでいる。酸素極22の電解質層21とは反対側には、酸素極側流路50が設けられており、酸素極側流路50には酸素極側流路入口24及び酸素極側流路出口25が設けられている。水素極23の電解質層21とは反対側には、水素極側流路55が設けられており、水素極側流路55には水素極側流路入口26及び水素極側流路出口27が設けられている。酸素極22及び水素極23には電圧印加部28が電気的に接続され、電圧印加部28によって酸素極22と水素極23との間に電圧が印加される。
【0021】
電解質層21は、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)などの酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含んでいてもよい。酸素極22は、LSM((La,Sr)MnO)、LSC((La,Sr)CoO)、又は、LSCF((La,Sr)(Co,Fe)O)などの電子伝導性を示す酸化物を含んでいてもよい。水素極23は、Ni及びNiOのようなNi化合物の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。
【0022】
固体酸化物形電解セル20では、水素極側流路入口26から水素極23に水(水蒸気)が供給され、水素極23で水蒸気から水素が生成される。生成された水素は水素極側流路出口27から排出される。水素極23で生じた酸素イオンは電解質層21を通じて酸素極22へと移動し、酸素極22で酸素が生成される。酸素極側流路入口24から空気がスイープガスとして供給され、酸素極22で生成された酸素は、空気と共に酸素極側流路出口25から排出される。
【0023】
図1に示すように、酸素極側流路50は、酸素極22に空気を供給し、酸素極22で生成された酸素を排出する。酸素極側流路50は、酸素極22に空気を供給する空気供給流路51と、酸素極22で生成された酸素を排出する酸素排出流路52とを含んでいる。空気供給流路51には、図示しない空気加熱器が設けられており、空気加熱器は空気供給流路51内の空気を加熱する。そのため、酸素極22には、固体酸化物形電解セル20の運転に適した温度の空気が供給される。酸素極22に供給される空気は、例えば、400℃~900℃であってもよい。
【0024】
水素極側流路55は、水素極23に水蒸気を供給し、水素極23で生成された水素を排出する。具体的には、水素極側流路55は、水素極23に水蒸気を供給する水蒸気供給流路56と、水素極23で生成された水素を排出する水素排出流路57とを含んでいる。水蒸気供給流路56には、図示しない水加熱器が設けられており、水加熱器は水蒸気供給流路56内の水を加熱する。そのため、水素極23には、固体酸化物形電解セル20の運転に適した温度の水蒸気が供給される。水素極23に供給される水蒸気は、例えば、400℃~900℃であってもよい。なお、水素極側流路55は、水素極23の酸化を抑制するため、水素極23に水蒸気に加え、水素を供給してもよい。また、水素極側流路55は、水素極23で生成された水素に加え、水蒸気が排出されてもよい。すなわち、水素極側流路55は、水素極23に水蒸気及び水素を供給し、水素を排出してもよい。また、水素極側流路55は、水素極23に水蒸気及び水素を供給し、水素及び水蒸気を排出してもよい。水素極側流路55に水素を供給する場合、水素排出流路57内の水素濃度は水蒸気供給流路56内の水素濃度よりも高い。水蒸気供給流路56内の水素濃度は、例えば10体積%以下程度であってもよい。水素排出流路57内の水素濃度は、例えば、30~70体積%程度であってもよい。
【0025】
入口側温度測定部61は、固体酸化物形電解セル20に供給されるガスの温度を測定する。本実施形態では、入口側温度測定部61は、酸素極側流路50に設けられている。入口側温度測定部61は、酸素極側流路50の空気供給流路51に設けられており、空気供給流路51内を流れるガスの温度を測定する。入口側温度測定部61は、熱電対又は測温抵抗体などの接触式温度センサを含んでいてもよい。入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2は、温度調節部70の温度設定部72に出力される。
【0026】
出口側温度測定部62は、固体酸化物形電解セル20から排出されるガスの温度を測定する。本実施形態では、出口側温度測定部62は、酸素極側流路50に設けられている。出口側温度測定部62は、酸素極側流路50の酸素排出流路52に設けられており、酸素排出流路52内を流れるガスの温度を測定する。出口側温度測定部62は、熱電対又は測温抵抗体などの接触式温度センサを含んでいてもよい。出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3は、温度調節部70の温度設定部72に出力される。
【0027】
温度調節部70は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節する。具体的には、温度調節部70は、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3から、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2を減じた温度差が、第1閾値温度を超えた場合には、温度調節部70の設定温度を下げる。温度調節部70は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2から、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3を減じた温度差が、第2閾値温度を超えた場合には、温度調節部70の設定温度を上げる。温度調節部70は、温度測定部71と、温度設定部72と、温度制御部73と、操作部74と、加熱部75とを含んでいる。
【0028】
温度測定部71は、本実施形態においては、ホットモジュール10内の温度を測定する。具体的には、温度測定部71は、筐体40の内側かつ固体酸化物形電解セル20の外側の空間の温度を測定する。温度測定部71は、熱電対又は測温抵抗体などの接触式温度センサを含んでいてもよい。
【0029】
温度設定部72は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3とに応じて設定温度を変更するか判断する。温度設定部72は、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3から、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2を減じた温度差が、第1閾値温度Taを超えた場合には、温度調節部70の設定温度を下げる。すなわち、温度設定部72は、T3-T2>Taの場合には、現在設定されている設定温度よりも設定温度を低くするように温度制御部73に指示する。
【0030】
一方、温度設定部72は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2から、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3を減じた温度差が、第2閾値温度Tbを超えた場合には、温度調節部70の設定温度を上げる。すなわち、温度設定部72は、T2-T3>Tbの場合には、現在設定されている設定温度よりも設定温度を高くするように温度制御部73に指示する。
【0031】
温度設定部72は、温度T3から温度T2を減じた温度差が第1閾値温度Ta以下であり、温度T2から温度T3を減じた温度差が第2閾値温度Tb以下である場合には、温度調節部70の設定温度を変更しない。すなわち、温度設定部72は、T3-T2≦TaかつT2-T3≦Tbの場合には、温度制御部73で現在設定されている設定温度を変更せずに現在設定されている設定温度を維持する。第1閾値温度Ta及び第2閾値温度Tbは、予め定められた閾値温度であり、実験データなどによって導き出すことができる。第1閾値温度Taは、正の値であり、例えば5℃~20℃であってもよい。また、第2閾値温度Tbは、例えば5℃~20℃であってもよい。
【0032】
温度制御部73は、設定温度と温度T1とが一致するように、温度操作信号を操作部74に出力する。温度制御部73は、温度設定部72によって設定された設定温度と、温度測定部71で測定された温度T1とに基づき、PID制御などの温度制御演算を行って得られた温度操作信号を操作部74に出力する。温度制御部73は、演算処理装置を含んでいてもよい。
【0033】
操作部74は、加熱部75に電力を供給する。操作部74は、温度操作信号に基づき、加熱部75の出力を操作する。操作部74は、例えば、加熱部75に流れる電流をON/OFF操作したり、加熱部75へ供給される電力量を増減したりすることにより、加熱部75による熱の生成量を操作することができる。操作部74は、例えば、電磁開閉器又は電力調整器などであってもよい。
【0034】
加熱部75は筐体40の内側の空間に配置されている。具体的には、筐体40の内側かつ固体酸化物形電解セル20の外側の空間内に配置されている。加熱部75は、筐体40内のガスを加熱することにより、固体酸化物形電解セル20の温度を調節している。加熱部75は、操作部74から供給された電力に応じ、生成される熱量を増減することができる。加熱部75は、例えば、シーズヒータのようなものであってもよく、ジュール熱を発生させるニクロム線などのような発熱体を含んでいてもよい。
【0035】
次に、本実施形態に係る固体酸化物形電解システム1の設定温度の設定方法について図3を用いて説明する。
【0036】
まず、ステップS1では、温度設定部72は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3とを入力し、温度T2と温度T3との差を算出する。温度設定部72は、温度T3から温度T2を差し引いた値が、上限閾値温度Taよりも大きい場合には、ステップS2に進み、現在設定されている設定温度よりも低い設定温度を温度制御部73に出力する。一方、温度設定部72は、温度T3から温度T2を差し引いた値が、上限閾値温度Ta以下である場合には、ステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、温度設定部72は、温度T2から温度T3を差し引いた値が、下限閾値温度Tbよりも大きい場合には、ステップS4に進み、現在設定されている設定温度よりも高い設定温度を温度制御部73に出力する。一方、温度設定部72は、温度T3から温度T2を差し引いた値が、下限閾値温度Tb以下である場合には、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0038】
このように、温度調節部70は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3との温度差が、閾値温度を超えた場合に、上記温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節する。そのため、このような固体酸化物形電解システム1によれば、固体酸化物形電解セル20の外部から供給される熱量を最適な範囲に制御することができる。例えば、固体酸化物形電解セル20及び固体酸化物形電解セル20を収容するホットモジュール10からの熱損失を踏まえた上で、固体酸化物形電解セル20の温度を調節することができる。したがって、本実施形態に係る固体酸化物形電解システム1は、熱効率のよい状態で長時間運転することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る固体酸化物形電解システム1によれば、固体酸化物形電解セル20の運転温度や固体酸化物形電解セル20に供給されるガス組成などによらず、同じロジックで温度制御を行うことができる。そのため、異常事態への対処が容易なロバスト性を得ることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る固体酸化物形電解システム1について図4を用いて説明する。なお、同一の構成については同一の符号を付し、上記実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0041】
第1実施形態に係る固体酸化物形電解システム1では、温度測定部71はホットモジュール10内の温度を測定し、加熱部75は筐体40の内側の空間に配置されていた。
【0042】
一方、図4に示すように、第2実施形態に係る固体酸化物形電解システム1では、加熱部75は空気供給流路51に設けられており、空気供給流路51内のガスを加熱している。また、加熱部75は筐体40内に設けられており、温度測定部71は、空気供給流路51において加熱部75よりも下流側に接続されている。そして、温度測定部71は空気供給流路51内のガスの温度を測定している。
【0043】
本実施形態においても、温度調節部70は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節する。そのため、このような固体酸化物形電解システム1によれば、固体酸化物形電解セル20の外部から供給される熱量を最適な範囲に制御することができる。したがって、本実施形態に係る固体酸化物形電解システム1は、熱効率のよい状態で長時間運転することができる。
【0044】
また、加熱部75は空気供給流路51に設けられている。このような構成により、固体酸化物形電解セル20を、供給空気によって直接加熱することができる。そのため、固体酸化物形電解セル20の温度を容易に調節することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、空気供給流路51に温度測定部71が接続され、空気供給流路51内のガスの温度を測定した。しかしながら、温度測定部71は、入口側温度測定部61と兼用してもよく、入口側温度測定部61と温度測定部71とは一つの温度測定部であってもよい。
【0046】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る固体酸化物形電解システム1について図5を用いて説明する。なお、同一の構成については同一の符号を付し、上記実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0047】
第1実施形態に係る固体酸化物形電解システム1では、入口側温度測定部61と出口側温度測定部62は、酸素極側流路50に設けられていた。一方、第3実施形態に係る固体酸化物形電解システム1では、入口側温度測定部61と出口側温度測定部62は、水素極側流路55に設けられている。
【0048】
入口側温度測定部61は、固体酸化物形電解セル20に供給されるガスの温度を測定する。具体的には、入口側温度測定部61は、水素極側流路55の水蒸気供給流路56に設けられており、水蒸気供給流路56内を流れる水蒸気を含むガスの温度を測定する。
【0049】
出口側温度測定部62は、固体酸化物形電解セル20から排出されるガスの温度を測定する。具体的には、出口側温度測定部62は、水素極側流路55の水素排出流路57に設けられており、水素排出流路57内を流れる水素を含むガスの温度を測定する。
【0050】
本実施形態においても、温度調節部70は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節する。そのため、このような固体酸化物形電解システム1によれば、固体酸化物形電解セル20の外部から供給される熱量を最適な範囲に制御することができる。したがって、本実施形態に係る固体酸化物形電解システム1は、熱効率のよい状態で長時間運転することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、出口側温度測定部62は、入口側温度測定部61が設けられた流路に設けられていた。すなわち、第1及び第2実施形態に係る固体酸化物形電解システム1では、入口側温度測定部61と出口側温度測定部62は、酸素極側流路50に設けられていた。また、第3実施形態に係る固体酸化物形電解システム1では、入口側温度測定部61と出口側温度測定部62は、水素極側流路55に設けられていた。
【0052】
しかしながら、固体酸化物形電解セル20の温度は、酸素極側流路50と水素極側流路55とで大きな差はない。そのため、入口側温度測定部61は、酸素極側流路50及び水素極側流路55の少なくともいずれか一方に設けられていればよい。また、出口側温度測定部62は、酸素極側流路50及び水素極側流路55の少なくともいずれか一方に設けられていればよい。例えば、入口側温度測定部61が酸素極側流路50に設けられ、出口側温度測定部62が水素極側流路55に設けられていてもよい。また、入口側温度測定部61が水素極側流路55に設けられ、出口側温度測定部62が酸素極側流路50に設けられていてもよい。また、入口側温度測定部61が酸素極側流路50及び水素極側流路55に設けられ、出口側温度測定部62が酸素極側流路50及び水素極側流路55に設けられていてもよい。
【0053】
また、固体酸化物形電解システム1が、1つの固体酸化物形電解セル20を含む例について説明した。しかしながら、固体酸化物形電解システム1は、複数の固体酸化物形電解セル20を含んでいてもよい。また、固体酸化物形電解システム1は、1つの固体酸化物形電解セル20に代え、複数の固体酸化物形電解セル20を含むスタックを含んでいてもよい。さらに、固体酸化物形電解システム1は、複数のスタックを含んでいてもよい。
【0054】
固体酸化物形電解システム1が複数の固体酸化物形電解セル20又は複数のスタックを含む場合、各固体酸化物形電解セル20の酸素極側流路50又は水素極側流路55に、入口側温度測定部61と出口側温度測定部62とを含む一対の測定部が設けられてもよい。また、各セルスタックの酸素極側流路50又は水素極側流路55に、入口側温度測定部61と出口側温度測定部62とを含む一対の測定部が設けられてもよい。
【0055】
そして、各固体酸化物形電解セル20又は各複数のスタックに対応する測定部の温度差の平均が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節してもよい。この方法により、筐体40内の固体酸化物形電解セル20の温度を簡易に調節することができる。特に、加熱部75が筐体40の内側の空間に配置されている場合、加熱部75が1つだけであっても、筐体40の内側の空間を加熱するだけで、複数の固体酸化物形電解セル20又は複数のスタックの温度を調節できる。なお、ホットモジュール10内の全ての固体酸化物形電解セル20及び複数のスタックの温度差の平均を必ずしも算出する必要はなく、少なくとも一部の固体酸化物形電解セル20及び複数のスタックの温度差の平均を算出すればよい。
【0056】
また、加熱部75が酸素極側流路50又は水素極側流路55ごとに設けられ、固体酸化物形電解セル20又はスタックごとに対応する加熱部75で固体酸化物形電解セル20又はスタックの温度を調節してもよい。また、加熱部75は、固体酸化物形電解セル20又はスタックの近傍に個別に設けられていてもよい。そして、固体酸化物形電解セル20又はスタックごとに対応する一対の測定部が設けられていてもよい。これらのような場合、一対の測定部の温度差に基づいて、対応する固体酸化物形電解セル20又はスタックの温度を個別に調節してもよい。
【0057】
次に、本実施形態に係る固体酸化物形電解システム1の作用効果について説明する。
【0058】
固体酸化物形電解システム1は、酸素極22と水素極23とを含む固体酸化物形電解セル20と、固体酸化物形電解セル20を収容する筐体40とを含むホットモジュール10を備える。固体酸化物形電解システム1は、酸素極22に空気を供給し、酸素極22で生成された酸素を排出する酸素極側流路50と、水素極23に水蒸気を供給し、水素極23で生成された水素を排出する水素極側流路55とを備える。固体酸化物形電解システム1は、酸素極側流路50及び水素極側流路55の少なくともいずれか一方に設けられ、固体酸化物形電解セル20に供給されるガスの温度を測定する入口側温度測定部61を備える。固体酸化物形電解システム1は、酸素極側流路50及び水素極側流路55の少なくともいずれか一方に設けられ、固体酸化物形電解セル20から排出されるガスの温度を測定する出口側温度測定部62を備える。固体酸化物形電解システム1は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節する温度調節部70を備える。
【0059】
また、固体酸化物形電解システム1の運転方法では、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を温度調節部70によって調節する。
【0060】
このように、温度調節部70は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3との温度差が、閾値温度を超えた場合に、上記温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節する。そのため、このような固体酸化物形電解システム1によれば、固体酸化物形電解セル20の外部から供給される熱量を最適な範囲に制御することができる。したがって、本実施形態に係る固体酸化物形電解システム1は、熱効率のよい状態で長時間運転することができる。
【0061】
温度調節部70は、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3から、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2を減じた温度差が、第1閾値温度Taを超えた場合には、温度調節部70の設定温度を下げてもよい。例えば、固体酸化物形電解セル20が経年劣化し、固体酸化物形電解セル20の内部抵抗が増えた場合、固体酸化物形電解セル20の発熱反応が、吸熱反応よりも大きくなる。このような場合には、温度調節部70の設定温度を下げ、自然放熱又は酸素極22側のガスの供給量を増やすなどして、固体酸化物形電解セル20の温度が低下させることにより、固体酸化物形電解セル20の電解温度を最適な温度にすることができる。そのため、固体酸化物形電解システム1全体の熱損失を抑制することができる。
【0062】
また、温度調節部70は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2から、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3を減じた温度差が、第2閾値温度Tbを超えた場合には、温度調節部70の設定温度を上げてもよい。例えば、固体酸化物形電解セル20の吸熱反応が、発熱反応よりも大きくなりすぎた場合には、温度調節部70の設定温度を上げる。これにより、固体酸化物形電解セル20の温度が上昇する。そのため、固体酸化物形電解システム1の電解反応を促進することができる。
【0063】
入口側温度測定部61と出口側温度測定部62は、酸素極側流路50に設けられてもよい。酸素極側流路50を流れるガスの量は、水素極側流路55を流れるガスの量よりも通常は多く、入口側温度測定部61と出口側温度測定部62で測定される温度は均一である。そのため、この構成によれば、入口側温度測定部61と出口側温度測定部62での温度差を、より正確に評価することができる。
【0064】
入口側温度測定部61と出口側温度測定部62は、水素極側流路55に設けられていてもよい。これによっても、温度調節部70は、入口側温度測定部61で測定されたガスの温度T2と、出口側温度測定部62で測定されたガスの温度T3との温度差が、閾値温度を超えた場合に、温度差が小さくなるように固体酸化物形電解セル20の温度を調節できる。したがって、固体酸化物形電解システム1は、熱効率のよい状態で長時間運転することができる。
【0065】
酸素極側流路50は、酸素極22に空気を供給する空気供給流路51と、酸素極22で生成された酸素を排出する酸素排出流路52とを含んでいてもよい。温度調節部70は加熱部75を含んでいてもよい。加熱部75は空気供給流路51に設けられていてもよい。このような構成により、固体酸化物形電解セル20を、供給空気によって直接加熱することができる。そのため、固体酸化物形電解セル20の温度を容易に調節することができる。
【0066】
温度調節部70は加熱部75を含んでいてもよい。加熱部75は筐体40の内側の空間に配置されていてもよい。この構成によれば、加熱部75は、筐体40の内側の空間を加熱することができる。そのため、簡易な構成で、筐体40内を均一な温度に維持することができる。また、複数の固体酸化物形電解セル20が筐体40内に複数存在していても、まとめて加熱することができるため、簡易な構成で複数の固体酸化物形電解セル20を加熱することができる。
【0067】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0068】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 固体酸化物形電解システム
10 ホットモジュール
20 固体酸化物形電解セル
22 酸素極
23 水素極
40 筐体
50 酸素極側流路
51 空気供給流路
52 酸素排出流路
55 水素極側流路
61 入口側温度測定部
62 出口側温度測定部
70 温度調節部
75 加熱部
図1
図2
図3
図4
図5