(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151595
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】脳機能改善用機能性食品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20241018BHJP
【FI】
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065061
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】311006777
【氏名又は名称】アイコット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】杉本 八郎
(72)【発明者】
【氏名】堤 巌
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD18
4B018MD31
4B018MD48
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
(57)【要約】
【課題】トリテルペノイドを含有する植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品を提供する。
【解決手段】アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスとのそれぞれ異なる植物由来の3種の植物エキスと、環状オリゴ糖を含有してなることとした。また、前記第1の植物エキスは、シソ目ゴマノハグサ科に属する植物由来のエキスであることや、前記第2の植物エキスは、ミソハギ科キカシグサ属又はミソハギ科サルスベリ属に属する植物由来のエキスであること等にも特徴を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキス、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキス及びポリフェノールを含有する第3の植物エキスとのそれぞれ異なる植物由来の3種の植物エキスと、
環状オリゴ糖と、
を含有してなる脳機能改善用機能性食品。
【請求項2】
前記第1の植物エキスは、シソ目ゴマノハグサ科に属する植物由来のエキスであることを特徴とする請求項1に記載の脳機能改善用機能性食品。
【請求項3】
前記第1の植物エキスは、サクラカラクサ、キタミソウ、バコパ・モニエリ、ネメシア、ゴマノハグサから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で5~33w/w%に相当する量の前記第1の植物エキスを含有することを特徴とする請求項2に記載の脳機能改善用機能性食品。
【請求項4】
前記第2の植物エキスは、ミソハギ科キカシグサ属又はミソハギ科サルスベリ属に属する植物由来のエキスであることを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の脳機能改善用機能性食品。
【請求項5】
前記第2の植物エキスは、ミズマツバ、ロタラグリーン、キカシグサ、バナバ、サルスベリから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量の前記第2の植物エキスを含有することを特徴とする請求項4に記載の脳機能改善用機能性食品。
【請求項6】
前記第3の植物エキスは、シソ科タツナミソウ属又はクワ科クワ属に属する植物由来のエキスであることを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載の脳機能改善用機能性食品。
【請求項7】
前記第3の植物エキスは、ヒメナミキ、エゾナミキ、コガネバナ、ヤマグワ、ブラックマルベリーから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量の前記第3の植物エキスを含有することを特徴とする請求項6に記載の脳機能改善用機能性食品。
【請求項8】
トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来する脳機能の改善を作用又は効果として含む目的のための機能性食品であって前記第2の植物エキス又は前記脳機能の改善の発現と対応する前記第2の植物エキスの構成成分を保健機能成分(関与成分)とした機能性食品における、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスと、環状オリゴ糖の前記脳機能の改善を助長する補助成分原料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳機能改善用機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会の到来にともない、高齢者の脳の変性疾患、特にアルツハイマー型、レヴィー小体認知症、パーキンソン病等に由来する脳機能の低下が広く問題視されている。
【0003】
このような脳の変性疾患に罹患し認知症を発症すると、ヒトの尊厳までも脅かされる深刻な事態を招く場合があることから、認知症の予防と治療の研究が、近年、精力的に進められている。
【0004】
しかしながら、認知症の発症の原因は不明な部分も多く残されており、医薬品の開発は勿論、治療法や予防法の開発も未だ確立していない。
【0005】
そのような現状の中、日々の食生活にて摂取することで、これらの疾患を予防したり改善できる脳機能改善用の組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このような脳機能改善用組成物を含有する医薬品や飲食品によれば、ヒトが安全かつ日常的に手軽に摂取することができ、アルツハイマー病に代表される認知症などの脳神経疾患を効果的に改善できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、脳機能の低下は単一の原因によって発症するものではなく、より複雑なメカニズムを経て発症するものであり、異なるアプローチでより多くの改善手段が提供されるのが望ましい。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、トリテルペノイドを含有する植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る脳機能改善用機能性食品では、(1)アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスとのそれぞれ異なる植物由来の3種の植物エキスと、環状オリゴ糖を含有してなることとした。
【0011】
また、本発明に係る脳機能改善用機能性食品では、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記第1の植物エキスは、シソ目ゴマノハグサ科に属する植物由来のエキスであること。
(3)前記第1の植物エキスは、サクラカラクサ、キタミソウ、バコパ・モニエリ、ネメシア、ゴマノハグサから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で5~33w/w%に相当する量の前記第1の植物エキスを含有すること。
(4)前記第2の植物エキスは、ミソハギ科キカシグサ属又はミソハギ科サルスベリ属に属する植物由来のエキスであること。
(5)前記第2の植物エキスは、ミズマツバ、ロタラグリーン、キカシグサ、バナバ、サルスベリから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量の前記第2の植物エキスを含有すること。
(6)前記第3の植物エキスは、シソ科タツナミソウ属又はクワ科クワ属に属する植物由来のエキスであること。
(7)前記第3の植物エキスは、ヒメナミキ、エゾナミキ、コガネバナ、ヤマグワ、ブラックマルベリーから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量の前記第3の植物エキスを含有すること。
【0012】
また本発明では、(8)トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来する脳機能の改善を作用又は効果として含む目的のための機能性食品であって前記第2の植物エキス又は前記脳機能の改善の発現と対応する前記第2の植物エキスの構成成分を保健機能成分(関与成分)とした機能性食品において、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスと環状オリゴ糖を、前記脳機能の改善を助長する補助成分原料として使用することとした。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る脳機能改善用機能性食品によれば、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキス、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスおよびポリフェノールを含有する第3の植物エキスのそれぞれ異なる植物由来の3種の植物エキスと、環状オリゴ糖を含有してなることとしたため、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品を提供することができる。
【0014】
また、前記第1の植物エキスは、シソ目ゴマノハグサ科に属する植物由来のエキスであることとすれば、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果を単独使用の場合に比してより顕著に発揮させるにあたり、より堅実に発現させることができる。
【0015】
また、前記第1の植物エキスは、サクラカラクサ、キタミソウ、バコパ・モニエリ、ネメシア、ゴマノハグサから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で5~33w/w%に相当する量の前記第1の植物エキスを含有することとすれば、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果のより顕著な発揮を、更に堅実に発現させることができる。
【0016】
また、前記第2の植物エキスは、ミソハギ科キカシグサ属又はミソハギ科サルスベリ属に属する植物由来のエキスであることとすれば、脳機能の改善作用や効果をより堅実に発現させることができる。
【0017】
また、前記第2の植物エキスは、ミズマツバ、ロタラグリーン、キカシグサ、バナバ、サルスベリから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量の前記第2の植物エキスを含有することとすれば、脳機能の改善作用や効果を更に堅実に発現させることができる。
【0018】
また、前記第3の植物エキスは、シソ科タツナミソウ属又はクワ科クワ属に属する植物由来のエキスであることとすれば、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果を単独使用の場合に比してより顕著に発揮させるにあたり、より堅実に発現させることができる。
【0019】
また、前記第3の植物エキスは、ヒメナミキ、エゾナミキ、コガネバナ、ヤマグワ、ブラックマルベリーから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスであって、粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量の前記第3の植物エキスを含有することとすれば、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果のより顕著な発揮を、更に堅実に発現させることができる。
【0020】
また、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来する脳機能の改善を作用又は効果として含む目的のための機能性食品であって前記第2の植物エキス又は前記脳機能の改善の発現と対応する前記第2の植物エキスの構成成分を保健機能成分(関与成分)とした機能性食品において、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスと環状オリゴ糖を、前記脳機能の改善を助長する補助成分原料として使用することとしたため、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう脳機能改善用機能性食品を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】脳内酸素飽和度の試験結果を示す説明図である。
【
図6】脳内酸素飽和度の試験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は脳機能改善用機能性食品に関し、特に、トリテルペノイドを含有する植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品に関するものである。
【0023】
従来、脳神経機能を優位にする製剤として、神経伝達物質と呼ばれるリン脂質チロシン、イチョウ葉、ナイアシン、などが知られている。
【0024】
これら公知成分は、脳内血流を促す作用に基づき有用性を呈するとされるが、当該成分が生体内で所望する作用を呈する為には、当該成分の構造に配慮した経口摂取における生体消化経路及び、吸収経路に考慮した処方設計が必須となる。
【0025】
これは、当該成分は生体内消化・分解により異性体構造を生じる為、必ずしもin Vitro検証と同じ作用効果を呈さないためである。
【0026】
更に、公知成分において脳血流促進とは異なる神経シナプスへの作用が十分とは言えず、当該成分の経口摂取に基づく脳神経シナプス修復・改善といった学術的検証、且つ、生体における改善効果検証は極めて少ない。
【0027】
この点、本実施形態に係る脳機能改善用機能性食品では、トリテルペノイドを含有する植物エキスを脳機能改善のための主要構成原料として使用しているため、優れた脳機能改善作用・効果を発揮させることができる。
【0028】
ここで、本明細書において脳機能の改善とは、興奮状態や鎮静状態の正常化であったり、集中力の正常化を含むものであるが、特に記憶力の改善を伴うものを意味している。具体的には、ウェクスラー記憶検査など、医療機関等で記憶力検査に採用される各種手法によって記憶力の向上が確認できる状況を脳機能の改善と称する。
【0029】
また機能性食品は、医薬品成分を含まない健康の保持増進に寄与するとされる食品全般を包含する概念であり、例えば、栄養補助食品や健康補助食品、栄養調整食品のほか、所謂サプリメントなどの一般食品であったり、特定保健用食品や栄養機能食品、機能性表示食品の如き保健機能食品も含まれる。
【0030】
また本願の機能性食品は、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善を作用又は効果として含む目的のための機能性食品である。なお、作用又は効果として含む目的とは、その機能性食品に脳機能の改善を目的とすることが明記されている場合、例えば効果効能として記載されている場合を含むのは勿論のこと、このように明記されておらずとも、「記憶力を維持したい方へ」や、「記憶をサポートする」などのように経過の一部や結果の表現が記載されているならば、それは本願の脳機能改善用機能性食品に相当する。
【0031】
なお、上述した機能性食品についての説明は、本発明の理解に供すべくこれらに相当する物品等の一例を列挙したものであり、各語句の解釈はこれら列挙された物品等に限定されるものではない。ただし、本出願人が本願を権利化するにあたり、本発明をこれら物品等に限定することを妨げない。
【0032】
そして、本実施形態に係る脳機能改善用機能性食品は、第1の植物エキスと第2の植物エキスと第3の植物エキスとのそれぞれ異なる植物由来の3種の植物エキスを含有してなる点で特徴的である。
【0033】
第1の植物エキスは、アルカロイド及びフラボノイドを含有する植物エキスであり、脳機能改善のための主要構成原料として機能する第2の植物エキスの改善作用や効果を顕著に発揮させるにあたり、後述の第3の植物エキスと共に補助的な役割を担う成分の一つである。
【0034】
この第1の植物エキスは、アルカロイド及びフラボノイドを含有する植物エキスであれば特に限定されるものではないが、例えばシソ目ゴマノハグサ科に属する植物由来のエキスとすれば、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果を単独使用の場合に比してより顕著に発揮させるにあたり、より堅実に発現させることができる。
【0035】
またこの場合、第1の植物エキスはシソ目ゴマノハグサ科に属する植物由来のエキスであれば特に限定されるものではないが、例えば、サクラカラクサ、キタミソウ、バコパ・モニエリ、ネメシア、ゴマノハグサから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスとすることで、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果のより顕著な発揮を、更に堅実に発現させることができる。
【0036】
また、第1の植物エキスをこれらの植物由来のエキスとした場合、脳機能改善用機能性食品中に含まれる第1の植物エキスの量は限定されるものではないが、1日あたりの摂取量が粉末換算で60~400mg程度となるような処方であるのが望ましい。この場合、錠剤や顆粒剤、散剤(カプセル等の包被材料に収容されている場合も含む。)などのように水分が低い状態の剤形(以下、低水分剤形ともいう。)にあっては、粉末換算で5~33w/w%に相当する量とするのが望ましい。
【0037】
第1の植物エキスの摂取量が粉末換算で60mg/dayを下回ると、第2の植物エキスの改善作用や効果を顕著に発揮させるにあたり、補助的な役割が十分に果たせなくなるので好ましくない。
【0038】
また、第1の植物エキスの摂取量が粉末換算で400mg/dayを上回ることは特に問題ではないが、これ以上添加しても第1の植物エキスによる補助的な効果の増大は見られない。
【0039】
また、本実施形態に係る脳機能改善用機能性食品を低水分剤形にて調製した場合、第1の植物エキスの含有量が5w/w%を下回ると、摂取に適した脳機能改善用機能性食品の全体量が増加する傾向にあり、また、含有量が33w/w%を上回ると脳機能改善用機能性食品を構成する他の構成成分、特に第2の植物エキスや第3の植物エキスを必要量含有させる余地が無くなるため好ましくない。
【0040】
第1の植物エキスの摂取量を、粉末換算で1日あたりの摂取量が60~400mg、また低水分剤形にて本剤を調製した場合の第1の植物エキスの含有量を粉末換算で5~33w/w%に相当する量とすることで、第1の植物エキスによる補助的な効果を好適に発揮させることができる。なお、粉末換算とは、植物エキスが液体である場合は水分を蒸発させた状態での重量で考慮すべきことを意味するものであり、脳機能改善用機能性食品に対する第1の植物エキスの状態を粉末に限定するものではない。すなわち、第1の植物エキスは脳機能改善用機能性食品の剤形に応じて、液体として添加しても良いのは勿論である。このことは、後述の第2の植物エキスや第3の植物エキスをはじめ、その他原料についても同様である。本発明の本質は、剤形如何に関わらず、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスとのそれぞれ異なる植物由来の3種の植物エキスを含有させることで脳機能改善用機能性食品を構成した点であることに留意すべきである。
【0041】
第2の植物エキスは、トリテルペノイドを含有する植物エキスであれば特に限定されるものではないが、例えばミソハギ科キカシグサ属又はミソハギ科サルスベリ属に属する植物由来のエキスとすれば、脳機能の改善作用や効果をより堅実に発現させることができる。
【0042】
またこの場合、第2の植物エキスはミソハギ科キカシグサ属又はミソハギ科サルスベリ属に属する植物由来のエキスであれば特に限定されるものではないが、例えば、ミズマツバ、ロタラグリーン、キカシグサ、バナバ、サルスベリから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスとすることで、脳機能の改善作用や効果を更に堅実に発現させることができる。
【0043】
また、第2の植物エキスをこれらの植物由来のエキスとした場合、脳機能改善用機能性食品中に含まれる第2の植物エキスの量は限定されるものではないが、1日あたりの摂取量が粉末換算で0.2~400mg程度となるような処方であるのが望ましい。また、低水分剤形にあっては、粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量とするのが望ましい。
【0044】
第2の植物エキスの摂取量が粉末換算で0.2mg/dayを下回ると、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果が十分に得られなくなるため好ましくない。
【0045】
また、第2の植物エキスの摂取量が粉末換算で400mg/dayを上回ることは特に問題ではないが、これ以上添加しても第2の植物エキスによる脳機能の改善作用や効果の更なる向上は見られない。
【0046】
また、脳機能改善用機能性食品を低水分剤形にて調製した場合、第2の植物エキスの含有量が0.0157w/w%を下回ると、摂取に適した脳機能改善用機能性食品の全体量が増加する傾向にあり、また、含有量が33w/w%を上回ると脳機能改善用機能性食品を構成する他の構成成分、特に第1の植物エキスや第3の植物エキスを必要量含有させる余地が無くなるため好ましくない。
【0047】
第2の植物エキスの摂取量を、粉末換算で1日あたりの摂取量が0.2~400mg、また低水分剤形にて本剤を調製した場合の第2の植物エキスの含有量を粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量とすることで、脳機能の改善作用や効果を堅実に発現させることができる。
【0048】
第3の植物エキスは、ポリフェノールを含有する植物エキスであれば特に限定されるものではないが、例えばシソ科タツナミソウ属又はクワ科クワ属に属する植物由来のエキスとすれば、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果を単独使用の場合に比してより顕著に発揮させるにあたり、より堅実に発現させることができる。
【0049】
またこの場合、第3の植物エキスはシソ科タツナミソウ属又はクワ科クワ属に属する植物由来のエキスであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒメナミキ、エゾナミキ、コガネバナ、ヤマグワ、ブラックマルベリーから選ばれる少なくともいずれか1つの植物に由来するエキスとすることで、第2の植物エキスに由来する脳機能の改善作用や効果のより顕著な発揮を、更に堅実に発現させることができる。
【0050】
また、第3の植物エキスをこれらの植物由来のエキスとした場合、脳機能改善用機能性食品中に含まれる第3の植物エキスの量は、限定されるものではないが、1日あたりの摂取量が粉末換算で0.2~400mg程度となるような処方であるのが望ましい。また、低水分剤形にあっては、粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量とするのが望ましい。
【0051】
第3の植物エキスの摂取量が粉末換算で0.2mg/dayを下回ると、第3の植物エキスの改善作用や効果を顕著に発揮させるにあたり、補助的な役割が十分に果たせなくなるので好ましくない。
【0052】
また、第3の植物エキスの摂取量が粉末換算で400mg/dayを上回ることは特に問題ではないが、これ以上添加しても第3の植物エキスによる補助的な効果の増大は見られない。
【0053】
また、脳機能改善用機能性食品を低水分剤形にて調製した場合、第3の植物エキスの含有量が0.0157w/w%を下回ると、摂取に適した脳機能改善用機能性食品の全体量が増加する傾向にあり、また、含有量が33w/w%を上回ると脳機能改善用機能性食品を構成する他の構成成分、特に第1の植物エキスや第2の植物エキスを必要量含有させる余地が無くなるため好ましくない。
【0054】
第3の植物エキスの摂取量を、粉末換算で1日あたりの摂取量が0.2~400mg、また低水分剤形にて本剤を調製した場合の第3の植物エキスの含有量を粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量とすることで、第3の植物エキスによる補助的な効果を好適に発揮させることができる。
【0055】
以下、本実施形態に係る脳機能改善用機能性食品について、試験結果等を参照しつつ更に説明する。
【0056】
〔1.実施例1〕
第1実施形態に係る脳機能改善用機能食品では、第1の食物エキス、第2の植物エキスおよび第3の植物エキスの配合比に着目して調製したサンプル食品について、
〔1-1.記憶力改善確認試験〕
〔1-2.脳内血流量及び脳内酸素飽和度確認試験〕
〔1-3.サプリメント製造試験〕
を行った。
【0057】
〔1-1.記憶力改善確認試験〕
本試験では、配合の異なる複数のサンプル食品を調製し、被験者に摂取させることで記憶力の改善が見られるかについて確認を行った。
【0058】
(1-1-1.被験サンプルの調製)
本試験を行うにあたり、まず、13種類の被験サンプルを調製した。具体的な処方は表1に示す。
【表1】
【0059】
被験サンプル1~12の12種類の被験サンプルは、植物エキスを含有する被験サンプルである。Cont.で示す被験サンプルは、植物エキスを含まないプラセボサンプルである。
【0060】
また、被験サンプル1~12を調製するための原料として、第1の植物エキスはバコパエキス末、第2の植物エキスはバナバエキス末、第3の植物エキスはヤマグワエキス末を使用した。
【0061】
バコパエキス末は、バコパ・モニエリの葉又は全草の部分を水又はエタノールにて抽出した後、得られた抽出液を乾燥させて粉末にしたものである。
【0062】
バナバエキス末は、バナバの葉又は全草の部分を水又はエタノールにて抽出した後、得られた抽出液を乾燥させて粉末にしたものである。
【0063】
ヤマグワエキス末は、ヤマグワの葉を水又はエタノールにて抽出した後、得られた抽出液を乾燥させて粉末にしたものである。
【0064】
また、各被験サンプルの総重量を一致させるために、賦形剤としてデキストリンを使用した。
【0065】
調製した被験サンプル1~12とプラセボサンプルは粉末状の製剤であり、3.2gを1包として包装した。
【0066】
(1-1-2.確認試験)
被験者は46歳以上の者で、Wechsler Memory Scaleが6未満であり、且つ、Mini Mental Seate Examinationが24以下の者とした。78名の被験者を、各被験サンプルにつき6名ずつ無作為に割り当てた。
【0067】
また本試験では、ウェクスラー記憶検査を実施することにより、記憶力の改善について評価を行うこととした。各被験者は、被験サンプルの摂取前及び継続摂取8週間後(2か月後)に、記憶検査を実施した。なお、被験者は8週間の継続摂取期間中は1日あたり1包(3.2g)の被験サンプルを摂取した。その結果を
図1に示す。
【0068】
図1(a)は各被験サンプルの摂取前後の全記憶スコアを示すグラフであり、
図1(b)は摂取後の全記憶スコアに関し幾つかの群間における有意差を示した表である。
図1に示すこれらの図表から分かるように、プラセボサンプル(Cont.)では記憶力の改善は見られなかったものの、被験サンプル1,2,7,8は改善にやや有効、被験サンプル3,4,5,9,10,11では改善に有効、被験サンプル6や被験サンプル12では改善に著効を示す結果となった。
【0069】
また、被験サンプル3や被験サンプル9において、摂取前後に関し、群間の有意差(P<0.05)が確認されたことから、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスであるバナバエキス末に由来して、脳機能の改善作用や効果を生起できることが示された。
【0070】
また図示は割愛するが、摂取後の全記憶スコアに関し被験サンプル4~6は被験サンプル3との間で群間の有意差(P<0.05)が見られ、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末や第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末のいずれか一方、又は双方を第2の植物エキスであるバナバエキス末と併用すれば、バナバエキス末を単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されることが示された。また特に、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末と第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末の双方を第2の植物エキスであるバナバエキス末と併用すれば、第1又は第3のいずれかの植物エキスを併用した場合に比して、脳機能の改善作用や効果が更に顕著に発揮されることが示された。
【0071】
また、更に低用量の場合もこれと同様に、摂取後の全記憶スコアに関し被験サンプル10~12は被験サンプル9との間で群間の有意差(P<0.05)が見られ、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末や第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末のいずれか一方、又は双方を第2の植物エキスであるバナバエキス末と併用すれば、バナバエキス末を単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されることが示された。
【0072】
また特に、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末と第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末の双方を第2の植物エキスであるバナバエキス末と併用すれば、第1又は第3のいずれかの植物エキスを併用した場合に比して、脳機能の改善作用や効果が更に顕著に発揮されることが示された。
【0073】
〔1-2.脳内血流量及び脳内酸素飽和度確認試験〕
本試験では、〔1-1.記憶力改善確認試験〕と同じサンプル食品を用い、被験者に摂取させた際の脳内血流量及び脳内酸素飽和度について確認を行った。具体的には、先述の如く〔1-1.記憶力改善確認試験〕において被験サンプルの摂取前及び継続摂取8週間後(2か月後)に記憶検査を実施したが、その記憶検査と共に脳内血流量及び脳内酸素飽和度についても測定し、データを取得した。測定は、TOS-96(トステック社製)を用いて行った。その結果を
図2及び
図3に示す。
【0074】
図2(a)は各被験サンプルの脳内血流量相対値(摂取前を100%とした場合)を示すグラフであり、
図2(b)は摂取後の脳内血流量相対値に関し幾つかの群間における有意差を示した表である。また、
図3(a)は各被験サンプルの脳内酸素飽和度を示すグラフであり、
図3(b)は摂取後の脳内酸素飽和度に関し幾つかの群間における有意差を示した表である。
【0075】
まず、
図2に示すこれらの図表から分かるように、プラセボサンプル(Cont.)では脳内血流量の改善による脳機能の改善は見られなかったものの、第1~第3の少なくともいずれかの植物エキスを含有する被験サンプル1~12では、脳内血流量の改善(脳機能の改善)が見られた。
【0076】
また、脳内血流量の改善は、被験サンプル3は被験サンプル1又は2に比して良好であり、植物エキスを2種配合した被験サンプル4や5は、植物エキスを1種しか配合していない被験サンプル1~3に比して良好であり、更に第1~第3の植物エキスを配合した被験サンプル6は、被験サンプル1~5と比較して良好である結果が得られた。また、この傾向は低用量の被験サンプル7~12においても同様であった。
【0077】
次に、
図3の脳内酸素飽和度について参照すると、やはりプラセボサンプル(Cont.)では脳内酸素飽和度の改善による脳機能の改善は見られなかったものの、第1~第3の少なくともいずれかの植物エキスを含有する被験サンプル1~12では、脳内酸素飽和度の改善(脳機能の改善)が見られた。
【0078】
また、脳内酸素飽和度の改善は、被験サンプル3は被験サンプル1又は2に比して良好であり、植物エキスを2種配合した被験サンプル4や5は、植物エキスを1種しか配合していない被験サンプル1~3に比して良好であり、更に第1~第3の植物エキスを配合した被験サンプル6は、被験サンプル1~5と比較して良好である結果が得られた。また、この傾向は低用量の被験サンプル7~12においても同様であった。
【0079】
また図示は割愛するが、摂取後の脳内血流量相対値及び脳内酸素飽和度に関し被験サンプル4~6は被験サンプル3との間で群間の有意差(P<0.05)が見られ、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末や第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末のいずれか一方、又は双方を第2の植物エキスであるバナバエキス末と併用すれば、バナバエキス末を単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されることが示された。また特に、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末と第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末の双方を第2の植物エキスであるバナバエキス末と併用すれば、第1又は第3のいずれかの植物エキスを併用した場合に比して、脳内血流量相対値及び脳内酸素飽和度の改善に伴う脳機能の改善作用や効果が更に顕著に発揮されることが示された。
【0080】
また、更に低用量の場合もこれと同様に、摂取後の全記憶スコアに関し被験サンプル10~12は被験サンプル9との間で群間の有意差(P<0.05)が見られ、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末や第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末のいずれか一方、又は双方を第2の植物エキスであるバナバエキス末と併用すれば、バナバエキス末を単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されることが示された。
また特に、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末と第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末の双方を第2の植物エキスであるバナバエキス末と併用すれば、第1又は第3のいずれかの植物エキスを併用した場合に比して、脳内血流量相対値及び脳内酸素飽和度の改善に伴う脳機能の改善作用や効果が更に顕著に発揮されることが示された。
【0081】
〔1-3.サプリメント製造試験〕
次に、より製品に近い処方において脳機能の改善が図れるか否かを検討すべく、A1~A7の7種のサプリメント機能性食品を調製した。その処方を表2に示す。
【表2】
【0082】
機能性食品A1~A7は、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末や第2の植物エキスであるバナバエキス末、第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末の配合量や、必要に応じてオリゴ糖、甘味料の量を変化させている。なお、オリゴ糖や甘味料の量の変化は、第2の植物エキスであるバナバエキス末に由来する脳機能の改善には影響を与えない。
【0083】
そして、これら機能性食品A1~A7を前述した〔1-1.記憶力改善確認試験〕と同様の手法により脳機能の改善について検討した。ただし、機能性食品の摂取量は、1日当たり1200mgとした。その結果、いずれの機能性食品A1~A7においても脳機能の改善が確認された。
【0084】
これらのことから、第1の植物エキスは粉末換算で5~33w/w%に相当する量、第2の植物エキスは粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量、第3の植物エキスは粉末換算で0.0157~33w/w%に相当する量の範囲内で添加することにより、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品にできることが示された。
【0085】
また、第1の植物エキスの1日あたりの摂取量が粉末換算で60~400mg程度、第2の植物エキスの1日あたりの摂取量が粉末換算で0.2~400mg程度、第3の植物エキスの1日あたりの摂取量が粉末換算で0.2~400mg程度の範囲内となるよう各植物エキスの配合量を調整することで、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品にできることが示された。
【0086】
また付言すれば、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来する脳機能の改善を作用又は効果として含む目的のための機能性食品であって前記第2の植物エキス又は前記脳機能の改善の発現と対応する前記第2の植物エキスの構成成分を保健機能成分(関与成分)とした機能性食品、例えばバナバエキスやこれに含まれるコロソリン酸を保健機能成分とし脳機能の改善に由来する健康増進表示を有するような機能性食品において、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスを、前記脳機能の改善を助長する補助成分原料として使用すれば、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同第2の植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう脳機能改善用機能性食品を構成可能であることが示された。
【0087】
上述してきたように、本発明に係る脳機能改善用機能性食品によれば、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスとのそれぞれ異なる植物由来の3種の植物エキスを含有してなることとしたため、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、同植物エキスを単独で用いる場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品を提供することができる。
【0088】
〔2.実施例2〕
実施例2に係る脳機能改善用機能食品では、添加する環状オリゴ糖に着目して調製したサンプル食品について、
〔2-1.記憶力改善確認試験〕
〔2-2.脳内血流量及び脳内酸素飽和度確認試験〕
〔2-3.サプリメント製造試験〕
を行った。
【0089】
環状オリゴ糖は、環状構造を有するオリゴ糖の総称であって、複数個のグルコースが環状に連なった形態の多糖類であり、より具体的には、6個のグルコースよりなるα-シクロデキストリン、7個のグルコースよりなるβ-シクロデキストリン、8個のグルコースよりなるγ-シクロデキストリンなどである。本実施形態に係る環状オリゴ糖は、上記いずれのシクロデキストリンを採用してもよい。
【0090】
また、環状オリゴ糖は、賦形剤として用いるデキストリンとは異なるものである。一般に賦形剤として用いるデキストリンは、デンプンを部分加水分解して低分子化したもので、デキストロース当量(DE)が10以下のものである。上述のシクロデキストリンは、鎖状や網状にまとまって機能する多量体であるデキストリンとは異なる特徴を有する。
【0091】
環状オリゴ糖は、環状構造の内側が疎水性、外側が親水性という構造を持つ。このような構造によって、環状オリゴ糖は、難水溶性分子を環状構造内に取込み、かつ、外側の親水性の作用によって水への溶解性を示す。
【0092】
〔2-1.記憶力改善確認試験〕
本試験では、配合の異なる複数のサンプル食品を調製し、被験者に摂取させることで記憶力の改善効果が環状オリゴ糖により増進されるかについて確認を行った。
【0093】
(2-1-1.被験サンプルの調製)
本試験を行うにあたり、まず、7種類の被験サンプルを調製した。具体的な処方は表3に示す。
【表3】
【0094】
被験サンプルB1~B6の6種類の被験サンプルは、第1~第3の植物エキスをそれぞれ等量ずつ含有する被験サンプルである。このうち、被験サンプルB1は環状オリゴ糖を含まないサンプルである。また、Cont.で示す被験サンプルは、植物エキスおよび環状オリゴ糖を含まないプラセボサンプルである。
【0095】
被験サンプルB1~B6を調製するための原料として、第1の植物エキスはバコパエキス末、第2の植物エキスはバナバエキス末、第3の植物エキスはヤマグワエキス末を使用した。
【0096】
バコパエキス末、バナバエキス末およびヤマグワエキス末は、実施例1と同様の製法により調整された同等の品質のものを使用した。
【0097】
また、各被験サンプルの総重量を一致させるために、賦形剤としてデキストリンを使用した。
【0098】
調製した被験サンプルB1~B6とプラセボサンプルは粉末状の製剤であり、0.9gを1包として包装した。
【0099】
(2-1-2.確認試験)
被験者は46歳以上の者で、Wechsler Memory Scaleが6未満であり、且つ、Mini Mental Seate Examinationが24以下の者とした。42名の被験者を、各被験サンプルにつき6名ずつ無作為に割り当てた。
【0100】
また本試験では、ウェクスラー記憶検査を実施することにより、記憶力の改善について評価を行うこととした。各被験者は、被験サンプルの摂取前及び継続摂取8週間後(2か月後)に、記憶検査を実施した。なお、被験者は8週間の継続摂取期間中は1日あたり1包(0.9g)の被験サンプルを摂取した。その結果を
図4に示す。
【0101】
図4(a)は各被験サンプルの摂取前後の全記憶スコアを示すグラフであり、
図4(b)は摂取後の全記憶スコアに関し幾つかの群間における有意差を示した表である。
図4に示すこれらの図表から分かるように、プラセボサンプル(Cont.)では記憶力の改善は見られなかったものの、被験サンプルB1,B2,B6では改善に有効、被験サンプルB3~B5では改善に著効を示す結果となった。
【0102】
また、図示は割愛するが、プラセボサンプルとの比較において、被験サンプルB1~B6では摂取後の全記憶スコアに関し、群間の有意差(P<0.01)が確認されたことから、第1~第3の植物エキスの併用により、脳機能の改善作用や効果を生起できることが示された。
【0103】
また、環状オリゴ糖を含まない被験サンプルB1と、環状オリゴ糖を含む被験サンプルB2~B6との比較において、環状オリゴ糖を3%含む被験サンプルB2および環状オリゴ糖を13%含む被験サンプルB6では郡間の有意差は見られなかったが、環状オリゴ糖を5%含む被験サンプルB3、8%含む被験サンプルB4、10%含む被験サンプルB6では、それぞれ群間の有意差(P<0.01)が確認された。
【0104】
また、環状オリゴ糖を3%含む被験サンプルB2と、被験サンプルB2よりも環状オリゴ糖の含有量が多い被験サンプルB3~B6との比較において、環状オリゴ糖を13%含む被験サンプルB6では郡間の有意差は見られなかったが、環状オリゴ糖を5%含む被験サンプルB3、8%含む被験サンプルB4、10%含む被験サンプルB5では、それぞれ群内の有意差(P<0.01)が確認された。
【0105】
さらに、環状オリゴ糖を13%含む被験サンプルB6と、環状オリゴ糖を5%含む被験サンプルB3、8%含む被験サンプルB4、10%含む被験サンプルB5との比較において、それぞれ群間の有意差(P<0.01又はP<0.05)が確認された。
【0106】
これらの結果から、環状オリゴ糖の含有量が5%以上10%以下では、脳機能の改善作用を増進されることが示された。
【0107】
〔2-2.脳内血流量及び脳内酸素飽和度確認試験〕
本試験では、〔2-1.記憶力改善確認試験〕と同じサンプル食品を用い、被験者に摂取させた際の脳内血流量及び脳内酸素飽和度について確認を行った。具体的には、先述の如く〔2-1.記憶力改善確認試験〕において被験サンプルの摂取前及び継続摂取8週間後(2か月後)に記憶検査を実施したが、その記憶検査と共に脳内血流量及び脳内酸素飽和度についても測定し、データを取得した。測定は、TOS-96(トステック社製)を用いて行った。その結果を
図5及び
図6に示す。
【0108】
図5(a)は各被験サンプルの脳内血流量相対値(摂取前を100%とした場合)を示すグラフであり、
図5(b)は摂取後の脳内血流量相対値に関し幾つかの群間における有意差を示した表である。また、
図6(a)は各被験サンプルの脳内酸素飽和度を示すグラフであり、
図6(b)は摂取後の脳内酸素飽和度に関し幾つかの群間における有意差を示した表である。
【0109】
まず、
図5に示すこれらの図表から分かるように、プラセボサンプル(Cont.)では脳内血流量の改善による脳機能の改善は見られなかったものの、第1~第3の植物エキスを等量ずつ含有する被験サンプルB1~B6では、脳内血流量の改善(脳機能の改善)が見られた。
【0110】
また、脳内血流量の改善は、被験サンプルB3及びB4は被験サンプルB1,B2およびB6に比して良好であり、10%の環状オリゴ糖を配合した被験サンプルB5は、被験サンプルB3およびB4と比較してさらに良好である結果が得られた。
【0111】
次に、
図6の脳内酸素飽和度について参照すると、やはりプラセボサンプル(Cont.)では脳内酸素飽和度の改善による脳機能の改善は見られなかったものの、第1~第3の植物エキスを含有する被験サンプルB1~B6では、脳内酸素飽和度の改善(脳機能の改善)が見られた。
【0112】
また、脳内酸素飽和度の改善は、被験サンプルB3は被験サンプルB1,B2およびB6に比して良好であり、被験サンプルB4は、環状オリゴ糖の含有量が5%未満の被験サンプルB3に比して良好であり、更に10%の環状オリゴ糖を含有する被験サンプルB5は、被験サンプルB4と比較して良好である結果が得られた。
【0113】
また、環状オリゴ糖を含まない場合、環状オリゴ糖の含有量が3%の場合、および、環状オリゴ糖の含有量が13%の場合に比して、環状オリゴ糖を5%以上10%以下含有した場合では、第1~第3の植物エキスによる脳内血流量相対値及び脳内酸素飽和度の改善に伴う脳機能の改善作用や効果が更に増進されることが示された。
【0114】
〔2-3.サプリメント製造試験〕
次に、より製品に近い処方において脳機能の改善効果の増進が図れるか否かを検討すべく、環状オリゴ糖を含むサプリメント機能性食品Cを調製した。その処方を表2に示す。
【表4】
【0115】
機能性食品Cは、第1の植物エキスとしてのバコパエキス末を粉末換算で71w/w%に相当する量、第2の植物エキスであるバナバエキス末を粉末換算で0.113w/w%に相当する量、第3の植物エキスとしてのヤマグワエキス末を粉末換算で0.113w/w%に相当する量を配合し、更に環状オリゴ糖を粉末換算で5w/w%に相当する量を配合している。
【0116】
また、機能性食品Cは1錠の重量が300mgの錠剤であり、粉末混合物の結合剤等に用いる添加物として、結晶セルロース、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、二酸化ケイ素およびステアリン酸カルシウムを含む。
【0117】
そして、この機能性食品Cを前述した〔2-1.記憶力改善確認試験〕と同様の手法により環状オリゴ糖による脳機能の改善効果の増進について検討した。ただし、機能性食品Cの摂取量は、1日当たり900mg(3錠)とした。その結果、機能性食品Cにおいても脳機能の改善効果の増進が確認された。
【0118】
これらのことから、第1の植物エキス及び第3の植物エキスを加えることにより、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、粉末換算で5w/w%に相当する量の環状オリゴ糖を添加することにより、第1~第3の植物エキスを混合しただけの場合に比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品にできることが示された。
【0119】
なお、機能性食品Cでは、第1の植物エキスの1日あたりの摂取量が粉末換算で639mg程度、第2の植物エキスの1日あたりの摂取量が粉末換算で1.0mg程度、第3の植物エキスの1日あたりの摂取量が粉末換算で1.0mg程度となる。各植物エキスの1日当たりの摂取量は、実施例1により検討した範囲で、各植物エキスの配合量の変更により調整することができることは勿論であるが、各植物エキスの原料となる植物、並びに、エキス末に含まれる、アルカロイド、フラボノイド、トリテルペノイド、ポリフェノール等の含有比率に応じて、実施例1により検討した範囲を超えて配合してもよい。また、機能性食品Cにおける各植物エキスのそれぞれの配合量は、脳機能の改善作用の低下をもたらさない範囲において変更可能である。さらに、機能性食品Cでは、環状オリゴ糖の1日あたり摂取量も、45~90mg程度となるように配合量が調整される。このような配合により、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、環状オリゴ糖を含まない場合に比して、脳機能の改善作用や効果がより増進されるよう構成された脳機能改善用機能性食品にできることが示された。
【0120】
また付言すれば、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来する脳機能の改善を作用又は効果として含む目的のための機能性食品であって前記第2の植物エキス又は前記脳機能の改善の発現と対応する前記第2の植物エキスの構成成分を保健機能成分(関与成分)とした機能性食品、例えばバナバエキスやこれに含まれるコロソリン酸を保健機能成分とし脳機能の改善に由来する健康増進表示を有するような機能性食品において、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスを、前記脳機能の改善を助長する補助成分原料として使用すれば、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、トリテルペノイド、アルカロイド及びフラボノイド並びにポリフェノール等を環状オリゴ糖が環状構造内に取込み、かつ、外側の親水性の作用によって水への溶解性を示すことで、関与成分の体内への吸収効率を高め、脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう脳機能改善用機能性食品を構成可能であることが示された。
【0121】
上述してきたように、本発明に係る脳機能改善用機能性食品によれば、アルカロイド及びフラボノイドを含有する第1の植物エキスと、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスと、ポリフェノールを含有する第3の植物エキスとのそれぞれ異なる植物由来の3種の植物エキスを含有し、さらに環状オリゴ糖を含有してなることとしたため、トリテルペノイドを含有する第2の植物エキスに由来した脳機能の改善作用や効果を生起させることができ、しかも、環状オリゴ糖を含有しない場合と比して脳機能の改善作用や効果がより顕著に発揮されるよう構成された脳機能改善用機能性食品を提供することができる。
【0122】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。