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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151619
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】二酸化炭素供給装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/32 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B01D53/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065103
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】青島 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽介
(72)【発明者】
【氏名】滝川 弘幸
(57)【要約】
【課題】ランニングコストを低減することが可能な二酸化炭素供給装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素供給装置10は、筐体内の二酸化炭素の濃度を測定することができる二酸化炭素センサ12bを用いて、電気化学セル12aに脱離電位が印加されたときの、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化を測定する。そして、測定された時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを生成する。この脱離学習データに基づいて、脱離モードにおける脱離電位の印加時間を設定することにより、無駄に脱離電位を印加することを防ぐことができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、前記電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給対象(16)に供給する二酸化炭素供給装置であって、
前記筐体内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサ(12b)と、
前記筐体内を密閉した状態として、二酸化炭素を吸着している前記電気化学セルに脱離電位を印加し、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化を前記二酸化炭素センサを用いて測定する脱離データ測定部(S400~S440)と、
前記脱離データ測定部によって測定された、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と前記電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを生成する脱離学習データ生成部(S450)と、を備え、
前記脱離学習データに基づいて、前記脱離モードにおける脱離電位の印加時間が設定される二酸化炭素供給装置。
【請求項2】
前記筐体内に二酸化炭素を含有した大気を送り込む送風機(14)と、
前記送風機によって前記筐体内に二酸化炭素を含有した大気を送り込みつつ、前記電気化学セルに吸着電位を印加することにより、前記脱離データ測定部による測定前に、前記電気化学セルが二酸化炭素を吸着している状態にする学習前準備部(S300~S330)と、をさらに備える請求項1に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項3】
前記学習前準備部は、前記電気化学セルの最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が前記電気化学セルに吸着されることが推定される所定の推定時間が経過するまで、又は、前記二酸化炭素センサによって測定される前記電気化学セルの下流側の濃度変化が前記電気化学セルの最大吸着量の吸着を示すまで、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる、請求項2に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項4】
前記脱離データ測定部による測定後の、前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素が前記筐体内に存在しているとき、前記筐体内を密閉した状態を維持しつつ、前記電気化学セルに吸着電位を印加し、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化を前記二酸化炭素センサを用いて測定する吸着データ測定部(S500~S540)と、
前記吸着データ測定部によって測定された、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と前記電気化学セルによる二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを生成する吸着学習データ生成部(S550)と、をさらに備え、
前記吸着学習データに基づいて、前記吸着モードにおける吸着電位の印加時間が設定される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項5】
前記脱離データ測定部は、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化が所定値以下となるまで、又は、前記筐体内の二酸化炭素濃度が、前記電気化学セルからの二酸化炭素の脱離の完了を示す値に上昇するまで、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化を測定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項6】
前記脱離学習データに基づいて、前記脱離モードにおける脱離電位の印加時間を設定する際、前記送風機を駆動する制御電圧の大きさと、前記電気化学セルに印加される脱離電位の大きさとの少なくとも一方に応じて、二酸化炭素の脱離量に対する経過時間を変化させるように、前記脱離学習データを修正する脱離学習データ修正部(S710、S720)をさらに備える、請求項2又は3に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項7】
前記脱離学習データの生成は、ユーザによる要求時、前記二酸化炭素供給装置の稼働開始時、前記二酸化炭素供給装置の停止期間中、前記二酸化炭素供給装置の稼働時間又は稼働回数が所定値に達したとき、前記電気化学セルのメンテナンス又は交換後、及び天候、地域、季節に応じた学習タイミングとなったときの少なくとも1つに応じて実施される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項8】
筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、前記電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給対象に供給する二酸化炭素供給装置であって、
前記筐体内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサ(12b)と、
前記筐体内を密閉した状態、かつ前記筐体内の二酸化炭素濃度が大気中の二酸化炭素濃度よりも高い状態で、前記電気化学セルに吸着電位を印加し、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化を前記二酸化炭素センサを用いて測定する吸着データ測定部(S500~S540)と、
前記吸着データ測定部によって測定された、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と前記電気化学セルによる二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを生成する吸着学習データ生成部(S550~S570)と、を備え、
前記吸着学習データに基づいて、前記吸着モードにおける吸着電位の印加時間が設定される二酸化炭素供給装置。
【請求項9】
前記吸着データ測定部による測定前に、前記筐体内を密閉した状態として、二酸化炭素を吸着している前記電気化学セルに脱離電位を印加し、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化を前記二酸化炭素センサを用いて測定する脱離データ測定部(S400~S440)と、
前記脱離データ測定部によって測定された、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と前記電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを生成する脱離学習データ生成部(S450)と、をさらに備え、
前記脱離学習データに基づいて、前記脱離モードにおける脱離電位の印加時間が設定される、請求項8に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項10】
前記筐体内に二酸化炭素を含有した大気を送り込む送風機(14)と、
前記送風機によって前記筐体内に二酸化炭素を含有した大気を送り込みつつ、前記電気化学セルに吸着電位を印加することにより、前記脱離データ測定部による測定前に、前記電気化学セルが二酸化炭素を吸着している状態にする学習前準備部(S300~S330)と、をさらに備える請求項9に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項11】
前記学習前準備部は、前記電気化学セルの最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が前記電気化学セルに吸着されることが推定される推定時間が経過するまで、又は、前記二酸化炭素センサによって測定される前記電気化学セルの下流側の濃度変化が前記電気化学セルの最大吸着量の吸着を示すまで、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる、請求項10に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項12】
前記吸着データ測定部は、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化が所定値以下となるまで、又は、前記筐体内の二酸化炭素濃度が、前記電気化学セルへの二酸化炭素の吸着の完了を示す値に低下するまで、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化を測定する、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項13】
前記吸着データ測定部は、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化が所定値以下となるまで、又は、前記筐体内の二酸化炭素濃度が前記電気化学セルへの二酸化炭素の吸着の完了を示す値に低下するまで、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化を測定するものであり、
前記吸着学習データ生成部は、前記学習前準備部による二酸化炭素の吸着時間と、前記吸着データ測定部による測定時間との相違に応じて、二酸化炭素の吸着量に対する経過時間を変化させて、前記吸着学習データを更新する、請求項11に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項14】
前記吸着学習データに基づいて、前記吸着モードにおける吸着電位の印加時間を設定する際、前記送風機を駆動する制御電圧の大きさと、前記電気化学セルに印加される吸着電位の大きさとの少なくとも一方に応じて、二酸化炭素の吸着量に対する経過時間を変化させるように、前記吸着学習データを修正する吸着学習データ修正部(S610、S620)をさらに備える、請求項10、11、及び13のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項15】
前記吸着学習データの生成は、ユーザによる要求時、前記二酸化炭素供給装置の稼働開始時、前記二酸化炭素供給装置の停止期間中、前記二酸化炭素供給装置の稼働時間又は稼働回数が所定値に達したとき、前記電気化学セルのメンテナンス又は交換後、及び天候、地域、季節に応じた学習タイミングとなったときの少なくとも1つに応じて実施される、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項16】
前記吸着モードと前記脱離モードは、前記二酸化炭素供給対象における二酸化炭素濃度が目標濃度に達するまで繰り返し実施される、請求項1乃至3、8乃至11のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、電気化学セルから脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給対象に供給する二酸化炭素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1や特許文献2には、電気化学デバイスや水酸化ナトリウム水溶液を用いて、屋内の空気中から二酸化炭素を回収して、二酸化炭素濃度を減少させる二酸化炭素回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-144024号公報
【特許文献2】特開2022-8288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような二酸化炭素回収装置を用いて、農作物の収穫量を増加させることが試みられている。この場合、二酸化炭素の回収及び供給を行う装置が、大気中の二酸化炭素を回収するとともに、回収した二酸化炭素をビニールハウス内に供給するように用いられる。これにより、ビニールハウス内の二酸化濃度を、例えば通常の約3倍程度まで高めることにより、農作物の収穫量を最大で3割程度増加させることが可能となる。
【0005】
しかしながら、二酸化炭素の回収や供給を行う際に、装置において過剰なエネルギーが消費されてしまうと、装置を稼働するためのランニングコストが高くなるという問題がある。
【0006】
本開示は、上述した点に鑑みてなされたものであり、ランニングコストを低減することが可能な二酸化炭素供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様による二酸化炭素供給装置は、筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、電気化学セルから脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給対象(16)に供給する二酸化炭素供給装置であって、
筐体内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサ(12b)と、
筐体内を密閉した状態として、二酸化炭素を吸着している電気化学セルに脱離電位を印加し、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化を二酸化炭素センサを用いて測定する脱離データ測定部(S400~S440)と、
脱離データ測定部によって測定された、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを生成する脱離学習データ生成部(S450)と、を備え、
脱離学習データに基づいて、脱離モードにおける脱離電位の印加時間が設定されるように構成される。
【0008】
上述した第1の態様による二酸化炭素供給装置では、脱離データ測定部が、筐体内の二酸化炭素の濃度を測定することができる二酸化炭素センサを用いて、電気化学セルに脱離電位が印加されたときの、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化を測定する。そして、脱離学習データ生成部が、脱離データ測定部によって測定された、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを生成する。このように、実際に、二酸化炭素が電気化学セルから脱離されるときの筐体内の二酸化炭素の濃度変化に基づいて、経過時間と電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データが生成される。従って、この脱離学習データに基づいて、脱離モードにおける脱離電位の印加時間を設定することにより、例えば、電気化学セルに吸着された二酸化炭素の脱離が実質的に終了しているにも係らず、脱離電位の印加を継続するなど、無駄に脱離電位を印加することを防ぐことができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0009】
また、本開示の第2の態様による二酸化炭素供給装置は、筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、電気化学セルから脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給対象(16)に供給する二酸化炭素供給装置であって、
筐体内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサ(12b)と、
筐体内を密閉した状態、かつ筐体内の二酸化炭素濃度が大気中の二酸化炭素濃度よりも高い状態で、電気化学セルに吸着電位を印加し、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化を二酸化炭素センサを用いて測定する吸着データ測定部(S500~S540)と、
吸着データ測定部によって測定された、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セルによる二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを生成する吸着学習データ生成部(S550)と、を備え、
吸着学習データに基づいて、吸着モードにおける吸着電位の印加時間が設定されるように構成される。
【0010】
上述した第2の態様による二酸化炭素供給装置では、吸着データ測定部が、筐体内の二酸化炭素の濃度を測定することができる二酸化炭素センサを用いて、電気化学セルに吸着電位が印加されたときの、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化を測定する。そして、吸着学習データ生成部が、吸着データ測定部によって測定された、時間経過に伴う筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セルからの二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを生成する。このように、実際に、二酸化炭素が電気化学セルに吸着されるときの筐体内の二酸化炭素の濃度変化に基づいて、経過時間と電気化学セルによる二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データが生成される。従って、この吸着学習データに基づいて、吸着モードにおける吸着電位の印加時間を設定することにより、例えば、電気化学セルによって吸着可能な二酸化炭素が既に吸着されているにも係らず、吸着電位の印加を継続するなど、無駄に吸着電位を印加することを防ぐことができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0011】
上記括弧内の参照番号は、本開示の理解を容易にすべく、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、なんら本開示の範囲を制限することを意図したものではない。
【0012】
また、上記した本開示の特徴以外の、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術的特徴に関しては、後述する実施形態の説明及び添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る二酸化炭素供給装置の構成を概略的に示す構成図である。
図2】吸着学習データ及び脱離学習データを作成する学習モード処理を含む、制御装置によって実行される二酸化炭素供給処理を示すフローチャートである。
図3】(a)は、二酸化炭素供給装置が吸着モードで動作するときの各部の作動状態を示し、(b)は、二酸化炭素供給装置が脱離モードで動作するときの各部の作動状態を示す図である。
図4】学習モード処理の実行条件及び実行タイミングの例を示す表である。
図5】学習モード処理の詳細を示すフローチャートである。
図6】(a)は、二酸化炭素供給装置が事前準備吸着モードで動作するときの各部の作動状態を示し、(b)は、二酸化炭素供給装置が学習用脱離モードで動作するときの各部の作動状態を示し、(c)は、二酸化炭素供給装置が学習用吸着モードで動作するときの各部の作動状態を示す図である。
図7】脱離学習データ作成処理の詳細を示すフローチャートである。
図8】学習用脱離モードにおいて、二酸化炭素センサを用いて測定された、時間経過に伴う回収器内の二酸化炭素濃度の変化の一例を示すグラフである。
図9】時間経過に伴う回収器内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて作成される、経過時間と電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データの一例を示すグラフである。
図10】吸着学習データ作成処理の詳細を示すフローチャートである。
図11】学習用吸着モードにおいて、二酸化炭素センサを用いて測定された、時間経過に伴う回収器内の二酸化炭素濃度の変化の一例を示すグラフである。
図12】時間経過に伴う回収器内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて作成される、経過時間と電気化学セルへの二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データの一例を示すグラフである。
図13】事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との相違に応じた、吸着学習データの更新について説明するための説明図である。
図14】吸着モード実行時間設定処理の詳細を示すフローチャートである。
図15】吸着モードにおける二酸化炭素供給装置の各動作タイプの、吸着学習データの修正要否、選択条件、及び制御値の例を示す表である。
図16】吸着学習データの修正について説明するための説明図である。
図17】脱離モード実行時間設定処理の詳細を示すフローチャートである。
図18】脱離モードにおける二酸化炭素供給装置の各動作タイプの、脱離学習データの修正要否、選択条件、及び制御値の例を示す表である。
図19】脱離学習データの修正について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態に係る二酸化炭素供給装置が、図面を参照して、詳細に説明される。なお、複数の図面にわたって、互いに同一もしくは均等である部分には、同一又は対応する符号が付されている。本実施形態に係る二酸化炭素供給装置は、二酸化炭素を含有する大気から二酸化炭素を回収して、例えばビニールハウスなどの農業用設備や二酸化炭素の備蓄用タンクのような二酸化炭素供給先に供給するものである。図1は、本実施形態に係る二酸化炭素供給装置の構成を概略的に示している。
【0015】
図1に示す二酸化炭素供給装置10は、第1開閉弁11、回収器12、第2開閉弁13、送風機14、流路切替弁15、二酸化炭素供給先16に設けられた二酸化炭素センサ16a、及び、制御装置17などを備えている。
【0016】
第1開閉弁11は、大気と回収器12内とを連通する流路配管に設けられる。第1開閉弁11は、制御装置17によって開閉状態が制御される。第1開閉弁11が開かれると、大気と回収器12内とを連通する流路配管を介して、二酸化炭素を含有した大気が回収器12内に導入可能となる。一方、第1開閉弁11が閉じられると、大気と回収器12内とを連通する流路配管が遮断される。
【0017】
第2開閉弁13は、回収器12内と送風機14とを連通する流路配管に設けられる。第2開閉弁13は、制御装置17によって開閉状態が制御される。第2開閉弁13が開かれると、回収器12内と送風機14とを連通する流路配管を介して、回収器12から送風機14への大気の流動が可能となる。一方、第2開閉弁13が閉じられると、回収器12内と送風機14とを連通する流路配管が遮断される。従って、第1及び第2開閉弁11、13がともに閉じられると、回収器12は外部と連通するための流路配管が遮断され、回収器12内は密閉された状態となる。
【0018】
回収器12は、例えば金属製の筐体の内部に配置された電気化学セル12aを備える。さらに、回収器12は、回収器12内の二酸化炭素濃度を測定することが可能な二酸化炭素センサ12bを備える。二酸化炭素センサ12bは、例えば、二酸化炭素を含む大気が回収器12内を流動するとき、電気化学セル12aによって二酸化炭素が除去された後の大気中の二酸化炭素濃度を測定可能な位置に設けられる。
【0019】
電気化学セル12aは、電気化学反応によって、二酸化炭素を吸着して、大気から二酸化炭素を分離したり、吸着した二酸化炭素を脱離したりすることが可能なものである。二酸化炭素が分離された大気は、送風機14及び流路切替弁15を介して外部に放出される。また、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素は、二酸化炭素を多く含む大気として、送風機14によって二酸化炭素供給先16へ供給される。回収器12は、2つの開口部を有している。開口部の1つは、外部から二酸化炭素を含む大気を回収器12の筐体内部に導入するための導入口である。開口部のもう1つは、二酸化炭素が除去された大気や、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素を多く含む大気を排出するための排出口である。上述した第1開閉弁11が設けられた流路配管が導入口に接続され、第2開閉弁13が設けられた流路配管が排出口に接続される。なお、回収器12内とは、筐体の内部と同意である。
【0020】
回収器12の筐体内部には、複数の電気化学セル12aが積層して配置されている。複数の電気化学セル12aの積層方向は、大気の流れ方向に直交する方向となっている。個々の電気化学セル12aは板状に構成されており、板面がセル積層方向と交差するように配置されている。隣接する電気化学セル12aの間には、所定の隙間が設けられている。隣接する電気化学セル12aの間に設けられた隙間は、大気が流れる流路となる。
【0021】
各電気化学セル12aは、例えば、作用極集電層、作用極、セパレータ、対極、及び対極集電層などが、記載された順序で積層されて構成されている。なお、作用極は負極であり、作用極と対をなす対極は正極である。これら作用極と対極との間に印加する電位差を変化させることにより、作用極に電子を与えて、作用極の二酸化炭素吸着材に二酸化炭素を吸着させたり、作用極から電子を放出させて、吸着した二酸化炭素を脱離させたりすることができる。すなわち、電気化学セル12aの作用極と対極との間に吸着電位を印加することにより、電気化学セル12a(作用極の二酸化炭素吸着材)に二酸化炭素を吸着させることができる。また、電気化学セル12aの作用極と対極との間に、吸着電位とは異なる脱離電位を印加することにより、電気化学セル12aから二酸化炭素を脱離させることができる。
【0022】
作用極集電層は、二酸化炭素を含んだ大気が通過可能な孔を有する多孔質の導電性材料からなる。作用極集電層は、ガス透過性と導電性を有していればよく、作用極集電層の形成材料として、例えば金属材料や炭素質材料を用いることができる。
【0023】
作用極は、二酸化炭素吸着材、導電性物質、バインダなどを混合した材料から形成される。二酸化炭素吸着材は、電子を受け取ることで二酸化炭素を吸着し、電子を放出することで吸着していた二酸化炭素を脱離する性質を有する。二酸化炭素吸着材としては、例えばポリアントラキノンを用いることができる。導電性物質は、二酸化炭素吸着材への導電路を形成する。導電性物質としては、例えばカーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン等の炭素材料を用いることができる。バインダは、二酸化炭素吸着材や導電性物質を保持するためのものである。バインダとしては、例えば導電性樹脂を用いることができる。導電性樹脂は、例えば、導電性フィラーとしてAg等を含有するエポキシ樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂等を用いることができる。
【0024】
対極は、電気活性補助材、導電性物質、バインダなどを混合した材料から形成される。対極の導電性物質、バインダは、作用極の導電性物質、バインダと同様であるため説明を省略する。対極の電気活性補助剤は、電子供与剤となる活物質を有する材質で構成される。対極の電気活性補助材は、作用極の二酸化炭素吸着材との間で電子の授受を行う補助的な電気活性種である。電気活性補助材としては、例えば金属イオンの価数が変化することで、電子の授受を可能とする金属錯体を用いることができる。このような金属錯体としては、フェロセン、ニッケロセン、コバルトセン等のシクロペンタジエニル金属錯体、あるいはポルフィリン金属錯体等を挙げることができる。これらの金属錯体は、ポリマーでもモノマーでもよい。対極集電層は、作用極集電層と同様に、金属材料や炭素質材料などの導電性材料にて形成される。
【0025】
セパレータは、作用極と対極との間に配置され、作用極と対極とを分離する。セパレータは、作用極と対極との物理的な接触を防いで電気的短絡を抑制するとともに、イオンを透過させる絶縁性イオン透過膜である。セパレータとして、セルロース膜やポリマー、ポリマーとセラミックの複合材料等を用いることができる。
【0026】
なお、電気化学セル12aには、電解質が作用極及び対極にまたがるように設けられている。電解質は、例えばイオン液体を用いることができる。イオン液体は、常温常圧下で不揮発性を有する液体の塩である。
【0027】
送風機14は、いずれも図示は省略されているが、モータによって回転される送風ファンを有する。送風機14は、制御装置17によってオン、オフや、回転数が制御される。送風機14は、回収器12内の電気化学セル12aに二酸化炭素を吸着させるとき、又は、吸着された二酸化炭素を電気化学セル12aから脱離させ、脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給先16へ供給するときに、制御装置17によってオンされる。なお、送風機14として、大気を流動させることが可能なポンプを用いても良い。
【0028】
流路切替弁15は、送風機14の下流側の流路配管を流れる大気(二酸化炭素が除去された大気又は二酸化炭素を多く含む大気)の流路を切り替える三方弁である。流路切替弁15の流路の切り替えは、制御装置17によって制御される。具体的には、制御装置17は、回収器12内の電気化学セル12aに二酸化炭素を吸着させるとき、送風機14の下流側の流路配管を外部(大気)に連通するように流路切替弁15を制御する。これにより、二酸化炭素が除去された大気は、外部へ放出される。一方、制御装置17は、電気化学セル12aが吸着した二酸化炭素を脱離するとき、送風機14の下流側の流路配管を二酸化炭素供給先16に連通するように流路切替弁15を制御する。これにより、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素を含む大気、すなわち、通常よりも二酸化炭素を多く含む大気(例えば、通常の3倍程度の二酸化炭素濃度の大気)が二酸化炭素供給先16に供給される。
【0029】
二酸化炭素センサ16aは、二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度を所定の時間間隔で検出する。制御装置17は、二酸化炭素センサ16aによって検出された二酸化炭素濃度が所定の目標上限濃度に達すると、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給を停止する。また、例えば、二酸化炭素供給先16が農業用設備であり、農作物の光合成によって二酸化炭素濃度が低下し、所定の目標下限濃度に達すると、制御装置17は、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給を再開する。
【0030】
制御装置17は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺装置から構成されている。周辺装置には、センサ12b、16a、電気化学セル12a、送風機14との信号のやり取りを行うためのI/O回路などが含まれる。
【0031】
制御装置17は、ROM等の記憶媒体に記憶された制御プログラムに基づいて各種の演算処理を行い、第1開閉弁11、回収器12内の電気化学セル12a、第2開閉弁13、送風機14、流路切替弁15、などの各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置17は、二酸化炭素供給先16へ二酸化炭素の供給を行う場合、二酸化炭素供給装置10において、吸着モードと脱離モードとを含む、一連の制御シーケンスが実行されるように、各種制御対象機器の作動を制御する。さらに、制御装置17は、吸着モードにおける吸着電位の印加時間(吸着モードの実行時間とも言える)を設定するための吸着学習データや、脱離モードにおける脱離電位の印加時間(脱離モードの実行時間とも言える)を設定するための脱離学習データを作成する学習モード処理を実行する。学習モード処理は、後に詳細に説明される。また、制御装置17は、吸着モード及び脱離モード実行中の送風機14の回転数を制御することが可能である。
【0032】
ここで、二酸化炭素を多く含む大気を二酸化炭素供給先16へ供給する場合、二酸化炭素供給装置10は、吸着モードと脱離モードとを交互に実行する。その際、例えば、電気化学セル12aが吸着可能な二酸化炭素を既に吸着しているにも係らず、継続して吸着電位を電気化学セル12aに印加したり、電気化学セル12aに吸着された二酸化炭素の脱離が実質的に終了しているにも係らず、継続して脱離電位を印加したりすると、無駄にエネルギーを消費してしまい、ランニングコストの増加を招く。
【0033】
そのため、本実施形態においては、実際に、二酸化炭素が電気化学セル12aに吸着されるときの回収器12内の二酸化炭素の濃度変化に基づいて、制御装置17が、経過時間と電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを生成する。そして、制御装置17が、生成した吸着学習データに基づいて、吸着モードにおける吸着電位の印加時間を設定することにより、無駄に吸着電位を印加してエネルギーを消費することを防ぐことができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、実際に、二酸化炭素が電気化学セル12aから脱離されるときの回収器12内の二酸化炭素の濃度変化に基づいて、制御装置17が、経過時間と電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを生成する。そして、制御装置17が、生成した脱離学習データに基づいて、脱離モードにおける脱離電位の印加時間を設定することにより、無駄に脱離電位を印加してエネルギーを消費することを防ぐことができ、さらにランニングコストの低減を図ることができる。
【0035】
以下、吸着学習データ及び脱離学習データを作成する学習モード処理を含む、制御装置17によって実行される二酸化炭素供給処理を、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
図2のフローチャートに示すように、制御装置17は、まず、ステップS100において、学習モードを実行するか否かを判定する。制御装置17は、例えば、図4に示す学習モード実行条件に従って、学習モードを実行するか否かを判定することができる。具体的には、学習モード実行条件は、ユーザによる学習モード実行要求の発生、二酸化炭素供給装置10の電源オンによる稼働開始、夜間(二酸化炭素供給装置10が利用されていないとき)、電気化学セル12aの洗浄等のメンテナンスや電気化学セル12aの交換直後などを含むことができる。
【0037】
また、二酸化炭素供給装置10が農業用途に適用される場合、天気、地域、季節、供給先の規模に応じて、学習モードの実行回数を変更しても良い。例えば、天気が晴れている場合、日照時間が長い地域や季節の場合、農作物による光合成が促進されるので、二酸化炭素の供給時間が相対的に長くなる。また、二酸化炭素の供給先の規模が大きい場合にも、二酸化炭素の供給時間は相対的に長くなる。長時間に渡る二酸化炭素の供給中に、外部環境の二酸化炭素濃度が変化した場合、二酸化炭素濃度の変化前の吸着学習データや脱離学習データをそのまま使用して吸着モードの実行時間や脱離モードの実行時間を設定しても、適切な実行時間を設定し得ない虞があるためである。
【0038】
ステップS100において、制御装置17は、学習モード実行条件が成立し、学習モードを実行すると判定すると、ステップS110に進む。一方、制御装置17は、学習モードを実行しないと判定すると、ステップS120に進む。
【0039】
ステップS110では、制御装置17は、学習モード処理を実行する。学習モード処理は、後に詳細に説明する。学習モード処理の終了後、制御装置17は、ステップS160に進む。ステップS120では、制御装置17は、一連の制御シーケンスに含まれる吸着モードの実行時間を設定する。この吸着モード実行時間を設定するための処理は、学習モード処理の説明後に、詳細に説明する。
【0040】
ステップS130では、制御装置17は、吸着モードを開始する。この吸着モードでは、図3(a)に示すように、二酸化炭素を含有する大気を回収器12内に導入可能とするため、第1開閉弁11が開かれる。また、二酸化炭素が除去された大気を回収器12内から導出可能とするため、第2開閉弁13も開かれる。送風機14は、大気が回収器12内に引き込まれるように、指定された回転速度で駆動される。流路切替弁15は、送風機14の下流側の流路配管を外部に連通する。さらに、吸着モードでは、回収器12の電気化学セル12aの作用極と対極との間に、作用極の二酸化炭素吸着材が二酸化炭素を吸着可能となる吸着電位が印加される。この吸着電位は、指定された電位であり、後述する動作タイプに応じて可変される。
【0041】
このような第1開閉弁11、回収器12の電気化学セル12a、第2開閉弁13、送風機14、及び流路切替弁15などの制御により、吸着モードでは、図3(a)に点線矢印で示すように、二酸化炭素を含有した大気が、第1開閉弁11を通過して、回収器12内に進入する。回収器12内に進入した大気に含まれる二酸化炭素は、複数の電気化学セル12aに吸着される。その結果、大気から二酸化炭素が除去される。二酸化炭素が除去された大気は、第2開閉弁13及び送風機14を通過し、流路切替弁15にて外部へ向かう流路配管に導かれ、その流路配管を介して、外部に放出される。
【0042】
ステップS140では、制御装置17が、ステップS120で設定された吸着モード実行時間が経過したか否かを判定する。この判定処理において、制御装置17は、吸着モード実行時間が経過したと判定すると、ステップS150に進む。一方、制御装置17は、吸着モード実行時間が経過していないと判定すると、吸着モード実行時間が経過するまで、ステップS140の判定処理を繰り返し実行する。
【0043】
ステップS150では、吸着モードの終了処理が実行される。具体的には、制御装置17は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への吸着電位の印加を終了する。また、制御装置17は、吸着モード実行時間をカウントするカウンタのカウント値のリセットなども行なう。
【0044】
ステップS160では、制御装置17は、一連の制御シーケンスに含まれる脱離モードの実行時間を設定する。この脱離モード実行時間を設定するための処理は、学習モード処理の説明後に、詳細に説明する。
【0045】
ステップS170では、制御装置17は、脱離モードを開始する。この脱離モードでは、図3(b)に示すように、二酸化炭素を含有する大気を回収器12内に導入可能とするため、第1開閉弁11が開かれる。また、二酸化炭素が除去された大気を回収器12内から導出可能とするため、第2開閉弁13も開かれる。送風機14は、大気が回収器12内に引き込まれるように、指定された回転速度で駆動される。流路切替弁15は、送風機14の下流側の流路配管を二酸化炭素供給先16に連通する。さらに、脱離モードでは、回収器12の電気化学セル12aの作用極と対極との間に、作用極の二酸化炭素吸着材から二酸化炭素が脱離可能となる脱離電位が印加される。この脱離電位は、指定された電位であり、後述する動作タイプに応じて可変される。
【0046】
このような第1開閉弁11、回収器12の電気化学セル12a、第2開閉弁13、送風機14、及び流路切替弁15などの制御により、脱離モードでは、図3(b)に点線矢印で示すように、二酸化炭素を含有した大気が、第1開閉弁11を通過して、回収器12内に進入する。回収器12内に進入した大気は、複数の電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素と混合され、二酸化炭素を多く含む大気となる。この二酸化炭素を多く含む大気は、第2開閉弁13及び送風機14を通過し、流路切替弁15にて二酸化炭素供給先16へ向かう流路配管に導かれ、その流路配管を介して、二酸化炭素供給先16へ供給される。
【0047】
ステップS180では、制御装置17が、ステップS160で設定された脱離モード実行時間が経過したか否か、又は二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達したか否かを判定する。この判定処理において、制御装置17は、脱離モード実行時間が経過した、又は二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達したと判定すると、ステップS190に進む。一方、制御装置17は、脱離モード実行時間が経過しておらず、及び二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達していないと判定すると、脱離モード実行時間が経過するまで、もしくは、二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達するまで、ステップS180の判定処理を繰り返し実行する。
【0048】
ステップS190では、制御装置は、脱離モードの終了処理を実行する。具体的には、制御装置17は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への脱離電位の印加を終了する。また、制御装置17は、脱離モード実行時間をカウントするカウンタのカウント値のリセットなども行なう。
【0049】
ステップS200では、制御装置17は、上述した吸着モードと脱離モードとの実施により、二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達したか否かを判定する。二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達したと判定すると、制御装置17は、ステップS210に進む。一方、二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達していないと判定すると、制御装置17は、ステップS120に戻り、吸着モードと脱離モードの実行を繰り返す。
【0050】
ステップS210では、制御装置17は、例えば、二酸化炭素供給先16が農業用設備であり、農作物の光合成によって二酸化炭素濃度が低下して、目標下限濃度に到達したか否かを判定する。二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標下限濃度に達したと判定すると、制御装置17は、ステップS120に戻り、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給を再開する。一方、二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度が目標下限濃度に達していないと判定すると、制御装置17は、二酸化炭素濃度が目標下限濃度に到達するまで、ステップS210の判定処理を繰り返し実行する。
【0051】
次に、学習モード処理について説明する。学習モード処理の詳細が、図5のフローチャートに示されている。図5のフローチャートのステップS300では、電気化学セル12aの最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が電気化学セル12aに吸着されることが推定される所定の推定時間が、事前準備吸着時間として設定される。
【0052】
続くステップS310では、制御装置17は、学習を行うための事前準備として、上記の事前準備吸着時間だけ二酸化炭素を電気化学セル12aに吸着させる事前準備吸着モードを開始する。この事前準備吸着モードでは、図6(a)に示すように、二酸化炭素を含有する大気を回収器12内に導入可能とするため、第1開閉弁11が開かれる。また、二酸化炭素が除去された大気を回収器12内から導出可能とするため、第2開閉弁13も開かれる。送風機14は、定められた量の大気が回収器12内に引き込まれるように、予め定められた一定の回転速度で駆動される。流路切替弁15は、送風機14の下流側の流路配管を外部に連通する。さらに、事前準備吸着モードでは、回収器12の電気化学セル12aの作用極と対極との間に、作用極の二酸化炭素吸着材が二酸化炭素を吸着可能となる事前準備用の吸着電位が印加される。事前準備用の吸着電位は、予め定められた一定の電位である。
【0053】
このような第1開閉弁11、回収器12の電気化学セル12a、第2開閉弁13、送風機14、及び流路切替弁15などの制御により、事前準備吸着モードでは、図6(a)に点線矢印で示すように、二酸化炭素を含有した大気が、第1開閉弁11を通過して、回収器12内に進入する。回収器12内に進入した大気に含まれる二酸化炭素は、複数の電気化学セル12aに吸着される。その結果、大気から二酸化炭素が除去される。二酸化炭素が除去された大気は、第2開閉弁13及び送風機14を通過し、流路切替弁15にて外部へ向かう流路配管に導かれ、その流路配管を介して、外部に放出される。
【0054】
ステップS320では、制御装置17が、事前準備吸着時間が経過したか否かを判定する。この判定処理において、制御装置17は、事前準備吸着時間が経過したと判定すると、ステップS330に進む。一方、制御装置17は、事前準備吸着時間が経過していないと判定すると、事前準備吸着時間が経過するまで、ステップS320の判定処理を繰り返し実行する。
【0055】
ステップS330では、事前準備吸着モードの終了処理が実行される。具体的には、制御装置17は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への事前準備用の吸着電位の印加を終了する。また、制御装置17は、第1及び第2開閉弁11、13を閉じて、外部から回収器12への二酸化炭素を含む大気の流入及び回収器12から二酸化炭素を除去された大気の流出を遮断する。さらに、制御装置17は、送風機14の駆動を停止する。また、制御装置17は、事前準備吸着時間をカウントするカウンタのカウント値のリセットなども行なう。
【0056】
なお、上記のように、事前準備吸着時間の設定や、設定した事前準備吸着時間の経過を判定せずに、回収器12内の電気化学セル12aに最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が吸着したことを判定して、事前準備吸着モードを終了させることも可能である。具体的には、電気化学セル12aによって二酸化炭素が除去された後の、すなわち、電気化学セル12aの下流側の大気の二酸化炭素濃度を二酸化炭素センサ12bによって測定する。そして、電気化学セル12aの下流側の二酸化炭素濃度の変化が電気化学セル12aの最大吸着量の吸着を示すと、つまり、二酸化炭素が電気化学セル12aによって除去されて、二酸化炭素濃度が低下した状態から、電気化学セル12aに最大吸着量に相当する二酸化炭素が吸着されて、それ以上、二酸化炭素を吸着することができず、二酸化炭素濃度が上昇したことをもって、電気化学セル12aに最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が吸着されたことを判定することができる。この場合、事前準備吸着モードが開始されてから、事前準備吸着モードが終了されるまでの事前準備吸着モード実行時間がカウンタ等によって計測される。
【0057】
ステップS340では、制御装置17は、脱離学習データを作成する脱離学習データ作成処理を実行する。ステップS350では、制御装置17は、吸着学習データを作成する吸着学習データ作成処理を実行する。図7は、脱離学習データ作成処理の詳細を示すフローチャートである。図10は、吸着学習データ作成処理の詳細を示すフローチャートである。以下、それぞれのフローチャートを参照して、脱離学習データ作成処理及び吸着学習データ作成処理について詳しく説明する。
【0058】
脱離学習データ作成処理では、まず、図7のフローチャートのステップS400に示すように、制御装置17が、学習用脱離モードを開始する。この学習用脱離モードにおいては、制御装置17は、図6(b)に示すように、電気化学セル12aの作用極と対極との間に、上述した事前準備吸着モードによって作用極の二酸化炭素吸着材に吸着された二酸化炭素を脱離させることが可能な脱離電位を印加する。なお、学習用脱離モードでは、第1及び第2開閉弁11、13は、閉じた状態に維持されるとともに、送風機14も停止された状態のままとされる。
【0059】
ステップS410では、制御装置17は、二酸化炭素センサ12bを用いて、回収器12内の二酸化炭素濃度のモニターを開始する。例えば、制御装置17は、二酸化炭素センサ12bによって測定される回収器12内の二酸化炭素濃度を所定時間間隔でサンプリングする。このようにして、制御装置17は、回収器12を密閉した状態としつつ、二酸化炭素を吸着している電気化学セル12aに脱離電位を印加したときの、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化を二酸化炭素センサ12bを用いて測定することができる。
【0060】
ステップS420では、制御装置17は、二酸化炭素センサ12bによって測定される二酸化炭素の濃度の変化が所定値以下となったか否かを判定する。電気化学セル12aに吸着されていた二酸化炭素の脱離が完了すると、回収器12内の二酸化炭素濃度の上昇がほぼ止まり、二酸化炭素濃度の変化は所定値以下となる。従って、二酸化炭素の濃度の変化が所定値以下となった場合、電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離が実質的に終了したとみなすことができる。
【0061】
電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離が実質的に終了したか否かは、別の手法によっても判断することができる。例えば、電気化学セル12aによる二酸化炭素の最大吸着量と回収器12の容積とから、電気化学セル12aから二酸化炭素の脱離がすべて完了したときの回収器12内の二酸化炭素濃度を求めることができる。さらに、求めた脱離完了時の二酸化炭素濃度に基づいて、電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離がほぼ終了したとみなし得る脱離濃度閾値を定めることができる。そして、二酸化炭素センサ12bによって測定された二酸化炭素の濃度が脱離濃度閾値に達したことにより、電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離が実質的に終了したことを判定することができる。
【0062】
ステップS420で肯定的な判定がなされた場合、制御装置17は、ステップS430に進む。一方、否定的な判定がなされた場合、制御装置17は、肯定的な判定がなされるまで、ステップS420の判定を繰り返し実施する。ステップS430では、制御装置17は、二酸化炭素センサ12bを用いた回収器12内の二酸化炭素濃度のモニターを終了する。続くステップS440では、制御装置17は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への脱離電位の印加を停止して、学習用脱離モードを終了する。
【0063】
図8は、学習用脱離モードにおいて、二酸化炭素センサ12bを用いて測定された、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化の一例を示すグラフである。図8のグラフに示すように、モニター開始時点では、比較的低い二酸化炭素濃度が検出される。しかし、電気化学セル12aに脱離電位を印加することにより、電気化学セル12aから二酸化炭素が脱離され、回収器12内に放出されるので、回収器12内の二酸化炭素濃度は時間の経過とともに上昇する。そして、二酸化炭素濃度の上昇がほぼ停止したときに、二酸化炭素濃度のモニターを終了する。これにより、図8のグラフに示すような、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化を測定することができる。
【0064】
ステップS450では、制御装置17は、図8に示すような、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを作成する。図9は、脱離学習データの一例を示すグラフである。回収器12内の容積は既知であるので、制御装置17は、図8に示すような、時関経過に伴う二酸化炭素の濃度変化から、図9に示すような、経過時間と二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを算出することができる。ステップS460では、制御装置17は、作成した脱離学習データを、RAM、ディスク、フラッシュメモリ等の記憶媒体に記憶する。以上により、脱離学習データ作成処理が終了する。
【0065】
次に、吸着学習データ作成処理について説明する。吸着学習データ作成処理では、まず、図10のフローチャートのステップS500に示すように、制御装置17は、学習用吸着モードを開始する。この学習用吸着モードにおいては、制御装置17は、図6(c)に示すように、電気化学セル12aの作用極と対極との間に、上述した学習用脱離モードによって回収器12内に放出された二酸化炭素を作用極の二酸化炭素吸着材に吸着させることが可能な脱離電位を印加する。なお、学習用吸着モードでは、第1及び第2開閉弁11、13は、閉じた状態に維持されるとともに、送風機14も停止された状態のままとされる。
【0066】
ステップS510では、制御装置17は、二酸化炭素センサ12bを用いて、回収器12内の二酸化炭素濃度のモニターを開始する。例えば、制御装置17は、二酸化炭素センサ12bによって測定される回収器12内の二酸化炭素濃度を所定時間間隔でサンプリングする。このようにして、制御装置17は、回収器12を密閉した状態としつつ、回収器12内に放出された二酸化炭素が存在している中で、電気化学セル12aに吸着電位を印加したときの、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化を二酸化炭素センサ12bを用いて測定することができる。
【0067】
ステップS520では、制御装置17は、二酸化炭素センサ12bによって測定される二酸化炭素の濃度の変化が所定値以下となったか否かを判定する。電気化学セル12aにより回収器12内の二酸化炭素の吸着が完了すると、回収器12内の二酸化炭素濃度の低下がほぼ止まり、二酸化炭素濃度の変化は所定値以下となる。従って、二酸化炭素の濃度の変化が所定値以下となった場合、電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着が実質的に終了したとみなすことができる。
【0068】
電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着が実質的に終了したか否かは、別の手法によっても判断することができる。例えば、吸着学習データ作成処理は、脱離学習データ作成処理に続いて実行されるので、脱離学習データ作成処理を開始したときの回収器12内の二酸化炭素濃度を基準として、電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着が実質的に終了したとみなし得る吸着濃度閾値を定めることができる。回収器12内の二酸化炭素濃度が、脱離学習データ作成処理開始時の二酸化炭素濃度を基準とする吸着濃度閾値まで低下すれば、学習用脱離モードにおいて電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素は、再び、電気化学セル12aによって吸着されたとみなすことができるためである。従って、二酸化炭素センサ12bによって測定された二酸化炭素濃度が吸着濃度閾値に達したことにより、電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着が実質的に終了したとみなすことができる。
【0069】
ステップS520で肯定的な判定がなされた場合、制御装置17は、ステップS530に進む。一方、否定的な判定がなされた場合、制御装置17は、肯定的な判定がなされるまで、ステップS520の判定を繰り返し実施する。ステップS530では、制御装置17は、二酸化炭素センサ12bを用いた回収器12内の二酸化炭素濃度のモニターを終了する。続くステップS540では、制御装置17は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への吸着電位の印加を停止して、学習用吸着モードを終了する。なお、このとき、制御装置17は、学習用吸着モードの開始から終了までの学習用吸着モードの実施時間を計測して記憶しておく。
【0070】
図11は、学習用吸着モードにおいて、二酸化炭素センサ12bを用いて測定された、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化の一例を示すグラフである。図11のグラフに示すように、モニター開始時点では、比較的高い二酸化炭素濃度が検出される。しかし、電気化学セル12aに吸着電位を印加することにより、回収器12内の二酸化炭素が電気化学セル12aに吸着されるので、回収器12内の二酸化炭素濃度は時間の経過とともに低下する。そして、二酸化炭素濃度の低下がほぼ停止したときに、二酸化炭素濃度のモニターを終了する。これにより、図11のグラフに示すような、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化を測定することができる。
【0071】
ステップS550では、制御装置17は、図11に示すような、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セル12aへの二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを作成する。図12は、吸着学習データの一例を示すグラフである。回収器12内の容積は既知であるので、制御装置17は、図11に示すような、時関経過に伴う二酸化炭素の濃度変化から、図12に示すような、経過時間と二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを算出することができる。
【0072】
ステップS560では、図5のフローチャートのステップS300で設定された事前準備吸着時間と、学習用吸着モードの実施時間が一致するか否かを判定する。一致しないと判定した場合、制御装置17はステップS570に進む。一致すると判定した場合、制御装置17はステップS580に進む。
【0073】
ステップS570では、制御装置17は、事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との相違に応じて、ステップS550で作成した吸着学習データを更新する。例えば、学習用吸着モード実施時間に対する事前準備吸着時間の比率に応じて、二酸化炭素の吸着量に対する経過時間を変化させて、吸着学習データを更新する。具体的には、事前準備吸着時間が学習用吸着モード実施時間よりも長い場合、学習用吸着モード実施時間に対する事前準備吸着時間の比率に応じて、図13に示すように、吸着学習データを時間軸方向に拡大させる。逆に、事前準備吸着時間が学習用吸着モード実施時間よりも短い場合、学習用吸着モード実施時間に対する事前準備吸着時間の比率に応じて、図13に示すように、吸着学習データを時間軸方向に縮小させる。なお、学習用吸着モード実施時間に対する事前準備吸着時間の比率以外に、例えば、事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との差分に所定の係数を乗じて、吸着学習データを時間軸方向に拡大、縮小させる割合を算出することも可能である。
【0074】
吸着学習データは、上述したように、回収器12が密閉された状態で、回収器12内の二酸化炭素を電気化学セル12aに吸着させたときの回収器12内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて作成される。それに対して、二酸化炭素供給先16へ二酸化炭素の供給を行うために、二酸化炭素供給装置10において実行される一連の制御シーケンスに含まれる吸着モードでは、回収器12は密閉されておらず、送風機14によって二酸化炭素を含む大気が回収器12内を流動する。このようなシチュエーションの相違を補償するために、本実施形態では、事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との相違を利用する。つまり、事前準備吸着時間は、一連の制御シーケンスに含まれる吸着モードと同様に、回収器12内に二酸化炭素を含む大気を流動させながら、電気化学セル12aに二酸化炭素を吸着させた時間である。従って、事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との相違に応じて、吸着学習データを時間軸方向に拡大、縮小させることにより、一連の制御シーケンスに含まれる吸着モードに適合するように、吸着学習データを更新することができる。
【0075】
ステップS580では、制御装置17は、作成又は更新した吸着学習データを、RAM、ディスク、フラッシュメモリ等の記憶媒体に記憶する。以上により、吸着学習データ作成処理が終了する。
【0076】
次に、図2のフローチャートのステップS120の吸着モード実行時間設定処理に関して、図14のフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0077】
ステップS600では、制御装置17は、二酸化炭素供給装置10の吸着モードの動作タイプに応じて、吸着学習データの修正が必要であるか否かを判定する。本実施形態では、図15に示すように、選択条件に応じて、二酸化炭素供給装置10の吸着モードの動作タイプとして、バランス型、省エネ型、及び急速吸着型のいずれかが選択される。バランス型が選択された場合、吸着学習データの修正は不要と判定され、省エネ型又は急速吸着型が選択された場合、吸着学習データの修正が必要と判定される。制御装置17は、吸着学習データの修正が必要と判定した場合、ステップS610に進む。吸着学習データの修正は不要と判定した場合、ステップS640に進む。
【0078】
バランス型は、電気化学セル12aに印加する吸着電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関して、いずれも標準的な制御値(デフォルト値)を用いる。電気化学セル12aに印加する吸着電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関する標準的な制御値は、学習モードにおいて、事前準備吸着モードを実行した際の制御値と同じである。このため、ユーザがバランス型を指定した場合、吸着学習データの修正は不要である。
【0079】
省エネ型は、電気化学セル12aに印加する吸着電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関して、バランス型よりも低い制御値を用いる。従って、省エネ型は、バランス型よりも二酸化炭素供給装置10を駆動するためのエネルギーが少なくて済む。ただし、省エネ型は、バランス型よりも、電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着に時間がかかる。そのため、省エネ型が選択された場合、吸着学習データの修正が必要となる。
【0080】
急速吸着型は、電気化学セル12aに印加する吸着電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関して、バランス型よりも高い制御値を用いる。従って、急速吸着型は、バランス型よりも二酸化炭素供給装置10を駆動するためのエネルギーが多くなる。しかし、急速吸着型は、バランス型よりも、電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着を素早く行うことができる。このため、急速吸着型が選択された場合にも、吸着学習データの修正が必要となる。
【0081】
バランス型、省エネ型、及び急速吸着型のいずれかの動作タイプを選択する選択条件は、任意に設定することが可能である。省エネ型を選択する選択条件は、概して、二酸化炭素供給先16へ少量の二酸化炭素を供給すれば良い場合に省エネ型が選択されるように設定すれば良い。例えば、図15に示すように、省エネ型を選択する選択条件は、夜間に稼働する場合、天気の悪い時、ユーザによる要求時などとすることができる。急速吸着型を選択する選択条件は、概して、二酸化炭素供給先16へ素早く多量の二酸化炭素を供給する必要がある場合に急速吸着型が選択されるように設定すれば良い。例えば、図15に示すように、急速吸着型は、日中の、農作物による光合成が活発な時間帯、ユーザによる要求時などとすることができる。バランス型は、省エネ型の選択条件及び急速吸着型の選択条件のいずれにも該当しない場合、又はユーザによる要求時に選択される。
【0082】
ステップS610では、制御装置17は、選択された動作タイプに応じて、電気化学セル12aに印加する吸着電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関して、それぞれの制御値を決定する。上述したように、バランス型の制御値はデフォルト値を用いる。しかし、省エネ型及び急速吸着型の制御値は、それぞれの型に見合った固定値であっても良いし、可変値であっても良い。つまり、省エネ型及び急速吸着型の場合、二酸化炭素供給先16への二酸化炭素の必要供給量は変化し得るので、その必要供給量に応じて、制御値を可変しても良い。
【0083】
ステップS620では、制御装置17は、ステップS610で設定された制御値に基づいて、吸着学習データを修正する。例えば、制御装置17は、通常の制御値(デフォルト値)と設定された制御値との大きさの相違に応じて、吸着学習データを修正する。例えば、通常の制御値に対する設定された制御値の比率に応じて、図16に示すように、吸着学習データを時間軸方向に拡大、又は縮小させることによって吸着学習データを修正することができる。図16に示すように、動作タイプとして、省エネ型が選択された場合、吸着学習データは時間軸方向に拡大されるように修正され、急速吸着型が選択された場合、吸着学習データは時間軸方向に縮小されるように修正される。なお、通常の制御値に対する設定された制御値の比率以外に、例えば、通常の制御値と設定された制御値との差分に所定の係数を乗じて、吸着学習データを時間軸方向に拡大、縮小させる割合を算出することも可能である。
【0084】
ステップS630では、制御装置17は、修正した吸着学習データを、RAM、ディスク、フラッシュメモリ等の記憶媒体に記憶する。
【0085】
ステップS640では、制御装置17は、吸着学習データに基づいて、吸着モード実行時間を設定する。この際、制御装置17は、吸着学習データにおける最大吸着時間以下の範囲で吸着モード実行時間を設定する。これにより、例えば、電気化学セル12aによって吸着可能な二酸化炭素が既に吸着されているにも係らず、吸着電位の印加を継続するなど、無駄に吸着電位を印加することを防ぐことができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0086】
次に、図2のフローチャートのステップS160の脱離モード実行時間設定処理に関して、図17のフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0087】
ステップS700では、制御装置17は、二酸化炭素供給装置10の脱離モードの動作タイプに応じて、脱離学習データの修正が必要であるか否かを判定する。本実施形態では、図18に示すように、選択条件に応じて、二酸化炭素供給装置10の脱離モードの動作タイプとして、バランス型、省エネ型、及び急速脱離型のいずれかが選択される。バランス型が選択された場合、脱離学習データの修正は不要と判定され、省エネ型又は急速脱離型が選択された場合、脱離学習データの修正が必要と判定される。制御装置17は、脱離学習データの修正が必要と判定した場合、ステップS710に進む。脱離学習データの修正は不要と判定した場合、ステップS740に進む。
【0088】
バランス型は、電気化学セル12aに印加する脱離電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関して、いずれも標準的な制御値(デフォルト値)を用いる。脱離電位に関する標準的な制御値は、学習モードにおいて、学習要脱離モードを実行した際の制御値と同じである。このため、ユーザがバランス型を指定した場合、脱離学習データの修正は不要である。
【0089】
省エネ型は、電気化学セル12aに印加する脱離電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関して、バランス型よりも低い制御値を用いる。従って、省エネ型は、バランス型よりも二酸化炭素供給装置10を駆動するためのエネルギーが少なくて済む。ただし、省エネ型は、バランス型よりも、電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離に時間がかかる。そのため、省エネ型が選択された場合、脱離学習データの修正が必要となる。
【0090】
急速脱離型は、電気化学セル12aに印加する脱離電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関して、バランス型よりも高い制御値を用いる。従って、急速脱離型は、バランス型よりも二酸化炭素供給装置10を駆動するためのエネルギーが多くなる。しかし、急速脱離型は、バランス型よりも、電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離を素早く行うことができる。このため、急速脱離型が選択された場合にも、脱離学習データの修正が必要となる。
【0091】
バランス型、省エネ型、及び急速脱離型のいずれかの動作タイプを選択する選択条件は、任意に設定することが可能である。省エネ型を選択する選択条件は、概して、二酸化炭素供給先16へ少量の二酸化炭素を供給すれば良い場合に省エネ型が選択されるように設定すれば良い。例えば、図19に示すように、省エネ型を選択する選択条件は、二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度を保てば良い時、天気の悪い時、二酸化炭素供給先の規模が小さい時、ユーザによる要求時などとすることができる。急速脱離型を選択する選択条件は、概して、二酸化炭素供給先16へ素早く多量の二酸化炭素を供給する必要がある場合に急速脱離型が選択されるように設定すれば良い。例えば、図18に示すように、急速脱離型は、朝イチなど、二酸化炭素供給先16の二酸化炭素濃度を素早く変化させたい時、二酸化炭素供給先16の規模が大きいとき、ユーザによる要求時などとすることができる。バランス型は、省エネ型の選択条件及び急速吸着型の選択条件のいずれにも該当しない場合、又はユーザによる要求時に選択される。
【0092】
ステップS710では、制御装置17は、選択された動作タイプに応じて、電気化学セル12aに印加する脱離電位、及び送風機14を駆動する制御電圧に関して、それぞれの制御値を決定する。上述したように、バランス型の制御値はデフォルト値を用いる。しかし、省エネ型及び急速脱離型の制御値は、吸着モード実行時間の設定処理の場合と同様に、それぞれの型に見合った固定値であっても良いし、可変値であっても良い。
【0093】
ステップS720では、制御装置17は、ステップS710で設定された制御値に基づいて、脱離学習データを修正する。例えば、制御装置17は、通常の制御値(デフォルト値)と設定された制御値との大きさの相違に応じて、脱離学習データを修正する。例えば、通常の制御値に対する設定された制御値の比率に応じて、図19に示すように、脱離学習データを時間軸方向に拡大、又は縮小させることによって脱離学習データを修正することができる。図19に示すように、動作タイプとして、省エネ型が選択された場合、脱離学習データは時間軸方向に拡大されるように修正され、急速脱離型が選択された場合、脱離学習データは時間軸方向に縮小されるように修正される。
【0094】
ステップS730では、制御装置17は、修正した脱離学習データを、RAM、ディスク、フラッシュメモリ等の記憶媒体に記憶する。
【0095】
ステップS740では、制御装置17は、脱離学習データに基づいて、脱離モード実行時間を設定する。この際、制御装置17は、脱離学習データにおける最大脱離時間以下の範囲で脱離モード実行時間を設定する。これにより、例えば、電気化学セル12aに吸着された二酸化炭素の脱離が実質的に終了しているにも係らず、脱離電位の印加を継続するなど、無駄に脱離電位を印加することを防ぐことができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0096】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0097】
例えば、上述した実施形態では、吸着モードにおける二酸化炭素供給装置10の動作タイプと、脱離モードにおける二酸化炭素供給装置10の動作タイプとを、それぞれ別個の選択条件によって選択する例を説明した。しかしながら、吸着モードにおける二酸化炭素供給装置10の動作タイプと、脱離モードにおける二酸化炭素供給装置10の動作タイプとは、共通の選択条件によって選択するようにしても良い。この場合、二酸化炭素供給装置10は、吸着モードと脱離モードとで同じ動作タイプで動作することになる。
【0098】
また、上述した実施形態では、吸着モード及び脱離モードとも、二酸化炭素供給装置10の動作タイプを省エネ型とした場合、電気化学セル12aへの印加電圧と送風機14の制御電圧の両方を低下させた。しかしながら、省エネ型の動作タイプにおいて、電気化学セル12aへの印加電圧と送風機14の制御電圧のいずれか一方を低下させても良い。さらに、省エネ型の動作タイプを2段階に設定し、1段階目の省エネ型の動作タイプにて、電気化学セル12aへの印加電圧と送風機14の制御電圧のいずれか一方を低下させ、2段階目の省エネ型の動作タイプにて、電気化学セル12aへの印加電圧と送風機14の制御電圧の両方を低下させても良い。同様に、急速吸着型及び急速脱離型の動作タイプに関しても、電気化学セル12aへの印加電圧と送風機14の制御電圧のいずれか一方を上昇させても良い。さらに、急速吸着型及び急速脱離型の動作タイプを2段階に設定しても良い。
【0099】
また、上述した実施形態では、制御装置17が、一連の制御シーケンスを実行するための演算処理をすべて行うように構成されていた。しかしながら、制御装置17の少なくとも一部の処理が、制御装置17以外の処理装置、例えば制御装置17と通信可能な外部サーバによって実行されても良い。
【0100】
最後に、この明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0101】
(技術的思想1)
筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、前記電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給対象(16)に供給する二酸化炭素供給装置であって、
前記筐体内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサ(12b)と、
前記筐体内を密閉した状態として、二酸化炭素を吸着している前記電気化学セルに脱離電位を印加し、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化を前記二酸化炭素センサを用いて測定する脱離データ測定部(S400~S440)と、
前記脱離データ測定部によって測定された、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と前記電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを生成する脱離学習データ生成部(S450)と、を備え、
前記脱離学習データに基づいて、前記脱離モードにおける脱離電位の印加時間が設定される二酸化炭素供給装置。
【0102】
(技術的思想2)
前記筐体内に二酸化炭素を含有した大気を送り込む送風機(14)と、
前記送風機によって前記筐体内に二酸化炭素を含有した大気を送り込みつつ、前記電気化学セルに吸着電位を印加することにより、前記脱離データ測定部による測定前に、前記電気化学セルが二酸化炭素を吸着している状態にする学習前準備部(S300~S330)と、をさらに備える技術的思想1に記載の二酸化炭素供給装置。
【0103】
(技術的思想3)
前記学習前準備部は、前記電気化学セルの最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が前記電気化学セルに吸着されることが推定される所定の推定時間が経過するまで、又は、前記二酸化炭素センサによって測定される前記電気化学セルの下流側の濃度変化が前記電気化学セルの最大吸着量の吸着を示すまで、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる、技術的思想2に記載の二酸化炭素供給装置。
【0104】
(技術的思想4)
前記脱離データ測定部による測定後の、前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素が前記筐体内に存在しているとき、前記筐体内を密閉した状態を維持しつつ、前記電気化学セルに吸着電位を印加し、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化を前記二酸化炭素センサを用いて測定する吸着データ測定部(S500~S540)と、
前記吸着データ測定部によって測定された、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と前記電気化学セルによる二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを生成する吸着学習データ生成部(S550)と、をさらに備え、
前記吸着学習データに基づいて、前記吸着モードにおける吸着電位の印加時間が設定される、技術的思想1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0105】
(技術的思想5)
前記脱離データ測定部は、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化が所定値以下となるまで、又は、筐体内の二酸化炭素濃度が、前記電気化学セルからの二酸化炭素の脱離の完了を示す値に上昇するまで、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化を測定する、技術的思想1乃至4のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0106】
(技術的思想6)
前記脱離学習データに基づいて、前記脱離モードにおける脱離電位の印加時間を設定する際、前記送風機の風量と、前記脱離データ測定部による測定時の脱離電位に対する前記脱離モードにおいて前記電気化学セルに印加される脱離電位の差異との少なくとも一方に応じて、二酸化炭素の脱離量に対する経過時間を変化させるように、前記脱離学習データを修正する脱離学習データ修正部(S710、S720)をさらに備える、技術的思想2又は3に記載の二酸化炭素供給装置。
【0107】
(技術的思想7)
前記脱離学習データの生成は、ユーザによる要求時、前記二酸化炭素供給装置の稼働開始時、前記二酸化炭素供給装置の停止期間中、前記二酸化炭素供給装置の稼働時間又は稼働回数が所定値に達したとき、前記電気化学セルのメンテナンス又は交換後、及び天候、地域、季節に応じた学習タイミングとなったときの少なくとも1つに応じて実施される、技術的思想1乃至6のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0108】
(技術的思想8)
筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、前記電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給対象に供給する二酸化炭素供給装置であって、
前記筐体内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサ(12b)と、
前記筐体内を密閉した状態、かつ前記筐体内の二酸化炭素濃度が大気中の二酸化炭素濃度よりも高い状態で、前記電気化学セルに吸着電位を印加し、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化を前記二酸化炭素センサを用いて測定する吸着データ測定部(S500~S540)と、
前記吸着データ測定部によって測定された、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と前記電気化学セルによる二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを生成する吸着学習データ生成部(S550~S570)と、を備え、
前記吸着学習データに基づいて、前記吸着モードにおける吸着電位の印加時間が設定される二酸化炭素供給装置。
【0109】
(技術的思想9)
前記吸着データ測定部による測定前に、前記筐体内を密閉した状態として、二酸化炭素を吸着している前記電気化学セルに脱離電位を印加し、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化を前記二酸化炭素センサを用いて測定する脱離データ測定部(S400~S440)と、
前記脱離データ測定部によって測定された、時間経過に伴う前記筐体内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と前記電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを生成する脱離学習データ生成部(S450)と、をさらに備え、
前記脱離学習データに基づいて、前記脱離モードにおける脱離電位の印加時間が設定される、技術的思想8に記載の二酸化炭素供給装置。
【0110】
(技術的思想10)
前記筐体内に二酸化炭素を含有した大気ガスを送り込む送風機(14)と、
前記送風機によって前記筐体内に二酸化炭素を含有した大気ガスを送り込みつつ、前記電気化学セルに吸着電位を印加することにより、前記脱離データ測定部による測定前に、前記電気化学セルが二酸化炭素を吸着している状態にする学習前準備部(S300~S330)と、をさらに備える技術的思想9に記載の二酸化炭素供給装置。
【0111】
(技術的思想11)
前記学習前準備部は、前記電気化学セルの最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が前記電気化学セルに吸着されることが推定される推定時間が経過するまで、又は、前記二酸化炭素センサによって測定される前記電気化学セルの下流側の濃度変化が前記電気化学セルの最大吸着量の吸着を示すまで、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる、技術的思想10に記載の二酸化炭素供給装置。
【0112】
(技術的思想12)
前記吸着データ測定部は、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化が所定値以下となるまで、又は、前記筐体内の二酸化炭素濃度が、前記電気化学セルへの二酸化炭素の吸着の完了を示す値に低下するまで、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化を測定する、技術的思想8乃至11のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0113】
(技術的思想13)
前記吸着データ測定部は、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化が所定値以下となるまで、又は、前記筐体内の二酸化炭素濃度が前記電気化学セルへの二酸化炭素の吸着の完了を示す値に低下するまで、時間経過に伴う二酸化炭素濃度の変化を測定するものであり、
前記吸着学習データ生成部は、前記学習前準備部による二酸化炭素の吸着時間と、前記吸着データ測定部による測定時間との相違に応じて、二酸化炭素の吸着量に対する経過時間を変化させて、前記吸着学習データを更新する、技術的思想11に記載の二酸化炭素供給装置。
【0114】
(技術的思想14)
前記吸着学習データに基づいて、前記吸着モードにおける吸着電位の印加時間を設定する際、前記送風機の風量と、前記吸着データ測定部による測定時の吸着電位に対する前記吸着モードにおいて前記電気化学セルに印加される吸着電位の差異との少なくとも一方に応じて、二酸化炭素の吸着量に対する経過時間を変化させるように、前記吸着学習データを修正する吸着学習データ修正部(S610、S620)をさらに備える、技術的思想10、11、及び13のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0115】
(技術的思想15)
前記吸着学習データの生成は、ユーザによる要求時、前記二酸化炭素供給装置の稼働開始時、前記二酸化炭素供給装置の停止期間中、前記二酸化炭素供給装置の稼働時間又は稼働回数が所定値に達したとき、前記電気化学セルのメンテナンス又は交換後、及び天候、地域、季節に応じた学習タイミングとなったときの少なくとも1つに応じて実施される、技術的思想8乃至14のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0116】
(技術的思想16)
前記吸着モードと前記脱離モードは、前記二酸化炭素供給対象における二酸化炭素濃度が目標濃度に達するまで繰り返し実際される、技術的思想1乃至15のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【符号の説明】
【0117】
10:二酸化炭素供給装置、11:第1開閉弁、12:回収器、12a:電気化学セル、12b:二酸化炭素センサ、13:第2開閉弁、14:送風機、15:流路切替弁、16:二酸化炭素供給先、16a:二酸化炭素センサ、17:制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19