(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151622
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電極活物質および全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20241018BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241018BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241018BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241018BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 E
H01M10/0562
H01M10/052
C01G33/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065110
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】末松 大暉
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
5H029AJ03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AM12
5H029HJ13
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050DA03
5H050HA02
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】 高容量な電極活物質、および当該電極活物質を用いた全固体電池を提供する。
【解決手段】 電極活物質は、AlおよびNbを含み、空間群C2/mに帰属し、CuKα線を用いたXRD測定において25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する負極活物質を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlおよびNbを含み、空間群C2/mに帰属し、CuKα線を用いたXRD測定において25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する負極活物質を含む電極活物質。
【請求項2】
前記負極活物質は、一般式Al2+xNb50O128+1.5x(-0.1≦x≦0.1)の組成式で表される、請求項1に記載の電極活物質。
【請求項3】
前記負極活物質とは組成の異なる他の負極活物質をさらに含む、請求項1に記載の電極活物質。
【請求項4】
前記負極活物質は、Al2Nb50O128であり、
前記電極活物質は、さらにAlNb11O29を含む、請求項3に記載の電極活物質。
【請求項5】
酸化物系固体電解質層と、
前記酸化物系固体電解質層の第1主面上に設けられ、正極活物質を含む第1電極層と、
前記酸化物系固体電解質層の第2主面上に設けられ、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電極活物質を含む第2電極層と、を備える、全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極活物質および全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度を持つ二次電池として、全固体電池が活用されている(例えば、特許文献1~3および非特許文献1参照)。これらの全固体電池には、より小型軽量で、高容量高エネルギー密度が求められているため、高容量かつ高出力の電極活物質の開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/080083号
【特許文献2】国際公開第2014/038311号
【特許文献3】国際公開第2022/185717号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Appl. Mater. Interface. 2019;11(6): 6089-6096.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なLiイオン電池に用いられる負極材は、黒鉛系が主となっている。しかしながら、黒鉛系の動作電位はLiの析出電位と近いため、充放電時にLiの析出による内部短絡の危険性が存在する。
【0006】
酸化物系負極材料は、黒鉛系の負極材料と比較して動作電位が高く、リチウム析出が起こらないため、充放電時に内部短絡の起こらない安全な電池を提供することができる。しかしながら、酸化物系負極材料の欠点として、低容量な点が挙げられる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高容量な電極活物質、および当該電極活物質を用いた全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電極活物質は、AlおよびNbを含み、空間群C2/mに帰属し、CuKα線を用いたXRD測定において25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する負極活物質を含む。
【0009】
上記電極活物質において、前記負極活物質は、一般式Al2+xNb50O128+1.5x(-0.1≦x≦0.1)の組成式で表されるものであってもよい。
【0010】
上記電極活物質は、前記負極活物質とは組成の異なる他の負極活物質をさらに含んでいてもよい。
【0011】
上記電極活物質において、前記負極活物質は、Al2Nb50O128であり、前記電極活物質は、さらにAlNb11O29を含んでいてもよい。
【0012】
本発明に係る全固体電池は、酸化物系固体電解質層と、前記酸化物系固体電解質層の第1主面上に設けられ、正極活物質を含む第1電極層と、前記酸化物系固体電解質層の第2主面上に設けられ、上記のいずれかの電極活物質を含む第2電極層と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高容量な電極活物質、および当該電極活物質を用いた全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】全固体電池の基本構造を示す模式的断面図である。
【
図3】(a)および(b)はCuKα線を用いたXRD測定を行なった場合の測定結果を例示する図である。
【
図4】実施形態に係る全固体電池の模式的断面図である。
【
図6】全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
【
図7】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【
図8】第2実施形態に係るリチウムイオン電池の基本構造を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る全固体電池100の基本構造を示す模式的断面図である。
図1で例示するように、全固体電池100は、第1内部電極10(第1電極層)と第2内部電極20(第2電極層)とによって、固体電解質層30が挟持された構造を有する。第1内部電極10は、固体電解質層30の第1主面上に形成されている。第2内部電極20は、固体電解質層30の第2主面上に形成されている。第1内部電極10、固体電解質層30、第2内部電極20は、焼結体である。
【0017】
全固体電池100を二次電池として用いる場合には、第1内部電極10および第2内部電極20の一方を正極として用い、他方を負極として用いる。本実施形態においては、一例として、第1内部電極10を正極として用い、第2内部電極20を負極として用いるものとする。
【0018】
固体電解質層30は、イオン伝導性を有する固体電解質を主成分とする。固体電解質層30の固体電解質は、例えばリチウムイオン伝導性を有する酸化物系の固体電解質である。当該固体電解質は、例えば、NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質である。NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質は、高い導電率を有するとともに、大気中で安定しているという性質を有している。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi2(PO4)3)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3や、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3などが挙げられる。
【0019】
図2で例示するように、第1内部電極10は、電極活物質11、固体電解質12、導電助剤13などが分散する構造を有している。第2内部電極20は、電極活物質21、固体電解質22、導電助剤23などが分散する構造を有している。第1内部電極10が電極活物質11を備え、第2内部電極20が電極活物質21を備えることによって、全固体電池100を二次電池として用いることができる。第1内部電極10が固体電解質12を備え、第2内部電極20が固体電解質22を備えることによって、第1内部電極10および第2内部電極20にイオン伝導性が得られる。第1内部電極10が導電助剤13を備え、第2内部電極20が導電助剤23を備えることによって、第1内部電極10および第2内部電極20に導電性が得られる。
【0020】
電極活物質11は、例えば、オリビン型結晶構造をもつ電極活物質である。このような電極活物質として、遷移金属とリチウムとを含むリン酸塩が挙げられる。オリビン型結晶構造は、天然のカンラン石(olivine)が有する結晶であり、X線回折において判別することができる。
【0021】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質の典型例として、Coを含むLiCoPO4などを用いることができる。この化学式において遷移金属のCoが置き換わったリン酸塩などを用いることもできる。ここで、価数に応じてLiやPO4の比率は変動し得る。なお、遷移金属として、Co,Mn,Fe,Niなどを用いることが好ましい。
【0022】
導電助剤13,23として、カーボン材料などが用いられている。導電助剤13,23として、金属が用いられていてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。
【0023】
ところで、一般的なLiイオン電池に用いられる負極活物質は、黒鉛系が主となっている。しかしながら、黒鉛系の動作電位はLiの析出電位と近いため、充放電時にLiの析出による内部短絡の危険性が存在する。そこで、酸化物系の負極活物質を用いることが考えられる。酸化物系の負極活物質は、黒鉛系の負極活物質と比較して動作電位が高く、リチウム析出が起こらないため、充放電時に内部短絡の起こらない安全な電池を提供することができる。しかしながら、酸化物系の負極活物質の欠点として、低容量である点が挙げられる。
【0024】
近年では、約270mAh/gの入出力が可能なAlNb11O29といった高容量の負極活物質が報告されている。しかしながら、AlNb11O29以上に高容量な負極活物質が求められている。
【0025】
本発明者の鋭意研究により、AlおよびNbを含み、空間群C2/mに帰属し、CuKα線を用いたXRD測定において25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する酸化物系の負極活物質を用いることで、より高容量を実現できることが突き止められた。本実施形態においては、電極活物質21が、AlおよびNbを含み、空間群C2/mに帰属し、CuKα線を用いたXRD測定において25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する酸化物系の負極活物質を含む。
【0026】
例えば、AlおよびNbを含み、空間群C2/mに帰属し、CuKα線を用いたXRD測定において25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する酸化物系の負極活物質として、一般式Al2+xNb50O128+1.5x(-0.1≦x≦0.1)で表すことができる酸化物を用いることができる。例えば、-0.1≦x≦0であってもよく、または0≦x≦0.1であってもよい。
【0027】
例えば、負極活物質として、Al2Nb50O128、Al1.9Nb50O127.85、Al2.1Nb50O128。15などを用いることができる。一例として、AlNb11O29の入出力は250~270mAh/cm3であるのに対して、Al2Nb50O128の入出力は270mAh/g~290mAh/cm3である。
【0028】
図3(a)は、一例として、Al
2Nb
50O
128の組成を有する負極活物質についてCuKα線を用いたXRD測定を行なった場合の測定結果を例示する図である。
図3(a)で例示するように、いくつかのピークが現れているものの、25.3°以上25.7°以下に主要ピーク(最も強度の高いピーク)が現れている。なお、
図3(b)は、AlNb
11O
29についてCuKα線を用いたXRD測定を行なった場合の測定結果を例示する図である。
図3(b)で例示するように、AlNb
11O
29では、主要ピークが25.3°~25.7°の範囲外に現れている。
【0029】
電極活物質21は、AlおよびNbを含み、空間群C2/mに帰属し、CuKα線を用いたXRD測定において25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する酸化物系負極活物質に加えて、組成の異なる他の負極活物質を含んでいてもよい。当該他の負極活物質は、特に限定されるものではないが、例えば、TiNb2O7、AlNb11O29、Li4Ti5O12、TiTa2O7、TiTa1.5Nb0.5O7、TiO2、Ti2Nb10O29、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、LiVO3、LiTiOPO4、MoNb12O33、Li0.29La0.57TiO3、Nb16W5O55、Nb2O5、NbPO5、Li3VO4、Li3V2O5などを用いることができる。
【0030】
特に、AlおよびNbを含み、空間群C2/mに帰属し、CuKα線を用いたXRD測定において25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する負極活物質としてAl2Nb50O128を用い、他の負極活物質としてAlNb11O29を用いることで、混合焼成しても活物質同士の反応が抑制されるという特有の効果が得られる。
【0031】
第2内部電極20において、電極活物質21の平均粒径が大きすぎると、電極内抵抗が高くなり、高速な充放電が難しくなるおそれがある。平均粒径が小さすぎると熱処理時の反応性が高まることに加え、固体電解質の焼結緻密化を阻害するおそれがある。そこで、第2内部電極20における電極活物質21の平均粒径は、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、0.7μm以上4.5μm以下であることがより好ましく、1μm以上4μm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
図4は、複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池100aの模式的断面図である。全固体電池100aは、略直方体形状を有する積層チップ60を備える。積層チップ60において、積層方向端の上面および下面以外の4面のうちの2面である2側面に接するように、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが設けられている。当該2側面は、隣接する2側面であってもよく、互いに対向する2側面であってもよい。本実施形態においては、互いに対向する2側面(以下、2端面と称する)に接するように第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが設けられているものとする。
【0033】
以下の説明において、全固体電池100と同一の組成範囲、同一の厚み範囲、および同一の粒度分布範囲を有するものについては、同一符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0034】
全固体電池100aにおいては、複数の第1内部電極10と複数の第2内部電極20とが、固体電解質層30を介して交互に積層されている。複数の第1内部電極10の端縁は、積層チップ60の第1端面に露出し、第2端面には露出していない。複数の第2内部電極20の端縁は、積層チップ60の第2端面に露出し、第1端面には露出していない。それにより、第1内部電極10および第2内部電極20は、第1外部電極40aと第2外部電極40bとに、交互に導通している。なお、固体電解質層30は、第1外部電極40aから第2外部電極40bにかけて延在している。このように、全固体電池100aは、複数の電池単位が積層された構造を有している。
【0035】
第1内部電極10、固体電解質層30および第2内部電極20の積層構造の上面(
図4の例では、最上層の第1内部電極10の上面)に、カバー層50が積層されている。また、当該積層構造の下面(
図4の例では、最下層の第1内部電極10の下面)にも、カバー層50が積層されている。カバー層50は、例えば、Al、Zr、Tiなどを含む無機材料(例えば、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2など)を主成分とする。カバー層50は、固体電解質層30の主成分を主成分として含んでいてもよい。
【0036】
第1内部電極10および第2内部電極20は、集電体層を備えていてもよい。例えば、
図5で例示するように、第1内部電極10内に第1集電体層15が設けられていてもよい。また、第2内部電極20内に第2集電体層25が設けられていてもよい。第1集電体層15および第2集電体層25は、導電性材料を主成分とする。例えば、第1集電体層15および第2集電体層25の導電性材料として、金属、カーボンなどを用いることができる。第1集電体層15を第1外部電極40aに接続し、第2集電体層25を第2外部電極40bに接続することで、集電効率が向上する。
【0037】
続いて、
図4で例示した全固体電池100aの製造方法について説明する。
図6は、全固体電池100aの製造方法のフローを例示する図である。
【0038】
(負極活物質粉末の作製工程)
Al2O3、Nb2O5などの原料を秤量し、混合する。例えば、Al2+xNb50O128+1.5x(-0.1≦x≦0.1)が得られるように秤量し、擂潰混合する。混合後、大気中1100℃で仮焼し、得られた仮焼粉に対して再度擂潰処理を行う。その後、大気中1300℃で熱処理することで目的のAl2+xNb50O128+1.5x(-0.1≦x≦0.1、0≦y<25)の合成粉を得る。合成粉を再度擂潰処理後、#150のステンレスメッシュで篩い通しを行い、負極活物質粉末とする。
【0039】
合成時の焼成温度は、高すぎると粒子の凝着が激しくなりハンドリングしにくくなるため好ましくなく、低すぎると各金属原子の均一性が低下するため好ましくない。焼成温度は1100℃以上1450℃以下が好ましく、1150℃以上1400℃以下がより好ましく、1200℃以上1350℃以下がさらに好ましい。
【0040】
(固体電解質層用の原料粉末作製工程)
まず、上述の固体電解質層30を構成する固体電解質層用の原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、固体電解質層用の原料粉末を作製することができる。得られた原料粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrO2ボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0041】
(カバー層用の原料粉末作製工程)
まず、上述のカバー層50を構成するセラミックスの原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、カバー層用の原料粉末を作製することができる。得られた原料粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrO2ボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0042】
(内部電極用ペースト作製工程)
次に、上述の第1内部電極10および第2内部電極20の作製用の内部電極用ペーストを作製する。例えば、導電助剤、電極活物質、固体電解質材料、焼結助剤、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで内部電極用ペーストを得ることができる。固体電解質材料として、上述した固体電解質層用の原料粉末を用いてもよい。導電助剤として、カーボン材料などを用いる。導電助剤として、金属を用いてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金や各種カーボン材料などをさらに用いてもよい。第1内部電極10と第2内部電極20とで組成が異なる場合には、それぞれの内部電極用ペーストを個別に作製すればよい。また、第2内部電極20の電極活物質21に複数種類の負極活物質を含ませる場合には、当該複数種類の負極活物質を内部電極用ペーストに含ませればよい。
【0043】
内部電極用ペーストの焼結助剤として、例えば、Li-B-O系化合物、Li-Si-O系化合物、Li-C-O系化合物、Li-S-O系化合物,Li-P-O系化合物などのガラス成分のどれか1つあるいは複数のガラス成分が含まれている。
【0044】
(外部電極用ペースト作製工程)
次に、上述の第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの作製用の外部電極用ペーストを作製する。例えば、導電性材料、ガラスフリット、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで外部電極用ペーストを得ることができる。
【0045】
(固体電解質グリーンシート作製工程)
固体電解質層用の原料粉末を、結着材、分散剤、可塑剤などとともに、水性溶媒あるいは有機溶媒に均一に分散させて、湿式粉砕を行うことで、所望の平均粒径を有する固体電解質スラリを得る。このとき、ビーズミル、湿式ジェットミル、各種混練機、高圧ホモジナイザーなどを用いることができ、粒度分布の調整と分散とを同時に行うことができる観点からビーズミルを用いることが好ましい。得られた固体電解質スラリにバインダを添加して固体電解質ペーストを得る。得られた固体電解質ペーストを塗工することで、固体電解質グリーンシート51を作製することができる。塗工方法は、特に限定されるものではなく、スロットダイ方式、リバースコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ドクターブレード方式などを用いることができる。湿式粉砕後の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱法を用いたレーザ回折測定装置を用いて測定することができる。
【0046】
(積層工程)
図7(a)で例示するように、固体電解質グリーンシート51の一面に、内部電極用ペースト52を印刷する。固体電解質グリーンシート51上で内部電極用ペースト52が印刷されていない領域には、逆パターン53を印刷する。逆パターン53として、固体電解質グリーンシート51と同様のものを用いることができる。印刷後の複数の固体電解質グリーンシート51を、交互にずらして積層する。
図7(b)で例示するように、積層方向の上下から、カバーシート54を圧着することで、積層体を得る。この場合、当該積層体において、2端面に交互に、内部電極用ペースト52が露出するように、略直方体形状の積層体を得る。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート作製工程と同様の手法でカバー層用の原料粉末を塗工することで形成することができる。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート51よりも厚く形成しておく。塗工時に厚くしてもよく、塗工したシートを複数枚重ねることで厚くしてもよい。
【0047】
次に、2端面のそれぞれに、ディップ法等で外部電極用ペースト55を塗布して乾燥させる。これにより、全固体電池100aを形成するための成型体が得られる。
【0048】
(焼成工程)
次に、得られた積層体を焼成する。焼成の条件は酸化性雰囲気下あるいは非酸化性雰囲気下で、最高温度を好ましくは400℃~1000℃、より好ましくは500℃~900℃などとすることが特に限定なく挙げられる。最高温度に達するまでにバインダを十分に除去するために酸化性雰囲気において最高温度より低い温度で保持する工程を設けてもよい。プロセスコストを低減するためにはできるだけ低温で焼成することが望ましい。焼成後に、再酸化処理を施してもよい。以上の工程により、全固体電池100aが生成される。
【0049】
なお、内部電極用ペーストと、導電性材料を含む集電体用ペーストと、内部電極用ペーストとを順に積層することで、第1内部電極10および第2内部電極20内に集電体層を形成することができる。
【0050】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係るリチウムイオン電池200の基本構造を示す模式的断面図である。
図8で例示するように、リチウムイオン電池200は、対極として機能するLi金属110上に、電解液120が配置され、電解液120上に混合電極130が配置され、混合電極130上に集電箔140が配置された構造を有する。電解液120は、セパレータなどに保持されている。
【0051】
Li金属110は、負極として機能する。混合電極130は、正極として機能する。混合電極130は、第1実施形態で説明した第2内部電極20に含まれている電極活物質を含んでいる。ただし、混合電極130は、焼結体ではなく、電極活物質を含むスラリを塗布して乾燥させるなどして形成されている。集電箔140は、導電性材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウムなどの金属箔である。電解液120は、リチウムイオンを伝導させることができる電解質を含むものであれば特に限定されるものではない。
【0052】
本実施形態においては、混合電極130が第1実施形態で説明した第2内部電極20の電極活物質を含むことから、高容量を実現することができる。また、本実施形態においては、焼成の工程が不要であるため、2種類以上の負極活物質を混合電極130に含有させても、当該負極活物質同士の反応を抑制することができる。
【実施例0053】
以下、実施形態に従ってリチウムイオン電池を作製し、特性について調べた。
【0054】
(実施例1)
Al2Nb50O128の組成比となるように、原料を秤量し、擂潰混合した。混合後、大気中1100℃で仮焼し、得られた仮焼粉に対して再度擂潰処理を行い、さらに大気中1300℃で熱処理することで目的のAl2Nb50O128合成粉を得た。合成粉を再度擂潰処理後、#150のステンレスメッシュで篩い通しを行い、負極活物質粉末とした。CuKα線を用いたXRD測定で、25.6°に主要ピークが確認された。また、リートベルト解析により、空間群C2/mに帰属することが確認された。
【0055】
負極活物質粉末、PVdFバインダ、アセチレンブラックを重量比80:10:10で混合し、NMPで希釈した塗工スラリを作製し、アルミ箔上に塗膜形成した。セパレータを介在させて対極に金属リチウム箔を配置した負極ハーフセルを構築し、電解液として1MのLiPF6のEC:DEC(1:2vol%)を用いて、2032コインセル中に封止した。DECは、ジエチルカーボネートである。ECは、エチレンカーボネートである。
【0056】
(実施例2)
実施例2では、Al1.9Nb50O127.85の組成比の負極活物質粉末を合成した他は、実施例1と同じ製造条件とした。なお、CuKα線を用いたXRD測定で、25.7°に主要ピークが確認された。また、リートベルト解析により、空間群C2/mに帰属することが確認された。
【0057】
(実施例3)
実施例3では、Al2.1Nb50O128。15の組成比の負極活物質粉末を合成した他は、実施例1と同じ製造条件とした。なお、CuKα線を用いたXRD測定で、25.4°に主要ピークが確認された。また、リートベルト解析により、空間群C2/mに帰属することが確認された。
【0058】
(比較例1)
比較例1では、AlNb11O29の組成比の負極活物質粉末を合成した他は、実施例1と同じ製造条件とした。なお、CuKα線を用いたXRD測定で、24.9°に主要ピークが確認された。また、リートベルト解析により、空間群C2/mに帰属することが確認された。
【0059】
(比較例2)
比較例2では、Al1.8Nb50O127.7の組成比の負極活物質粉末を合成した他は、実施例1と同じ製造条件とした。なお、CuKα線を用いたXRD測定で、25.8°に主要ピークが確認された。また、リートベルト解析により、空間群C2/mに帰属することが確認された。
【0060】
(比較例3)
比較例3では、Al2.2Nb50O128.3の組成比の負極活物質粉末を合成した他は、実施例1と同じ製造条件とした。なお、CuKα線を用いたXRD測定で、24.8°に主要ピークが確認された。また、リートベルト解析により、空間群C2/mに帰属することが確認された。
【0061】
(単相化率)
実施例1~3および比較例1~3のそれぞれについて、負極活物質の単相化率を測定した。単相化率は、リートベルト解析によって得られた主相と二次相ピーク強度比から算出した。具体的には、負極活物質の強度/(負極活物質の強度+二次相の強度)×100とした。単相化率は、実施例1では100%であり、実施例2では93%であり、実施例3では94%であり、比較例1では100%であり、比較例2では76%であり、比較例3では71%であった。
【0062】
単相化率が90%以上であれば単相化率を合格「○」と判定し、単相化率が90%未満であれば単相化率を不合格「×」と判定した。実施例1~3の単相化率は合格「○」と判定された。一方で、比較例2,3の単相化率は不合格「×」と判定された。これは、主相(25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する材料)以外を多く含むことで放電容量の低下が起こると考えられるためである。
【0063】
(放電容量)
実施例1~3および比較例1~3のそれぞれについて、放電容量を測定した。放電容量は、25℃の恒温槽内でカットオフ電位を1.0V-3.0V(vs.Li/Li
+)として0.2CのCC充放電を行うことによって測定した。放電容量は、実施例1では1312mAh/cm
3であり、実施例2では1209mAh/cm
3であり、実施例3では1221mAh/cm
3であり、比較例1では1122mAh/cm
3であり、比較例2では1076mAh/cm
3であり、比較例3では1022mAh/cm
3であった。なお、実施例1の結果を
図9に示す。
【0064】
放電容量が1200mAh/cm3以上であれば放電容量を合格「○」と判定し、放電容量が1200mAh/cm3未満であれば放電容量を不合格「×」と判定した。実施例1~3の放電容量は合格「○」と判定された。一方で、比較例1~3の放電容量は不合格「×」と判定された。これは、主相(25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する材料)以外を多く含むことによって容量が低下したためであると考えられる。
【0065】
【0066】
以上の結果から、実施例1~3の負極活物質は、高容量を実現することが確認された。続いて、サイクル特性およびレート特性についても調べた。
【0067】
(サイクル特性)
実施例1~3および比較例1~3のそれぞれについて、サイクル特性を測定した。サイクル特性は、25℃の恒温槽内でカットオフ電位を1.0V-3.0V(vs.Li/Li+)として0.2CのCC充放電を30サイクルした後、初回放電容量からの容量維持率を算出することによって評価した。30サイクル後の容量維持率は、実施例1では88.4%であり、実施例2では87.2%であり、実施例3では86.9%であり、比較例1では90.3%であり、比較例2では76.4%であり、比較例3では78.7%であった。
【0068】
30サイクル後の容量維持率が80%以上であればサイクル特性を合格「○」と判定し、30サイクル後の容量維持率が80%未満であればサイクル特性を不合格「×」と判定した。実施例1~3のサイクル特性は合格「○」と判定された。一方で、比較例2,3のサイクル特性は不合格「×」と判定された。これは、主相(25.3°以上25.7°以下に主要ピークを有する材料)以外を多く含むことによって電極のサイクル劣化が顕著になったためであると考えられる。
【0069】
続いて、2種類の負極活物質を混合した電極活物質について放電容量について調べた。
【0070】
(実施例4)
実施例4では、Al
2Nb
50O
128の負極活物質と、AlNb
11O
29の負極活物質とを混合したものを、放電容量の測定対象とした。実施例の放電容量は、1194mAh/cm
3であり、比較例1の放電容量よりも高くなった。なお、
図10に示すように、CuKα線を用いたXRD測定において、ピーク強度を測定した。25.6°のピーク強度と26.0°のピーク強度との合計を100とし、各ピーク強度の比率(%)を測定した。25.6°のピーク強度割合は32%であり、26.0°のピーク強度割合は68%であった。結果を表2に示す。
【表2】
【0071】
(実施例5)
実施例5では、Al
2Nb
50O
128の負極活物質と、AlNb
11O
29の負極活物質とを混合して焼成した。CuKα線を用いたXRD測定において、ピーク強度を測定した。25.6°のピーク強度と26.0°のピーク強度との合計を100とし、各ピーク強度の比率(%)を測定した。25.6°のピークが確認され、混合焼成後においてもAl
2Nb
50O
128の存在が確認された。このことから、Al
2Nb
50O
128の負極活物質と、AlNb
11O
29の負極活物質とを混合焼成しても、活物質同士の反応が抑制されることが確認された。結果を表3に示す。
【表3】
【0072】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。