IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 石原ケミカル株式会社の特許一覧

特開2024-151625無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液並びに無電解銅メッキ方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151625
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液並びに無電解銅メッキ方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/30 20060101AFI20241018BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20241018BHJP
   H05K 3/18 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C23C18/30
C23C18/40
B01J37/02 101D
B01J37/02 301B
B01J37/16
B01J23/755 M
H05K3/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065116
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092439
【弁理士】
【氏名又は名称】豊永 博隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一生
(72)【発明者】
【氏名】坂井 寿和
【テーマコード(参考)】
4G169
4K022
5E343
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA05
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA21C
4G169BA22C
4G169BA28C
4G169BA29C
4G169BA32C
4G169BB02A
4G169BB14C
4G169BB19C
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD01C
4G169BD06C
4G169BE01C
4G169BE06C
4G169BE08C
4G169BE10C
4G169BE14C
4G169BE15C
4G169BE16C
4G169BE19C
4G169BE21C
4G169BE22C
4G169BE37C
4G169BE38C
4G169CB81
4G169CD10
4G169DA06
4G169EB19
4G169FA03
4G169FA08
4G169FB14
4G169FB17
4G169FB19
4G169FB23
4G169FB45
4G169FB46
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC04
4K022AA14
4K022AA42
4K022BA08
4K022CA02
4K022CA03
4K022CA05
4K022CA06
4K022CA14
4K022CA19
4K022CA22
4K022DA01
4K022DB06
4K022DB26
4K022EA02
5E343AA02
5E343AA15
5E343AA17
5E343AA18
5E343AA23
5E343AA26
5E343BB24
5E343BB44
5E343BB71
5E343CC36
5E343CC74
5E343DD33
5E343ER01
5E343GG06
(57)【要約】
【課題】 非導電性基板に触媒付与をした後に無電解銅メッキを行うに際して、無電解メッキの対象である銅とは異なる金属種で触媒付与を行い、均一な銅皮膜を得る。
【解決手段】 無電解メッキの対象である銅とは異なるニッケルを触媒核の金属種に選択することで、非導電性基板に付与されたニッケル触媒核上に、ニッケルとは異なる金属である銅の皮膜を無電解メッキにより均一にムラなく形成することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解銅メッキを施す非導電性基板に接触させて触媒付与を行うためのニッケルコロイド触媒液において、
(A)可溶性ニッケル塩と、
(B)還元剤と、
(D)ポリビニルピロリドン類(PVP類)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド類(PAM類)、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアリルアミン類(PAA類)、ポリビニルイミダゾール類(PVI類)から選ばれた合成系の水溶性ポリマー
とを含有することを特徴とする無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液。
【請求項2】
さらに、ポリカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、糖質より選ばれたコロイド安定剤(C)の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液。
【請求項3】
コロイド安定剤(C)が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シュウ酸及びこれらの塩からなるポリカルボン酸類、
クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、アスコルビン酸、ヒドロキシ酪酸、グルコヘプトン酸、シトラマル酸、エリソルビン酸及びこれらの塩からなるオキシカルボン酸類、
グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、グリシン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)-エチレンジアミンコハク酸及びこれらの塩からなるアミノカルボン酸類、
グルコース 、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、パラチノース、キシロース、トレハロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、還元水飴、ラクチトール、還元パラチノース、グルコノラクトンからなる糖質
よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液。
【請求項4】
還元剤(B)が、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類、還元糖類よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液。
【請求項5】
(S2)請求項1~4のいずれか1項のニッケルコロイド触媒液で非導電性基板を浸漬して、基板表面上にニッケルコロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(S3)触媒付与された上記基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなることを特徴とする無電解銅メッキ方法。
【請求項6】
(S1)ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液に非導電性基板を浸漬する吸着促進工程と、
(S2)上記本発明1~3のいずれかのニッケルコロイド触媒液で吸着促進された非導電性基板を浸漬して、基板表面上にニッケルコロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(S3)触媒付与された上記基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなることを特徴とする無電解銅メッキ方法。
【請求項7】
触媒付与工程(S2)の後であって無電解銅メッキ工程(S3)の前に、
触媒付与された非導電性基板を、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類、還元糖類よりなる群から選ばれた還元剤の少なくとも一種からなる含有液に浸漬する触媒活性化工程(S23)を行うことを特徴とする請求項6に記載の無電解銅メッキ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非導電性基板に前処理としての触媒付与をした後、銅皮膜を形成する無電解銅メッキ方法に関して、触媒核の付与金属に無電解メッキの銅とは異なるニッケルを選択することを特徴とし、ニッケルコロイド触媒液に特定のコロイド安定剤と特定の水溶性ポリマーを組み合わせることで、ニッケル触媒液の経時安定性を効果的に保持できるとともに、ニッケル触媒核上に無電解銅メッキにより均一でムラのない外観の銅皮膜を形成できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
銅、又は銅合金製の基板を始め、特に、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PET樹脂などの樹脂基板を初め、ガラス基板、セラミックス基板などの非導電性基板上に無電解銅メッキを施すには、先ず、基板上にパラジウム、銀、白金などの貴金属を吸着させてこれを触媒核とした後、この触媒核を介して無電解銅メッキ液により銅皮膜を基板上に析出させる方式が一般的である。
【0003】
一方、貴金属の触媒を使用せず、安価な銅、ニッケル、コバルトなどの特定の金属を使用した触媒付与方式もあり、当該特定金属の触媒液では、可溶性金属塩を還元剤で処理して金属のコロイド粒子を生成させて、これを触媒核とすることが基本原理となっている。
触媒核の金属に銅を選択し、非導電性基板に銅の触媒核を付与した後に、無電解銅メッキを施す従来技術として次のものがある。尚、下記の特許文献1~4はいずれも本出願人が開示したものである。
【0004】
(1)特許文献1
可溶性銅塩と、還元剤と、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類などから選ばれた特定のコロイド安定剤を含有し、可溶性銅塩とコロイド安定剤の含有モル比率を所定範囲に限定し、界面活性剤をごく少量以下に制限した、非導電性基板を処理対象とする無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液であり(請求項1)、さらには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンイミン(PEI)などから選ばれた特定の水溶性ポリマーを含むことができる無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液である(請求項2~3)。
また、各種界面活性剤からなる吸着促進剤の含有液を非導電性基板に浸漬する吸着促進工程と、この非導電性基板を上記銅コロイド触媒液に浸漬する触媒付与工程と、触媒付与された基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程とからなる無電解銅メッキ方法である(請求項9)。
【0005】
(2)特許文献2
上記特許文献1と同様の可溶性銅塩と、還元剤と、特定のコロイド安定剤に加えて、果糖(フルクトース)、キシロース、ソルビトールなどから選ばれた特定の糖類を含有し、或いはさらに、上記特許文献1と同様の特定の水溶性ポリマーを含有する無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液である(請求項1~3)。
また、前記特許文献1と同様の吸着促進工程と、当該特許文献2の銅コロイド触媒液を用いた触媒付与工程と、無電解銅メッキ工程とからなる無電解銅メッキ方法である(請求項9)。
【0006】
(3)特許文献3
上記特許文献1と同様の吸着促進工程と、可溶性銅塩と還元剤と特定のコロイド安定剤を含む銅コロイド触媒液を用いた触媒付与工程と、無電解銅メッキ工程とからなり、触媒付与する銅コロイド粒子の付着量と粒子径を特定化した無電解銅メッキ方法である(請求項1)。
【0007】
(4)特許文献4
上記特許文献1と同様の可溶性銅塩と還元剤と特定のコロイド安定剤に加えて、非還元性オリゴ糖(例えば、スクロース、トレハロースなど)を含む銅コロイド触媒液である(請求項1~3)。
また、前記特許文献1と同様の吸着促進工程と、当該特許文献4の銅コロイド触媒液を用いた触媒付与工程と、無電解銅メッキ工程とからなる無電解銅メッキ方法である(請求項6)。
【0008】
(5)特許文献5
第1銅イオンと次亜リン酸イオンと塩素イオンとを含有する無電解メッキ用の触媒溶液であり(請求項1~2)、被メッキ物を界面活性剤でコンディショニング処理する前処理工程(a)と、前処理した被メッキ物を上記触媒溶液に接触させる触媒化処理工程(b)と、被メッキ物の還元化処理工程(c)と、無電解メッキ液に接触させる無電解メッキ工程(d)とからなる無電解メッキ法である(請求項8)。
上記無電解メッキは具体的には無電解銅メッキである(表2、[0081])。
【0009】
(6)特許文献6
所定濃度の銅金属粒子と、ゼラチンと、ポリエチレングリコール(PEG)と、ジピリジルを含有する無電解メッキ用の銅コロイド触媒液であり(特許請求の範囲第1項)、銅金属粒子は銅イオンをジメチルアミンボランで還元して得られる(同第2項)。
無電解メッキは具体的には無電解銅メッキである(第3頁第12~13行目)。
【0010】
(7)特許文献7~9
特許文献7は、所定濃度の金属銅粒子(銅イオンを還元した金属銅を含む)と、所定濃度のゼラチンと、2種の所定平均分子量のポリエチレングリコール(PEG)の組み合わせとを含む無電解メッキ用の銅コロイド触媒液である(特許請求の範囲第1項)。
特許文献8は、所定濃度の金属銅粒子(銅イオンを還元した金属銅を含む)と、所定濃度のゼラチンと、1種の所定平均分子量のポリエチレングリコール(PEG)とを含む無電解メッキ用の銅コロイド触媒液である(特許請求の範囲第1項)。
また、特許文献9は、所定濃度の金属銅粒子(銅イオンを還元した金属銅を含む)と、所定濃度のゼラチンとを含む無電解メッキ用の銅コロイド触媒液である(特許請求の範囲第1項)。
【0011】
一方、本出願人は、上述のような無電解銅メッキを前提にした触媒付与ではなく、下記に示す通り、無電解ニッケル又はニッケル合金(以下、ニッケル系という)メッキを前提として、非導電性基板にニッケルコロイド触媒液を用いた触媒付与をした後、当該ニッケル系のメッキ皮膜を形成する無電解メッキ方法を開示した。
(10)特許文献10
可溶性ニッケル塩と、還元剤と、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類などから選ばれた特定のコロイド安定剤を含有した無電解ニッケル系メッキ用のニッケルコロイド触媒液である(請求項1)。
また、非導電性基板に各種界面活性剤からなる吸着促進剤の含有液を浸漬する吸着促進工程と、当該基板を上記ニッケル系メッキ用のニッケルコロイド触媒液に浸漬する触媒付与工程と、触媒付与された基板上に無電解ニッケル系メッキ液を用いてニッケル系皮膜を形成する無電解メッキ工程とからなる無電解ニッケル系メッキ方法である(請求項8)。
【0012】
(11)特許文献11
可溶性ニッケル塩と、還元剤と、フルクトース、キシロース、ソルビトールなどから選ばれた特定の糖質からなるコロイド安定剤とを含有する無電解ニッケル系メッキ用のニッケルコロイド触媒液である(請求項1)。
また、前記特許文献10と同様の吸着促進工程と、当該特許文献11のニッケルコロイド触媒液を用いた触媒付与工程と、無電解ニッケル系メッキ工程とからなる無電解ニッケル系メッキ方法である(請求項9)。
【0013】
(12)特許文献12
可溶性ニッケル塩と、還元剤と、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリビニルピロリドン類(PVP類)などから選ばれた特定の合成系水溶性ポリマーとを含有し、当該水溶性ポリマーを触媒液に対して所定濃度で含有することを特徴とする無電解ニッケル系メッキ用のニッケルコロイド触媒液である(請求項1)。
また、前記特許文献10と同様の吸着促進工程と、当該特許文献12のニッケルコロイド触媒液を用いた触媒付与工程と、無電解ニッケル系メッキ工程とからなる無電解ニッケル系メッキ方法である(請求項4)。
【0014】
(13)特許文献13
可溶性ニッケル塩と、還元剤と、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類などから選ばれた特定のコロイド安定剤と、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリビニルピロリドン類(PVP類)などから選ばれた特定の合成系水溶性ポリマーとを含有し、当該コロイド安定剤と水溶性ポリマーとの含有量、両者の含有モル比率を制御することを特徴とする無電解ニッケル系メッキ用のニッケルコロイド触媒液である(請求項1)。
また、前記特許文献10と同様の吸着促進工程と、当該特許文献13のニッケルコロイド触媒液を用いた触媒付与工程と、無電解ニッケル系メッキ工程とからなる無電解ニッケル系メッキ方法である(請求項4)。
【0015】
(14)特許文献14
可溶性ニッケル塩と、還元剤と、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類などから選ばれた特定のコロイド安定剤と、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリビニルピロリドン類(PVP類)などから選ばれた特定の合成系水溶性ポリマーとを含有し、当該コロイド安定剤と水溶性ポリマーとの混合手順を制御することなどを特徴とする無電解ニッケル系メッキ用のニッケルコロイド触媒液である(請求項1)。
また、前記特許文献10と同様の吸着促進工程と、当該特許文献14のニッケルコロイド触媒液を用いた触媒付与工程と、無電解ニッケル系メッキ工程とからなる無電解ニッケル系メッキ方法である(請求項4)。
【0016】
(15)特許文献15
可溶性ニッケル塩と、還元剤と、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアミン類(PA類)などから選ばれた特定の合成系水溶性ポリマーとを含有し、当該水溶性ポリマーの触媒液全体に対する含有量を所定濃度に制御することなどを特徴とする無電解ニッケル系メッキ用のニッケルコロイド触媒液である(請求項1)。
また、前記特許文献10と同様の吸着促進工程と、当該特許文献15のニッケルコロイド触媒液を用いた触媒付与工程と、無電解ニッケル系メッキ工程とからなる無電解ニッケル系メッキ方法である(請求項3)。
【0017】
【特許文献1】特開2015-147987号公報
【特許文献2】特開2016-151056号公報
【特許文献3】特開2017-186635号公報
【特許文献4】特許第6343787号公報
【特許文献5】特開2011-225929号公報
【特許文献6】特開昭62-290879号公報
【特許文献7】特開昭61-023764号公報
【特許文献8】特開昭61-023762号公報
【特許文献9】特開昭61-019782号公報
【特許文献10】特開2016-056421号公報
【特許文献11】特開2018-012882号公報
【特許文献12】特開2021-172862号公報
【特許文献13】特開2022-006741号公報
【特許文献14】特許第6843425号公報
【特許文献15】特許第6843455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記特許文献1~9はいずれも、非導電性基板などを初めとする被メッキ物に銅コロイド粒子からなる触媒核を付与した後、無電解銅メッキを施すことを特徴とし、特に、本出願人に係わる特許文献1~4では、銅コロイド触媒液の経時安定性に優れるとともに、無電解メッキで得られる銅皮膜も緻密性や平滑性に優れるという利点がある。
本発明は、非導電性基板に触媒核を付与した後、無電解銅メッキを施す場合の新たな手法を技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記特許文献10~15は、いずれもニッケル触媒を非導電性基板に付与した後、当該基板上に無電解ニッケル系メッキ皮膜を形成するメッキ方法である。
この場合、本発明者らは、前記特許文献1~9、特に特許文献1~4に代表される銅コロイド触媒核を非導電性基板に付与した後、無電解銅メッキを行う手法に替えて、新たに、非導電性基板に付与する触媒核を銅ではない別の金属種で行うことを模索した結果、上記特許文献10~15に代表されるニッケル触媒核を付与した後、無電解銅メッキを行えば、無電解メッキの対象である銅とは異なるニッケルを触媒付与の対象金属に選択することで、ニッケル触媒核上に銅皮膜を円滑に形成できることを新たに見い出し、本発明を完成した。
【0020】
即ち、本発明1は、無電解銅メッキを施す非導電性基板に接触させて触媒付与を行うためのニッケルコロイド触媒液において、
(A)可溶性ニッケル塩と、
(B)還元剤と、
(D)ポリビニルピロリドン類(PVP類)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド類(PAM類)、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアリルアミン類(PAA類)、ポリビニルイミダゾール類(PVI類)から選ばれた合成系の水溶性ポリマー
とを含有することを特徴とする無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液である。
【0021】
本発明2は、上記本発明1において、さらに、ポリカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、糖質より選ばれたコロイド安定剤(C)の少なくとも一種を含有することを特徴とする無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液である。
【0022】
本発明3は、上記本発明1又は2において、コロイド安定剤(C)が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シュウ酸及びこれらの塩からなるポリカルボン酸類、
クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、アスコルビン酸、ヒドロキシ酪酸、グルコヘプトン酸、シトラマル酸、エリソルビン酸及びこれらの塩からなるオキシカルボン酸類、
グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、グリシン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)-エチレンジアミンコハク酸及びこれらの塩からなるアミノカルボン酸類、
グルコース 、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、パラチノース、キシロース、トレハロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、還元水飴、ラクチトール、還元パラチノース、グルコノラクトンからなる糖質
よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液である。
【0023】
本発明4は、上記本発明1又は2において、還元剤(B)が、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類、還元糖類よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液である。
【0024】
本発明5は、(S2)請求項1~3のいずれか1項のニッケルコロイド触媒液で非導電性基板を浸漬して、基板表面上にニッケルコロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(S3)触媒付与された上記基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなることを特徴とする無電解銅メッキ方法である。
【0025】
本発明6は、(S1)ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液に非導電性基板を浸漬する吸着促進工程と、
(S2)上記本発明1~3のいずれかのニッケルコロイド触媒液で吸着促進された非導電性基板を浸漬して、基板表面上にニッケルコロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(S3)触媒付与された上記基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなることを特徴とする無電解銅メッキ方法である。
【0026】
本発明7は、上記本発明6において、触媒付与工程(S2)の後であって無電解銅メッキ工程(S3)の前に、
触媒付与された非導電性基板を、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類、還元糖類よりなる群から選ばれた還元剤の少なくとも一種からなる含有液に浸漬する触媒活性化工程(S23)を行うことを特徴とする無電解銅メッキ方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、前記特許文献1~9のように、触媒核と無電解メッキの金属種を銅に共通化するのではなく、無電解メッキの対象である金属の銅とは異なるニッケルを触媒核の金属種に選択することによっても、非導電性基板に付与されたニッケル触媒核上に異種の銅皮膜を円滑に形成できるという予測外の結果を得た。
触媒を形成するコロイド粒子は表面積が大きく、導電率が高い銅を触媒核にすると、酸化され易い面があるが、銅より酸化され難いニッケルを触媒核に選択することで、触媒機能を持続し易いという利点がある。
ちなみに、前記特許文献5では、パラジウム触媒核を使用する場合の問題として、触媒を付与し、無電解銅メッキでシード層を設け、電気銅メッキで厚付けして回路を形成し、不要な部分をエッチング処理するが、エッチングによってもパラジウム触媒核を完全には除去しきれず、絶縁信頼性を低下させる恐れがあると記述されるが([0003])、本発明では、パラジウムではなく触媒核にニッケルを使用するため、回路の絶縁信頼性の確保が容易になる。
【0028】
本発明では、非導電性基板に上記ニッケルコロイド触媒を付与してから無電解銅メッキを施すという、触媒付与と無電解メッキの対象金属を異種で行うことを基本原理とするが、この触媒付与の前処理として、非導電性基板を界面活性剤の含有液に浸漬する吸着促進処理を加重的に施して、当該吸着促進工程、ニッケル触媒核の付与工程並びに無電解銅メッキ工程を順次行うことにより、ニッケル触媒核上に無電解メッキにより銅皮膜を均一でムラなく形成することができる。
即ち、無電解銅メッキの前工程の触媒付与に銅とは異なるニッケルを触媒核に選択する本発明において、無電解メッキで析出する銅皮膜は、上記特許文献1~9に見るような銅触媒核の付与後に無電解銅メッキを行う場合に比べても、皮膜外観の均一性などで遜色がないという予測外の結果が得られたのである。
また、触媒付与工程と無電解銅メッキ工程の間に、触媒付与された非導電性基板を所定の還元剤の含有液に浸漬する触媒活性化工程(S23)を介在させると、比表面積が大きいコロイド粒子が触媒付与後に部分酸化されて酸化ニッケルになるのを、還元剤の含有液に浸漬することで抑制し、コロイド粒子の活性を円滑に保持することができ、無電解メッキで得られる銅皮膜の均一性などの性状をさらに向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、第一に、非導電性基板に接触させて触媒付与を行うためのニッケルコロイド触媒液であって、(A)可溶性銅塩と(B)還元剤と(D)所定の合成系の水溶性ポリマーを含有した無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液であり(本発明1に相当)、さらに、(C)所定のコロイド安定剤を併用した無電解銅メッキ用のニッケルコロイド触媒液である(本発明2に相当)。
また、本発明は、第二に、上記第一のニッケルコロイド触媒液で非導電性基板を処理した後に、ニッケルとは異なる銅皮膜を無電解メッキで形成する方法であり(本発明4に相当)、次いで、ニッケル触媒付与の前に、予め非導電性基板を界面活性剤の含有液で吸着促進処理する無電解銅メッキ方法であり、さらには、ニッケル触媒付与と無電解銅メッキの間に上記基板の触媒活性化処理を施す無電解銅メッキ方法である。
上記非導電性基板は、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンタレフタレート(PBT)樹脂など)、ABS樹脂、PET樹脂及びこれらのポリマーアロイ(例えば、PC/ABS、PBT/ABS、PA/ABS、PC/PS)などの樹脂基板を初め、ガラス基板、セラミックス基板などをいう。
【0030】
上記本発明1のニッケルコロイド触媒液の基本組成は、(A)可溶性ニッケル塩と、(B)還元剤と、(D)所定の合成系の水溶性ポリマーである。
上記可溶性塩(A)は、水溶液中でニッケルイオンを発生させる可溶性の塩であれば任意のものが使用でき、特段の制限はなく、難溶性塩をも排除しない。
具体的には、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、或いは有機スルホン酸やカルボン酸のニッケル塩などが挙げられる。
【0031】
上記還元剤(B)としては、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類、還元糖類などが挙げられる(本発明4参照)。
水素化ホウ素化合物は水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどであり、アミンボラン類はジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボランなどである。アルデヒド類はホルムアルデヒド、グリオキシル酸又はその塩などであり、多価フェノール類はカテコール、ヒドロキノン、レゾルシン、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸などであり、フェノールスルホン酸類はフェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸又はその塩などである。還元糖類はグルコース、フルクトースなどである。
【0032】
上記所定の合成系水溶性ポリマー(D)はコロイド粒子の分散性を向上し、もって無電解銅メッキに際して、均一でムラのない銅皮膜の析出に寄与する機能を果たす。
この水溶性ポリマー(D)は、ポリビニルピロリドン類(PVP類)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアリルアミン類(PAA類)、ポリビニルイミダゾール類(PVI類)、ポリアクリルアミド類(PAM類)から選ばれた合成系のポリマーである。
上記水溶性ポリマー(D)は合成系のポリマーを意味するため、ゼラチン、澱粉などの天然由来の水溶性ポリマー、或いは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体のような半合成系ポリマーは含まれない。但し、本発明の水溶性ポリマー(D)に当該天然由来、又は半合成系のポリマーを併用することは排除されない。
【0033】
上記ポリビニルピロリドン類(PVP類)はポリビニルピロリドンのホモポリマー並びに、ポリビニルピロリドンにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加したポリマーを含む。
上記ポリエチレンイミン類(PEI類)は、ポリエチレンイミンのホモポリマー並びにポリエチレンイミンにエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシドを付加したポリマーを含む。
上記ポリアリルアミン類(PAA類)はジアリルアミンポリマーが基本で、具体的にはジアルキルアンモニウムクロリド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド二酸化硫黄共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドアクリルアミド共重合体などである。
上記ポリビニルイミダゾール類(PVI類)はポリビニルイミダゾールのホモポリマー並びにポリビニルイミダゾールにエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシドを付加したポリマーを含む。
上記ポリアクリルアミド類(PAM類)はアクリルアミドのホモポリマー、アルデヒド変性ポリアクリルアミド、メチロールポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミドなどを初め、アクリルアミドにアクリル酸、メタクリル酸などの親水性ポリマーなどを共重合したポリマーを含む。但し、前記ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体はジアリルアミンとアクリルアミドの共重合体に分類できる。
上記水溶性ポリマー(D)としては、ポリビニルピロリドン類(PVP類)、ポリエチレンイミン類(PEI類;PEIのエチレンオキシド付加物を含む)、ポリアクリルアミド類(PAM類)、ポリアリルアミン類(PAA類)、ジアリルアミンポリマーからなるPA類などが好ましい。
【0034】
上記本発明2のニッケルコロイド触媒液の基本組成は、(A)可溶性ニッケル塩と、(B)還元剤と、(C)所定のコロイド安定剤と、(D)所定の合成系の水溶性ポリマーである。即ち、本発明1のニッケルコロイド触媒液に所定のコロイド安定剤(C)を加えたものである。
上記所定のコロイド安定剤(C)はメッキ浴中でニッケル錯体を形成する化合物であり、触媒液の経時安定性を担保する機能を果たす。
当該コロイド安定剤(C)はポリカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、糖質から選択され、これらを単用又は併用できる。
上記ポリカルボン酸類はポリカルボン酸及びその塩であり、飽和ポリカルボン酸又はその塩が好ましいが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ポリカルボン酸及びその塩を排除するものではない。
上記飽和ポリカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シュウ酸などが挙げられる。
但し、ポリカルボン酸類からなるコロイド安定剤(C)に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸又はこれらの塩を併用することは差し支えない。
【0035】
コロイド安定剤(C)としてのオキシカルボン酸類はオキシカルボン酸及びその塩であり、これらを単用又は併用できる。
上記オキシカルボン酸としては、クエン酸、酒石酸(ロッシェル塩を含む)、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、アスコルビン酸、ヒドロキシ酪酸、グルコヘプトン酸、シトラマル酸、エリソルビン酸などが挙げられる。
【0036】
コロイド安定剤(C)としてのアミノカルボン酸類はアミノカルボン酸及びその塩であり、これらを単用又は併用できる。
上記アミノカルボン酸としては、グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、グリシン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)-エチレンジアミンコハク酸などが挙げられる。
【0037】
コロイド安定剤(C)としての糖質は、グルコース 、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、パラチノース、キシロース、トレハロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、還元水飴、ラクチトール、還元パラチノース、グルコノラクトンなどが挙げられる。
【0038】
また、本発明1又は2のニッケルコロイド触媒液には、必要に応じて、触媒核となる微細金属の分散性を増すために、界面活性剤を含有することができる。
当該界面活性剤はノニオン系、両性、カチオン系、或はアニオン系の各種界面活性剤を選択できる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、C1~C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1~C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1~C25アルキルナフトール、C1~C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1~C22脂肪族アミン、C1~C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2~300モル付加縮合させたものや、C1~C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
上記カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、或はピリジニウム塩などが挙げられ、具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。 上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0039】
本発明のニッケルコロイド触媒液は水系、或いは親油性アルコールなどの有機溶媒系を問わない。
水系の場合には、液の溶媒は水及び/又は親水性アルコールから選択される。
また、当該触媒液のpHについては特に限定はないが、中性、弱酸性、弱アルカリ性などを選択することが好ましい。
【0040】
本発明のコロイド触媒液の調製手順としては、上記可溶性ニッケル塩(A)を含む溶液と、この溶液とは別途に調製された上記還元剤(B)を含む溶液とを混合してコロイド粒子を生成することが重要である。
可溶性ニッケル塩(A)と還元剤(B)を先に混合すると、ニッケルイオンが還元されて金属ニッケルが析出してしまい、成分(D)、或いは成分(C)~(D)が触媒液中で有機的に機能しない恐れがあるからである。
従って、当該触媒液の調製に際しては、還元剤からニッケルイオンに電子を円滑に供与するため、還元剤の溶液を可溶性ニッケル塩(及びコロイド安定剤)の含有溶液に時間をかけて緩やかに滴下して製造することを基本とする。例えば、5~50℃(好ましくは10~40℃)、pH1~8(好ましくはpH3~7)のニッケル塩溶液に還元剤溶液を滴下して20~1200分間(好ましくは30~300分間)撹拌し、触媒液を調製する。尚、触媒液の調製では、可溶性ニッケル塩の溶液を還元剤の液に滴下することを排除するものではない。
本発明の触媒液において、還元剤の作用により可溶性ニッケル塩から生じるニッケルコロイド粒子は適した平均粒径が1~250nm、好ましくは1~120nm、より好ましくは1~100nmの微細粒子である。
ニッケルコロイド粒子の平均粒径が250nm以下になると、触媒液に非導電性基板を浸漬した場合、コロイド粒子が基板の微細な凹凸面の窪みに入り込み、緻密に吸着し、或いは引っ掛かるなどのアンカー効果により基板表面にニッケルコロイド核の付与が促進されるものと推定できる。
【0041】
本発明5は、上記ニッケルコロイド触媒液を用いた無電解銅メッキ方法であり、次の2つの工程を順次組み合わせてなる。
(S2)ニッケル触媒付与工程
(S3)無電解銅メッキ工程
また、本発明6は、同じくニッケルコロイド触媒液を用いた無電解銅メッキ方法であり、触媒付与工程(S2)の前に吸着促進工程(S1)を付加した次の3つの工程からなり、工程(S1)の加入により触媒付与を円滑にできる。
(S1)吸着促進工程
(S2)ニッケル触媒付与工程
(S3)無電解銅メッキ工程
【0042】
上記吸着促進工程(S1)は、いわば触媒付与(S2)の前処理工程であり、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液に非導電性基板を浸漬する工程であり、基板を界面活性剤の含有液に接触させることで基板表面の濡れ性を高めて触媒活性を増強し、次工程でのニッケルコロイド粒子の吸着を促進するものである。
吸着促進工程(S1)では、非導電性基板を界面活性剤の含有液を接触させることが必要であるため、液に浸漬させることが基本であるが、含有液を基板に噴霧したり、刷毛で塗布するなどしても差し支えない。
【0043】
吸着促進工程(S1)では、非導電性基板への吸着を促進する見地から、カチオン系界面活性剤及び/又は両性界面活性剤が好ましく、特に正電荷を帯びたカチオン系界面活性剤が好適である。
上記カチオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリエチレンイミン類、ポリアリルアミン類、ジアリルジアルキルアンモニウム塩重合体類(DADA類)、シアナミド及びシアナミド誘導体(例えば、シアナミドのポリアルキレン・ポリアミン重縮合物)より選ばれた一種若しくはその混合物が好ましい。
また、カチオン系界面活性剤に少量のノニオン系界面活性剤を併用すると、吸着促進効果がさらに増す。
本発明1又は2のニッケル触媒液において、可溶性ニッケル塩に還元剤を作用させて生じるニッケルコロイド粒子はゼータ電位がマイナスであるため、例えば、非導電性基板をカチオン性界面活性剤で接触処理すると、基板がプラス電荷を帯び易く、次工程におけるニッケルコロイド粒子の基板への吸着効率が増す。
吸着促進工程での界面活性剤の具体例は、前記本発明1又は2の触媒液において述べた界面活性剤の記述の通りである。
界面活性剤の含有量は0.05~100g/Lであり、好ましくは0.5~50g/Lである。当該吸着促進工程の処理温度は15~70℃程度、浸漬時間は0.5~20分間程度が好ましい。
吸着促進工程(S1)を終えた非導電性基板は純水で洗浄した後、乾燥し、或いは乾燥することなく、本発明4で示したように、次の触媒付与工程(S2)に移行する。
尚、上記吸着促進工程(S1)の前に、予備処理として、基板をエッチング溶液に浸漬して、表面を粗面化するエッチング処理(S0)を行うことが好ましい。
【0044】
上記触媒付与工程(S2)では、上記ニッケルコロイド触媒液に非導電性基板を浸漬して、基板表面上にニッケルコロイドを吸着させる。
当該触媒液の液温は15~95℃、好ましくは15~70℃、浸漬時間は0.1~20分程度、pHは3~12(好ましくはpH5~11)であり、浸漬処理に際しては、基板を触媒液に静置状態で浸漬すれば充分であるが、撹拌や揺動を行っても良い。
【0045】
上記本発明7に示すように、触媒付与工程(S2)と次の無電解メッキ工程(S3)の間に、還元剤を主成分とする含有溶液に非導電性基板を浸漬する触媒活性化工程(S23)を付加することが好ましい。
上記触媒活性化工程に含有する還元剤は、上記本発明1又は2のニッケルコロイド触媒液の基本組成である上記還元剤(B)から選択できる。
これにより、触媒活性を効果的に保持して、次の無電解メッキ工程で銅皮膜の形成を円滑に促進できる。
【0046】
触媒液に浸漬した非導電性基板は純水で洗浄した後、乾燥し、或いは乾燥することなく、無電解銅メッキ工程(S3)に移行する。
即ち、本発明では、非導電性基板へのニッケル触媒付与後に行う無電解メッキは、触媒金属のニッケルとは異なり、前記特許文献1~9に記載したように、無電解銅メッキである。
無電解銅メッキは、従来と同様に処理すれば良く、特段の制約はない。無電解銅メッキ液の液温は一般に15~70℃、好ましくは20~60℃である。
銅メッキ液の撹拌では、空気撹拌、急速液流撹拌、撹拌羽根等による機械撹拌等を使用することができる。
【0047】
無電解銅メッキ液の組成に特段の制限はなく、公知の銅メッキ液を使用できる。
無電解銅メッキ液は、基本的に可溶性銅塩と、還元剤と、錯化剤を含有し、或いは、さらに界面活性剤やpH調整剤などの各種添加剤、又は酸を含有でき、低温タイプと高温タイプなどがある。
例えば、50℃前後の高温タイプの無電解銅メッキ浴は、下記の実施例に示すように、硫酸銅、EDTA、2,2′-ビピリジル、ホルムアルデヒドなどを組成とする。
また、30℃前後の低温タイプの無電解メッキ浴の組成は、例えば、次の通りである。
硫酸銅 0.03モル/L
ロッシェル塩 0.10モル/L
チオ尿素 0.20mg/L
ホルムアルデヒド 0.30モル/L
pH 12.5
浴温 30℃
上記可溶性塩は、水溶液中で第一又は第二銅イオンを発生させる可溶性の塩であれば任意のものが使用でき、特段の制限はなく、難溶性塩をも排除しない。具体的には、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、ピロリン酸銅、炭酸銅、或いは酢酸銅、シュウ酸銅及びクエン酸銅等のカルボン酸銅塩、又はメタンスルホン酸銅及びヒドロキシエタンスルホン酸銅等の有機スルホン酸銅塩などが挙げられ、硫酸銅、クエン酸銅、メタンスルホン酸銅が好ましい。
【0048】
上記還元剤としては、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類などが挙げられる。アルデヒド類はホルムアルデヒド、グリオキシル酸又はその塩などであり、多価フェノール類はカテコール、ヒドロキノン、レゾルシン、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸などであり、フェノールスルホン酸類はフェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸又はその塩などである。
【0049】
無電解銅メッキ液に含有される錯化剤としては、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素などのチオ尿素類、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)などのアミノカルボン酸類、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸などのオキシカルボン酸類、ビピリジル、チオグリコール酸、グリシンなどである。
【0050】
無電解銅メッキ液には、液のベース成分として有機酸及び無機酸、或いはその塩を含有しても良い。
上記無機酸には、硫酸、ピロリン酸、ホウフッ酸などが挙げられる。また、有機酸には、グリコール酸や酒石酸等のオキシカルボン酸、メタンスルホン酸や2―ヒドロキシエタンスルホン酸等の有機スルホン酸などが挙げられる。
【実施例0051】
以下、本発明のニッケルコロイド触媒液、並びに当該ニッケル触媒液を用いた無電解銅メッキ方法の実施例を述べるとともに、ニッケルコロイド触媒液の経時安定性試験例、実施例で得られた銅皮膜の外観評価試験例を順次説明する。
また、上記無電解銅メッキ方法では、ニッケル触媒付与及び無電解銅メッキの2つの工程からなる例(本発明5に相当)、この2工程を基本としてニッケル触媒付与の前に吸着促進工程を付加した例(本発明6に相当)、さらには、ニッケル触媒付与及び無電解銅メッキの間に触媒活性化工程を介在させた例(本発明7に相当)を述べる。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0052】
《無電解銅メッキ方法の実施例》
冒述の特許文献1~9では、銅コロイド触媒液を用いて非導電性基板に銅コロイド粒子を触媒付与した後、無電解銅メッキを行う方法を述べたが、これら銅触媒付与後に無電解銅メッキを行う例を「基準例」とした。
そこで、非導電性基板に銅ではなくニッケルコロイド粒子を触媒付与した後に、無電解銅メッキを行う本発明を上記基準例に対比させて、ニッケル触媒液の経時安定性と銅皮膜外観の有効性の度合いを相対的に調べることにした。
【0053】
以下、実施例1~4は上記本発明1のニッケル触媒液に対応した例、実施例5~16は上記本発明2に対応した例であり、いずれも予備工程としてエッチング処理をした後、吸着促進S1(吸着促進剤はカチオン性界面活性剤)→ニッケル触媒付与S2→無電解銅メッキS3の各工程を順次施した無電解銅メッキ方法の実施例である。
このうち、本発明1に対応する実施例1の触媒付与工程では、コロイド触媒液の可溶性ニッケル塩(A)に塩化ニッケル、還元剤(B)に水素化ホウ素化合物、合成系の水溶性ポリマー(D)にポリビニルピロリドン(PVP)を夫々用いた例である。実施例2~4は実施例1を夫々基本とし、実施例2はコロイド触媒液の水溶性ポリマー(D)をポリエチレンイミン(PEI)に変えた例、実施例3は可溶性ニッケル塩(A)を硫酸ニッケルに変えた例、実施例4は還元剤(B)をジメチルアミンボランに変えた例である。
また、本発明2に対応する実施例5では、コロイド触媒液の可溶性ニッケル塩(A)に塩化ニッケル、還元剤(B)に水素化ホウ素化合物、コロイド安定剤(C)にグルタル酸、合成系の水溶性ポリマー(D)にPVPを夫々用いた例である。実施例6~16は実施例5を夫々基本とし、実施例6はコロイド安定剤(C)をコハク酸に変えた例、実施例7はコロイド安定剤(C)をグリシンに変えた例、実施例8はコロイド安定剤(C)をキシリトールに変えた例、実施例9は水溶性ポリマー(D)をPEIに変えた例、実施例10は水溶性ポリマー(D)をPEIのエチレンオキシド(EO)付加物に変えた例、実施例11はコロイド安定剤(C)をクエン酸に、水溶性ポリマー(D)をPEIのEO付加物に夫々変えた例、実施例12は水溶性ポリマー(D)をポリビニルアルコール(PVA)に変えた例、実施例13は可溶性ニッケル塩(A)を硫酸ニッケルに変えた例、実施例14は還元剤(B)をジメチルアミンボランに変えた例、実施例15~16はコロイド安定剤(C)と水溶性ポリマー(D)の混合比率を実施例5から夫々変えた例である。
【0054】
一方、実施例17~19は本発明5に対応した例であり、吸着促進工程なしでニッケル触媒付与→無電解銅メッキを順次施した無電解銅メッキ方法の実施例である。実施例17は上記実施例5を、実施例18は上記実施例6を、実施例19は上記実施例11を夫々基本とした。
また、実施例20~21は本発明7に対応した例であり、上記実施例1~16に触媒活性化工程(S23)を組み込んだもので、吸着促進S1→ニッケル触媒付与S2→触媒活性化S23→無電解銅メッキS3の各工程を順次施した無電解銅メッキ方法の実施例である。実施例20は上記実施例7を、実施例21は上記実施例8を夫々基本とした。
【0055】
他方、下記の比較例1~2のうち、比較例1はニッケル触媒液に合成系の水溶性ポリマー(D)を含有しない例である。
また、比較例2はニッケル触媒液に合成系の水溶性ポリマーに代えて、天然系の水溶性ポリマー(ゼラチン)を含有した例である。
【0056】
(1)実施例1(本発明1の対応例)
本発明の無電解銅メッキ方法は吸着促進→ニッケル触媒付与→無電解銅メッキの各工程を順次施すことを基本とするが、本実施例1では、吸着促進工程の前に予めエッチング処理を付加した(下記の実施例2~21でも、同じくエッチング処理を施した)。
即ち、先ず、予備処理として下記条件(S0)でエッチング処理をし、次いで、条件(S1)で吸着促進を行い、条件(S2)で触媒付与を行い、条件(S3)で無電解ニッケル-リンメッキを行った。
(S0)エッチング処理工程
先ず、ABS樹脂基板(縦:45mm、横:50mm、板厚:3mm)をエッチング処理し、基板表面を粗面化して試料基板とした。
エッチング処理液の組成は次の通りである。
[エッチング処理液]
無水クロム酸 400g/L
98%硫酸 200mL/L
[エッチング処理条件]
試料基板をエッチング処理液に68℃、10分の条件で浸漬した後、純水で洗浄、乾燥した。
(S1)吸着促進工程
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。Mwは重量平均分子量である。
[吸着促進剤]
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体
(Mw:30,000)5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
[吸着促進処理条件]
エッチング処理した試料基板を吸着促進剤の含有液に40℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
(S2)ニッケル触媒付与工程
ニッケル触媒液の調製については、先ず、ニッケル溶液と還元剤溶液を調製し、次いで、両溶液を混合してニッケルコロイド触媒液を調製した。
各液の調製条件は次の通りである。
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
[ニッケルコロイド触媒液の調製条件]
pH4.0に調整した25℃のニッケル溶液に還元剤溶液を滴下して撹拌し、ニッケルコロイド触媒液を得た。
[触媒付与処理の条件]
試料基板をニッケルコロイド触媒液に30℃、5分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
(S3)無電解銅メッキ工程
次の組成で無電解銅メッキ液(高温浴)を建浴した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅5水和物(Cu2+として) 0.03モル/L
EDTA 0.10モル/L
2,2′-ビピリジル 10.0mg/L
ホルムアルデヒド 0.30モル/L
pH 12.5
浴温 50℃
[無電解銅メッキ条件]
上記無電解銅メッキ液中に50℃、10分の条件で浸漬して無電解銅メッキを施し、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
【0057】
(0)基準例1
本発明では、冒述の特許文献1~9に示すように、非導電性基板に銅コロイド粒子を触媒付与した後、無電解銅メッキを行う例を「基準例」とした。
換言すれば、基準例は上記実施例1の触媒付与工程をいわばニッケル触媒から銅触媒に置き換えた例に相当する。
従って、エッチング(S0)→吸着促進(S1)→銅触媒付与(S2′)→無電解銅メッキ(S3)の各工程のうち、銅触媒付与工程(S2′)を除く各工程は実施例1と同様に処理した。
(S2′)銅触媒付与工程について
銅触媒液については、先ず、銅溶液と還元剤溶液を別々に調製した後、両溶液を混合して銅触媒液を調製した。
各液の調製条件は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅5水和物(Cu2+として) 0.10モル/L
EDTA4・Na 0.40モル/L
スクロース 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
[銅コロイド触媒液の調製条件]
pH9.0に調製した25℃の銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分間撹拌し、銅コロイド触媒液を得た。
[触媒付与条件]
試料基板を上記銅コロイド触媒液に25℃、10分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
【0058】
(2)実施例2(本発明1の対応例、水溶性ポリマーの変更)
上記実施例1を基本として、ニッケルコロイド触媒液を次の組成で調製した以外は、ニッケルコロイド触媒液及び無電解銅メッキ液の調製方法、並びに各工程の処理条件は実施例1と同じに設定した。特に、ニッケルコロイド触媒液については、別々に調製したニッケル溶液と還元剤溶液を混合する調製手順、調製の条件、触媒付与処理の条件は上記実施例1と同じである。実施例3~21、比較例1~2も同様である。
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
ポリエチレンイミン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0059】
(3)実施例3(本発明1の対応例、可溶性ニッケル塩の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
硫酸ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0060】
(4)実施例4(本発明1の対応例、還元剤の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
ジメチルアミンボラン 0.30モル/L
【0061】
(5)実施例5(本発明2の対応例)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.60モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0062】
(6)実施例6(本発明2の対応例、コロイド安定剤の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
コハク酸 0.60モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0063】
(7)実施例7(本発明2の対応例、コロイド安定剤の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グリシン 0.60モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0064】
(8)実施例8(本発明2の対応例、コロイド安定剤の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
キシリトール 0.60モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0065】
(9)実施例9(本発明2の対応例、水溶性ポリマーの変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.60モル/L
ポリエチレンイミン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0066】
(10)実施例10(本発明2の対応例、水溶性ポリマーの変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.60モル/L
ポリエチレンイミンEO付加物(EO40モル) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0067】
(11)実施例11(本発明2の対応例、水溶性ポリマーの変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
クエン酸 0.60モル/L
ポリエチレンイミンEO付加物(EO140モル)0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0068】
(12)実施例12(本発明2の対応例、水溶性ポリマーの変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.60モル/L
ポリビニルアルコール(Mw:1,000) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0069】
(13)実施例13(本発明2の対応例、可溶性ニッケル塩の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
硫酸ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.60モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0070】
(14)実施例14(本発明2の対応例、還元剤の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.60モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
ジメチルアミンボラン 0.30モル/L
【0071】
(15)実施例15(本発明2の対応例、コロイド安定剤と水溶性ポリマーの混合比率の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.20モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.20モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0072】
(16)実施例16(本発明2の対応例、コロイド安定剤と水溶性ポリマーの混合比率の変更)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 1.50モル/L
ポリビニルピロリドン(Mw:1,800) 0.01モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0073】
(17)実施例17(本発明5の対応例、上記実施例5を基本として吸着促進工程を省いた例)
上記実施例5では、吸着促進→ニッケル触媒付与→無電解銅メッキの各工程を施したが、本実施例17では、吸着促進工程なしで、実施例5と同様の条件でニッケル触媒付与→無電解銅メッキの2工程を施した。
【0074】
(18)実施例18(本発明5の対応例、上記実施例6を基本として吸着促進工程を省いた例)
上記実施例17と同じく、本実施例18では、吸着促進工程なしで、実施例6と同様の条件でニッケル触媒付与→無電解銅メッキの2工程を施した。
【0075】
(19)実施例19(本発明5の対応例、上記実施例11を基本として吸着促進工程を省いた例)
上記実施例17と同じく、本実施例19では、吸着促進工程なしで、実施例11と同様の条件でニッケル触媒付与→無電解銅メッキの2工程を施した。
【0076】
(20)実施例20(本発明7の対応例、上記実施例7を基本として触媒活性化処理を施した例)
上記実施例7では、吸着促進→ニッケル触媒付与→無電解銅メッキの各工程を施したが、本実施例20では、ニッケル触媒付与後に触媒活性化工程を新たに組み込んで、無電解銅メッキ処理を行った。
即ち、本実施例20では、実施例7と同様の条件で吸着促進(S1)→ニッケル触媒付与(S2)→触媒活性化(S23)→無電解銅メッキ(S3)の4工程を施した。
触媒活性化工程における触媒活性化液の組成と処理条件は下記の通りである。
(S23)触媒活性化工程
[触媒活性化液]
次亜リン酸 3g/L
[触媒活性化処理の条件]
触媒付与処理をした試料基板を上記触媒活性化液に40℃、2分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
【0077】
(21)実施例21(本発明7の対応例、上記実施例8を基本として触媒活性化処理を施した例)
上記実施例20と同じく、本実施例21では、実施例8のニッケル触媒付与と無電解銅メッキの間に触媒活性化工程(S23)を介在させた例である。
触媒活性化工程(S23)における触媒活性化液の組成と処理条件は上記実施例20と同じである。
【0078】
(22)比較例1(水溶性ポリマーを含まない例)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.60モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0079】
(23)比較例2(合成系に代えて天然系の水溶性ポリマーを使用した例)
(S2)触媒付与工程
[ニッケル溶液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.20モル/L
グルタル酸 0.60モル/L
ゼラチン(Mw:15,000~25,000) 0.05モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.30モル/L
【0080】
《触媒液の経時安定性試験例》
そこで、上記実施例1~21並びに比較例1~2で建浴した各ニッケルコロイド触媒液について、下記の基準でコロイド安定性の優劣を評価した。
◎:建浴後120日経過時点で沈殿、或いは分解が起こらなかった。
○:建浴後60日間沈殿、或いは分解が起こらなかった。
×:建浴後すぐに沈殿、或いは分解した。
【0081】
《無電解メッキにより析出した銅皮膜の外観評価試験例》
次いで、上記実施例1~21並びに比較例1~2の各無電解メッキ方法で得られた銅の無電解皮膜について、下記の基準で皮膜外観の優劣を目視により評価した。
◎:メッキ皮膜は美麗で均一性に優れ、ムラも認められなかった。
○:メッキ皮膜にムラが認められなかった。
△:メッキ皮膜に一部未析出(メッキ欠け)が認められた。
×:メッキ皮膜が析出しなかった。
尚、析出皮膜の「ムラ」は、皮膜の緻密性や平滑性などに周囲と異なる部分があると認められる。皮膜の「ムラ」は皮膜の均一性とは別の観点である。
【0082】
《ニッケル触媒液の経時安定性と銅皮膜の外観の試験結果》
下表は、上記ニッケルコロイド触媒液の経時安定性と銅皮膜外観の評価試験の結果である。
経時安定性 皮膜外観 経時安定性 皮膜外観
基準例 〇 ◎
実施例1 ◎ ○ 実施例15 ◎ ◎
実施例2 ◎ ○ 実施例16 ◎ ◎
実施例3 ◎ ○ 実施例17 ◎ 〇
実施例4 ◎ ○ 実施例18 ◎ 〇
実施例5 ◎ ◎ 実施例19 ◎ ◎
実施例6 ◎ ◎ 実施例20 ◎ ◎
実施例7 ◎ ○ 実施例21 ◎ ◎
実施例8 ◎ ○
実施例9 ◎ ◎ 比較例1 × △
実施例10 ◎ ◎ 比較例2 × △
実施例11 ◎ ◎
実施例12 〇 ◎
実施例13 ◎ ◎
実施例14 ◎ ◎
【0083】
《ニッケル触媒液の経時安定性と銅メッキ皮膜外観の総合評価》
ニッケルコロイド触媒液として本発明の合成系の水溶性ポリマー(D)を含まない比較例1(コロイド安定剤(C)を含む)では、触媒液の分解が始まり経時安定性が損なわれて、無電解銅メッキを施した非導電性基板にメッキ欠けが認められた。
また、ニッケルコロイド触媒液として、本発明の合成系水溶性ポリマー(D)に替えて、天然系ポリマーであるゼラチンを用いた比較例2(コロイド安定剤(C)を含む)では、触媒液の沈殿又は分解が生じて、無電解銅メッキした非導電性基板には、やはりメッキ欠けが認められた。
【0084】
これに対して、先ず、冒述の特許文献1~9に基づく基準例について述べる。
基準例は非導電性基板に吸着促進の予備処理をし、銅塩と還元剤などを含む銅コロイド触媒液で触媒付与をした後、無電解銅メッキを施した例であるが、銅触媒液の経時安定性は〇の評価であり、また、無電解メッキで析出する銅皮膜については均一性に優れてムラがなく、◎の評価であった。
一方、非導電性基板に吸着促進の予備処理をし、上記基準例の銅触媒液に替えて所定の水溶性ポリマーを含むニッケルコロイド触媒液で触媒付与をした後、無電解銅メッキを施した実施例1~21ではニッケル触媒液の経時安定性は◎の評価が多く、上記基準例の銅コロイド触媒液に比べて概ね安定性が上回るといえる。また、無電解メッキで析出する銅皮膜についても評価は◎~○であった。
【0085】
そこで、比較例1~2に対する実施例1~21の考察をまとめると次の通りである。
先ず、上記比較例1ではコロイド触媒液が分解したことから、実施例1~21との対比において、ニッケル触媒液の経時安定性を保持するには、水溶性ポリマー(D)の含有が必須であることが判断できる。
また、実施例1~21を比較例2との対比でみると、ニッケル触媒液の経時安定性を良好に確保するには、天然系ではなく合成系から選択された所定の水溶性ポリマーを選択する必要性が判断できる。
上述のように、比較例1~2ではニッケル触媒液の経時安定性に欠ける結果、均一な銅皮膜は形成されなかった。
【0086】
以下、実施例1~21について検討する。
先ず、実施例1~4は本発明1に対応した例であり、析出した銅の皮膜外観にはムラは認められず、夫々〇の評価であった。これら本発明1に対応した実施例1~4に対して、本発明2に対応した実施例5~16では皮膜外観の評価は概ね◎であることから、ニッケル触媒液には所定の水溶性ポリマー(D)に加えて、所定のコロイド安定剤(C)を併用することが、銅皮膜の外観向上には優位であることが判断できる。
また、ニッケル触媒液の経時安定性については、実施例1~21の全般に亘り概ね◎の評価であった。
特に、本発明2に対応する実施例5~16を対比観察すると、水溶性ポリマー(D)にPVP、PEI、PEIのエチレンオキシド(EO)付加物、PVAの各成分を選択し、且つ、コロイド安定剤(C)にグルタル酸、コハク酸、グリシン、キシリトール、クエン酸のいずれを選択しても、ニッケル触媒液の経時安定性の評価、並びに無電解メッキで析出する銅皮膜の外観評価は共に、◎を概ね確保できることが判る。
従って、特定の水溶性ポリマー(D)と特定のコロイド安定剤(C)を組み合わせることで、ニッケル触媒液の経時安定性と、触媒金属であるニッケルとは異なる金属種である銅の無電解皮膜の性状を優位に両立できることが判断できる。
尚、実施例5~16を詳細に観察すると、水溶性ポリマー(D)にPVAを用いた実施例12のニッケル触媒液では、経時安定性の評価は〇であり、水溶性ポリマー(D)がPVP、コロイド安定剤(C)がグリシンかキシリトールである実施例7又は8では、析出した銅皮膜の外観評価は実施例1~4と同じく〇であった。
【0087】
一方、本発明2に対応した実施例17~21をみると、ニッケル触媒付与(S2)と無電解銅メッキ(S3)の間に触媒活性化工程(S23)を組み込んだ実施例20~21では、当然ながらニッケル触媒液の経時安定性と銅皮膜外観は共に◎の評価であった。
また、実施例17~19では、吸着促進工程(S1)を省いて、ニッケル触媒付与(S2)と無電解銅メッキ(S3)の2工程のみで処理したが、析出した銅皮膜の外観は実施例19では◎の評価であり、実施例17~18では〇であった。