(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151633
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】光ケーブルおよび複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G02B6/44 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065131
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390002598
【氏名又は名称】沖電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 紘一
(72)【発明者】
【氏名】稲本 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 啓功
(72)【発明者】
【氏名】梶塚 秀治
(72)【発明者】
【氏名】小泉 拓也
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX00
2H201AX24
2H201BB22
2H201BB80
2H201FF01
2H201KK03
2H201KK17
2H201KK24C
2H201KK25C
2H201KK26C
2H201KK34C
2H201KK35C
2H201KK36C
2H201KK59C
(57)【要約】
【課題】軽量でありながら、伝送損失の低減を図ることができる光ケーブルおよび複合ケーブルを提供すること。
【解決手段】本開示に係る光ケーブル2は、プラスチック光ファイバー21と、プラスチック光ファイバー21を囲むチューブ22とを備える。チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合は、10%以上、50%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック光ファイバーと、
前記プラスチック光ファイバーを囲むチューブと、を備え、
前記チューブ内における前記プラスチック光ファイバーの体積割合は、10%以上、50%以下である、光ケーブル。
【請求項2】
前記プラスチック光ファイバーの数は、4である、請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記チューブの融点は、前記プラスチック光ファイバーのガラス転移温度より低い、請求項1または請求項2に記載の光ケーブル。
【請求項4】
請求項3に記載の光ケーブルと、
電気信号ケーブルと、
前記光ケーブルと、前記電気信号ケーブルとを囲むシースと、
を備える、複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルおよび複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーを備える光ケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の光ケーブルでは、光ファイバーの材料として、ガラスを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
取扱性の観点から、光ファイバーの材料をプラスチックに置き換えたプラスチック光ファイバーにすることが試みられる。
【0005】
しかし、上記した構成では、プラスチック光ファイバーの光学特性に起因して、光ファイバーが大型になり、そのため、光ケーブルが重たくなる。
【0006】
一方で、光ケーブルには、伝送損失の低減が求められる。
【0007】
本発明は、軽量でありながら、伝送損失の低減を図ることができる光ケーブルおよび複合ケーブルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、プラスチック光ファイバーと、前記プラスチック光ファイバーを囲むチューブと、を備え、前記チューブ内における前記プラスチック光ファイバーの体積割合は、10%以上、50%以下である、光ケーブルを含む。
【0009】
本発明(2)は、前記プラスチック光ファイバーの数は、4である、(1)に記載の光ケーブルを含む。
【0010】
本発明(3)は、前記チューブの融点は、前記プラスチック光ファイバーのガラス転移温度より低い、(1)または(2)に記載の光ケーブルを含む。
【0011】
本発明(4)は、(1)から(3)のいずれか一項に記載の光ケーブルと、電気信号ケーブルと、前記光ケーブルと、前記電気信号ケーブルとを囲むシースと、を備える、複合ケーブルを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光ケーブルおよび複合ケーブルは、軽量でありながら、伝送損失の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の光ケーブルの一実施形態を備える複合ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(定義)
本明細書において、「チューブ内におけるプラスチック光ファイバーの体積割合」は、「プラスチック光ファイバーの体積/チューブの内部空間の体積」により求められる割合のことを意味する。また、「チューブ内におけるプラスチック光ファイバーの体積割合」は、光ケーブルの長さ方向に直交する断面における「プラスチック光ファイバーの断面の面積またはチューブ内部の断面の面積」と同義である。
【0015】
1. 一実施形態
図1を参照して、本発明の光ケーブルの一実施形態を備える複合ケーブルを説明する。
【0016】
1.1 複合ケーブル1
複合ケーブル1は、断面視において、略円形状を有する。断面視は、複合ケーブル1が延びる方向に直交する断面で見たものである。本実施形態では、複合ケーブル1は、光ケーブル2と、電気信号ケーブル3と、シース4と、を備える。
【0017】
1.2 光ケーブル2
光ケーブル2は、複合ケーブル1の内部に配置される。光ケーブル2は、断面視において、略円形状を有する。本実施形態では、光ケーブル2は、複数のプラスチック光ファイバー(以下、POFということがある。)21と、チューブ22と、繊維材23と、を備える。
【0018】
1.2.1 プラスチック光ファイバー21
複数のプラスチック光ファイバー21のそれぞれは、断面略円形状を有する。プラスチック光ファイバー21は、可撓性を有する。プラスチック光ファイバー21は、図示しないコアと、図示しないクラッドと、図示しないオーバークラッドと、図示しないカラーリング層とを径方向の外側に向かって順に備える。クラッドは、単層または複層である。径方向は、上記した直交方向に含まれる。プラスチック光ファイバー21の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、および、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】
1.2.1.1 プラスチック光ファイバー21のガラス転移温度
プラスチック光ファイバー21(具体的には、オーバークラッド)のガラス転移温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上であり、また、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下である。プラスチック光ファイバー21(具体的には、オーバークラッド)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定により求められる。なお、オーバークラッドは、プラスチック光ファイバー21の断面積において最も面積が大きい層である。また、オーバークラッドは、プラスチック光ファイバー21の外形形状を維持する外形維持層でもある。
【0020】
1.2.1.2 プラスチック光ファイバー21のサイズ
プラスチック光ファイバー21のサイズは、後述する体積割合を満足すれば、限定されない。プラスチック光ファイバー21の外径は、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.15mm以上であり、また、例えば、0.50mm以下、好ましくは、0.35mm以下である。
【0021】
1.2.1.3 プラスチック光ファイバー21の数
プラスチック光ファイバー21は、単数であっても複数であってもよい。プラスチック光ファイバー21が複数の場合、プラスチック光ファイバー21の数としては、例えば、2以上、例えば、3以上であり、また、例えば、8以下、好ましくは、6以下である。プラスチック光ファイバー21の数は、好適には、4である。プラスチック光ファイバー21の数が4であれば、大容量のデータを伝送できながら、伝送損失を低減しつつ、かつ、光ケーブル2を軽量にできる。
【0022】
1.2 チューブ22
チューブ22は、複数のプラスチック光ファイバー21を囲む。本実施形態では、チューブ22は、断面視で、略円環形状を有する。チューブ22は、光コードと称呼されることがある。
【0023】
チューブ22の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、およびポリイミド樹脂が挙げられる。好ましくは、加工性および取扱い性の観点から、ポリエチレン樹脂が挙げられる。
【0024】
1.2.1 チューブ22のサイズ
チューブ22のサイズは、次に説明する「チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合」が所望割合となるように調整される。チューブ22の内径は、例えば、0.2mm以上、好ましくは、0.5mm以上であり、また、例えば、2.0mm以下、好ましくは、1.0mm以下である。チューブ22の厚みは、例えば、0.02mm以上、好ましくは、0.1mm以上であり、また、例えば、0.5mm以下、好ましくは、0.3mm以下である。
【0025】
1.2.2 チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合
本発明では、チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合は、10%以上、50%以下である。
【0026】
チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合が10%未満であれば、複数のプラスチック光ファイバー21を細くするには限界があることから、チューブ22が過度に大きくなる。そのため、光ケーブル2が重たくなる。具体的には、単位長さにおける光ケーブル2の質量が増大する。
【0027】
チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合が50%超過であれば、伝送損失が増大する。また、チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合が50%超過であれば、プラスチック光ファイバー21が過度に太くなる。その結果、光ケーブル2が重たくなる。
【0028】
チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合は、好ましくは、13%以上であり、また、好ましくは、45%以下、より好ましくは、40%以下、さらに好ましくは、30%以下、とりわけ好ましくは、20%以下、さらには、15%以下が好適である。言い換えると、チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合は、13%以上45%以下が好ましく、13%以上40%以下がより好ましく、13%以上30%以下がさらに好ましく、13%以上20%以下が特に好ましく、13%以上15%以下が最も好ましい。
【0029】
「チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合」は、チューブ22内の体積に対する、プラスチック光ファイバー21の体積の割合として算出される。チューブ22内の体積は、チューブ22の内径、および、チューブ22の長さから求められる。プラスチック光ファイバー21の体積は、プラスチック光ファイバー21の数、プラスチック光ファイバー21の外径、および、プラスチック光ファイバー21の長さから求められる。プラスチック光ファイバー21が複数ある場合、各プラスチック光ファイバー21の体積の和が、プラスチック光ファイバー21の体積となる。なお、チューブ22内における体積は、次に説明する繊維材23の体積を含む。
【0030】
1.2.3 チューブ22の融点
チューブ22の融点は、例えば、プラスチック光ファイバー21のガラス転移温度を超える。チューブ22の融点は、例えば、70℃以上、好ましくは、85℃以上であり、また、例えば、110℃以下、好ましくは、100℃以下である。チューブ22の融点は、示差走査熱量測定により求められる。
【0031】
チューブ22の融点が、プラスチック光ファイバー21のガラス転移温度より低いと、光ケーブル2の押出成形の製造において、チューブ22が溶融するように、チューブ22を加熱しても、プラスチック光ファイバー21が弾性率が低くなることを抑制でき、プラスチック光ファイバー21を所望の形状で、チューブ22内に配置できる。換言すれば、信頼性の高いプラスチック光ファイバー21をチューブ22内に形成および配置できる。
【0032】
1.2.4 繊維材23
繊維材23は、チューブ22内において、複数のプラスチック光ファイバー21の表面を被覆する。繊維材23は、チューブ22内に充填されている。繊維材23の材料としては、例えば、アラミド樹脂が挙げられる。繊維材3としては、具体的には、高張力繊維が挙げられる。本実施形態では、繊維材23は、例えば、加熱により溶融しない。
【0033】
1.3 電気信号ケーブル3
電気信号ケーブル3は、複合ケーブル1の内部に配置される。電気信号ケーブル3は、断面視において、光ケーブル2に隣接する。電気信号ケーブル3は、断面視で、楕円形状または円形状を有する。電気信号ケーブル3は、1対の信号線31A,31Bと、電気コード32と、備える。
【0034】
1.3.1 1対の信号線31A,31B
1対の信号線31A,31Bは、電気信号ケーブル3の内部に配置されている。1対の信号線31A,31Bのそれぞれは、断面視で、円形状を有する。1対の信号線31A,31Bは、断面視において、互いに隣接する。1対の信号線31A,31Bのそれぞれは、芯線310と、被覆材311と、を径方向の外側に向かって順に備える。芯線310は、断面視で、円形状を有する。芯線310の材料としては、例えば、銅が挙げられる。被覆材311は、芯線310の周面に配置されている。被覆材311の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。
【0035】
1.3.2 電気コード32
電気コード32は、1対の信号線31A、31Bを囲む。電気コード32は、断面視で、楕円環形状または円環形状を有する。電気コード32の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。
【0036】
1.4 シース4
シース4は、複合ケーブル1における最外層である。シース4は、光ケーブル2と、電気信号ケーブル3と、を囲む。シース4は、断面視で、略円環形状を有する。シース4の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂が挙げられる。
【0037】
1.5 複合ケーブル1の製造方法
次に、複合ケーブル1の製造方法を説明する。
【0038】
この方法では、まず、光ケーブル2と、電気信号ケーブル3とのそれぞれを準備する。
【0039】
光ケーブル2を準備するには、はじめに複数のプラスチック光ファイバー21を準備する。その後、複数のプラスチック光ファイバー21を、チューブ22内に配置されるように、集合させる(以下、「複数芯コード化」ということがある)。その際、押出成形によって、複数のプラスチック光ファイバー21およびチューブ22をともに加熱する。加熱温度は、少なくともチューブ22が溶融する温度であって、具体的には、例えば、150℃以上、また、例えば、200℃以下である。この際、繊維材23もチューブ22内に充填されるようにプラスチック光ファイバー21と同時に押し出すことにより、複数のプラスチック光ファイバー21を被覆する。
【0040】
その後、光ケーブル2と電気信号ケーブル3とを集合し集合体を形成し、この集合体をシース4で囲む。
【0041】
2. 作用効果
本実施形態では、チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合が10%以上であるので、チューブ22を小さくでき、そのため、光ケーブル2を軽量にできる。
【0042】
また、チューブ22内におけるプラスチック光ファイバー21の体積割合が50%以下であるので、光ケーブル2の伝送損失を低減でき、また、プラスチック光ファイバー21が過度に太くなることを抑制でき、そのため、光ケーブル2を軽量にできる。
【0043】
3. 変形例
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態および変形例を適宜組み合わせることができる。
【0044】
図示しないが、複合ケーブル1は、制御線、および、グランド線をさらに備える。制御線、および、グランド線は、シース4に囲まれる。
【0045】
光ケーブル2は、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。つまり、光ケーブル2は、複合ケーブル1に備えられなくてもよい。
【実施例0046】
以下に、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0047】
<実施例1から実施例5、比較例1、および、比較例2>
<光ケーブル2の製造>
表1に記載のサイズを有する光ケーブル2を製造した。
【0048】
(実施例1)
表1に示されるチューブ22を準備して、そのチューブ22を用いて光ケーブル2を作製した。具体的な手順を以下の通り示す。
【0049】
金型を用いて、チューブ22を押し出し成形して、筒状に形成した。筒状に形成された箇所に、外径が0.25mmである4本のプラスチック光ファイバー21、および、高張力繊維からなる繊維材3を導入した。このようにして光ケーブル2を作製した。
【0050】
その後、この光ケーブル2と電気信号ケーブル3とを集合し集合体を形成し、この集合体それらをシース4で囲んだ。このようにして複合ケーブル1を作製した。
【0051】
プラスチック光ファイバー21におけるオーバークラッドは、ポリカーボネート樹脂(製造元:SABICジャパン合同会社製)からなる。示差走査熱量測定により求められるオーバークラッドのガラス転移温度は、110℃であった。
【0052】
チューブ22は、ポリエチレン樹脂からなる。示差走査熱量測定(製造元:メトラートレド社製)により求められるチューブ22の融点は、95℃であった。
【0053】
複数芯コード化における成形温度は、150℃であった。
【0054】
(実施例2から実施例5、比較例1および比較例2)
実施例1と同様の方法で、複合ケーブル1を作製した。但し、金型を用いたチューブ22の押し出し速度等を変えた。
【0055】
<評価>
光パルス試験機(商品名:ルシオール社製 LOR201)を用いて光損失測定することによって、光ケーブル2の伝送損失の増加率を求めた。
【0056】