(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151635
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】給紙装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/52 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B65H3/52 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065141
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 潤也
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA03
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JD40
3F343KB05
3F343LD30
3F343MA03
3F343MA14
3F343MA22
3F343MA41
3F343MB14
3F343MC02
3F343MC09
(57)【要約】
【課題】ローラの摩耗が進行した際に給紙性能を維持することができる給紙装置を提供する。
【解決手段】給紙装置は、給紙ローラ41と分離ローラ42とで形成したニップ部で用紙を挟持し搬送しており、給紙ローラ41を用紙の搬送方向に駆動させ、分離ローラ42を給紙ローラ41とは反対方向に駆動させる駆動部51と、駆動部51と分離ローラ42との間に設けられ、駆動部51から分離ローラ42に伝達された駆動力よりも、給紙ローラ41と分離ローラ42との間に生じた摩擦力が大きい場合、分離ローラ42を給紙ローラ41に従動回転させるトルクリミッタ45と、駆動部51からの駆動力を分離ローラ42に伝達するか切断するかを切り替える連結機構60と、連結機構60の動作を制御する制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ローラと第2ローラとで形成したニップ部で用紙を挟持し搬送する給紙装置であって、
前記第1ローラを用紙の搬送方向に駆動させ、前記第2ローラを前記第1ローラとは反対方向に駆動させる駆動部と、
前記駆動部と前記第2ローラとの間に設けられ、前記駆動部から前記第2ローラに伝達された駆動力よりも、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に生じた摩擦力が大きい場合、前記第2ローラを前記第1ローラに従動回転させるトルクリミッタと、
前記駆動部からの駆動力を前記第2ローラに伝達するか切断するかを切り替える連結機構と、
前記連結機構の動作を制御する制御部とを備えること
を特徴とする給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記制御部は、用紙を給紙した給紙回数をカウントし、前記給紙回数に基づいて、前記連結機構の動作を制御すること
を特徴とする給紙装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給紙装置であって、
前記制御部は、前記給紙回数が閾値以下の場合、前記駆動部からの駆動力を前記第2ローラに伝達させ、前記給紙回数が閾値を超えている場合、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させること
を特徴とする給紙装置。
【請求項4】
請求項2に記載の給紙装置であって、
前記制御部は、前記給紙回数が予め設定された初期観察枚数以内の場合、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させること
を特徴とする給紙装置
【請求項5】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記第2ローラの回転状態を検出するローラセンサを備え、
前記制御部は、前記ローラセンサの検出結果に基づいて、前記第2ローラが回転遅れ状態であると判断した際、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させること
を特徴とする給紙装置。
【請求項6】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記制御部は、用紙を搬送する前に前記駆動部を駆動させる予備回転を実施させ、前記第2ローラが前記第1ローラとは反対方向に回転している際、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させること
を特徴とする給紙装置。
【請求項7】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記制御部は、用紙を給紙した給紙履歴を記録し、所定期間中に給紙した枚数が閾値より少ない場合、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させること
を特徴とする給紙装置。
【請求項8】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記制御部は、給紙する用紙の種類の指定を受け付けており、受け付けた用紙の種類に応じて、前記連結機構の動作を制御すること
を特徴とする給紙装置。
【請求項9】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記制御部は、用紙の搬送不良が発生した搬送不良回数をカウントし、前記搬送不良回数に応じて、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させること
を特徴とする給紙装置。
【請求項10】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記ニップ部を通過した用紙の先端を検知する用紙検知センサを備え、
前記制御部は、前記用紙検知センサが用紙の先端を検知するまで、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させ、前記用紙検知センサが用紙の先端を検知した後、前記駆動部から前記第2ローラに駆動力を伝達させること
を特徴とする給紙装置。
【請求項11】
請求項1に記載の給紙装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、用紙を挟持して搬送する給紙装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置では、複数の用紙を収容可能な給紙部(給紙装置)を設けることで、用紙を補充する回数を削減し、ユーザの手間を減らすようにしている。従来の給紙装置では、例えば、用紙が加圧当接された給紙ローラを回転駆動させて、用紙のピックアップを行っている。そして、給紙ローラに当接させてニップ部を形成する分離ローラは、給紙ローラの駆動と同じタイミングで、用紙を押し戻す方向に回転駆動することで、用紙の重送を防いでいる。
【0003】
ところで、近年では、普通紙だけに限らず封筒や薄手の用紙など、様々な用紙に対して画像形成することが要望されている。これに対し、単に、給紙ローラに分離ローラを当接させた構造であると、異なる種類の用紙に対応できず、用紙が折れ曲がることがあった。そこで、多種の用紙に対しても安定した給送を行うことができる画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の画像形成装置は、積載されたシート(用紙)を給送するための給送手段と、給送手段のシート作用面に当接してシートの分離を行うための分離手段と、分離手段にシート給送方向とは逆向きの分離力を供給するための分離力付与手段と、分離手段への分離力を供給するための接続状態と、分離手段への分離力を供給しない切断状態とをとりえる分離力切換手段とを有する。そして、分離力付与手段は、所定の戻しトルクを発生するトルクリミッタとされている。
【0006】
ところで、用紙の搬送等を行うローラでは、経年劣化によって摩耗して表面摩擦抵抗が低下し、初期の給紙性能を維持できないことが懸念される。従来の画像形成装置では、ローラ等の摩耗が考慮されておらず、ローラの表面状態が変化した際に対応できないという課題がある。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ローラの摩耗が進行した際に給紙性能を維持することができる給紙装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る給紙装置は、第1ローラと第2ローラとで形成したニップ部で用紙を挟持し搬送する給紙装置であって、前記第1ローラを用紙の搬送方向に駆動させ、前記第2ローラを前記第1ローラとは反対方向に駆動させる駆動部と、前記駆動部と前記第2ローラとの間に設けられ、前記駆動部から前記第2ローラに伝達された駆動力よりも、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に生じた摩擦力が大きい場合、前記第2ローラを前記第1ローラに従動回転させるトルクリミッタと、前記駆動部からの駆動力を前記第2ローラに伝達するか切断するかを切り替える連結機構と、前記連結機構の動作を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本開示に係る給紙装置では、前記制御部は、用紙を給紙した給紙回数をカウントし、前記給紙回数に基づいて、前記連結機構の動作を制御する構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る給紙装置では、前記制御部は、前記給紙回数が閾値以下の場合、前記駆動部からの駆動力を前記第2ローラに伝達させ、前記給紙回数が閾値を超えている場合、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させる構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る給紙装置では、前記制御部は、前記給紙回数が予め設定された初期観察枚数以内の場合、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させる構成としてもよい。
【0012】
本開示に係る給紙装置では、前記第2ローラの回転状態を検出するローラセンサを備え、前記制御部は、前記ローラセンサの検出結果に基づいて、前記第2ローラが回転遅れ状態であると判断した際、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させる構成としてもよい。
【0013】
本開示に係る給紙装置では、前記制御部は、用紙を搬送する前に前記駆動部を駆動させる予備回転を実施させ、前記第2ローラが前記第1ローラとは反対方向に回転している際、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させる構成としてもよい。
【0014】
本開示に係る給紙装置では、前記制御部は、用紙を給紙した給紙履歴を記録し、所定期間中に給紙した枚数が閾値より少ない場合、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させる構成としてもよい。
【0015】
本開示に係る給紙装置では、前記制御部は、給紙する用紙の種類の指定を受け付けており、受け付けた用紙の種類に応じて、前記連結機構の動作を制御する構成としてもよい。
【0016】
本開示に係る給紙装置では、前記制御部は、用紙の搬送不良が発生した搬送不良回数をカウントし、前記搬送不良回数に応じて、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させる構成としてもよい。
【0017】
本開示に係る給紙装置では、前記ニップ部を通過した用紙の先端を検知する用紙検知センサを備え、前記制御部は、前記用紙検知センサが用紙の先端を検知するまで、前記駆動部から前記第2ローラへの駆動力を切断させ、前記用紙検知センサが用紙の先端を検知した後、前記駆動部から前記第2ローラに駆動力を伝達させる構成としてもよい。
【0018】
本開示に係る画像形成装置は、本開示に係る給紙装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本開示によると、第2ローラを逆回転させるための駆動入力の有無を切り替えることで、ローラの摩耗が進行した際に給紙性能を維持し、ローラの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】給紙ローラおよび分離ローラの周辺の構造を示す模式平面図である。
【
図3A】給紙ギア、中間ギア、および分離ギアの回転方向を示す模式側面図である。
【
図3B】連結機構が作動した際の給紙ギア、中間ギア、および分離ギアの回転方向を示す模式側面図である。
【
図4A】給紙ローラに対して、分離ローラが従動回転している状態を示す模式側面図である。
【
図4B】給紙ローラに対して、分離ローラが反対方向に回転している状態を示す模式側面図である。
【
図5A】本開示の第2実施形態に係る画像形成装置において、用紙検知センサが用紙の先端を検知する前の状態を示す模式側面図である。
【
図5B】本開示の第2実施形態に係る画像形成装置において、用紙検知センサが用紙の先端を検知した後の状態を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本開示の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0023】
本開示の第1実施形態に係る画像形成装置1は、露光装置11、現像装置12、感光体ドラム13(トナー像担持体の一例)、クリーニング装置14、帯電器15、中間転写ベルト装置16、定着装置17、給紙装置18、排紙トレイ19、および用紙搬送経路Sを備える構成とされており、外部から伝達された画像データに応じて、所定の用紙に対して多色および単色の画像を形成する。
【0024】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像装置12、感光体ドラム13、帯電器15、クリーニング装置14は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0025】
感光体ドラム13は、画像形成装置1の略中央に配置されている。帯電器15は、感光体ドラム13の表面(周面)を所定の電位に均一に帯電させる。露光装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。クリーニング装置14は、現像および画像転写の後に感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去および回収する。なお、感光体ドラム13の周辺の構造については、後述する
図2を参照して、詳細に説明する。
【0026】
中間転写ベルト装置16は、感光体ドラム13の上側に配置され、中間転写ベルト21、中間転写ベルト駆動ローラ22、中間転写ベルト従動ローラ23、中間転写ローラ24、および中間転写ベルトクリーニング装置25を備えている。なお、中間転写ローラ24は、YMCK用の各色の画像ステーションに対応して4本設けられている。
【0027】
中間転写ベルト駆動ローラ22、中間転写ベルト従動ローラ23、および中間転写ローラ24は、中間転写ベルト21を張架して、中間転写ベルト21の表面を所定方向(図中矢符C方向)に移動させるように構成されている。
【0028】
中間転写ベルト21は、矢符Cの方向へ周回移動し、中間転写ベルトクリーニング装置25によって残留トナーを除去および回収され、各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が順次転写して重ね合わされて、中間転写ベルト21の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0029】
画像形成装置1は、転写ローラ26aを含む2次転写装置26をさらに備えている。転写ローラ26aは、中間転写ベルト21との間にニップ域が形成されており、用紙搬送経路Sを通じて搬送されて来た用紙をニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写される。
【0030】
給紙装置18は、画像形成に使用する用紙を蓄積しておくためのトレイであり、露光装置11の下側に設けられている。また、排紙トレイ19は、画像形成装置1の上側に設けられており、画像形成済みの用紙を載置するためのトレイである。
【0031】
用紙搬送経路Sは、S字状に設けられた主経路S1と、主経路S1の途中で分岐して再合流する反転経路S2とを備え、主経路S1に沿って、給紙ローラ41(第1ローラの一例)、分離ローラ42(第2ローラの一例)、レジスト前ローラ33、レジストローラ32、2次転写装置26、定着装置17、および排紙ローラ34が配置されている。反転経路S2は、定着装置17と排紙ローラ34との間から分岐し、複数の搬送ローラ35を経由してレジスト前ローラ33とレジストローラ32との間に再合流する。
【0032】
給紙ローラ41は、給紙装置18の端部近傍に備えられ、給紙装置18に設けられたトレイから用紙を1枚ずつ用紙搬送経路Sに供給する呼び込みローラである。分離ローラ42は、給紙ローラ41に当接して、用紙を挟持するニップ部を形成するローラである。なお、給紙ローラ41および分離ローラ42については、後述する
図2を参照して詳しく説明する。
【0033】
レジストローラ32は、給紙装置18から搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム13上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を転写ローラ26aに搬送する。レジスト前ローラ33は、用紙の搬送を促進補助するための小型のローラである。
【0034】
定着装置17は、ベルト定着方式とされており、2つのローラにベルトが巻き掛けられ、ベルトを介して押圧するローラがさらに設けられている。定着装置17では、未定着のトナー像が形成された用紙を受け取り、ベルトを介したローラとローラとの間に、用紙を挟み込んで搬送する。定着後の用紙は、排紙ローラ34によって排紙トレイ19上に排出される。
【0035】
また、用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合は、用紙を排紙ローラ34から反転経路S2へと逆方向に搬送して、用紙の表裏を反転させ、用紙をレジストローラ32へと再度導き、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を排紙トレイ19へと搬出する。
【0036】
次に、給紙ローラ41および分離ローラ42の周辺の構造について、
図2を参照して説明する。
【0037】
図2は、給紙ローラおよび分離ローラの周辺の構造を示す模式平面図である。
【0038】
給紙ローラ41は、給紙軸43に軸支され、分離ローラ42は、分離軸44に軸支されており、給紙軸43および分離軸44の端部には、駆動伝達機構50が接続されている。駆動伝達機構50は、駆動部51、給紙ギア52、中間ギア53、分離ギア54、および連結機構60を備えている。駆動部51は、例えば、モータであって、制御部(図示しない)からの指示に応じて適宜駆動し、駆動力を生じさせる。給紙ギア52は、給紙軸43の端部に取り付けられ、駆動部51に接続されており、駆動部51から伝達された駆動力を受けて回転し、給紙軸43および給紙ローラ41を回転させる。分離ギア54は、分離軸44の端部に取り付けられており、連結機構60に接続されている。中間ギア53は、給紙ギア52と分離ギア54との間に設けられており、給紙ギア52が回転する駆動力を分離ギア54に伝達する。分離ギア54は、中間ギア53を介して駆動力が伝達されると、分離軸44および分離ローラ42を回転させる。なお、以下では説明のため、給紙ローラ41と分離ローラ42とを併せて、単にローラと呼ぶことがある。
【0039】
連結機構60は、例えば、電磁クラッチやメカニカルクラッチであって、作動することで、中間ギア53から分離ギア54へ伝達される駆動力を切断する。つまり、連結機構60は、駆動部51からの駆動力を分離ローラ42に伝達するか切断するかを切り替える。
【0040】
分離軸44には、トルクリミッタ45が取り付けられている。なお、トルクリミッタ45の挙動については、給紙ローラ41および分離ローラ42の回転方向と併せて、後述する
図4Aおよび
図4Bを参照して説明する。
【0041】
分離ローラ42の近傍には、分離ローラ42の回転状態を検出するローラセンサ46が設けられている。ローラセンサ46は、分離ローラ42の回転速度や回転方向を検出して、検出結果を制御部に出力する。
【0042】
図3Aは、給紙ギア、中間ギア、および分離ギアの回転方向を示す模式側面図であって、
図3Bは、連結機構が作動した際の給紙ギア、中間ギア、および分離ギアの回転方向を示す模式側面図である。なお、
図3Aおよび
図3Bでは、図面の見易さを考慮して、駆動伝達機構50のうち、駆動部51、給紙ギア52、中間ギア53、および分離ギア54を抽出して模式的に示している。
【0043】
図3Aに示すように、駆動部51が駆動すると、給紙ギア52、中間ギア53、および分離ギア54は、それぞれ矢符R1の方向(
図3Aでは、反時計回り)、矢符R2の方向(
図3Aでは、時計回り)、矢符R3の方向(
図3Aでは、反時計回り)に回転する。つまり、給紙ギア52と分離ギア54とは、同じ方向に回転するように設定されている。
【0044】
また、連結機構60が作動した際には、
図3Bに示すように、給紙ギア52および中間ギア53が回転しても、分離ギア54が停止したままになる。
【0045】
図4Aは、給紙ローラに対して、分離ローラが従動回転している状態を示す模式側面図であって、
図4Bは、給紙ローラに対して、分離ローラが反対方向に回転している状態を示す模式側面図である。なお、
図4Aおよび
図4Bでは、図面の見易さを考慮して、給紙装置18のうち、給紙ローラ41および分離ローラ42を抽出して模式的に示している。
【0046】
図4Aに示すように、駆動部51が駆動すると、給紙ローラ41は、矢符R4の方向(
図4Aでは、反時計回り)に回転する。給紙ローラ41の回転は、ニップ部において、用紙を搬送方向(
図4では、右向き)へ搬送するように作用する。
【0047】
分離ローラ42は、給紙ローラ41との間の摩擦力によって、用紙を搬送方向へ搬送するように回転(矢符R5の方向、
図4Aでは、時計回り)する。また、駆動部51から分離ローラ42に伝達される駆動力は、給紙ローラ41との間の摩擦力と反対の向きに作用しており、
図4Bに示すように、分離ローラ42は、その駆動力によって、用紙を押し戻すように回転(矢符R6の方向、
図4Bでは、反時計回り)する。分離ローラ42がいずれの向きに回転するかは、トルクリミッタ45および連結機構60の挙動によって決定される。
【0048】
トルクリミッタ45は、駆動部51から駆動伝達機構50を介して分離ローラ42に伝達された駆動力よりも、給紙ローラ41と分離ローラ42との間に生じた摩擦力が大きい場合、その駆動力を遮断することで、
図4Aに示すように、分離ローラ42を給紙ローラ41に従動回転させる。一方、摩擦力よりも駆動力が上回っている場合、
図4Bに示すように、分離ローラ42は、給紙ローラ41に対して逆回転する。
【0049】
制御部は、用紙を給紙した給紙回数をカウントしており、この給紙回数に基づいて、連結機構60の動作を制御している。具体的に、制御部は、給紙回数が閾値以下の場合、駆動部51からの駆動力を分離ローラ42に伝達させ、給紙回数が閾値を超えている場合、駆動部51から分離ローラ42への駆動力を切断させる。上述したように、駆動部51からの駆動力が伝達されている場合は、給紙ローラ41と分離ローラ42との間に生じた摩擦力を考慮して、分離ローラ42の回転方向が決定される。一方、駆動部51からの駆動力が伝達されていない場合、給紙ローラ41と分離ローラ42との間に生じた摩擦力に応じて、分離ローラ42は、給紙ローラ41に従動回転する。給紙回数に対する閾値については、給紙ローラ41および分離ローラ42について想定した寿命に基づいて設定すればよく、例えば、各種ローラの寿命を20万枚とした場合、閾値を10万枚としてもよい。なお、給紙回数のカウントについては、ローラの交換等に応じて適宜リセットしてもよい。
【0050】
給紙装置18においては、ローラが摩耗することで表面摩擦抵抗が低下し、トルクリミッタ45で設定された負荷を下回ることにより、意図した通りに従動回転しなくなり、給紙性能を維持できないことが有った。そこで、分離ローラ42を逆回転させるための駆動入力の有無を切り替えることで、ローラの摩耗が進行した際に給紙性能を維持し、ローラの長寿命化を図ることができる。また、給紙回数からローラの表面状態を推測でき、ローラの摩耗を考慮して、逆転駆動をさせるかどうかを適切に制御することができる。そして、給紙ローラ41との摩擦力が低下して、トルクリミッタ45で設定された負荷を下回った際、駆動部51からの駆動力を切断することで、分離ローラ42を給紙ローラ41に従動回転させることができる。
【0051】
また、長期間使用した場合だけでなく、使用初期においても、給紙回数に基づいて、連結機構60の動作を制御してもよい。具体的に、制御部は、給紙回数が予め設定された初期観察枚数以内の場合、駆動部51から分離ローラ42への駆動力を切断させる。初期観察枚数は、例えば、200枚とされている。つまり、新品のローラに交換した直後では、埃や異物等の付着により、本来の表面抵抗力が得られない場合があるため、付着物が落ちてローラ表面が安定するまで逆転駆動をさせないことで、給紙動作を安定させることができる。
【0052】
給紙回数をカウントする際には、給紙した時間と関連付けて給紙履歴として記録してもよい。制御部は、給紙履歴を参照して、所定期間中に給紙した枚数が閾値より少ない場合、駆動部51から分離ローラ42への駆動力を切断させてもよい。このように、未使用のまま時間が経過した際、ローラ表面の変質が発生することを考慮して、逆転駆動をさせるかどうかを適切に制御することができる。
【0053】
給紙装置18では、用紙を搬送する際にローラの表面状態を確認するだけでなく、事前に分離ローラ42の回転方向を確認してもよい。つまり、制御部は、用紙を搬送する前に駆動部51を駆動させる予備回転を実施させる。そして、予備回転において、分離ローラ42が給紙ローラ41とは反対方向に回転している際(
図4B参照)、駆動部51から分離ローラ42への駆動力を切断させる。このように、用紙を搬送する前に予め分離ローラ42の挙動を確認することで、円滑に分離ローラ42を給紙ローラ41に従動回転させることができる。
【0054】
また、給紙装置18では、分離ローラ42の回転状態に応じて、連結機構60の動作を制御してもよい。具体的に、制御部は、ローラセンサの検出結果に基づいて、分離ローラ42が回転遅れ状態であるかどうかを判断しており、分離ローラ42が給紙ローラ41に従動回転している状態において、給紙ローラ41の回転速度と分離ローラ42の回転速度とを比較して判断している。給紙ローラ41の回転速度については、駆動部51に対して指示した回転速度から決定される。従動回転している際、本来、分離ローラ42と給紙ローラ41とは、同じ速度で回転する。しかしながら、ローラが摩耗して摩擦力が低下すると、分離ローラ42の回転速度が、給紙ローラ41の回転速度よりも遅くなることがあり、この状態を回転遅れ状態と判断している。そして、回転遅れ状態であると判断された際には、駆動部51から分離ローラ42への駆動力を切断させる。このように、回転状態から分離ローラ42の表面状態を推測でき、分離ローラ42の摩耗を考慮して、逆転駆動をさせるかどうかを適切に制御することができる。
【0055】
さらに、給紙装置18では、給紙する用紙の種類を受け付けるようにしてもよい。用紙の種類については、ユーザが指定するようにしてもよいし、トレイに対応する用紙の種類を割り当てるようにしてもよい。制御部は、受け付けた用紙の種類に応じて、連結機構60の動作を制御する。例えば、平滑性が高いフィルムコート紙や、オイルが浸透した再利用紙などに対しては、連結機構60を作動させて、分離ローラ42が逆回転しないようにしてもよい。このように、用紙の種類に応じて逆転駆動をさせるかどうかを制御することで、平滑性が高い用紙等に対して、ローラの空回りに起因する搬送不良を防ぐことができる。
【0056】
給紙装置18では、用紙の搬送不良が発生した搬送不良回数をカウントするようにしてもよい。搬送不良が発生したかどうかについては、例えば、用紙検知センサ47(後述する
図5A参照)での検出結果に基づいて判断してもよく、用紙を給紙しても、用紙の先端を用紙検知センサ47が検知しないとき、搬送不良が発生したと判断すればよい。そして、制御部は、搬送不良回数に応じて、駆動部51から分離ローラ42への駆動力を切断させる。一定の枚数内で搬送不良が頻発した場合、分離ローラ42の追従に不具合があることが想定される。そこで、用紙の搬送不良を考慮して、逆転駆動を遮断することで、円滑に用紙を給紙することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。なお、第2実施形態に係る画像形成装置については、
図1ないし
図4Bに示す第1実施形態と略同様であるので、同様の符号を付して説明および図面を省略する。
【0058】
図5Aは、本開示の第2実施形態に係る画像形成装置において、用紙検知センサが用紙の先端を検知する前の状態を示す模式側面図であって、
図5Bは、本開示の第2実施形態に係る画像形成装置において、用紙検知センサが用紙の先端を検知した後の状態を示す模式側面図である。なお、
図5Aおよび
図5Bでは、図面の見易さを考慮して、給紙装置18のうち、給紙ローラ41および分離ローラ42を抽出して模式的に示している。
【0059】
第2実施形態では、第1実施形態に対し、ニップ部を通過した用紙Pの先端Pfを検知する用紙検知センサ47が設けられている点が異なる。用紙検知センサ47は、搬送方向において、ニップ部よりも少し下流側に設けられている。
【0060】
用紙を給紙する際、制御部は、用紙検知センサ47が用紙の先端を検知するまで、駆動部51から分離ローラ42への駆動力を切断させる。そのため、
図5Aに示すように、分離ローラ42は、給紙ローラ41に対して従動回転している。用紙Pが搬送されて、先端Pfが用紙検知センサ47の検知位置に到達すると、制御部は、駆動部51から分離ローラ42に駆動力を伝達させる。その結果、
図5Bに示すように、分離ローラ42は、給紙ローラ41に対して逆回転する。このように、逆転駆動無しにして、用紙Pが円滑にニップ部に噛み込まれるようにし、ニップ部噛み込み後に逆転駆動有りにして、用紙Pの分離を行うことで、搬送不良を防ぐことができる。
【0061】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
18 給紙装置
41 給紙ローラ(第1ローラの一例)
42 分離ローラ(第2ローラの一例)
43 給紙軸
44 分離軸
45 トルクリミッタ
46 ローラセンサ
47 用紙検知センサ
50 駆動伝達機構
51 駆動部
52 給紙ギア
53 中間ギア
54 分離ギア
60 連結機構