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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151640
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/14 20060101AFI20241018BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60C5/14 Z
B60C9/22 A
B60C9/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065152
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】立田 真大
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA35
3D131AA36
3D131BB01
3D131BC05
3D131BC44
3D131CB01
3D131CB03
3D131CB11
3D131CB13
3D131DA09
3D131DA43
3D131DA55
3D131DA56
(57)【要約】
【課題】ノイズ性能をより一層向上させることができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、トレッド部2の内部に配されたベルト層7及びバンド層8と、カーカス6の内側で一対のビード部4の間を延びる内側ゴム層10とを含む。バンド層8は、バンドストリップ8Bがタイヤ軸方向に隙間なく配列された第1領域86とバンドストリップ8Bがタイヤ軸方向に隙間を空けて配列された第2領域87とを含む。内側ゴム層10は、第1領域86のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第1部分11と、第2領域87のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第2部分12とを有する。第2部分12の厚さT2は、第1部分11の厚さT1よりも大きい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されたベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されたバンド層と、
前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴム層とを含み、
前記バンド層は、複数本のバンドコードを並列したバンドコード配列体をトッピングゴムで被覆した帯状のバンドストリップが前記ベルト層の外側に螺旋状に巻き付けられることにより形成されており、
前記バンド層は、前記バンドストリップがタイヤ軸方向に隙間なく配列された第1領域と前記バンドストリップがタイヤ軸方向に隙間を空けて配列された第2領域と、を含み、
前記内側ゴム層は、前記第1領域のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第1部分と、前記第2領域のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第2部分とを有し、
前記第2部分の厚さT2は、前記第1部分の厚さT1よりも大きい、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2領域での前記バンドコードの密度は、前記第1領域での前記バンドコードの密度の20%~99%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記バンド層は、前記第1領域と前記第2領域とがタイヤ半径方向に積層された重複部を含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記バンド層は、単層の前記第2領域によって構成される非重複部を含む、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記バンドストリップの厚さTBに対する前記第2部分の厚さT2と前記第1部分の厚さT1との差T2-T1の比(T2-T1)/TBは、60%~140%である、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記差T2-T1は、0.4mm~1.0mmである、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記重複部は、前記バンド層のタイヤ軸方向の両端に配されている、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記バンド層のタイヤ軸方向の長さWBと前記内側ゴム層の前記第1部分と前記第2部分のタイヤ軸方向の長さの和WとIの比WB/WIは、100%~105%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記バンド層の前記非重複部のタイヤ軸方向の長さWB2と前記内側ゴム層の前記第1部分と前記第2部分のタイヤ軸方向の長さの和WIとの比WB2/WIは、10%~50%である、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記内側ゴム層は、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向の厚さが漸減するテーパー部を含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記テーパー部は、前記カーカス及び前記ベルト層を隔てて、前記第1領域のタイヤ軸方向の内端と対向して配されている、請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ベルト層のタイヤ半径方向の外側にバンド層が配されている空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-038812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記バンド層は、トレッド部の剛性を高め、空気入りタイヤの走行に由来するノイズの低減に貢献する。しかしながら、近年のEV等の静粛性能に優れた車両の普及により、さらなるノイズ性能の向上が要求されている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、軽量化を図りつつノイズ性能をより一層向上させることができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されたベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されたバンド層と、
前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴム層とを含み、
前記バンド層は、複数本のバンドコードを並列したバンドコード配列体をトッピングゴムで被覆した帯状のバンドストリップが前記ベルト層の外側に螺旋状に巻き付けられることにより形成されており、
前記バンド層は、前記バンドストリップがタイヤ軸方向に隙間なく配列された第1領域と前記バンドストリップがタイヤ軸方向に隙間を空けて配列された第2領域と、を含み、
前記内側ゴム層は、前記第1領域のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第1部分と、前記第2領域のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第2部分とを有し、
前記第2部分の厚さT2は、前記第1部分の厚さT1よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の前記空気入りタイヤは、上記構成を有しているので、軽量化を図りつつノイズ性能がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す子午断面図である。
図2図1のトレッド部を拡大して示す断面図である。
図3】トレッド部の一方側を拡大した断面図である。
図4図1のバンド層及び内側ゴム層の構成及びそれらの位置関係を対比して模式的に示す断面図である。
図5図1のトレッド部を拡大して示す断面図である。
図6図3のトレッド部の変形例を示す断面図である。
図7図3のトレッド部の別の変形例を示す断面図である。
図8図4のバンド層及び内側ゴム層の変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1の正規状態での子午断面を示している。
【0010】
正規状態とは、タイヤを正規リム(図示省略)にリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態である。以下、特に言及されない場合、タイヤの各部の寸法等はこの正規状態で測定された値である。なお、正規状態で測定できない構成(例えば、空気入りタイヤ1の内部材である。)は、空気入りタイヤ1を出来るだけ正規状態に近似させた状態にして、測定された値である。
【0011】
「正規リム」とは、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」とは、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。空気入りタイヤ1が乗用車用である場合、正規内圧は、例えば、180kPaである。
【0013】
空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを含む。サイドウォール部3は、トレッド部2のタイヤ軸方向外側に連なり、タイヤ半径方向に延びている。ビード部4は、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に連なっている。
【0014】
空気入りタイヤ1は、カーカス6と、ベルト層7と、バンド層8と、内側ゴム層10とを含んでいる。
【0015】
カーカス6は、空気入りタイヤ1のケースを構成する。カーカス6は、一対のビード部4の間を延びている。換言すれば、カーカス6は、一方のビード部4から、一方のサイドウォール部3、トレッド部2、他方のサイドウォール部3を通って、他方のビード部4まで延びている。
【0016】
カーカス6は、例えば、1枚または複数枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライ6Aで構成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、2つのビード部4の間を延びている。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。
【0017】
カーカスプライ6Aは、複数のカーカスコードと、これらを被覆するトッピングゴムとを含む(図示省略)。カーカスコードは、例えば、アラミド、レーヨンなどの有機繊維コードが採用される。カーカスコードは、例えば、タイヤ赤道Cに対して70~90°の角度で配列されるのが望ましい。
【0018】
ベルト層7は、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されている。ベルト層7は、トレッド部2を補強する。
【0019】
ベルト層7は、カーカス6に隣接する第1ベルトプライ7Aと、第1ベルトプライ7Aのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライ7Bとを含んでいる。第1ベルトプライ7A及び第2ベルトプライ7Bのそれぞれは、タイヤ周方向に対して15~45°の角度で配列された複数のベルトコードと、これらを被覆するトッピングゴムを含んでいる。第1ベルトプライ7Aのベルトコードと、第2ベルトプライ7Bのベルトコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜している。これにより、トレッド部2が効果的に補強される。
【0020】
バンド層8は、例えば、1枚のバンドプライ8Aで構成されている。バンドプライ8Aは、例えば、複数本のバンドコード8C(図3参照)を並列したバンドコード配列体をトッピングゴムで被覆した帯状のバンドストリップ8Bがベルト層の外側に螺旋状に巻き付けられることにより形成されている。バンドプライ8Aを構成するバンドコード8Cのタイヤ周方向に対する角度は、例えば、5°以下である。本実施形態のバンド層8は、ベルト層7の全体を覆う様に配置されている。より具体的には、バンド層8は、ベルト層7のタイヤ軸方向の両端よりも若干外側にのびている。なお、本実施形態において、バンドストリップ8Bの厚さは、0.7mmである。
【0021】
図2は、トレッド部2を拡大して示している。図3は、タイヤ赤道Cに対して一方側のトレッド部2をさらに拡大して示している。図4は、バンド層8及び内側ゴム層10の構成及びそれらの位置関係を対比して模式的に示している。
【0022】
バンド層8は、バンドストリップ8Bがタイヤ軸方向に隙間8Gなく配列された第1領域86を含んでいる。隙間8Gとは、タイヤ軸方向に隣り合うバンドストリップ8B間の距離である。第1領域86においては、タイヤ軸方向に隣り合うバンドストリップ8Bの端縁が突合わせ状態で配列されている形態、または、タイヤ軸方向に隣り合うバンドストリップ8Bの一部が互いに重なり合うように配列されている形態のいずれであってもよい。
【0023】
隙間8Gは、加硫前の生タイヤの製造工程において、成形ドラム等の外周側にバンドストリップ8Bを巻付ける際に、バンドストリップ8Bのドラム軸方向への送り速度を調整することにより、変更されうる。
【0024】
第1領域86では、バンドストリップ8Bによる拘束力が増し、トレッド部2の振動がより一層抑制される。
【0025】
第1領域86は、バンド層8のタイヤ軸方向の両端に配されている、のが望ましい。このような構成により、ベルト層7のタイヤ軸方向の両端領域における拘束力の低下がバンド層8の第1領域86によって補われ、トレッド部2のショルダー部を効果的に補強できる。
【0026】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、バンド層8は、バンドストリップ8Bがタイヤ軸方向に隙間8Gを空けて配列された第2領域87を含んでいる。第2領域87においてバンドストリップ8Bが隙間8Gを空けて配列されることにより、トレッド部2の剛性を維持しつつ、空気入りタイヤ1の軽量化を図ることが容易となる。
【0027】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、第2領域87は、例えば、バンド層8のタイヤ軸方向の全域に形成されている。このような構成により、空気入りタイヤ1の軽量化を図ることがより一層容易となる。
【0028】
隙間8Gは、3mm以上である、のが望ましい。これにより、空気入りタイヤ1の軽量化を図ることがより一層容易となる。また、上記観点から、より望ましい隙間8Gは、5mm以上であり、さらに望ましい隙間8Gは、10mm以上である。
【0029】
内側ゴム層10は、カーカス6の内側に配されており、一対のビード部4の間を延びている。これにより、内側ゴム層10は、タイヤ内腔面1Aを構成している。内側ゴム層10は、加硫されたゴムで構成されており、パンク防止用のシーラント材とは材料及び物性が大きく相違する。
【0030】
内側ゴム層10は、マスダンパーとしての機能及びゴム自身の粘弾特性によってトレッド部2の振動を抑制する。これにより、空気入りタイヤ1のノイズ性能が向上する。内側ゴム層10として、エネルギーロスの大きいゴムを適用することにより、内側ゴム層10による制振効果をより一層高めることができる。
【0031】
内側ゴム層10は、バンド層8の第1領域86のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第1部分11と、バンド層8の第2領域87のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第2部分12とを有している。
【0032】
第1部分11は、トレッド部2の一方のショルダー部から他方のショルダー部にわたって配されている。第2部分12は、一対のショルダー部から一対のバットレス部に向かって形成されている。
【0033】
投影領域とは、カーカス6及びベルト層7を隔てて第1領域86または第2領域87と対向する領域を意図している。すなわち、第1部分11は、カーカス6及びベルト層7を隔てて第1領域86と対向する領域であり、主として第1領域86の振動がカーカス6及びベルト層7を介して伝達される領域である。一方、第2部分12は、カーカス6及びベルト層7を隔てて第2領域87と対向する領域であり、主として第2領域87の振動がカーカス6及びベルト層7を介して伝達される領域である。換言すると、第1部分11は、第1領域86と対応し、第2部分12は、第2領域87と対応する。
【0034】
図4に示されるように、バンド層8において第1領域86と第2領域87とが部分的に重複している場合、その領域のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する部分は、第1部分11とする。
【0035】
また、本実施形態の内側ゴム層10は、第2部分12のタイヤ軸方向の外端からビード部にわたって形成された第3部分13を有している。第3部分13には、例えば、空気非透過性に優れたゴム材料及びカーカス6との接着性に優れたゴム材料が適用される。第1部分11及び第2部分12の一部または全体には、第3部分13と同等のゴム材料が適用されてもよい。
【0036】
図2に示されるように、本実施形態では、第2部分12の厚さT2は、第1部分11の厚さT1よりも大きい。このような第2部分12は、第1部分11よりもタイヤ内腔面1A上の単位面積あたりの質量が大きく、マスダンパーとしての作用を効果的に発揮し、バンド層8の第2領域87において十分に低減できなかったトレッド部2の振動を抑制する。さらに、第2部分12に配されているゴム自身が有する粘弾特性によって、トレッド部2の振動エネルギーが減衰される。
【0037】
一方、バンド層8による振動の低減効果が十分に得られる第1領域86から内側ゴム層10に伝達される振動は限定的となる。従って、第2部分12よりも減衰効果に劣る第1部分11においても十分な制振効果が得られる。
【0038】
なお、第1部分11の厚さ及び第2部分12の厚さが連続的に滑らかに変化する形態では、上記厚さT1及びT2は、例えば、それぞれ第1部分11及び第2部分12の平均の厚さとして求められる。
【0039】
バンドストリップ8Bが隙間8Gを空けて配列された第2領域87でのバンドコード8Cの密度は、バンドストリップ8Bが隙間8Gなく配列された第1領域86でのバンドコードの密度よりも小さい。本実施形態では、第2領域87でのバンドコード8Cの密度DC2は、第1領域86でのバンドコード8Cの密度DC1の20%~99%である、のが望ましい。
【0040】
第2領域87での上記密度DC2が第1領域86での上記密度DC1の20%以上であることにより、バンド層8の全体での拘束力が増大し、トレッド部2の振動が抑制される。一方、第2領域87での上記密度DC2が第1領域86での上記密度DC1の99%以下であることにより、空気入りタイヤ1の軽量化を図り、燃費性能を高めることが可能となる。なお、空気入りタイヤ1の軽量化を図るうえで、より望ましい上記密度DC2は、上記密度DC1の77%以下である。
【0041】
なお、バンドコード8Cの密度が連続的に滑らかに変化する形態では、上記密度DC1及び密度DC2は、例えば、それぞれ第1部分11及び第2部分12の平均の密度として求められる。
【0042】
本実施形態では、バンド層8を構成するバンドストリップ8Bは、バンド層8の一部においてタイヤ半径方向に積層されている。すなわち、バンド層8は、バンドストリップ8Bがタイヤ半径方向に積層された重複部81と、バンドストリップ8Bがタイヤ半径方向に積層されない単層の非重複部82とを有している。
【0043】
本実施形態において、重複部81は、第1領域86と第2領域87とがタイヤ半径方向に積層されて構成されている。重複部81では、バンドストリップ8Bによる拘束力が増し、トレッド部2の振動がより一層抑制される。また、重複部81に第1領域86が含まれることにより、重複部81での拘束力がより一層高められ、トレッド部2の振動が抑制される。
【0044】
一方、本実施形態の非重複部82は、単層の第2領域87によって構成されている。バンド層8に非重複部82が設けられることにより、空気入りタイヤ1の軽量化を図ることが容易となる。
【0045】
積層された第1領域86と第2領域87とによって重複部81が構成される形態にあっては、重複部81に対応する範囲で第1部分11と第2部分12とが部分的に共存する。この場合、第1部分11の厚さT1は、第1部分11の全範囲の厚さの平均で定義され、第2部分12の厚さT2は、第2部分12の全範囲の厚さの平均で定義される。
【0046】
本実施形態の内側ゴム層10において、第3部分13の厚さは、第2部分12の厚さよりも小さく形成されているが、第2部分12の厚さと同等に形成されていてもよい。
【0047】
バンドストリップ8Bの厚さTBに対する第2部分12の厚さT2と第1部分11の厚さT1との差T2-T1の比(T2-T1)/TBは、60%~140%である、のが望ましい。
【0048】
上記比(T2-T1)/TBが60%以上であることにより、非重複部82におけるバンド層8の厚さの減少が内側ゴム層10の第2部分12によって補われる。これにより、トレッド部2の全厚を均一に維持しつつ、空気入りタイヤ1のノイズ性能を高めることができる。
【0049】
一方、上記比(T2-T1)/TBが140%以下であることにより、空気入りタイヤ1のトレッド部2の全厚を均一に維持しつつ、重量を抑制し、燃費性能を高めることができる。
【0050】
上記観点から望ましい差T2-T1は、0.4mm~1.0mmである。
【0051】
重複部81は、バンド層8のタイヤ軸方向の両端に配されている、のが望ましい。このような構成により、ベルト層7のタイヤ軸方向の両端領域におけるベルト層7の拘束力の低下が重複部81によって補われ、トレッド部2のショルダー部を効果的に補強できる。
【0052】
なお、バンド層8の構成は、上述したものに限られない。例えば、第1領域86は、バンド層8のタイヤ軸方向の全域に形成され、第2領域87は、バンド層8のタイヤ軸方向の両端に配されていてもよい。
【0053】
図5は、本実施形態のトレッド部2を示している。本空気入りタイヤ1においては、バンド層8のタイヤ軸方向の長さWBと内側ゴム層10の第1部分11と第2部分12のタイヤ軸方向の長さの和WIとの比WB/WIは、100%~105%である、のが望ましい。
【0054】
比WB/WIが100%以上であることにより、トレッド部2の剛性が向上し、トレッド部2の振動が抑制される。一方、比WB/WIが105%以下であることにより、内側ゴム層10による減衰効果が高められ、トレッド部2の振動が抑制される。
【0055】
また、本空気入りタイヤ1においては、バンド層8の非重複部82のタイヤ軸方向の長さWB2と内側ゴム層10の第1部分11と第2部分12のタイヤ軸方向の長さの和WIとの比WB2/WIは、10%~50%である、のが望ましい。
【0056】
比WB2/WIが10%以上であることにより、トレッド部2の重量が抑制され、燃費性能が向上する。一方、比WB2/WIが50%以下であることにより、内側ゴム層10による減衰効果が高められ、トレッド部2の振動が抑制される。
【0057】
図6は、上記トレッド部2の変形例であるトレッド部2Aを示している。トレッド部2Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2の構成が採用されうる。
【0058】
トレッド部2Aにおいて、内側ゴム層10は、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向の厚さが漸減するテーパー部14を含んでいる。テーパー部14によって、内側ゴム層10の減衰特性を変更できる。
【0059】
テーパー部14は、カーカス6及びベルト層7を隔てて、第1領域86のタイヤ軸方向の内端81iと対向して配されている、のが望ましい。このようなテーパー部14は、第1部分11と第2部分12をつなぎ、内側ゴム層10の質量分布を穏やかとして、優れた制振性能を得ることが可能となる。なお、図6に示されるように、テーパー部14は、バンド層8のタイヤ軸方向の外端8oと対向して配されていてもよい。このようなテーパー部14は、第2部分12と第3部分13をつなぎ、内側ゴム層10の質量分布を穏やかとして、優れた制振性能を得ることが可能となる。
【0060】
図7、8は、図3、4に示される空気入りタイヤ1のトレッド部2の別の変形例であるトレッド部2Bを示している。トレッド部2Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2等の構成が採用されうる。
【0061】
トレッド部2Bでは、バンド層8が単一の層、すなわち非重複部82によって構成され、重複部81が存在しない点で、上記トレッド部2等とは異なっている。
【0062】
トレッド部2Bにおいても、第2領域87に対応する第2部分12の厚さT2は、第1領域86に対応する第1部分11の厚さT1よりも大きい。このような構成により、空気入りタイヤ1の軽量化を図りつつ、トレッド部2の振動エネルギーが効果的に減衰される。
【0063】
以上、本発明の空気入りタイヤ1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0064】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0065】
[本発明1]
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されたベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されたバンド層と、
前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴム層とを含み、
前記バンド層は、複数本のバンドコードを並列したバンドコード配列体をトッピングゴムで被覆した帯状のバンドストリップが前記ベルト層の外側に螺旋状に巻き付けられることにより形成されており、
前記バンド層は、前記バンドストリップがタイヤ軸方向に隙間なく配列された第1領域と前記バンドストリップがタイヤ軸方向に隙間を空けて配列された第2領域と、を含み、
前記内側ゴム層は、前記第1領域のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第1部分と、前記第2領域のタイヤ半径方向内側の投影領域に位置する第2部分とを有し、
前記第2部分の厚さT2は、前記第1部分の厚さT1よりも大きい、
空気入りタイヤ。
[本発明2]
前記第2領域での前記バンドコードの密度は、前記第1領域での前記バンドコードの密度の20%~99%である、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明3]
前記バンド層は、前記第1領域と前記第2領域とがタイヤ半径方向に積層された重複部を含む、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明4]
前記バンド層は、単層の前記第2領域によって構成される非重複部を含む、本発明3に記載の空気入りタイヤ。
[本発明5]
前記バンドストリップの厚さTBに対する前記第2部分の厚さT2と前記第1部分の厚さT1との差T2-T1の比(T2-T1)/TBは、60%~140%である、本発明4に記載の空気入りタイヤ。
[本発明6]
前記差T2-T1は、0.4mm~1.0mmである、本発明5に記載の空気入りタイヤ。
[本発明7]
前記重複部は、前記バンド層のタイヤ軸方向の両端に配されている、本発明4に記載の空気入りタイヤ。
[本発明8]
前記バンド層のタイヤ軸方向の長さWBと前記内側ゴム層の前記第1部分と前記第2部分のタイヤ軸方向の長さの和WIとの比WB/WIは、100%~105%である、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明9]
前記バンド層の前記非重複部のタイヤ軸方向の長さWB2と前記内側ゴム層の前記第1部分と前記第2部分のタイヤ軸方向の長さの和WIとの比WB2/WIは、10%~50%である、本発明4に記載の空気入りタイヤ。
[本発明10]
前記内側ゴム層は、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向の厚さが漸減する第3部分を含む、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明11]
前記第3部分は、前記カーカス及び前記ベルト層を隔てて、前記第1領域のタイヤ軸方向の内端と対向して配されている、本発明10に記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0066】
1 :空気入りタイヤ
2 :トレッド部
2A :トレッド部
3 :サイドウォール部
4 :ビード部
6 :カーカス
7 :ベルト層
8 :バンド層
8B :バンドストリップ
8C :バンドコード
8G :隙間
10 :内側ゴム層
10 :内側ゴム
11 :第1部分
12 :第2部分
13 :第3部分
81 :重複部
81i :内端
82 :非重複部
86 :第1領域
87 :第2領域
DC1 :密度
DC2 :密度
T1 :厚さ
T2 :厚さ
TB :厚さ
WI :和
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8