(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151646
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】表皮材とポリウレタンフォームの剥離方法、該剥離方法に用いられる剥離液剤
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065159
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】白井 辰弥
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401AC01
4F401AD06
4F401CA41
4F401EA55
4F401EA58
4F401EA59
4F401EA62
4F401EA90
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】低コストかつ簡便な方法で、表皮材とポリウレタンフォームの剥離を可能とする技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる方法であって、
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に、SP(Solubility Parameters)値15以下の液体を接触させる、
又は、
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に非加熱条件下にて液体を接触させる、
接触工程を有する、剥離方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる方法であって、
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に、SP(Solubility Parameters)値15以下の液体を接触させる、
又は、
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に非加熱条件下にて液体を接触させる、
接触工程を有する、剥離方法。
【請求項2】
前記接触工程は、非加圧条件下にて行われる、請求項1に記載の剥離方法。
【請求項3】
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの層間は、接着材料が非介在である、請求項1に記載の剥離方法。
【請求項4】
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームが熱溶着又は一体成形されている、請求項1に記載の剥離方法。
【請求項5】
表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる剥離用液剤であって、
SP(Solubility Parameters)値15以下の液体、
又は、
非加熱条件下にて前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に接触させるための液体、
を有効成分とする、剥離用液剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、表皮材とポリウレタンフォームの剥離方法に関する。より詳しくは、表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる方法、及び当該剥離方法に用いられる剥離液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み自動車からエアバッグ類やフロン類、ドア、エンジンなどの部品を取り外し、破砕(シュレッディング)して有用金属を回収した後に残る自動車破砕残さを、ASR(Automotive Shredder Residue)といい、このASRのリサイクルが、廃車で生じる自動車由来のゴミの最終処分量を左右している。
【0003】
ASRは、重量比で樹脂やウレタンなどの可燃物が7割を占め、焼却施設で熱エネルギーとしてリサイクルされているが、昨今の温室効果ガスの排出量削減等の取り組みから、今後は、燃やして熱として利用する比率を下げ、資源として再利用する比率を向上させることが求められている。特に車両の座席や内装材に用いられる部品については複数の素材で構成されているものが多くあり、リサイクルを行うためにこの積層体の分別をする技術が開発されつつある。
【0004】
例えば、特許文献1では、ポリウレタン発泡体と少なくともその一面に樹脂、シート、金属板などの積層部が接合されたポリウレタン発泡複合体からポリウレタン発泡体を剥離する方法であって、該ポリウレタン発泡複合体を閉空間中で水を主成分とする処理液中で180℃以下の温度で加熱処理して、該ポリウレタン発泡複合体から積層部を剥離することにより、剥離再生された各材料は変質がなくそのまま再使用を可能とする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の剥離技術は、処理液中で180℃以下の温度で20~80分、高圧下で加熱処理を行う方法であるが、指定される温度と圧力にするためには強固な密閉容器が必要と推察される。一方、リサイクルにおいては、コスト削減や、できるだけ簡便な設備と条件下にて実施できることが求められている。
【0007】
そこで、本技術では、低コストかつ簡便な方法で、表皮材とポリウレタンフォームの剥離を可能とする技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術では、まず、表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる方法であって、
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に、SP(Solubility Parameters)値15以下の液体を接触させる、
又は、
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に非加熱条件下にて液体を接触させる、
接触工程を有する、剥離方法を提供する。
本技術に係る剥離方法において、前記接触工程は、非加圧条件下にて行うことができる。
本技術に係る剥離方法では、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの層間に接着材料が非介在である積層体の剥離が可能である。
また、本技術に係る剥離方法では、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームが熱溶着又は一体成形されている積層体の剥離が可能である。
【0009】
本技術では、次に、表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる剥離用液剤であって、
SP(Solubility Parameters)値15以下の液体、
又は、
非加熱条件下にて前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に接触させるための液体、
を有効成分とする、剥離用液剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
1.剥離方法
本技術に係る剥離方法は、表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる方法であって、接触工程を行う方法である。より具体的には、本技術に係る剥離方法は、表皮材とポリウレタンフォームとの界面に、SP(Solubility Parameters)値15以下の液体を接触させる接触工程、又は、表皮材とポリウレタンフォームとの界面に非加熱条件下にて液体を接触させる接触工程を行う方法である。
【0012】
本技術において、「表皮材とポリウレタンフォームとの界面に、液体を接触させる」とは、表皮材とポリウレタンフォームとの界面の一部又は全部に、液体が到達する態様全てを包含する。表皮材とポリウレタンフォームとの界面に、液体を接触させる方法としては、例えば、積層体の一部又は全部を液体に浸漬させる方法、表皮材及び/又はポリウレタンフォームの一部又は全部を液体に浸漬させる方法、表皮材側及び/又はポリウレタンフォーム側から液体をスプレー等で塗布して浸みわたらせることで表皮材とポリウレタンフォームとの界面に液体を到達させる方法等が挙げられる。
【0013】
本技術に係る剥離方法に用いることができる液体としては、ポリウレタンフォームに浸透することができる液体を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチレンクロライド、酢酸エチル、エチルエーテル、ヘキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0014】
これらの中で、コスト削減の観点からは、水を用いることが好ましい。
【0015】
また、剥離性向上の観点からは、SP値が25以下の液体を用いることが好ましく、SP値が20以下の液体を用いることがより好ましく、SP値が15以下の液体を用いることが更に好ましい。用いる液体のSP値の下限値は、本技術の作用、効果を損なわない限り、特に限定されないが、例えば5.0以上、好ましくは5.5以上、より好ましくは6.0以上、更に好ましくは6.5以上、更により好ましくは7.0以上、特に好ましくは7.5以上である。SP値がこの範囲の液体は、ポリウレタンフォームへの浸潤性が高いため、表皮材とポリウレタンフォームとの剥離性を更に向上させることができる。
【0016】
また、剥離性向上の観点からは、比誘電率が1.8以上の液体を用いることが好ましく、比誘電率が2.0以上の液体を用いることがより好ましく、比誘電率が5.0以上の液体を用いることが更に好ましい。用いる液体の比誘電率の上限値は、本技術の作用、効果を損なわない限り、特に限定されないが、例えば80以下、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは35以下、特に好ましくは30以下である。比誘電率がこの範囲の液体は、ポリウレタンフォームへの浸潤性が高いため、表皮材とポリウレタンフォームとの剥離性を更に向上させることができる。
【0017】
なお、参考のために、前記で例示した液体のSP値と比誘電率を、以下の表1に例示する。
【0018】
【0019】
更に、リサイクルの観点からは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エチルエーテル等を用いることが好ましい。その理由は以下の通りである。表皮材とポリウレタンフォームに分別された後、ポリウレタンフォームはその樹脂を分解して、構成成分のアルコール化合物に再生される検討が広く行われている。ポリウレタンフォームは、その用途に応じて、難燃剤等の添加物が多く含まれており、その構成成分がアルコール化合物に再生される過程において、忌避される存在となる。しかしながら、表皮材とポリウレタンフォームの剥離において、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エチルエーテル等の液体に接触させることで、剥離性が向上することに加え、ポリウレタンフォーム中の添加物が抽出され、ポリウレタンフォームからアルコール化合物への再生が容易になると共に、再生されたアルコール化合物の品質向上にも寄与することができる。
【0020】
本技術では、接触工程を非加熱条件下にて行うことができる。後述する実施例で実証するように、本技術では、非加熱条件下でも十分に、表皮材とポリウレタンフォームとの剥離性を高めることに成功した。その結果、剥離作業に必要な設備の簡便化を図ることができると共に、剥離作業に必要なコスト削減にも寄与することができる。
【0021】
なお、本技術において、「非加熱条件下」とは、積極的な加熱を行わない条件であることを意味する。例えば、液体の保管場所や容器と接触工程を行う場所や容器の温度が異なることにより、液体の温度が上昇する場合、季節や天気の変化により液体の温度が上昇する場合、接触工程において何らかの化学反応が進行して液体やポリウレタンフォームの温度が上昇する場合等は、本技術の「非加熱条件下」に包含される。
【0022】
本技術に係る剥離方法における接触工程では、非加熱条件下でも十分な剥離性向上を実現することが可能であるが、加熱を行うことを排除する意図はない。用いる液体の種類に応じて、例えば、接触に最適な粘度となる温度に液体の温度を調整したり、接触作業に適した温度条件となるように液体や積層体の温度を調整したりすることは可能である。具体的には、接触工程において、液体及び/又は積層体を、例えば0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上に調整することができる。また、接触工程において、液体及び/又は積層体を、例えば95℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは50℃以下に調整することができる。
【0023】
本技術では、接触工程を非加圧条件下にて行うことができる。後述する実施例で実証するように、本技術では、非加圧条件下でも十分に、表皮材とポリウレタンフォームとの剥離性を高めることに成功した。その結果、剥離作業に必要な設備の簡便化を図ることができると共に、剥離作業に必要なコスト削減にも寄与することができる。
【0024】
なお、本技術において、「非加圧条件下」とは、積極的な加圧を行わない条件であることを意味する。例えば、液体の保管場所や容器と接触工程を行う場所や容器の気圧が異なることにより、接触工程における圧力が上昇する場合、季節や天気の変化により接触工程における圧力が上昇する場合、液体の気化等により容器内の圧力が上昇する場合、接触工程において何らかの化学反応が進行して接触工程における圧力が上昇する場合等は、本技術の「非加圧条件下」に包含される。
【0025】
本技術に係る剥離方法における接触工程では、非加圧条件下でも十分な剥離性向上を実現することが可能であるが、加圧を行うことを排除する意図はない。用いる液体の種類に応じて、例えば、接触に最適な粘度となるように接触工程における圧力を調整したり、接触作業に適するように接触工程における圧力を調整したりすることは可能である。具体的には、接触工程における圧力は、例えば0.7atm以上、好ましくは0.8atm以上、より好ましくは0.85atm以上に調整することができる。また、接触工程における圧力は、例えば1.4atm以下、好ましくは1.3atm以下、より好ましくは1.2atm以下に調整することができる。
【0026】
接触工程における接触時間は、本技術の作用、効果を損なわない限り、剥離対象である表皮材やポリウレタンフォームの種類や、液体の種類等に応じて、適宜調整することができる。接触工程における接触時間の下限としては、例えば10秒以上、好ましくは15秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上である。接触時間の下限をこの範囲とすることで、剥離性を確実に向上させることができる。接触工程における接触時間の上限としては、例えば24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは6時間以下、更に好ましくは1時間以下、特に好ましくは30分以下、10分以下、5分以下である。接触工程における接触時間の上限をこの範囲とすることで、剥離に係る時間を短縮できると共に、剥離後のポリウレタンフォームの品質低下を防止することができる。
【0027】
2.剥離対象の積層体
本技術に係る剥離方法で剥離することが可能な積層体としては、表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体であれば、表皮材とポリウレタンフォームを剥離することができる。
【0028】
本技術に係る剥離方法は、表皮材とポリウレタンフォームとの層間に接着材料が非介在である積層体の剥離に非常に適している。なお、本技術において、「接着材料が非介在」とは、表皮材とポリウレタンフォーム以外の接着成分が、層間に存在しないことを意味する。即ち、表皮材とポリウレタンフォームを熱溶着させる場合等に、表皮材及び/ポリウレタンフォームの表面が溶融し、表皮材自体及び/又はポリウレタンフォーム自体が接着成分として層間に存在する場合は、本技術の「接着材料が非介在」に包含される。
【0029】
本技術に係る剥離方法は、表皮材とポリウレタンフォームが熱溶着又は一体成形されている積層体の剥離に非常に適している。熱溶着方法としては、フレームラミネートが挙げられる。フレームラミネートはポリウレタンフォームの表面を炎で溶融し、表皮材と熱溶着させる手法である。一体成形方法としては、ポリウレタンフォームの原料となる未発泡状態の組成物を、表皮材に付設した状態で発泡させて成形する方法である。
【0030】
ポリウレタンフォームはセル構造を有しており、表皮材とはセル構造と接触している点で接着されている。接着は小さな点ではあるが、その接着強度は十分にあるため、剥がそうとするとポリウレタンフォームの強度よりも接着強度の方が強いことでポリウレタンフォームが破断してしまい、積層体を分別することができない。しかしながら、本技術に係る剥離方法の接触工程を行い、表皮材とポリウレタンフォームとの界面に液体を接触させることで、接着されている点の強度を低下させ、表皮材からポリウレタンフォーを破断することなく、容易に剥離することが可能になる。
【0031】
なお、本技術に係る剥離方法は、表皮材とポリウレタンフォームとの層間に接着材料が介在している場合であっても、接着材料の種類によっては、剥離を行うことが可能である。例えば、積層体を構成するポリウレタンフォームとは異なる種類のポリウレタンフォームを接着材料として用いる場合や、用いる液体が浸透可能かつ用いる液体による接着強度低下が可能な接着材料を用いる場合等であれば、表皮材とポリウレタンフォームとの層間に接着材料が介在していても、本技術に係る剥離方法を用いて剥離を行うことが可能である。
【0032】
剥離対象となり得る積層体を構成する表皮材の材質や構造は、本技術の作用、効果を損なわない限り特に限定されない。表皮材の材質としては、例えば、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、レーヨン、天然繊維等が挙げられ、表皮材の構造としては、例えば、表皮材の材質としては、例えば、編物、織物、樹脂シート、フィルム材等が挙げられる。特に、バッキング材としてアクリル等の樹脂を塗布したり、難燃剤や消臭剤等の機能添加剤の機能付与や、耐久性向上の為の加工を加えた表皮材であっても、本技術に係る剥離方法の剥離対象となり得る。
【0033】
剥離対象となり得る積層体を構成するポリウレタンフォームの材質や構造も、本技術の作用、効果を損なわない限り特に限定されない。一般的なポリウレタンフォームの製造に用いられる材料を用いて製造された軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォームや、公知の又は将来的に見出される機能を有する軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォームが、本技術に係る剥離方法の剥離対象となり得る。
【0034】
剥離対象となり得る積層体を構成するポリウレタンフォームの物性も、本技術の作用、効果を損なわない限り特に限定されない。本技術では、例えば密度15~75kg/m3、好ましくは密度20~60kg/m3、より好ましくは密度25~45kg/m3のポリウレタンフォームが、本技術に係る剥離方法の好ましい剥離対象となり得る。なお、本技術において密度は、JIS K 7222:2005に準拠して測定した値である。
【0035】
剥離対象となり得る積層体を構成するポリウレタンフォームは、ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、イソシアネート、その他、必要に応じて添加剤等を含むポリウレタンフォーム製造用組成物を用いて製造される。以下、ポリウレタンフォームの原料について説明する。
【0036】
<ポリオール>
ポリウレタンフォーム製造用組成物に用いるポリオールは、本技術の作用や効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができるポリオールを1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール;マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオール;前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したポリエーテルエステルポリオール、1分子内にポリーエーテルとポリエステルの両セグメントを有するポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。この中でも、本技術に係る剥離方法の剥離対象としては、エステル基を有するポリオール、具体的にはポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルエステルポリオールを用いて製造されたポリウレタンフォームが好ましい。
【0037】
<発泡剤>
ポリウレタンフォーム製造用組成物に用いる発泡剤は、本技術の作用や効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる発泡剤を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、水、メチレンクロライド、炭酸ガス、ペンタン等の炭化水素等が挙げられる。用いる発泡剤の量も、本技術の作用や効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、ポリオール100質量部に対して、1~8質量部の発泡剤を用いることが好ましい。
【0038】
<触媒>
ポリウレタンフォーム製造用組成物に用いる触媒は、本技術の作用や効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる触媒を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノヘキサノール、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン等のアミン系触媒;スタナスオクトエート等のスズ系触媒、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)等が挙げられる。用いる触媒の量も、本技術の作用や効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、ポリオール100質量部に対して、0.1~2質量部の触媒を用いることが好ましい。
【0039】
<整泡剤>
ポリウレタンフォーム製造用組成物に用いる整泡剤は、本技術の作用や効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる整泡剤を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤、界面活性剤等が挙げられる。用いる整泡剤の量も、本技術の作用や効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、ポリオール100質量部に対して、0.5~3質量部の整泡剤を用いることが好ましい。
【0040】
<イソシアネート>
ポリウレタンフォーム製造用組成物に用いるイソシアネートは、本技術の作用や効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができるイソシアネートを1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート;トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)等の芳香族系イソシアネート;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。この中でも、本技術に係る剥離方法の剥離対象としては、トルエンジイソシアネート(TDI)を用いて製造されたポリウレタンフォームが好ましい。
【0041】
剥離対象となるポリウレタンフォームのイソシアネートインデックスも、本技術の作用や効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、イソシアネートインデックスが90~120のポリウレタンフォームが、本技術に係る剥離方法の好ましい剥離対象となり得る。なお、本技術において、イソシアネートインデックスは、[(ポリウレタンフォーム製造用組成物中のイソシアネート当量/ポリウレタンフォーム製造用組成物中の活性水素の当量)×100]で算出した値である。
【0042】
<その他>
ポリウレタンフォーム製造用組成物には、本技術の作用や効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができるその他の各種成分を、目的に応じて1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、難燃剤、安定剤、可塑剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、架橋剤、抗菌剤、分散剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。なお、ポリウレタンフォーム製造用組成物に用いるその他の成分は、後述する剥離用液剤に可溶な成分であることが好ましい。剥離用液剤に可溶な成分であれば、接触工程において、ポリウレタンフォームから溶出させることができ、ポリウレタンフォームのリサイクル性の向上に寄与するからである。
【0043】
3.剥離用液剤
本技術に係る剥離用液剤は、表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる剥離用溶剤であって、SP(Solubility Parameters)値15以下の液体、又は、非加熱条件下にて前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に接触させるための液体、を有効成分とする液剤である。剥離用液剤の有効成分となる液体の詳細は、前述した本技術に係る剥離方法の接触工程で用いる液体と同一のため、ここでは説明を割愛する。
【0044】
本技術に係る剥離用液剤には、本技術の作用、効果を損なわない限り、前記液体に加えて、その他の成分を併用することができる。他の成分としては、例えば、通常液剤化に用いられている防腐剤、pH調整剤、着色剤、安定剤等の成分を用いることができる。更に、公知の又は将来的に見出される機能を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
【0045】
なお、本技術では、以下の構成を取ることもできる。
(1)
表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる方法であって、
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に、SP(Solubility Parameters)値15以下の液体を接触させる、
又は、
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に非加熱条件下にて液体を接触させる、
接触工程を有する、剥離方法。
(2)
前記接触工程は、非加圧条件下にて行われる、(1)に記載の剥離方法。
(3)
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの層間は、接着材料が非介在である、(1)又は(2)に記載の剥離方法。
(4)
前記表皮材と前記ポリウレタンフォームが熱溶着又は一体成形されている、(1)から(3)のいずれかに記載の剥離方法。
(5)
表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームを剥離させる剥離用液剤であって、
SP(Solubility Parameters)値15以下の液体、
又は、
非加熱条件下にて前記表皮材と前記ポリウレタンフォームとの界面に接触させるための液体、
を有効成分とする、剥離用液剤。
【実施例0046】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0047】
<実験例1>
実験例1では、表皮材及びポリウレタンフォームが積層された積層体において、前記表皮材と前記ポリウレタンフォームの剥離に用いる液体の種類の違いによる剥離への影響を調べた。
【0048】
(1)試験片の作製
試験対象品として、スミノエテイジンテクノ株式会社製の表皮材「アペルト」(ポリエステル樹脂製織物)と株式会社イノアックコーポレーション製のポリウレタンフォーム「EL-67F」をフレームラミネートで積層した製品を用い、5mmの製品厚みのものを幅25.4mm・長さ150mmの大きさにカットして試験片を作製した。
【0049】
(2)試験方法
前記で作製した試験片を下記の表2に示す液体に1分間浸漬させた後に絞り、液体が乾燥する前に、下記の剥離強度試験を行った。なお、液体なしの場合は、前記で作製した試験片をそのままの状態で、下記の剥離強度試験を行った。また、下記に示す評価基準に従って、剥離後の外観を評価した。
【0050】
[剥離強度試験]
表皮材としてスミノエテイジンテクノ株式会社製「アペルト」と、株式会社イノアックコーポレーション製ウレタンフォーム「EL-67F」とを、フレームラミネートで積層した積層体について、表皮材とウレタンフォームの剥離強度を株式会社イマダ製の引張試験機「ZTA-50N」を用いて測定した。具体的には、5mmの厚みの前記積層体を幅25.4mm・長さ150mmの大きさにカットしたものを試験片とし、試験片の短辺から表皮材のみを剥離させ、表皮材と剥離したウレタンフォーム部分を引張試験機に取り付け、引張速度200mm/minで剥がし、この時の最大荷重を測定した。
【0051】
[外観評価]
◎:表皮材からポリウレタンフォームがきれいに剥がれる
○:表皮材の表面の一部にポリウレタンフォームの小片が残る
△:表皮材の表面全体的にポリウレタンフォームの小片が残る
×:ポリウレタンフォームが途中で破断し、表皮材からの剥離が不能
【0052】
(3)結果
結果を表2に示す。表2には、各溶液のSP値及び比誘電率も併せて記載する。
【0053】
【0054】
(4)考察
表2に示すように、液体を接触させない場合は、剥離時の剥離強度が高く、ポリウレタンフォームが途中で破断し、表皮材からの剥離が不能であった。一方、非加熱条件下、及び非加圧条件下にて液体を接触させることにより、剥離時の剥離強度が低下し、剥離後の外観も良好であった。
【0055】
液体の種類で比較すると、SP値が15を超える水に比べて、SP値が15以下の液体の方が、剥離時の剥離強度が低く、剥離後の外観も良好であった。比誘電率で比較しても、比誘電率が高い水に比べて、比誘電率が60以下の液体の方が、剥離時の剥離強度が低く、剥離後の外観も良好であった。一方、比誘電率が非常に低いヘキサンに比べて、比誘電率が1.9以上の液体の方が、剥離時の剥離強度が低く、剥離後の外観も良好であった。